本部

【愚神狂宴】連動シナリオ

【狂宴】Gnosticism

影絵 企我

形態
イベント
難易度
不明
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
25人 / 1~25人
英雄
24人 / 0~25人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/07/01 11:29

掲示板

オープニング

●ユートピア

 ヘイシズが太平洋上に姿を現した。

 その報が舞い込んできたのは、彼がアルター社から立ち退いてからしばらくしてのことだった。情報の整理で大慌てになっているところで、彼自身からの通信も舞い込んできたのだからたまらない。電光石火で移り変わる事態に、職員達は目を白黒させるしかなかった。
「こんにちは。H.O.P.E.の諸君」
 艦橋と思しき部屋の椅子に腰掛け、ヘイシズは画面越しに職員達へ微笑みかける。
「迅速な対応処置に敬服する。人類の自由意志を尊重しようとする意思、しかと見せて頂いた」
 職員達は黙り込む。今や彼は敵。ペースに乗せられるわけにはいかなかった。唇を結ぶ職員達の顔を見たヘイシズは、ふと笑みを潜めた。
「故に、私は一つ君達に問いを立てようと思う」
 ヘイシズは画面の外の何者かに指先で指示を送る。その瞬間、画面が不意に切り替わった。

 それは、防犯カメラから見た市街の映像に見えた。銀行に銃を持った男が飛び込み、行員を脅しに掛かっている。まごついている行員を威嚇するように、天井へ向けて男は発砲した。しかし次の瞬間、男は肩から血を溢れさせて崩れ落ちた。
 またしても防犯カメラの映像だ。女は何食わぬ顔で店の外に出ようとしている。しかし棚の影から飛び出してきた子供にぶつかられて尻餅をついた。落ちた鞄からは、万引きした商品が溢れだす。慌てて取り繕おうとしたが、店員の眼は逃れられない。
 轢き逃げしようとして脱輪、強盗を働こうとして銃が暴発、爆弾テロは不発。職員達の目の前では、あらゆる犯罪行為が、偶然の不幸によって掻き消されていく。

「これは先の一週間における、一市街での一幕だ。その間、法に悖る行為はほぼ達成されなかった」
 再び画面がヘイシズの顔へと戻る。彼は懐から砂時計を取り出すと、これ見よがしに振ってみせる。
「私の力によって」
 カメラの前に砂時計が置かれる。刻々と砂が落ちていく。  
「私はアッシェグルートのように君達を魅了することは出来ない。私の力は、君達の意思に基づく結果を操作する事。私が望めば、君達の意志は“果てしない偶然によって”達成されなくなる。つまり、私の望みである秩序と平穏に反抗する限り、君達の刻は一歩たりとも前へ進まなくなるのだ」
 再び画面が移り変わる。今度は太平洋上の地図だ。深紅の点から、ハワイに向かって矢印が伸びていく。
「私はこれからハワイ・ホットスポットへと向かう。この地は、地球そのものを循環するライヴスが表出するポイントの一つ。……大動脈と言っていい。ここにドロップゾーンを打ち込めば、それを通じて、地球全体のライヴスの相を認識し、操作する事も不可能ではなくなる。つまり、今しがた君達に披露したような状況が、全世界で発生する事になる」
 職員達は顔を見合わせる。つまり彼は、時此処に至っても、秩序と平穏をこの世界に齎そうというのだ。
「……これが私の問いだ。君達の自由な意志は否定しない。だが、君達が悪意を持つ限り、その意志は達成されない。誰もが罪を犯さず、罪に脅かされないユートピアが完成する」
 ヘイシズという余所者の意志の下で。職員は誰一人いい顔をしなかった。それはやはり、愚神による人類の支配に他ならない。そもそも、彼はこれより地球のライヴスを掌握すると宣言したようなものだ。平和が達成されても、人類世界の滅亡は不可逆的に加速する。
「君達は本能的に許しがたいと思うだろう。私も正しいとは思わない。故に、君達には全力でこのユートピアを否定してもらいたい。君達がそれに如何なる理屈を用いるか。それが君達に投げかける問いだ」
 彼は職員達に向かって歯を剥いて笑う。彼の奥に潜む悪意を、前面に押し出す。その悪辣な表情に職員がたじろぐと、再びヘイシズは仏頂面になり、カメラを降ろした。
「……では、また平穏の海で会おう」

 集められた君達の前で映像が流される。アルター社からヘイシズが退去した夜、二名のエージェントによって行われたヘイシズ奇襲作戦の映像だ。二人は、その戦いを映像として残していたのである。それを君達と共に見つめていた仁科 恭佳(az0091)は、納得したように頷く。
「……ぶっちゃけ無茶し過ぎって言いたいとこですが、奴の能力を実際に見分出来たのはよかったです」
 彼女はスクリーンの映像を変える。ワイヤーフレームの人型に、無数のパラメータが描かれていく。
「ケイゴの研究資料には、ヘイシズの能力を纏めたデータがありました。それによると、奴は自身の周囲に存在するライヴスの分布や量、活性度を観測し、その運動と変化を分析する事で、凡百のプリセンサーを凌ぐ強固な予知能力を発揮しているようです」
 無数のパラメータの数値が変化すると、ワイヤーフレームの人型はくねくねと走り出す。
「そして、奴の能力は予知に止まらない。ライヴスの流れを操作する事で特定の相を生み出し、未来を操作してるんです。こんな風に」
 恭佳がパソコンを幾つか操作すると、足下に描画されたパラメータが赤く染まる。その数値が揺れた瞬間、人型はバランスを崩して転んでしまった。
「これは予め計算式をパソコンに突っ込んでいるので簡単に操作が出来ます。けれど、奴はこれをアドリブでやっている。奴が“神算”と呼ばれてるのは、何処なら崩せるか、どう崩すべきかを熟知し、それを実践できる“天才”であるが故でしょう」

「……ということで、皆さんにはこれを預けます」

 そう言って、恭佳は君達に小さな機械のパーツを配っていく。
「これはディストーションコード。ケイゴが自分のスーツに組み込んでた装備です。皆さんのライヴスを歪める事で、ヘイシズの予知を乱し、能力を強引に封殺するアイテムです。これを使えば、奴に負ける事は無いでしょう」
 言いながら、恭佳は僅かに顔を曇らせる。森蝕の舞台で燥ぎまわっていた少女と同一人物とは思えない。
「ただ、これを使って勝っても、奴に勝ったとは言えないかもしれません。それだけは心に留めておいてください」

●ユークロニア
 洋上のカレウチェと、米軍の手配した軍艦が戦闘を始めた。船団は、グロリア社や新生アルター社の手配した大砲型AGWを撃ち込む。君達はその隙に、高高度を飛ぶVTOL機から飛び、ヘイシズの立つ空母の甲板へと降り立った。武器を構える君達を前に、ヘイシズは素手のまま向かい合う。
「この世に暮らすある者が、かつて言ったそうだ。この世界の有様が悲惨であるのは、当にこの世界を作った神が偽で悪であるからだと。……真の神は、どこか別の世界に居るのだと」
 四方から剣や銃を構えた獣人――ヘイシズの臣下がやってきた。君達は武器を取る。ヘイシズは礼服を脱ぎ捨て鎧姿になると、静かに尋ねた。


「さて、訊こう。君達自身はこの世界という舞台において、一体何をしたいのか。何を演じる為に此処に居るのか」

解説

メイン ヘイシズの撃破
サブ 配布物を使用せずにヘイシズのスキルを突破する

☆ヘイシズ
 善性愚神の首魁。太平洋上にドロップゾーンを打ち込み、彼の能力を全世界へ適用しようと試みている。必ず阻止しなければならない。
・ステータス
 物攻B 物防B 魔攻B 魔防B 命中A 回避D 移動C 抵抗A イニC 生命A
・スキル
 クロノス
 「時」は厳格なものだ。ライヴスの形相に従い、正確に変化する。
 [クイック。6R以内の判定結果(=ダイス目)を全て予知する]
 カイロス×20
 ライヴスの形相を変化させ、各人の歩む「刻」を変える。
 [クイック。装備中、物攻・魔攻半減。クロノスで予知したダイス目を一つ選択し、好きな値に変更する]
・武器
 アイオン
 盾としても使用できる巨大な刃の斧。[範囲1、物理。防御成功時、1D10のダメージを反射する。]
 エイジ
 貫通する光線を放つ魔法銃。[最大射程20、魔法。直線8の範囲攻撃を行う事も出来る。]

☆近衛軍×9(狼×6、ハイエナ×3)
 かつての世界からヘイシズに従ってきた愚神達。ヘイシズに忠誠を誓っており、士気は非常に高い。
・脅威度 デクリオ級
・ステータス
(狼)
 物攻B 物防A 魔攻C 魔防A 命中A 回避C 移動A 抵抗C イニD 生命A 
(ハイエナ)
 物攻D 物防C 魔攻A 魔防B 命中B 回避B 移動C 抵抗A イニC 生命B
・武器
 エウノミアー(狼)
 光を放つ剣。[近接、単体物理。範囲1の無差別攻撃も可]
 エイレーネ―(ハイエナ)
 光を放つ銃。[最大射程15、魔法。一度に3人まで狙う]

☆鳥獣兵
 戦場を飛び回る鳥獣型の従魔。
・脅威度 ミーレス級
・ステータス
 攻撃A、その他D以下
・スキル
 急降下
 [偶数RのCPに発動。1D6体が戦場に出現。]
 爪攻撃
 [単体、物理、近接]

☆配布物
 Dコード
 [装備中、PCは判定を予知されない。また、各R毎にランダムに能力が増減する]

リプレイ

●己の時を守る
「……今いる世界に絶望して、違う世界に行きたいって事なら共感出来るよ。俺としては神や王じゃなく希望を求めたんだけどさ」
 背負った大剣に手をかけたまま、GーYA(aa2289)は獅子に問いかける。
「貴方は絆を結べるだろう相手として一番近いと思ってる。もっと言葉を重ねられないか」
 獅子は首を振る。
「それで一体誰を救える。それに、絆を結ぶべき相手は他にいるだろう」
「未来が救われるかもしれない。……絆を結ぶべき相手って、何だ」
 じりじりと間合いを詰めてくる近衛兵。ジーヤは周囲に眼を向けながら、粘り強く尋ねる。しかし、獅子は無感情な瞳をぎらつかせるだけだった。
「自分で見出せ。そこまで私が教えてやる義理は無い」
 獅子が爪を鳴らす。その瞬間、近衛兵が一斉に飛び出した。
『行くぞ、魂置! とっちめねえと話にならねえ!』
 カイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001)はヘルハウンドを担ぎ、同時に飛び出した。獅子を守るように立ちはだかった狼達に、ストレートブロウの直撃を叩き込む。大剣の腹を使った一撃。狼は甲板に煙を上げつつ後退する。
「了解です! ……覚悟しろっ!」
 魂置 薙(aa1688)は雷の手斧を大きく振るって狼を殴りつける。遠心力の乗った切り上げは、狼を宙へ高々舞い上げた。狼は空中で体勢を整え、素早く降り立って薙に対峙する。
「意志とか覚悟とか大層な言葉を並べて、やる事は結局殺し合い?」
 ナイチンゲール(aa4840)はそんな狼達に横から差し込んでいく。不意を突かれた狼だったが、その間に砂時計が投げ込まれる。ナイチンゲールの突き出した剣は、狼が闇雲に振るった刃に受け止められた。
「この世界はそんなに安っぽいものじゃない」
「安っぽくないのだとしても、人類達は間違いなく“これ”を望んでいるのだ」
 愚神達に向かって、海から舞い上がった無数の蝶が不意打ちを仕掛ける。須美乃江の銘が打たれた法典を構え、禮(aa2518hero001)の似姿を借りた海神 藍(aa2518)が近衛兵を睨みつけていた。
「(理想郷……? 何を面白くない冗談を。“出来ない”と、“しない”では意味が全く違う)」
 藍には見えていた。整然とした秩序の果てに待つのは、法で裁けぬ悪の跋扈であると。何があっても、激昂して立ち上がる事もままならない。そんな世界は健全ではない。
『(それでは、わたし達の刻は一つも前に進みません。そこには平穏も希望もないです)』
 蝶に霊力を乱され膝をついた狼に、藍は潮風で編み上げた刃をぶつける。
「秩序は“守る”ものだ、守らせるものではない。……そんなこと、解っているのだろう? “己が神であるなどと思い上がっては本末転倒”だものな」
 なのに獅子は神の如く振舞おうとしている。藍にとっては面白くない冗談だ。

「ヘイシズさんと約束、杏樹は諦めないの。この世界の秩序と平穏の為に」
 白い翼のスピーカーを展開し、泉 杏樹(aa0045)は獅子に向かってスキャットを歌う。歌声は“Sion”を通して周囲に響き渡る。
「ならば見せてみろ、その証拠を」
 獅子は懐から砂時計を取り出す。刹那、杏樹は銃を引き抜いた。
「癒しをお届け」
 ケアレイの光が詰まった弾丸を放つ。獅子は眉を顰めた。そのまま砂時計を持たない方の手を伸ばし、銃弾を“二発”とも受け止める。
「そのような手で私を揺すぶるつもりか」
 砂時計を脇へと放る。ガラスが砕けて金の砂が飛び散った瞬間、氷の槍が獅子の肩を掠めて虚空の彼方へ飛んでいく。獅子は纏わりつく冷気から顔を庇いつつ、魔力の出所へ眼を向けた。
「六花は……雪娘を愚神にした王を殺して……あの人の代わりに、カタキを討つの」
 氷鏡 六花(aa4969)は極洋のよう青黒い瞳を獅子へ向けていた。再び樹氷のように刺々しい氷槍を繰り出したが、不意にそれを粉々にし、吹雪のようにして叩きつける。獅子は砂時計を投げつけると、風向きを僅かに逸らして躱す。しかし六花は構わない。
「だから……死んでよ。貴方が雪娘を鉄砲玉にしたせいで、あの人は……死んだの。貴方と話す事なんて……何もない」
 獅子ははっきり溜め息を吐いた。斬りかかってくるエージェントを片手で往なしながら、冷然とした視線を六花へ返す。
「心外だな。決断は何時だって君達が下している。彼女のゲームに君達が付き合いきれなくなり、我々を皆殺しにすることにした。それだけの事だ」
 獅子はシニカルな口調で応える。人の死を馬鹿にされたような気がして、六花の怒りはさらに凍てついた。アルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001)は咄嗟に霊力を絞る。
『挑発に乗せられないで。前のような展開になる事だけは避けないといけないわ』
「……わかってるよ」

『(さ、ボンクラ。首魁との対面です。一度は呑気に案内をした仲ですが行けるですか?)』
 漆黒の二枚盾をチャクラムのように構える紀伊 龍華(aa5198)。ノア ノット ハウンド(aa5198hero001)は、彼の耳にそっと囁く。
「(勿論。それに一リンカーの事なんて覚えてないでしょ……。そして、この場で踊らされているのはきっと……」
 龍華は、獅子と対する仲間を背後から狙うハイエナに向かって一枚を擲つ。放たれた銃弾は、盾の側面に当たって弾かれる。更に、もう一枚の盾も狼に向かって飛ばし、振りかぶる剣を弾いた。
「君達の相手は此処に居るよ」
 二枚の盾を受け止め、龍華は霊力の輝きを放つ。ハイエナは銃を構え、狼は剥製のような無表情で彼へと切りかかった。
「えーい!」
 そこへ、ランスを構えた沢木美里(aa5126)が全力で突っ込んでいく。狼の背後で銃を構えていたハイエナに衝突し、戦場の中央から突き飛ばす。
「貴方達の好きにはさせないからね!」
 木製の甲板に纏わりつく鉄板からレーザー銃が生えてくる。美里は咄嗟に身を翻し、放たれたレーザーを素早く躱す。そのまま盾に持ち替えると、龍華の隣に並び立って盾となった。
「君達の演じる役は……何だ」
「演じるものなんて決まってる。希望の勇者だ」
 白刃を構えた狼が十影夕(aa0890)に向かって突っ込んでくる。その姿には見覚えがあるような気もする。“彼ら”には名前も教えてもらったというのに、まるで見分けがつかない。
「そうさせるためにヘイシズさんは悪役を演じに来たんじゃないの?」
 理解し合おうとしていたはずなのに、あっという間に敵となり、殺し合いを演じている。銃を向けるのは怖いのに、口元が笑う。
 “おまえなんかヒトじゃない”と言われたら、夕には否定できる気もしない。
 しかし、今や戦いは始まってしまった。“敵”を罪悪感の外へ追いやり、楽器を奏でるように、夕は踊り狂う弾丸で獣と対峙するのだった。

「全く……本当に面倒なことになっちまったよ」
 スーツを纏って鬼のような姿になったリィェン・ユー(aa0208)は、神斬【極】を担いで獅子の面前へと踏み込んでいく。その心奥に燻るのは、一つの無念。
 大切な友人を失ってしまった悲哀。拳打に蹴りで獅子の間合いを窺いながら、リィェンは虎狼のように唸る。
「ようはあれか? “これだけの力を持つ自分でも王には勝てなかったんだから、俺達も勝てない。だから、抵抗せずに言う事聞いてそっちの都合の良い平和を受け容れろってか?」
「……そういう事になるだろうな」
「ふざけるな……そんなてめぇの限界を俺らに押し付けるな」
 不意に身を翻し、肩に担いだ大剣を両手で握り直す。重く厚く、鋭く鍛え上げた刃を、横合いから叩きつける。獅子は咄嗟に右腕の籠手を差し出し、攻撃を受け止めた。
「ならば、越えてみせろよ」
 獅子は当身でリィェンを突き飛ばし、そのまま深く踏み込み前蹴りを見舞おうとする。しかし、そこへ黒い鎧を纏った恋條 紅音(aa5141)が突っ込んでいく。
「そんな事させない!」
 禍々しい輝きを放つ爪を交差させ、獅子の蹴りを受け止める。突き倒されそうになるが、両足で何とか踏ん張り押し返した。獅子は瞳孔を細め、じっと紅音を観察する。
「君も未来を守りに来たのか?」
「そうだ。この世界の未来は、この世界の人が決めるべきなんだ! そのチャンスを奪って洗脳する事は正しくない事だと思うから、アタシは戦う!」
 と、威勢よく叫ぶものの、紅音は踏み込み切れない。先程見せた獅子の能力が気になってしまう。ヴィクター・M・メルキオール(aa5141hero001)は戦うので精一杯な紅音に変わって観察を続けていた。
『神算だか何だか知らないが、相手は予知が出来るだけだ。紅音、それを忘れないで』
「それが大きいんだけどっ!?」
『心までは読めないって事さ。頭は良いから考えて行動予測とかは出来るだろうけど』
「んんん……結局難しい!」
 紅音が叫ぶ背後から、アークトゥルス(aa4682hero001)は宙に高く跳び上がり、ライヴスを纏わせた長剣を獅子に向かって振り下ろした。獅子は両手で刃を受け止める。地に降り立ったアークは、力づくで獅子を押し込む。籠手と刃が触れ合い、火花が散る。
『人とは過ちを重ねながら、そしてそれを正しながら前へと進む者達だ。お前の作る秩序と平穏はただの停滞でしかない』
 二人はさらに切り結ぶ。騎士は獅子の喉笛に向けて剣を突き出し、獅子は裏拳でそれを叩き落す。騎士は手首を返すと、剣を握り直して逆袈裟を見舞った。
『お前には刻を止める事は出来ても、進める事は出来ない』
「地獄は善意によって舗装される。気付かれぬ過ちは正され得ない」
 砂時計を取って脇へと放り投げながら、獅子は鼻面に皺を作る。
「君は、人がそうした過ちをも正せると思うのか?」
『過ちがどうとかは知らねえな! この世界の為に戦うってのは俺達が進むと決めた道だ。力を持たない人間を守るために戦うんだよ!』
 全身にライヴスを纏わせ、グワルウェン(aa4591hero001)が続けざまに間合いへと踏み込んでいく。大剣を力任せに振り抜き、三連続で斬りつけていく。獅子は巨躯に見合わぬしなやかな身のこなしで大剣を籠手や脛当てで受け止めた。
『どうした。刻を変えるっていうその力、使ってくれば良いだろ?』
「使わなくて済むのなら、それに越したことはない」
「(……何だか変だな。今、目の前であからさまにスキルを使ってみせたはずなのに、ヘイシズはダメージも覚悟で受けに回っただけだ)」
 伴 日々輝(aa4591)はグワルウェンの奥で獅子を観察しながら呟く。空振りにしてしまう事も出来たはずだというのに。
 日々輝が考えている間に、ヘイシズは身を低く構え、風をも切り裂く回し蹴りを放つ。しかし、同じく風を切って駆け付けた零月 蕾菜(aa0058)が右手の手甲を突き出し、その一撃を受け止めた。
「何を演じる、かは知れませんが戦う理由ならはっきりしています」
『演じるも何もない。あいつが守り愛したこの世界を守る。ただそれだけだ』
 十三月 風架(aa0058hero001)が言い放つと同時に、黒、緋、空色のライヴスが風のように彼の周囲を駆け巡る。戦う事に意味はなく、守るべきものがそこにあるだけ。今は亡き大切な者達が守り愛したこの世界を守るため。
 そのために二人は立つのだ。

「(……理屈? そんなものに意味はない……貴様が愚神という名の余所者であり、我々がこの世界に住まう住民。侵蝕害虫を駆除してこそ安息を得られる安い生き物なのだ。理想など理想であってこそ平和だ。現実にさせてはもはや平和ではない)」
 獅子に対して砲門を向けながら、サーラ・アートネット(aa4973)は心の奥で呟く。彼が敵として立っている今、一切の手加減は無意味だ。オブイエクト266試作型機(aa4973hero002)は小さく溜め息を吐く。
『……それ、奴さんに言って来たらどーなんです』
「(五月蠅い。貴様はわざわざ駆除する相手に殺すと宣言するのか。本人も分かっている。ならそこに言葉など一切不要であろう)」
 獅子を射程に収める位置で腰を据える戦車。サーラは手元に向けて砲弾を撃ち込む。獅子は左手を構え、右手に持った砂時計を守る。素早くサーラは次弾を装填すると、再び獅子の腕へ向けて引き金を引く。
「……そうだ。そうしていつまでも守り続けるとよいのであります。いくら時を覆そうとも、運命を捻じ曲げようとも、貴様が変えられる未来程度など、大筋の結果からは逃れられぬのであります」
 獅子はサーラを一瞥すると、砂時計を脇へと放り投げる。
「貴様の野望を挫き、人類が独立独歩を貫く未来に変わりはないのであります」

「(良いね。嫌いじゃないよ。……けど彼は、そう。少し――)」
 十人以上で連携を組む仲間達に淡々と渡り合う獅子を見て、聴 ノスリ(aa5623)は意識の奥底でぽつりと呟く。彼はただただ愚神である彼らを見つめていた。
 天から鷹の鋭い叫びが轟く。槍を構えた鳥獣型の従魔達が、甲板で戦うエージェント達の下へ真っ逆さまに降ってくる。髪と瞳を漆黒に染め上げ、その身を埋め尽くすように文字を浮き上がらせ、サピア(aa5623hero001)は彼らを見上げる。
『折角お会い出来ましたのに、これでおさらばやもと思うと寂しいですね』
 魔導書を広げると、綴られていた文字がふわりと浮かび上がり、無数の蝙蝠のように飛び出した。文字は従魔に纏わりつき、容赦無くその肉を喰らいつくしていく。
『卿の考えはそうね、理解できるといっていいでしょう』
 時は厳格である。獅子の唱える論理にも同意していた。しかし。
『けれど洗脳だなんて、そこばかりは度し難いですわね。全てが同じ向き。なんて退屈なのかしら』
 サピアは眼を見開いて歯を剥き出し嗤う。彼女こそは永劫回帰を受け容れたオーバーマン。誰もが矩を越えない世界はつまらないと信じていた。

「……じゃあ、始めようかAlice」
『そうだねアリス、いつも通りに』
 赤のAlice(aa1651hero001)と黒のアリス(aa1651)は共鳴する。何も変わりはしない。彼を撃破するという任務が達成されるなら、定義はどうでも構わない。殺すでも黙らせるでも、それはそれで構わなかった。
 黒く赤く燃える炎を掌の上に燃え上がらせる。その中からは無数の蝶が舞い、獅子を守る近衛兵たちへと襲い掛かった。獅子は素早く砂時計を投げつけた。それと同時に近衛兵はエージェントに向かって一斉に走り出す。アリスは蝶を追わせようとしたが、近衛やヘイシズの一撃を躱す仲間に遮られ、操作が遅れて逃げ切られてしまう。
『……確かに偶然とは言いにくいね』
 ヘイシズを除けというオーダークリアの為、Aliceは冷静に分析する。仲間達の動きが噛み合わない。
 それを見ていたサピアは、ふと本を閉じて銃を取り出す。
『(時は一つ。卿がこの力で道筋を変える事もまた、織り込み済み)』
 天を仰いでいたサピアは、銃口を獅子へと向けた。
『(それを見た私が、気まぐれで卿を狙う事も)』
 爆音と共に魔法の弾丸が獅子へ飛ぶ。獅子は腕を払って弾丸を撥ね退けた。

「覚悟しろ、愚神!」
 リリア・クラウン(aa3674)は御剣 正宗(aa5043)と共に獅子へと斬りかかっていく。大剣を担いだリリアが真っ向から唐竹割を振り下ろすと、脇腹めがけて正宗が槍を突き出す。獅子は大剣を半身になって躱し、そのまま左手で槍の刃を払い除けた。
「ボク達の事を騙した事、許してはおかない。ついでにえすちゃんが他所に行ってしまって私生活に支障が出始めている事もな!」
『関係ないでしょそこは!』
 正宗の出鱈目な言葉をCODENAME-S(aa5043hero001)が突っ込む。もちろんこれは作戦だ。少しでも獅子の思考を崩そうという。獅子は口を閉ざすと、正宗から距離を取りつつ砂時計を取り出す。
『今だ』
 咄嗟に伊集院 翼(aa3674hero001)が叫ぶ。リリアは飛び退きながら神斬をぶん回した。放たれた衝撃波が、獅子の手元に炸裂する。獅子は砂時計を取り落とし、地面に落ちて砕けた。獅子は忌々しげに手をぷらぷらさせる。
「続けて!」
 さらに正宗が獅子の間合いへ踏み込む。しかし、甲板のささくれに躓き、思わずよろけてしまった。獅子はそこへ、爪のカウンターを叩き込んで突き飛ばした。溢れた血が甲板を濡らす。
『……砂時計、壊したはずなのに』
「壊させただけだ。別に自分で砕かねば使えんというわけではない」
「どこまでもボク達を馬鹿にする気か……?」
 正宗の背後からリジェネーションの光が飛ぶ。腹に刻まれた傷が見る間に癒えていく。煤けたような白衣を纏うクレア・マクミラン(aa1631)は、医療器具の詰まった鞄を肩に掛け、周囲を鋭い眼で見渡していた。
「ドクター、細かい判断は任せる」
『えぇ、軽傷はいつも通り自己判断で』
 リリアン・レッドフォード(aa1631hero001)はクレアの視界を借り、仲間達の怪我を素早く観察する。トリアージ。黒いカードを与える事の無いように、優先順位に最大限の注意を払う。
 艦橋の側壁に現れた砲台。レーザーが放たれ、ヘイシズと対峙する恋條 紅音(aa5141)の肩口を撃ち抜いた。肩当てが吹っ飛び、血が滲む。
「いったぁっ!」
 軽い悲鳴。リリアンはそれを聞き逃さない。
『クレア』
「わかっている」
 ケースからダーツを一本取り出すと、癒しの輝きを込めて紅音の肩へ投げつける。突き刺さったダーツは、ライヴスを流し込んで傷を癒していく。
「ありがとう!」
「例には及びません。今は戦況に集中してください」

「決して無理はしないでよ。一人でもやられたらそこから崩されるわ」
 回復行動に従事しているのはクレアだけではない。橘 由香里(aa1855)もまた、戦場に立つ仲間達に癒しの力を行使し続けていた。巫女装束が光に照らされ、神々しささえ放っている。
『それにしても面倒くさい奴じゃな! あのワンコ』
「ネコよ。……ま、遠回しに覚悟を見せろと言ってるのだから、見せるだけでしょ」
 飯綱比売命(aa1855hero001)と軽口叩き合いながら、由香里はサピアへとエマージェンシーケアの光を飛ばす。身体に刻まれた生傷が、すぐさま癒えていく。
『悪いわね』
「ええ。気を付けて」
 由香里は盾を構え、甲板の中心で戦う獅子を見つめる。彼女は、彼を討つのではなく、彼に勝ち、本音をぶつける為ここにいた。

『行くぞ、ヘイシズ』
 修道女のような装いを纏ったテトラ(aa4344hero001)は、魔導書を開いて呪文を唱え始める。獅子は彼女に向き直るが、その瞬間にその姿は黒いオーラに包まれる。次の瞬間には、黒い和装を纏った杏子(aa4344)が刀を抜いて突っ込んでいく。
「お前の予知はどこまで通用する? お前に未来は一体どこまで見えているんだ?」
 獅子は一切動じず、一歩引いて身構える。刀を横から抑え込んだ。
「小細工が通用すると思うな。私を何だと思っている」
 杏子の刀を払い除けると、鋭い掌底を喰らわせ数メートルを突き飛ばす。金色の瞳が、暁の明星のように輝いた。
「一つの世界の果てまで私は生きた。ありとあらゆる戦いを見てきた。その程度の搦め手、予知を使うまでもなく読み通せる」
『……ああ。読みたくば読め。しかしその形相、容易く変えられると思うな』
 エル・ル・アヴィシニア(aa1688hero001)がドスを利かせた声で言い放つ。薙は素早く駆け抜け、狼に鳥獣を雷斧の一撃で素早く切り裂いていく。獅子は眉間にしわを寄せたまま、砂時計を握りしめる。
「お前の嘆きは理解しよう。だが、貴様は時の流れに身を任せてしまっただけだ」
 鞘に収まったままの天剣が黒く燃え上がる。八朔 カゲリ(aa0098)は腰を落として深く構えると、獅子に向かって鋭く抜き放った。黒焔が弾丸となって飛んでいく。右腕で身を庇う獅子を、ナラカ(aa0098hero001)は一笑に付す。
『嘗て愚神を退けた益荒男が嘆くばかりとは何と女々しい』
「好きに笑え。誰しもが“その瞬間”、厭でも思い知る」
 獅子が言い放った瞬間、影俐は眉間へ皺を寄せた。
 妹が安心して目覚められる世界を。その為なら、総てを焔にくべて構わない。そう彼は確信し、己が道を突き進んできた。
「(……あの馬鹿め)」
 しかし、己が燃え尽きた後の世界を任すには、人は余りに弱過ぎると痛感していた。

 エージェント達は攻めかかるが、方陣を組んで耐え忍ぶ彼らに対して渾身の攻撃を叩き込めない。獅子の見せつけた能力を警戒し、どこか踏み込み切れない。数の優位が生かせずにいた。獅子は牙を剥き、周囲を見渡して吼える。
「そんなものか? 君達の意志は。一寸先の闇すら照らせん程度のものなのか」
『そんなわけ無かろう』
 獅子の問いかけに、どこからともなく辰宮 稲荷姫(aa5268hero002)が応える。天城 初春(aa5268)は入り乱れて戦う仲間の影から飛び出し、尺を約めた弓を引く。
「あのH.O.P.E.の会議室での貴殿の態度から、この日が来るのはわかっておりました。共存を願うのは、今も変わりませぬ」
 獅子が身構えた隙に、身を低くして間合いを詰めていく。烏羽を模した棒手裏剣を次々に投げ、獅子をその場に釘付ける。
「正直な話、この世界を支配するのが愚神だろうと構いはしませぬ、ただ、それは人が人として生きられる世であればの話」
 初春は獅子の死角に潜り込むと、一気に背後へ回り込む。
「あなたの望む世界は、いずれ人の心無き生きた屍の世となりましょう。故に妾達はあなたの道を踏み躙りて、我等の道を進みますじゃ」
 その眼が深紅に染まる。髪の毛が逆立ち、牙が伸びる。身の丈以上の大太刀を抜き放ち、初春は跳ねた。
「『押し通らせて貰うぞ、神算の獅子よ!』」
 初春が袈裟斬りを見舞わんとした時、獅子は砂時計を手の内で砕く。獅子の霊力が広がる。

 しかし刻は変わらない。

「……!」
 初春の放った渾身の一閃は、獅子の背中を鋭く捉えた。獅子は思わずよろめき、眼を剥いて振り返る。太刀を担ぎ、初春は神妙な顔をする。
「なるほど。その力……“自分の未来を志向していれば”通じないというところですかの」
「そうだ。やはり君達の意志は、そこに辿り着くらしいな」
 獅子はどこからともなく取り出した砂時計を、全て放り捨てる。ばら撒かれた霊力が、陽炎のように空間を歪ませる。手をそこへ突っ込むと、獅子は戦斧と銃を抜き取った。
「来るがいい。確たる意志を以て、私を乗り越えてみせろ」
 金色の瞳が蒼く染まる。その瞬間、黒々とした全身の毛皮が金色に輝いた。

●未来を創るは意志
「……行くっすよ。王さん」
 霊力が全身に満ちている。その気迫が、純粋にエージェント達を気圧す。君島 耿太郎(aa4682)は勇気を奮い、アークに囁いた。アークは懐からライヴスソウルを取り出すと、その手で握りしめる。
『ああ。覚悟は良いな』
 隣で見ていたグワルウェンと日々輝。彼らは秘薬を咄嗟に呷り、その身を霊力で浸す。
「君島。これが終わったら、少し話したいことがある。だから、月並みだけど……何が何でも、必ず戻れ」
 アークは頷くと、ライヴスソウルを握り潰した。輝きが放たれた瞬間、アークの纏うマントは火に包まれたように黒く染まっていき、剣もまた光を失い漆黒に染まる。
 それは彼の内に燃える憤怒だ。アークは剣を構えると、眼にも止まらぬ速さで獅子へと迫る。獅子は僅かに腰を落とし、一息で斧を振り下ろす。アークの振り抜いた長剣と交錯し、広がる黒い炎が甲板を炙った。獅子は右手の拳銃をアークの心臓へ向ける。アークは左手で咄嗟に払うと、獅子の脇腹を斬りつけた。
『耿太郎は言った。“この世界はそれほど悪くはないのだ”と。絶望を経てなお、自身のように救われるものもあるのだと、今は希望を以て世界を見ている』
 アークはその意志を守りたいと思っていた。脅かすものは何でもなく、ただ絶望であるならば尚更、その仇敵というものへ怒りの刃を向けんと心に決めていた。故に。
『お前の絶望さえも打ち払わんが為に、俺という英雄は最後まで希望の味方であろう』
「ならば越えてみせろ。私に打つ手は最早無い。出来る事は君達の前にただ立ち塞がる事だけだ。君達の進む道が素晴らしきものだと信じるなら、その刃を以て切り拓け」
 刃で競り合う二人。グワルウェンは脇から大剣を振り抜き、衝撃波を飛ばす。獅子は咄嗟に飛び退き振り返った。
『良いぜ。もう隠すものはねえってわけだ。単純な力比べなら、負けるつもりはねえ』
 二人の幻想蝶の放つ光が共鳴し、心臓の拍動のように輝く。並び立って構えた二人は、息を整え一気に獅子へと踏み込んだ。
「頼むぞ、騎士たち」

「……この世界の平穏の為、あなた達を止める」
 【黒鱗】を取った藍は、寄せては返す波濤のように狼の間合いへ踏み込んでは突き、刃を振り払っては飛び退きを繰り返す。その澱みない動きを、狼達は止められない。
 何の小細工も無い。そこにあるのはただ只管に強い意志。獅子よりも強い格率だ。
「運命が戦わぬ者に微笑む事などありはしない」
『わたしは……わたしは英雄です。彼らの運命を、その物語を、愚弄するな』
 津波のように深く踏み込み、槍を薙ぎ払う。狼が剣で受けた刹那、その刃は粉々に砕けた。狼は顔を顰め、よろよろと後ずさる。
「……強いな」
「仕組まれた事だからって、勝つ気も生きる気も無い奴らには引かないよ」
 攻撃を終えた藍をカバーするように立ちはだかり、龍華は狼に対峙する。
「……恐怖がないのは覚悟じゃない。ただの諦めだ。大人しく投降でもしたら?」
「そんなわけにいくものか。宰相の進む道は我らの進む道だ」
 龍華の挑発を受けた狼は、爪を立てて襲い掛かる。龍華は片方の盾で往なし、もう片方の盾の縁で狼の脇腹を斬りつけた。霊力に満ちた血が飛び散り、狼はその場で崩れる。
 狼の身体を黒炎で焼き払い、傍の鳥獣も紅炎で灰にする。アリスは二色の炎を躍らせて淡々と敵を焼き払いながら、獅子にも徐々に狙いを定めていく。
「貴方達の言い分はどうだっていいんだけどさ」
『君達があんまり王様王様言うものだから、私も興味が湧いてくるでしょう?』
「とりわけ王様なんて言われたらさ」
 Aliceはヘイシズの正面に向かって赤黒の炎を纏めて投げつける。獅子は斧を振り抜き、炎を切り裂いた。従魔の甲板に炎が燃え移り、二人の顔を明々と照らす。
『もしも本当に獅子を殺して出てくるなら、それも悪くはないかもね』

『何故時を急ぐ? 王の為になると信じる行動が出来なければ、王に逆らえないからか?』
「心外だな。私は一刻たりと王の意志に叛いた事は無い」
 榊 守(aa0045hero001)の問いに、獅子は唸りながら斧を振り下ろす。杏樹は鉄扇で受け止めた。火花を散らせて肉薄しながら、杏樹は獅子の宇宙のように青黒い瞳を見据える。
「杏樹は自分が抜身のナイフである事、忘れません」
「ならばどうする? 君の意志は、一体この世界をどうしたい」
「戦う力を持ちながら、戦わずに人の心を動かすアイドルリンカー。杏樹はアイドルとして、戦わずに世界を平和に導く礎になるの。未来はそうして切り拓きます」
「……甘ったれているな。だが、どうやら本気なようだ」
 獅子は薄ら口角を上げると、斧を支柱に回し蹴りを見舞い、杏樹を突き飛ばす。そのまま斧で薙ぎ払おうとしたが、由香里が素早く割って入り、盾で出掛かりを押さえる。
「京都で言ったわよね。人間は自分の敵、怨霊とかでも、祀ったり鎮めたりして共存してきた。貴方ともそういう関係を築ければいいって」
 華奢なその身に渾身の力を籠め、斧を弾き返す。
「今、私の理性は貴方を敵だと判別してる。状況を鑑みれば、敵としか見做せない……貴方がそう見せているから。……でも、貴方は試しているんでしょ? 貴方に必要な物を私達が持っているかどうか」
「君達には必要かもしれないが、私にではない」
 今度は銃を構えて引き金を引く。それでも由香里は一歩も引かず、真正面から弾丸を盾で受け止めた。
「私の神はどこにだっている。自然の力の具現か、でなければ人より少し優れているだけの、人とは由来の違う何か。貴方の言う王じゃない」
 全身に響き渡る衝撃に耐えながら、由香里は訴える。
「でも、貴方はそういうカミになれると思うのよ。愚神じゃなくて」
 獅子はそれを聞いて牙を剥き出す。しかし応える暇もなく、墓場鳥(aa4840hero001)とのリンクを高めた小夜啼鳥が突っ込んできた。白熱する剣を振るい、彼女もまた獅子へ叫ぶ。
「私ね、世界規模の結界で愚神を弱くしたいの。目的はあなたと同じだよヘイシズ。私の結論はあなたの中に有った。世界がこれを望まないんだとしたら、私達どっちも要らないね」
 剣を獅子の斧や銃に荒々しく打ち付け、叩き壊そうとする。獅子は唸り、光の弾丸を至近距離で撃ち込む。脇腹から血が脈々と溢れるが、小夜啼鳥は構わずライヴスソウルを取り出し、その手で叩き割った。霊力の本流でその身を癒しながら、強引に斬りかかっていく。
「なのに私の生を望む人がいる。貴方の生を願う人がいる。……望んでないのは“あなたの”世界の話だろ。他人の世界まで決めつけないでよ!」
「存在する事は問題にならん。そんな事を言い始めたら、こんな世界は滅びてしまえと思っている人間がどれだけいる? その想いこそが我々を呼び寄せているのだとも知らずに!」
 獅子はいよいよ苛立ったように声を荒らげる。言う事を聞かぬ生徒に大人げなく苛立つ教師のようだ。
 ふと、五色の蝶の大群が獅子へと襲い掛かる。蝶は獅子の全身へと融け入り、そのライヴスを侵していく。風架はそれを確かめると、畳みかけるように支配者の言葉を浴びせる。
『“武器を棄てろ”』
 しかし、獅子はむしろ力強く二つの武器を握りしめた。口から血を垂らしながら、風架へと振り返る。
「……見くびられたものだ。愚神である以前に、私は王に殉ずる宰相だ。そして王が君達をお救いなさると決めた以上、私はその命に代えてでも、人類をその救いに相応しい在りようにする。そして君達を救う」
『こんのクソ石頭野郎! 一回しか言わねぇからよく聞け!』
 空から急襲を続ける鳥獣兵をカチューシャの一撃で吹き飛ばし、狼を大剣で海へと撥ね飛ばしながらカイは叫ぶ。
『この世界が罪と言うのなら、お前の存在が罪と言うのなら、人間達は罪を償う為に生きてこの世界を変える! お前は罪を償う為生きてこの世界が変わる様を見届けろ! お前の言う理想郷じゃない、人間達が自分で作り上げる未来をだ!』
 よろめいたハイエナの首根っこを掴み、海へ向かって放り投げる。肩で息をしながら、カイは最後に一言絞り出す。
『H.O.P.E.は、その為の礎だ』
 獅子は髭一つすら動かさない。仮面のように無表情のまま、冷徹に応える。
「……そこまで辿り着いておきながら、何故まだ理解しない。本当に“君達が”自分の世界を救いたいなら、君達が今ここで為さねばならんことはただ一つだ」
 斧を短く持ち直した獅子は、一気に身を翻して周囲を薙ぎ払う。
「私を倒して人類の未来を確保してみせろ」
 直撃は防いだ紅音だったが、勢いに負けて吹っ飛ばされそうになる。咄嗟にロケットアンカー砲を取り出すと、甲板の裂け目に打ち込む。鎖を掴み、何とか甲板に踏みとどまった。
「メルキオール、未来は……変えられるって事だよね」
『だろうね。彼が言うからには』
 入れ替わるように、エルは背後から一足飛びで獅子へ押し寄せる。幻想蝶から魔剣を抜き、獅子を脳天から圧し切る勢いで振り下ろした。獅子は咄嗟に斧を振り上げ、崩されながらも受け止める。
『(罪を着るのが悪役なら、罪を斬るのは英雄の役割かの)』
 大剣と斧の刃が削れ、火花が散る。エルは獅子の仏頂面を見下ろし、囁いた。
『損な役回りを選んだものだな』
 エルには、彼の“役”に気付いていた。紫に輝く右目が、獅子の瞳の奥を覗き込む。
『終わらせたいなら、託して逝け』
 大剣を振り抜いて間合いを切り、主導権を薙へと譲り渡す。薙は大剣を握り直すと、立ち上がる獅子へ大剣の切っ先を突き出した。
「お前達のように奪うものから、大事なものを守りたい。……守りたいから戦うんだ」
「……その道を選んで、後悔しない自信はあるのか?」
「ない」
 薙は獅子の問いにきっぱりと答える。
「背中を預けられる友が居る。支えてくれている友が居る。だから……暗い中から立ち上がれた。光があると知った」
 大剣が獅子を押し切る。脇腹を刃が掠め、僅かに血が飛ぶ。
「それを信じられるから、これからも僕は前に進める」

『此処は卿のいた世界ではないというのに、何故そうも“守ろうと”するのです?』
 サピアは空に集まる鳥獣を魔導銃で撃ち落としながら、唇に弧を描いて尋ねる。獅子は銃口をサピアへと向け、眉間にしわを寄せた。
「……別に、この“世界”を守ろうとしたつもりは無いな」
 引き金を引きかけたその時、杏樹が脇から突っ込み獅子を押し退ける。あらぬ方向へ霊力の光線は飛び、甲板を焦がす。
『ノスリさんも仰っていましたが、ふふ、そうね貴方は少し……優し過ぎるわ』
 獅子はサピアのしたり顔を見て顔をしかめる。杏子は手にしたアルスマギカを燃え上がらせ、霊力を吸収する。再び桜雪華を抜き放つと、型を演じるように何度も剣を振るい、桜の花びらの幻影を生み出す。
「未来は未知数なんだよノーブル、いくらだって可能性はあるんだ!」
 杏子が獅子へと突っ込むと、生み出された桜の花びらが同時に獅子へ襲い掛かる。獅子が花弁を払い除けようとした隙に、テトラが杏子に成り代わって斬りかかる。
『私は大好きな人間の可能性を信じているぞ。……お前だって人間の事は好きだろう?』
 肩口を切られた獅子は、銃を収めて刃を掴む。手のひらから血を滲ませながら、獅子はテトラと間近で向き合う。
「本当に“人間”が好きだとしたら、こんな事をすると思うか。私はただ、君達が自身の憎悪に振り回され、さらには他者に悪と蔑まれながら虚無へと去る、こんな我々のようにはなってもらいたくないだけだ」
 鋭いボディーブローが叩き込まれる。後ろに飛び退いて衝撃を受け流した杏子は、周囲を見渡して叫ぶ。
「すまない! 回復を頼む!」
「了解……!」
 美里はすぐさま反応し、他のメディックと共にその手を天へと掲げる。降り注ぐ癒しの雨が、戦場に立つ仲間達の傷を癒していく。長引く戦いに疲弊しつつあった仲間達は、武器を構え直して敵に向かい合う。
「未来がどんな形であろうと、私の為す事、為すべき事は変わらん」
 クレアはヘイシズを横目で見つめて応える。傍の仲間にヒールアンプルを放って寄越し、ケアレイの光も飛ばす。
『万人に平等な救いの手を差し伸べる』
「過酷な環境から一人でも多く生きて帰す」
 二人は謡う。彼女達を結び付ける唯一絶対の誓約と覚悟を。空から突っ込んできた鳥獣の脳天を素早く抜いたハンドガンで撃ち抜き、すぐさまホルスターへと戻す。
「私達の戦いはそのために存在する。この世界にて病と戦いに苦しむ者があるのなら、行って私達はそれを救う。それだけだ」
 獅子は二人を見て神妙な顔をする。彼女達の背後から現れたレーザー砲は、突如火花を上げて沈黙した。
 戦いの未来は、ただ着実にH.O.P.E.の側へと引き寄せられていた。
「スキルが無いお前なんか、もう怖くないぞ!」
 リリアは霊力を全開にして獅子へと飛び込んでいく。獅子が盾代わりに巨大な斧の刃を構えても、そのまま大剣を振り下ろした。鈍い衝撃と共に、刃に僅かな罅が入る。獅子は咄嗟に足払いをかけてリリアを甲板に蹴倒したが、すかさず正宗が槍で獅子の肩口を突く。
『どんな愚神であっても殺す。そう私達は誓ったんです。』
「結構な事だ。我々もそう誓って戦いを続けた。そうすればいずれ道は開けるだろう」
 槍を払い除け、獅子は間合いを取り直す。
「善意に舗装された道がな」

「シュキガルが統治する異世界を見た。無限の墓標、あの光景が貴方の世界の末路で、この世界の未来だって言うのか」
 両手剣を渾身の力で振り回し、ジーヤは獅子と打ち合う。重い一撃を支えきれずに足元がふらつくが、すぐに体勢を立て直して食らいつく。
「そうだとしたら、君はどうする」
「決まってる。誰かの勘繰りで描かれる未来なら、白紙をぶち込んで書き変えてやる!」
 叫び、獅子を押し返す。その胸には、密林の奥でフレイヤに言われた言葉が未だに突き刺さっていた。絶望を塗り替えてやる力は欲しい。しかし、飲まれたら獅子の世界と同じになってしまう。
『さぁ、この世界を楽しみましょ』
 まほらま(aa2289hero001)がそっと囁く。一蓮托生の誓い。ジーヤは獅子の放った銃弾を半身になって躱し、そのまま身を翻した。
「此処が俺の理想郷だ!」
 この心臓が動く限り諦めない。想いを乗せた切り上げが、獅子の胸元を捉えた。獅子がよろめいた隙に、影俐はすぐさま間合いを詰める。己の刃が肩を掠めるのも構わず、獅子の眼前へと肉薄した。全ては神鳥の下す裁定の為に。
『(私を邪英と化せ、ヘイシズ)』
 優しくも甘い人間達に必要なのは試練である。確信したナラカは獅子に囁く。
『(汝はこれで、納得していいのか?)』
 獅子は鼻面に深い皺を刻むと、影俐の腹に銃口を突きつける。影俐は剣を振るって銃口を逸らし、大きく後ろへ飛び退いた。
「悪いが、私の望みはこの“世界”総てを救済する事。英雄となり、この世界と結合した以上、君もその“世界”の一部だ。故にその願い出は断るより他に無い」
『……至極落胆したよ、獅子よ』
 不意に、影俐の長い銀髪がふわりと浮き上がった。不死鳥が蘇るようにその全身が燃え上がり、その身は妙齢の女のそれへと変わっていく。
『ならば己で賽を振るまでだ』
 十二の輝きを宿した剣を構え、ナラカは獅子へ突っ込んだ。舞でも踊るように、獅子の隙を突いて燃え盛る刃を叩きつける。
『お前と同じように、私も意志の輝きを見たいのだよ!』

「死んでよ……死んでよ!」
 蒼白のドレスを纏った六花は、荒々しく吹雪を叩きつける。リンクバーストによって高められた魔力が氷の鏡によって撥ね返り、狼も鳥獣もハイエナも、獅子ごとまとめて凍り付かせていく。一匹たりと逃がすつもりは無かった。
 獅子は銃で撃ち返そうとするが、皆の乱打で傷ついていた銃は暴発し、手元で粉々に砕け散る。手は黒く燃え上がり、獅子は呻いた。
「何を演じたいかって聞いたなぁ? くだらねぇ。そんな心持だから、負けてその手先に落ちぶれんだよ」
 リィェンはその期を逃さず踏み込む。全身を取り巻く霊力循環用の蒼いラインが、今や黄金に輝いていた。大剣の樋を取り巻くように刻まれた龍も霊力を受けて揺らめいている。
「まぁいい。俺がなりたい正義の味方からはちょっとはずれるが……俺の仲間達を傷つけたてめぇに一発お礼をするのが、今! 俺が殺りたいことだよ!!」
 獅子が斧を構えようとした刹那、リィェンは雷光となって獅子の懐に突き刺さった。斧の刃を叩き割り、諸共に獅子の胴鎧も拉げさせる。
 息を詰まらせ、獅子は甲板の上を転げる。体勢を立て直そうとするが、口から血を吐いた獅子は立ち上がれず、その場でぐらついた。
「……しぶとい野郎だ」
 とはいえ、これは彼にとってはお礼参り。一撃当たればひとまず良いとしておいた。拳を固く握り締めるリィェンに、イン・シェン(aa0208hero001)は呆れ半分で呟いた。
『まったく……そちも面倒な性格しておるのじゃ』

「ヘイシズ!」
 肩で息をする獅子へ、ナイチンゲールは慌てて駆け寄っていく。サーラは言葉も無く獅子へ狙いを定め続けていたが、射線に彼女が割り込んだために手を止める。
「……」
 リリアが剣を構えて獅子へと突っ込んでいく。ナイチンゲールはそれに気づくと、咄嗟に盾を取って彼女と対峙する。
「待って。もう決着はついたよ」
「ついてない。まだそいつは死んでないじゃん。ボクは愚神をこの手で倒したという証明がしたいんだ。示しを付けたい。だからやらせてよ」
「嫌だ。このまま殺したって、こいつの思う壺だから」
『寝ぼけた事を言わないでください』
 正宗も獅子に止めを刺そうと槍を構えた。ナイチンゲールの背後から回り込もうとしたが、飛び込んできた人影にそれを止められる。
「待つんだ。話くらい、いいじゃないか」
 夕だ。得物を構えたまま、正宗は息巻いた。
「世界を洗脳しようとしたこいつをまだ信じるっていうのか? 愚神は嘘を吐く事しか出来ないんだ。こんな奴らを生かしておく意味がない。脅威になるだけだ」
「だとしても……俺は彼と殺し合いたくない。勿論、あなたたちとも、生きたいけど」
 甘ったれた戯言なのかもしれない。思いつつも、夕は武器を下ろしたまま正宗に向き合う。
『ならどいて下さい。私達はそいつの首もたてがみも狩りに来たんです』
 Sの言葉に、夕はうっすら口元に笑みを浮かべて首を振る。
「それなら尚更退けないよ。俺達はヘイシズのたてがみにトリートメントしてやる約束をしてるんだから」
 睨み合う二人。紅音は爪に霊力を込めながら、獅子に狙いを定めた。
「アタシはここで倒すべきだと思う」
『私はどうでもいいんだけれどね。まず話くらいはしておきなよ』
「そうだよ。話し合いはしてもいいと思うんだ」
 メルキオールの言葉に反応し、盾を構えた美里がナイチンゲール達を庇うように立ちはだかる。個人的な因縁はなくとも、話し合いたい仲間の意志を尊重したかったのだ。紅音は身構えたまま、兜の奥で瞳を金色に輝かせる。その視線で、獅子の仏頂面を捉えていた。
「お前はお前の善の為に事を起こしたんだ。アタシも自分の信じる正義の為に、お前を倒さないといけない。ケジメみたいなもんだよ」

 獅子の周りで睨み合いが続いている隙に、六花はその手の内で氷槍を作り上げる。アークは素早く間合いに割り込み、それを制した。
「待ってくださいよ。俺まだ怒ってるんっすからね!」
 耿太郎は叫ぶ。しかし六花は聞こうとしない。その槍は下に放り投げたが、その手の内に、深紅の氷結晶を握りしめる。

「人の行為の責任は人に帰結すべきなのであって、善意も悪意も全部込みでヒトなのよ」
 由香里は膝をつく獅子の眼前に立ち、彼を真っ直ぐに見下ろす。
「悪意を封じる事が必要なのではないわ。道を誤ったら、過ちを修正して先に進む事が大事なの。例え望んだ結果が得られなくても、先に進む事を諦めない」
 実際にリンカーとなり、エージェントとなり、数々の戦いを重ねながら自らを見つめ直した由香里の辿り着いた答えだった。腰に手を当て、静かに微笑む。
「貴方の考えは合理的だけど閉じている。分かってるんでしょう? それくらい自分で。貴方は、自分では前に進めないって。……だから、私達と組む価値があるって」
 獅子は由香里を見上げる。己を、本当の自信を手に入れた彼女の眼は、希望に満ちていた。獅子は目を伏せる。ナイチンゲールもそのそばに跪き、そっと獅子の手を取る。
「ねえ、タナトスと……約束したの。希望を、可能性を」
 その名に、獅子は僅かに反応を見せる。ナイチンゲールは獅子に顔を上げさせると、静かに説き伏せる。
「結論である前に、貴方は可能性をくれた。貴方は私の希望なんだ。死ぬ以外に出来る事探そうよ。死なないでよ! 一緒に考えよう? 人と愚神、王の事。もっと違うやり方、きっと見つかるよ」
 ややあって、彼はふと溜め息を吐いた。目を開くと、ナイチンゲールの手を振りほどき、周囲の融和派を見渡す。
「君達の想いに免じて、一つ知見を授けよう」
 獅子は立ち上がる。雲間から差す光が、彼の金毛を照らす。
「世界の一区域における瞬間の光景と、その瞬間におけるライヴスの分布、濃度、活性度その他は対応関係にある。故に、ライヴスの運動を見れば、未来を観測する事が出来る」
「……プリセンサー」
 夕は呟く。詳しい原理の解明が進まぬままに、経験則と帰納法で世界が頼り続けてきた特殊な能力。獅子は頷く。
「そうだ。そして君達は知っている。ライヴスは人間の持つ意志によって増幅し、あるいは減縮する。形を容易に変え得るものだと」
「要するに、人類の意志が……この世界の未来を決めてる、って言いたいの?」
 ナイチンゲールが獅子を見上げて尋ねると、彼は静かに頷いた。
「そうだ。そして君達は他者より強い霊力を有している。個々人のレベルですら、その影響は無視しがたい。故に、君達には望むと望まざるとに関わらず、高貴さに義務を強制される」
 杏子は言葉に詰まる。何と答えるべきかが分からない。獅子はそんな彼女を横目で暫し眺めていたが、おもむろに一歩前へと踏み出す。
「すぐには理解できないか? だが――」
 不意に獅子はナイチンゲールの肩を掴み、脇へと放った。突然の事に反応しきれず、ナイチンゲールは仲間達ごと甲板に突き倒される。

 刹那、血塗られた氷槍がヘイシズの心臓を貫いた。

「後は己で理解しろ」
 致命傷を負ってもなお平然としていた。力強い足取りで、六花に向け歩み寄っていく。
「君達にも一つの視座を与えようじゃないか」
 六花は凍り付いた視線を向けたまま、二本目の槍を取り出し、その脇腹を貫いた。獅子は崩れ、その場に膝をつく。
「……この世に存在する唯一無二の善は“生の希求”ただ一つ。それが“存在する”という事だからだ。しかしそれを満たす為の行為は全てが悪だ。肉の世界に生きる限り、一体誰が他の存在を脅かす事無く生きていける?」
 立ち尽くす六花を見上げて尋ねた。獅子の霊力が薄れ、その体毛から金色が抜け落ちていく。口から血を流しながら、獅子は周囲のエージェントを見渡す。
「故に、あらゆる者を救う聖人も、快楽の為人を殺す殺人鬼も本質は変わらん。片方は万人が正義と認める悪であり、片方は万人に糾弾される悪というだけだ」
 獅子の限界を悟ったリリアは素早く駆け寄り、獅子を背中から踏み倒す。その姿を正宗は写真に収める。彼らは何としても、自らが愚神を討ち取った証が欲しかった。獅子は虚ろな眼で、独り言のように呟く。
「復讐だろうと、快楽の為だろうが、ただ私に屈辱を与えたかろうが、そんなものは人類にとってはどうだっていい事だ。世界にとっては興味がない。……だから、私が君達に問う」

「君達は一体、この世界と人類の未来に、何を齎すつもりだ?」

 リリア達が獅子のたてがみを斬り落とそうとした瞬間、獅子の身体は黒い砂となる。砂の塊を踏み抜いた彼らはよろけた。砂は霊力へ変わり、宙へと融けていく。

 善意という名の悪意で世界を掻き回した愚神の最期だった。

●希望は何処
「かくて獅子は死んだ……と」
『彼は獣の王だった。けれど扱ったのは炎じゃなくて時間』
「まるで兎みたいに」
 護衛艦に乗り込んだアリスは薄らと、忌々しげに呟く。時計を持った白い兎。イメージするだけで胸が悪くなる。Aliceは潮風に靡く赤髪を押さえ、ぽつりと呟いた。
『……本当の獣の王様は、どこにいるのかな』

「とりあえず、今回の事件はこれで終わりなのかな」
 美里は、彼方をじっと見つめる。動力を失い無力化された空母カレウチェが漂っている。フリゲート艦のようにずらりと並べられたAGWの砲門が、空母に狙いを定めている。
「(自分が何をするつもりなのか、か)」
 自分は空っぽだと思い続けてきた。生きる意味が欲しいと思ってきた。獅子に投げかけられた問いを、美里は静かに思い悩んでいた。

『未来は人類の意志について厳格……というわけですか』
 サピアは手元の魔導書を捲る。ひたすら繰り返した凄惨で屈辱的な人生。これもまた意志の顕れという事なのか。いずれにせよ、それをそれとして受け入れてしまった超人には関係のない事だったが。
「人類がこの世界に絶望していたら、愚神を倒してもその絶望に背中を刺される。僕達が世界に絶望していたら、愚神になってこの世界を壊してしまう。あの愚神はどっちもだった。……僕達は、どうなる?」
 静かに謳う神の駒。彼は、普段以上に宙の遥か彼方へ思いを馳せていた。

「ヘイシズさんは、杏樹の先生なの。ヘイシズさんの意志、杏樹が引き継ぎます」
『(……お前を殺すか生かすかでも仲間の意見が割れた。お前の言う事が本当なら、こうして争いは続くんだろう。だが、お嬢の戯言を実現するために、俺も未来を見続ける)』
 沈む空母を見つめ、杏樹は獅子へ祈りを捧げる。隣で煙草を物憂げに吸いながら、守は腕時計の針を見つめるのだった。

『Requiem aeternam dona eis, Domine: et lux perpetua luceat eis…』
 禮は黒々とした海を見つめ、両手を胸元において静かに歌う。鎮魂歌だ。その隣で、藍はスキットルの口を切り、海へと酒を注ぐ。
「何が好きかは知らないが……まあ飲んでくれ」
 藍も胸に片手を当てる。彼にとっては、冥福を祈るに値する、誉れ高き戦士達であった。

『これで、ヘイシズのたてがみをさらさらにしてやるけいかくも、すべてみずのあわか。せっかくここまでもってきたというのにな』
 少し離れたところで、シキ(aa0890hero001)は藍が酒を注ぐのを見ていた。シキもトリートメントの瓶の蓋を切り、中身を海へと空ける。ぼんやりと夕はその後ろ姿を眺めていた。
「(あなたたちとも生きたかった、のにな)」
 やりきれなさを抱えながら、夕は帰還の途に就くのだった。

「まさか砂になって消えてしまうとはな……」
『私達を騙しておきながら、いざ自分がやられる段になると逃げだすなんて』
 正宗とSは剃刀を見つめる。獅子を弑した後は、出来る限りの手段で屈辱を与えてやるつもりだった。人類を騙した報いとして。しかし、彼らの手元に残ったのは獅子を足蹴にした写真だけだった。リリアは写真を見つめて溜め息を吐く。
「これじゃあ証明になりきらないかも」
『じゃあまだ戦うしかないだろうな……まあこれからの戦いで邪魔が入る事は無いだろう』
 気が休まる暇も無く、新たな敵の襲来を告げる報せがニュースには流れていた。敵は極悪非道のテロリスト。今度こそ味方をしようとする寝ぼけた奴が現れる事は無いだろう。

「結局、ヘイシズという愚神は何をしたかったのでしょうか」
『元の世界では宰相だったんだろう。……道化師にでもなりたかったんじゃないか。彼の行動は、誰にとっても利益になり、誰にとっても不利益じゃないか』
 風の音を聞きながら、蕾菜はふと呟く。艦橋の壁にもたれ掛かり、風架はいつものように眠たげな顔をする。彼は獅子の思惑になど興味はなかった。
 過去の者達にとっての未来。今のこの世界を守れるなら、それで十分だった。

『やれやれ。獅子に頼んだのは失敗だったか』
 ナラカは甲板に座り込んで呟く。その隣で、影俐は仰向けになって空を眺めていた。応急手当は受けたが、リンクバーストの反動で、ろくすっぽ動けない。
「そもそも氷鏡の邪英化をあいつは止めていた。もしお前を“そう”するなら、今頃氷鏡も邪英になっていたはずだろうな」
『まあ、この程度の事で私は諦めぬよ。人間の意志の輝きがこの世を左右するというなら、なおさらな』
 ナラカと影俐は共に宙を見つめる。樹氷のような箒に跨った六花が飛び回っていた。

「……まただ。結局、どんな愚神も敵として死んでる……!」
 失意のままに天を仰ぎ、紗希は呻く。
『絆を結ぶべき相手は、他に……か』
 カイは自分の掌を見つめる。自分もまた外から来た存在。自分が生きていた世界がここではないどこかにある筈なのだ。そしてそこには。
『同じように、愚神や王に脅かされてる、別の世界の“人間”がいる、か……』
 テトラはカイの呟きを横で聞いていた。顔を顰め、テトラは空母に砲撃を撃ち込み続けるエージェントの様子を眺めていた。
『奴が言ったところの愚神の運命から人間を解放するには、とっとと王を引き寄せて殺すしかないんだろうな』
 杏子は眼を閉じ、組み立て続けた予測に改めて思いを巡らせる。
「王を倒す為には、愚神を倒し続けてこの世界に誘き出す必要がある……確かにこれなら王は来るだろうけど、本当に方法はそれだけなんだろうか」
 彼女は知人を通じて、ケイゴの研究の中には今のワープゲートを拡張して異世界にも辿り着ける方法がある事を示唆する情報も含まれていた事を聞いていた。
「ケイゴが愚神を召喚するのに使ったっていう“異世界ワープ”、あれをもし実用化出来たなら、王の存在する世界に乗り込めるんじゃないか?」
「王の存在する世界に乗り込む……」
 紗希も杏子の言葉に耳を傾けていた。王を叩いてしまえれば、獅子の言っていたような世界は永遠に訪れる事は無いだろう。しかし紗希には気がかりがあった。
「(王を倒した時、それとリンクしてる愚神はどうなるんだろう……)」
『つうか、海に落っことした奴ら、どうなった……?』

『……流石に、もう流されてしまったんじゃないかしら』
 リンクバーストの影響でろくに戦える状態ではないのに、六花は再びアルヴィナと共鳴して海辺を飛び回っていた。カイがどさくさに紛れて突き落とした数体の従魔を探し続けているのである。
「許すわけに……いかないから。愚神は、一匹残らず、殺さなきゃ」
 霊力が僅かに歪む。アルヴィナは黙したまま六花を見守っていたが、内心の焦燥感は拭えない。
『(このままではいけないわ。このままだと、あの獅子が懸念した通りになってしまうかもしれない……)』

「あくまでこれは応急処置です。ひとまず戻ったら絶対安静にしてください」
 クレアは賢者の欠片を耿太郎の口に含ませる。怪我自体は手当てしたが、バーストの影響でライヴスそのものが弱っていた。
「……あ、ありがとうございます、っす」
「例には及ばないです」
 クレアは静かに頭を下げると、船内の鎮圧に向かっていた仲間達に治療を施す為に船内へと向かう。道すがら、海の彼方を見つめてリリアンは溜め息を吐く。
『まさか四人もリンクバーストする人が出るなんて』
「誰一人バーストクラッシュを起こさなかったのは僥倖だった」
『これも、意志の結果という事なのでしょうか』
「さあな。あの獅子が居なくなった今、いよいよ誰にも分かり得ない事だろう」
 クレア達を見送り、日々輝は安堵の溜め息を洩らす。ひとまず友人は無事であった。しかし、結局言葉を尽くす間もなく獅子は死んでしまった。
「満足のいく勝ち……とは言えなかったかもね」
「ヘイシズ……俺達の事を庇おうとしたっすよね」
 獅子に纏めて突き飛ばされた瞬間の事が耿太郎の脳裏を過ぎる。咄嗟の事で、何も出来なかった。アークは耿太郎の怪我の様子を確かめながら、呟く。
『彼が“我々”を救いたいというのは、どうやら本気だったのかもしれないな。だからあの日の戦いで邪英化を避け、この戦いでも……』
『余計な世話だぜ。どうせなら英雄としてこっちに来て、一緒に戦ってくれりゃあ良かったのによ』
 グワルウェンは吐き捨てる。甲板に敷いた毛布に寝転び、身を丸める。何もかもを諦めてしまったような彼の態度は、どうにも気に入らなかった。

『世界と人類に何を齎すか、らしいが』
 シェンはちらりとリィェンの横顔を見る。甲板に胡坐をかいて、彼は大剣の手入れを続けていた。その眼に迷いは全くない。
「何と言われようが俺のやる事は一つだ。許しちゃいけない悪の首をぶった切ってやるだけ。余計なもんまで背負って難しく考えるより、シンプルにやるのが丁度いい」
『そうじゃな。戦いでない事は他に任せても良かろう。それこそ会長あたりにな』
「……ああ」
 自分なりのヒーローを目指し、リィェンは今日も刃を研ぎ澄ませる。

『逝ってしまったな』
 飯綱はぽつりと言う。どれほど鍛え上げたリンカーでも、肉片さえ残らなかったであろう一撃。獅子は誰も巻き込むことなく、孤独にそれを引き受けた。
「そうね。……結局、彼は最後まで善意で私達と対峙していたのかしら」
 碧色の髪が風に揺れる。手すりを強く握り、由香里は頬を引き締める。
「先に進む事を諦めない。……啖呵を切ったからには、成し遂げないとね」

 初春と稲荷姫は船首に立ち、小瓶を目の前に掲げて見つめていた。砂となった獅子の亡骸が一掴み、霊石の欠片と共に収められている。
「すみませぬの、ヘイシズ殿。ですが、この世界はあなたの世界の二の舞には我らがさせませぬじゃ。ですから、根の国より見ていて下され、我等の戦いを」
『これからどうなっていくかのう。未来とやらは』
「絶望を除く事と希望を与える事は同義ではない。希望を名乗るにいかばかりの事を為すべきか、考えねばならんな」

 空母の甲板が真っ二つに割れ、いよいよ沈もうとする。ジーヤはそれを眺めながら、ぼんやりと獅子の言葉を思い出していた。
「未来は人類の意志に左右される、か」
『つまり、意志無く生きていれば、未来は周囲に与えられるしかないって事よねぇ』
「……そうだね。俺は与えられる未来じゃなく、自分で選択した未来を見たい」
 ジーヤは幻想蝶を握りしめる。彼の霊力に反応し、澄み切った光を放った。
「自分がどうしたいのか、しっかり見据えていないと」

「平和な世界を平和と呼べるのは、必ずそれが破壊されてる部分があるからなんだ」
『悲しい話をするのですね。この世界に完全な平和は訪れないという事ですか』
 龍華の呟きに、ノアは口を尖らせる。片方の海原ではイルカが呑気に飛び跳ね、もう片方では空母が燃えながら沈んでいく。龍華は目を伏せて身を縮めた。
「俺はそれが怖い。でも、怖いからこそ願うんだよ。……平和であることを」

「とりあえず、決着か……」
『これからが大変だろう。彼、こっそりとマガツヒがどうのと言っていたし』
「気が休まらないなぁ」
 マガツヒ。秩序と平穏をこれでもかと重んじたヘイシズとは真逆。破壊と混沌をとことん好むテロリスト。紅音は伸びをすると、艦橋にもたれ掛かって空を仰ぐ。
「……でも、何とかやってかないとね。それでアタシ達の明るい未来が引き寄せられるっていうなら」

「此度の害獣は除かれた。この先二度とこのような姑息な真似を取ろうとする愚神は現れないだろう」
 上司へ向けた報告書を手早く取りまとめながら、サーラは呟く。幻想蝶の中から、オブイエクトは静かに付け足した。
『まだまだ懸念が除かれたわけではないですけどね』

『厄介な事になったな。奴の言う事が本当なら、お前の目指す道は尚更の事難しくなっただろう。……それでもまだ諦めないつもりか』
 包帯だらけにされているナイチンゲールを見下ろし、墓場鳥は淡々と尋ねる。ナイチンゲールは頑なに頬を固くして、空母の沈んだ海をじっと睨みつけていた。
「……あのライオンは、王の下僕になり果てた愚神じゃなくて、同じように愚神に脅かされてる別世界の人間と仲良くしろって言うんでしょ。……それじゃ愚神は救えない。……だから私は諦めない。あいつのお節介な筋書きに乗せられるなんて、嫌だから」

「誰かの脚本は演じない」
 欄干に手を突いて薙は空を見上げる。曇天の空を貫くように、光り輝く天使の梯子が降りていた。薙は虚空を見つめ、獅子に向かって言い放った。
「僕は、僕を生きる」



 Fin.

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • ひとひらの想い
    零月 蕾菜aa0058
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
  • 共に歩みだす
    魂置 薙aa1688
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
  • ハートを君に
    GーYAaa2289
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
  • 希望の格率
    君島 耿太郎aa4682
  • 鎮魂の巫女
    天城 初春aa5268

重体一覧

参加者

  • 藤の華
    泉 杏樹aa0045
    人間|18才|女性|生命
  • Black coat
    榊 守aa0045hero001
    英雄|38才|男性|バト
  • ひとひらの想い
    零月 蕾菜aa0058
    人間|18才|女性|防御
  • 堕落せし者
    十三月 風架aa0058hero001
    英雄|19才|?|ソフィ
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
    人間|22才|男性|攻撃
  • 義の拳姫
    イン・シェンaa0208hero001
    英雄|26才|女性|ドレ
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
    人間|16才|女性|命中
  • アサルト
    カイ アルブレヒツベルガーaa0339hero001
    英雄|35才|男性|ドレ
  • エージェント
    十影夕aa0890
    機械|19才|男性|命中
  • エージェント
    シキaa0890hero001
    英雄|7才|?|ジャ
  • 死を殺す者
    クレア・マクミランaa1631
    人間|28才|女性|生命
  • ドクターノーブル
    リリアン・レッドフォードaa1631hero001
    英雄|29才|女性|バト
  • 紅の炎
    アリスaa1651
    人間|14才|女性|攻撃
  • 双極『黒紅』
    Aliceaa1651hero001
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • 共に歩みだす
    魂置 薙aa1688
    機械|18才|男性|生命
  • 温もりはそばに
    エル・ル・アヴィシニアaa1688hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • 狐は見守る、その行く先を
    飯綱比売命aa1855hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • ハートを君に
    GーYAaa2289
    機械|18才|男性|攻撃
  • ハートを貴方に
    まほらまaa2289hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • 家族とのひと時
    リリア・クラウンaa3674
    人間|18才|女性|攻撃
  • 歪んだ狂気を砕きし刃
    伊集院 翼aa3674hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • Be the Hope
    杏子aa4344
    人間|64才|女性|生命
  • トラペゾヘドロン
    テトラaa4344hero001
    英雄|10才|?|カオ
  • Iris
    伴 日々輝aa4591
    人間|19才|男性|生命
  • Sun flower
    グワルウェンaa4591hero001
    英雄|25才|男性|ドレ
  • 希望の格率
    君島 耿太郎aa4682
    人間|17才|男性|防御
  • 革命の意志
    アークトゥルスaa4682hero001
    英雄|22才|男性|ブレ
  • 明日に希望を
    ナイチンゲールaa4840
    機械|20才|女性|攻撃
  • 【能】となる者
    墓場鳥aa4840hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969
    獣人|11才|女性|攻撃
  • シベリアの女神
    アルヴィナ・ヴェラスネーシュカaa4969hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • さーイエロー
    サーラ・アートネットaa4973
    機械|16才|女性|攻撃
  • エージェント
    オブイエクト266試作型機aa4973hero002
    英雄|67才|?|ジャ
  • 愛するべき人の為の灯火
    御剣 正宗aa5043
    人間|22才|?|攻撃
  • 共に進む永久の契り
    CODENAME-Saa5043hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • オーバーテンション
    沢木美里aa5126
    人間|17才|女性|生命



  • エージェント
    恋條 紅音aa5141
    人間|18才|女性|防御
  • エージェント
    ヴィクター・M・メルキオールaa5141hero001
    英雄|27才|男性|ブレ
  • 閉じたゆりかごの破壊者
    紀伊 龍華aa5198
    人間|20才|男性|防御
  • 一つの漂着点を見た者
    ノア ノット ハウンドaa5198hero001
    英雄|15才|女性|ブレ
  • 鎮魂の巫女
    天城 初春aa5268
    獣人|6才|女性|回避
  • 天より降り立つ龍狐
    辰宮 稲荷姫aa5268hero002
    英雄|9才|女性|シャド
  • エージェント
    聴 ノスリaa5623
    獣人|19才|男性|攻撃
  • 同胞の果てに救いあれ
    サピアaa5623hero001
    英雄|24才|女性|カオ
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