本部

【いつか】New Deal

影絵 企我

形態
ショートEX
難易度
易しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2019/04/06 00:29

掲示板

オープニング

●ラサラスのヘイシズ
 H.O.P.E.本部。洋上に構築された異世界用ワープゲートから姿を現した“ラサラスのヘイシズ”は、船に揺られ、飛行機に乗り、数名の供廻りと共に姿を見せた。仁科恭佳から報告を受けていた会長秘書は、部下と共に彼らを丁重に出迎えた。好き勝手暴れてばかりの、怪物のような闖入者達が跋扈する中、彼らは初めての“訪問者”なのである。
 会合は間もなく始まった。そしてヘイシズは知る事になるのである。愚神としてこの世界で彼が為した所業の全てを。

「なるほど。私の夢は……真であったという事ですか。本当に申し訳ない事をしてしまったようだ」
 ヘイシズは深々と秘書へ向かって頭を下げる。彼は慌ててヘイシズをとりなした。
「顔を上げてください。貴方はまだその未来を歩んではいない。貴方が謝る事ではないでしょう」
「いえ。貴方達の歩みの中に、私が為したことは事実として刻まれている。ならば、それはやはり私の責任ということになるでしょう」
 獅子は早速くたびれた顔になっていた。この一時間だけでも相当な心労を重ねてしまったらしい。それでも彼は顔を上げ、姿勢を正して秘書に堂々と向かい合う。
「その上で、さらにこちらから要求を重ねてしまうのは誠に心苦しいのですが……。可能ならば、こちらの戦いを支援して頂きたい。お仲間から話が通っているかもしれませんが、愚神の攻撃が近年頓に激化し、政をやる者の間にも多数の死者を出している状況なのです。白狼騎士団長にしてテリオン大司教のヴォルクも、厳密にはその1人」
 獅子は秘書の背後に立つヴォルクを見遣った。彼はこの世界の英雄。決してヘイシズの同志として戦ってきた人望溢れる聖職者と同一の人物ではないのである。沈痛な面持ちで、獅子は続けた。
「このままでは戦いを凌げても、戦後の復興が立ち行かなくなる。この世界で私が語ったという顛末も、秩序が喪失した事による不安が一挙に能力者へ向けられた事が原因でしょう」
 眉間に皺が寄っていく。髭が震え、金色のたてがみもふわりと膨らんでいた。
「我々の技術力はこちらの世界と比べてはるかに劣っている。……口惜しい話ですが、現状でこちらから出来る事は何もない。虫のいい願い出であるとはこちらも重々承知しております。しかし、我らが世界を守るためには形振りなど構っておれんのです。……せめて、その知恵だけでもお貸しいただけないだろうか」
 再びヘイシズは頭を下げた。鋭い牙を下へ向けて降伏、恭順の態度を示す。それは日本のお辞儀と奇しくも同じ姿勢だった。
 秘書はそっと手を伸ばし、その肩を叩く。
「顔を上げてください」
 秘書は真っ直ぐヘイシズの眼を見据えると、小さく微笑んだ。
「もちろん、前向きに検討させて頂きます。我々としても、貴方達の世界を救う事が出来るのなら、それは願っても無いことですので」
「……真ですか」
「勿論。とはいえ、今すぐ出立、というわけにも行きません。作戦に参加するメンバー、拠出する武器その他について、まず此方で検討させて下さい」
 その言葉を聞いた瞬間、ヘイシズの眉間に刻まれていた深い皺がふっと緩んだ。口元を緩め、彼もその眼に慶びの色を浮かべた。
「御厚意に感謝いたします」
「お互い様ですよ。……さて、せっかくですから、それをただ待っているよりも、少し物見遊山に向かわれてはいかがですか。この地球にも、見るべきものは沢山ありますから」
「承知致した。……私も、この世界を一目見た時から妙に惹かれるものがあったのです」

●そうだ京都行こう
「ノーブルやい、何だってこんな妙ちきりんな格好しなきゃなんねえんだよ?」
 京都駅ホーム。ちらちらと周囲を伺いながら狐は唸る。九曜紋の紋付羽織に袴まで履かせられ、彼は渋い顔をしていた。同じく和装を堂々と着こなし、獅子はさらりと応えた。
「『郷に入っては郷に従え』だ。この服装がこの国の伝統的な装いだという」
「なーんて言ったって、そんな格好してるやつどこにもいねえじゃねーかよ!」
 狐は吠えた。彼の言う通り、コテコテの和装をしている人間などどこにも居ない。むしろ彼らを見やってヒソヒソしているような者達ばかりである。眼を見開いてうーうー言っている狐を見て、獅子はついにからからと笑いだす。
「そんなに激することでもあるまい。普段着に具合が良く似ていて、むしろ過ごしやすいと私は思うがね。ついでだ。これでも被ったらどうだね」
 そう言ってヘイシズが被せたのは、ちょんまげのカツラ。狐は髷を掴んで投げ捨て、いよいよ牙と爪を剥き出す。
「バーカ野郎! 舐めやがって! ここであの時の決着つけてやろうか!?」
『何を騒いでいるのだ、ルナール』
 そこへ、白装束に身を包んだヴォルクがやってくる。三角になった目をぎろりと向け、狐は口角泡を飛ばした。
「うっせえイザングラン! 何でてめえはいつも通りの格好なんだよ!」
『私はこの世界でもう10年暮らしている。十分この世界の住人であると言えよう』
「くっそがぁ……」
 狐は唸りながら毛皮を掻く。ヘイシズはその肩をぽんぽんと叩いた。
「いい加減機嫌を直せ。フシミイナリとか言う所に行こうじゃないか。そこでは狐が神様としてまつられているらしいぞ。良かったな」
「なんだよ。ここぞとばかりに言いたい放題言いやがって」
 三人がいかにも仲良さそうにしているところへ、貴方達は次々駅のホームを通ってやってきた。エージェントとして、訪問者を京都でもてなす事になったのである。獅子は君達の顔を見て微笑み、軽く会釈してみせた。
「ありがとう。では……行こうか」

解説

目標 ヘイシズ達と京都観光しよう

☆“ノーブル”ヘイシズ
 ライカン王国の宰相。“大陸共鳴”を説いて愚神との戦争を遂行したが、戦後処理に失敗。大戦を戦い抜いた英雄達が権力闘争に巻き込まれる地獄の中で親友や部下を全て失い、失意の中で王の旗下に降った。
●ステータス
 ブレイブナイト(70/40) 指揮S 武力B 知略A 政治A 人望A

☆“ルナール”ライネケ
 フクス傭兵団を率いる流れの騎士。義の為の戦いと嘯いてしばしばフェーデ行為の代行などを行っていたが、ヘイシズに鎮圧されて恭順、以降は愚神との戦いに身を投じていた。戦後の騒乱においては、その出自の為冷遇され、やがて行方をくらましたという。
●ステータス
 シャドウルーカー(60/40) 指揮B 武力C 知略S 政治D 人望C

☆“イザングラン”ヴォルク
 最大の修道騎士団“白狼騎士団”の団長にしてテリオン大司教。ヘイシズの“大陸共鳴”策は、愚神に対して常に先陣を切り果敢に戦う彼の人望によって果たされていた。しかし、大戦末期の激しい戦闘の中、彼は籠城戦の末戦死する。彼の死が、ヘイシズ達の世界の行く末に深い影を落とす事になってしまった。
●ステータス
 ブラックボックスLv45 指揮A 武力S 知略B 政治B 人望S

開始地点
・京都のどこか(プレイングに応じて決めます)

日程
・一日~二日(プレイングに応じますがこれ以上長くはなりません)

TIPS
・行く場所を増やし過ぎると描写しきれません。相談などで三、四程度に絞る事を推奨します。
・修学旅行で行くような寺社仏閣やら見せてあげると喜ぶ。
・食事処に連れていくのもあり。別に肉しか食べないわけではない。
・基本は京都市内でお願いします。天橋立とか見に行ってもいいですけども。
・旅費はH.O.P.E.が出します。
・ヘイシズは君達との交流の中で、異世界同士の大連邦の成立について考え始めるでしょう。

リプレイ

●今度こそ
 改札口から世良 杏奈(aa3447)が飛び出す。今年で齢は37だが、まだまだ彼女は若々しい。
「ルナール! 私の事覚えてないー?」
 突撃してきた杏奈に、狐は思わず身構える。彼にとっては見知らぬ人間なのだ。
「おい、いきなり何だお前!?」
「その服似合ってるじゃない! むしろ見慣れてる感あるし♪」
 杏奈は携帯を取り出すと、カメラを構えて和装の狐を撮り始める。狐はヒゲをひくつかせる。
「何してんだ」
「再会の記念よ! ほら見て!」
 狐に寄り添うと、杏奈は一杯に右手を突き出す。携帯の画面に狐と杏奈の姿が映っていた。見た狐は思わず仰け反る。
「何だこれ!? 俺が映ってる……」
「こっちの世界ではこうして写真を撮るのよ。ほら、これで撮れるの」
「はあん。写し絵か。こっちじゃ一時間は当たり前にじっとしてなきゃいけないもんだったが……」
 テンションマックスの杏奈に続いて、イリス・レイバルド(aa0124)とアイリス(aa0124hero001)がやってきた。ホームの天窓から降り注ぐ太陽を浴び、イリスは小さく眼を細めた。穏やかな顔であるが、内心少しそわそわしている。
「流れとか、そんな感じでこの観光参加したけど……」
『私達も京都なんて全然知らないね。いや困ったな』
 アイリスはふふと笑う。全く困っているようには見えないが、京都を何も知らないには違いなかった。
「案内とか出来ないよね……」
『ここはもう、開き直って護衛という事にするか。それとも……』
「それとも?」
 何か腹案がありそうな姉さん。イリスはその顔をじっと見つめる。
『更に開き直って私達も観光するかだね』
 しかし、口から出てきたのは単なる現状追認であった。
『うん、観光案内ではなく、観光だ』
「……普段から戦うかレコーディングするか森で過ごすくらいしかしていないからね……」
 イリスはとっぷりと溜め息を吐く。幸い、次回のアルバムに備えて和風の音楽と踊りは勉強していた。何かもてなし事が必要になったら、それを披露すればいい。ひとまずそう腹を括る事にした。
 イリスはアイリスに向かって頷きかけると、そっとヘイシズの前へと歩み寄る。
「ヘイシズ……さん?」
「お初にお目にかかる。そちらの名は何というのです?」
「イリス・レイバルド。こっちは姉のアイリスです」
 金毛の時点で見てくれは全然違うが、かつて散々世界を騒がせた獅子が眼の前に居ると、やはり妙な感覚に陥る。
『私達はあの騒動の時もかなり蚊帳の外だったからねえ……』
 アイリスは黄金の翅をパタパタさせる。これでも、呼び方をどうしたものか考え込んでいた。それを汲み取ったのか、獅子は僅かに眉を開いた。
「ヘイシズという呼び名に違和感があるのなら、“ノーブル”と呼んでいただきたい。そことそこは私のことをそう呼ぶので」
「ノーブル……ですか」
「そうだ。“杓子定規”のノーブルだ」
「貴様の自由主義が過ぎるだけであろうが」
 再び睨み合う狐と獅子。そこへ歩み寄ってくるのは、雪紋様の白い振袖を纏った氷鏡 六花(aa4969)と、いつもの羽衣姿なアルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001)。狐と獅子を眺めて、アルヴィナはくすりと笑みを浮かべた。
『二人とも、似合ってるわよ。紋付羽織』
「今日は、宜しくお願いします。」
 不機嫌そうな顔のまま向き直った狐。袖をひらりとさせた六花を頭の先から見渡して、軽く鼻を鳴らした。
「ふーん。やーっと似たような格好の奴が来たな」
「二人だけ、和装じゃ……不釣り合いかなと思って。私も、和装に……してみました。女性だと、こんな感じ……なんですよ」
 くるりと回って背中の帯まで、全身の姿を披露する六花。狐は肩を竦めた。
「なるほどなぁ……だがしかし、隣は随分な格好だな。俺らでもそれは恥ずかしい格好だって分かるぜ?」
 狐はアルヴィナを見つめた。道行くスケベ男達と違い、性的感動の無いただひたすらに怪訝な目だ。しかし、それでもアルヴィナの心が揺るぐ事は無かった。
『着込むと暑いんだもの。隠すべきところは隠しているのだから、何か問題あるかしら?』
 狐は閉口する。隣をちらりと見遣ると、六花はもう諦めきった顔をしていた。彼は肩を落とす。
「……わかった。悪かったよ。俺が悪かった」
 しょんぼりしている狐の横に、ヴァイオレット メタボリック(aa0584)――本名はマリア・サクラ・アグア・ミサが車椅子でやってきた。六花の着物姿を眺め、マリアは笑みを浮かべる。
「いやあ、当に晴れ姿だべなぁ、六花や。やはり雪が映えるだよ」
『六花、綺麗になったねぇ。行ってしまったばっちゃの言う通りにさ』
 フローラ メタボリック(aa0584hero002)を褒めちぎる。頬を染め、つつましやかに照れている彼女を、なお一層老婆は褒めたたえた。
「いやあ、六花、美しいだぁ。振袖のお陰で尚更だべな」
「……ふふ。ありがとうございます」

 彼らがそんなやり取りをしている間に、別のホームから桜小路 國光(aa4046)とメテオバイザー(aa4046hero001)が姿を現す。時計をちらりと見ながら、彼は思わず苦笑する。
「今日の予定……全部断っちゃったんだなぁ……」
『あとで奥様に呆れられても知りませんよ?』
「もうしっかりと怒られたよ」
 特別講義で京都の大学に出張したのが今日の事。今日は出張先の教授以下を交えての懇親会や食事会があるはずだった。しかし、この物見遊山に親友が参加すると知り、全てを秘書の妻に任せてきてしまったのである。それを頼んだ時の顔はしばらく忘れないだろう。
『おや、國光にメテオじゃないか』
 二人に気付いたクローソー(aa0045hero002)がぷらりと手を振る。泉 杏樹(aa0045)も振り向いて、しずしずと頭を下げた。
「お久しぶりです。國光さん、メテオさん」
「ええ、お久しぶりです。リオ・ベルデには米国へ飛ぶたびに行きたいと思うんですけれど……中々予定が合わなくて。すみません」
 國光が頭を下げると、杏樹も合わせるように再び頭を下げた。
「大丈夫です。國光さんがお忙しい事はメテオさんからよく聞いてます。メテオさんも、前回、杏樹の衣装も作ってくださって、ありがとです。今度のライブにも着る予定なの」
『良かったです。曲のイメージに合わせて頑張りましたから……本当に、杏樹さんにお仕事の話を貰った時はびっくりしたのですよ』
「刺繍の個展がとっても綺麗で、是非に、と思っていたのですよ」
 10年の時が経ち、杏樹は歌手として、メテオは刺繍作家として大成しつつある。道は違えど、芸事の道に生きる者として、今も誼を結んでいた。そんな二人の笑みを見守り、クロトはほんの僅かに口元を緩めた。
『リオ・ベルデは大変だが、その分生きる事への強い思いを感じる良い国だ。杏樹達が第二の故郷と決めた土地、クロトにとっても帰るべき家だ。……今も、かの国は進化を続けている。是非目の当たりにしてほしい』
「ええ。いつか時間を作って、必ず行きたいと思います。その時はお願いしますね」

 一方、また別の角度から獅子達を遠巻きに見つめていたのが、君島 耿太郎(aa4682)とアークトゥルス(aa4682hero001)であった。酒やそのお供を詰め込んだ鞄を肩に掛けた二人は、穏やかな笑みを浮かべていた。
「一度は失くしたと思っても、こうやって取り戻せることもあるんっすね」
『やはり我等の未来はまだまだ未知なわけだ。まったく、悪くないな』
「本当に、冒険のしがいがあるっす」
 準備までは僅かな時間だったが、その間に出来る限り京都の知識は詰め込んできた。万全である。

 GーYA(aa2289)とまほらま(aa2289hero001)は、獅子達から眼を離し、道行く人々を見つめていた。
「10年か……色々と忘れるには微妙な頃合いかな」
『金色だから別人に見えるのが救いかしらねぇ』
 H.O.P.E.の諸々が手を回し、表向きには“ノーブル”という人物が来た事になっている。彼が世を騒がせた獅子と同一人物であるとは、誰も気づいていないようだ。
「10年経って、こういう形でこいつらを迎え入れる事になったのも、何の因果かね」
『創作でいうところの、“やり直し”が叶った世界だと思えば、納得もできますわ』
 赤城 龍哉(aa0090)とヴァルトラウテ(aa0090hero001)も、ジーヤ達の傍で獅子や狐の姿を見守っていた。あたかも死地から蘇ったように見える彼らを眺め、死者を導く立場のヴァルは神妙な顔をしている。
「……あながち違うとも言いきれんからな、それも」
 恭佳は、どの異世界にも同じような時間が流れているわけではないのだと語った。王の撃破が、この世界からすれば既に過去であるはずの、ヘイシズ達の戦いにも変化を与えたことがその証左だとも。龍哉はイメージプロジェクターで偽った作務衣の襟を整えると、颯爽と獅子達の下へ歩み寄った。
「よう、獅子殿。今日はよろしく頼む」
「此方こそ、この地を観光する機会を頂けて、幸甚の至りです」
 龍哉は獅子と手を取る。愚神として現れたかの存在は、ちらと見るだけでも信用に値しないと確信したが、タダの人間として現れたこの獅子は、中々に慇懃な男だ。
「まあ、なんだ。会見での話は色々聞かせて貰ったが、“あんた”が気に病む事は何もないし、この先も“そう”なる事は無いように、俺達が手を貸す」
『今日は是非楽しんで頂きたいですわ』
 獅子は再び頭を下げた。龍哉は懐から手帳を取り出し、スケジュールをじっと見つめた。
「ま、色々見ようと思うと時間が足りねぇからな。とりあえず2か所は確定として、後は流れで行こう」

 かくしてエージェント達が集う中、不機嫌な顔をしながら最後に現れたのが、八朔暮葉――八朔 カゲリ(aa0098)の娘である。夜刀神 久遠(aa0098hero002)を従えて、彼女はむっとした顔で京都駅のホームを見渡していた。
「……こんな事してる暇なんてないのに」
『言いましたでしょう? 時には気を休めねば。張り詰め続ければ糸も切れるというものですよ』
「……わかってるけどさ」
『それに今となっては、私達も白狼騎士団の末席に身を置くわけでして』
 くどくどくどくど。久遠の説教は山奥に流れるせせらぎの如くとめどない。暮葉は耳を塞ぎ、肘で久遠の腰回りをどついた。
「ああもう! いいでしょ! もうこうやって来てるんだから!」
 唸った暮葉は、最後にパタパタと獅子達の前へと駆け寄っていく。
「三人とも、京都観光にようこそ。折角なんだから、楽しんで行ってよね」
 つっけんどんな口調も、年端のいかぬ少女が言えば可愛らしい。獣人達は顔を見合わせ、ふっと眉根を緩めた。追いついた久遠が、スカートの裾を摘まんでぺこりと頭を下げる。
『ちなみに、姫様に案内役など、如何か期待なさらぬよう』
「久遠?」
 暮葉はむっとして久遠を見上げる。久遠はクスリと笑いながら付け足した。
『御三方と観光が出来ると、楽しみにしていたようですし』
「久遠!」
 いよいよ真っ赤になる暮葉。ヘイシズは微笑むと、彼女の前に跪き、視線を合わせた。
「ああ。私も楽しみにしていたよ」

●清水の舞台から
 清水寺。由緒正しき寺院であると共に、京都では一、二を争う有名な観光スポットだ。特に旅行日和のシーズンではないのに、色々な国からの観光客でごった返している。獅子は杏樹と共に、舞台の上からじっと桜を見渡していた。
「なるほど。これは良い景色ですな」
「とても折りの良いタイミングでした。桜の花は、すぐに散ってしまうので」
「折々の美……というわけですか」
 風が吹き、桜の花弁が舞う。獅子は手をそっと伸ばすと、その中から一枚をそっと掴み取った。老練さのどこか奥に、少年のような純粋さを秘めた瞳。杏樹は扇を取り出し、そんな彼を見つめた。
「あの時もここで、舞を披露したのです。御覧になられますか?」
「舞ですか。……ええ、是非お見せいただきたい」
 折よく風が流れ始める。杏樹はそれに合わせて、静かに舞い始めた。名うての舞姫の踊りを目の当たりにして、過ぎゆく観光客達もぽつりぽつりと足を止める。
(一期一会……今日とあの日は似てるようで、全く違うのですね)
 扇の陰から、杏樹はちらりとヘイシズの表情を窺う。彼の表情にあの時のような影はなく、純粋にこの世界の文化を楽しんでいるように見えた。
 傍では、右手で顎をさすりながら白狼がじっと彼女の様子を窺っていた。左手は何やら算盤を弾くような手をしている。
『なるほど、舞、京都……今度正式に企画してみる価値はありそうだ』
『たまに思うのだが……イザングラン、私の弟分に負けず劣らずの守銭奴ではないか?』
 クロトはそんな彼の横顔を、間近でじいっと窺う。ヴォルクはこくりと頷いた。
『清貧に叛くと言われようと、聖戦の為には先立つものが必要だからな。この世界でも同じ事だ。H.O.P.E.の芸能課がこれから正しく全世界的に活動するというのなら、より多くの利益を得ることが必要となるだろう』
『ふむ……』
 周囲から天然だのなんだのと言われてきたクロトであったが、この狼もなかなかであると、今まさに再確認していた。

 白狼とクロトのやり取りをよそに、イリスとアイリスは狐へと歩み寄っていく。彼は纏わりつく子ども達を必死に追い払っていた。
「きつねさんだー」
「うるせっ! 寄ってくんな!」
 彼の邪険な態度を警戒し、駆け寄った親達が子どもを連れてさっさといなくなっていく。アイリスはそんな様子を見て肩を竦めた。
『気に入られているのに、もったいないものだね、ルナール』
「俺はガキが嫌いなんだよ。何しでかすかわかんねえから」
 腕組みし、狐は厳めしい顔して首を振る。イリスとアイリスは目配せしあい、再び狐に向き直った。
「ルナールさん……って呼ぶのも不思議な具合だね」
「どうでも呼べばいいだろ。それに俺の本名はライネケだからな」
『ま、多少なりとも縁があるからね。その頃の君と比べると、どうにも風変わりな印象なのだよ。だから、どういう人柄なのか知るためにも、交流させてもらいたいのさ』
「勝手にしろ」
 尻尾をピンと立て、ぶっきらぼうに言い放つ。イリスはにやりと笑い、カメラを天に突きあげた。
「お、言ったね。じゃあ、みんな集まれー! お稲荷さんと記念撮影できるよー!」
 叫んだ瞬間、小さな子供からノリノリの学生たちまでやってくる。狐は歯を剥きだした。
「おい! 何でそうなるんだよ!」
「同郷の人達とで馴染むのもありかもだけど。今後、異世界とどう手を結んでいくかという事のモデルケースのようなものでもあるからね」
『悪いが、そちらにも一歩踏み出す勇気を持ってもらうよ』
 カメラまで構えられて、若者達に挟み込まれて、もう逃げられない。
「わかったよ、くそっ……おい尻尾触ったの誰だ、シメるぞ後で!」
 威嚇はするが、数の暴力には敵わない。結局狐は肩を落とし、子ども達の中心でカメラを睨んだ。アイリスは笑みを浮かべ、そんな狐の傍へと歩み寄る。
『なぁに、世界は広いさ。もっと面白い出会いが飽きるほどあるとも』
「ようこそ地球へ。広い世界、たくさんの国、まずはここが玄関だよ」
 ぱちりと一つ音がする。ルナールの新しい歩みが、また一つこの世界に刻まれたのだった。

●こんこん稲荷
 清水寺を後にして、次にエージェント達一行が向かったのは伏見稲荷大社であった。本殿を前にして祀られている狐二柱を見渡し、暮葉はぴょんぴょん跳ねながらライネケの腕を引く。
「ライネケ! ほらライネケが祀られてるよ、ねえライネケ!」
 三人に邂逅してから数日、生真面目で思索に耽りがちなヘイシズやヴォルクよりも、飾らないライネケの事を暮葉はいたく気に入ったらしい。10歳の少女らしい笑みで彼を見上げていた。ライネケはどうにもつれない態度だが。
「やめてくれ、恥ずかしいからさぁ! あと服が皺になるっての!」
「えー? あ、稲荷寿司とか食べる? さっきそこのお店で買ってきたんだよねー」
 久遠が袋から取り出したパックを受け取ると、中から黄金色の稲荷寿司を取り出し狐へ突き出す。
「んだよ、何だそのしわくちゃ……」
 文句たらたらで口を開けたその隙に、暮葉はその口へ稲荷寿司を放り込む。反射的に狐は口を動かし呑み込んだ。彼は眼を丸くする。
「って、何だこれ。……甘じょっぱいこの味付け……今まで食った事ねえ」
「ふふふふ。やはり狐は稲荷寿司の魅力に抗えないのね。まだまだあるから」
 暮葉はしたり顔で狐を見上げる。不満だらけの顔はどこへやら、彼は夢中で稲荷寿司を摘まんでいた。すっかり餌付けされている。
「くそっ。向こうの飯は胡椒食ってんのか塩食ってんのか分かんねえような飯ばっかりだってのに……」
 耳が垂れ、尻尾がゆらゆら揺れている。狐よりも犬みたいな顔をしている彼へ、龍哉とヴァルは歩み寄っていく。
「おいおい、すっかり気に入ったらしいな」
 肩を竦めた龍哉に、狐は再び眉間へ皺を寄せて振り返った。その手には二つ目のパックが乗っている。
「何だよお前……もご。さっきから……俺の事ばっかり、もぐ。じろじろ、見やがって。確かに俺は……もご。……傭兵だけどよ、こっちのやくざな奴らと手を組んだりは……もぐ。しねえって」
 抗議する間にも、稲荷寿司はすごい勢いで減っていく。迫力もへったくれもない。龍哉はにやにやを隠せないまま頭を下げた。
「ああ、気に障ったなら悪かった。どうしても俺の記憶にある奴と比べちまうもんでな」
『全然違うようですけどね。……まあ、様々な変遷を経る前と後では違って当たり前ですわ』
 ヴァルは溜め息を吐く。二つ目のパックを空にして、ようやく狐はシリアスモードに戻った。パックを久遠に押し付けつつ、しかめっ面で腕組みをした。
「愚神になった俺か。……まあお似合いだろうな。俺みたいな奴は英雄になれねえさ。どんな奴だった」
『“あなた”、の話をするのであれば、どこか空っぽの眼をして、いつも自分というものを探し求めておりましたわ。私達とはその過程で何度も刃を向け合いましたもの』
 ヴァルは顎に手をやりつつ、狐の顔を窺う。彼はバツの悪そうな顔をすると、毛皮を爪で掻く。
「んだよ。俺までノーブルやイザングランみたいな奴になっちまったのか。やだやだ。絶対そんな奴にはなりたくないね。狐は世を斜めに見てなんぼだぜ」
「なるほど。あのルナールとは全然違う奴らしいな」
 べっと舌を出した狐。あのルナールなら、こんな顔をする事は無いだろう。不思議な気分にも浸りながら、龍哉は改めて本殿を見遣った。
「話は変わるが……こういう“稲荷”って名のつく神社はな、狐が稲を鼠から守るからって事で狐が祀られてたらしいぜ。お前はどうだったんだ? これからの為に参考にしておきたい」
 龍哉がじっと狐を見つめてやると、今度は難しい顔をした。明後日の方に目を向け、彼は声を潜める。
「別にロクなもんじゃねえよ。親が小競り合いに負けて家が無くなっちまったから、昔からの仲間を連れて遊び回ってただけさ。最近はあいつが仲間ごと食わせてくれるから、まあ仕事してやってるってだけだよ」
 狐は獅子を顎でしゃくる。彼は仲間達の群れから離れて立つ、國光の傍へと歩み寄っていた。

「貴公は仲間達とは交わらぬのですか」
 獅子が國光に問うと、彼は静かに首を振った。
「いえ……そういうわけではありませんが。私は警護の一人と思って、皆様と京都をお楽しみ頂きたく」
「……ではせめて、その名だけでもお聞かせ願いたい」
 獅子の口調は穏やかだったが、眼は真剣そのものだった。國光はそっと会釈する。
「桜小路國光です。私が貴方と直接に対峙した事はありませんが……こうして貴方と向き合うと、感慨深い気持ちにはなりますね」
「何故です?」
「そうですね……別の未来を辿った、もう一人の貴方と交渉する機会がありまして。その席に出向いたのは私の親友でした」
 今は法曹界で生き馬の目を抜く活躍をしている親友。今も若々しい彼の姿を思い浮かべながら、國光は境内に祀られたお稲荷様を見つめる。
「彼は貴方の力を認めた上で、交渉の席に着く全員が無事に戻れるように頭を痛め、手を尽くしていたのをよく覚えています」
 歯に衣着せぬ言葉遣いから誤解を生む事はあれど、彼は常に仲間の命を一心に考えている。國光はそれを知っていた。
 そしてそれは、獅子も同じだった。
「何となく、その夢ばかりははっきりとしております。よほど貴公は、その御友人を大切に思われているらしい。貴公の言葉を聞いているうちに、その彼の表情さえも、手に取るように思い出せる。……朋友とは掛け替えのないものです。是非大切にしていただきたい」
「言われるまでもなく、そうするつもりです」
 彼の言葉に、國光は恭しく頷いた。

 一方、杏奈は手を組んで作った穴から覗き込み、狐をじっと見つめていた。
「化生の者か魔性の者か、正体を現わせ!」
「何だよそれ」
「狐の窓よ。昔からあやかしを覗く為に使った術なの。ルナールも覗いたら、何か不思議なものが視えるかもねー?」
 じっと見つめてくる杏奈に向かって、狐はワンと一言吠える。
「俺はやらねーぞ。あほくさい」
「えー?」
 つれない狐に、杏奈は小さく口を尖らせるのだった。

●御霊を鎮めて
 そんなこんなで楽しみつつ、伏見稲荷を離れたエージェント達が訪れたのは御霊神社であった。泉杏樹たっての希望で、この物静かなスポットが選ばれる事になったのである。

 神社への参詣を済ませ、暮葉は白狼に寄り添った。少女は彫像のように佇む彼の横顔をじっと窺う。
「御霊って考え方、ヴォルクは知ってる?」
『魂と似たような考え方……であるとはわかるが』
「まあ、近いんだけどさ。御霊って、怨霊や荒魂を祀って鎮めて、平穏を願う信仰なんだって」
 ヴォルクは眼を瞬かせ、暮葉へちらりと目を向けた。父譲りの容姿、父譲りのある種豪胆な精神を受け継ぎつつも、その瞳には、少女らしい豊かな感受性も宿していた。
「愚神も何れ御霊に……なるかは知らないけど。いつか必ず、あの世界に平穏を齎さないとね。団長」
『ああ。君の未来には期待をしている』
 仏頂面のまま、彼はそっと暮葉の頭を撫でた。

 一方、ヘイシズと共に神社の全景を見渡しながら、ジーヤはおもむろに語り掛けていた。
「転移後の世界を見た時、実はホッとしたんです。王に滅ぼされた剣の世界で見たのは、突き立てられた無数の剣の墓標だった。俺達の世界では、人が黒い柱に変えられた。その世界を見る事になるんじゃないかって、思ってましたから」
「……戦いの顛末については教えてくれましたな。……まあいずれ、そのような事態が起こる事そのものは避けられぬでしょうから、如何にその時に対応するかが肝要という事になりましょう」
 彼は厳しい顔をしている。この社に祀られている荒魂の意志を感じ取っているかのようだ。まほらまは獅子の鋭い目を見上げた。
『愚神になった貴方も、人間を理解しようとしていたわ。今と同じく』
「だから、絆を結べるだろう相手として言葉を重ねたいと言いました。でも、撥ね退けられてしまった。絆を結ぶべき相手は他にいる、自分で見出せ、教えてやる義理はないと言われましてね」
 結局黒獅子は死に、最後の戦いは始まってしまった。そして、勝った。
(彼の生き様は、俺達リンカーに沢山の課題を突き付けた。だからこそ、王に勝てたのかもしれない)
 愚神としての彼が事実として語った、宰相としての彼が危惧している事象は、この世界でも十分に起こり得ることだった。ジーヤは胸の中で改めて確かめる。
「絆を結ぶ相手とは、貴方の事かもしれない。その為にも、貴方の世界を変える手伝いをさせてほしい」
「……私が私と手を結べなどとはよもや言いますまいが……しかし、光栄な事です」
 彼はしずしずと面を下げると、杏樹に呼ばれて彼の目の前を立ち去った。その背中を見送り、まほらまはちらりとジーヤに耳打ちする。
『“彼”には、この未来が見えていたのかしらね』
「……わからない。けど、見えていたとしてもおかしくないんじゃないかな……」

 杏樹は、そっと獅子を境内の中の一点に立たせた。真っ直ぐに向かい合い、杏樹は獅子を見上げる。
「杏樹は、ここで力を持つ者が如何にあるべきか、教えていただいたの。あの時からずっと、ヘイシズさんは、杏樹の先生です。敵味方に分かれても、それは同じ、でした。杏樹がリオ・ベルデの復興に尽力するのも、ヘイシズさんの影響なの。ヘイシズさんが、愚神としてこちらに来たのも、確かに意味がありました」
 ポーチから、杏樹は小さな懐中時計を取り出す。広げた獅子の掌に、彼女はそっと時計を乗せた。
「これは機械時計か……また、随分と小さく作られておりますな」
「信頼の証です。これからも杏樹の先生でいてください、なの。世界を超え、手を取り、共にいい国や世界を、作っていけたら嬉しいの」
「まるで政治をする者のような言い方ではないですか」
 杏樹はこくりと頷いた。
「はい。いつか将来、歌手を引退したら、政治家になるつもりです。リオ・ベルデの為に。政治家としてのヘイシズさんに、色々と教えてもらいたいと思っています」
「承った。こんな私で良ければ、是非」

 二人のやり取りを一頻り見守っていた龍哉は、腕時計に眼を落とす。既に日は高く上り、中々いい時間となりつつあった。
「それで、次は何処を見て回る?」
「はいはい! 私にいい考えがありますよ!」
 そこで真っ先に杏奈が手を挙げる。彼女には、是非にと思う場所があった。

●新たなる縁の為
 そんなわけで、獣人達を引き連れ、杏奈がやってきたのは、これまた小ぶりな神社であった。
「じゃーん! ここが安井金比羅宮です!」
 杏奈は参道の脇に立ち、両腕を広げて獅子達を迎えた。獅子は興味深そうにやはり木組みの建築はどうのこうのと呟いていたが、隣で狐は境内に置かれた碑に気付いたらしい。彼は毛をわっと膨らませ、歯を剥き出しにして碑を指差す。
「なあ、何だよあの、想念に満ち満ちた恐ろしい塊は」
「ふうん。今のルナールもそういうのは何となく感じるのね。なら話は早い! あれは縁切り縁結び碑と言って、悪縁を断ち切り良縁を結ぶ力があると信じられている大岩よ」
「大岩っつっても、一面紙っぺらに覆われてねえか、あれ」
「そりゃそうよ。みんながお参りしてお祈りしているんだもの」
「つまるところは、それほどに効力があると信じられている……というわけですかな」
 合点がいったように獅子が呟くと、杏奈もこくりと頷いた。
「そういう事です。皆さんも、かつて辿った終末からの縁切りを、ここで願いませんか?」
 獅子と狼、狐は顔を合わせる。
『縁を切るも何も、私はもう英雄としての私しか存在し得ぬからな』
「ここは代表して私がやるべきところかもしれんが、あの大きさの穴では、私の肩がつっかえそうでならん。いや、恐らくそうなるだろうな」
「え? 何? 俺がやれって? 本気か?」
 狐は思わず顔を顰める。尻尾を巻いて、どうにもしゃっきりしない態度だ。杏奈はそんな狐の手を固く握り締めた。
「ええ。是非やるべきよ!」
「……へえへえ。分かったよ」
 杏奈に導かれるがまま、エージェントも獣人達も、恭しく参拝を行う。形代を受け取った狐は未だに渋い顔をしていたが、素直に岩をくぐった。丁寧に形代も貼り付けている。
「そう。最後にもう一度本殿にお参りして、祈祷はおしまいです」
「この世界もこの世界で、けったいな事するんだなぁ」
 羽織に付いた土埃を払いつつ、狐は髭をだらりと下げた。杏奈は狐の手を引きながら応える。
「ここはパワースポットというより、術場なんです。昔、とある術師が施した究極の縁切りの術を、誰でも行えるマイルドなものにしたのが今の作法……なんだと思いますよ」

 二人の後について歩きつつ、暮葉はたかたかと獅子へ駆け寄った。
「そう言えば……清水寺で桜を見てたけど、宰相って、花は好き?」
「時折々の草花を眺めて物思いに耽る……ということは少なからずあるとも。私の国は少々乾燥した土地柄だから、あのように見事に咲き誇る桜というものは見たこともないがね」
 待ってましたとばかりに、そこへ耿太郎とアークが歩み寄る。
「それなら、もっとじっくり見ていきませんか」
『清水寺よりも、もっと身近に桜を見られる場所を知っている。そこならば腰を下ろして話も出来る』
 二人の半ば熱心な眼差しに、獅子は思わず頷いた。
「……なるほど。それならば、共に参らせて頂きたい」

●静心なく
 そんなわけで、彼らがやってきたのは円山公園。貸し出されたゴザを敷き、調達してきた食糧を広げ、エージェント達は散り行く桜を見上げながら盃を傾けていた。

 そんな酒の席で、真っ先にヘイシズを捕まえたのがアークだった。彼はほんのり頬を朱に染めて、他では仲間に譲った分全力で喋り倒していた。
『……というのが、今回巡った神社の由来だ。生活とあまりに密接に結びついたが故に、宗教というものへの自覚も薄い。この世界においても珍しいくらいだな』
「なるほど」
 ヘイシズが止めもせず興味津々に聞くものだから、アークはどんどん盛り上がっていく。耿太郎は溜め息を吐き、傍にあったぶどうジュースを紙コップに流し込む。
『耿太郎、これは酒なのか?』
「ええ。酒っすよ。王様。存分に楽しんでください」
『そうか。で、近年の研究だとまた面白いことが判明したようなのだが……』
 このまま王を図に乗らせるといよいよ止まらなくなる。危機を敏感に感じ取った耿太郎は、粛々とアークの制御に取り掛かるのだった。
「大変なようですな」
「本当に」
 獅子に耳打ちされ、耿太郎はこくりと頷いた。そんな彼の背後にフローラがすたすたと歩み寄り、その肩をむずと掴んだ。獅子はたてがみを膨らませる。
「むっ!? ……なんだ、君だったのか」
『ごめんなさい。さっきからばあさんがあなたをこっちに呼べこっちに呼べってうるさくて。来てもらっていいですか?』
「ああ、それは構わんが……」
 中々強引な態度に、獅子は思わず肩を竦める。遠くでは、老婆が杖を振り上げていた。
「こーれー! 賓客に粗相のないようにせよというたべ!」
『うるさいなぁ! ね、だから来てくださいよ』
「わかった。……申し訳ない。失礼する」
 獅子は恭しく頭を下げると、フローラに手を引かれながらその場を立ち去った。
『そうか……残念な事だ』
 物惜しそうにしている彼の前に、龍哉とヴァルがどさりと腰を下ろす。
「そんなら俺と話そうぜ」
『共にこの先の戦いへ臨む身ですもの。その前に互いの事を知っておくべきですわ』
『ああ、是非頼む』
 再び語りだしたアークを見遣り、耿太郎はぽつりと溜め息を吐いた。
「だいじょうぶっすかね……」

 席を横切る獅子を見遣りつつ、ジーヤとまほらまは杏奈と一緒におつまみを載せた皿を囲んでいた。
「今度は子供達と一緒に来ようか」
『秋の京都も良さそうねぇ』
「本当に仲が良さそうね、お二人とも」
「いやいや、そっちこそ」
 ジーヤは酒を注ぎ注がれつつ、まほらまとともに杏奈の眼をじっと見つめた。
「世良家にはお世話になりっぱなしだね。小隊を組んでた時も、異世界に行って助けてもらった時も……ありがとう。これからもよろしく」
「ええ、もちろん!」

「ここだね」
『ああ。我々が活躍できるのはここだ』
 我が世の春とばかり、イリスとアイリスはエージェントの前へ飛び出す。イリスはその手に竪琴を持ち、アイリスは翅に何かの粉をまぶしている。シンガーソングライター系アイドルは、竪琴に翅を鳴らし始めた。ござに足を投げ出した狐が、じっと二人を見つめる。
「それがこの世界の音楽なのか?」
『まあ、私達のは特殊な方だがね』
 森の妖精姉妹は頷き合うと、優雅に演奏を始めた。和楽器ではないが、アイリスの翅もイリスのオカリナも、和楽のリズムを守って典雅な響きを奏でている。狐は眼を閉じ、小さく耳をひく付かせた。
「はあん。中々いいもんだな」

 一方、フローラに連れてこられたヘイシズは、のっそりとその場に胡坐をかいた。酒瓶を構えた六花を前に、彼は恭しく頭を下げる。その姿はむしろ武士のようにさえ見える。
「すまないが、正座はどうにも我々の骨身にとって合わぬ座り方のようだ」
「……構わないですよ。この場は無礼講なんですから」
 漆塗りの盃を獅子に取らせ、六花はそっと酒を注ぐ。
「清水寺でも見ましたが……こうして下から見上げるのも、また趣があるでしょう? ここでこうしてお酒を飲むのが、この国の倣いのようなものなんですよ」
「なるほど。……ふむ。向こうで酒と言えばビールかワインかというものでしたが……これはまた香りが違いますな」
 獅子が感想を洩らす横で、マリアは注がれた酒を飲み干し嘆息していた。
「ええ、酒だな……。何とも素朴な味わいだけれど、この味を忘れはしないだよ」
 この老婆にとって、孫代わりの娘と花の下で酒を飲むというのは、一つの夢のようなものだった。はらりと舞う花弁を見つめて、老婆は口元の皺を引き延ばす。
「心待ちにしていただよ、この日を」
 マリアは両腕で酒瓶を抱え、娘の盃に酒を注ぐ。六花はそっと盃を傾けた後、じっと獅子を見つめた。
「……憶えてます? “貴方”の仲間だった……愚神、雪娘を」
 盃の酒を少し舐め、獅子は顔を顰める。
「あくまで夢としてですがね。……私個人としては、忌むべき事をしたと思うばかりです」
 空気が、少し重くなりかかる。きょろきょろと見渡したフローラは、いきなりヘイシズの目の前に乗り出していく。その手に握った瓶から、遠慮なく酒を注いでいく。
『ほらほら、飲め飲め。そんなむつかしい顔してたら、折角の良い酒がマズくなっちゃうでしょ?』
「これ、フローラ。彼は賓客であるぞ。粗相をするな」
 マリアはむっと眉間に皺を寄せる。しかしフローラはお構いなしだ。マリアの盃にもついでに注ぐ。
『楽しんでもらえなかったらもっとよくないと思うよ、あたしは。って事で、ほらほら』
「これ……六花に注いで貰おうと思っとったんに……」
 深々溜め息を吐くと、仕方なしにマリアは盃を空ける。とっぷりと、胸の奥から息を吐き出すと、老婆はヘイシズへと目を向けた。
「オラは、日系の血がうっすら流れていての。この桜とは違うがサクラの名前が入って居る」
「ふむ……」
「まあ、それは関係ないだども……」
 老婆は溜め息を吐くと、酒瓶を取ってヘイシズの盃に注ぐ。
「ヘイシズ殿、この子は強い子だぁ、脆い面もあるけんども、やり遂げてしまうくらいにの」
「私もそれなりに歳を重ねて参りました故、彼女の強さというものは、何となく感じ取っております」
 ヘイシズは酒を飲みながら、恭しく応えた。老婆は何度も頷きつつ、盃に映る己をじっと見つめた。
「じゃから心配でもあるんじゃが……けれど送り出すつもりだ。止める理由など無いのぢゃから」
「送り出す……とは?」
「ええと、その……」
 六花が口ごもると、マリアは首を振った。
「もうお主は立派になった。ご両親もきっと鼻が高いと思うだよ。お二人にはオラから伝えておくから、ヘイシズの世界へ渡って、存分に戦うのがええだ」
 獅子は合点がいったらしい。背筋を伸ばして六花を見据えた。
「信じとるだよ。お主は強い子だってなぁ。弱い面もあるけんども、ちゃあんと乗り越えていく。英雄も居るし、信じているだよ」
 六花はアルヴィナへちらりと目を遣る。アルヴィナも力強く頷いて見せた。
「お行き。おぬしの心が命じるままにすればよい」
 マリアの言葉を受けて、遂に六花の心は固まった。彼女は獅子に向き直ると、彼の眼を見据えた。
「……私も行きます。貴方達の世界へ。全ての世界の愚神を……一人残らず、王の呪縛から……悪夢から解き放つのが……私の務めだと、思ってます……ので」
 盃を手にしたまま、獅子は眉を寄せて六花を見つめ返した。
「この、絶対零度の氷雪の霊力……きっと、貴方達の役に立てると……思います」
 六花は幻想蝶を手に取る。暗闇の日々の中にある、最も昏い一瞬。痛みに支配された感覚以外に最早思い出せるものはないが、確かに一度、六花はこの幻想蝶を黒く染め抜きかけたのだ。
「愚神だった“貴方”に……私は、邪英化から……救われました。その借りを……返す意味も込めて。お願いです。貴方達の力に……ならせてください」
「なるほど、そのような事もありましたか。……ええ。そちらから請われるまでもなく、貴方ほどの実力を持つ御方には、ぜひ力を貸していただきたいと思っていたところで――」
「ただ」
 獅子の言葉を半ば遮るように、六花は獅子へと詰め寄った。
「気をつけてくださいね。“貴方”の話が真実だったなら……本当の脅威は……貴方の世界から、愚神を全て駆逐した、その後にこそ……訪れます」
 今度は洋上での戦いを思い出していた。本性を現したと見える敵の首魁を前にしても、ただ止めを刺すという結論に達する事すら困難を極めていたのである。
「人間同士の不和。嘗て“貴方”の『共宴』という策が、この世界に大きな亀裂を齎したように」
 獅子は静かに目を伏せた。口を僅かに開き、盃から器用に酒を流し込んでいく。
「勿論、その可能性は常々考えているところです。今のうちから、将来目指すべき世界の形は模索せねばと。敵を失った世界が、恒久に平和を享受できるような世界の形を」
「わかりました。……では、一緒に掴みましょう。貴方達が……愚神に堕ちずに済む未来を。今度こそ……本当の『共宴』を始めましょう」
 二人は掲げた盃の淵を、そっと触れ合わせた。

●未来の彼方へ
 京都府郊外のとあるホテル。物見遊山を一通り楽しんだ獣人達とエージェントは、H.O.P.E.本部からの返事を待つために、一日宿を取る事になった。彼らは和食に舌鼓を打ちつつ、温泉に浸かりと、誰もが穏やかな時間を過ごすのであった。

 夜。國光は電話を耳に当てていた。スピーカーから微かに洩れるのは妻の声。
[……大丈夫ですよ。ちゃんと挨拶回りは私が済ませておきました]
「ありがとう。ごめん、いきなり無理言って……」
[任せてくださいよー。それが私の仕事なんですから]
 友人の頃から数えれば、もう10年余りの付き合い。彼女の声は頼もしかった。
[あーでも、ありがたいとおもうなら、なにか労って欲しいですね。大変だったんで]
「わかったよ。前行けなかったお香屋さん、明日こそ行こうか」
[おお、言ってみるもんですね。楽しみにしてますから]
 電話が切れる。ほっと息を吐くと、國光はバルコニーから外を見つめる相棒の横顔を見つめる。異世界からの訪問者達の姿を見ていた彼女の顔を、ふと思い出す。
「……いいんだよ?」
『え?』
 そんなメテオの願いを、國光は知っていた。大切な相棒だからこそ、その背中を押したいと思った。
「なんだったら、誓約を解除したって構わない」
 しばらく目を瞬かせていた彼女だったが、やがて小さく首を振った。
『いえ……今はまだ、時期尚早かと』
 メテオは頭の後ろに手を回すと、簪をそっと抜き取った。いつか、國光と京都に行った時に買ったもの。まだまだ、絆が切れるべき時ではない。
『彼らの世界は、私のいた世界ではないでしょうから』
 簪を掲げ、彼女は夜空に輝く星々を見つめた。この星空は、まだまだ見つめ続ける事になるだろう。
『長旅は、サクラコが人生を全うした後にでも考えます』
 胸から下げたペンダントを手に取り、蓋を開く。國光やその妻と共に写った写真が中に収まっていた。
『奥様と、これから出来るご子息ご息女の事も思うと、私もおちおち長旅とはいきませんから』
「……そうだね。それじゃあ、そろそろお暇しようか」

 所変わって、装いを整えたジーヤとまほらまは、地下一階のバーへ共に足を踏み入れようとしているところだった。
「いらっしゃいませ。お二人様ですか」
 カウンターのバーテンが二人に声を掛ける。ジーヤはカウンターを指差す。その白く美しい毛並みは、最早探すまでも無い。
「そこの狼頭の人と一緒です」
 狼頭。耳を引く付かせたヴォルクは、二人の方に振り返った。
『ジーヤとまほらまではないか。夫婦そろって、夜酒でも嗜みに来られたか』
『ええ。そんなところかしらねぇ。でも、せっかくだし、ご相伴に与からせて貰おうかしら』
 ぼんやりした顔のまま、クロトはまほらまの笑みを眺める。表情には乏しいが、その指先は愉しそうにリズムを刻んでいた。
『クロトは一向に構わんぞ。ヴォルクも問題ないだろう?』
『大した話もしていないからな』
 カウンターに腰掛けると、二人は手早く注文を終える。バーテンがシェイカーを振る音を聞きながら、まほらまはヴォルクの横顔を眺めた。
『異世界への遠征部隊には、ヴォルクさんも参加されるのかしら?』
『そのつもりでいる。あくまで神輿として……ではあるがな』
「どういう事です?」
 ヴォルクは口を開き、グラスから酒を流し込む。
『芸能課の要人である誓約相手を外に連れ出すわけにはいかんからな。私は一人で赴き、故に後方指揮に集中するつもりだ』
『そしてその間、芸能課に空いた穴は私が守る予定だ』
 煙管を片手に、クロトが小さく手を挙げる。カクテルを受け取りつつ、ジーヤは親指で自らを指した。
「なら、俺達が前線に立とう。白狼騎士団の正式な一員としてね」
『ほう』
 ジーヤとまほらまは既に腹を括っていた。今更驚かれるような事でもない。
「まあ、俺は神に頼るようなことはしないけどね。それでもよければ」
『もとより白狼騎士団とはそういうものだ。神の教えに従う子等を守るべく、神の刃として戦うのであり、我らが神を頼り、試みる事など、決してあってはならない。是非歓迎させてもらう』
 理想郷で得た縁と絆こそが希望。その希望を、異世界にもつなげていく。彼の奮闘は、今まさに新たなステージへ至ろうとしていた。
「そういう事だ。これからもっと忙しくなりそうだぞ。まほらま」
『貴方や子どもと一緒に歩む道ならば、望むところよ』

 一方、耿太郎とアークは、二人でのんびり話でもしようと、静まった浴場の中を歩いていた。浴場奥の扉を開き、まさに露天風呂へ出ようとした時、耿太郎はそこにいた者を見て目を丸くする。
「……どうして」
 ヘイシズが座っていた。毛並みは漆黒に染まっている。まるで、愚神の時のそれと同じように。アークがじっと様子を窺っていると、やがて獅子は彼らの方に振り向く。彼は金の瞳を丸くし、小さく吠えた。
「おっと、これは申し訳ない」
 その眼が青に戻った瞬間、彼の毛並みに金色が戻った。耿太郎はほっと息を吐き、露天風呂に足を踏み入れる。
「どうなってるんです?」
「私は時見の術を使う。その時は全身のライヴスを眼に集めるから、どうしてもこうなるのです」
『……愚神のヘイシズは、常にその術を使い続けていたのか。愚神となってより強化されたものを』
 熱い湯に身を沈めながら、アークはじっとりと濡れたその金毛を見つめる。爪で軽く毛繕いしつつ、ヘイシズは頷いた。
「黒い獅子だったというのであれば、恐らくそうなのでしょうな」
『それで、何を見ていたんだ?』
「未来を。……今回は曖昧でしたが。可能性が広がり過ぎて、どう見ていいかわからんのです」
 ヘイシズは二人へ向き合うように、湯へと身を沈めた。天を仰ぎながら、彼は語り始める。
「私は思うのです。一つの世界では成し得なかった事も、これからはきっと出来るようになっていくのだと。その出会いが、いがみ合いである事は決して望ましいことではない」
 彼の青い眼は、希望に満ち溢れていた。
「異世界同士の大連邦。共に政を行い、共に法を作り、共に商いをし、共に栄える。そんな世界を私は今夢見ております。貴方達を見て思った。それは必ずや成し遂げられるし、成し遂げたいと」
 力強い言葉に、耿太郎とアークは顔を見合わせた。やがてどちらからともなく相好を崩し、応える。
「愚神の貴方に、問われた事があるんです。この世界と人類に、俺達は一体何を齎すのか、とね」
 獅子は首を傾げる。耿太郎は自信満々に応えた。
「その答えは、やっぱり“希望”でいいんだろうなって思うんですよね」
『我々も可能な限り力を貸したい。国の事もありましょうが、是非尽力していただきたいものです』
「ええ。よろしくお願い致します」
 次々頭を下げあう三人。一頻りそんなやり取りを続けた後、耿太郎は隣の相棒を見遣った。
「というわけで、まだまだ頑張らなきゃいけないみたいなんで、これからもよろしくっす。王さん」
『こちらこそ。さらなる冒険譚を期待している』

 深夜。暮葉はバルコニーに佇む獅子へ寄り添い、京都の夜景を眺めていた。
「ねえ、宰相。この世界の事、好きになってくれた?」
『少なくとも、私の世界も、この世界も等しく守らねばと思っている』
「そう。よかった。こっちも色々大変だからさ。そう思ってくれるに越した事は無いんだ」
 最強の闖入者は、今も手ぐすね引いて待っている。溜め息を吐きつつ、彼女は小さく微笑んだ。
「……それを抜きにしても、自分の世界を好きになってほしいって、思うし」
『きっと、皆同じように思うのだろうな。……私も、私の世界を、君達に気に入ってもらいたいと願っている』
「きっと気に入るよ。貴方達の世界の事、私達はね」



 かくして新たな時代、正しき時代を辿り始めたヘイシズ達をきっかけに、数多の世界が結び合い、発展していくことになった。王の下で一になるのではなく、数多の個が世界を作り上げていく。真の多世界時代が、今、幕を開けようとしていた。



 Fin.

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 藤の華
    泉 杏樹aa0045
    人間|18才|女性|生命
  • 大切な人へ
    クローソーaa0045hero002
    英雄|29才|女性|ブラ
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 蛇の王
    夜刀神 久遠aa0098hero002
    英雄|24才|女性|カオ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • LinkBrave
    ヴァイオレット メタボリックaa0584
    機械|65才|女性|命中
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    フローラ メタボリックaa0584hero002
    英雄|22才|女性|ジャ
  • ハートを君に
    GーYAaa2289
    機械|18才|男性|攻撃
  • ハートを貴方に
    まほらまaa2289hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命



  • きっと同じものを見て
    桜小路 國光aa4046
    人間|25才|男性|防御
  • サクラコの剣
    メテオバイザーaa4046hero001
    英雄|18才|女性|ブレ
  • 希望の格率
    君島 耿太郎aa4682
    人間|17才|男性|防御
  • 革命の意志
    アークトゥルスaa4682hero001
    英雄|22才|男性|ブレ
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969
    獣人|11才|女性|攻撃
  • シベリアの女神
    アルヴィナ・ヴェラスネーシュカaa4969hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
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