本部
手作りプレゼントを花とアナタへ

掲示板
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【相談卓】
最終発言2017/05/27 22:30:54 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/05/28 21:05:37
オープニング
●伝えたい想い
ホワイトデー、誕生日、日頃の感謝、母の日、父の日。
様々な行事がある中で、エージェント達は日々依頼でタイミングを逃す者は少なからずとも居る。
ティリア・マーティスもその一人だ。
「何か、皆様にお礼をしたいですわね」
自室で『プレゼント特集!』と書かれた雑誌を手に、ティリアはハーッとため息を吐いた。
『そうね……最先端は特殊な加工をした生花とかどう?』
「でも、女性から男性に渡すモノってイメージでもありませんわね」
トリス・ファタ・モルガナの案にティリアは首を振った。
『宝石も加工が難しいわね』
と、『宝石の加工! 初級編』の本をパタンと閉じ、本棚へと戻す。
「あら? 銀細工……? どう見ても粘土にしか見えませんわ」
『あぁ、アートクレイシルバーね。良いんじゃない? 好きな様にシルバーアクセサリーが作れて、手作りのプレゼントに最適よ』
ティリアの横から覗くトリスは説明をする。
「あら、レジンとかも良いですわ」
『これも、最近流行っているから私も作りたいと思っていたのよ』
はしゃぐティリアを見て、トリスは優しい笑みを浮かべながら答えた。
「決まりましたわ! 名付けて『手作り工房体験』なんてどうでしょう?」
『そうね。ロシアでの戦いも終わり、次から次へと依頼が入り感謝の気持ちを伝えたり、好きな方に告白する場なんて作ってあげたいね』
珍しくマトモな事を言うティリアに対し、トリスはうんうんと頷いた。
「善は急げ、ですわね♪」
ティリアは、にっこりと微笑むと企画書やパンプレットを作るためにパソコンの電源をオン!
(ついでに、遅くなった誕生日でも祝ってあげたいね)
と、想いながらトリスはティリアの背中を見つめた。
●参加者募集中!
「皆様、もしよろしければ来てくださいませ」
HOPE本部のロビーにて、ティリアとトリスは朝一で本部に行き許可を貰った企画の宣伝をする。
『はい、もし興味があったら来てください』
と、トリスはアナタにチラシを差し出した。
解説
【目標】
シルバーもしくはレジンでプレゼントを作り、花と一緒に誰かに渡す。
ティリアさんのサプライズ誕生日会を開く。
【物作り】
(1)シルバー
(2)レジン
【花】
造花、ブリザーブドフラワー、生花、ポプリ、しおり
【サプライズ誕生日会】
したい方のみ、こそこそと準備してください。
【二人以上の参加】
能力者&英雄セットの二人組は『PC名(ID)』を文頭に記載して下さい。
団体の方は、共通名『例:ティリアFANの会』みたい文頭に付けて下さい。
(なるべく、フレイングの文字数を使って欲しいからです)
【お願い】
・物作りはどちらか1つしか選べません。
・花に拘りある方は花の名前を記載して下さい。
・花に詳しくなく探すのが面倒な方は、渡す相手もしくは自分を表す単語(例:勇気、美しい、親しみやすい)だけでもOKです。
私の方で合いそうな花を選ばせていただきます。
・まるっと投げられたら困りますが、半分お任せ状態はOKです。
・改めてプロポーズもしくは告白の場として参加するのでしたら、相手の方とプレイングを合わせて下さると書きやすいです。
【NPC】
うろうろしていますので、気軽にお誘いして下さい。
アキ&ハルを呼ぶことも可能です。
リプレイ
●『信頼』
本部の会議室に集まったエージェント達は、『手作りレジン編』と『手作りアートクレイシルバー編』と書かれたしおりを交互に見ていた。
「贈り物……どっちに、しよう……」
木陰 黎夜(aa0061)はうーんと唸りながらしおりを見つめている。
『早めに決めなさいね。先に構想を練っているわ』
そんな黎夜を横目に、アーテル・V・ノクス(aa0061hero001)は用意されていたスケッチブックにペンを走らせる。
「よし……レジンに、決めた……」
『それじゃ、使用する道具を選ぼうね』
「そう、だな……」
と、放しながらアーテルと黎夜はレジン制作キット等を取りに向かった。
「ベターだけど……ブローチだな……」
レジンの型や土台が沢山並んでいる中で、黎夜はシンプルな楕円形のミール皿を選んだ。
『その土台なら初心者には丁度良いと思うよ』
アーテルは、黎夜に気付かれない様にこっそりと猫型のミール皿を取る。
『色はどうするの?』
「この前見た空……キレイだったから……」
アーテルの問いに黎夜は脳裏に風景を思い出しながら呟く。
『そう、一色もしくは同系色のグラデーションは簡単だけれども』
青色とオレンジ色のレジン液を黎夜に手渡しながら話す。
「アーテルが居るから……大丈夫、だな……」
『大丈夫。失敗しても、つぅが作ってくれただけでも嬉しいのよ』
「ありがとう……アーテル……」
アーテルが笑顔で言うと、黎夜も恥ずかしそうにしながらも小さく微笑んだ。
硬化中の合間にプレゼントに添える花を選び、完成したプレゼントと一緒に並べた。
「ハルの……アーテルの目の色と、同じにしたくて……赤くて、キレイ、だから……」
黎夜が差し出したのは赤い色の台紙に『信頼』の花言葉を持つ白い『スイレン』のしおりと、『宵』と呼ばれる夜の初めを感じさせる色合いをレジンで再現したブローチだ。
『ありがとう、つぅ。私からもプレゼントね』
「え……」
アーテルは『座った猫型のキーホルダー』と『造花のブルースター』をそっと黎夜の手に乗せた。
『夜のイメージね。猫も好きでしょう?』
「うん……っ」
黎夜は鮮やかな青の猫型キーホルダーをぎゅっと握りしめながら頷いた。
『花が可愛かったから選んだの。つぅに似合うと思って』
水色で星の様な花弁の花『ブルースター』の小さな花束を持つ黎夜の姿は、掛け替えのない人だとアーテルは今よりも強く絆を感じた。
『信頼』するその手を、その心を裏切りはしないと誓いながら2人は微笑んだ。
●『足一歩分の距離』
「へぇ、凄い。こんな簡単に作れるんだね」
説明を聞いた木霊・C・リュカ(aa0068)は楽しそうに言う。
『……結構、前衛的だからな、あんたのは』
と、呆れた声色で言うオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は、リュカが作って来た作品の数々を脳裏を高速で過ぎる。
「せーちゃん達も参加するんだね」
「楽しそうなのと……ううん、何かを作るのが楽しそうなので」
紫 征四郎(aa0076)は『リュカも居るから』の言葉をぐっと呑み込んで、明るく元気な声で先ほどの言葉は言わなかった事にした。
『へぇ。銀なんざ大変そうだと思ったが、粘土で出来るんだな』
征四郎の隣でガルー・A・A(aa0076hero001)が興味津々に、見た目はただの粘土にしか見えないアートクレイシルバーが載っているしおりを見る。
「征四郎はお花で何かしたいのですよ」
沢山用意された花たちを眺めながら征四郎はカランコエを手に取る。
「色毎に意味があるからね、本音はその中にそっと隠せばいいよ」
と、花を選んでいるオリヴィエにリュカは小声で言った。
その言葉を聞いたオリヴィエは、表情に出さずに思いを心の金庫に投げ入れた。
花を選び終えた4人は、各々材料や必要な道具を受け取ると作業テーブルで作り始めた。
「ねぇねぇどうこれっ あ、ねぇ何で取り上げちゃうの……!」
リュカが楽しそうに前衛的なデザインの剣の騎士が出来上がっていたが、小さくため息を吐くとオリヴィエは粘土を取り上げた。
『いい、後は俺がやる』
リュカの様に器用ではないが、オリヴィエは前衛的な剣の騎士の造形を修正する。
「せーちゃんは達は何作ってるのかな」
オリヴィエが修正している間、手持ち無沙汰になったリュカは隣のテーブルで作業をしている征四郎達に声を掛けた。
「俺様は小指に嵌める指輪だ。確か、ピンキーリングってヤツだな」
ガルーはアートクレイシルバーを細長くし輪っかにする。
「征四郎はしおりを作っているのです」
長方形の型に少量のレジン液を入れて硬化し、押し花を入れてレンジ液を入れて押し花をレンジの中に閉じ込めた。
『お前の炎で焼ければ、完成も早そうなのに、な』
オリヴィエは、膝の上にちょこんと乗っている黒猫のオヴィンニクの耳の後ろを撫でながら言った。
遠いようで近い、近いようで遠い、そんな2組の能力者と英雄の手で作ったアクセサリーが出来上がった。
「で、どう、感想は?」
リュカが1人で作った歪な猫の形をしたストラップをオリヴィエに渡した。
『……いや、そうだな、とても嬉しい。……ありがとう、リュカ』
オリヴィエから、いや誰が見ても猫には見えないストラップを見て少し吹き出しながらもお礼を言う。
歪でもそれはリュカの想いが籠っているのが伝わった。
「出来ましたか?」
楽しそうにしている2人に征四郎が声を掛けた。
「完全オリジナルじゃないけどね」
と、言いながらリュカはオリヴィエの方に顔を向けた。
『思慮深いのはお前さんの良い所だが、少しばかり考えすぎる。世界はもっとお前に優しいし、未来は明るい、と俺様は思うよ』
ガルーはオリヴィエから貰ったシルバー製の鳥兜のストラップに白いガーベラを受け取ると、オリヴィエに優しい笑みを向けながら言った。
『……これじゃ感謝にならねぇか。いつもありがとうな』
そう言ってガルーは、オリヴィエの小さな掌に肉球の模様が付いた小さな銀のリングと反対の腕には19本の桜色の薔薇を持たせた。
「ありがとう……」
近しい仲でも何処か距離を感じる、それはガルーとオリヴィエの間だけではない。
「はい、せーちゃん」
リュカは征四郎へ、銀に輝く剣の騎士のストラップにオレンジ色のガーベラを添えて手渡す。
「ありがとうございます。征四郎は折角だから使えるものが良いと思ったのですよ。可愛くできたと思うのです」
と、言って征四郎はカランコエの押し花を差し出す。
「喜んでくれたら、嬉しいなって」
少し照れくさそうに小さく笑みを作った。
「うん、嬉しいよ。ありがとうね、せーちゃん」
いつもの様に征四郎へ向けられるリュカの笑み。
言えない言葉、手の届く距離は腕を伸ばせば簡単に触れられる。
「沢山の思い出を重ねましょう。いろんな世界を、一緒に見ましょう、リュカ」
征四郎はそっとリュカの手を両手で握り締めた。
仲間、友人等の言葉では距離なんてないのに、それ以上の感情は言えず、その距離は足一歩分しかないのに蜃気楼の幻を見ているかの様に遠くにも感じた。
それで良い。
今は、このままで思い出を胸に刻もう。
●『忘れぬアナタへ』
『ふむふむ、なかなか楽しそうですね』
構築の魔女(aa0281hero001)はトリスから貰ったパンフレットをじっくりと読む。
『お誘いいただきましたしいろいろ調べてみましょう』
パタンとパンフレットを閉じ、構築の魔女はアートクレイシルバーに関して調べた。
『ふむ、なるほど……。焼くことで銀だけが残るのですか』
ネットで動画付きの解説を見ながら重要な部分を手帳にメモする。
『粘土のように扱えるなら先にいくつか型を作って組み合わせていきましょう』
構築の魔女は、天秤・薔薇・黒狼を模した金型を作りそれを持参する事にした。
大体の道具は用意されているのを確認し、本部へと向かった。
沢山のエージェント達が居る中、構築の魔女は作業テーブルに座りデザインを考えていた。
『ううん、作るとしたらやっぱりあれでしょうか……』
手元の用紙に描かれているのは『右の皿に薔薇、左の皿に黒狼がのせられた天秤風』のデザイン。
「……――ロ」
渡す様な相手が居ない辺是 落児(aa0281)は、会議室で作業をしているエージェント達の様子をただ眺めていた。
『うまく配置して服につければ天秤のように見えるでしょう』
器用な手付きで、天秤本体・右皿と一体化した薔薇・左皿と一体化した黒狼の3点を作り上げた構築の魔女。
一体化したモノにせず『脆い部分』を作らないように配慮した結果だ。
『花、はハナミズキですね』
白い苞(ほう)が花弁の様に咲き散った後に、『がく』の中に密集している花が開花し実を成す。
『たとえ世界が変わろうとも想いは変わっていませんよ?』
と、箱に入れた銀細工に白い花弁が寄り添う姿を、その紅玉の様な瞳に映しながら呟いた。
『さて、いつかきちんと渡せるといいのですけど……ね』
構築の魔女は箱にそっと蓋を被せながら瞳を閉じた。
瞼の裏に映し出されるのは、元の世界にいた恋人の姿。
帰りたい気持ちと交差するのは、いずれ残されるであろう能力者の事。
その選択が来る時までは、構築の魔女として彼女はその知恵と力を使うのだろう。
●『スワロウがキューピッドになる!?』
『まったくもー! 好きなら好きってハッキリ言えばいいじゃないスか』
スワロウ・テイル(aa0339hero002)が腰に手を当て御童 紗希(aa0339)の顔を覗く。
「別にすきとかそんなんじゃ……」
紗希はスワロウの視線か逃げる様に顔を反らし、両手の人差し指を合わせながら小さな声で答える。
『うーそ! 兄さんが他の女と話してたらあからさまに機嫌悪いクセに! 気にしてないフリしてすっごい睨んでるクセに!』
びしっと人差し指の先を向けスワロウは力強く否定の言葉を口にした。
「そそそそんな事してないよ!」
紗希は首をぶんぶんと横に振る。
『気付いてないのは姐さんだけ~』
スワロウはリシア輝石の様な瞳を細めた。
「う~……」
そんなスワロウを紗希は頬を赤らめながら翡翠の様な瞳で睨むが。
『威嚇してもダメっス! 2年近くも一緒にいて未だにお互い距離感掴めないとかどうかしてるっスよ!』
スワロウには効いてはおらず、慣れた様子であしらいつつも目を反らして来た言葉を言われてしまった。
と、いう事があり、紗希とスワロウの2人はシルバーのペアリングを作っている。
「テイルちゃん器用だね」
綺麗な輪にし、形を整えているスワロウの手元を見て紗希は感嘆の声を出す。
「……もらってくれるかな?」
紗希は手元にあるちょっと歪な輪を見てため息を吐く。
『兄さんは姐さんからならビンタ貰っても喜んでるんだから問題ないっス』
ちら、と紗希の手元を見たスワロウは明るい声で答えた。
『ダイヤモンドの石言葉は「永遠の絆」。天然モノはいつか兄さんから貰って下さい』
まだ粘土状の指輪にダイヤの合成石を埋めながらスワロウは、隣に居る恋する乙女に言った。
これはまだ、仮なのだから『いつか』訪れるであろうその時に本物を貰えるのがベスト。
自分はただ弓の弦を引いただけ、矢は紗希自身で的は相手。
『ちゃんと自分で渡してくださいよ? でなきゃ意味ないんだから』
射って当たるかは矢次第。
「う……うん」
完成したペアリングを手に紗希は一歩前へ進む、その背中をスワロウはただ押すだけ。
そしてスワロウの手からキューピッドの矢は放たれた。
●『アナタだけを想う』
「こういうのは初めてだが、悪くないな」
麻生 遊夜(aa0452)がレジンの説明書に目を通しながら言う。
『……ん、家でも作ってみる?』
ユフォアリーヤ(aa0452hero001)は28人の子供達が喜ぶ姿を思い浮かべながら小さく首を傾げた。
「それも良いが、今は俺達の事に集中しよう」
遊夜はドックタグの形に近い長方形のミール皿を2個用意し、2つを合わせたら夜を背景に満月を中心とした番いの黒狼が向き合ってる構図を考えてきた。
持参した専用の紐にビーズを通しブレスレットにするつもりだ。
「ふむ、こんな所か……?」
遊夜は慣れた手つきでビーズのブレスレットを作り上げ、背景の部分を硬化し終えた台座に右へ向いている狼の形をした黒い用紙を置いた。
紺色の夜空に半分の月、その反対側には赤い彼岸花が描かれており『思うはあなた一人』という花言葉を込めている。
「最後に」
黒狼の目に当たる部分に小さな歯車を置き、ズレぬように注意しながらレンジ液を注ぐ。
「後は、花だな」
スッと遊夜が手にしたのはフジの造花。
花言葉は『決して離れない』。
今の2人にはぴったりの花だ。
『……ん、やっぱりこれがいい』
一方、ユフォアリーヤは紺色の夜空に半分の月に黒狼までは遊夜と同じだが、こちらは彼岸花ではなく白のブーゲンビリアを模した細工が鮮やかでまるでユフォアリーヤ自身の様だ。
黒狼がレッドシードのガラス粒の瞳でコチラを見た。
『あとは……一緒に贈る花』
迷わず手にしたのは『ヒマワリ』の生花。
太陽をずっと見続けるヒマワリの様に、ユフォアリーヤ自身も遊夜を見続けている。
それぞれの想いと決意を胸に完成したアクセサリーと花を手に、面と向かって改めて言葉にする。
「あの時は不意打ちだったからな、改めて俺から言わせてもらう……ありがとう、愛してるよ」
『……ん、ボクも……愛してる!』
話を聞き終えたユフォアリーヤは、お尻から生えている尻尾を千切れそうな位に振りながら遊夜に抱き付いた。
2人の手には貰った花。
遊夜は『根負けしたが今がずっと続くように』と願い、ユフォアリーヤが『愛慕や崇拝含めて今なお溢れる想いを』捧げた。
手首と首からぶら下がっている一対の黒狼は、お互いを静かに見つめ合った。
●『父へ母へ、そして……』
『ワカバ、手作り体験だって! たのしそーだよ!』
ピピ・ストレッロ(aa0778hero002)がティリアから貰ったチラシを皆月 若葉(aa0778)に見せる。
「へー……こんなの作れるんだ?」
若葉はチラシに載っている見本を見て感嘆の声を上げた。
『そだ! 今度は父の日だよね? おとーさんにもなにかしようよ!』
大はしゃぎのピピに連れられた若葉も参加する事になった。
「どっちを作ろうか?」
若葉とピピは作成過程が書かれているパンフレットを眺めた。
『うわー……キラキラしててきれい。これにしようよ!』
ラメやオパールフレーク等の素材が入っているレジンは、きらきらと光りピピの大きな瞳に映し出される。
「分かった、道具と使う材料を貰いにいこうね」
『うん!』
差し出された若葉の手を握りピピは笑顔でこくりと頷いた。
『んー……ここは、えっと?』
ピピは蝶型のミール皿に液をどう流そうか悩んでいた。
「ちょっと、貸してみて……」
と、困っているピピに手を伸ばし、若葉は蝶型に2種類の液を注ぎグラデーションを作る。
『ワカバ! 凄い!』
と、声を上げながらピピは笑みを浮かべた。
「一度固めてから花の装飾を飾ろうね」
『作るの、楽しいね!』
硬化する間に若葉とピピは、「心からの尊敬」と「信頼」の気持ちを込めて白とオレンジ色の薔薇を中心に小さなブリザーブドフラワーを束にしながら話す。
「そうだね。こういうイベントで、誰かの為に作る事って依頼で忙しくて中々できないよね」
と、答えながら若葉は、ピピが作業に夢中になっている隙にもう1つ作る。
約1時間後。
『できたー!』
「うん、よくできてる。これなら喜んでもらえるね」
ピピと若葉は出来上がった蝶型のミール皿を見せ合う。
色違いの蝶、1つは父へもう1つは母へそして……
「頑張ったピピに俺からのプレゼントだよ」
笑顔で出来上がったストラップを見つめるピピに、若葉は手を差し出した。
掌の上には月と星と猫をちりばめ夜空をイメージした可愛いブローチ、それをピピは受け取るとぎゅっと両手で包んだ。
『……! ワカバありがとう、大事にするよ!!』
パッと満面の笑みを浮かべ、ピピは『嬉しい』を込めながら言葉にする。
さぁ、次は両親に渡そう。
2人はどんな顔をするのだろうか?
そんな事を考えながら若葉とピピは、ラッピングした箱を手に両親の元へと向かった。
●『激闘? プレゼント作り対決!』
『ワタシが望月にプレゼントするよ』
と、隠しもせずに百薬(aa0843hero001)がドーンと言う。
「そういうのってもうちょっとサプライズ感入れるもんじゃないの?」
プレゼントなのに、と思いながらも餅 望月(aa0843)は首を傾げた。
『どっちがいいもの作るか勝負よ』
百薬はビシッと指先を望月に向ける。
「そういうことなら、あたしの方も百薬にお返ししないとね。受けてたつよ!」
望月は力強く頷いた。
レジンの型には勿論、薔薇の型もあるのだが造花の様な立体感や触り心地が無いが、しっかりと薔薇の形を作れる型もありレジン液でも固まっても柔らかいモノもある。
「いつも付けてるチョーカーの青薔薇を本物と見間違う位のを作るよ!」
と、意気込みながら望月は薔薇の花弁の型にレジンを流し込み、きらきらと輝かせたいので虹色に光るホログラムを入れた。
硬化し終えた花弁を、薔薇を見ながら近い形状にする為に1枚、1枚、丁寧に貼る。
『望月には負けられないよ!』
百薬は粘土を『鶏鳴の鈴をリーダー仕様』に形成しながら闘志を燃やしていた。
鶏にガラス製の月と太陽を埋め込み、後は焼いて磨くだけ。
『百薬ちゃん、素敵な銀細工ですね』
『うん! 頑張って作ったよ!』
銀色に光る『鶏鳴の鈴』をトリスの顔に近付けた。
『あとはプレゼントするだけですね。良い出来なのできっと喜んで貰えます』
『だって、ワタシの銀細工が一番だからね!』
と、言って百薬は胸を張る。
『いつもありがとう、これからもよろしくね』
百薬が望月へ銀製の『鶏鳴の鈴』を渡す。
「こちらこそ、百薬がいて毎日が楽しいよ」
笑顔で言いながら望月は受け取ると、百薬へレジンで作った『青薔薇のチョーカー』を渡した。
『うーん、悔しいけど良い出来だよ!』
「百薬こそ」
お互いが作ったモノを見つめながら言う。
甲乙付け難い2人の作品だが、作り物の青薔薇なのに本物の様に作った望月の『勝ち』という事になった。
●『貴女を尊敬、マスターの未来』
「アートクレイ、シルバー……?」
ニウェウス・アーラ(aa1428)はシルバーになるという粘土を見て首を傾げた。
『おや、マスター。もしかして、初めて見た?』
その言葉を聞いてストゥルトゥス(aa1428hero001)はニウェウスの顔を覗く。
「うん。んー……上手く作れる、かな」
『大丈夫、イケるイケるぅ。気楽に楽しく行こう!』
自身無さ気に言うニウェウスに、ストゥルトゥスは手を取ってぶんぶんと振りながら笑顔で答えた。
『さてさて。それでは、お互いに送り合うって事で、なんかメッセージを込める方向でいこうか☆』
「えっ。お、送り物に、するの?」
ストゥルトゥスの提案に戸惑うニウェウスは彼女の顔を見た。
『漠然と作るよりも、何か知らの方向性があった方がいいっしょ。ってことで、はいスタート!』
「え、あ、あわ……」
ぱんと手で音を鳴らすとストゥルトゥスは声を上げ、唐突に言われたニウェウスは戸惑いの声を上げながら粘土をこねる。
「え、えっと、何を作ろう……」
会議室をぐるりと見回していると、ニウェウスの瞳にふと『ゼラニウム』が映った。
「花言葉『尊敬・信頼』……うん、それにしようかな」
5枚の花弁で様々な色があり、年中咲いているゼラニウム。
一本の茎に複数の花を咲かせ、束の様になっているので見たまんまを作るのは難易度が高いかもしれない。
「別々に作って……うん」
初心者なりの手付きと思い付きでニウェウスは、1つ1つ丁寧に粘土を『ゼラニウム』の形に形成する。
「ストゥル、器用……」
『ふっふーん。こういうのには自信がアリマス』
隣で作業をしているストゥルトゥスは、『極楽鳥花』の別名で知られている『ストレリチア』を粘土で器用に再現していた。
オレンジ色の翼を広げ飛んでいる様な姿をした植物の花言葉は『輝かしい未来』と、その言葉に相応しい見た目の観葉植物だ。
「上手く、出来ていますように……」
と、願いながらニウェウスはオーブンにスイッチを入れた。
『はい、マスター!』
と、陽気な声を出しながらストゥルトゥスは完成した銀細工を差し出す。
「ありがと……。何の、花だろ」
銀細工を手に取り、ニウェウスは銀製のチャームをじーっと見つめる。
『ストレチアだよー。花言葉は後で調べてネ』
「ん、分かった。こっちのは……」
と、ニウェウスが説明をしようとするが。
『ゼラニウムっしょ。いやー、こりゃ嬉しいね、うん』
ペンダントを付けながらストゥルトゥスは笑顔で答えた。
「分かる、の?」
『ふふー。花言葉って、調べると面白いからね。あれこれと覚えてるよ』
ニウェウスの疑問にストゥルトゥスは胸を張りながら答えた。
貴女を尊敬し、信頼し、ゼラニウムを。
マスターに輝かしい未来を願い、ストレチアを。
●『何時も傍に』
『……央、これ……』
トリスから貰ったチラシを手にマイヤ サーア(aa1445hero001)はくいっと腕を引っ張る。
「さっき貰ったチラシか? いいよ。行ってみよう」
マイヤの声色と表情から言いたい事を読んだ迫間 央(aa1445)は笑顔で頷く。
「銀細工?」
マイヤは着くなり直ぐ、アートクレイシルバーの材料を手にするのを見て央は首を傾げた。
『アクセサリとかいいかしらね……』
央の言葉を聞いてマイヤはこくりと頷いた。
2人はシンプルな平打リングに黒ラインを彫った指輪を作り始める。
形成とライン彫りまでは央と一緒に、乾燥させた指輪をオーブンに入れた後の作業をマイヤがする事になった。
その間に、央は知り合いを見付けると作業の邪魔にならない程度に挨拶をして歩いた。
『まだ……』
焼きあがった銀細工を心を込めて磨く、マイヤ自身が満足する出来になるまで丹念に研磨し鏡の様に美しくなるまで。
「お疲れさん。納得行く出来になった?」
作業を終えた頃に央はマイヤに声を掛ける。
すると、マイヤは央の左手に完成した指輪をぎゅっと手に握らせた。
『もうすぐ、央の誕生日でしょう? 私から渡せる物なんて、殆どないから』
と、言いながらマイヤは央の右手薬指を指す。
「お、ぴったりだ……指のサイズなんて俺も知らないのに」
央は少し恥ずかしそうに視線を反らしながら指輪を右手薬指に付けると、ぴったりと指に嵌まり驚きと感嘆の声を上げた。
『わかるわよ……央の事なら』
と、マイヤは言いながら央の指から指輪を外し、別に用意していたシルバーのチェーンに通して首に掛けてあげる。
「……ありがとう。なくさないようにしないとな」
『それと、花を』
マイヤは1輪の『シザンサス』を央の手に握らせた。
花言葉は『あなたと一緒に』
『…去年は、何もできなかったから。良かったわ』
と、言って央の腕を取り肩を並べて自宅に向けて足を進めた。
渡さた花を見て、央は小さく笑みを浮かべながら思う。
(いつでも幻想蝶越しに傍に居てくれるじゃないか……)
青く長い髪を風に揺らし、金色の瞳で前を見ているマイヤに気付かれぬように、そっと……
●『鏡合わせ』
『あ、サイズ測るの忘れてた。測るねー』
と、ロザーリア・アレッサンドリ(aa4019hero001)はメジャーを左手薬指に巻く。
「女の子同士でペアリングを贈り合うのも結構あるみたいですし……って、ちょっと!?」
ウェンディ・フローレンス(aa4019)は左手薬指に巻かれたメジャーを見て驚きの声を上げた。
『何?』
「何って……こっちでは、左手薬指は結婚指輪を嵌める指ですわ」
ウェンディは額に手を添え、呆れた表情と小さなため息を吐きながら説明をする。
『えっ、こっちじゃ結婚指輪の指なの!?』
銀色の瞳を大きく見開き、ロザーリアは今知った事実に思わず声を上げた。
「……あなた、本当にそっちの趣味は無いんですわよね?」
眉をひそめたウェンディは恐る恐る問う。
『な、無いってば!!』
ぶんぶんと首を横に振りながらロザーリアは答えた。
沢山並べられた花々には『花言葉』や『誕生花の日付』のプレートに、直ぐに調べられやすいように花の一覧も置いてあった。
「二人が出会った日(4/18)の誕生花……アルストロメリアにスターチス? 花言葉は悪戯心、驚き。あら、ピッタリ」
出会った日付から見つけた誕生花の花言葉を見て、ウェンディは楽しそうに微笑んだ。
「この2つを花束にしてください」
ウェンディは迷わず、赤のアルストロメリアとチョコレート色のスターチスを指しながら言った。
『ウェンディの誕生花は白くてキレイなクチナシ。花言葉は優雅、幸せ者。いいねー♪』
ロザーリアは大きな純白の花『クチナシ』を、能力者であるウェンディの笑顔とその花を重ねた。
『はーい、はめてあげる。なんか結婚式みたいだねー。……いや、そういう意味じゃなくてね』
と、言ってロザーリアは小さな指輪をウェンディの小指に嵌める。
「ピンキーリングもなかなか可愛らしくていい感じですわね」
くすっと笑いながら微笑むウェンディは、ロザーリアの小指に小さな指輪を嵌めた。
『で、ちょっとサプライズが……あれ?』
「……あら??」
ロザーリアが背中に隠していたクチナシの花束を差し出すと、ウェンディも赤のアルストロメリアとチョコレート色のスターチスの花束を取り出し、お互いを見つめ合った後に2人は思わず笑い声を上げた。
「あらあら。これからもよろしくね、ロザリー♪」
『うん♪大好きだよ、ウェンディ♪』
白いクチナシの様な能力者に、赤いアルストロメリアの様な英雄がぎゅっと抱き締めた。
●『騎士と歌姫』
「……そもそもレジンってなんなんですかいね」
『どうやら樹脂を用いて作られたアクセサリの事を指す様ですね、私も詳しくは知りませんが』
首を傾げるフィー(aa4205)にフィリア(aa4205hero002)が答える。
「プレゼントか……」
と、フィーの隣で楪 アルト(aa4349)が呟く。
「勿論、アルトの為にプレゼントを作りましょーかね?」
と、フィーがアルトに言う。
「……っま、まぁ、別に……特別な事でも何でもねーし! 別にいつも通りだし!!」
ツンな言葉を口にするもアルトは腕捲りをしてやる気は十分!
「アルト様は素直じゃないですね」
見慣れた光景を眺めながらフィリアは肩を竦ませた。
「レジンねえ……どーしましょーかね」
『指輪とネックレスは既に贈ってありますからね』
フィーとフィリアは見本を眺めながら話す。
「アルトが若いとは言えピアスとかはちっとねえ……あ、ピンで留めるブローチとかよさそうですな」
『ならこのミール皿とやらを使いますか』
フィーの提案を聞いたフィリアは丸いミール皿を手にした。
「後はデザインでしょーかね? ん、この宇宙塗りってヤツが良さそうですな」
見本の中に濃いめの青色の宇宙に紫が天の川を思わせる色彩や地球の大気の様なグラーデション等、宇宙をイメージしたモノが沢山飾られていた。
フィーはフィリアに手伝ってもらいながら、丸いミール皿に宇宙を閉じ込めた隅に”alto”と書いた。
「花は……とりあえずまぁ、こんなもんでしょーかねえ」
ガーベラ、アネモネ、オキザリスの3種の花を色彩に気を使いながらフィーは束ねた。
「……フィーに似合うといいな……」
アルトは長方形のミール皿に五線譜に音楽に関する装飾を施し、『affettuoso(愛情を込めて)』と書き込んだ。
(それに…花言葉は……)
千日紅(センニチコウ)の花を見て頬を赤らめながらアルトは、声に出さず『色あせぬ愛』と唇を動かした。
「うん、とっても似合うよ」
出来上がったブローチをフィーに付けながら満足気にアルトは言った。
「こっち」
ぐいっと、アルトがフィーの腕を抱き寄せると何処かへと連れ出した。
「……フィー、いっつも私のワガママに付き合ってくれて……あ、ありがと、な……」
ぎゅ、とフィーから貰った花束とブローチを抱き締め、アルトはアルトなりに言葉を紡ぐ。
「こっちも……いつも私の我がままに付き合って貰ってありがとうございますな」
アルトがフィーの頬を唇で触れた。
「ちょ、ちょっとだけ……2人っきりに……ちょっとだけなんだからね!」
頭から湯気が出るんじゃないだろうか? と思う位に顔を真っ赤にさせながらアルトが声を上げると、フィーがぎゅっと力強くも優しく抱きしめた。
「うん」
フィーは優しい笑みを浮かべ、最愛の人であるアルトの唇に自分の唇をそっと重ねた。
「これからもよろしくお願いしますな」
ゆっくりと唇を離すと、フィーはアルトを真っ直ぐに見つめながら抱き締める腕に少しだけ力を込めた。
「……これからも、ずっとよろしくね……」
嬉しさが溢れ出し目尻から涙が流れる、それを隠す様にアルトはフィーの肩に額を乗せた。
騎士は歌姫をその手にした剣で戦う。
歌姫は騎士をその歌声で癒して守る。
2人に紡がれた赤い糸は決して切れぬだろう。
●『優しさ』
先日、日暮仙寿(aa4519)は友人に相談をした。
「あけびに優しくしたいんだが……」
仙寿の問いに友人は「喜びそうなこと考えてみるとか?」と答えた。
だから今回のイベントに参加した。
「小物は俺でも作れそうだ」
「はい、初心者でも作れるそうですわ」
パンフレットを受け取った仙寿に、ティリアが笑顔で答える。
会議室に行くと……
「何でお前がいるんだよ!?」
そこには不知火あけび(aa4519hero001)が居た。
『面白そうな企画だったから! あ、折角だから作った物交換しない?』
と、明るく言いながらあけびは提案をした。
「横に渡す相手がいるのはやり辛い」
『イメージが膨らんで良いけどなぁ。仙寿様のイメージは何だろ……白菊? 他に気になる花はある?』
ぼやく仙寿にあけびは沢山の花々を見回しながら問う。
(刃は全く届かず俺は蕾と呼ばれた)
仙寿は、先日あけびを探してこの世界に来た師匠と一戦交えた事を思い出す。
――お前は未だ咲かぬ八重の桜だ
(八重桜は俺の刀の刃紋「互の目乱」。蕾とは染井吉野が散った後ようやく花開く八重桜と俺の未熟とを揶揄した呼び名。あけびと共に歩んでみろとは言われたが)
それが簡単に己の口で言えれば、こんなに苦労はしていないだろうにな、と仙寿は思う。
「もっと強くならねーとな……」
ため息を吐く仙寿の言葉を聞いたあけびは小さく首を傾げた。
「八重桜が良い。お前は染井吉野」
『えっ、決定なの!?』
唐突に花を決められたあけびは目を丸くし、驚きの声を上げた。
『じゃあ形は私が決める!』
あけびは直ぐに順応し、色々なミール皿の中から猫の形をした物を選んだ。
完成したキーホルダーに花を添えて交換した2人。
『仙寿様に似合うと思って!』
あけびが作ったキーホルダーは、黒地に金色の透かし八重桜が美しい仕上がりとなっていた。
「……太陽の方を向く花が俺に似合う、か」
と、添えられていた向日葵を見て仙寿は呟いた。
『何時でも見守ってるよって事で!』
「……?」
仙寿はあけびの言っている意味をこの時、まだ理解していなかった。
『あ、私の苦労が伝わったのかな?』
仙寿が作ったキーホルダーは薄紫地に桜と金蝶が舞う、これもまた妖艶な美しさである。
そして添えられているオレンジのガーベラを見て、あけびは意地悪した小さな子供の様な笑みを浮かべた。
「喜んでいるならそれで良い、か」
いつもの様に笑みを浮かべるあけびを見て、仙寿は少し距離が縮んだ気がした。
後日友に西洋での花言葉教えて貰い仙寿は動揺した。
オレンジのガーベラは『You are my sunshine(あなたは私の輝く太陽)』
●『奇跡を見る白百合と惹かれた薔薇』
「カノンねーさまには……やっぱり薔薇、ですの」
リリィ(aa4924)は小さな手で粘土を捏ねる。
「でも……レジンよりも銀の繊細な輝きと、使い込むことで、よりその人に馴染む……その人と一緒になる。カノンねーさまになる」
リリィはカノン(aa4924hero001)の事を思いながら……いや、思い過ぎて途中までは良い言葉だったのに最後はヤンデレ一歩手前の発言である。
ただ、少女は美しい英雄である彼女の歌声に心酔に近い尊敬の念を抱いているだけ。
その美しい歌声を思い出しながら、粘土で薔薇を2つ作り後はオーブンで加熱し磨くだけだ。
「お花はリリィの気持ちが入ってますの……そう、永遠に枯れない不変の意」
青薔薇のプリザーブドフラワーを手にし、リリィの気持ちは誰にも止められない。
「きっとリリィはカノンねーさまにずっと【奇跡】を見てますわ……」
翡翠の様な瞳を細め青薔薇を見つめ、カノンと出会った時を思い出す。
『そうね……リリィならきっと百合を贈れば喜んでくれるのだろうけれど……』
大きな花弁を開き、甘い百合の匂いがカノンの鼻腔をくすぐる。
『だからこそ、他の花を……もっと色々な物に目を向けられるように』
赤い薔薇の様な瞳を細め、自分だけに向けられたリリィの宝石の翡翠よりも美しい瞳を思い出す。
『あたしとだけの世界で満足しないように……』
カノンが作った猫のシルエット型のブローチには、優しい色合いの夜に月が星々に囲まれる様に描かれていた。
『この可憐な花は……リリィ、貴女そのもののような花言葉を持つわ』
と、カレンが手にしたのはスノーフレーク。
(あたしも……きっとその花(リリィ)に惹かれた……1人)
小さな花弁は頭を垂れ、スミレのような芳香を放つその花言葉は『皆をひきつける魅力』。
「カノンねーさま、プレゼントですの」
リリィは、薔薇の銀細工が付いたピアスと青薔薇のプリザーブドフラワーを渡した。
『綺麗な青……何処までも続くような深い、青……』
作られたとはいえ、鮮やな青の薔薇はカノンの赤い瞳を占領するほどに映された。
銀の薔薇のピアスに視線を向けると、留め具を外し耳たぶに装着した。
『ピアスも付けてみたの。どう?』
と、髪を両耳の裏にかき上げ、リリィに見えるようにカノンは目線を合わせた。
「……とても、素敵ですわ」
その姿を見た瞬間、リリィは思わずため息を漏らた。
『ありがとう。あたしからも』
「カノンねーさまからリリィに……っ?!」
カノンはリリィの小さな両手に、ブローチとスノーフレークを乗せた。
「どちらも……これからのリリィの大切な宝物、ですの」
貰ったプレゼントを優しく抱きしめながら、リリィの目から一粒の雫がスノーフレークの花弁に落ちた。
●『生まれた日』
「出来上がってからの、お楽しみ。です……」
『です。なの』
と、言いながらセーレ・ディディー(aa5113)とラミィリ(aa5113hero001)は人差し指を口に添えた。
「もちろん、僕も」
そんな2人を見て微笑みながら日向冬織(aa5114)は頷いた。
黙々と作業をする冬織をセーレは見つめる。
様々な表情をし、失敗したら苦虫を噛み潰したような顔になり、上手く出来たら満面の笑みを浮かべ、ところころと変わる様子を微笑みながら眺める。
視線に気付かない程に冬織は集中し、ただ恋人とその英雄に送りたい一心で作った。
「上手く作れてると良いんだけど……」
と、自信無さげに冬織は、セーレに銀細工の猫が付いたペンダントとキキョウを渡す。
「……ありがとう……やっぱり冬織さんは器用ですね……綺麗……」
セーレは嬉しそうに微笑みながらペンダントを着ける。
「……上手く作れたかは……微妙ですけど……」
セーレは冬織に、丸い型のミール皿に空の青背景に青い鳥が緑の四葉のクローバーを咥え飛んでいる文字盤の時計が描かれているのを渡した。
添えられた花は白いアザレアのブリザーブドフラワー、花言葉は『あなたに愛されて幸せ』。
「常に身に付けて大事にするよ、ありがとう」
その花言葉通りに、冬織の心が温かくて溢れ出る感情を込めて言葉にし満面の笑みを向けた。
『あおいいろ、セーレと冬織のいろ』
ラミィリがさし伸ばした小さな手にはブルースターの栞が握られていた。
「ラミィリも、上手に作れたね」
「ふふ、上手に出来たね、ラミィリさん」
と、冬織とセーレはラミィリの頭を優しく撫でた。
『セーレのも冬織のも、たからものにするの』
ラミィリは冬織から貰った雪の結晶のペンダントを首から下げ手には青いカーネーションと、セーレから貰った紫色系で纏めたレジンの髪留めにペチュニアの栞を小さな両手で抱えていた。
「髪留め着けてあげます。花としおりは幻想蝶へ」
『はーい』
セーレは頭に髪留めを着けてあげ、ラミィリは貰った花としおりを幻想蝶へ入れた。
冬織とセーレは、ラミィリを挟むように立ちその小さな手を握った。
「親子みたいに見えるだろうか? なんて」
冬織が少し照れながら言うと。
「親子……それなら嬉しい……気がします……」
セーレは少し頬を赤らめながら答える。
「うん、僕も……」
『セーレがおかーさん。冬織がおとーさん……?』
と、2人を見上げながらレミィリは小さく首を傾げた。
「冬織さん、お誕生日……おめでとう……」
『冬織おめでとうなの。けーき、セーレとつくったの』
「少し家に寄って帰りませんか……?」
じっとセーレとレミィリは冬織を見つめる。
「ありがとう。折角だから、ね」
突然祝いの言葉を聞いた冬織は、嬉しさのあまりに泣きそうになるのをぐっとこらえるが2人の姿が涙で霞んでしまい、顔を反らしながら答えた。
夕日に照らされ、3人の影が長く、長く伸び走っても追いつけない程に伸びた。
セーレさんは愛しく
ラミィリさんは妹のよう
2人がずっと幸せでありますように
冬織は胸の中でそう願った。
●『相思』
『よーし、でーきたっ!』
睡 乃姫(aa5208hero001)は元々器用だったのであろう、コツを直ぐに掴み楽しく無数の四つ葉のクローバーを作り上げた。
「うああ! うまくいかないー!」
永田 建(aa5208)が大声でそう言いながら椅子の背もたれに体を預ける。
原因はアザレアの花を模した細工が上手くいかないからだ。
優雅な曲線の花びらが幾重にも重なっている花、粘土を形成しては潰す作業を延々と繰り返していた。
「これ、なんだろ。……花じゃなくてクマに見える』
と、呟きながら建は虚ろな瞳で目の前にある、アザレアの花を模した細工らしきモノを見つめた。
『落ち着いて。もしよかったら一緒につくろ?』
乃姫は健の顔を覗き込み愛らしい笑みを浮かべた。
「大丈夫! 自分でやらなきゃだめなの!」
ハッと我に返った健は、ぶんぶんと首を横に振りながら答えた。
彼女の前にいる、見た目は女の子に見える少年こと乃姫はれっきとした恋人である。
『ケンのためなら、どこまででも着いていくよ』
乃姫はそう言うと、健に寄りかかるように頭を肩に乗せ上目使いで見上げた。
「いつもありがとね」
と、言いながら健は乃姫の頭に唇を近づけた。
『違う、その場合はこう』
くい、と健の顎を持ち上げると乃姫は覆いかぶさるよう顔を近づける。
思わず健が目を閉じると、当たった感触は唇ではなく額。
『ちょっと、期待した?』
「うん、した」
意地悪そうな笑みを浮かべる乃姫に対し、健は視線を反らし頬を赤らめた。
『帰ったらしてあげるよ』
「……い」
『なーに?』
『聞こえているクセに』と健は思いながら、上から見つめてくるその瞳は男が好きな女性を見る色をしていた。
「今……」
『良いよ』
返答を聞く途中で乃姫が答え、小さな唇を健の大きく柔らかな唇が重なる。
『これで作業は出来るよね?』
「うん、出来る」
唇が離れ、笑顔で乃姫が問うと健は熱を帯びた瞳で見つめながら答えた。
「出来た!」
ちょっと不格好だが、チェーンアザレアの花を模した銀細工を付けた帽子飾りが完成した。
『おめでとう! はい、プレゼントだよ』
乃姫が差し出したのは、銀細工の四つ葉のクローバーを連ねたバレッタで花言葉は『私のものになって』。
「ありがとう。これはわたしからだよ」
健が渡したのは、チェーンにアザレアの花を模した銀細工を付けた帽子飾りで花言葉は『あなたに愛されて幸せです』。
『嬉しいよ!』
「ところでクローバーって復讐って花言葉も……」
喜んでいる乃姫に、眉をひそめながら健は声を低くして言った。
『ない! ないから! 一切そんな意味は!』
不穏な空気を感じた乃姫は、健の頭を力強く抱きしめながら真剣に言った。
悪い意味の花言葉が溶けて無くなりそうな位に、わたしは、ボクは、『好きです』。
絡むように繋がれた手は、離れるよう、離さぬよう、強く握りしめた。
●『大好きな』
初めての場所、知らない顔、沢山のエージェント達を見て氷鏡 六花(aa4969)はアルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001)の衣をぎゅっと握りしめた。
『六花、大丈夫よ』
アルヴィナは微笑みながら六花の頭を優しく撫でた。
「……ん、でも」
ぎゅっ、と手に力が籠る六花。
『おやおや、ここは大丈夫よ』
海の様な青い髪に、銀の大きな瞳のアラルは六花に笑みを向けながら言った。
「……ん、本当?」
『もちろん、楽しくプレゼントを作る場所よ。席を案内してあげるの』
恐る恐る問う六花に、アラルは明るく答えた。
『ふふ、案内お願いしますわね』
未だにアルヴィナに抱き着いたままの六花を連れ、アラルに案内された作業机に座る。
『シルバーを作るのね。うんうん、母は良いと思うの』
六花から離れられないアルヴィナの為に、アラルは材料を持ってきてじっと2人を眺めた。
「……ん、六花はね。雪の結晶を、作りたい」
『じゃぁ、それを首飾りにして贈り合おうね』
「うん」
扱いやすい粘土、それを一生懸命に六花はその小さな手で雪の結晶を形成しようと頑張る。
年相応の手つきで、大好きな雪の結晶を作ってアルヴィナに贈って喜んで貰いたい、というその気持ちだけで作る。
『ほら、そこはこうよ』
妹の世話をする姉の様なアルヴィナ、そんな英雄を姉の様に信頼してる六花。
苦戦して、諦めて泣きそうになる六花にアドバイスをしながら少しずつ完成していく。
「……ん、できた!」
何とか形になり、満足げに頷きながら六花は声を上げた。
『後は焼いて磨くのよ』
と、言ってアルヴィナは粘土を乾燥させている。
「……、これが……あんな風になるの……凄いね」
六花は見本として飾られている銀細工を指す。
『そうよ』
アルヴィナはそっと六花の頭を自分の方に寄せる。
「……楽しみ」
『私もよ』
乾燥し終え、やすり等で形を整えるとオーブンへと入れた。
『ティリアさん、花を選んで下さい』
と、アルヴィナはティリアを見つけるとそう言った。
「ええ、どんなイメージとか言葉があれば言ってください」
『そうね……』
アルヴィナが六花のイメージを言うと、ティリアは選んだ花を差し出す。
「スノードロップという花ですわ。花言葉は『希望』……そして、冬から春にかけて咲く花なので『春を告げる花』としても有名ですわ」
『雪の雫、六花みたいね』
アルヴィナは六花見てほほ笑んだ。
「私の地元ヨーロッパ。そこの中世では『イヤリングに似ている花』という認識で『雪の耳飾り』という意味ですわ」
「……ん。可愛いね。アルヴィナはね……」
六花のイメージを聞いたティリアは、そっと一輪の花をアルヴィナに差し出す。
「スイセンですわ。別名『雪中花』、花言葉は『神秘』ですわ」
『ありがとうございますわ。素敵な花を選んでくれて』
水仙を受け取り、アルヴィナはティリアにお礼の言葉を口にした。
白く、雪の似合う能力者と英雄は、しっかりと手を繋いで未来へと足を向けた。
●1ヵ月遅れの?
「ティリアさんの誕生日か」
赤城 龍哉(aa0090)はトリスからお願いされた言葉を思い出しながら呟いた。
『オペレーターの方々にはお世話になる事も多いですし』
と、言いながらヴァルトラウテ(aa0090hero001)は頷いた。
「ま、感謝を伝える良い機会だな」
各所にあるH.O.P.E.には沢山の職員がいて、エージェント達の依頼をサポートをしているのがオペレーターだ。
自分たちと接点のあるオペレーターだけでも、と思い龍哉とヴァルトラウテは誕生日を祝う事にした。
「とりあえず銀細工にしてみるか、三日月と星を組み合わせたイヤリングにしようか?」
龍哉は粘土で三日月と星を作る。
『夜の女神に掛けた訳ですわね』
ヴァルトラウテが感心した様子で作業を見つめた。
「三日月にチェーンを付けて星を下げるか、それとも三日月の枠にして中を星で飾るか……」
龍哉は真剣な目つきで色々な組み合わせを作った。
「あとは、形を整えて焼いて磨くだけだな」
乾燥終えた粘土の形を整えながら龍哉は手順を確認する。
「花は……そうだな」
オーブンで焼いている間に龍哉は、用意された花を見回す。
『何を探しているですの?』
「菖蒲だ。H.O.P.E.繋がりで花言葉に希望が含まれてるからな」
ヴァルトラウテの問いに龍哉は答えた。
『ありましたわよ』
と、ヴァルトラウテの手には青い花である菖蒲(アヤメ)を手にしていた。
「よくあったな」
『五月から六月に咲く花なのですからありますわ』
驚く龍哉に対し、ヴァルトラウテは小さく微笑んだ。
「ティリアさんのお誕生日会ですって!」
憧れを抱いており、よく交流をするセレティア(aa1695)は興奮した様子で声を上げた。
『全力でお祝いせねばなるまいッ!』
ファンとして出来る事はしたいバルトロメイ(aa1695hero001)も吠えた。
『ええ、場所はプレゼント作りが終わったら自由に使えるようにはします』
2人の大声に慣れた様子のトリスは、場所に関する話をした。
「バーベーキューをしたいので、外でしても良い場所とかもあれば」
と、セレティアは首を傾げながらトリスを見上げた。
『も~、そんな顔されたら母は子の為に用意するね~』
そんな表情を見て負けたアラルは、初対面にも関わらずセレティアの両手を握りしめながら約束をする。
「え、えっと……どちら様でしょうか?」
『母は、アラルよ。簡単に言えば、ティリアちゃんの第二英雄なのよ』
「初めまして、セレティアです。こっちは英雄のバルトロメイ」
穏やかな笑みを浮かべるアラルに、セレティアは丁寧に自己紹介をした。
『セレティアちゃん、許可は貰ってきておきますから用意をお願いします』
「はい!」
『任せとけ!』
セレティアとバルトロメイは準備を開始した。
『メイン料理は小柄なレッサードラゴンのポワレだ、この野性的で濃厚な旨味を堪能していただかなくては。ジビエ好きだろ彼女。何のワイルドブラッドか解んねーけど』
と、この世界には滅多に無いであろう食材を使った料理を口にするバルトロメイ。
「あー……えっとぉー、普通の食材を手配しときますね。嫌な人もいるでしょうし」
そんな英雄を横目にセレティアはスマホで食材を宅配注文をした。
バルトロメイは、会議室の外でレンガを積み上げ、その上に焼き網を乗せると木炭を敷き火種を投げ込んだ。
『お、そうだ。これ捕ってきた』
と、丈夫そうな布袋からバルトロメイが取り出しのたは……
『スライム』であった。
「異界探索から持って帰ってきたんですかそれ……なんて嫌なダディクール」
セレティアは眉間にシワを寄せ、バルトロメイから数歩遠のきながら言った。
『スライムは細切りにして黒蜜かけるとうまいぞ。餡子に合うぞ』
むにょむにょと水で洗い、まだ上下に身を震わせながら動くスライムをバルトロメイはまな板に乗せた。
「くずきり……」
刻まれたスライムを想像した結果、セレティアは似たような和菓子の触感を思い出す。
「カフカスでの依頼でお世話になりましたし、良い機会ですので作ってプレゼントしましょう」
と、言いながら花邑 咲(aa2346)は両手を合わせた。
『そうですね。息抜きにレジンを作れます』
穏やかな笑みを浮かべながらブラッドリー・クォーツ(aa2346hero001)は頷いた。
2人は慣れた手つきでレジンでプレゼントを作る。
咲が作っているのは、濃紺から朱色へと変わる美しいグラデーションに福寿草の花弁を散らし、ラメで天の川の様な模様の水晶形レジンだ。
硬化が終え、金具を取り付けそれに少し長めの革紐を通してペンダントの完成。
その隣で作っているブラッドリーは、ラピスラズリを彷彿とさせる美しい青地に、白と淡黄の小花を散らし可愛らしいモノとなっている。
最後にバレッタ台にそれを取り付け角が丸い長方形のバレッタの出来上がりだ。
「時間は……まだ、ありますね。帰るフリして用意しましょう」
『この人数ですから、抜け出しても気づかなさそうですが』
咲の言葉を聞きながらブラッドリーは、いつもドジをしているティリアを思い出しながら答えた。
「サプライズ誕生日でティリアさんの心をポカポカ温かくしたいですよぉ」
牛嶋 奏(aa3495)はティリアも自分と同じワイルドブラッドであり、友達として祝いたい彼女は笑顔で言った。
『たまには真面目に行動しないとね♪』
その隣でゆらゆらと揺れる水無月 花梨(aa3495hero001)は頷いた。
「気に入ってもらえるか解らないけど、上手く出来た気がするのですよぉ……」
奏での掌には、絵本に出てくるような可愛い猫が乗っていた。
すこし茶よりの金色の体毛で、瞳は青いガラスの猫の形が付いたヘアピン。
本来であれば置いてあるしおりを選ぶのだが、奏はあえて生花を選び持参した道具でしおりを作る事にした。
「んん、作るのは結構大変だけど、楽しいです」
辞書などで花を押しつぶし、それを台紙に並べて表面をレジンで覆った。
一輪のスノーフレーク、その周りには桜の花びらがひらひらと舞う奏から見たティリアのイメージをしおりにした。
『先日はティリアちゃんの誕生日だったそうじゃ。というわけで、プレゼントを作って渡すぞい』
老黄忠な嵐山(aa3710hero001)は張り切っている。
「……それで、わざわざ私まで巻き込まれたわけですか? 老師」
呆れた声色で言いながら新座 ミサト(aa3710)は嵐山を見た。
『仕方あるまい。英雄だけでは参加できんかったんじゃ。ほれ、手伝っておくれ』
「まぁ、ティリアさんには依頼で何度かお世話になっていますしね。わかりました、私もお手伝いします」
嵐山の思惑は兎も角、何度か依頼で接したオペレーターの1人の祝いならばと思いミサトは頷いた。
『やはり、指輪がいいじゃろな』
アートクレイシルバーの材料を前に嵐山は言う。
「どんな指輪にするんです?」
指輪は指輪でも様々なデザインがあるのを思い出しながらミサトは問う。
『ふむ。……瓢箪を模した形にするかの』
「ですが、私は扱い方がわかりません」
『わしもじゃ』
二人は小さくため息を吐くと、目の前にある粘土に視線を向けた。
『教えましょうか?』
察したトリスが声を掛ける。
「ええ、お願いします」
『普通に指輪を作り乾燥させて削る方が簡単です。けど、一度削ったらやり直しがきかないと思ってやって下さい。それが難しいので、予備やデザインを直接下書きする等の工夫をすれば良いと思います』
と、丁寧に説明するトリス。
『頑張るぞい!』
トリスに教えて貰いながら嵐山は、妙にウキウキしながら作り始めた。
『金属の加工なら私に任せてくれ、ユリナ』
リーヴスラシル(aa0873hero001)はアートクレイシルバーで羽根を作るようだ。
(鶏鳴机でお世話になっている望月さん、優しく見守って下さる若葉さん、いつも一緒にいてくれるラシル……他にも交流のある方々が多いですけれど……ティリアさんの誕生日祝いなら、やっぱり……)
と、悩まし気な表情で月鏡 由利菜(aa0873)はぐるぐると考え事をしながら花を眺めた。
「バレンタインでも見ましたけれど……私に作れるでしょうか?」
ふと、由利菜は視界に入ったプリザーブドフラワーを見て呟いた。
『可愛い子、プリザーブドフラワーを手作りするのは可能なの、でも……早くても四日はかかるのよ』
アラルは少し悲しそうな表情で由利菜に言った。
「意外と手間がかかるのですね」
『そう、だからプロが作ったのをオススメするの。でもね、花に気持ちを込めて贈り笑顔にするだけでも母は素晴らしいと思うの』
しゅんと落ち込む由利菜に、アラルは優しい母の様な笑みを浮かべながら言った。
「そうですね。プレゼントは手作りも良いですけど、やっぱり気持ちが無いとダメですね」
『そうよ、元気になった子を見て母は嬉しいの』
由利菜の笑顔を見て、アラルはうんうんと嬉しそうに頷く。
「私は『子』という名前ではなくて、月鏡 由利菜という名前です」
『あらあら、ごめんなさいね。自己紹介しないまま話しかけてしまって……母は、アラル。ティリアちゃんの英雄なのよ』
と、由利菜とアラルは自己紹介をした。
「ティリアさんの……第二英雄って事ですね」
『そう、母はみーんなを守るために来たの』
「守るために……」
アラルの言葉を聞いて由利菜はぎゅっと胸元を握り締めた。
「皆さん、用意が出来ました」
セレティアが会議室に残っている仲間に手招きをした。
「よいよか」
「泣かせる準備は出来ていますよぉ」
奏はクラッカーを皆に配りながら言う。
「せーの」
咲が合図を送る。
アラルとトリスに手を引かれ、エージェント達の前にティリアが止まるとクラッカーが破裂した音が響いた。
「誕生日おめでとうございます、ティリアさん。いつまでも身も心も美しく、気高くあって欲しいです。私もそうなれるよう頑張りますから」
由利菜は百合のプリザーブドフラワーを手渡す。
『ティリア殿の誕生日を祝う。……私達英雄は、元の世界でいつ生まれたのか知る手立てがない。誕生日が認識され、祝って貰えるあなたを羨ましく思う』
と、羨望の眼差しを向けながらリーヴスラシルは、銀の羽根のアクセサリーが入った箱を手渡した。
『誕生日おめでとうございます』
ブラッドリーからは、濃紺から朱色へと変わる美しいグラデーションに福寿草の花弁を散らし、ラメで天の川の様な模様の角が丸い長方形のバレッタとピンクの撫子のブーケが手渡された。
「時期はズレたけど、お誕生日おめでとうですよぉ。これからもお仕事頑張って下さいですよぉ……」
奏はヘアピンとしおりを渡し、ティリアの手をぎゅっと握りしめた。
「うん……ありがとう、ございます、わ」
「おめでとうですね♪」
その隣で花梨も笑顔で言う。
『ティリアちゃん、誕生日おめでとうじゃ。ますますボン☆きゅっ☆ボンに美しくなったのぅ』
嵐山はティリアへ瓢箪なシルバーリングにガーベラの花束を渡すと、両手が塞がっているのをいいことに手が勝手にーお尻にーのびーる。
「ティリアさん、誕生日おめでとうございます。これからもよろしくお願いいたします」
そんな中、ミサトは丁寧に祝いの言葉を言いながら嵐山の首根っこを掴み引っ張る。
「パーティの準備で工房体験には参加できませんでしたけど、ぬかりはありません!」
じゃーんと言いながらセレティアは、薔薇の花束を取り出し『おめでとうございます』と言って渡した。
『ティリアさんの年齢と同じ31本です! ティリアさんが50歳になっても60歳になっても応援し続けます!』
ファンの鏡と呼ぶべきだろうか、余計な一言を入れてしまう男・バルトロメイは感動の涙も引っ込む事をぽろりどころかドーンと言った。
「バルトさんのアホ! 女性の年齢を弄っちゃダメですよっ!!」
セレティアが慌てて口を手で塞ぐも、言ってしまった後なので時すでに遅し。
『そういえばティリアさんはお幾つに……』
「おいばかやめろ」」
便乗して聞こうとしたヴァルトラウテの口を、龍哉は素早く手で塞ぎ身を震わせながら首をぶんぶんと横に振った。
年齢に関して従妹に聞いて、地獄を見た龍哉はティリアに背を向けたまま硬直してしまった。
『うむうむ、ティリアちゃんはまだまだ先へ行けるぞい!』
歳に関しての騒ぎに紛れ、じっくりとティリアのお尻を眺める嵐山は言い放った。
『俺の女神に! 俺もした……けしからん事をするな!』
「老師、やりすぎです」
がおーと後ろ足で立って襲う熊の様に吠えるバルトロメイ、触らぬが愛でた嵐山はミサトの手によって椅子に縛られた。
「自信作だ、受け取って欲しい」
『……はい、どーぞ』
遊夜とユフォアリーヤからは、家の皆で作ったデザート各種と誕生花の花束が渡された。
「まぁ、本当にありがとうございますわ。美味しくいただかせてもらいますわね」
ティリアは2人に向けて満面の笑みを浮かべた。
「あの、冥人さん」
遠くから眺めていた圓 冥人に咲は声を掛けた。
「何?」
「感謝とこれからもよろしくを込めて」
と、咲は冥人に水晶形のペンダントトップとフリージアのブーケを手渡す。
『ふーん、『親愛の情』だね』
木の上に居た真神 壱夜は冥人の肩に顎を乗せながら言う。
「うん。咲、ありがとう」
冥人は咲に微笑みながらお礼の言葉を口にした。。
『僕は真神 壱夜。冥人が愛してやまない英雄です』
「わたしは花邑 咲です」
自己紹介をした咲は、壱夜の言葉を聞いて頭に『?』を浮かべた
「話に乗らないよ? 壱夜はからかっているだけだよ」
冥人は肩を竦ませながら笑った。
「で、ですよね……」
咲は冥人の言葉を聞いて胸を撫で下ろした。
『僕はどっちでも大丈夫です』
「あまり人をからかい過ぎてはダメですよ?」
と、咲は壱夜の頭を撫でた。
『うん、信頼しているから』
「信頼……」
壱夜の言葉を聞いて咲は冥人に視線を向けた。
『知りたかったら僕に聞いて? 話せる範囲の事は話してあげます』
と、壱夜は咲の耳元で言った。
結果
| シナリオ成功度 | 成功 |
|---|








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