本部

グロリア社主催、楽しいお花見2

鳴海

形態
イベント
難易度
易しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
50人 / 1~50人
英雄
45人 / 0~50人
報酬
無し
相談期間
4日
完成日
2017/04/28 22:08

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掲示板

オープニング

●遙華の楽しみ。

「遙華。この書類サインをお願い」
「わかったわ、今やる」
「遙華、工場の査察を……」
「すでにスケジューリング済みよ、従業員にも厳しくチェックするのはどこかそれとなく流しておいたわ」
「遙華、次の広告塔の少女依頼を……」
「ああ、発注文は用意しておいたわよ、私の手が空き次第」
 ロクトは茫然とその場に立っていた、何かがおかしい、そう遙華の仕事が出来すぎている。
 相変わらずの激務なのに、ロクトの指示を先回りして対処、仕事をどんどん減らしている。
「これは……いったい」
 遙華の所作はてきぱきと無駄なく計算されつくしていた。
 片手にハンコを三つもち、もう片方の手と目でPC上の資料を閲覧する。
 前回会議の音声を再生し続け要点をまとめ一時間後に書類の作成。
 工場の視察は深夜から出発した自家用車で明朝に。
 相変わらず詰め込んっだスケジュールだったのにもかかわらず、遙華は生き生きとしていた。
「私は、あなたが困って助けてロクト! ってなってる姿が見たかったのに!」
 そうロクトは小さく叫ぶと驚きの視線を遙華は向ける。
「へ?」
 そう勢いよく振り返ったせいでふんわりと舞った髪の毛はいい香りがしたし、肌もつやつや、最近メガネを変えて少し大人っぽい。
 充実した人間特有のキラキラオーラが発されている。
「いったい……なんでそんなに気合入れて仕事をしているの?」
 ロクトが問いかける。
「それは……」
 ちらりと遙華はカレンダーを見る。
「二連休が欲しいのよ」
「二連休……」
「だって、お花見の後疲れてるでしょう? それに余韻に浸りたいのよ。たのしかったなって」
 つまりは単純なことだった。
 今月開催のお花見までに仕事を片付けておきたい、それだけだった。
「ねぇロクト。今年は夜桜で、優美にまったりやりましょう」
「それはいいわね。お酒もふるまいやすくなるわ」
「英雄にも招待状を送るようにしましょう。ええ、だか二人いる人は合計三枚」
「手配しておくわ、他には?」
「あなたもたまには楽しみましょう?」
 そう遙華は笑ってロクトの持っている書類を半分受け取った。
「ロクトもたまには裏方じゃなくて一緒に遊びましょうよ」
 そう微笑む遙華の頭をロクトはぐしゃぐしゃと撫でた。

● 招待状。お花見会場について。
 だんだん温かくなり、桜も咲く頃です。
 我が家、西大寺亭でもつぼみが膨らみ始めました。
 つきましては、皆様と和の心である桜を共に楽しみたいと思いご招待いたします。
 早速ですが、当日の内容について説明します。

《会場》
 西大寺亭の庭を貸し切って行います。満開の桜の木を下から、上から様々な角度でライトアップしております。
 それを庭で見るもよし。
 今回は人数が多いので、西大寺亭も解放します。なので御屋敷内から眺めるも良しです。
 桜の木が見える方角の部屋は一階に六室。二階に十室ありますが、全て客間なので、申請いただければ鍵をお渡しし、プライベートスペースとしても使っていただけます。
 たとえば絶零で活動した小隊メンバーで。もしくは意中のあの人と過ごしてみる、などいかがでしょう。
 また、一階にはロクトが趣味でこしらえたバーがあります。利用してみてください。


《料理》
 ジンギスカンがメインで、各種料理がバイキング形式です。
 様々な国の料理があつめられています、あなたの国の料理もあるかも?
 ちなみ前回お料理を持ち寄ってもらいましたが、なかなか沢山の人に参加していただけたので今回もお願いしたいと思います。
 今回は西大寺亭のキッチンを解放するので、ここで作っていただければ楽だと思います。
 キッチンは軽くレストラン程度の大きさがあるので、全員が使えるかと。
 ちなみに、出店を開きたい方もいると思うので、持ち出し用のガスや鉄板と言った屋台グッズも沢山あります。
 
《一発芸大会》
 去年もやりましたが今年もやります。
 なんでもいいです、去年は遠距離からの的当てや料理。歌などがありました。
 今年はどんな芸人が爆誕するのか楽しみです。
 また一発芸の余興としてECCOさんや赤原 光夜さん等お呼びしました。
 彼等との交流もお楽しみくださいませ。

《BARカンタレタ》
 西大寺亭の隅っこに突かれたリンカーたちを癒すバーです。
 そこではバーテン姿の美女が迎えてくれる……ようです。
 花見で振る舞われている酒に飽き。どの強い、バーボン、ラム。リキュール。テキーラ等、お酒!! って感じのお酒が飲みたくなった場合はお越しくださいませ。
 大人な落ち着いた空間を提供します。
 ちなみにここではゲームができます。
 簡単なハイ&ローです。
(ロクトが引いたカードは自分が引いたカードより数字が大きいか、低いか当てるゲーム)
 正解すると、追加でとっておきのお酒一杯か、ロクトの秘密が訊けます。
 不正解だと、スピリタスカプセルを飲まなければいけません。
 

《運営のお手伝い》
 当日は忙しいと思うので、遙華と一緒にお花見をサポートしてくれる人を募集します。
 招待客の案内。施設の利用案内、スケジュール進行。屋台の管理。配膳。酔っ払いの対処。
 ちなみに今回遙華も走り回っていますが、自由時間も多いようで、自室でトランプしましょうと誘ってきたりもします。
 時間があれば遊んであげてください。

●会話テーマについて。
 話題を絞ることで、みんなでお話ししている感じが演出できると思いますので。
 いくつか話題を設定させていただきますね。

*普段って何をしてるの?
 なかなか想像しがたい、皆さんの普段の生活についてのんびりお話ししましょう。
 休日の過ごし方、趣味。これからやってみたいこと。
 かなり幅広くお話しできると思います。

* 世界遺産を巡る番組を作りたいの
 グロリア社で今年は番組を作るようです。
 そこで、世界の気になる都市や建造物の紹介。
 もしくは、自分がその番組に参加できる可能性はあるのですから、自分が行きたい場所など。
 旅行がテーマのお話しと言っても過言ではないかもしれません。

*絶零について
 大規模作戦がやっと終わりましたね。今回の作戦について労い合ったり、絶零の振り返りなんていかがでしょう。
 ロシアに赴く際に一悶着あったでしょうし、今回も様々な組織が介入していましたね。
 今後、彼等はどのように活動するか、そんな予測や。周知したい情報等あれば、拡散するチャンスです。


*欲しいAGWについて(願望)
 せっかくグロリア社の人がいるので、欲しいAGWについて話をしてみましょう、遙華に直接でなくても、ひそひそ話をしているだけで拾われるかもしれません。


*年度がかわって
 年度が替わりましたね、人によっては進級だったり、卒業だったり就職だったり。でも関係ない人もたくさんいたりして。
 皆さんは去年からどれくらい変わりましたか? 
 そんなお話です。

解説

目標 みんなで祝勝会をする

 今回は第二英雄の参加もありです。なのでMAX150人参加になりますか。
 そう言えば今回トラブル表を用意してみました。 
 トラブルに乗じてコメディを演出しましょうと言うノリです。
 まぁ、トラブル表と言っても、ランダムで起きるわけではなく、任意なんですが。

1 アルコール度数90% スピリタスカプセル。
 スピリタス特有の殺人的のど越しを隠すためにカプセルに詰めた逸品。
 お酒で飲み下すと胃で溶けて、多量のアルコールがあなたの体に吸収されます。
 アルコールの力で人格豹変もお手の物ですね。

2 アルスマギカも参加したい。
 みなさんおなじみ、AGWアルスマギカの化身が会場に現れます。
 いい加減懲りたのか、前のように暴れることはしませんが、その怪伝播の影響を受けると、本音しか口に出せなくなります。

3 材料に従魔の肉が……
 基本的にお花見の材料は一般的な食材なんですが。西大寺亭になぜか持ち込まれていた(もしくは誰かがもちこんだ)従魔食材が紛れ込んでしまったようです。
 気が付かなければ変わった味の食材ですが、それに気が付いてしまうと……。

4 魅惑のドレスチェンジ。
 こういった人が多い場所での衣装トラブルはつきものです。料理をこぼした、水をかぶった。服が破けた。等々。
 そのために別の衣装を用意していますが、オーダーしたものが届くとは限りません。
 女装男装、お色気サービスウェルカム。
 仕方ないですよね、それしかあう服がなかったんだから。
 そんな衣装トラブルを演出します。

5 続・大失敗リンクバースト
 誰かのミスで、リンクバースト試験薬がケーキに混入されてしまいました。
 これを能力者が食べると、自身と契約している英雄がランダムで、体長50センチ程度のちびキャラになります。
 英雄が食べると、その英雄がちびキャラ化します。
 見た目が変わるだけで他に変化はないようです。



リプレイ

● プロローグ

「知っていますか」

 満開の桜。夜桜は風に強くなびき、その命を燃やすように花びらを散らせている。
 つむじ風。巻き上げられる髪を抑えて。サーフィ アズリエルは二人へと告げた。
「ねえさま。桜の木の下には死体が埋まっているのだとか」
「本当ですか!? 西大寺家がまさかそんな」
 言葉を失う『禮(aa2518hero001)』途端に桜の花が怪しく見えてくるから不思議である。だが『海神 藍(aa2518)』はそれが冗談だと知っている。
「サフィは何を言ってるんだ……禮、冗談だよ」
「…え?」
 きょとんと首をかしげる禮くすりと笑うサーフィ。
「もぉ! またからかいましたね!」
 そう顔を赤らめてサーフィ―に迫る禮。笑いながらサーフィは受付まで足早に駆けた。
(賑やかになったな……)
 そう口元をほころばせる藍、そして藍はすぐさま二人の後を追う。
 本日は快晴。空には星々、ライトアップされた桜は美しく絶好の花見日和。
「西大寺さん。今日は、お招きありがとうございます」
 そんな西大寺邸の庭には続々とリンカーたちが通されていた。 
「あら、咲。来てくれたのね。ありがとう」
 そう遙華と握手を交わすのは『花邑 咲(aa2346)』後ろには荷物持ちとして『ブラッドリー クォーツ(aa2346hero001)』が控えていた。
「今日はのんびり楽しんでいってちょうだい。案内をまとめた物と。二階の鍵よ。何かあれば係りの者に言いつけてね」
「はい。今日はお世話になります!」
「もう。アリュー、心配しすぎだってば」
「そうはいってもだな、理夢琉。あまり離れて行動することなんてなかったじゃないか」
 そんな受付嬢遙華の背後でもにょもにょと揉めるカップルが二人。
『斉加 理夢琉(aa0783)』と『アリュー(aa0783hero001)』である。
「心配性だなぁ大丈夫だよ」
「しかしなぁ」
「アリューがいても、お裁縫も案内もできないでしょ」
「そ、そんなことは……」
「人でいっぱいで後ろに立たれてても邪魔になるだけだよ」
「じゃま……」
 そんな二人を一瞥して小柄な金糸の姉妹。『イリス・レイバルド(aa0124)』と『アイリス(aa0124hero001)』が遙華に歩み寄る。
「ははは、大盛況じゃないか。遙華さん」
 アイリスがそう告げた。
「ええ、まさか本当にフルで埋まるとは思ってなかったわ」
「ありがとうございます、斉加さん。お姉ちゃんの分も僕が受け取ります」
 そう雑談に興じる二人の隣で、何かに気が付いたのかイリスの小さな方が揺れる。
「お姉ちゃん。すでにルゥがいないよ…」
「……ルゥナも花の妖精だしねぇ」
 妖精とは得てして気まぐれなものである。
 そういつものようにおおらかに笑って答えて見せる。
 そしてそんなルゥナスフィアというと。
「花見だー!」
「お花見、だね……」
 木々の隙間を踊るように飛び回っていた。
「なんだろ! 何だろあれ! なんだろ」
「妖精だー」
「妖精……え?」
 そう見あげた桜から視線をおろし、首をかしげた『ニウェウス・アーラ(aa1428)』
『ストゥルトゥス(aa1428hero001)』は何事もなかったかのように、降り注ぐ花びらを掴もうといっぱいに腕を伸ばしている。
「食い物だー!」
「美味しそう、だね……」
「酒だ―!」
「おぉー、綺麗な飲み物だ! なに、なに、なになになぁに? これなぁに?」
 そうストゥルトゥスが卓に並べられた瓶を持ち上げ、ルゥに見せると告げる。
「これはね、お酒だよ、これは日本酒、あっちは梅酒。杏子種、リンゴ種、葡萄酒、ふへへへ」
 すでに開けたい衝動が、お酒を味わいたい衝動が、ストゥルトゥスの手を、コルクに駆けさせる、しかし。ニウェウスがその手を止めた。
「ダメ」
「ゑー」
 その瓶をルゥに返すニウェウス。
「これはルゥの宝物にするよ! そしてママたちに褒めてもらうんだよ!」
 そう高らかに告げた妖精は一瞬でどこかへ走りった。
 それをストゥルトゥスは涙目で見送った。
「明日……お休みじゃない、から」
 哀れ二人は翌日に酒を持ち越すことができない。
「うわーん! ボクもオヤスミしたい!」
 涙目で引きずられ、ソフトドリンクのゾーンへ誘導されるストゥルトゥス。
「今、休んでる、よ。……はい、特製エビフライ」
 そうあらかじめ作っておいたこだわりのエビフライ、それをストゥルトゥスの皿にのせてやるニウェウス。
「色々とモノ申したいストゥルさんですが、が。エビフライには勝てなかったよ的に2コマ堕ちするのであったイタダキマスッ」
「ストゥル…………相変わらず、体に、悪そう…………」
「むふ、だって美味しいもの☆ ほら。マスターもガッツリ、いこう!」
「やだよ!? 太りたくない、もん」
 そう、和食メインに手を出すニウェウスである。
「今期の、アニメ…………面白かった、ね。あの、動物達の、とか」
「あれに例えるなら、マスターはマルチーズのフレンズだね!」
「なんで、マルチーズ、なの!?」
 まぁ、その直後、まだいただきますしてないでしょ。っと遙華に怒られることになるのだが。
 罰として配膳を手伝うように言われ。お酒をこぽこぽとグラスに告いでいく。
「ああ、ありがとう。お酒いっぱい、まさしく楽園だねっ」
 そうお礼と共にグラスを揺らしたのは『木霊・C・リュカ(aa0068)』
「飲みすぎはいけませんよ」
 そう『紫 征四郎(aa0076)』にくぎを刺されるも『ガルー・A・A(aa0076hero001)』は大丈夫大丈夫と笑う。
「おお、グラスを持ち上げるようにお達しであるな。」
 ユエリャン・李がそう告げると『オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)』が征四郎にオレンジジュースを手渡した。
「ん、了解した」
「準備は! 万端ですよ!!」
 凛道までグラスがいきわたると。征四郎は手を振った。
 それを見て『卸 蘿蔔(aa0405)』が手を振り返し中央ステージまで走る。
 その上にはすでに『蔵李・澄香(aa0010)』が待機していて、会場の状況を確認しながら諸注意の説明を行った。
 壇上前には小隊【義】のメンバーが集まっている。
『マイヤ サーア(aa1445hero001)』にグラスを手渡した。中心には『皆月 若葉(aa0778)』ピピ・ストレッロの手を引いている。
『ラドシアス(aa0778hero001)』はグラスを持ち上げて。
『迫間 央(aa1445)』は『氷月(aa3661)』と『ジーヴル(aa3661hero002)』に挟まれ連れまわされていた。
「あれ、食べたい!」
「少しだけ待ってくれ、グラスが持てない」
 そう苦笑いする央。
 そんな澄香の説明が館内利用方法に差し掛かったころに、隣に立つ『小詩 いのり(aa1420)』は友人たちの姿を見つけ手を振る。『泉 杏樹(aa0045)』や『ゼノビア オルコット(aa0626)』が手を振り返す中。
 『桜小路 國光(aa4046)』や『世良 霧人(aa3803)』『クロード(aa3803hero001』燕尾服組がグラス確認のために庭を駆けまわる。
「なんで俺はグラスを持っていないんだ」
 そうぼやく國光へ『匂坂 紙姫(aa3593hero001)』や『月夜(aa3591hero001)』が手を振った。
 『沖 一真(aa3591)』に至ってはにやにやしている『キース=ロロッカ(aa3593)』は所要を申し付けるふりをして、荷物を降ろさせグラスを握らせた。
 直後遙華の挨拶が始まった。
「えー、本日は御日柄もよく」
「おねーちゃん! お腹すいたんじゃ!」
 そう『古賀 菖蒲(旧姓:サキモリ(aa2336hero001)』が告げると、ちらほらと笑い声が巻き起こる中、遙華もつられて微笑んだ
「そうね、堅苦しいのはやめにしましょう。今日は沢山楽しんでいってね。乾杯」
 その言葉が合図となって、会場中にグラスを合わせる音が響いた。
 楽しい夜会の始まりであった。

● かしまし妹大騒動

「和兄さん…………私、焼き鳥が食べたいです。美味しい焼き鳥が。お腹一杯になるまで」
 そう唐突に告げたのは織歌、口調こそ穏やかだが、目は真剣である。
 業務用スーパーで安く大量に仕入れてきた鶏肉を示しつつ、笑顔で優しい兄におねだりする織歌。
「なんで花見を楽しみに来たってのに、焼き鳥の屋台をやらにゃならんのだ」
 そうは言いつつ、次の瞬間には炭をいじるための樋廻を装備していた。
 すでに出来上がった焼き鳥の香りをかぎながら立ち尽くす和馬。
「焼き鳥如何ですか」
 焼き上がった焼き鳥をもぐもぐする織歌。
「美味しいですよー」
「余の前で焼き鳥などと…………」
 プルプル震えるペンギン皇帝など何のそのな織歌であった。
「前から知ってたけど、和馬氏と織歌氏の力関係が良くわかるね」
 そう俺氏が楽しそうに告げた。

   *   *

「兄様に、どっきり、大作戦……なの」
「リサさんとの距離を縮めるチャンスです!」
 そんな風に会場の隅っこでくすくすとお話をしているのは杏樹と『国塚 深散(aa4139)』二人は『荒木 拓海(aa1049)』が全員分の飲み物を取りに行っている間にわるだく……もとい。
 素敵なサプライズのお話をしていた。
 やがて姿を見せる拓海。その隣で『メリッサ インガルズ(aa1049hero001)』は料理を片手に幸せそうな笑みを浮かべている。
 そんな拓海の腕を引く杏樹。
「兄様、こっち行きたいの」
「こっちじゃないのか?」
「違うの。兄様はこっち」
「え? でもチルルと、あとリサが」
「いいんですよ、きにしないでくださーい」
 そう杏樹は細腕で必死に拓海を連れて行こうとする。
「リサさんはこっちです」
 対して深散はメリッサと拓海の間に入り、邸宅の方へと誘導していく。
「え? ご飯食べようよ。チルルさん、チル……」
「まぁまぁ」
 引き離される英雄と能力者、二人の間にはすでに、膨大な人の川が横たわっていて。
「え~」
 せっかく合流したお花見会でバラバラになってしまった。
 そして。

「なんでフライ返しを握らされているの?」

「なんでチルルさんはミニスカメイドになっているの!!」

「そしてなんなんの! この服!」
 流されるままに時間は過ぎ去り、いつの間にか目の前には二人で作ったお弁当。
 そして深散は太もも眩しいミニスカメイド。
 メリッサはわけもわからずメイド服に着替えさせられてしまう。
「これはヴィクトリア朝より伝わる、古き良きメイド服でして、日本に伝わる一般のメイド服とは異なり」
「違う違う違う! そう言うことを聞いてるんじゃなくて」
「それよりリサさん。時間が無いですよ。早く詰めてしまいましょう」
「え?」
「タク兄さんを喜ばせるいい機会ですから」
 一方そのころ。
「兄様! 焼き鳥、焼き鳥は食べたくありませんか」
「ああ、アン。そんなに引っ張らなくても、焼き鳥は逃げないよ」
「とんで逃げてしまうかもしれないの」
「焼かれながら!? 根性あるな。それは不死鳥の類かもしれないね」
 そんなやり取りをしつつ、拓海は考えていた。
(何か裏があるな)
 杏樹は実にわかりやすい、きょどきょどしているし、話しかけてもどこか上の空だし、戻りたそうにすると話題を振ってきたり、今のように食べ物を進めてきたり。
(なんだろうな)
 けれど、妹分が一生懸命なのだ、それを見守ってやるのが兄の役目、もう少し様子を見ようと思った。たぶん悪いことではないような気がするし。
「おー、和馬がやってる店なのか」
 そんな調子でたった屋台の中には微妙に死んだ目の男と、全身真っ白の鹿がいた。
「おお、拓海氏。鳥を焼いて食べるなんて、同じ自然界に生きるものとしては心苦しいけど、なかなか評判がいいんだよ」
『鹿島 和馬(aa3414)』と『俺氏(aa3414hero001)』
「ううむ、余としてはそこの鹿ほど寛大にはなれぬが」
 そう店の裏手から姿を現したのは、いつものモフモフ『ペンギン皇帝(aa4300hero001)』と『酒又 織歌(aa4300)』である。
「織歌さんと陛下なの」
 杏樹は嬉しそうな声を上げた。
「いらっしゃいませー」
 織歌は淡々と告げる。
「にしても。前んトコの陛下は可愛げがあって良いよな」
 そう和馬はペンギン皇帝の脇腹をザクザクつついた。
「グァ! これ和馬、つつくでない!」
「和馬氏が寝食を忘れてネットゲームをしていても大丈夫なのが誰のお陰か、分かってて言ってる?」
 俺氏は慣れた手つきで鳥をひっくり返しながら言った。
「俺氏さんは、見た目はアレですけど、色々としてくれるから助かりますよね。うちの陛下は手が掛かるので」
「二人はどういう関係なんだ?」
 そう拓海は二人を交互に見ると、和馬が語り出す。
「ああ、俺のばあちゃんの、妹の孫なんだよ」
「つまり、はとこですねですね」
 そう織歌は焼き鳥を差し出した。
「従魔でも鳩でもありませんよ」
「親戚の集まりではよく面倒を見てたんだよ」
「お願いするとなんでも聞いてくれるんですよ」
「兄様と一緒なの」
 そう杏樹は拓海の腕を引いて微笑んだ。
「ええ、とても便利な」
 その織歌の言葉に和馬がキレた。
「うっせ、良いように使われてたとか言うなし」
「そうは言ってません、優しいお兄さんです」
 そう織歌は淡々と告げると、杏樹に焼き鳥の盛られたトレイを差し出した。
「おまけです」
「ありがとうなの!」
 そう言って杏樹と拓海はその場を離れたのだが。
「そろそろ……」
 拓海の雰囲気が変わった。
「何をたくらんでいるか話してもらおうかな」
 そう不敵に笑う拓海。
「な、ななななな、何もたくらんでなんて、ないの」
 あわあわと視線をそらして、なおかつ視線を泳がせる。
 わかりやすい妹だ。そう微笑んだ矢先拓海は杏樹を小脇に抱えた。
「え?」
「……強行突破!」
「きゃーーー。深散さん早くなの~」
「お。やっぱり何かたくらんでるんじゃないか」
 そう拓海は片手で器用に携帯を操作。メリッサから待ち合わせ場所を教えてもらうとそこに突っ込んだ。
 光に目がくらみ、一瞬視界を奪われるも、その声でふっと我に帰る。 
「「おかえりなさいませ、ご主人様!」」
 ふきこむ春の風、舞い散る桜の花びらを肩にとまらせて、メリットと深散が微笑みを向けていた。
 二人ともメイド服、ただし深散は割と平気そうだがメリッサは顔を真っ赤に身をすくめ、今にも逃げ出したそうである。
「恥ずかしがるリサさん可愛いです」
 対して拓海は、そう視線を送る深散、見ると拓海は我に返り鼻を押さえて天井を見あげた。
「ヤバ、鼻の奥が熱い。みんな可愛いよ……ここ天国~」
 さらにメリッサの表情が赤く、赤く。
「ぇと……ぅぅ……なんで喜ばせなきゃ成らないのよーー」
「ご主人様」
 そんな二人に目を奪われている間に杏樹は大正看板娘風に衣装をチェンジ、拓海を桜の見える椅子に座らせた。
 テーブルにはすでに二人が作ったお弁当、重箱が並んでいる。
「兄様、あーん、です」
 そう杏樹が傍らに腰を下ろし、伊達巻を拓海の口に運ぶ。成すがままの拓海である。
「あはは、美味しいよ」
 照れ隠しに笑う拓海、次いでメリッサを見つめると拓海は言った。
「そんな顔しても楽しんでるだろう!」
「どうかしら~?」
 赤くなりつつメリッサも楽しんでいるらしかった。
「今日はこんなサプライズ、とっても嬉しいよ。ありがとう」
 拓海は全員を見渡して言う。
「桜もきれいだし」
「お友達とお花見、初めて。嬉しいです」
 杏樹が感激したように告げる。
「桜も綺麗ですけど、ここからだとみんなの楽しそうな様子が良く見えますね」
 深散は会場を見下ろして言った。
「みんな、どんなことを話してるんだろう」
 メリッサが言う。
「将来の夢とか?」
 その言葉に深散は一つ呼吸を置いて答えた。
「私はこんな他愛のない日常を守りたいです 」
「杏樹も、一緒に、平和を守るの」
 そう深散の手を杏樹は取った。
「あとは、アイドルとして歌でみんなを癒したいな」
「ああ、守りたいね」
 そう拓海は頷くとそっと深散に顔を寄せる。
「画策したのはチルル……だな」
 そう深散に耳打ちする拓海。そして
「ん……悪くない、ありがとう」
「深散さん、成功ですね」
「ええ、よかった」
「チルちゃん、ありがとう」
「どういたしまして」

 そう囁く声は、幸福に満ち足りていた。

● 会場では

「ジン…………ギスカン? なんだそれは?」
『ニクノイーサ(aa0476hero001)』は盛り上がったジンギスカン鍋から肉をひとかけら掬い取った。独特の酸味があるたれにつけて口に運ぶ。あまりなじみのない味に最初は戸惑った。
「えーっとね。ようは焼肉だよ。羊肉のね」
 『大宮 朝霞(aa0476)』はそう得意げに説明する。
「へぇ~、他にもいろいろあるみたいだな!」
 そうニクノイーサがあたりを見渡すと朝霞はコップを突き上げながら言った。
「そうだね。せっかくだから、ちょっとずつ色々食べてみよう!」
 そして三人は再度乾杯。朝霞と伊奈はソフトドリンク。ニクノイーサはビールを飲みながらバイキングを楽しむ
「ニック! 伊奈ちゃん! すごい桜だよ! 綺麗だね~」
 そうくるりと回り、桜吹雪に身をゆだねる朝霞。
「たしかに。見事なものだな」
 そう橋を止めて頷くニクノイーサ。しかし
「おっ!おっさん、それおいしそうじゃん! いただき!」
 ハイエナのようにニクノイーサの箸に食らいつく伊奈である。
「…………おい小娘。食べたいのなら自分で取ってくればいいだろう」
 そう睨むニクノイーサに対して伊奈は一切物怖じしなかった。
「は~? ケチケチするのよな~。器の小さい男だよな~。な~、朝霞?」
 そんな二人を眺めて朝霞は小さく微笑んだ。


   *    *

「いやぁー今年もやってきたのぅのぅ。HA☆NA☆MI☆Day!! ……今年はどーやって楽しもうかのぅのぅ。うひひ♪」
 そう元気いっぱいアイリスさんは、食べ物を物色するというより、面白い物を物色する感じで、庭を歩いていた。
 ちなみに保護者である『防人 正護(aa2336)』は遙華に連行された。
 それはたったの十分前の出来事である。それどころか『赤城 龍哉(aa0090)』と
『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』まで引き連れていて、ただ事ではなかった、絵面としては明らかに堅気ではないだろう。
 そんな光景を目の当たりにしたアイリス。自分も手伝わされたらやだな、そんな心理で抜け出してきたのだ。
「あ、アイリスちゃん!」
 そんな中、よく知った声が届く。
 振り返ってみればアイリスの胸に飛び込む饅頭。
 アルスマギカから召喚された『世良 杏奈(aa3447)』の饅頭形態である。
「アイリスちゃんもこっちおいで!」
 そこには世良家一同が集まっていた。
「わーい! 今年もみんなでお花見よー」
『ルナ(aa3447hero001)』は花びらと舞い踊り『杏子(aa4344)』は杏奈とグラスをかわしている。
 疲れて桜の幹に寄り掛かっているクロードと霧人。それをスケッチするのは第二英雄であるエリックだ。
「おお、よい香りじゃ」
「おつまみを作ったんですよ、よければどうぞ」
「おーう、おいしー」
「ハイ。オイシーですね?」
「これは、何じゃ?」
 アイリスは杏奈のグラスを指さした、甘酸っぱいいい香りだ。
「うちの母直伝の美味しい梅酒ですよー」
「アイリスサンは、オサケのんだらダメですよー。ミセーネンデス」
「誰じゃー!」
 その時やっと、不自然な片言言葉を話す人物に突っ込みを入れるアイリス。
 いつの間にか隣には子供がデザインしたのかと言えるほど簡素な造りのロボットが座っていた。
「アルスマギカさんです」
 杏奈はそう紹介する。そんなアルスマギカに群がる饅頭たち。
「え? えええええ!? あの!?」
『貴方は私達の元になったフレンズなんだね!』
『すごーい!』
『たのしーい!』
「ところでさ杏奈、一発芸大会でホントにアレやるの? 恥ずかしいんだけど……」
 霧人はその光景にもう慣れたのか、アルスマギカの隣に腰を下ろして杏奈にそう尋ねた。
「当たり前じゃない。やらなきゃ練習した意味がないわ」
「おお、何をやるんじゃ?」
「秘密」
 そう杏奈は唇に指を沿えてそう微笑んだ。
「おーい、杏奈さん。霧人さん」
 そう手を振りかけてくるのは『GーYA(aa2289)』である。
「西大寺さんがあそぼーってさ」
「え? そんな時間よくできたね」
 霧人が驚きの声を上げると、G-YAは不敵に微笑んだ。
「スケジュールを肩代わりした」
「けど、すごい密度のスケジュールで震えてるのよね」
『まほらま(aa2289hero001)』がにやりと笑う。
「一番楽しそうにしてる人が、遊べないんじゃかわいそうだって」
「アイリスさんもよばれてるわよ?」
 まほらまが告げると、アイリスは勢いよく立ち上がった。
「おー。おねーちゃんと遊ぶのも久々じゃな」
 そう一行は移動を開始する。


● とりあえずご飯

『レイラ クロスロード(aa4236)』は共鳴して桜の花を見あげていた。
 誇り高く枝を伸ばす桜の木。その主張するでもなくそこにある雄々しい姿に、レイラは胸を締め付けられるような印象を受けた。『ブラッド(aa4236hero001)』がその隣に立ち、同じように桜を見あげる。
 語る言葉は必要ない、ただここにあれることが幸福。それを噛みしめレイラは共鳴を解いた。
「もういいのか?」
 ブラッドのその言葉にレイラは頷いた。
「N.Nも楽しみたいでしょ?」
 共鳴を解き、この場に顕現したN.Nはそう車いすに手をかける。
 彼女は告げた。
「そうね、お腹もすいたし」
「そう、華より団子」
 団子より仲間たち。
 三人は花見会場の中央に向けて歩みを進めた、今日はせっかくこんなに大勢の
リンカーが集まっているのだ。たくさん話さなければ損ではないか。
 そう三人は歩みを進める。

    *    *

「オードブルの盛り合わせが届きました、あとケーキ! 出来立てです!」
 そう國光はマイクもなしに会場中へと声を届ける。
 なぜか給仕役として引っ張られ、今では立派なウエイトレスである。
「ああ……」
 事の次第は花見会開始前に遡る。見知ったグロリア社令嬢があたふたあたふたしていて、それに声をかけるとなんとバイトが複数休んでしまって人手が足りないというではないか。
 なんだかかんだで國光は優しいので、手伝おうかと声をかけて……現在に至る。
「……って言うかオレ、運営の手伝いしに来たわけじゃないんですけど」
「店員さん、ジュースください……あ!」
「あら? 桜小路さん?」
 そう後ろから声をかけるのは『月鏡 由利菜(aa0873)』そしてウィリディスであった。
「月鏡さん……」
 そのグラスがあいているのを見て、反射的にドリンクはいかがと尋ねる國光。板についてしまっている。
「お忙しそうですね」
「少し休んでもいいんじゃないか?」
 そう『リーヴスラシル(aa0873hero001)』は告げ一歩引いて視界をあけると、そこでは若葉と藍がお話をしていた。
 ちょうど三人で話をしていたらしい。 
「混ざっても、良いんですか?」
「ここは社交の場だからな、話しかけられて拒否する人間は誰もいないだろう」
 リーヴスラシルはこのような会に慣れているのだろうか、自然体で優美に見えた。
 そう國光にドリンクを握らせ話の輪へと引き込むリーヴスラシル。
 そんなリーヴスラシルは振り返り若葉とグラスを触れ合わせて告げる。
「ワカバ殿、いつもユリナを見守っていてくれて感謝する」
「いやいや、こちらこそいつも頼りにさせてもらってるから」
「それにしても、今回の作戦は寒かったね」
 そう藍が告げると禮はしみじみと頷いた。
「ええ……ロシアのお菓子は美味しかったですけど」
「サーフィはお布団でぬくぬくしてました」
 その言葉にお菓子を食べる手を止める禮。
「……こめんなさい」
 なぜか頭を下げる禮
「いいえ、素晴らしいカウンターでした。流石はねえさま」
「何があったんだ?」
 若葉が尋ねると藍は苦笑いして答える。
「突然空から降ってきたサーフィに、禮は気が動転して……こう」
 彼女を迎撃、病院送りにしたのだとか。
「それは大変だったね」
 そう告げながら若葉は國光に手巻き寿司を振る舞った。
「これは?」
「セットごと持ってきた、材料は用意してもらったんだ」
 そう海苔の音をはじかせて若葉はそれを頬張る。
「にしても、ずっとロシアにいたせいで、春だって感じがしません」
 禮は気持ちよさ気に告げる。
「巷では学校が始まってるみたいですね」
 その言葉に國光は少し反応を見せる。次の瞬間若葉が手を上げた。
「4月から大学に通ってるんだ」
「今年は依頼にかまけて課題を溜めないようにしろ」
 ラドシアスにくぎを刺されて少しシュンとする若葉である。
「まぁ、学生が楽しいのは、最初だけだから、今のうちに楽しんでおく方がいいよ」
 國光がそうため息をつくと、由利菜が告げた。
「確か桜小路さんも大学生でしたっけ?」
「楽しくないのか?」
 若葉が興味津々に問いかける。
「楽しくないわけではないんですけど。卒業研究でそれどころじゃないですって。能力者になって環境激変したけど何とか変わらない生活させてもらえるのは大学や教授達の配慮だし……」
 研究継続の為の留学か就職かで揺れている國光。これからそう言う選択を迫られるのだと、若葉へ熱弁する。
「今年から、あたしもユリナと同じ学園に入学したんだよ~」
 そう告げたのはウィリディス。
「テール・プロミーズ学園の敷地内にも桜はあるが、ここで見る花もまた良い」
 リーヴスラシルはしみじみと頷いた。
「そう言えばさっきからピピが静かだな」
 そう首をかしげる若葉。
「って、私がもってきたケーキがない!」
 そう声を上げるウィリディス。だが犯人はすぐに見つかった。
 テーブルに乗るくらいのサイズへと変貌した、ピピと禮が、ケーキにかじりついていたのである。
「すごい、ケーキが大きくなりました!」
「かわいいです、ねえさま」
 サーフィがうっとりと眺めている。
「いや、禮が小さく……? どうして」
 首をかしげる藍。そしてその疑問の答えを若葉と、ラドシアスは知っていた。
「「またか」」
 ハモる二人の声。
「んー……2人とも大きくなった?」
「ピピが縮んだんだよ……」
「あ、そだワカバ! タマさん呼んで!」
 タマさんとは黒猫の書で召喚される猫の事であるが、共鳴してそれを召喚するとピピはそれにまたがり会場を駆けて行ってしまった。
「わーい」
「ちょ! どこにいくんだ!」
 そんなピピを追いかける二人。
「しあわせいっぱいだね」
 そんなピピは黒猫と一緒に桜を楽しみ、時たまカメラで撮影したりして、親の苦労
腰らずというかんじであった。
 取り残された由利菜。
 由利菜は若葉の背を見つめつつ、半歩下がる。 そんな由利菜にウィリディスは問いかけた。
「ねえユリナ、ワカバ君とはどういう関係なの?」
「若葉さんですか……? そうですね……優しく見守って下さる方と言えばいいのでしょうか。……少なくとも、今はまだ交際はしていませんよ」
(私の中で……ラシルの存在が、あまりにも大きくなりすぎてしまったから……)
 そんな由利菜の言葉を聞いていてリーヴスラシルは思う。
(私は、ユリナと距離が近くなりすぎたのか……?)
 その時である、國光の携帯電話が震えた。
「ああ、了解」
 一真から飛んできたメッセージに従って個室を目指す國光であった。

● 色気と食い気
 オープニングセレモニーの後。『ナガル・クロッソニア(aa3796)』はそっと人ごみから姿を消した。向かった場所がなんとなくわかっていた。
 『千冬(aa3796hero001)』は彼女を並木の隙間に見つける。
 すると案の定ナガルは顔を真っ赤にしてうつむいていて。
「で、デートってどうするものなんだろう……」
 そうつぶやいていた。だがその言葉に返せる答えを千冬も持たない。けれど一つだけかけられる言葉があった。
「私も頑張ります、だから一緒にがんばりましょう?」
 その言葉に勇気づけられてナガルは首を縦に振った。
「……今日は、彼女と共に」
 そう胸に秘めた思いを再確認して、二人は会場に戻った。
「ナガル!」
 会場に戻ったナガルをすぐさま見つけたのは『東海林聖(aa0203)』聖は彼女の姿を見つけると、すぐに耳を赤くした。 
 彼女はWDの時に聖が送ったストールを身に着けていたからだ。
「え、えっと……」
 嬉しかった、ありがとう。そう伝えたくても、なんだか恥ずかしくて口が動かない。
「可愛いな」
 そう聖の顔を観れないでいると、聖がそう、ナガルに告げた。
 ナガルは思わず聖を見あげる、その瞳にくぎ付けになった。
 自分をまっすぐ見つめる瞳。そこから彼の感情が流れてくるようで。
 直後、聖がそっと腕を伸ばす。頭に。
 髪にその手が触れた瞬間、ナガルはびくりと身をすくめるが、その温もりが嬉しくて。黙って聖を見つめていた。
「花びら……」
 そう指先に乗せたピンクの欠片。それをナガルに見せて、聖はふわりと微笑んだ。 
 顔が熱くなった。
 今度は彼の顔を直視していられない。
「あ、あの。実はお弁当を……」
 なぜ、デートと意識するだけでこんなに普段の自分と違ってしまうのだろう。
 自分自身が恨めしい。
 けれどそんな風に自分を責めたくなった時。聖は絶対手を差し伸べてくれるのだ。
「あっちに、場所取っておいたぜ。……ほら」
 そう伸ばされた手に、ナガルも手を伸ばして。
 結ばれた二人の指先は固く、でも絡まっているだけで、安定できる場所を探している。
 二人はその手を離さないままにゆっくりとお弁当を食べた。
「すごくうまい」
  一度「途絶えた」と思った時にも想い募って居た分、一緒に居れる時間の全部が尊くて嬉しくて。
確かめる様に、聖は抱き締めたいと感じて。
「……好きだぜ、ナガル…………これからも何が在っても、絶対にお前の所に帰って来て見せるからな」
「わ! 私も」
 裏返る声。でも自己嫌悪に浸っている暇はない、伝えたい、伝えないと。この思い。
「お手紙の時は未だあやふやだったけど…… わ、わた、私も……です。すっごく恥ずかしい、です、けど……!」
 金魚のように口をパクパクさせるナガル。そんな彼女の額に聖は額を当てて。そして全部わかっていると微笑んだ。
 ナガルは瞳を閉じる。そして二人のシルエットは重なって。そして。

    *   *

 そんな恋の花咲く木陰とは別に。
 桜並木を歩く二つの影があった千冬とゼノビアである。
 その背中を追ってゼノビアは歩く、彼は時々振り返って自分の存在を確かめてくれた。
 それが嬉しくて、嬉しくて。彼の周りをぐるりと回る。
 もっと仲良くなりたい。手を繋いでみたい。
 そう思って彼の手を見つめてしまう。
 顔の温度が上がっていくのがわかる。でも彼がこちらを見ると思わず手を引っ込めて
 臆病な自分が嫌になった。
「……大丈夫ですか、ゼノビアさん」
 突如名前を呼ばれて飛び上がるゼノビア。
「どうかされましたか?」
 なんでもない、そう伝えたくてポケットを探っても。
 ない、絶対手放さないはずのメモ帳、筆記用具。それがなかった。
 戦慄するゼノビア。誰かの陰謀かもしれない。
 だがそんなことを考えている暇はなく、その表情を覗き込む千冬。
「書き物をなくしたのですか?」
 告げると千冬は手袋を外す。そして。
「手に、指で書いていただけますか?」
 ゼノビアの背が緊張で跳ねた。
 心臓が爆音を奏でる。
 その大きな手を、けれど繊細な手を、ゼノビアは恐る恐る左手で握って。そして右手の人差し指で、それをなぞる。

『もっと、近づいても、いいです?』

 指で刻む、二人しか知らない密談を、胸にしまうように噛みしめて。
 そして千冬は頷いた。

    *    *

 その時、ラブコメの波動を感じて『Le..(aa0203hero001)』は振り返る。
「……ま……噛み締めて来るといい……」
 そんな彼女の周りにはひとりでに食べ物が集まってくる。
「ルゥちゃん、飯足りてるか? 弁当多めに作って正解だったな」
 そうガルーは皿があけば食べ物をよそい、グラスがあけば注ぐ。もちろん自分のものグラスへも。
「ところで。ガルー。お前の服はどこにいったんだ。裸足で逃げ出したのか?」
 そう、ガルーはいつの間にか服をひん剥かれ、代わりに纏っていたのは短いスカートのチアリーダー衣装。
 だが、ガルーは自分の姿を気にしないで動くものだから、スカートのなかみがチッラチラして、レティシアとしては落ち着かない。
「ルゥちゃんが、満足できるご飯を持ってこないと、服が返ってきませんゲーム」
 一人盛り上がるガルーである。
「なんだそのゲーム」
「新規メンバー、レティシアさんでーす」
「は?」
「そしてブラッドもだ!」
 そうガルーは通りがかりのレイラさんちのブラッドさんへ手を振る。
 ブラッドはまだ知らないのだろう、ここで行われている無情なゲームを。
 ただただガルーがいつもと同じ、バカなことをやっている、そうとしか認識していないのだろう。
 それが運のつきだ。
「まてまてまて! 俺は参加しないぞ!」
 猛反対するレティシアである。
「それはルゥちゃんを満足させられる奴だけが言えるセリフだ!」
 叫ぶガルー。
「……苦しゅうない」
 不敵な笑みを浮かべて頷くLE。
 レティシアは覚った。これは逃げ出せない。酔っぱらいは怖い。その事実を忘れていた自分が悪いのだ。そう思った。
 せめて、この不幸を少しでも和らげるにはきっと、参加者を増やすしかないんだろう。
 そうレティシアは席を立って哀れなるブラッドを仲間に引き込むべく歩み寄って肩を組んだ。 
 もちろん、逃がさないように。

● 立食パーティー

「……まぁ日本支部とは言え大企業のトップとなりゃこんだけでけえ屋敷も持ってんでしょーなあ」
『フィー(aa4205)』はあたりを見渡して告げた。小脇には『楪 アルト(aa4349)』
 その逆サイドには『フィリア(aa4205hero002 )』がおり、両手は食べのもので溢れている。
 現在二人はあいさつ回りの途中だった。
「あ、フィーさんですね」
 そう駆け寄ってきたのは『大門寺 杏奈(aa4314)』で『宮津 茉理(aa5020)』の手を引いている。
『レミ=ウィンズ(aa4314hero002)』そして『水無月 未來(aa5020hero001)』は両手にアイスを持たされていた。
「誰なの?」
 アルトがそうフィーの顔を覗き込む。
 するとフィーは懐かしむように告げた。
「いや、ちょっとした任務でずっと一緒だったんですよ、ほら、あのラジェルドーラの」
「ああ、あの……」
 苦い思い出を蘇らせてしまった。そう思った時にはすでに遅く、アルトはどんよりとした表情を浮かべる。
「フィーです、こっちは恋人のアルト」
「あ、実はお近づきのしるしに、お菓子を」
 そう杏奈は幻想蝶から綺麗なチョコレート菓子を取り出した。
「先輩のチョコレートは、形だけじゃなくて。あじも、いい」
 茉理がこくこくと頷く。
「私と未來からは、これ。……アイス」
 そう未來がアルトに差し出したのは桜の花を模したアイスクリーム。
「アイスは茉理が作ったけど、桜の形にするための型はあたしが作ったぞ! 自信作だ!」
 甘い物は女性の力の源である。ほんのりピンク色のそれを受け取ると、アイスとチョコを交互に口に運ぶ。
「お花見に甘いものは欠かせない……!」
 そう力説する杏奈。頷く茉莉
「綺麗な桜を見ながら食べると、きっといつもより美味しく感じますわよ。それではわたくしは飲み物の用意をさせていたさきますわ」
 レミはそう告げると、持参したレモンティーを全員分ついで振る舞った。
 一気に機嫌を直したアルトを見てフィーは微笑む。
「そーでした、お会いできたら訊いてみてーことがあったんですよ」
 そうフィーは杏奈に告げる。
「いつぞや試験運用したっつー戦旗は気になってましてなぁ、どんな具合でやがりました? アイツも旗使ってましたしな、それが本格的に出てくりゃ使用も検討すんですが」
 そんな話をしている間にアルトは一皿アイスを平らげたらしい。
 目の前で自分の作ったお菓子が無くなっていくのを見るのはとても気持ちがいい物で。茉莉はクーラーボックスから追加のアイスを取り出して、アルトに振る舞っていた。
「美味しい」
 ツンデレキャラを忘れるほどに幸せそうなアルトである。
「おなか壊しますよ?」
 そう慣れない心配を始めたフィーの口をアイスを乗せたスプーンでふさぐアルト。
「うめーですね」
 茉莉は満足げに微笑んだ。
 そんな少女会の中にぽつりと迷い込んでしまった影がある。
 赤原 光夜である。
「おー赤原さんじゃねーですか」
 そうフィーが手を振ると。珍しく光夜は苦笑いを見せた。
「あー、拳銃のねーちゃんと。そっちのツンデレは何回か見かけたことあるな、楽しんでるかい?」
 挨拶代りにギターをかき鳴らす光夜。
「いつぞや従魔のせいでぶっ倒れて介護して貰ったと聞きましたがな」
「その節は、お仲間には世話になったぜ」
 そう告げると光夜は少女たちの目の前に椅子を持ってきて座った。
 そして弦をはじいて見せると。告げる。
「ちょっと嬢ちゃんたちにインタビューさせてくれ」
「なんですか? 藪から棒に」
 あからさまにいぶかしむ杏奈。当然である。
「今俺は日常について作曲中だ。てなわけでお嬢ちゃんたちの日常を聞かせてくれ」
「日常って、普段どうしてるかってことか?」
 未來が首をかしげる。
「普段やってる事? 特になんも」
 フィーがそっぽを向くが、光夜は頼むよと食い下がる。
「強いて言うなら依頼の確認とかですかいね? 大学通ってるとかって訳でもねえんで」
「休日は……読書とか写真を、撮りに散歩。暇あればアイス、作ってる」
 茉理が淡々と語り出すと未來も口を開いた。
「あたしはそうだなー。小道具作ったり機械弄ってたりとか、勉強とか……勉強はホントはやりたくないんだけどな。でもせっかく覚えてること忘れるのも癪だし」
「未來の趣味がインドアなの、ほんと、納得、いかない……」
 そう茉理は納得のいかなそうな視線を向ける。
「なんか性に合うんだって。文句は元の世界にいた頃のあたしに言ってくれ!」
「ちなみに嬢ちゃんは?」
「杏奈です。大門寺 杏奈」
「すまねぇ、礼に欠けたな。杏奈嬢ちゃんは、自分で守りきった平和。どう堪能してんだ?」
 嬢ちゃん呼びが気に入らないのだが、それに突っ込み始めると時間が無くなる気がしたので飲み込む杏奈である。
「そんなたいそうなものではないですけど……レミとスイーツ店巡り……かな。この前はチョコミントフェアやってたお店に行ったり。チョコミントケーキにチョコミントのスムージーとか美味しかったよ」
 おお、っと感嘆の声を上げる茉理。
「あと最近はお菓子作りも始めてみたんだ。まだまだ憧れの人には程遠いけど……やれるとこからやってみたいなって」
「応援するぜ」
 光夜がギターをかき鳴らした。
「だから、その…………クッキー作ってきた……けど」
 そう不安げにうつむいて、杏奈は幻想蝶から包みを取り出した。
 甘い香り漂うクッキーである。
「アンナの手作り!? 早速いただきますわ」
 レミが真っ先に手を伸ばし、杏奈はおずおずと周囲の人間にも告げる。
「どうぞ」
「お! うめぇじゃねぇか」
 手が早い光夜。アルトもお礼を言いながらクッキーをかじるとやっぱり甘い物は嬉しいのだろう。 
「美味しい……!アンナ、お上手ですわよ」
 そうレミが杏奈の頭を撫でると。茉理もそれを真似して撫でる。
「えらい、えらい」
「…………よかった」
 そうほっとしたように柔らかな微笑を浮かべる、一同は見守った。
 小さなパティシエの小さな一歩。こんな穏やかな日にふさわしい、思い出の一ページだった。


●女子会
「おーい、月夜。次はなに食うんだ」
「御屋形様、お花見ですよお花見!!」
 そう西大寺邸内を闊歩する一真。そして月夜。その後ろを『三木 弥生(aa4687)』がつき従っていた。
 弥生はその背に旗を抱えながら、たまに天井にガリッとなるが、あまり気にしない。
「おーい月夜」
 そんな月夜であるが、とある個室の前で立ち止まると弥生を先にいれてしまう。
 そして。
「一真は御留守番だよ」
「ん? どういう……」
「男子禁制だよ」
 そう一真の前で扉を閉めた。
「えー。お館様も入れてあげましょうよ」
 弥生は残念そうにへたり込んだ。
「女子会が終わってからですかね」
 『メテオバイザー(aa4046hero001)』が告げる。
 そうここは女性の園。普段着とは違う。和装を施し。きらびやかな髪飾りと扇子で飾る月夜は堂に入っていた。
「なんか違うのです……」
 そんな二人と見比べて、メテオバイザーはしょんぼりと項垂れる。
 自分の和服が気に入らないらしい。
「そんなことないよ、綺麗だよ」
 そう月夜が微笑んで席を立った。
 次いで落ち込む弥生の手を引いて、月夜が席へと連れて行く。
「こっちだよ」
 女子会の本当の会場はテラスらしい。
 ここは一回のしかも桜の木の真ん前で、遙華はテラスに畳を敷いてくれた。
 桜の花を天井に涼やかな風が頬を撫でる。
 メテオバイザーの髪に桜の花びらが乗るが。同じ色なので紛れ込んでしまい、三人で花びらを探しながら笑った。


 桜舞う 
 月の光に 
 映えりしは

 積もる思い出
 繋がりし友       
 」

 月夜の一句と共に、女子会は開催される。
 なんだかんだでいつも男子の御守を焼いている女子達の集まりである。
「今日はお茶菓子を持ってきたんですよ」
 そうメテオバイザーは風呂敷をひも解く。姿を現したのは重箱。
 練切の桜と桜餅を小さめの二段の重箱各段に敷き詰めて。
「頑張って作りました。お口に合うと良いのですが……」
「メテオちゃんすごい!」
「お茶も上がりました、メテオ殿。月夜殿」
 桜色した愛らしいお菓子と、ほんのり泡立つ抹茶の緑が目にも嬉しい美しさ。
 月夜は名残惜しそうにお菓子に口をつける。
「食べるのがもったいないよ」
「そういってもらえると嬉しいです。この練切の桜が難しくて……」
 いくつか桜というより梅のような練切があるが、どれも繊細な出来栄えで、月夜はうっとりとそれを眺めた。
「食べるのがもったいない」
「またお作りしますから」
 そうメテオバイザーは微笑んだ。
 対して弥生はすぐに平らげてしまう。花より団子なのだ。
「すごく美味しかったです!」
 弥生は告げる。
「こっちに来たばかりの私は…………、あまり人とも話したがらなかったし、こんなにたくさんの友達と一緒にお花見できるようになるなんて想像できなかったな…………」
 そう月夜はしんみりとつぶやいた。
「まさか月夜殿にそんな時期が」
 そう弥生が目を丸くする。
「元の世界ではお友達がいたりだとかは?」
 メテオバイザーがコクリと首をかしげて見せる。
「うーん、どうだろういなかったかなぁ」
 月夜は淡々と語り出す。
「全部は覚えてないけど、私は愚神を浄化できる月の神の力を賜った巫女として…………崇め讃えられはしたけど、そこで友達と言える人はいなかった…………気がする」
 そう手の中のお茶に映る自分自身を見つめ、心の中で問いかける、己は何者か……と。
「メテオさんや弥生さんは? HOPEに来る前とかどんなことしてたんですか? 相棒との出会いとか……」
 その質問にはメテオバイザーも歯切れが悪い。
「メテオは……元の世界で何してたんでしょうね……少し覚えていても……良かったかな?」
 それに……と考えながら言葉を続ける。
「サクラコとは、まぁ。その。それより、月夜ちゃんのお話が訊きたいです」
「一真との話? う…………ま、まだ色々と受け止めきれてない所があるけど…………好き、ですよ」
 その時であった。
 唐突に、突等に部屋が震えた。
 わずかに。
 耳を澄ませていなければ音は聞こえなかっただろう。
 だが、運悪く、月夜はそれを聞いてしまった。
 そして。
「覗いてたな!!」
 扉を開けるとそこに一真そして國光。激昂の月夜。
「ちがう、俺は」
 國光は盗み聞きはまずいと言ったのだ。だから一真を引っ張った、だがその反動でバランスが崩れて扉に寄り掛かってしまい。ばれた。
 そう言うわけだった。
「藤林殿の助言で色々持ってきたのですが……いかがでしょうか御屋形様?
 そう告げて一真の前に躍り出る弥生、その姿は奇妙なもので。
 スクール水着の上から鎧を身に着けていた。
 特殊な、特殊な趣味だった。
「何やってんだ! 弥生!」
「お館様、お待ちしていました。こちらへ! こちらへ!」
 一真の戸惑いも何のそので弥生は一真を部屋の奥へと引っ張っていこうとする。
 そういつの間に用意していたのだろうか。桜の周りに天幕飾ってその中央には武将椅子、その足元には杯とお酒と、そして、ほら貝。
「ええ! 酒は、酒はちょっと」
「ほら貝も用意しました、これでいつでも出陣できます」
「どこへですか!」
 言葉を失うメテオバイザー
「それより一真。みるなーーー」
「ほら貝は音色にもこだわってみました、どうですか。まるで武田軍が攻め入ってくるような雄々しい音が」
 ぶおーっと花見会場にこだまする音。
「まずい! この音の大きさはまずい! 弥生! あと普段の格好に着替えてこい」
「一真ーーー」
「ふう」
 一周回って落ち着いたメテオバイザー。
 お茶で口を湿らせて、こうなると思ってましたよと、ひとりごちる。
「あ、そう言えば」
 思い出したようにメテオバイザーは月夜に尋ねた。
「あの歌ってどんな意味なんですか?」

●騎士会

『ベネトナシュ(aa4612hero001)』はなぜか女物の振袖を纏って皆を出迎えた。
「なっちゃん殿ー、真君殿ー、黒塚殿ー、わたしにハナミのいろはにほへとを教えるのですぞ! 装いもバッチリなのですぞ!」
「…………なぁ、花見に着物は間違ってねぇと思うんだが…………なんかこれ、違くねぇか」
『薫 秦乎(aa4612)』は歯切れ悪く突っ込みを返す。日本の花見文化には詳しくないためである。
「これは斉加というお嬢ちゃんのお勧めで……」
 よくわからないから着せてもらったらしい。
「もう少しこの国について勉強する必要がありそうだな」
 ここは花見会場から少し離れた場所、いったん中の良いグループで騒ごうという話になったのだ。
「それを言うなら奴もだろう?」
 そうベネトナシュは『庄司 奈津(aa4679)』を指さした。
 彼女は普段のカラフルな私服は脱ぎ捨ててゴスチックなミニ丈和服姿で弁当を
取り分けている。 
「桜、ってとっても綺麗なお花だね! ナツお姉ちゃんの持ってきてくれたおにぎりもおいしーよ」
 そう感嘆の声を漏らす『エクトル(aa4625hero001)』
『夜城 黒塚(aa4625)』はぺちりと薫の額を叩いた。
「黛はもちっと肉つけろ、細ェ」
 べろべろである。
 この短時間でどうしてここまで酔えたのかといぶかしむ面々であったが無理もない。
 BARカンタレラで夜にもまれてきたのだ。ロクトのトランプ裁きの犠牲者である。
「成長期だからなー遠野はいっぱい食べとけー」
「ちょ、カオスすぎんだろ!」
 そんな面々を見て『遠野 真(aa4847)』はお腹を抱えて笑っている。
「まあ花見なんざ楽しけりゃいーんだよ楽しけりゃ」
「そして奈津は似合ってねぇ、ははは」
「誰のせいでこんな恰好をしてると思って!」
 そう奈津は黒塚に食って掛かる。
「スカートも短いし、露出は多いし。風が吹いたらと思うと……」
 そうスカートを下に伸ばしながらしゃがみこむ奈津。確かに少し角度を変えただけで下着が見えてしまいそうだ。
「小さいサイズしかなかったらしいですよ」
『ガラード(aa4847hero001)』が告げた。
 だが。似合っていないと言いつつも黒塚の視線は奈津に注がれっぱなしである。
 しかし寒そうに身を震わせる彼女を見て我に返り、とりあえずガラードから上着をひん剥いて奈津へ羽織らせようとする。そんな中。ベネトナシュが目敏くケーキを発見。
 悲劇が幕を開ける。
「エクトル君にもお裾分けしてあげますぞ!」
 その言葉にエクトルも反応した。
「ベネトお兄ちゃん、そのケーキなぁに? 美味しそう! 僕も食べるう」
「皆で集まって騒げるのはいいものでs……どうしたんだい親友、エクトルくん」
「ですぞ?ですぞですぞー!」
 続々とちびキャラに変身する英雄たち。理性が消し飛んだ夜の飲み会はまだまだ始まったばかり。


●遙華の部屋で。

 遙華の部屋は一言で言うと無味簡素。
「ここより、執務室にいる時間の方が長いから」
 そう遙華は告げると、テーブルをずらして、ベットと椅子に座ればその卓を囲えるようにセッティングした。
「こうしてのんびり遊ぶのもいいものですわね」
 そう機嫌のいいヴァルトラウテと比較して龍哉と正護はなんだか居心地が悪い。
 女子と子供の園であることもそうだが。遊んでていいのかという気持ちになる。
「なんで俺達まで」
 正護が龍哉に耳打ちする。
「まぁお嬢の頼みとあれば、今日ぐらいは付き合ってやるさ」
 龍哉は肩をすくめると。ヴァルトラウテがトランプで口元を隠して告げた。
「楽しまないと損ですわ。あと、ジョーカーを持っていることが丸わかりでしてよ」
 そう龍哉の手からトランプを抜き去って上がる。
 馬場抜きである。負けた龍哉がカードをシャッフルした。
「そういや、お嬢。グロリア社の集まりだけあって、AGWの話がちらほら出てるみたいだな」
「ええ、私も聞いてるわ。そもそもアルスマギカが出歩いている時点で覚悟していたし」
 そう遙華は苦笑いを浮かべた。
 直後龍哉の目が光る。
「俺も要望があってな」
「どんと来なさい」
 遙華はまほらまからカードを抜きながら告げる。
「例えば須佐乃皇衣をベースにバッドステータス耐性を追加した実用防具とか」
「今回のヴァルリアやヴァヌシュカ戦では常に異常耐性への対応を強いられましたものね」
 ヴァルトラウテが唸りながら告げた。
「強力な武器は必要だが、近接メインだと届かせる前に倒れちまったら意味がねぇしな」
「銃撃、射撃、砲撃であれば話は別ですが」
 そう苦笑いを浮かべるヴァルトラウテ。
「ええ、絶零では私達も想定外の事態に弱かったなという印象を持っていたわ。愚神の特異性についていけな……」
 直後上がったアイリスが遙華に抱き着きながら告げる。
「おねーちゃーん。御願いじゃ! 全身装備兼武器のヒーロースーツを……バイク付きで」
「非常にメカメカしくなるわね。私はそう言うの大好きよ」
「絶零は確かに大変だったわね」
 杏奈はテーブルの上のスナック菓子をルナの口に運びながらそう切り出した。
「今回は邪英化しちゃったレミアさんに突っ込んだり、ヴァルリアにリンクバーストして突っ込んだり、今考えるとかなり無茶な事してたわね。……でも重体にならない不思議」
「あんまり霧人を心配させちゃダメよ?」
 そう心配そうに杏奈を見あげるルナだった。
「もう、ルナったら、心配性ね」
 そう杏奈はルナをくすぐると、ルナは楽しそうに笑い声をあげる。
 それを見てアイリスはお腹に手を当てた。
「俺はな、強いネタ武器が欲しい」
 エリックが続けて上がり、ルームサービスを頼んだ後に告げた。
「それは、ガチなんじゃねぇか?」
 龍哉が言う。
「いや、武器っぽくないけど武器に使えるって武器が欲しいんだよ」
「エリックは武器っぽい見た目のものは使いたくないのよね?」
 そう杏奈が言葉を継ぐ。
「そうだ、さっき話にも出てたアルスマギカなんだがな」
 龍哉がカードをシャッフルしながら告げる。また負けたようだ。これで五連敗である。
「厄介な所が目立ってるが、俺らにも影響を及ぼすってのは結構すごい事だと思ってな」
「あれは、でも副産物というか、副作用というか、あってはならないというか」
「その影響力を良い方向性に向けられたらと思いますわ」
 ヴァルトラウテがしみじみと告げる。
「たとえばな、他人の人格とか精神状況に影響を与えられるなら、精神力の活性化による能力へのブーストとか、特定のバステへの抵抗とかに発展させられないものか」
「あー、それは確かにできるかもしれないけど、それは私達とアルスマギカの好感度次第なところがあるから」
 全員が遙華を見た。
「え? この前暴走事件があったでしょ? アルスマギカっていまいち私達人類と仲良くないのよ。それをどうにかできれば……」
「今年度の目標は、アルスマギカと仲良くする。かな?」
 まほらまが苦笑い交じりに笑う。ついでにその手のハンディカムのメモリーカードを交換していた。
「そうそう、今日はみんなの今年度の目標を聞こうと思ってきているのよ」
 遙華が告げる。
「私の目標は、日本で一番大きなライブ会場を貸し切ってのライブイベントとか、企画したいわ」
 そう告げて遙華はアイリスに視線をうつす、するとアイリスは唸りながらゆっくりと言った。
「うーん……立派な人妻系としてやっていく方針の変換はしていこうとは思ってるけどいざどうこうと聞かれると」
「そう言えば結婚してから、結構立ちましたね」 
 杏奈が告げる。するとアイリスは思い出したように手を打って、衝撃的なセリフを口にした。
「……あ、も1つ。出来ちゃいました」
「え!!」
 全員の驚きが重なる。
「人妻としてのポイントが高くついたのではないでしょうか?」
「そそそそそ、それってあのあのあの」
 たじたじの遙華。そんな大人たちの反応にルナは首をかしげた。
「何ができたの?」
 アイリスはにやりと笑って告げる。
「愛の結晶じゃ」
「どうやってできたの?」
「それは……」
 その時救いの手が差し伸べられる。
「グロリアラーメン、ヘイ! おまち」
 そう板前風に登場したのはG-YAそして。
「待たせたな」
『日暮仙寿(aa4519)』であった。
『不知火あけび(aa4519hero001)』は後ろでトレンチを押している。
「あら? 何であなた達みんなエプロン姿?」
 まほらまが問いかける。すると日暮が答えた。
「ああ、実はこれには深いわけがあって」
 そう、日暮は淡々と、ここにいる経緯を話し始める。

「あれは俺が食事に手をだそうと、庭を散策している時だった」
 しばらく離れていたあけびが。人ごみの中からにょきっと現れると。
「仙寿様、料理は今年のバレンタインのお返しが初めてだったんでしょ?折角だから挑戦してみよう!」
「余計なお世話だ!」
 そう悲鳴を残して、日暮は連行されてしまった。
 結果厨房であけびのレッスンが続く。
 元来お坊ちゃんである日暮は何度か失敗しながらもお弁当作りに精を出すことになるのだが。
 そもそもおにぎりがうまく握れない。
 慣れた手つきで可愛らしいお結びを作っていくあけびに対して。
 触れれば崩れるようなご飯の塊を作っていく日暮。
「ちゃんと手を濡らさなきゃ……」
 そんな初歩的なアドバイスを飴のように受けていると無性に悔しくなり、確り、学ぶと。
 意外なことにスルスルと料理スキルが上達した。
 終盤ではレシピを見つつ分量通り且つ効率的に調理出来る様に
「……私より料理のセンスがあるんじゃ……?」
 あけびがたじたじとした様子で、そのフライパンさばきを見守る中。遙華の部屋から届いたオーダー札を確認し、レシピを確認し始める日暮。
「慣れたらお前より上手いかもな」
 野菜を切りつつあけびにそう言い放つために視線をそらすと。
 そこには完全にウェイターと化したG-YAがいて。
 せっかくだから三人で遙華の部屋にお邪魔しようという話になったのだ。

 以上、回想終り。

「遙華、久しぶりだな。クリスマス以来か?」
 経緯を話し始めると配膳をするあけびとGーYAそっちのけで遙華とお話しする日暮。
「ああ、アイテム企画? 協力ありがとう」
「あの時考案した暗視鏡が採用されてよかったよ」
「喜んでいただけて何よりよ」
「次に欲しいAGW? 勿論刀のSWだよ!」
 あけびが告げる。
「そうだな。鞘だけじゃなく例えば……鐔や縁頭、下緒のSWなら刀そのものを邪魔しない」
「なるほど……」
「まほらま、ちゃんと取れてる?」
 そう二人が放している間に、G-YAはまほらまのビデオカメラを覗く。
「楽しそうでしょう?」
「楽しそうだ」
 皆の笑い合う姿。ちょっと悔しいG-YAである。
 そんなまほらまに、ステーキのプレートを差し出すと。一瞬で従魔の肉だと気が付いたのか、フォークで突き刺して、G-YAの口に運んだ。
「味は……悪くないかな」
「ドラゴンのしっぽ肉また食べたいわねぇ」
「それ卓戯の世界での話だろ」
「あらぁ この味にてるわぁ おかわり~」
 その声を聴いてあけびが告げる。
「さぁ、厨房に戻る時間だよ!」
 そうG-YAと日暮の背中を押した。
「あ! 西大寺さん! おれソリ。ソリ欲しい。サンタそりみたいな、怪我人運べるやつ」
 去り際にそうG-YAが告げる。
 その背に手を振って一同はゲームを再開した。


● 食事は楽しく

 やっとお手伝いから解放された日暮はあけびと二人で作ったお弁当を会場で食べていた。 
 さらに取り出したるは巾着、その中には透き通って綺麗な金平糖が入っていて。それを口に含んだ。
(……何時ものより美味しい気がする)
「なにそれ? 金平糖? 風情があるね」
 そう日暮の手の中を覗き込んだのは『百薬(aa0843hero001)』である。
「一つちょうだい?」
「ああ。いいよ」
 そう日暮から宝石のようなそれを受け取ると望月は晴れやかに微笑む。
「甘い」
「よかったらから揚げもどう?」
 そうあけびがお弁当を差し出すと『餅 望月(aa0843)』がそれをつまんだ。
「ありがとう、私からは桜餅をあげよう」
「おいしー」
 から揚げを頬張り身を震わせる百薬。
「鮪の竜田揚げは好物でね、よく作ってたんだ」
 あけびが告げると日暮もどれどれと箸を伸ばす。確かに言うだけあってうまかった。
「鳥だね。鳥は言いね酉年だしね」
「年が変わって今年は鶏年。あたしたちも絶賛大活躍中だね」
 そう望月と百薬は顔を見合わせた。
「話題は年度って言ってなかった?」
「じゃあ鶏年度」
「雑だね」
「いいのよ、鶏鳴机元年なの」
 しかしそんな二人は鳥だけを食べているわけではないらしい。ジンギスカン。
 それだけではなく、馬、牛、豚、ワニ。何でもアリである。従魔の肉も気にしない。
「お祝いのお肉よ」
 それどころか従魔肉をあけびにプレゼントする。
「ジンギスカンは北の方の食べ物ってイメージあるよね、祝勝会に丁度いいね」
 そう望月は頷いた矢先である。
 小さくなった誰かの英雄が猫に乗って走りより、そしてあけびの近くにあったコップを巻き上げてしまった。
 中身を頭から浴びるあけび。
「あら」
 望月はタオルを差し出す。
「衣装ブースはあっちだよ」
 そう望月に示されるままにあけびは衣装ブースを目指した。
 そこで待っていたのは理夢琉だった、きぼうさを模した衣装を着ていて、とても愛らしい。
 ただ会話が不穏だった。
「あ、はい、ロクトさん。あけびさんが、はい、はい。衣装ですか。ええ。63番」
「ここに来る人みんな、対応してるの?」
 あけびが理夢琉に問いかけると、理夢琉は楽しそうに頷いた。衣装なおし、メイク直し含め全部彼女がやっているらしい。
「はい、できましたよ」
 そう差し出されたのは春物のワンピースだった。
「久々の洋服! 何だか新鮮!」
 会場に戻るあけび、しかし目の前の立っているのに日暮には全く気が付いてもらえない。
 さすがに冗談かと思ってその肩を叩くと日暮は飛び上がって驚いていた。
「どう? 似合うかな?」
「まぁ、悪くは……無いんじゃねーか」
 そうなぜか照れる日暮である。
 

● 桃源の語らい
『辺是 落児(aa0281)』はグラスを傾けていた。たぶん昔に戻っているのだろう。そう『構築の魔女(aa0281hero001)』の魔女はわかっていたから無理に彼を引き戻すことはしない。
 代わりに友人へと視線を向ける、そこには『志賀谷 京子(aa0150)』そして『アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)』が佇んでいて。
「やっと暖かい場所に帰ってこれた感じがしますね」 
 そう花びらを掴みとり眺める構築の魔女
「こう、のんびり過ごすのは花火のとき依頼でしたか?」
「花火は正月だったから、もうそんなに経ったんだね」
 そう京子は言葉を返した。
「ロシアの樹氷も見事でしたけど、やはりこちらのほうが落ち着きますよね」
「ロシアの樹氷かあ。寒さに負けてあんまりじっくり見てられなかったなあ
「鍛え方が足りないのですよ。そうですよね、魔女どの?」
「じゃぁ、先になりますけど鍛えるために冬もどこかに遊びにいかないとですね」
「え~。勘弁してよ!」
 そうテーブルに突っ伏す京子を見てアリッサと構築の魔女は笑った。
「気がつけば新学期ですね……まぁ私個人はあまり変わりない感じですけど」
「…………そういや高校の学籍どうなってるのかな。通う気も、暇もないから良いんだけどさ」
「あら? 学生さんだったんですね」
「聞いてくださいますか? 魔女殿。京子は名門女子校に入学はしたものの実家を出奔して以来、絶賛放置中なんですの、本当に」
 ドラ娘、そうアリッサの視線が語っていた。
「あら、そうなの? 思い切りいいのね」
「思い切りが良いというか、無鉄砲だというか……」
 アリッサの言葉に苦笑いを浮かべる京子である。
「行動力があると言ってほしいな」
「………………ロ」
 その時、珍しく落児が口を開いた。ぼそぼそと、それこそ構築の魔女にしか聞こえないくらいの小さな声で。
「そういえば、落児はHopeに入ったときに休学扱いになってた気がするわね」
「あれ、辺是さんは元大学生?」
「ロロ……」
「えぇ、ごく普通の大学生だったらしいわよ」
「普通……、明るいキャンパスライフ……。ダメだ想像できない……」
「京子は少し変わっている場所にいる方が、安心して暮らせると思いますわよ」
 そう自分の食べ物をテーブルに置きアリッサが告げた。
 今度はドイツ料理メインに持ってきたらしい。
「なかなかこういった味を再現できないんですよね」
 アリッサは考え込みながら箸を伸ばす。
「挑戦はするんだ。アリッサは作らないの?」
「今日は見聞を広めようかと思いまして」
「あら、アリッサさんは料理されるんですね」
 そう構築の魔女が告げた。
「アリッサはよくするよね」
 京子が告げた。
「京子は面倒がって料理しませんしね」
 アリッサが告げる。
「楽しそうに料理してるから邪魔しちゃ悪いかなって。魔女さんはお菓子作りとか得意そうじゃない? あれは手順と計量が全てだって聞くよ」
「私はどうも手順通りにと思ってしまってあまりうまくいかないんですよね」
「うーん、そうなると何か別の問題が?」
「一度ご一緒させていただければすぐに上達しそうな気がいたしますわね」
 そうアリッサが告げると京子が突然立ち上がる。
「じゃあ! 今やろう」
 あっけにとられるアリッサと構築の魔女である。
 だがそこからの京子は早かった。更衣室でエプロンを人数分借りて厨房に入った。
 その後四人はずっと厨房にいた気がする。
 華を眺めている時間より粉を練っている時間の方が長かったのではないかと疑った。
 それでも、銃ではなく、伸ばしようや泡だて器を握って相対する空気は新鮮で。
 春にふさわしい晴れやかな思い出となった。

● BARカンタレラ

 そんな春の空気なんて全く関係ない密閉空間、アルコールの停滞したこの場所には飲んだくれが多く住みついていた。 
「キールのカクテル言葉は『最高の巡り合い』だそうですよ?」
 そう差し出されたドリンクを『狒村 緋十郎(aa3678)』は一気に飲み干した。
「あの、そう言う飲み物じゃないんですけど?」
「いい味だ。もう一杯」
 キースは目を細めて再度シェイカーを振る。そして同じキールを作り、紙姫に運ばせた。
「このお酒を飲みながら、大切な人に思いを馳せるといいと思うんだよっ!」
 そんなキースの背後、厨房ではフライパンを振るう『セバス=チャン(aa1420hero001)』の姿が見える。
 彼に直接チャーハンを頼むなり、緋十郎は机に突っ伏した。ロクトとのゲームに惨敗。スピリタス大量摂取で死んでいるのだ。
 だがぐったりしていても最愛の妻は忘れない。
「れみあぁぁ……好きだぁぁぁ……」
 ロクトと話していた『レミア・ヴォルクシュタイン(aa3678hero001)』はその大きな肩に手をかけて客間へ引っ込んでいく。
「たまにはいいもんだ。こういう強い酒は杏奈は飲まないからね」
 そう杏子まで、スピリタスの餌食になった。だがザルである、娘もザルなのはこの親の遺伝子のせいらしい。
「強すぎる」
 いぶかしむリュカである。
 そんな杏子の隣でテトラは黙々と『テトラ(aa4344hero001)』はご飯を食べていた。
「ペペロンチーノ」
「セバスさん、ペペロンチーノお願い」
「かしこまりました」
「あ、キース君は在庫があるかジンとコカレロの予備持ってきてくれる?」
「はい」
『キース=ロロッカ(aa3593)』はそう店の裏手に引っ込んでいくと同時に店内ではグラスの割れる音が響いた。
 キースは瞳を閉じて、その光景を思い浮かべる。
「ああ……」
『匂坂 紙姫(aa3593hero001)』だな……と。
「ロクトさん、どう? 繁盛してる?」
「きゃあああああ」
 空をグラスが舞う中。そう尋ねてきたのはいのり。その後ろには澄香と遙華もいる。
「ふむ……やぁやぁそこの遙華さん。妖精母娘のマスコットはお供にいかがかな?」
 そう遙華の頭の周囲を飛び回るのはアイリスで、何やら普段と様子が違う。
 というか大きさが違う。
「え! アイリス! いったい何が。まさか」
 そうちびキャラと化したアイリスである、体長50センチ。ついでにルゥも飛び回り、ファンタジーな世界が広がっている。
 そんな妖精たちに弄ばれる遙華を尻目に澄香といのりは話を再開する。
「そろそろ一発芸大会だから、クラリスを返してもらいに来たよ」
「もう少し借りられない?」
 そうロクトが視線を店内に向けると『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』がバーテンとして。シェイカーを振っていた。
 しかしこのBARにはもう一人敏腕バーテンがいるのを忘れてはいけない。
「花見フィズです」
 そうカクテルを差し出すキース。微笑を湛え、少女二人をカウンターに座るように誘導した。
「灰燼鬼は立ってください、レディーファーストで」
「なに!」
 そうトランプ遊びに興じていた酔っ払いをとりあえず少女たちから遠ざける。
「キースってカクテルも作れるんだねぇ」
 そういのりが驚きの声を上げると。
「ノンアルコールなので安心してください」
 そう澄香には桜モヒートを差し出した。
「いらっしゃいませ。……今日は花見ということで、桜色のカクテルをご用意致しました」
「すごい、クラリス顔負け」
 澄香がほっと溜息をもらすとクラリスが告げる。
「同じ趣味を持つ人と出会えて、今日はいい日ですわね」
「じゃあ、クラリスいらないんじゃないの」
「じいやさん、メロディーがペペロンチーノ欲しいって」
「誰だ君!?」
 澄香が声を上げた。驚きで動きを止めるクラリッサ。
「クラリッサです。髪型と服装を変えただけでこうも違うのですか」
「見たことのない給仕のお姉さんがいると思ったら、この人リーサ!!」
 いのりが飛び上がって驚いている、その様子が面白くて遙華は驚く機会をなくした。
「いや!? ゾンビみたいな私が異常で、こっちが普通なんですけど!?」
「え、イメチェン!? ゾンビやめたの!?」
 そのいのりの言葉には首を振るクラリッサ、ゾンビはやめていないらしい。
「詐欺だ! 特に胸! ちっぱい仲間だって信じてたのに!」
「言われないとわかんないよ!?」
「なに!? 何がフラグでそうなる訳!?」
「まぁまぁ、他のお客さんの迷惑になるから……あ。アリューさんこちらサボテンをなんだかんだしたお酒です」
 そうクラリッサは頼まれてもいないのにアリューにテキーラを差し出した。
 勢いよくそれを煽る、その様子を見るに彼はなかなかに荒れてるご様子。
「俺も、勝負だ! ロクトさん」
 そう勇猛に告げると、ロクトは微笑みながらカードを回した。
 テーブル席に集った客達が顔を寄せる。
 花邑さんちのブラッドや。沖さんのお宅の灰燼鬼さん等々。
 そしてアリューが自分のカードを見て、ロクトの表情を見てローっと告げる。
 二人は手持ちの札をオープンした。ロクトの札はハートのクイーン。アリューの札はスペードのキング。
 アリューの札はロクトの札より数字が高かった。
「はい、カプセル」
 小皿に乗せられた透き通るそれを飲み下すアリュー。何度目の敗北だろう、胃が熱い。
「くぅ、ゲームには負ける、理夢琉は構ってくれない。あの年ごろの少女はどうしてあんなに不安定なんだ」
 泣きが入るアリュー。
「あらあら大変ね、そんな不幸なアリューさんに、ケーキの差し入れよ」
「ああ。ありがとう、ロクトさん、ロクトさんだけだ、優しくしてくれるのは……」
 ケーキ口に運ぶアリュー。
「いや、ロクトさん、強いな」
 灰燼鬼が、轟沈したアリューに変わりカードを引く。
「今度はオレもやらせてもらおう」
 そう告げるとブラッドが名乗りを上げた、すでに試験管でハーブリキュールのお酒を二けた飲んでいるはずなのにまだまだ平気そうだ。
 その様子をリュカは笑みを浮かべて観察している。
 そしてカードが配られた。二人はローを宣言。しかし敗北、カプセルをさらに飲み下す。
「リュカさんもいかが?」
「うん、そろそろやろうかな」
 征四郎に構ってもらえず、ふらふらとここまで来たのだが、思いのほか楽しめそうだ。
 そうカードを引くリュカ。
「ふふーふ、じゃあ……うん、上で!」
 その時ロクトの眉が動いた。
 めくったカードは、ロクトがハートの8。リュカはダイヤのエース。
 この卓ではKの上にAがある、よってリュカは上を引き当てた。
「あら」
「ふふふ、マーキングしてるね」
 リュカが言う。
「カードに、傷と香りかな?」
「ご名答」
 そう言ってロクトは観念したように手を上げる。
「店側の罰符としてお酒を振る舞うわね」
 そうキースは並べたカクテルグラスになみなみとドリンクを注いでいく。
 そう紙姫がドリンクを運ぶのだが、正直危なっかしくて見ていられなかった。
「おじゃましまーす」
 直後また来客。大繁盛である。
「ってうわ。なんだこの状況」
 そう『ハーメル(aa0958)』はカンタレラに足を踏み入れるなり、カオスな状況に遭遇する。カウンターには泥酔状態の酔っ払いが群がり、ボックス席ではロボットや剣やちびキャラたちが群がっている。
「何が起きたのかな? セバスさん」
 そうなじみの深いセバスに声をかけるハーメル。
 その隣で『墓守(aa0958hero001)』はカウンターに乗せられたケーキが気になっていた。
「まず、お出しいただいたケーキに何か混ぜ物がされていたそうで」
 そのケーキを食べたリンカーたちがことごとくちびキャラしたらしい。
 先ず、ボックス席中央のテーブルでぐったりしているのがアリューである。と言っても、銀色の聖獣の姿。
「うわ。なるほど、ここは僕らがいると危なそうだなぁ、早くここをたちさろ……」
 そう墓守を呼ぼうとしたハーメル。
 しかしもう、手遅れ。
 ハーメルの目の前には両手に乗るほどの大きさに縮んでしまった墓守がいた。
 彼女は幸せそうにケーキを食べている。
「マスク取れてるよ」
 恥ずかしそうにマスクをかぶる墓守。しかしお腹が減っているのだろうか。再び仮面をずらしてケーキを食べて。食べにくいことに気が付いて仮面を外す。
 そんな墓守を保護するハーメル。
 そんなハーメルの頭上にあったスピーカーが震えた。
 どうやらステージで一発芸大会が催されるらしい。
 カンタレラにいる面子は続々と移動を開始した。





● 一発芸大会!
 夜の桜庭園に視界の声が朗々と響く。
「さぁ、始まりました。第二回一発芸大会」
 澄香の言葉をいのりが継ぐ。
「まずトップバッターを飾ってくれるのは。こちらのお二人です」
 先ず会場に銃声が轟いた。直後ステージ中央にヘリから飛び降りたのは『麻生 遊夜(aa0452)』そして『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』
 軽快な音楽と共にお辞儀をすると。
 二人は少し距離を取る、次いで頭の上に乗せたリンゴを。二人は同時に拳銃で打ち抜いた。
 その空中を舞うリンゴをユフォアリーヤはキャッチ。 
 そのリンゴを遊夜は視線を合わせずに打ち抜いた。
 歓声が上がる。
 その歓声にこたえるようにユフォアリーヤなキスを投げ。取り出したのは空き缶。
 二人は背中合わせになり、遊夜は目を閉じる。
 直後ユフォアリーヤはそれにキスを。
 空き缶にキスして放り投げた。
 直後会場を共鳴の光が見たし。
 そして、落下する空き缶の底を打ち続けお手玉をして見せた。
 二人は主導権を交代しながら。姿を変えながら打ち続け。そして
最後は大きく打ち上げて缶のゴミ箱にIN、そして色っぽく硝煙吹き消して二人は背中合わせに立った。
 会場から歓声が上がる。
「すごかったわね!」
 そう興奮を隠さずに遙華が歩み寄ってきた。
 インタビューのためにマイクを向けると二人は共鳴を解いてマイクを受け取った。「今年は何とか参加出来たな」
「……あ、お肉ー」
 お腹が減ったユフォアリーヤさんである。
「ふふふ、参加していただけてうれしいわ」
「改めて、お誘い頂きありがとうだ……それと、久しぶりだな」
「……ん、元気?」
 そうユフォアリーヤは遙華の頭を撫でる。
 微笑む遙華。
「インタビューしに来たのに、あやされてしまっているわね」
「最近忙しそうだしな。あんま無茶すんなよ? 手伝いくらいはするからな」
「愛しい子供達……だから、ね」
「ええ、頼りにしてるわ」
「そういや俺達結婚したぞ」
「え! おめでとう!」
 会場から拍手が沸き上がる。
「……ん!」
 そうユフォアリーヤが婚姻届と指輪を掲げて見せると、残念ながらお時間がきてしまった。
 二人は壇上を下りる。
「ここからはダンスラッシュが続きますよ」
 そう澄香が告げると、イントロが変わる。最近巷で話題の恋愛ソング。
 夫婦の愛を謳ったその曲に合わせ、霧人と杏奈が壇上に躍り出た。
 さらにその曲が終われば間髪入れず。舞い出るイリスとルゥナスフィア。
「二組とも息の合ったダンスだったね」
 そういのりが告げると澄香は頷いた。
「うん、次はカラオケ企画だね」
「トップバッターの望月さん、よろしくお願いします」
 次いでVBSによって空に投射されるのは球団のマーク。それが旗になびく。
「きょうもほーぷはー」
 百薬も乗り始め、テンションが上がったのか共鳴もし出した。
「あ。なんだかくらくらしてきた」
 そう澄香のふらつく背に手を添えていのりは告げる。
「これは……AGW?」
「きゃーーーーストップ!」
 遙華があわてて壇上に上がり、マイクを奪い取ろうとするが、話さない望月。
「お願いだからやめて!」
――ぼえー。
 開発中のAGWを持ち出してしまったらしい。
「うう、会場の皆さんごめんなさい」
 そして体力の回復した澄香が頭を抱えながら告げる。
「気を取り直して」
「理夢琉ちゃんが歌うよ」
 直後当てられるスポットライト。
 ECCOがエレクトーン。光夜がギターでボーカル理夢琉のバンドパフォーマンスだ。
 曲は『熱源・バーニング!』
「みんな、盛り上がっていってね!」
 そう、煌く汗を舞い散らせ、歌い終りに三人は一緒にお辞儀をした。
 その歓声も消えぬうちにスポットライトが消え。響いてきたのは壮言なる音。
 夜空に響くヴァイオリン。
 咲が引きながら壇上に躍り出た。
 その音にスポットライトを浴びせられたブラッド、そのヴィオラが重なる。
 ヒートアップした会場に一時の安らぎが訪れる。
 誰もがその曲に聞き入った。
 直後、空に舞い散る光。
「うわぁ」
 咲もそれには驚いた。魔法による、魔法の花弁の雨。それは桜吹雪と相まって美しく。
 演奏者の二人も見入ってしまうほどだった。
「すごくきれいでしたね!」
 そう感激を隠さずいのりが告げる。
「いろんな出し物があったこの一発芸大会ももう終わりの時間」
「でもね、最後に私達も謳うよ」
 そういのりと澄香がアイドル衣装に身をつつみ壇上に登った。
 そして声を合わせて告げる。
「「春風の音~Thanks~」」
 響くイントロは、彼女たちを知るなら聞き知った旋律。
 対となった音の羽、エンジェルスビットが会場を舞い。それを追いかけるようにミニいのり。ミニクラリスミカが会場を飛び回った。
 華やかなパフォーマンスは二人の成長の証。
 だけどここまで成長できたのはみんなのおかげ。そのありがとうを伝える曲が会場に響き渡る。
「L・O・V・E、澄香ちゃーん! いのりちゃーん!!」
 そんな二人を鉢巻姿で応援するのは凛道。サイリウム両手にキレッキレのオタ芸を、会場の中心で、これでもかと。
「仮にも友人としては見ておれぬわ…………」
 しかし途中で、ユエリャンにどつかれていた。ずるずると引きずられる凛道。
「は、離してくださいユエさん! 僕は天使を、天使達を応援しにいかなければ! あああ!」
 悲しい悲鳴がこだまする中、二人は曲の余韻に浸る、壇上で向かい合い二人は微笑みを分かち合い。
「またここで君と一緒に歌えるって、幸せなことだね」
 澄香が告げた。
「ふふ、そうだね。でも、来年もそのまた次の年も、ずっとずっとキミと一緒にいるよ」
 いのりが告げた。
 そして鳴り響くアンコール。
「じゃあみんな」! 壇上においでよ」



●熱帯夜

「あれ? 央は?」
 マイヤは両手いっぱいの料理をテーブルに置いてシアンに問いかけた。
 するとシアンは木々の向こうを指さす。オープニングセレモニーもそこそこに、少し落ち着いてきたころ。
 央は氷月とジーブルに両手を取られ人ごみから離れた場所にいる。
「大丈夫かい?」
 そう央は氷月に気遣いの言葉を向ける。
「……食べ過ぎた」
 そう氷月が苦しそうに呻く中その背中をさする央である。
 すると、もう酔いが回っているのか、その体重を預けてきた。
 二人は手じかな桜の下に座ると、確保しておいた食料を幻想蝶から取り出す。
「まだ食べるのかい」
「ん……」
 お互いの口に食べ物を運ぶ二人、次第に距離は近くなり、央の膝に氷月がしなだれかかるような状態になってしまう。
 甘えているのだろう。
「仕事、忙しくて最近一緒に居られなくてごめん。だから今日くらい……」
「だい、じょーぶ」
「氷月?」
 そう央が問いかけた時にはもう氷月は意識を手放していた。
 スーッと寝息を立てて、寝言でポツリ。幸せとつぶやいたのはお腹がいっぱいだからだろうか。それとも。
 そんな氷月を見つめる央にジーブルは「綺麗だね、桜」とつぶやいて席を立つ。
 そして、その光景を凝視するマイヤとすれ違った。
 二人は何も言葉を交わさない、だが痛いくらいに思いは伝わる。
「……私も央の側に……居たい……」
 その時マイヤは手近なグラスを勢いよく煽った。度数高めのアルコール。心臓が早鐘を打ち。同時に理性が消え去っていく。
 モヤモヤしたこの思い。解消するにはどうすればいいか。知っていた。マイヤは走り出す。
「私も……好き、央」
 そう央に縋り付いて、告げた言葉に、央は何も返すことができなくて。
「ここはこんなに平和。貴方がいたのも、桜でしたわね。」
 そんな人間模様を俯瞰しながらシアンはそうつぶやいた。

   *   *

 個室を目指していたレミアと緋十郎。だが彼等はすれ違いざまにアルスマギカに襲われた。
 正確に言うと曲がり角でぶつかっただけだが、はずみでアルスマギカと接続、火照った自分の体と、それ以上に熱く重たい緋十郎の体。
 引きずるように二人は個室に入ると、人の視線が途切れたのをいいことに、レミアは上から覆いかぶさる。
「緋十郎好き、大好き、緋十郎の血は甘くてとっても美味しいの」
 その隣に倒れ込む緋十郎。
「大丈夫? 今わたしが介抱してあげるからしっかりなさい」
 酔い潰れた緋の寝顔見つつ。様々なことを思い出す。
「こんな日があるのもみんなのおかげよね。ありがとう」
 そして、レミアは緋十郎へと顔を近づける。その時であった。
 緋十郎の瞼がばちっと持ち上がる。
「む……レミア、どうした、顔が赤いぞ?」
「だって、緋十郎がその、可愛いから」
 そう頭を撫でるレミア。
「確かに、今日の俺はかっこよくはなかっただろうな」
 そう緋十郎はレミアを引き寄せだきしめる。
「ううん、今はカッコいい」
 内心いつものツンが全てデレに変わっている状態のレミアは胸が高鳴る。
 そのままレミアは這うように鎖骨へと顎を乗せ、そして首筋にかみついた。

   *   *


「はい、持ってきました」 
 そう個室の前で立ち尽くしていたフィーに、駆け足で歩み寄ったフィリア。
 その手に駆けられていたのは燕尾服で。
「……もうちょいマシなもんはなかったんで?」
 フィーは額を抑える。
「黒のドレスとどちらがいいかサイコロで決めた結果ですが、いけませんでしたか?」
 フィーはワインで汚れた自分の衣服をみて、これよりはましだろうと思い直し。
 そして部屋に戻って、シャワールームでその服に着替えた。
 後ろ手に扉を閉めると電気の落された部屋で一人。金色の髪を月光で洗う少女は美しく見えて。
 思わず息を飲むフィーである。
「こーやって誰かと花見するなんて思いもしなかったよ。……綺麗だな」
 そう儚げに振り返るアルト。
 彼女はフィーを手招きすると、その膝に頭を乗せた。
「スゲーキレーです」
「フィーの方が綺麗…………、……だなんて、言わせんじゃねぇよ。バカ」
 そう弱弱しいパンチをフィーの胸に。
「……このまま平和なんが続けばいいんですがな」
 そうフィーは愛おしそうに髪を梳くって、祈る様に目を閉じる。
 頬に温もりを感じて、フィーが目を見開けばそこにはアルトの顔があった
、くっつきそうなくらいそばにあった。
 その目はいつになく真剣で。
「なぁ、あたしの演奏……聞いてくれねーか?」
 その言葉に頷くと。アルトは部屋の隅にあった電子ピアノへ手をかける。
 曲目は月光。
 静かな旋律に聞き入るフィー。
「本当は夕燈も来れるはずだったんだけど」
「二人っきりの時は、他の人の話はやめてくだせー」
 そう首に回された腕にアルトは自分の手を重ねた。

● 桜の面影
「ちょっと待て! ズボンはだめだ! だいたいこれ以上脱ぐなんて聞いてないぞ」
 花見会場中心から上がる悲鳴。
 『レティシア ブランシェ(aa0626hero001)』である。彼はガルーに服をひん剥かれようとしていた。
 すでに上半身は可愛いワンピースで覆われ、髪飾りまでされる始末。
 つけまつげと口紅どちらがいいか問われ、両方に首を振ったために、唯一残されていた良心、ズボンに手をかけられているわけだが。
「レティちゃんかっわいー!! こっち向いてー」
 そんなレティシアの写真を撮りつつ、器用にズボンをひん剥こうとしているわけだ。
 ちなみにブラッドもLeへの餌付けゲームに参加させられたが、敗北条件も良くわからないままに服を脱がされ、着せさせられ、今や立派なメイドさんだった。
 可愛らしい……めいどさん……。
「く……こんな姿。レイラたちにはみせ……」
 その時ブラッドは唐突に言葉を切った。見つけてしまったからだ。
 美しい桜の木の下で佇む女性。
 残念。すでに見ていた。
 N.Nがレイラの車いすを押しつつ、こちらを見ていた。それどころかレイラはビデオカメラを抱えている。
「く、これは、これは違うんだ」
 そしてN.Nはレイラの耳に口元を近づけて。
「やめろ!!」
「野郎の生足みても誰も喜ばねぇだろうが!」
「大丈夫だって! 需要はある! 心配するなって!」
「そんな心配は誰もしてねぇ、そうじゃねぇ!」
 ギャーギャー喚き散らす男子たち。その騒動を鎮めるために一人のエージェントが送り込まれてきた。
 オリヴィエである。しかし彼もまた。変わり果てていた。
「おい、他の客の迷惑になるだろ。静かにしろ」
「お、リーヴィいいところに。お前も一緒にじょそ……」
 女装しようぜ、そう告げようとしたが、その心配はなかった。
 オリヴィエはすでに女装していた。
 夜の闇に溶け込むような深い青のドレス、まとめ上げられた髪の毛はウィッグなのだろう。口紅、チーク、まつ毛もばっちり。
 しかし特出すべきはその大胆なドレスだろう。
 背中はガッツリあきつつ前は抑えられている。
 サテンの腕まで覆うタイプの手袋と、スリットから見える太ももの線が美しい。
 ちなみにこれは理夢琉がやってくれた。適当な衣装しかなく、うまくたけが合わないなか、理夢琉が直してくれたし、メイクもしてくれた。
「……じろじろ見るな、馬鹿」
「あら、リーヴィすごい似合って、ポーズとってほら、ぐはっ!」
 直後オリヴィエからのアッパーが内臓を打つ。
 もんどりうつガルー。そんなガルーへ鍛え抜かれたたくましくもしなやかな足を惜しみなく露出させてぐりぐりと踏みつけるオリヴィエ。
 足を振り上げる度にドレスが巻き上がるが絶対領域は守れている。
「やめっ! やめて! それピンヒール!! ぐおおおおお」
 そんな光景をカメラに収めるレイラである。
「ところで征四郎はどこにいったんだ?」
 オリヴィエはそうあたりを見渡す、確かに先ほどから。征四郎の姿が見えなかった。

   *    *

 一人会場から離れて枯れた桜を見あげている少女がいた。
 蘿蔔である。
「なんで、枯れた桜ばかり見てるんだ? みんなと一緒に満開の桜を楽しもう。な?」
 『レオンハルト(aa0405hero001)』が告げると蘿蔔はゆったり振り返った。その瞳に桜が映る、けれど。
「………………本当だ、綺麗。かなちゃんとまた見たかったな」
「今度桜持って行こうか…………花屋で買えるかな」
「すみません、少しだけ、一人にしてもらえますか?」
「飲み物買ってくる」
 そうレオンハルトは踵を返す。
 取り残された蘿蔔、風のさざめき。遠い喧噪。
「かなちゃん。私、一人で桜を見あげてます」
 その時だった。
「スズシロ元気ない、のです?」
 振り返る蘿蔔、そこには征四郎が立っていて。彼女はジュースを差し出して微笑む。
「きゅーけいです」
「ふふふ、疲れるようなことはしていないのですよ」 
 そして二人は並んで座る。他愛ない話をした。幼馴染の話、アイドルの話、戦場の話。
「…………ちょっと、寂しくなっちゃって。ありがとうございます。もう大丈夫」
 そう立ち上がる蘿蔔、けれど、その背中は確実に傷ついていて。
「あの、スズシロ」
 征四郎は両手を広げた。
「アイドルのお姉さんがくれました。小さな水晶ですが、綺麗ですよね、スズシロに上げます。お守りです」
 その手の欠片を覗き込むようにしゃがみこんだ蘿蔔。
 その頭を征四郎は撫でた。そして優しく告げる。
「話せなくても良いのです。でも1人で悩むより、2人の方がきっといいです」
 その手に蘿蔔は自分の手を重ねる。
 彼女にも彼女の苦悩があるはずなのに、征四郎は自分こんなにも気遣ってくれる、こんなに小さな体で。
 蘿蔔は征四郎の両手を一度強く握ると、微笑みかけた。
「ありがとうございます、すごく、すごく元気が出ました」
「よかったのです」
 少女は二人で微笑みあう。
 そんな二人の間に、咳払いをしつつレオンハルトが合流した。
「あー…………お二人さん、クレープ買ってきたけど食べるかな」
 ちなみにキッチンで作ってきた、レオンハルトお手製である。
「あと、ステージまで時間ないんだけど?」
 あーーっと驚きの声を上げる蘿蔔。クレープを詰め込むと、ダッシュでステージを目指した。
「行ってきます! 大丈夫です! 征四郎さんのおかげで大切なことを思い出しました」
 そう告げて。

● 迷い道
「ごめん、ちょっとさすがにむり」
 今朝、自室の扉越しに『御童 紗希(aa0339)』はそう告げた。
「二人だけで言ってきて、うう、ジンギスカン……」
 その結果『カイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001)』とスワロウ・テイルは広い花見会場で、絶賛迷子である、方向性が迷子。
 何をしていいか分からない。
 祝賀ムード楽しみつつもカイのテンションがあからさまに低かった。
 まるで仕事終りのサラリーマンのように黙々と肉を焼くカイ。
 そんなカイのムードがだるいのでつられてテンションが下がっているスワロウ。
「兄さん去年姐さんと何してたんスか?」
 スワロウがそう告げた。
「去年も今年も大して変わらねえよ」
 悪かったな。そうボソリと悪態をつくカイ。
 その答えにスワロウは額を抑えた。
「んにゃー情けない! 御友人は先に進んでると言うのに!  一年棒に振ったんスか?!」
「うっせぇよ! 俺には俺のペースがあんの! 俺はこれから……」
「んな事言って! こないだそれで暴れたじゃないスか!」
 グゥの音も出ぬカイである。
「兄さんが荒ぶると関係各位にそこそこ被害が出るっスよ? やめて欲しいですわ」 そう手をひらひらさせるスワロウ。
「ウカウカしてると誰かに取られちゃうっスよ?」
 何かが心に突き刺さったのか、身をすくめるカイ。
「姐さん何も言わないけど学校では結構モテてるっス」
「……マジかよ?」
「大体兄さんは姐さんの事ちゃんと見てるんスか!?」
 外見16歳英雄から35歳英雄への説教恋バナ、情けなくて涙が出そうなカイは焼けた肉をホイホイとスワロウの皿にのせていく。
(兄さん動物的な勘は鋭いのに……)
 そう皿の上の肉を眺めてそう思うスワロウ。
(兄さん驚かしてやろうと思って従魔肉混ぜといたのに避けちゃうし……こういう勘の鋭さを何でこんな所で無駄遣いするかな)
 その時である、会場にキィンと響く声があった。
「え? 一発芸大会終わっちゃったんですか? 私知らないです」
 蘿蔔の声である。
「え? え? そんなに言うなら歌っていい? いえ別にどうしてもってわけでは。あ、あ! 曲、だめ、流さないで」
 響くピアノサウンド。そして淑やかなメロディ。
 意を決したように蘿蔔は壇上に上がった。
「大切な人が、ずっとそばにいてくれる奇跡のために、私歌います」

――それはあなたと過ごした時間。

 今日ここで迎えた時間はありふれた日々の思い出に、なっていくのかもしれない。

――桜が咲いている間だけの、儚く夢のような日々。

 ただ、それをありふれていると、感じ続けられるならとても幸せなことだと
思うのだ。

――あの日に戻ることもあなたに会うことも叶わない。それでも桜の下であなたを待ちます。

 その幸福が来年も続くように。
 誰もが悲しい別れをしなくていいように蘿蔔は願う。

――また、来年も桜を……

 またこの場所で、誰一人欠けることなく、桜を見るために。

――きっと一緒に、同じ桜を……

 その時だった。
 歌う途中。演出でスポットが自分に当たった瞬間。
 蘿蔔には見えた気がした。
 少女の背中、そして。
 聞こえた気がした。それは。
 ことば。

「桜。一緒に見られたね」

 やがて曲が終わるころ、蘿蔔は茫然と立ち尽くし、夜空を眺めていた。



●エピローグ

 蘿蔔が舞台を降りるとそこには遙華が立っていた。
「…………待たせたな! え、別に待ってません?」
「はい、蘿蔔」
 その手に手渡されたのは桜の木の枝。
「うちの桜だけど、水につけておけば三日は持つと思うわ」
「ありがとうございます」
 そうへなっと笑うと、蘿蔔は告げた。
「そういえば去年の景品まだ使ってないですけど。あれ期限あります?」
 その言葉にはもちろんないと、ロクトが即答した。

  *    *

 夜のお花見会は深夜を回った。まだまだ祭りは終わらぬようで外では騒ぎが
絶えない。
 咲はそれを二階のベランダからのんびりと眺めていた。皆の楽しそうな喧噪をBGMに、お酒を少し
「お料理美味しかったですか?」
 そうブラッドが尋ねるとドールは思い出すように笑う。
「うむ。途中変わった味のモノもあったが……どれも旨かったのう。」
「……ふふっ。今日は楽しかったわねぇ」
「えぇ。途中色んな事がありましたが……こんな日も、悪くはありませんね」
 ブラッドはそう頷き。
「うむ、斯様に賑やかな日も、偶には良いものじゃな」
 サルヴァドールはそう目を閉じた。

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結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • 藤の華
    泉 杏樹aa0045
    人間|18才|女性|生命



  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
    人間|16才|女性|命中
  • アサルト
    カイ アルブレヒツベルガーaa0339hero001
    英雄|35才|男性|ドレ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
    人間|22才|女性|防御
  • 聖霊紫帝闘士
    ニクノイーサaa0476hero001
    英雄|26才|男性|バト
  • シャーウッドのスナイパー
    ゼノビア オルコットaa0626
    人間|19才|女性|命中
  • 妙策の兵
    レティシア ブランシェaa0626hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
    人間|20才|男性|命中
  • 温もりはそばに
    ラドシアス・ル・アヴィシニアaa0778hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • 神月の智将
    ハーメルaa0958
    人間|16才|男性|防御
  • 一人の為の英雄
    墓守aa0958hero001
    英雄|19才|女性|シャド
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • トップアイドル!
    小詩 いのりaa1420
    機械|20才|女性|攻撃
  • モノプロ代表取締役
    セバス=チャンaa1420hero001
    英雄|55才|男性|バト
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • ストゥえもん
    ストゥルトゥスaa1428hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • ハートを君に
    GーYAaa2289
    機械|18才|男性|攻撃
  • ハートを貴方に
    まほらまaa2289hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336
    人間|20才|男性|回避
  • 家を護る狐
    古賀 菖蒲(旧姓:サキモリaa2336hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 幽霊花の想いを託され
    花邑 咲aa2346
    人間|20才|女性|命中
  • 守るのは手の中の宝石
    ブラッドリー・クォーツaa2346hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • 初心者彼氏
    鹿島 和馬aa3414
    獣人|22才|男性|回避
  • 巡らす純白の策士
    俺氏aa3414hero001
    英雄|22才|男性|シャド
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命
  • 魔法少女L・ローズ
    ルナaa3447hero001
    英雄|7才|女性|ソフィ
  • 御屋形様
    沖 一真aa3591
    人間|17才|男性|命中
  • 凪に映る光
    月夜aa3591hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • 天秤を司る者
    キース=ロロッカaa3593
    人間|21才|男性|回避
  • ありのままで
    匂坂 紙姫aa3593hero001
    英雄|13才|女性|ジャ

  • 氷月aa3661
    機械|18才|女性|攻撃
  • エージェント
    ジーヴルaa3661hero002
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 緋色の猿王
    狒村 緋十郎aa3678
    獣人|37才|男性|防御
  • 血華の吸血姫 
    レミア・ヴォルクシュタインaa3678hero001
    英雄|13才|女性|ドレ
  • 跳び猫
    ナガル・クロッソニアaa3796
    獣人|17才|女性|回避
  • エージェント
    千冬aa3796hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 心優しき教師
    世良 霧人aa3803
    人間|30才|男性|防御
  • 献身のテンペランス
    クロードaa3803hero001
    英雄|6才|男性|ブレ
  • きっと同じものを見て
    桜小路 國光aa4046
    人間|25才|男性|防御
  • サクラコの剣
    メテオバイザーaa4046hero001
    英雄|18才|女性|ブレ
  • 喪失を知る『風』
    国塚 深散aa4139
    機械|17才|女性|回避



  • Dirty
    フィーaa4205
    人間|20才|女性|攻撃
  • ステイシス
    フィリアaa4205hero002
    英雄|10才|女性|シャド
  • 今から先へ
    レイラ クロスロードaa4236
    人間|14才|女性|攻撃
  • 隣の安らぎ
    ブラッドaa4236hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • 悪気はない。
    酒又 織歌aa4300
    人間|16才|女性|生命
  • 愛しき国は彼方に
    ペンギン皇帝aa4300hero001
    英雄|7才|男性|バト
  • 暗闇引き裂く閃光
    大門寺 杏奈aa4314
    機械|18才|女性|防御
  • 闇を裂く光輝
    レミ=ウィンズaa4314hero002
    英雄|16才|女性|ブレ
  • Be the Hope
    杏子aa4344
    人間|64才|女性|生命
  • トラペゾヘドロン
    テトラaa4344hero001
    英雄|10才|?|カオ
  • 残照と安らぎの鎮魂歌
    楪 アルトaa4349
    機械|18才|女性|命中



  • かわたれどきから共に居て
    日暮仙寿aa4519
    人間|18才|男性|回避
  • たそがれどきにも離れない
    不知火あけびaa4519hero001
    英雄|20才|女性|シャド
  • 気高き叛逆
    薫 秦乎aa4612
    獣人|42才|男性|攻撃
  • 気高き叛逆
    ベネトナシュaa4612hero001
    英雄|17才|男性|ドレ
  • LinkBrave
    夜城 黒塚aa4625
    人間|26才|男性|攻撃
  • 感謝と笑顔を
    エクトルaa4625hero001
    英雄|10才|男性|ドレ
  • エージェント
    庄司 奈津aa4679
    人間|16才|女性|生命



  • 護りの巫女
    三木 弥生aa4687
    人間|16才|女性|生命



  • エージェント
    遠野 真aa4847
    人間|17才|男性|生命
  • エージェント
    ガラードaa4847hero001
    英雄|17才|男性|バト
  • 分かち合う幸せ
    宮津 茉理aa5020
    機械|17才|女性|防御
  • エージェント
    水無月 未來aa5020hero001
    英雄|16才|女性|カオ
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