本部

【終極】連動シナリオ

【終極】『監察』とPMは最期に笑う

岩岡志摩

形態
ショートEX
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 6~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2018/11/30 12:35

掲示板

オープニング

●『監察』と人間
 愚神ニア・エートゥス(az0075)は人の中に紛れ込んでいるとき、その強みを発揮する。
 暗躍を主とするのは、正面切って人間達と戦えば討たれるとニアが警戒しているためだ。
 だからニアは自分の周囲に人がいるように、時々人間達を拾い上げ救う真似をする。
 ニアに人間達を導いてやろうなどという高尚の精神は無い。
 人を救う行為はニアにとって自分達が世界に潜伏できる、生き延びるための手段でしかない。
 皮肉なことに、人間社会では捨てられゴミ扱いされてきた人間達は、ニアのもとでは人並みの生活を保証され、はじめて人として扱われたという声も少なくない。
 けれどニアは自身が救ってきた人々の感情に気づかない。人々が感謝をしても伝わっていない。
 それはニアが人間の本質をわかっていないから。
 人の悪意には敏感だが、自分という侵略者に救われた人間達がどう思うか想像できない。
 疑ってかかる人間や過去の秘密結社シーカのように独善に酔う者達の相手ならば得意だが、自分を恐れず向かってくる人間達には、うまく対応できない。
 それがニアという愚神の抱える歪(いびつ)にして弱点。
 そのニアが重要視するのは、『王』より課せられた『監察』という務めを果たしきれるか、ということ。
 途中でいくら人間達の命を拾い上げようが、一時的にH.O.P.E.と『共闘』しようがそれは変わらない。
 『王』の意志にそぐわず命令も果たせない自分は滅ぶべきという『狂信』がニアを形成している。
 滅びるのは構わない。だが『王』より与えられた務めを果たさずに滅ぶことは赦されない。
 だからこそニア・エートゥスという愚神は、その命令を受けると人間社会での全ての手続きを進め、この未来を選択した。

●『監察』の挑戦
 そしてニアは世界に挑む。
 ――hermysi regzi laga desglroy. (奈辺にまします 我らが王よ)
 ――degamvze zde vevairazicasa.(ここに滅びを顕わしたまえ)
 ――dera cauzidare ioebmana zi.(現世に虚無を、虚構に祝福を)
 ――ache etanunlries!(我らは楽園なり!)
 ニアより発せられた文言と共にドロップゾーンが展開し、世界を穢していく。
 そしてニアはH.O.P.E.ニューヨーク支部に自身の行動を通報すると共に、こう言い添える。
「我々と貴方がたを隔てるもの。それが貴方がたの掲げる『希望』です。我々は世界を穢すもの。貴方がたはそれに抗い救う者。貴方がたが護り抜けるか、私達が食い尽くすか。これは単純な競争です」
 そう言って通報を終えようとしたニアに向け、強引に通話に割り込んだニューヨーク支部長のエルヴィス・ランスローが問いかける。
『叩き潰してやる前に聞いてやる。何を企んでいる?』
「死の恐怖を乗り越え、強敵との戦いに奮い立ち、守るべき者達の為に必死に成長を願い、絆を強める。それこそが、『王』が望まれる結果であり、私が貴方がた人間に求めるものです」
『……あの悪党どもの為か?』
 エルヴィス支部長の言う悪党ども、とは既に討たれた愚神十三騎や自身の配下であるズセ(az0077)やラビスのことだ。
「彼らは悪として討たれました。ならば私も悪のまま、世界の『仇』として討たれないといけません」
『悪風情が偉そうに吠えるな。だがその望み叶えてやる。それ以上被害を出さずにそこで首を洗って待っていろ』
 なお幾ばくかのやり取りの後エルヴィスとニアの通話は終わり、エルヴィスは直ちにトリブヌス級愚神ニア・エートゥスへの対策へと動き出し、各所への連絡とエージェント達の派遣に動く。
「トリブヌス級愚神ニア・エートゥスが本格的に動いた。今北米のとある都市上空にドロップゾーンを展開して居座っているらしい」
 ニューヨーク支部からの依頼を受けたジョセフ・イトウ(az0028)がそう説明しながら機械を操作すると、スクリーンにどこかの都市にある高層ビルと、その上部にビルよりも広く大きな雲の塊が広がっている異様な光景が映し出された。
「この雲の塊がニアの作ったドロップゾーンだ。ニアの説明では、ビルの屋上からドロップゾーンに繋がるらしい」
 画像がある一点目指して拡大されると、ビル屋上から雲の塊に向かって階段のようなものが伸び、大きな扉へと繋がっているのが見えた。
「この扉の向こうにニア達がいるみたいだ。どうもこの扉だけが入口みたいで、それ以外の方法では中に入る事はできなかった」
 既にH.O.P.E.別働隊が様々な手段を駆使して雲の真下や真横、頭上から侵入を試みたが、いずれも雲の空間をすり抜け、眼下へのバンジーロープ無しのダイブとなった。なお試したのは全員共鳴済みのリンカーで、地上にあった複数の物置や車、ゴミ箱がリンカー達の着地の際、潰れてご臨終になった程度の被害で済んでいる。
 H.O.P.E.別働隊は現在限度いっぱいに動員され、ビル周囲にいる住民達の避難誘導に忙殺されているのでそれ以外の行動には応じられず、車両などの手配にも一切応じられないとの事だった。
「それと、外からの攻撃も効かないようだ。ニアからの密告でもそういうルールが設定されているという情報があった」
 今回もニアからの情報提供があったが、何かしらの交渉を持ちかけるつもりなのかと思えば、そうでもないらしい。
 ジョセフはニアがエルヴィス達に語っていた内容を『あなたたち』に伝え、『どう判断するかは任せるよ』と言った後、本題を提示する。
「トリブヌス級愚神ニア・エートゥスの撃破。もしくは撃退。これを頼みたい。多分ニアもそれを望んでいる」
 H.O.P.E.やエルヴィス、ジョセフが見抜いた愚神ニア・エートゥスの目的は、自分達の『破滅』。
 乗り越えるべき障害として『あなたたち』に打ち倒されることだった。

●『監察』の能力
 以下はニア本人からの申告。

 《影衣》
 自分や触れる対象の姿を特殊なライヴスで覆い、潜伏させる。

 《魔風操》
 闇色の巨大な竜巻を操る。自分を中心とした範囲攻撃。ノックバック(後退)や【翻弄】効果がある。

 《心覆》
 精神系BSへの完全な耐性を得る。パッシブ。

 《追風》
 効果時間中、1ターン内のメインアクション数が1増加する。効果時間10ターン。

 《転移風》
 風と一体化して数m先へ瞬間移動する。

●幕引き
 『あなたたち』が征く。
 ニアは待ち受ける。
 接触はほんの、刹那の未来。
 『あなたたち』とニア・エートゥス。『監察』や楽園達との結末はここにある。

解説

●目標
 ニア・エートゥスの撃破もしくは撃退

 登場
 ニア・エートゥス
 トリブヌス級愚神。『監察』『楽園の長』の異名を持つ。2回行動。今回は本気で『あなたたち』と戦う。

 リラ
 ニア配下の騎士めいた装束の女性型愚神。刀を振るう。ケントゥリオ級。2回行動。潜伏済み。

 防陣
 射程3sq以上の攻撃(物理・魔法問わず)を防ぐライヴスの壁を対象1体の周囲に展開。射程3以内の一撃で砕ける。
 
 転斬
 斬撃を対象の死角に瞬間転移して放つ。射程60sq。命中した場合、対象に【翻弄】を付与。

 紫吹
 対象の足元から無数の刺突を放つ。射程50sq、範囲1。直前に対象の足元が紫色に光る。

 オイ×28
 ニア配下の人型従魔。デクリオ級。低攻撃力・低防御。太鼓めいた打楽器を鳴らし、下記能力を駆使する。主にニアを庇う。潜伏済み。

 火鼓
 射程13sq。対象1体の物理・魔法攻撃力を3ターンの間100上げる。

 石鼓
 射程13sq。対象1体の物理・魔法防御力を3ターンの間100上げる。

 庇鼓
 射程13sq。対象1体を庇う。

 犠鼓
 射程13sq。自身の消滅と引き換えに対象1体を回復させる。

 状況
 北米のとある都市。その都市で最も高いビル屋上より上部にドロップゾーンが展開中。ドロップゾーンとビル屋上は1本の階段で繋がっており、階段の先に大扉がある。扉の向こうに縦横各50sqの床が存在し、周囲を雲が囲んでいるという光景が広がり、そこにニア達はいる。扉の先はドロップゾーンだが、床のフィールドより外には見えない壁が張り巡らされており出られない。周辺住民は避難済み。

 以下見取り図
        雲雲雲雲雲雲雲
 ビル屋上   雲/////雲
 □□□    雲/////雲
 □□□====扉/////雲
 □□□ 階段 雲/////雲
        雲/////雲
        雲雲雲雲雲雲雲

リプレイ

●終わらせるために
 高層ビル屋上と空に浮かぶドロップゾーンを繋ぐ階段を、10組のエージェント達が進む。
 待ち受けるはトリブヌス級愚神ニア・エートゥス(az0075)。
 通称『楽園の長』。愚神十三騎、『監察』(ケンソル)。
 愚神組織「パラダイス・メーカーズ(楽園の作り手達。以下PMと略)」を動かし、配下の愚神や従魔達のやったことも合わせれば世界に数多くの影響を与えてきた。
『勝っても負けても奴の思い通りか。いささか癪ではあるな』
 ベルフ(aa0919hero001)は、ニアが今回自身の敗北すらお膳立てした事に釈然としていない。
「それでも、この機会を逃すわけにはいかないしね」
 九字原 昂(aa0919)もそれは同じだったが、ニア・エートゥスは今回逃しても次の機会に討てる――などと言えるほど甘い敵ではない事は承知している。
 だから今回きっちりと仕留める。
『仕方ない。精々、俺達に都合のいい方に転がさせてもらうか』
 昂の言葉にベルフも自身の中で折り合いをつけたのか、頷くと昂と共鳴する。
 昂やベルフにはニアへの特別な思い入れはない。
 立ちはだかるならば淡々と退治するまでだ。
 同様の理由で橘 由香里(aa1855)と飯綱比売命(aa1855hero001)は今回の任務に参加している。
「まあ、ここの愚神とは縁もないのだけれど。ちょっと気になる事があるので増援に来たわ。よろしくね」
『そういうわけで、わらわともどもよろしゅうたのむぞ』
 仲間達にあいさつして回った後、由香里と飯綱比売命は共鳴する。
「愚神を倒す事は、王を呼び寄せる事にもなる。ヘイシズさんが言ってた事ですね」
『それでも倒さぬわけには参りません。ニアを撃破した後、王の意思は阻むべきかと』
 泉 杏樹(aa0045)と榊 守(aa0045hero001)はそう言い交しながらも階段を進む。
「今回はお友達がいっぱい。皆の癒しになる、榊さんとの、お約束、ですね」
『因縁の敵と戦う皆様を支援致しましょう』
 今回執事モードの榊は礼儀正しく杏樹に頭を下げ、頷いた杏樹は榊と共鳴する。
「この先にニアが……!」
『……逃がさんぞ。ここでケリをつける』
 月鏡 由利菜(aa0873)とリーヴスラシル(aa0873hero001)は、この場にいるエージェント達の中では、ニア・エートゥスとの因縁が最も深い。
 その一歩に、【神月】で旧エステル邸に現れたニアとの邂逅がちらつく。
 その一歩に、ロシアやアメリカで『楽園』を用意し人々を翻弄した悪辣さが思い出される。
 その一歩に、最初で最後と思えた交渉の場でニアが見せた狂信を想う。
 その一歩に、グライヴァー・チルドレン(愚神の子供達)研究所での決別を想う。
 かつてニアと関わった日々を踏みぬき、由利菜とリーヴスラシルは共鳴する。
「律動せよ、魂の絆! シンフォニック・ハート!」
 そして由利菜はリンクコントロールなど様々な手段でリンクレートを向上させる事も忘れない。
 ニアが待つ。
 エージェント達が征く。
 思えばこの2年間は、ずっとそうだった。
 東海林聖(aa0203)とLe..(aa0203hero001)もまた、ニア配下のズセ(az0077)やグリスプなどPM所属の愚神達を討ちとってきたが、ニアとの因縁も少しある。
「敵の殲滅か。あぁ、決着をつけてやるぜ」
 そのニアを討てる機会とあって聖の士気も高い。
「前回の戦場でも、取り逃がしちまったワケだしな……」
『……あの時とはまた勝手が違うし。油断はできないね』
 聖とLe..の言う前回とは、【絶零】でニアや愚神ソクに襲われたロシアの集落の人々を救い出す任務のときだ。
 その時、聖はニアに疾風怒濤の3連撃を叩き込んでいたが、ニアも巨大な竜巻で牽制し、痛み分けに終わっている。
 ただLe..は取り逃がしたとは思っていない。
(……見逃された、が正しいよ……ね)
 あの時ニアはシーカの命令に従うふりをして、壊滅に向け暗躍しており、H.O.P.E.と利害が一致していた。
 だから本気で応戦することなく、ニアは退いたとLe..は冷静に分析していた。
「行くぜ、ルゥ。今度こそ幕引きにしてやるぜッ」
 前の戦いでもそうだったが。連携を意識し、決定打を担う。
 役割を分担しアタッカーとしての務めを果たす。
『……剣の使い手としては……まぁ、でも。志違う剣は、どちらかが折れる迄、打ち合う事になる……ね』
「望むところだ」
 そう言い交して、聖とLe..は共鳴する。
(コレ以上。奴等に好きにさせねェ……やってやるぜ)
(……追い詰められた相手程、厄介なものも無いからね)
 その一方で、複雑な想いを抱えながら参加したエージェント達もいる。
 荒木 拓海(aa1049)とメリッサ インガルズ(aa1049hero001)もその一部だ。
「助けられた人間が居ると言い切れる稀有な愚神だな」
 情報部の調査では、幾つかの都市でそのような事例が複数確認されたらしい。
『その数以上に苦しんだ人が居るわ……』
 メリッサの言う通り、秘密結社シーカの『調停』。シャーム共和国やロシア、アメリカでの蠢動などニア達が暗躍した事例は事欠かない。
「肩を持つ気は無いよ。だが人も無自覚に助け、苦しめてる……共生出来るかも……と感じた時期もあったんだ」
 自覚が無かろうが、人を救えるならもっと別の結末もあったはずだ。
 そう思いながらも拓海はニア討伐をためらうつもりはなく、メリッサと共鳴する。
 拓海とメリッサの話を耳にした迫間 央(aa1445)とマイヤ サーア(aa1445hero001)も、内心は複雑ものを抱えていた。
 央やマイヤは別件で冷泉(れいぜい)愛結(あゆ)という人物から、人間との共生をなした愚神としてニア・エートゥスの名を聞いていたからだ。
(実際にニアが共生じみたことを成功させていたことは、言わないほうがいいかしら?)
(混乱するだけだから、止めておいた方が無難だな)
 央とマイヤはお互いだけが聞こえる音量で話をする。
 ニアは自身が密かに支配下に置いた都市で従魔達を投入した都市運営を行い、貧困問題を解決し住民達の生活レベルを引き上げ人々を救っていた。
 ただ情報部の調査によれば、ニアがなした共生は、異世界の侵食を進めるための紛いものだったことが判明している。
 今は倒すべき敵だ。
 ニア自身もそうH.O.P.E.に宣言している。
「乗り越えろと言うなら遠慮なくそうするまで」
『それが”王”へ挑む資格となるなら尚更ね』
 これは『王』に挑むための前哨戦。
 そう認識して央とマイヤは共鳴する。
「情報通りの舞台だね、踊らされてる感じもするけど、決着をつけよう」
 餅 望月(aa0843)は周囲を見渡し、情報に齟齬がない事を確認しながら階段を進んでいく。
『共存はそう簡単には行かないね、愚神は天使じゃないからね』
 百薬(aa0843hero001)はニアと直接関わりはないが、ニアと共存できた可能性を口にした。
「上に逆らえるかどうかが愚神と英雄の違いなのかな?」
 望月は愚神が『王』との繋がりが強すぎることが共存を妨げているのでは、と推測する。
『ワタシにはわからないけどワタシは天使だよ』
 だから王の言いなりになどならないと百薬は望月に伝え、望月も『じゃあ頑張ろうね』と返し、共鳴する。
 ――主役は他のみんなにお任せするけどね。
 そう望月は自分の役目を決める。
『いよいよ決戦だね。心の準備はもうできているだろう?』
 リオン クロフォード(aa3237hero001)の言葉に藤咲 仁菜(aa3237)は頷いた。
「仲間が無茶するなら最後まで付き合いますよ」
 仲間は絶対死なせない。
「絶対全員で生きて帰りましょう」
 それが自分の役割だと、仁菜は心に決めていた。
『大丈夫! 敵は強いけど今回も全員護り抜けるはずだよ』
 リオンも仁菜の決意を後押しし、両者は共鳴する。
 アルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001)と既に共鳴した氷鏡 六花(aa4969)は、黙したまま歩みを進めていた。
 時折双眸に名状し難い光が垣間見える中、内ではアルヴィナが六花の手綱をとることに尽力している。
(六花。怒りを抱くのは構わないわ。けれど憎悪の赴くまま突っ込んで勝てる敵ではないことは覚えておいて)
 アルヴィナはニアという愚神が正面から戦う種類の敵ではないと警戒していた。
「……ん。問題ない。……ぜんぶ、潰すの」
 罠があろうが絡め手を使おうが、全てを踏み越えてニアを討つ。
 それが自分の役割だと六花は決意し、既に思考を冷えたものに切り替えている。
 すべてを滅する。この命が続く限り。
 六花はためらわない。
 やがて大扉に到達すると、エージェント達の目の前で扉が開いていく。
 扉の向こうには白い床が広がり、その周囲は透明度の高い青空と白い入道雲がどこまでも続いている。
 そんな戦場らしからぬ空間の中に、愚神ニア・エートゥスはいた。
『……ユリナ、この静けさは不自然だ。恐らく向こうは従魔を大量潜伏させている』
 リーヴスラシルが由利菜に警戒を促し、由利菜や他のエージェント達も周囲を警戒しながら中へと進む。
 そしてエージェント達とニアは澄み切った空の上で対峙する。
 そんな中、周囲の雲の群れに向け、由香里はガトリング砲を構え引き金を引いた。
 7つの銃身が唸りを上げて回転し、発射音が連続して鳴り渡る。
 吐き出された銃弾状ライヴスの群れが雲の群れを貫くより前に無数の火花をあげる。
 弾着の火花はある場所に差し掛かると消え、代わりにニア配下の愚神リラが防陣で弾幕を打ち払い、姿を現す。
「はぁい。ちょっと派手目の挨拶だったけれど気に入ってくれたかしら?」
『由香里! 挑発しすぎじゃぞ!?』
 飯綱比売命の抗議を由香里は黙殺し、これがトリブヌス級愚神ニア・エートゥスらPMとの開戦を告げるゴングとなった。

●分断
 ゆっくりと、ニアの周囲にライヴスが膨れ上がる。
 周囲より鼓を叩く音が幾重にも雲の空間内に鳴り渡る。
「では、なすべき事を始めましょう」
 昂の言葉にニアが笑う。
 そう、なすべき事はただ一つ。 
「ええ。戦争を始めましょう」
 ニアの言葉と共に、その周囲に黒い暴風が渦を巻き、ニアを中心として壁の如く立ちはだかる。
『他のみんなが配下を片付けるまで、ニアをおさえるわよ』
 アルヴィナの助言に六花は頷き、終焉之書絶零断章+5を展開する。
 その身に纏うライヴスの如く、冷えた声で六花は宣言する。
「……ん。約束通り……殺しに、来たよ」
 『氷鏡(アイスリフレクトミラー)』と命名された微細な氷の鏡が複数周囲に展開し、六花の周囲を絶対零度のライヴスの輝きが帯びていく。
 乱反射によって増幅された六花の氷槍状ライヴスが群れとなり、射出される。
 六花の放った氷の槍の群れはニアに殺到するも、見えない何かに弾かれ霧散した。
『何の対策もせずに待ち受けていたわけではないってことよね』
 アルヴィナはニアにリラの防陣が付与されていたことをある程度予想していたらしい。
『だが、防陣は状態異常までは防げないらしいな』
 ベルフの指摘通り、六花の攻撃によってニアの体は凍りつき、拘束されていた。
「今のうちに、ニアの攻撃の機会を潰す事にします」
 昂はそう言ってニアに接近すると、猫騙を発動する。
 ニアの眼前で昂は白夜丸+5を振り払い、攻撃をするかのような牽制によって昂はニアを怯ませる。
 単純ではあるが、昂の行動はこの場において味方の損害を減らす有効打となった。
『防陣があって、ニアへの攻撃が制限されているみたいよ』
「そうなの? 予定とは違うけど、手を打っておいたほうがいいよね」
 この時六花へとリジェネーションを付与していた望月は、百薬からの情報に一瞬考えると予定を少し変更し、ニアへと肉薄する。
 顕現した聖槍「エヴァンジェリン」+5を手元にひきつけるなり、望月は電光の如き突きを繰り出した。
 神々しい輝きを帯びた白銀の槍の穂先が宙に煌めき、何かの破砕音と共に望月は防陣を砕いた手応えが伝わると、即座にニアのもとから離脱した。
 他のエージェント達もリラとオイ達へと向かう。
『完全に看破できないのは厄介だけど……今の央なら対応できる筈よ』
 マイヤからの助言も受け、央は何もない空間をじっと見定めると、忍刀「無」+5を振るう。
 央のライヴスに反応して龍紋が浮かぶ刀身が大気を切って吹き伸び、闇の一部を断ち切った。
「また潜まれると面倒なんでな! ここで倒させてもらうぞ!」
 その途端央の斬撃を浴び、負傷したオイが空間に現れて転倒する。
 他に身を潜めるオイ達の位置は、拓海のレーダーユニット「モスケール」がほぼ捉えていた。
『みんなに報せるのは今把握できている数のものだけでいいはずよ。残りは戦いながら捉えればいいわ』
【捕捉できた範囲ではアンちゃん、榊さんのところが一番密集してるようです。範囲攻撃をお願いします】
 メリッサの助言に従い、拓海は無線を介し仲間達へ把握できたオイ達のおよその位置を報せていく。
「ニアの周囲にリラ以外護衛がないとは思えない。ちょっと誘い出してみるよ」
 拓海はメリッサにそう告げると、ニアのもとへ移動を開始。
 すると拓海の予想通り、ニアを庇おうとするオイらしき反応がレーダーユニット「モスケール」に捉えられ、拓海のもとへと近づいてくる。
「まずはこいつからだよね」
 拓海はオネイロスハルバード+5を頭上で旋回させると、子守唄のような音色が周囲に響く。
 振り下ろされた斧槍の太く重い刃が風を裂き、肉と骨を断ち切る異音が響く。
 【SW(斧)】アックスチャージャーで威力を倍加させた拓海の一撃はオイの身を叩き潰し、塵に変えた。
『お嬢様。荒木様からの情報によりますと、どうやら私どものいる付近に従魔どもが多く潜んでいるようです』
「承知しました、です。拓兄様と一緒に、お掃除、するの。照準と誘導は榊さん。お願い、します」
 杏樹は拓海からの情報を受けた榊の誘導に従い、カチューシャMRLでオイ達の密集するとされる区域に狙いをつけ、引き金を引いた。
 その途端、杏樹の上半身が発射焔に包まれた。
 杏樹より続けざまに放たれたロケット弾状ライヴスの群れは大気を裂いて飛翔し、狙った区域へと一斉に着弾する。
 オイ達がいるとされる一帯が爆発に包まれる。
 拡散した衝撃波に弾き飛ばされ、引き裂かれたオイ達が一斉に姿を露わにして横転していく。
 杏樹の範囲攻撃によって潜伏が解けたオイに、由利菜が狙いを定める。
『ニアは力押しで戦うタイプではない。できるだけ敵の連携を妨げろ』
 リーヴスラシルはニアが配下と連携して戦うタイプだと見抜き、助言する。
「ニアと戦う前に憂いを減らしましょう。……リラの相手は、他の方にお任せします……!」
 レインディアボウ+2の弦を引き絞った由利菜がそれに従い、オイへと矢を放った。
 弓弦を鳴らして閃き飛んだ由利菜の矢状ライヴスが、見事にオイの頭を貫いた。
 射抜かれたオイは塵を噴いて倒れ、消えていく。
 そしてニアが六花より受けた拘束を解除し、動き出す。
 ただその方向と行動は、エージェント達の予想とはやや異なったものだった。

●リラとの攻防
 このとき愚神リラと対峙したのは、聖、仁菜、そして由香里の3人。
 リラには既に防陣が張られている事は、先の由香里の銃撃で判明している。
 聖と仁菜、由香里はいずれも接近戦を選択。
「久しぶりリラ。守りきれずに逃げ出した騎士さん」
『今度は逃げ道はないぞ。覚悟を決めてもらおうか!』
 まず仁菜がリラとの距離をつめていく。
 思い出されるのは愚神ズセ(az0077)、ラビスもまじえた総力戦でのことだ。
 騎士でありながら彼女は仲間を置いて真っ先に戦線を離脱した。
 それは仁菜やリオンからすれば、騎士らしくない。
「守りの騎士のあり方、見せてあげますよ」
 ――私だって強くはないけど、仲間を守る意志だけは負けるつもりはないの。
 そう心に誓い、仁菜はアイギスの盾+5を掲げる。
 聖なる文様が描かれた白く輝く盾は、あらゆる悪意や災厄を跳ね除け、穢れを祓い浄化するとされる。
 そのアイギスの盾+5を仁菜は防御ではなく、武器としてリラに叩き込む。
 ガラスの割れるような音を散らし、リラの防陣が破砕する。
 続けて由香里が武器を薙刀「冬姫」+4に換え、リラに迫る。
 振るうごとに白い余剰ライヴスが粉雪の如く舞い上がり、退いたリラの身を捉えようとした由香里の一撃がリラに回避されて空振り、隙が生じる。
 それを見逃すリラではなく、刀を握る腕が一瞬ぶれ、由香里に転移した斬撃が浴びせられる。
 だがそれは由香里の誘いだった。
 リラの斬撃と由香里の間に突如ライヴスの鏡が現れ、リラの転斬を反射する。
 由香里のライヴスミラーだ。
『うまくいったから良いようなものの、攻撃が他の者にずれていたらどうするつもりじゃ?』
「そのときは意地でも割り込んで相手にお返しするまでよ」
 由香里は飯綱比売命の危惧する声に、ざっくばらんに応じる。
 自分の放った攻撃を反射され、まともに浴びたリラはつかの間意識が薄くなる。
 仁菜と由香里の援護を受けた聖が入れ違いにリラへと襲いかかる。
(……剣士としては一目はって思うけど……やってる事は気に入らない……)
「……あぁ、そうだな……」
 Le..は眼前の愚神リラを剣士として一応敬意を表したいところだったが、味方を見捨てて逃げたことが仁菜やリオンと同じく、嫌悪の対象だった。
 聖もLe..に賛意を示す。
 眼前の愚神に手加減は一切不要。
「畳み掛けるぜ! 千照流……桂旋ッ!」
 《闇夜の血華》の銘を冠する魔剣「カラミティエンド」+5に聖のライヴスが集中する。
 重さと衝撃力を増した聖の一撃がリラに炸裂し、リラが体勢を崩して転倒したところで、さらに聖は追撃の刺突を放つ。
 聖より突き出された《闇夜の血華》は、そのままリラの肩を負傷させる。
 翻弄から立ち直ったリラは、立ち上がると防陣を付与する。
 暴風と化し、オイ殲滅に動くエージェント達へと突っ込んだニアに向けて。 
 それを見た由香里は拓海に無線を介し情報を伝え、交代を打診する。
【恐らく負傷者が出るわ。治療に向かうから、こっちの愚神を先に始末してくれないかしら?】
 少しの間をおいて、無線の向こう側より拓海より了承する旨の返信が届く。
【よろしくお願いします、橘さん。リラを倒してから合流します】
 そこで交信を終えた由香里と拓海はそれぞれ疾駆する。
 早くもエージェント達が構築しようとした作戦に、狂いが生じ始めていた。

●読み違い
 従魔達が鳴らす鼓の音が依然空間に響くなか、再び黒い竜巻が吹き荒れる。
 当初エージェント達はニア配下のリラやオイの撃破を優先していたが、ニアの乱入でその目論見は崩される。
 このときエージェント達は2つ読み違えがあった。
 1つ目はニアをおさえるエージェント達が2人と少なすぎ、突破された時の対策が不十分だったこと。
 2つ目は『戦闘が始まる前に』リラは防陣をニアに付与しており、ニアも追風という能力を発動し『3回行動が可能になった』こと。
 いかに精鋭といっても昂と六花の2人でトリブヌス級愚神を牽制し、押さえ続けるのはほぼ不可能に近い。
 そしてニアは『リラやオイ達が全滅するまで、エージェント達を一切攻撃せずただ傍観する』ことはない。
 ニアは必要であれば配下の愚神や従魔を守りに行く愚神だった。
 その結果、ニアは2人の牽制を突破してオイ撃破に動くエージェント達を黒い竜巻で妨害し続け、エージェント達も作戦の立て直しと配置の入れ替えを余儀なくされた。
『お嬢様。お味方は広く負傷されたようですが、負傷はやや軽い模様です』
 榊が味方の負傷状況を冷静に分析し、整理された情報を杏樹にもたらす。
 その杏樹は今、眼前にいるオイへブラッドオペレートを発動していた。
 杏樹より放たれたライヴスのメスがオイを深々と切り裂いて出血を強制し、生命力を削り取っていく。
「わかりました、です。癒しのアイドル、あんじゅー、です」
 杏樹は榊の報告に頷くと、戦闘を切り上げ味方への治療に移行。ヒールアンプルを駆使して味方を治療して回る。
【餅さん。ご協力、お願い、します】
 その一方、杏樹はライヴス通信機「遠雷」を介して、望月にも協力を募っていた。
『愚神のみになったら回復スキルを使う予定だったけど、出し惜しみはしていられない状況だよ』
【了解です、泉ちゃん。ワタシもこれから治療にあたります】
 百薬からも味方の治療を促され、望月は杏樹に同意する旨を伝え、動く。
 ニアの竜巻から味方を庇って受けた自身の負傷は後回しにし、望月が味方の治療に駆け回る中、オイが立ちはだかる。
「邪魔です、どいて」
 望月の叫びと共に、聖槍「エヴァンジェリン」が唸りを上げた。
 風が巻き起こり、銀色の軌跡を描いて望月の聖槍「エヴァンジェリン」が一閃したとき、既に杏樹の攻撃で脆くなっていたそのオイは腹を貫かれ、塵を噴いて消えていく。
「自分達が事を成すまで私が何の対策もせず一切手出しもせずただ討たれるだけ、などという思い込みはやめなさい。トリブヌス級はたった2人で押さえ込めるほど弱くありません」
 顕現した竜巻と笑みを消し、ニアはエージェント達へ忠告する。
 もし当初の作戦がニアに攻撃を集中し、その行動を妨害し続けるものだったら。
 そうでなくても最初からニアへのおさえに回るエージェントの数を増やしていたら。
 ニアは満足な行動が出来ず、オイ達はただニアの回復のために消費されるだけとなるなど、別の展開になっていたかもしれない。
『敵から言われたくはないのう。なまじわらわ達と話が通じるところが厄介じゃ』
 飯綱比売命はニアが人間の戦術を理解する愚神である事が、その能力よりも危険だと由香里に指摘する。
 その由香里は拓海と連絡を取り合い、配置を交代してニアやオイ達との戦闘に回り、今は味方をケアレイで治療していた。
「話の通じちゃう愚神って嫌いなのよ。交流を持ってしまって肩入れして、最後は破滅を看取る羽目になっちゃうから。……そういう観点でいえば、貴方はもう手遅れね」
 由香里はニアを手遅れと評し理由を説明する。
「あなたは手下となる人間達を救って、人々に頼りにされて、人間との関係性が半分愚神から英雄になりかけてるじゃない。だから“愚神として倒れたい”。人間から頼りになんかされたくない。でも好むと好まざるとに関わらず“もう貴方の立ち位置は変わった”」
 トリブヌス級愚神が危険な存在であることは由香里も承知している。
 ましてニアは愚神十三騎であり『王』に忠実な愚神である以上、世界や人々への危険度はさらに跳ね上がる。
「だから諦めなさい。今死んでも貴方は“手下の人間から惜しまれてしまう”。なら、今から違う道を歩んでみるつもりはないかしら。世の中、例外の一つや二つあるものだし」
 それでも由香里は、ニアにもう一つの未来を提示する。
 虚飾に満ちた人間との共生を、本物へと変えた未来を。
「ニアさん、こっちの世界へ来るつもりはないのでしょうか?」
 望月もまた、ニアに手を差し伸べる。
「ワタシ達に希望があることに気がついているなら、愚神にだって――」
 そう考えての望月の提案だったが――。
「『王』の消滅と引き換えならばお断りです」
 由香里や望月の提案をニアは拒絶した。

●リラ撃破
 この時リラとの戦いには、由香里と入れ替わる形で駆けつけた拓海が合流を果たしていた。
「仁菜ちゃん。東海林さん。スキルはまだ使えますか?」
 拓海の問いに、仁菜と聖はそれぞれ頷きを返す。
「藤咲、荒木。ちっと頼るぜ――」
 そう言って聖はチャージラッシュの動作に入る。
 その途端、不意に聖の足元に紫黒の空間が広がり、無数の刺突が放たれる。
 それはリラの術だったが、聖を庇う仁菜はアイギスの盾を掲げ、【SW】救国の聖旗「ジャンヌ」を翻して味方を守るフィールドを形成し、その攻撃をことごとく退ける。
「私の目の前で誰かが傷つくことを見逃すと思いましたか?」
『守ると決めた以上、攻撃は届かせない。これは確定した未来だよ』
 仁菜とリオンは事もなげに守り手の矜持をリラに示し、その間にも別方角から拓海がリラに迫る。
 リラがそれに気づき、自身に防陣を展開するが、拓海に対しそれは悪手だった。
『守りに入ったみたいだけど、これで敵の行動は打ち止めみたいね』
「そうなのかな? まあアレでオレ達の攻撃を凌ぐつもりならもう手遅れだけどね」
 メリッサが冷静にリラの行動を見極め、拓海はリラとの間合いを詰め、疾風怒濤を発動する。
 拓海のオネイロスハルバードが笛のような音色を奏でて旋回し、疾風の速度で3度繰り出された。
 拓海の1撃目はリラの防陣を破砕し、2撃、3撃とリラの身を切り裂いていく。
 ――護り手(ディフェンダー)が頼もしいと、攻め手(アタッカー)はやりやすいな。
 一連の動きを見ていた聖は仁菜と拓海に内心感謝する。
「チャージラッシュ完了。コレで決めるぜ、ルゥ」
(頼りっぱなしも問題だけど……同感だね)
 聖とLe..は短く言い交し、前に出る。
「全力でブッ飛ばすぜ、バトンタッチだ藤咲ッ、荒木ッ」
 聖の叫びに従い、仁菜と拓海が脇にそれ、入れ違いに聖がリラに襲いかかる。
「打ち砕く――! 血華淵ッ!!」
 聖は《闇夜の血華》を握り締め、疾風怒濤を発動する。
 聖達のライヴスともいえるライトグリーンの光を纏った《闇夜の血華》が三閃し、聖の3連撃がリラの胸を裂き、頭を貫き、首筋を断ち切った。
 ほぼ瞬時に生命力を断たれたリラは切断面から塵を噴き、消えていく。
 リラを撃破した聖、仁菜、拓海は残るオイ、そしてニアとの戦いへと急行する。

●激突
『オイの殲滅に向かった仲間達を、一部早めにニアに向かわせた方がいいんじゃないか?』 
「まだそこまで事態は悪化していません。これから巻き返します」
 ようやくニアに追いついたベルフが打開策を提示するが、昂は冷静に状況を見極めてそう答え、ニアとの間合いを詰めていく。
【範囲攻撃をします。ニア周囲より退避して下さい】 
 ライヴス通信機「雫」を介し、昂は味方に警告を発する。
 ニア周囲に味方がいなくなったことを確認した上で、昂は天使のラッパ+2を吹き鳴らす。
 天使のラッパよりほとばしった鋭い音色は、ライヴスと衝撃波を伴って周囲にぶち撒かれ、ニアやその周囲を打ち据え、防陣を砕く。
 やや遅れて、どこからともなく放たれた不可視の一撃がニアの身に炸裂する。
 ニアが体勢を崩し、少し離れた場所に央がいきなり湧き現れたかのように姿を見せる。
 それは【潜伏】によって身を潜めた央から放たれた【ザ・キラー】の一撃だった。
「”こういうの”は俺達も得意としてるところでな……!」
『身を隠して攻撃できるのは、貴方だけと思わないでよね』
 央とマイヤはそうニアに言い放って、再び【潜伏】によって身を潜め、ニアの注意を分散させる誘いをかける。
【みんな、急いでニアの周囲から離れて!】
 その時ライヴス通信機「遠雷」を介し、六花の口を借りてアルヴィナが警告を発し、央や昂達が一斉に退避する。
 入れ違いに六花が一条の突風と化してニアのもとに突っ込んだ。
「あなたがどれだけ人間を救ってようと……あなたに感謝する人間がいようと……あなたはここで……殺してあげる」
 六花が独自の改良した過程で、六花自身の血が結晶化したと言われている【SW】魔血晶+5の効果によって、威力が向上したディープフリーズが、ニアやその周囲に発動した。
 六花が両腕を開き、たちまち周囲へとライヴスの冷気が解き放たれ、ニアや周囲に残るオイ達を巻き込んでいく。
 六花のディープフリーズは、ニアやオイ達を絡め取ると急速にその身を凍結させていき、生命力を奪う。
 その威力に耐えきれなかったオイ達が凍りついたままその身を砕かれ、塵となって消えていく。
「ニア・エートゥス……気づかないのですか?」
 六花のディープフリーズで拘束されたニアに、由利菜が問う。
「破滅を望みながら、自分が生きていた場合の未来も見たくて仕方がない……私にはそう見えます」
 由利菜から見れば、ニアは矛盾だらけだ。
 自分が倒されるよう動きながらも、一方で人との関わりを捨てきっていない。
「……それがあなたの意思だというなら、あなたの王の望みはあまりにも中途半端ではありませんか。未来を望まないのに、未来を求めている……」
 少なくとも、ニアが救った人々には未来を与えている。
 ニアは答えない。
『……私は未来を紡ぐ為の英雄。思考を放棄した者よ、結末を語り見届ける資格はない!』
「私が何も考えていないと思い込み、敵を見下す貴方のそれも思考の放棄ですよ」
 リーヴスラシルの宣告に、ニアは淡々と切り返す。
「ラシルにひどいことを言わないで下さい!」
 叫んだ由利菜はリンクバーストを発動し、膨大なライヴスが由利菜より放出される。
「ラシル……! コード・エクサクノシ発動後、行動権をあなたに委ねます!」
 リーヴスラシルがかつて仕えた国王から賜ったとされる剣と同名のフロッティ+5へと装備が置き換えられる。
『了解した! ニア、私は異界の神として貴様を滅する!』
 グロリア社主導で改造された神経接合スーツ『EL』+5も起動して、由利菜の能力が底上げされる。
「大切な人と、生きて一緒に帰る為に、想いよ、届け!」
 ここで杏樹の叫びと共に、仲間達からのクロスリンクが由利菜のリンクレートを向上させた。
 央も由利菜のコード・エクサクノシ発動に隠れる形で、密かにリンクバーストを発動する。
「今だ! 決めてしまえ!」
 央もリーヴスラシルを鼓舞する。
 そしてリーヴスラシルが自身の容姿と行動権を得て、コンビネーションが発動する。
『神技、真明開放! ホッドミミル・リーヴスラシル!』 
 クロスリンクやリンクコントロールによって回数が底上げされ、フロッティが無数の斬撃の嵐と化し、ニアに襲いかかった。
 リーヴスラシルのコンビネーションによってフロッティが縦横無尽に旋回し、ニアの身を切り刻んでいく。
 そして宙に無数の光芒を描いたリーヴスラシルの斬舞が終わったとき。
 黒い竜巻がリーヴスラシルに襲いかかり、直撃を受けたリーヴスラシルを強かに打ちのめす。
 残ったオイ達の身が次々と弾け飛び、塵をあげ消える中、続けまざに巨大な竜巻が顕現すると、その場にいた他のエージェント達を薙ぎ払う。
 このとき望月や杏樹はリーヴスラシルへの追撃や六花への攻撃を庇ったため、リーヴスラシルは追撃を受けずに済み、六花も負傷せず、央は竜巻の連撃を潜り抜け、昂は影渡を発動して回避に成功した。
 六花もまた、リンクバーストを発現。氷雪のように見えるライヴスをさらに纏い、周囲に放出する。
 エージェント達の視線の先には、満身創痍ながらも、六花のディープフリーズによる拘束を解き、リーヴスラシルのコンビネーションを耐えきったニアがいた。
「想定と異なる事態になろうとも打開策を考える。生き延びようと最善の努力を尽くす。それが貴方がたが『王』に立ち向かうために必要なものであり、『王』が望まれるものです」
 オイ達の犠鼓によって急速に生命力を回復させ、ニアはなお障害として立ちはだかる。

●『監察』は失墜する
 そこにリラとの戦いを終え駆けつけた仁菜が割り込んだ。
 杏樹や望月、由香里と手分けして味方をケアレインで治療しながら叫ぶ。
「王が何だって言うんですか!」
 聖や拓海もニアがオイ達を『消費』した状況を見て、ニアとの戦いに切り替える。
 その間にも仁菜は訴える。
 ――愚神も英雄も滅んだ世界の住人。
 ――何で滅ぼされなきゃいけなかったの?
 ――何で滅ぼした奴に従わなきゃいけないの?
 仁菜は今の『王』がどんな存在か知っている。
 今の『王』は全てを喰らい尽くす。敵も味方も関係なく。
 ニアの忠誠が報われない事を知っている。
 愚神十三騎という存在が王のために倒されなければいけないことも知っている。
 大切なものや世界を奪った存在に喰われるために存在し続けるなんて悲しすぎる。
「貴方の言い分が正しいんでしょうね」
 ニアは仁菜の意志を肯定するが、『ですが』と続ける。
「私も既に他者を滅ぼす存在です。他者を生かす貴方がたと同じ旗は仰げません」
 仁菜とニアの意志は、どこまでも相容れなかった。
「では貴方も倒してみせます。王の物語はこの世界で終わりです」
『うん、終わらせよう。そしてみんなで生き残ろう』
 リオンも仁菜の背を押す。
 英雄達と紡いできた絆を利用なんてさせない。
「私達に絆を紡がせた事を後悔させてあげます」
 仁菜の掲げる【SW】救国の聖旗「ジャンヌ」が翻り、フィールドが展開される。
「……そして、貴方達も解放してみせます」
 10人のエージェント達には絶望的な状況すら吹き飛ばす意志があった。
 その方向性や目指すものに差異はあったが、己の意志で戦う力を有していた。
 由利菜の剣と盾は、絶望の冬に終わりを告げるもの。
 聖の大剣は、牙持てぬ人々を踏みにじる者達を打ち倒すもの。
 六花の魔法は、虚飾の楽園に打ち克つもの。
 昂の術は、押し付けられる暴力を妨げ、傷つくものを減らすもの。
 仁菜の盾や旗は、抗えぬ人々を害するものから護るもの。
 杏樹の舞いと癒しの力は、悪夢の終わりを祈る人々の願いを叶えるもの。
 央の刃とその術は、滅びを強いる世界に抗うもの。
 拓海の大斧とそのライヴスは、後悔から逃げずに今を選び取ったもの。
 望月の回復術とその槍は、目にするすべてを癒し、希望を背負うもの。
 由香里の駆使する術と戦意(ブレイブ)は、自身を肯定し呪縛を踏み越えるもの。
 彼らは激しい勢いを持つ『生(ライヴス)』。
 果敢に挑み。障害を押しのけ。前に、明日に進む者たち。
 ――勝つまで、勝つように戦う者たち。
 終わりが近づく。際限なく。
 漆黒の暴風が渦巻き、暴力と化してエージェント達に迫りくる。
 聖と六花、リーヴスラシルを庇った仁菜、望月、杏樹を打ち据えた。
『大丈夫だ! そのままみんなを向かわせて!』
「どんな攻撃であろうと、守りぬくと誓ったんです」
 リオンは仁菜を守りぬき、仁菜はアイギスの盾を掲げて痛みを受け入れる。
 勝つことが目的ではない。
 大切なのは、みんなが生き残り幸せになる事だと、仁菜は信じているから。
『無形なること霞のごとく。柔靭なること柳のごとし、だよ』
 功夫めいた言い回しと、聖槍「エヴァンジェリン」を駆使し百薬は致命傷を防ぎきる。
「これくらいでは倒れない程度には、経験を積んでいます。邪英化だけは防がせてもらいます」
 その百薬の加護のもと、光輪と大きな翼を展開し、望月は損害を踏み越える。
『お嬢様。損傷は小さく抑えこめました。今こそ由利菜様、ラシル様に向けライヴスリロードを』
 杏樹へのダメージをその加護で少なく抑えこめた榊が、杏樹にライヴスリロードの使用を進言する。
「由利菜さんとラシルさんへ、力をお届け、です」
 杏樹は自分の負傷の回復を後回しにして、ライヴスリロードでリーヴスラシルの術を復活させる。
 竜巻を潜り抜けた昂と央がまずニアへと殺到し、由香里より治療を受けた拓海が央へクロスリンクを行使した。
 その後を聖が続き、それぞれ別方向から由利菜と六花がニアのもとへ疾駆する。
『由香里、これで決着がつくじゃろうか?』
「これで全員そろったから、そうなるわよね。――さあ、行って」
 飯綱比売命からの援護を受けながら、由香里はひとまずの治療を終えた拓海を送り出す。
「橘さん、ありがとうございます。では少しタイミングをずらして向かいます」
 拓海は由香里に礼を述べた後、やや遅れてニアのもとに疾駆する。
 途中昂と央は短くやり取りした後、昂がまず先行する。
『残る敵はニアのみだ。乱戦になる事はなさそうだな』
 ベルフが戦況を冷静に分析し、昂も連携を心がけた一手を選び出す。
「悪く思わないで下さいね、これも僕の仕事ですから」
 昂は間合に入れたニアにそう告げ、繚乱を発動。
 昂の影より無数の花弁が舞いあがり、ニアへと襲いかかり、包み込む。
 ニアは≪心覆≫という能力で精神系の状態異常に対する耐性があるため、翻弄の効果は届かない。
 だが昂の花弁状ライヴスが霧散する中、央の攻撃を秘匿することに成功し、央は昂の援護のもと、ザ・キラーを密かに発動した。
 不可視の一撃がニアの身に炸裂して負傷させ、ニアの意識をつかの間そらす。
『同じようなタイプだからこそ、貴方には負けられない』
 マイヤは自身とニアに一部相通じるものを感じていた。
 だからこそ負けられない。
「俺はマイヤと共に往く……お前達の王を乗り越えて!」
 だからこそ、お前はここで退場しろ。
「必殺の一瞬は……ここだ!」
 央は聖や後続の仲間達へと後を託す。
(……なかなか簡単じゃねェな!)
(……そりゃ……そうだよね……)
 予想以上にしぶといニアに聖は不敵な笑みを見せ、Le..は冷静にトリブヌス級を倒す難しさを認めながらも、ニアを強襲する。
「アタッカーとしての本領を見せてやるぜッ! 爆ぜろ、緑光紫電を纏いし血華の剣舞!」
 聖は最後まで温存していた疾風怒濤を発動。
 聖の《闇夜の血華》が宣言通り電光の速度で3度繰り出され、ニアの身を3度穿つ。
『六花。残る敵はもうニアのみよ。ディープフリーズを使わなくても仕留められるわ』
 このときアルヴィナは範囲を絞った攻撃にするよう六花を説得していたが、ようやく六花が同意した。
「……ん。殺しきれるなら……問題ない……の」
 六花が独自の改良を加えた【SW】魔血晶の影響で、展開した氷の槍の群れが血色を帯びていく。
 血色を纏った氷の槍が束になって六花より射出され、ニアに命中するとその身を凍らせ拘束する。
 その間にタイミングをずらして駆けつけた拓海も、【SW(斧)】アックスチャージャーへの『装填』を終える。
『自分に酔ってるのかと思ったけど、違うみたいね。行動がちぐはぐでよくわからないわ』
 こちらの作戦の隙を突くかと思えば、敵とは思えぬ忠告をするニアの本質を、メリッサは捉えかねていた。
「そうだよね。ただ狂信的に何かをやろうとしていることは確かだな。それならわかるかな」
 拓海はニアの所業を認めていないが、全てを否定するつもりはない。
 ――だが、その狂信も、ここで終わらせる。
 拓海も決意すると共に、疾風怒濤を発動した。
拓海のオネイロスハルバードが子守唄のような音色を再び奏で、威力を増大させた攻撃を3度ニアの身に叩き込む。
 そしてリーヴスラシルが後を引き継いだ。
 この一撃に全てを賭ける。外れた時は――その時考えればいい。
 いつにも増してフロッティが絆(リンク)の輝きを放つ。
 疾駆するリーヴスラシルとニアとの間合いが急速に狭まる。
 指呼の間が対話の間に。対話の間が斟酌の間に。
 それさえ過ぎ、リーヴスラシルとニアは互いの瞳の中に己の姿を視認した。
『我らとニア。ともに天を頂かず。次に天を頂くは――』
 ――私達だ(です)!
 杏樹のライヴスリロードによって復活したコンビネーションを、リーヴスラシルは発動する。 
 10秒にも満たない刻の間に、20以上の斬撃がニアに殺到する。
 切上/切下/刺突/袈裟懸/逆袈裟/――あらゆる方向から襲いかかるリーヴスラシルの全方位斬撃。
 ニアが受け入れる。
 ニアの身をリーヴスラシルと由利菜のコンビネーションが深く、無数に断ち切り――。
 『監察』は失墜した。

●討伐成るも
 いつしか青空と雲のドロップゾーンが消え、周囲の光景はどこかのビルの屋上へと戻った。
「お見事です」
 仰向けに倒れたニアがぽつりと呟く。
 全身に斬痕を深く刻まれ、致命傷を負ってもニアはまだ存在していた。
『こうまでして果たしたかった命令って何?』
 リオンが問いに対するニアの答えは意外なものだった。
「……私が受けた勅命は『民の幸せを守れ』です」
 それは、ニアが知る中で最も古い『王』の意志であり命令だった。
 けれどニアは民の幸せとは何かがわからない。
 ただこの世界で自分は『存在するだけで人を不幸にする』災厄だということはわかる。
 だからニアはこの世界の人々や英雄達に道を譲り、滅びるしかない。
「だったら、聞けばよかったんです! この世界の人々の幸せとは何かって。『私達に』!」
 仁菜が耐えきれずに叫ぶ。
 そうすれば、こんな結末にはならなかった。そう思えたから。
「私はこの世界や異世界に生きる生命は無限の可能性を秘めると信じています。だからこそ、異なる世界同士が絆と文化で繋がり、一人でも多く幸福が得られる未来を望んだ。父と母が……そして英雄がいてくれたから、この道を選ぶことに迷いはありません!」
 由利菜はそんなニアに、幸せとは『生きること、共にあること』だと宣言する。
 そしてそう信じていた。
「杏樹は、トールさんも、ヘイシズさんも、大好きでした。世界の仇となり、散っていく、貴方達の為にも、幸せな未来を紡ぎます」
 杏樹はニアにそう約束する。
 その約束は、世界を蝕むしかない愚神達のことも、大いなる心で受け止めるものだった。
 ニアが致命的に間違った務めすら、尊重すべきものとして含めていた。
「……皆様に、頼みがあります」
 ニアはエージェント達に何事かを告げた。誰かが頷く。
「ありがとうございます」
 ニアは微笑み、周囲より光の粒子が噴き上がる。
 ニアを包んだ光の群れが空へと昇り、ニア・エートゥスは消滅した。
 こうして多くの因縁をはらんだ愚神十三騎、『監察』との戦いは幕を閉じた。
 任務を果たした10組のエージェント達は一度H.O.P.E.ニューヨーク支部へ顔を出し、そこで非常時の出動に備えていた真継優輝(az0045)や居並ぶ職員達の出迎えを受ける。
 支部長のエルヴィス・ランスローは現場に出動しており、今は支部にいないらしい。
 優輝はエージェント達へニア討伐の感謝と御礼を述べた後、エージェント達にそれぞれ1冊ずつ本を渡す。
「ニアからニューヨーク支部あてに、自分が倒されたら渡してほしいとの言伝と一緒に送られてきたそうです」
 それは愚神ニア・エートゥスが世界各地を遍歴する過程で見聞した内容を記述した本だった。
 ニューヨーク支部が中身を確認したところ、愚神や従魔に関する記述もあったが、いずれもH.O.P.E.のデータベースに記録されている情報ばかりで目新しいものはなかった模様だ。
「どう扱われるかは皆様にお任せいたします」
 優輝は頭を下げ、エージェント達に本を託した。
『さすがにこちらが有利になる情報を残す真似はしないか』
「あってもなくても特に困るものでもなさそうですね」
 ベルフと昂はニアの遺した本を一読した後、なんともいえない表情を見せながら帰路に就く。
『自己犠牲に酔っているのでもなく、本当にただ命令に忠実なだけだったみたいね』
「致命的に間違っていたけどね。民の幸せを守るというのは、こんなやり方でも考え方でもないよ」
 メリッサと拓海は、本を手に取りながらニアをそう評する。
『手段もその過程も間違っていた。けれど――』
「ニアは自身の役割や命令に対しては真摯だった。それだけは認められるところだな」
 マイヤと央は、ニアを倒すならせめて自分達だけでもそれには真摯に応じるつもりだった。
 そしてニアをその望み通り討った。
「自分を忘れないで欲しかった……そんなところかしらね」
 『王』に忠実でありながら、自身と役割の矛盾に耐えきれず、最後まで道化を演じきれなかった。
 由香里はニアの動向をそう推し量る。
『それがニアの愚かしさであり、弱さかもしれんのう』
 飯綱比売命も由香里の見解に同意するが明言は避けた。
 ただ、正しいと思っていた生き方以外の道もあるのだと知ってから、身の処し方を考えてくれればいい。
 そのくらいの気持ちでニアに臨んだが、予想以上にニアと向き合えたようだ。
『先に王を排除できていたら、ニアも悪さしなかったかもね』
「レガトゥス級より上だよね。そっちのほうが難しんじゃないかな?」
『おいしいあんまん食べてたらきっとなんとかできるよ』
「そんなグルメ漫画みたいな話だったらいいけどね」
 百薬と望月はそんなことを言いながら帰還した。
「全部予定通りにとはいかなかったが、なんとかなったな」
『……作戦通りに、ことが進むほうが珍しい……よ』
 聖が今回の戦いをそう評価し、Le..は釘を刺すが、一方で聖をねぎらうことも忘れていない。
『……まぁ、前回よりマシだったかな……。ヒジリー、おつかれー』
 ただニアは消滅しても厄介事を残していった。
 ニアが保有していた秘密結社シーカの合法部門や世界各地の企業体といった資産の類だ。
 そちらの手続きは優輝が行っているが、簡単には終わらないだろう。
 またアルヴィナはニアの遺したものから、ある不安を抱いていた。
 世界にはニアに救われ、未だニアに心酔する人々がいる。
 その人々がニアの退治を耳にした場合、ニアの仇討ちに動く可能性が高い。
 もし六花の前に、その人々が現れたら――。
『それだけは、させないわ。たとえ六花が望んだとしても』
 復讐は、これ以上連鎖させないとアルヴィナは密かに誓う。
 北極圏より世界へと押し寄せる異世界化はいまだおとろえる気配をみせず、戦局は混迷の度を深める一方だった。
 決戦の序幕は、まだ始まったばかりだ。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 藤の華
    泉 杏樹aa0045
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873

  • 九字原 昂aa0919

重体一覧

参加者

  • 藤の華
    泉 杏樹aa0045
    人間|18才|女性|生命
  • Black coat
    榊 守aa0045hero001
    英雄|38才|男性|バト
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • 狐は見守る、その行く先を
    飯綱比売命aa1855hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 守護する“盾”
    リオン クロフォードaa3237hero001
    英雄|14才|男性|バト
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969
    獣人|11才|女性|攻撃
  • シベリアの女神
    アルヴィナ・ヴェラスネーシュカaa4969hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
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