本部
遠足じゃ! 大人は童心に帰るべし!
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掲示板
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質問卓
最終発言2018/04/17 22:33:04 -
遠足参加者待機所(相談卓)
最終発言2018/04/21 12:16:12 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/04/21 11:29:22
オープニング
■本部のとある一室
カチカチカチ……カツカツ……
マウスをクリックする音とペンの音が静かな部屋に流れる。
犬耳のオペレーターは2時間前からパソコンと睨めっこをしていた。
二つ並べられたモニターには、片方に文章を書くソフト、もう片方に旅行サイトが表示されている。
「うーむ……この時期じゃと……こっちかのう? いやいや、こちらも捨てがたいのう」
遠足案と書かれた画面に、文化遺産、水遊園、いちご狩り、牧場など、日帰りで行ける今が旬のお出かけスポットの案が、箇条書きで次々と旅行先が打ち込まれた。
「とりあえず、場所、時間、持ち物を決めて……しおりを作らんと行けんな」
カチカチカチと、今度は一日の大まかなスケジュールが打ち込まれていく。
先日、会長に直談判をして遠足の許可を得た犬耳のオペレーターは、楽しそうに計画を立てていく、それはH.O.P.E.に所属するエージェントは、ほぼ無料で参加できるというものであった。
折角許可を得たからと彼は張り切って作業に没頭する。
そして数時間後、彼は完成したしおりを手ににっこりとほほ笑むのであった。
■遠足前夜
企画者の彼は、自宅でいそいそと明日の遠足の準備をしていた。
「これはいれたから、あと必要なものは……天気予報は晴れじゃったが、雨具は必要なのかのう……」
しおりに書かれている持ち物欄にチェックを入れていき、忘れ物がないかを確認する。
「よーし、後は寝る前に明日のお弁当の仕込みだけやっておいけば完璧じゃな」
全てが終わり床に就いた彼に待っていたのは、ワクワクして眠れないまま夜を過ごし睡眠不足と言う朝なのであった。
解説
◎目的
各自遠足を楽しむ!
●しおり1P
<日程>
10:00 駅集合
Iバス移動
11:00 イチゴ狩り(45分+休憩15分)
Iバス移動
牧場
12:00 昼休憩(30分)
12:45 手作り体験(30分)
13:30 自由時間(2時間)
15:45 集合
16:30 駅解散
●しおり2P
<持ち物>
□お弁当、水筒
□レジャーシート
□お小遣い(節度を持って)
□雨具(天気予報を各自確認)
□ハンカチ、ティッシュ
□しおり
※必要な人は各自薬を用意すること
□酔い止め
●しおり3P以降
約束事~メモ欄
◆詳細
・イチゴ狩り とちおとめ
練乳、生クリームを付けて楽しむこともできます。制限時間45分いっぱい食べつくしてください。
・手作り体験 各30分 どちらか片方選択
手作りアイス、手作りバター
◆牧場について
エリア
動物エリア:牛、馬、羊、アヒル、うさぎ、アルパカ、カピバラなどと触れ合えるエリア
湖エリア:遊覧船でまったりのんびり景色が楽しめる約20分
冒険エリア:ゴーカート、アスレチック、迷子の館などがある。
※アスレチックの横に、芝生がある場所もあり、こちらで昼休憩をする予定です。
迷子の館:中が迷路になっている。若干ホラー(ドラキュラ、ミイラなど)よりなため、怖いのが苦手な人は大変かもしれません。
お店エリア:ソフトクリームなどのアイス、新鮮な牛乳などお食事処が複数あり、お土産屋さんなどもある
リプレイ
午前10時ちょうど。集合場所である駅前には2台のバスが並んでいた。各自到着しトイレなどを済ませた後、乗り込んでいく。
「えっと……お主たちはこっちのバスじゃの」
引率責任者である剣太がメンバー表を確認しつつ、乗り込むバスを指定していく。空っぽだったバスは時間が経つにつれ、どんどんと席が埋まっていった。
もう少しで出発だという時、さあ行こうと言いたいところではあったが、何人かがそろわないでいる。どうしようか、そう考えたところで、ばたばたと揃うのであった。
さあ、遠足の時間だ。ゆっくりとバスは進んでいくのであった。
■バスの中
ひよこ型の黄色いリュックから、トランプを取り出したセラフィナ(aa0032hero001)。張り切って準備したのだろうが、いったい何を入れればそんなにパンパンに膨らむのだろうか。
『なにをやりましょうか! ババ抜きですか? 七並べでもやりましょうか?』
通路側にある補助席に混ぜ終わったトランプを彼女は並べる。
「……俺は遠慮する」
隣に座っていた真壁 久朗(aa0032)は目を瞑ったまま彼女に話しかけた。
いつもの事だとセラフィナは気にせず、通路を挟んで反対側に座るエージェント仲間とトランプをすることにした。
「流石にちょっと狭いから、ババ抜きがいいんじゃないかな?」
セラフィナに誘われ、佐倉 樹(aa0340)も相棒のシルミルテ(aa0340hero001)と共に、参戦する。
『やルからにハ、勝ヨ~!』
にこにこウキウキでシルミルテは配られたカードに目線をやる。カードの中に気になるものがあったのか、少し眉をしかめるのであった。
「せーちゃんはおやつに何を持ってきたの~?」
自分が持ってきたおやつを口に運びつつ、木霊・C・リュカ(aa0068)はにこにこと隣に座る彼女に話しかけた。
「征四郎はこれを、持ってきました!」
そういってチョコでコーティングされた細いプレッツェルを一本リュカの方に差し出す紫 征四郎(aa0076)。
何気なく差し出されたソレをそのままパクっと口にするリュカに、征四郎はうっすらと頬を染めたのだった。
『……リーヴィも何か食べるか?』
通路を挟んだ右側から少し熱い空気を感じながら、ガルー・A・A(aa0076hero001)は彼にお菓子を勧める。
『いや……いい。この後イチゴ狩りもあるからな……』
オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は、差し出されたお菓子を断ろう――と思ったのだが、彼が折角くれるというのだからと差し出された一つを受け取るのであった。
『楽しみだね~!』
伊邪那美(aa0127hero001)は、とても楽しそうに隣にいる彼に話しかける。
「……楽しめるといいな」
楽しみだと笑う彼女に、御神 恭也(aa0127)の雰囲気はいつもより柔らかく感じた。そのまま彼の視線は彼女から景色が流れる窓の外へと移っていく。
『なかなか、懐かしいものを頂いてしまいましたね?』
遠足の参加者全員に配られたしおりに目を通しながら、構築の魔女(aa0281hero001)は
辺是 落児(aa0281)に話しかけた。
「ローーー」
彼は構築の魔女同様、遠足のしおりを眺める。
苦笑とも微笑ともつかない表情で構築の魔女はページをめくるのであった。
「リーヤちゃん食べる? ここの凄い美味しいんだよ」
御童 紗希(aa0339)は、おやつに持ってきたタタミイワシを友人に手渡す。
『……ん、栄養は大事』
自分の体調に合わせ食べていいもの悪いものに気を遣いながら、ユフォアリーヤ(aa0452hero001)は、ありがたくイワシを頂戴する。
『(マリは何故干物をおやつに指定したのか……?)』
彼女の持ってきたタタミイワシに対し、おやつよりはつまみなんじゃないかというツッコミを心の中にしまうカイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001)。
楽しそうにする二人を横目に、ユフォアリーヤの膝枕で死んだように眠る彼に視線を向ける。
意識がないのではないかと思うぐらい微動だにしない麻生 遊夜(aa0452)だったが、それもしょうがないだろう。
彼にとって地獄のバス移動。乗り物酔いをしてしまうため、彼は早々に意識を手放していたのだった。
「誘ったはいいが、来ないかと思っていた、ぞ」
淡々とアリス(aa4688)は、そう口にする。英雄の葵(aa4688hero001)がいない今、「2人だけというのは初めてか?」と言葉を続ける。
「お誘いを断る理由がありません」
そう言葉返す茨稀(aa4720)の英雄であるファルク(aa4720hero001)もまた、お留守番なのだそうだ。
初めての二人だけの時間が遠足とは――そんなことを思いつつ、目的地までの時間は流れるのであった。
11時頃、現地到着。ぞろぞろとバスから降りてくる一行。
「来たはいいが、遠足なんて言われてもなぁ。ガキじゃあるまいし」
狭い車内から解放され体を伸ばす柳生 鉄治(aa5176)は、少し眠そうにあくびをした。
『やっと着きましたか』
到着したということで、幻想蝶から姿を現すブリタニア(aa5176hero001)。日傘を優雅に広げる姿はまさに女神。彼は一瞬見とれるのであった。
■イチゴ狩り
「45分ですって。いそがなきゃ、ですよ!」
リュカに速度を合わせるも、いつもより少し足早になる征四郎。白い発泡スチロールの器には生クリームが盛られている。
「ふふーふ、夕食分も食べていかないと!」
にこにこと彼女の後ろをついていく彼の右手は風に吹かれて少しひんやりと感じた。
「……、すみません、リュカ。手が塞がってしまうので。障害物は教えますね」
いつも繋がれていた右手は一瞬触れたかと思えばすぐに離れてしまう。
「(年頃の女の子だしね)」
少し寂しさを覚えつつ時間は過ぎていくのであった。
イチゴを取るのは征四郎に任せ、自分は近くにあるイチゴをスマホで見て撮ったりする。
「はっこれが流行りのインスタ映え……?」
パシャパシャと連続で写真を撮る。
「あ、その写真、可愛いです!」
うまく撮れたなと思った写真は彼女に見せたりして、二人してキャッキャとはしゃいだ。
「おいしい! ぜいたく、ですね……!!」
幸せをかみしめるように笑う彼女に、リュカも笑う。
「スポンジもあればショートケーキだ!」
ちょっと残念だねなんて会話もしながら。
「お兄さんの方にばっかり渡してたりしない? ちゃんと食べてる?」
次々に渡されるイチゴに、そんなことを心配するも「ちゃんと食べてますよ!」と彼女からは帰って来るのだった。
「なんだか、夢みたい、です」
そっと呟かれるその言葉に、彼は静かに頷く。
普段通りに見えて少しぎこちなさが見え隠れする二人のイチゴ狩りは、ほんのり甘酸っぱい香りを匂わせ終わりを迎えるのであった。
***
「なにか、こう……少し前に行ったようないかなかったような気がするのですけど……?」
イチゴ園に着くなり、胸に違和感を覚える構築の魔女。
「ローロロ」
気のせいだとは頭では分かっているが、どこか突っかかりが取れなかった。
「えぇ、でもいちご狩りに出かけた形跡も記憶もないんですよね」
イチゴ狩りに来たとしても忘れることはないだろう。そんなに忘れっぽくはなかったはずだ。
「………ロ」
同じことを思っているのか、落児も頷く。
「ふむ、落児もですか……ますます謎が深まりますが今は楽しみましょうか」
胸の突っかかりはさておき折角来たんだ、今はイチゴ狩りを楽しまなくては。
「ーーロロ」
「それじゃ、出口で会いましょう。私はこちらを巡りますので」
二人は入り口付近でわかれ、それぞれイチゴ狩りを楽しむことにしたのだった。
「どれも食べごろなのでしょうけど美味しいいちごの見分け方は……」
前日に調べて置いたイチゴの取り方に倣い、鮮やかな真っ赤なイチゴを取っていく。
基本何もつけずにそのまま食べてゆく。まれに練乳を少しだけちょっとした贅沢を頼むのであった。
集合時間きっかり10分前に、落児とは出口で改めて合流する。
「たしかに、成人男性一人ではわずかに居心地が悪いかもしれませんね」
「ロロ……」
「まぁ、それでも楽しんだようで何よりです」
色々と思うところのあるイチゴ狩りではあったが、それなりに楽しめ終わることができたのだった。
***
イチゴ狩りでテンションの上がっていた紗希とカイだが、始まるや否や食べ方についてちょっとした討論に発展するのであった。
「苺にお塩かけるとか有り得ないから!」
カイが持参した塩をイチゴに振りかけるのを見て、「そんな食べ方は邪道だ!」という話になる。
『西瓜にかける感覚と一緒だよ。俺は西瓜に塩はかけないけど苺は塩派なの!』
スイカにだってかけるじゃないかと、カイは反論するのであった。
「なんで苺にかけて西瓜にかけないのよ?」
『甘いのかしょっぱいのかはっきりしないのが嫌なんだよ。お前こそそんな練乳かけまくってたら練乳の味しかしねえだろ? 素材の味を楽しめよ』
イチゴの味を生かすには、甘みを引き立てる塩が一番だと胸を張る。
「練乳は苺の為にある……いっそ缶の練乳の中に苺突っ込みたい」
極度の甘党なのか、たっぷりの練乳をいちごにつけながら、そう話す紗希にカイはしれっとした目をするのだった。
『そっちの方が有り得ねえ……』
赤い一粒が真っ白に染まるのを『うわぁ……』とした目で見る。
「ありえなくない! 最高の食べ方だから!」
真っ白な粒を口に運び幸せそうな笑みを見せる紗希。食べ方はさておき、そんな笑みを浮かべる彼女を見てカイも笑みを浮かべた。
そんな話をしつつも、なんだかんだ二人仲良く一緒にいちご狩りを満喫する。
バカップルがイチゴの食べ方を討論してる間に楽しいイチゴ狩りの時間は、あっという間に過ぎていくのであった。
***
イチゴ好きの友人達の様子を遠巻きに見守りつつ、マイヤ サーア(aa1445hero001)の手を取り肩を並べて迫間 央(aa1445)は摘み食いをする。
「大粒で美味しそうだ」
真っ赤で色鮮やかな一粒を選び、次々と口に運んでいく。
『えぇ、とても綺麗な赤……』
真っ白なドレスを身にまとう彼女が真っ赤な一粒を手に持つと、より一層鮮やかに見えるような気がする。
ふいにイチゴのような赤い瞳の彼女を思い出す。
『……ちゃんと帰ってくるといいわね』
「……そうだな」
二人だけの世界が少しの間流れる。
『美味しいわね……』
普段あまり飲食をしないマイヤであったが、折角参加した遠足だ。迫間に合わせイチゴを一粒一粒口に運ぶ。素直に美味しいと思うのだった。
「美味しいな……」
彼女があまり飲食をしないのはわかっていたが、こうやって一緒に食べれるのはどこか嬉しい気持ちを彼は感じるのであった。
「……折角だ。そのまま食べるだけじゃなく、何かつけてみようか」
知人に、生クリーム、練乳と勧められ、違った食べ方に挑戦する。
まず最初に生クリーム。
『甘いわね……』
さっぱりした甘さの上で、濃厚なクリームがマッチして絶妙なコンビネーションを繰り広げている。とはいえ、甘いもの×甘いものだ。甘党でもなければなかなか食べないだろう。
「……ケーキって感じだな」
食べる機会も多々ある組み合わせではある。スポンジが恋しい。
続いて練乳を下手を取った方にちょっとつける。
『……甘い』
「な……」
この組み合わせは、この一言に尽きる。美味しいのには変わりないのだが……。
年度が替わり、ばたばたしてつかれていた迫間であったが、甘さによって少しでも疲れが取れれば良いなと彼女は心の中で思うのであった。
***
友人たちにイチゴの取り方や食べ方のコツを教えてもらいつつ、GーYA(aa2289) とまほらま(aa2289hero001)はイチゴ狩りを楽しんだ。
「こんな食べ方もあるんだ」
先のとがった方より、ヘタのほうを先に食べる方が甘さを感じられて美味しいだとか、練乳、生クリームの組み合わせは最高だとか。
最初はそのまま何もつけずにまずは一つ。
『ほんとね、冷たくて美味しいわぁ』
ビニールハウスの中は少しじめじめとした熱さがあったのだが、友人に教わった氷水につけながら食べるという方法でひんやりとした冷たさを口の中で感じることができた。
にこにこしながらイチゴを頬張る友人から、イチゴ大好きオーラを感じつつ尊敬の眼差し送る。
『うふふっ、美味しいわねぇ』
「うん、美味い……」
さて、お次はどんな食べ方をしようか。
***
「……食べ放題というのは良いものだな」
到着するなり、誰よりも足早にビニールハウスへ歩みを進める日暮仙寿(aa4519)。
農家さんから制限時間などの軽い説明等が終わり、広いハウス内へ入ったのは彼が一番なのではないだろうか。
イチゴスキーの仙寿は内心喜んでる――というか傍目から見てもわかるぐらいそわそわとしていた。
「苺は尖がっている部分の方が甘い。ヘタの方から食い始めれば最後まで甘い苺を楽しめるぞ」
友人にイチゴの美味しい食べ方を伝授しつつ、自分も堪能する。
「今の時期、ビニールハウスの苺は大抵ぬるいからな。水に漬ければ冷えた苺が楽しめるし、実も引き締まるからより一層美味くなる」
持参した氷水の入った水筒を友人と不知火あけび(aa4519hero001)に手渡す。
甘い苺の特徴から採り方まで分かりやすく説明をする彼に、あけびは楽しんでるなと思いつつ教えられた通り甘い苺を堪能するのであった。
***
「しかし、お前なら金に物を言わせてクソ高いのを取り寄せそうなもんだけどな」
高級なイチゴを取り寄せそうなブリタニアだったが、こうして現地で直々に取ろうというのだから珍しいなと思った。
『……??』
しかし、彼女は首を傾げる。
「だってよ、こんな所でわざわざイチゴを獲ろうってんだぜ?」
普段だったらそんなことをしないだろう。珍しい提案だったからこうして参加したわけでもあるのだが。
『ええ、ありがとうございます。』
だが、考えが甘かった。彼女が直々に取るはずがないのだ。
「……は?」
『だって、鉄治が獲ってくれるのでしょう??』
「……はぁ!?」
あくまでとるのは鉄治だと、彼女はにっこりと笑うのであった。
「……くそっ、マジかよ」
惚れたが負けというのは本当の事だろう。彼女に笑みを向けられお願いされれば断れるはずがないのだ。
『鉄治、手が止まってますよ。』
離れたところから日傘の下で見ているブリタニアは、もちろん一切手伝わない。ぶつぶつと文句を言いつつ、なんだかんだ彼女に従ってしまうのであった。
美味しいイチゴを選び抜き彼女の食べれる量を、配られた容器に盛り付ける。
「くそっ、マジで疲れた……」
ドサッと彼女の隣に座り込む鉄治に彼女は揃いのティーカップを手渡す。
『さ、鉄治も飲むのです』
彼女の淹れた紅茶の味は神レベル。なにせ、女神が淹れたというのだから。
「お、おう……」
受け取った紅茶を一口飲む。うん、美味い。
ご褒美も忘れないブリタニアに、なんだかんだ鉄治も幸せそうであった。
***
今回の遠足で「メインと言ったらイチゴ狩りだ!」と張り切ってハウス内に入る雪室 チルル(aa5177)とスネグラチカ(aa5177hero001)は、せっせと食べることなくイチゴをとっていく。
掌より少し大きいドンブリの形の白い発泡スチロールの器は、あっというまに赤い粒で埋まっていった。
「制限時間内にイチゴをたくさん採るには先に確保するのが最優先よね!」
ただ大きいのをひたすら取っていると思いきや、さすがはチルル、ちゃんと下手まで真っ赤で甘いのを選んでいるのだ。
『それはいいけど、みんなの分まで取りすぎないようにね』
このままでは、美味しいイチゴは全部彼女の元に集ってしまうんじゃないかという勢いに突っ込まずにはいられない。
「早いもん勝ちよ!」とキランと効果音が出そうな顔をする彼女の器はあっという間に溢れんばかりのイチゴで埋め尽くされ、零れ落ちそうなところで収穫は終わるのであった。
『ところでいちごを集めたらどうするの?』
ところどころ摘みつつ、こんなに集めたイチゴをこの場所で全て食べるというのだろうか。
「もちろんいちごは確保後、お昼ご飯までしっかり保存するよ!」
そう言って持参したタッパーにたくさんのいちごを詰め込み、余った時間はゆっくりとイチゴを堪能するのであった。
***
「ここのは質が良いな……ほれ、洗い終わったぞ」
洗わずとも食べれるのだが、リーヤの体調を考え念のためイチゴを洗う麻生。
『……ん、美味しい美味しい』
嬉しそうにイチゴをもりもりと食べるリーヤの尻尾は、右へ左へとゆらゆら揺れていた。
リーヤの為にせっせと摘んでいく彼に、たまに食べさせ合いながら二人はイチゴ狩りを堪能するのであった。
***
『イチゴの前には全てが正義だよ』
百薬(aa0843hero001)は次々とイチゴを口に運んでいく。
「それは賛成するしかないね」
うんうんと頷く餅 望月(aa0843)も彼女同様、沢山のイチゴを胃袋に収めるのであった。
「……剣太くん、いつも遊んでない?」
大体剣太と遭遇するのはこういったイベントごとが多いもあり、遊んでる印象がつくのは仕方のない事だろう。
『癒し系なのよ、ワタシと同じだね』
そういうものかとさらっと話す望月たちの会話は、しっかりと剣太の耳にも届きワタワタとこちらに近づいてくる。
「あ、あ、遊んでばかりいるわけじゃないぞ! 与えられた仕事はこなしつつ……ごにょごにょ……」
二人の会話に突如混ざりつつ、一緒になってイチゴを頬張る彼に望月の半場呆れたような視線が突き刺さる。
それをわかってかわからずが、彼はしどろもどろに弁解を繰り広げるのであった。
***
「美味いのはヘタ部分の葉が反って、ヘタ近くまで赤くなり、綺麗な三角よりいびつな形のが良いそうだ」
薀蓄述べ苺を摘む荒木 拓海(aa1049)をよそ目に、『どれも美味しいわよ』とメリッサ インガルズ(aa1049hero001)は幸せそうにイチゴを食べる。
『ん~……美味しい!』
嬉しそうに、隠鬼 千(aa1163hero002)もイチゴを食べる。
「練乳と合わせると絶品だね」
三ッ也 槻右(aa1163)の言葉にピクリと反応する千。彼女曰、練乳イチゴは邪道らしい。
なんにせよ、美味しく食べるのが一番だ。練乳有無し両方の食べ方を楽しみ、拓海と槻右は練乳を二人で分け合った。
槻右は拓海の持っていたイチゴをパクリと食べ、ちょっと照れ交じりに笑う。
そんな彼に笑みに拓海は幸せな時間を噛みしめるのであった。
***
『イチゴ従魔退治だな!』
バスを降り、武器を取り出し張り切る大和 那智(aa3503hero002)に、東江 刀護(aa3503)が慣れたように制止を掛ける。
「制限時間内でイチゴを食うだけだ。何度も同じ勘違いするな」
那智はキノコ狩り、紅葉狩りに行った時も同じ勘違いをしていた。毎度ながらそろそろ学んでもいいころだが。相変わらずマイペースである。
農家の人から説明が終わり。早速と言った様子でイチゴを摘み始めた。
「45分は短い!」と文句を言いつつも、那智は端から端まで食べまくる。
『イチゴうめー! 練乳つけるとさらにうめー! 生クリームもうめー!』
そのままでも、何を付けても美味い。物凄く良い笑みを浮かべ、次から次と食べまくる。
「俺はそのまま食う」
シンプルイズベスト、刀護は何もつけずに食べ続けた。
『今度は嬢ちゃんも連れてこようぜ』
家でお留守番中の英雄の辰美も次来るときは、一緒に来れたら楽しいだろうと。
「皆で食うと、楽しいだろうな」
彼の言葉に頷きつつ、最後までイチゴを食べるのであった。
きっちり45分、思う存分イチゴを食べた二人は大満足のようである。
***
「うん、イチゴはやっぱり美味しいよね」
練乳の甘さとそのままの酸味を交互にじっくり堪能する樹は、制限時間が来るまでささやかに楽しむのであった。
彼女の表情は普段よりも口の端がやや上がっている。ちょっとした変化があるということは、彼女に自覚があるのかは知らないがきっとイチゴ好きなのだろう。
一方シルミルテは何もつけない、練乳、練乳、生クリームのローテーションを楽しんだ。
「うン! 美味しいよネ!」
口いっぱい頬張る彼女は何とも幸せそうな笑みを浮かべていた。
■昼食会
青々とした芝生の上に各々が好きなところにレジャーシートを広げる。「昼食会」としてみんなでご飯を食べようの会に参加する者たちは、集まって複数のレジャーシートは大きな一枚となった。
「ふおぉぉ! 皆美味しそうじゃの」
今にも涎をたれそうな剣太は、各々が持ってきた料理に目を輝かせる。
「俺たちは筍のてんぷらを用意したんですよ。皆さんでつつけるように多めに揚げてきたのでよかったら」
黄昏ひりょ(aa0118)は、にこにことてんぷらが入った大きめのおベン王箱の蓋を開け、シートの上に置いた。
『みんなの料理も美味しそうだよね~!』
食べることが大好きなフローラ メルクリィ(aa0118hero001)も、剣太と同様目を輝かせ並べられた料理を眺める。
『ボクたちはね……これ!』
じゃじゃーんと手を広げ、ピピ・ストレッロ(aa0778hero002)が皆月 若葉(aa0778)が蓋を開けたお弁当の中身を紹介する。
「沢山あるからいっぱい食べてね」
中身は綺麗に並べられた手毬寿司。生もの避け、生ハムや小松菜、茹で海老や薄焼き卵、青豆等使い可愛く装飾されていた。配色考慮し、彩り綺麗に詰めてある。
「タマゴサンド好きなんだよね」
『ボクは、ジャムの!』
それぞれ自分の好きなサンドイッチを確保しつつ。
「筍サクサク、いい揚げ加減だね」
他の仲間が持ってきた料理に舌鼓を打つのであった。
「黄昏さん、お誘いありがと、ございます」
今回、「一緒にお昼を食べよう!」と誘ったひりょに、魂置 薙(aa1688)はお礼を言い、皆でお弁当を囲む。
薙達が持ってきたのは綺麗に三角に整えられたサンドイッチだった。卵、ハム、ジャムは二種類と具は様々である。
『並べると豪勢だの!』
エル・ル・アヴィシニア(aa1688hero001)の言う通り、今日のお昼は本当に豪華に感じた。
薙が「どうぞ」とサンドイッチを差し出してくれたのを、剣太は笑顔で受け取る。
友人が持ってきた手毬寿司に、薙は「可愛い」と目輝かせ、アヴィシニアも『どれから食べるか迷うの』と楽しそうにするのであった。
「今日はグリークサラダや、クアトロフォルマッジ。飲み物は水筒に紅茶を淹れています」
何ともおしゃれな料理を持ってきたのは、月鏡 由利菜(aa0873)とウィリディス(aa0873hero002)のお二人。
『イチゴはここの農園から持ってきたよ~』
おやつにはさっきのイチゴ狩りのイチゴをと、容器一杯赤い粒が詰まっていた。
「こうやって食べるのは何ともよいものですね」
春風に艶やかな長い髪が揺れる。
『天気も良いし、料理も美味しいし! 最高だよね!』
仲間たちに囲まれ、美味しい料理を食べれる。それだけで幸せな気分が胸いっぱいに広がるのであった。
「贅沢な遠足だなぁ……」
広げられる様々な料理、大切な人と仲のいい友人に囲まれ、槻右は素直な気持ちを口にする。
「うんうん。料理も美味しい――っと、頬についてるぞ」
料理が口の端のちょっと外れたところにくっついているのを、拓海がさらりと取って指でなめとる。ごく自然な動きで一瞬ぽかんとした後、周りに皆がいるのを思い出し、耳を赤く染めるのであった。
そしてそんな二人をいつも通り、剣太は羨ましそうな視線を向ける。
『これも美味しい……皆さんお料理凄いです!』
二人の世界を繰り広げる彼らは置いといて、千は色々な料理を少しずついただく。
『こっちの方も美味しいわよ』
メリッサも少しずつ料理をいただき、暫しの楽しい時間を過ごすのであった。
「最近はどうだろうか……」
昼食会に参加した迫間とマイヤの二人は、互いの仕事の近況を話しながら、持参したお弁当一式を互いにシェアする。
『あら、いただきます』
友人たちに勧められれば、お礼を言って有難くいただく。
誤って料理を服の上に落してしまうかもしれないこんな状況でも、マイヤの純白のドレスを纏っている。そしてソレは汚れることなく、遠足の終わりまで綺麗な白を保ち続けているのだった。
「イチゴを食いまくったのに、まだ食うのか」
刀護に那智も「昼食会」に参加する。
お留守番中の辰美の作ってくれた、お手製の彩鮮やかな春らしい幕ノ内弁当を那智が鼻歌交じりにふたを開けた。
『まだまだ食えるぜ。あいつが食ってるおかず美味そう……』
彼は他の参加者の弁当をジーっと見る。
イチゴ狩りで沢山食べたあの赤い粒たちはいったいどこへ行ったと言うのだろうか。彼の食欲は落ちる気配がなかった。
「剣太さんは相変わらずだね」
目の下に少しクマができている剣太を見て、眠れなかった理由を察したのだろう、少し呆れた様子のアリス(aa1651)。
『……ちゃんと寝たの?』
軽く首をかしげるAlice(aa1651hero001)に、眠そうな瞳で剣太は首を振った。
「いやぁ……お主らみんなとの遠足が楽しみすぎての……寝れなかったわい」
力なく笑う彼に、アリスはそっとお茶を差し出すのだった。
二人が持ってきたのは、いろんな種類のサンドイッチ。大きさは小さめに作られていて、手軽に食べやすいのが良い。
仲間たちからはサラダを中心にちょっとずつ貰った。
「あ……アリスに……Alice……二人が移動する頃には起こしてく……すやぁ」
アリス達のすぐそばで、お腹がいっぱいになった剣太は倒れ込むように眠りに落ちた。
「……寝ちゃったね、Alice」
『しょうがないね。食休みまで終わったら起こしてあげようか、ね、アリス』
倒れ込む彼を放っておいて、二人はまったりしたお昼を楽しむのであった。
まほらまとジーヤは小さめお弁当をたくさん作ってきた。
サンドイッチに、食後のデザートのレモンの砂糖漬け、なんちゃって鰻の蒲焼バーガーと野菜サラダと種類は多いが、どれも量が適量である。
野菜サラダは、カリカリに焼いた油揚げがトッピングされていて、レストランのメニューの一つと言っても違和感ない。
『おいしいわぁ、盛り付けもキレイねぇ』
仙寿たちが用意した料理も盛り付けが綺麗でどれも美味しそうだ。
友人のジーヤの好みを考え、定番のおかずを揃え、鶏の唐揚げ、きんぴらごぼう、甘めの卵焼き、アスパラガスのベーコン巻き等が弁当に詰められている。
『今回はお握りにこだわってみました!』
こだわったというだけあって、凝ったおにぎりがお弁当箱に並べられている。
定番の肉巻きお握りから、醤油とごま油香るチーズ入り焼きお握り、梅と紫蘇、鰹節と胡麻、鶏と筍の炊き込みご飯等の和風シリーズ、得意料理の鮪の竜田揚げもあり、どれから食べようか迷ってしまいそうだ。
「この味付け好きだなぁ」
どの料理もおいしくて、甲乙なんてつけられない。イチゴを食べた後だというのに、ぺろり全部食べれてしまいそうだ。
「デザートもあるからな」
お菓子作りが得意な仙寿はデザートに桜のパウンドケーキを用意していた。
「みんなでもってくると結構な量になるね」
『こんなに一杯で食べきれるかしらぁ』
「ちょっと張り切りすぎてしまったか……」
『みんなで一緒に食べれば大丈夫大丈夫!』
ここにいるのは自分たち四人だけではない、周りにみんないるのだから。作りすぎた、余ってしまうかもしれないなど、そんな心配は考える必要がないだろう。
春の陽気にぴったりな料理が並べられた、シートの上を今にも涎が垂れそうな犬の彼は、四人の料理を少し離れたところから眺めていた。
「イチゴ狩りで確保した沢山のイチゴがいまここにあります」
効果音が付きそうな動作で、保冷袋からイチゴの入ったタッパーを取り出すチルル。
「そしてここに耳だけ切り取った食パンと生クリームがあるのよ。つまり――」
『つまり現地でそのままいちごと生クリームでサンドイッチを作るってことだね?』
とってもいい考えだよねとスネグラチカもうんうん頷く。
「そういうことよ! さあ、美味しいお昼を楽しむわよ!」
取れたてイチゴの生クリームサンドを片手に、二人の昼食会も幕を開けた。
『ケーク・サレです。甘くないケーキですよ、でも今日のは野菜の甘みがおいしいです。いかがですか?』
海神 藍(aa2518)特性ケーキを友人たちに勧める禮(aa2518hero001)は、持ってきたケークサレやブラウニーを切り分けて配りみんなと楽しむのであった。
自分が作ったわけではなくとも、大好きな兄さんが作った料理を美味しいと言ってもらう度に彼女は満面の笑みを浮かべる。
『やっぱりケーキは良いものです。なにより皆で切り分けて楽しめるのが良い。この時間の為に戦っていると言っても過言ではありません』
何気ない幸せな時間を守るために戦っている。そう考える者もいるのだろう、友人たちも頷きそして料理に手を伸ばしていた。
「全くだ。みんなで食べるとまた一味違うものだよね」
嬉しそうに「昼食会」を楽しむ彼女をみて、藍も優しげな表情を浮かべる。
笑みの溢れる昼食会はゆっくりと時間が過ぎていったのだった。
■手作り体験
お昼御飯が終わったら、後はまったり自由行動――の前にちょっとした牧場ならではの手作り体験が始まった。
ガルーとオリヴィエは、二人で協力してアイス作りに挑戦するのであった。
『……理科の、実験みたいだな』
どこかイキイキしてるガルーを横目に見つつ、自分は自分でアイスを作る。
『こうやって作るのか。勉強になる……』
ボソボソと独り言を呟きつつ、ガルーはメモを取る。料理に慣れているのだが、きっちり測るため作業が遅い。
『早く食べたい』
分量計るのに時間がかかるのを急かしつつ、材料を豪快にドバっと入れる。
今回はバニラ味を作っているのだが、もし家で作るときにチョコを溶かし淹れれば、チョコ味とかも作れるんだろうかなんて、かき混ぜつつ考える。
『口、開けていいぞ』
オリヴィエは味見にスプーンを差し出しながら、自身も口を開ける動作をし彼に口を開けるよう促す。
いきなりのあーんには少し驚きつつ、素直に応じた。
『……美味いな』
食べた後、照れたように目線を逸らすガルー。彼の反応に満足した様子で、オリヴィエもアイスの味見をする。
最近行った依頼から、彼にほんの少し違和感を感じていたため、できるだけ素直に優しくしたかった。唐突なあーんも彼なりの優しさなのである。
(隣に立つと、やっぱ背が伸びたな……)
ガルーも彼なりに何か変化を感じていた。最近のオリヴィエは可愛くなったし優しくなった。では俺様は……。
いろいろなことを考えつつ、無心にアイスをかき混ぜる。
考え事をしながら作ったアイスだったが、分量きっちり作ったため、美味しく食べることはできたのだった。
***
『アイスってそんなに簡単に作れるの?』
一見難しそうなアイス作りなのだが、気軽に体験できるなら簡単なのではと伊邪那美は思った。
「基本的には砂糖、牛乳、卵、バニラエッセンスで作れるな」
恭也が説明してくれる材料だけでも、難しさは感じられない。
「手順としては鍋の牛乳、砂糖、卵、バニラエッセンスを混ぜて火にかける。とろみがつくまで煮詰まったら容器に入れて冷やして終わりだ」
いくら簡単に説明しているのだとしても、今聞いた限りだと難しくはないのだろう。
『……簡単過ぎない?』
これなら苦労することなく作れると、ご機嫌な伊邪那美。
「実際にやってみると良い」
伊邪那美は聞いたとおりにアイス作りを始めるのであった。そして、完成後――
『硬い、バニラアイスなのに中に無数の小さい氷がいる……なんか、違う』
固まって完成となったアイスを味見すると、カリカリと小さな氷が紛れていた。
「氷が出来たのは、煮詰め方が甘いせいで水分が多かったからだな。硬いのはそのまま冷凍庫に突っ込んだのが原因だ」
冷静に原因を説明する恭也に、彼女は小さく口を尖らす。
『むぅ……その時に教えてくれれば良いじゃん』
「食べられない物が出来る訳じゃないんだ、良い経験になったろ」
これもまた経験だと、彼はさらりと受け流す。
『氷は解ったけど、硬いのはどういう事? 冷凍庫に入れないでどうやって冷やすのさ』
「実践した方が早いな。大量の氷に塩を塗すと氷の温度が下がる。次に金属の容器にアイスの元を入れ蓋を閉める。後は、氷の中に容器を入れて中身が凍るまで回し続ければ完成だ」
『……大変そうだから、家では恭也が作ってね』
「作り方を教えたんだ、自分でやれ」
散々簡単そうだと言っていた伊邪那美だったが、アイス作りの道は難しかったようである。
***
「アイスは作ったことあるが、バターも思ったより簡単なんだな」
遠足大満喫の遊夜とユフォアリーヤはバター体験に参加していた。
『……ん、手を掛ければ……掛けるほど、おいしい……そういうもの』
遊夜の言葉にこくりと頷く。
家の牛と鶏による自家生産、そろそろ軌道に乗せる計画を練るべきかこんなに簡単にできるならば、バターが高い今の世の中、自給自足で来たら経済的に嬉しいものだ。
「出来る限り自給自足したい所だからな」
『……家の子達は、大食いだから……ね』
家でお留守番している子供たちを思い出し、クスクスと思い出し笑いをするのだった。
■自由行動
13時半、遠足最後の自由時間が始まった。各々好きな場所に遊びに行き、遠足の時間はあっという間に終わりに近づいく。
イチゴ狩り、手作り体験を楽しみ、今日一番楽しみに来ていたふれあい広場に来て、セラフィナは満面の笑みを浮かべる。
『わ〜アルパカ! 写真で見るよりずっとふわふわで首も長くて……!』
初めて生で見るアルパカに大はしゃぎのセラフィナは、久朗にスマートフォンを借りてぱしゃぱしゃと写真を撮っていた。
「……長いな」
長く伸びる首を見つめ、久朗も呟く。
『つぶらな瞳も素敵で』
ふわふわの毛並み、瞑らなちイサナ瞳に見とれ、彼女はうっとりとアルパカを眺めた。
おさわり可能ということで、ふわふわの手触りを堪能した後、今度はカピバラにご挨拶しに行く。
ほとんど動かずにじいっと寝ているだけのカピバラ、茶色い小さな体の上にさらに体の小さい黄色のヒヨコが乗っている。
「……本当に寝てるだけだな」
立ったまま、カピバラ見下ろす久朗。
『うふふ、そののんびり屋さんな所が良いのです。カピバラは他の動物とも仲良しなんですよ』
音を立てないようにして、カピバラの隣にしゃがみ込むセラフィナは、ヒヨコに乗られるカピバラを見てうふふと笑った。
「……寝床にされてるだけじゃないのか」
首傾げる久朗に、「そういうのは言わないお約束なのです」とさらりと流す。
もちろんカピバラの写真も収め、家でお留守番しているアトリアにお土産を買うため、名残惜しさを胸にこの場を後にするのであった。
***
苺パワーを充填し、腹ごしらえもできたところでシルミルテはやらねばならぬことがあった。
到着したのは動物エリア――そう、うさぎとのうさぎ力対決だ。あの毛皮もっふもふと自分のうさ耳、どちらのうさぎ力が高いか。ここで会ったが百年目、雌雄を決する時である。
やることはしゃがんでうさぎとの平和的な見つめ合いだが。
己のご自慢のうさ耳を可愛らしくぴるぴるさせ、うさぎ力アピールも欠かさない。
「……ふぅ」
その様子を樹は少し離れているところで眺めていた。
相手はうさぎ100パーセント――とは思うものの口には出さずシルミルテが満足するまで見守りつつ、時折彼女と兎の対決の様子をカメラで写真撮影した。
数十分後、シルミルテはとぼとぼと友人のところへ歩いていく。そして小さく明後日の方を向き、小さくガッツポーズをするのであった。
***
遠足の最中も時折ふと遠くを見る感じに思いふけるひりょは、無理に元気を出してる部分があるように感じた。
そんな彼をフローラは有無を言わさず迷子の館へ誘う。
(ちょっと怖い所みたいだし、大声出せば少しスッキリするんじゃないかなぁ?)
折角来た遠足なら、気分転換になってほしい。
館の中へ入ってし暗い中を進んでいく。ただでさえ中は迷路になっていてさきに進むのも困難なのだが、ホラーテイストも相まって大きな声を出すには雰囲気がばっちりだった。
しばらくして、不意にひりょと一旦はぐれてしまう。
『あれ……はぐれちゃったみたい……』
今なら彼を驚かせるチャンスなのではないだろうか。
(気分転換になればいいけど)
彼を脅かす為に足音を立てないように歩み寄ろうとした目の前に乱入者が――そう、彼女の嫌いな雲が突然現れたのだ。
(く、蜘蛛っ? ぞわぞわするっ!)
逆に自分が動転してしまい、声なき声で出口に向かい爆走。その間、物凄い勢いで走り去っていくフローラを見て一瞬唖然とするひりょがいた。
「え……!? っぷ」
少し間が空いた後、ひりょは小さく吹き出した。
(あ~……なんか思い詰め過ぎてたかもしれないな)
恐らくフローラが何か気を利かせたつもりだったのだろうと気が付き、半泣きで出口にいるであろうフローラの元へと向かう。
到着すると想像通り涙目で固まっているフローラがいた。
「ありがとうな、フローラ」
そんな彼女を慰めつつ、小さく彼はお礼を言う。
『え?! わ、私何もしてないよっ? 何も出来なかったし』
何もできてはいないと思ったのだが、気分転換になったようなら良かったと、彼女は少し安心したように彼に笑顔を向けたのだった。
***
残り少ない時間は、動物エリアに入り浸る。
「うむ、良い毛並みだ」
『……ん、もふもふ』
馬や牛にご挨拶し、素晴らしきモフモフのアルパカにはおさわりさせて頂いた。
ユフォアリーヤと遊夜はもふもふ毛並みに癒される。
愛でて愛でて愛でまくり、大満喫のもふもふであった。
***
昼食会が終わった後、相棒と別れアヴィシニアとピピは動物エリアへと来ていたのだった。
兎やアヒルと戯れて、餌をあげたり撫でたり満喫する。
『子うさぎはおるかの?』
小さなウサギをそっと撫でる。
『うわぁ……ふわふわ♪』
アヴィシニアと一緒にうさぎを撫でてピピは笑顔を浮かべる。
『……寝てしまった』
そっと額を撫でるうちに、子うさぎは眠ってしまう。
『寝顔もかわいいね』
ピピは起こさないよう小さな声で、アヴィシニアに話しかけるのだった。
『後で若葉達にも見せてやろう』
同じく小さな声で、子うさぎを撫でるピピの写真を撮る。
『ボクも撮る!』
アヴィシニアのマネをしてピピも彼女とうさぎの写真をパシャリと撮った。
うさぎの次はアヒルに挨拶。
『エル、みてみてー♪』
笑顔で振り向き手を振りながら、後ろを付いて来るアヒル達と一緒に行進。
『おや、可愛い行進だの』
微笑み、手を振り返し、アヒルとピピの行進があまりに可愛くて、すかさず写真から動画に切り替えるのであった。
動物たちやピピの笑顔にも癒され、終始笑顔のアヴィシニアであった。
一方その頃ゴーカートエリアでは、ソフトクリームを掛けた男同士の熱い戦いが繰り広げられていたのであった。
「どうせなら何か賭けようか」
ただ競うだけじゃつまらないと、目に留った売店のソフトクリーム賭け薙と勝負することになった若葉。
「じゃあ、負けたら、ソフトクリームおごり、ね」
位置について、よーいスタートと共にどちらもほぼ同時に走り出す。若葉が先行したかと思えば、すぐに薙が追い抜いていく。
まだ行ける。もうちょっと。もう少し。見えた白い線を先に越えたのは……――
「僕の、勝ち♪ でも若葉も、早かった。危なかった」
ほとんど僅差で薙の方がゴールへと到着した。
「逃げ切れると思ったんだけどな……最後の追抜きすごかったよ」
互角の戦いはタッチの差で勝敗が決まり、負けた皆月は約束通り、彼にソフトクリームを買い渡す。
「はー……でも楽しかったね」
「うん、楽しかった」
勝負の結果はどうであれ、面白かったと笑みを浮かべる。
「さて、次はどうしよっか?」
「ここも、面白そうだね」
地図を指さしつつ、わくわくしながら次に向かう場所を相談する二人であった。
***
『あたしは免許持ってないからな~、乗れる時に乗り回さなきゃ!』
張り切ってゴーカートに乗り込むウィリディス。
「リディスは免許が欲しいのですか?」
『身分証明書としても便利だし、欲しいかな~。……でも、もし免許取って車買ってもあんまり乗らないかも。何だかんだであたし、歩いたり走ったりする方が性に合ってるし』
歩いたり走ったりする方が良いと思うのは私も同じだ。
「確かに、長距離を移動するのに便利ですが、体を動かす方が気持ちいいですからね」
うんうんと彼女に頷く。
『よーし! 可能な限りスピードを出すよ!』
一人乗りと二人乗りを選べたので、最初は二人乗り、そしてウィリディスが運転だ、
「安全運転でお願いしますね」
張り切る彼女に由利菜は注意を促すのであった。
『大丈夫大丈夫! さ、いくよ~!』
ゆっくりとアクセルを踏み徐々にスピードを上げていく。
「思ったより早いですね」
小さな車と言えど、車は車。予想よりも速いスピードが出ていた。
『うーん……結構ハンドルが重いなぁ……』
ちょっとふらつきながらコースを進む。乗ってみればわかるのだが、誰でも乗れるゴーカートだが、案外操作は難しいのだ。
「簡単に見えて、意外と難しいのですね」
『うんうん。思ったよりも難しいね。戻ったら交代してみようよ!』
そうこう話しながら進むうちに、ゴール地点が見えてくる。
右に左に小さくふらつきながらも、無事にゴールにたどり着くことができたのだった。
***
『アルパカさん、ほっそりだね、病気かな』
動物エリアに着くや否や、ふわふわの毛並みは変わらずに写真よりもほっそりしているアルパカの姿に驚く百薬。
「暖かくなったから毛を刈ったね、これはこれで愛嬌あるよ」
望月はもふもふの毛皮を堪能する。
『はい、動物の餌』
何かと思えば、動物エリアに設置されている自販機で売っている動物の餌。
「ん? ちゃんとしたやつじゃないの、どうした――」
いつの間にかったのかと突っ込む前に、動物たちに囲まれてしまった。
『楽しかったね』
囲まれるハプニングはあったもの、実は割と面白かった。
望月も笑顔で「楽しかった」と答えるのであった。
***
「ああ、良い風だ……」
湖に浮かぶ遊覧船の上で、拓海と槻右は二人の時間を楽しむのであった。
「ん…風が気持ちいいね」
寄り掛かる槻右に肩抱き応え顔崩壊――が見せないように拓海は空を向く。
周りに人がいないのをいいことに、そっと二人の手は繋がれる。
一方その頃、二人のいちゃつきを知ってか知らずか、千とメリッサの二人は動物たちに癒されていた。
『可愛い~、人懐っこいのね。温かくてホッとする……守りたくなるわ』
抱きしめたうさぎの温かさがじんわりと体中に広がるような気がした。
「リサ姉! アルパカさんですもふもふ~」
本物のアルパカを体験した後、売店でアルパカぬいぐるみ小を購入し、リュックに下げてホクホクした表情を戦は見せるのであった。
***
大人気の動物エリアでは、無表情でうさぎをもふもふしている二人がいた。
表情こそは変わらずとも、アリスとAliceもうさぎ好きなのである。
十分にモフモフを堪能し、満足した二人は迷子の館に行くことにした。
何事にも動じない二人は、ホラーに怖がる様子もなくあっさりと迷路を制覇してしまい、思った以上に時間が余る。
「どうしようか、アリス」
『休憩しようか、Alice』
寝かせたまま放置していた剣太の隣に戻り、芝生の上で残りの時間は昼休憩をするのであった。
***
『もふもふですよ、兄さん!』
動物エリアで羊に囲まれ禮は笑みを浮かべる。
「ああ、もふもふだ…癒されるね」
彼女と一緒にふわふわな毛並みを触る海神も、もふも――羊と戯れる。
『ああ、ちょっと眠くなってきますね……』
寝転がる羊に体を預けつつ、段々と眠そうな声になっていく。
それもそうだ、初めての遠足にわくわくしてちょっと寝不足だった禮だ。なかなか眠れなかったのに、早起きしてしまったのだから、眠くなるのは当たり前だ。
「ほう……良いのですか…? 禮、もふもふは”少し昼寝をするがよい”と仰っている、言葉に甘えよう」
羊の口元に耳を近づけたかと思うと、海神が羊が共に眠ることを許してくれたと言う。
『兄さん……もふもふの言葉を……?』
流石ですと言う前に、禮はふわふわの誘惑に負け夢の世界へと旅立つのであった。
***
湖の周りを歩きつつ、ゆったりと景色を眺めるアリスと茨稀。
「そう言えば、スケッチ道具は持ってきたか?」
描いている姿を見てみたいと願っていた。
「勿論です。アリスさんも描かれる準備は良いですか?」
持ってきていないと言われると思っていた。無理な願いかとは分かっていたが――
私を描くのかと頭にはてなが浮かぶが、断る理由も見当たらない。
「まあ、描くなと言う理由もないし、な。じっとしていればいいか?」
彼が描きたいというのなら、その思いに応えよう。
「描いている手元が見れんのは残念でもある、な」
湖を見ているだけと言うのも、別に悪くないが。
「描くのは風景だけとは言ってませんよ?」
風景と共に描きたいと思った『ヒト』をスケッチブックに収めていく。
湖に映るアリスがゆらり、揺らめいて、まるで鏡のようだ。不思議に違って見える。
「やっぱり、違う白になりました……ね」
景色は、そう、移り移ろう。だから、絵に収めるのかもしれない。否、俺の心に収めているのか――
「この辺りの景色は、如何、だ?」
ちらりと茨稀の方を見る。戦闘以外では……否、それ以外でも見た事の無い表情だ。
「優しい……景色、ですね」
景色とアリスを映す瞳の奥に過去と未来を見ている気がした。
「きっと変わり続け、変わらないのでしょうね、此処も……この輪が永遠に移ろい、移ろわぬように……」
珍しく静かに微笑しながら風景を見つめる。彼女はこの景色に何を感じたのだろうか。
「アリスさんが感じた此処は……如何でしたか?」
「悪くな、い」
彼女はそう、ただ一言だけ答えた。
そして、アリスの表情が変わった気がした。それは優しく、穏やかな光――
二人の穏やかな時間は、スケッチブックを走る筆が止まるまでゆっくりと続いていくのであった。
■遠足は帰るまで
集合時間の10分前、誰一人として遅刻することなくバスに集合するのであった。
ある者は早々に乗り込み、秘儀睡眠を使ったり、はたまたはしゃぎすぎて疲れて眠ってしまったり、バスの中は息よりも少し静かな気がした。
お留守番している家族や友人たちにお土産を買い、自分にも新しいお友達であるぬいぐるみを買う。容姿に似合わないと言っては失礼は承知だが、彼の手にする袋からはぬいぐるみの白い長い耳が見えていた。
参加者全員に配られたしおりには、メモの欄にびっしり書き込まれたページや、書きかけのページ、暇つぶしに書かれたイラストであったり各々好きなように書き込まれていたのではないだろうか。
バスは段々と街へ近づいていく。集合場所であった駐車場が解散場所となるのである。
「皆、気を付けて帰るのじゃぞ!」
到着し、全員車から降りたところで、彼は最後の挨拶をする。参加者全員の表情を確認した彼の顔は、満足したような笑みを浮かべていた。
解散したが、遠足はまだ終わらない。遠足は家に着くまで続くのだから。
みんなの思い出もっと見る
結果
シナリオ成功度 | 大成功 |
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