本部

お城ツクール〜氷と雪エディション〜

砂部岩延

形態
イベント
難易度
普通
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
25人 / 1~25人
英雄
23人 / 0~25人
報酬
普通
相談期間
7日
完成日
2018/02/05 20:22

掲示板

オープニング

●H.O.P.E.東京海上支部――ブリーフィングルーム
「遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます」
 正面に立つ真田 英雄と一角 真珠星のオペレーター2人はそろって頭を下げた。
「……とはいえ、私事ではありますが、年明け早々に見た初夢のせいで、皆さまとは今年始めてお会いした気がしません。まぁ、夢の内容ははっきりと覚えていませんし、思い出そうとすると頭痛が痛いような、過去の黒歴史を垣間見たような気分になりますが……それはさておき」
 真田は苦笑い気味に前置きをすると、隣の一角に引き継いだ。
 一角は何食わぬ顔で概要の説明を始める。
「今回は遠くロシアの西方、H.O.P.E.サンクトペテルブルク支部からの要請です。皆さんはフィンランドで毎年冬に開催される『スノーキャッスル』という祭典をご存知でしょうか」
 手元のタブレットを操作すると、部屋のホログラムに美しい建造物の数々が映し出される。
「ご覧の通り、『スノーキャッスル』は雪と氷で城を作り、閲覧のみならず、実際に宿泊や飲食可能な施設として利用するという、冬ならではの祭典です。今回、サンクトペテルブルク支部を通じて、イベントの開催団体からリンカーの皆さんにもこうした建造物を作っていただきたい、というオファーがありました」
 一角は続けて、依頼の詳細を説明する。
「依頼された建築地は1つですが、門、居城、食堂、遊技場の4施設が必須です。その他にも、施設は思いつく限り増やしてもらって構いません。また、それぞれに建築、外装、内装、その他モニュメントや小物の制作などの作業が必要になります。施設の規模によっては一人ですべて担当することも可能ですが、先の3施設など大規模なものは難しいでしょう。皆さんで相談してうまく分担していただければと思います。詳細は後ほど資料でもお配りします」
 ホログラム上に過去の建築例などがいくつか示される。
「建築の安全基準や必要な設備の手配は専門家が手伝ってくれますので、気になさらずとも問題ありません。思いつくまま自由にやってほしいとのことです。また、建築の過程もパフォーマンスとして宣伝に盛り込まれていますので、派手にやってほしいとの要望です。説明は以上となりますが……」
 一角がチラリと隣を見やると、真田が待ってましたとばかりに得意げな顔で前にでようとする。
「最後に、サナダ=ゼr……失礼、真田から何かあれば」
 途端に真田が「やめてくれ、その名で呼ぶな、どうしてそれを」などともがき苦しみ始めた。
「何もないようですので、説明はこれにて終了とします。新年二回目……失礼、初回の依頼、どうぞよろしくお願い致します」
 一角はいい笑顔で一礼をした。

解説

●目的
 フィンランド冬の祭典『スノーキャッスル』を盛り上げる

●場所
 フィンランド、ケミ市

●諸注意
・建築地は1つ
・門、居城、食堂、遊技場の4施設が必須
・それ以外は任意で増設可能
・それぞれの施設で、基礎建築、外装、内装、その他モニュメントや小物などを自由に分担
・専門家による安心サポート付き

リプレイ

●2018年2月――フィンランド、ケミ市
 遥かに遠い異国の地にある、雪と氷と海の国。
 淡く差す陽の光の中、氷点下10度を下回る静謐な空気は、ただじっとしているだけでも、ピリリと肌を刺してくる。
 アリス(aa1651)とAlice(aa1651hero001)は異国の町並みと、広く開けた敷地を前に、完全防寒でぐるぐる巻きにしたマフラーに顔をうずめながら、二人で身を寄せ合い、佇んでいた。
「……寒い」
『……うん』
 寒さが大の苦手な二人は内心でひそかに、何故この仕事を受けてしまったのかと思わなくもなかった。
『アマゾンとの気温差がすごいですね』
 構築の魔女(aa0281hero001)と辺是 落児(aa0281)の二人も、冬の町並みと海とを前に感嘆の声を漏らした。
『露西亜が偲ばれますね』
 遠景を望む構築の魔女の視線が、さらに彼方を見やる。
『まぁ、それはともかく。楽しんでいきましょう』
 二人の服装は露西亜での実績もあるスカディーコートに、手袋や滑り止めはあらかじめ現地のH.O.P.E.支部を通じて専門家のお勧めのものを用意してあった。極めつけに日本製のホッカイロを大量に持参して、冬の北国への対策は万全だ。
「しかし、フィンランドからとはな」
 赤城 龍哉(aa0090)も目の前に広がる異国の冬景色に感心と驚きをにじませていた。
『こういうのは専門職か、逆に素人参加でやるものと思っていましたわ』
 ヴァルトラウテ(aa0090hero001)が感想を漏らす。
 すると、龍哉が苦笑いを浮かべる。
「エージェントに依頼する裏の意図が見え隠れする……というのは穿ち過ぎか」
 いろいろと便利使いされる可能性を危ぶんでいたが、敷地のまわりのよその氷の城たちはすでに半ば以上建築が進んでいた。今回、H.O.P.E.のリンカーたちに期待されているのは、良くも悪くもパフォーマンスとしての役割らしかった。
 H.O.P.E.のために用意された敷地は思った以上に広大だった。
 敷地の周りには十分な防護柵と安全マージン、さらには観覧用の仮設スペースまで設置されている。
 最初に案内をしてくれた現地の委員や専門家たちも、口をそろえて「派手にやってください」と言っていた。
「雪と氷のお城なんてあたい達のためにあるようなものね!」
『その名もズバリスノーキャッスルとか良い感じだね』
 雪室 チルル(aa5177)とスネグラチカ(aa5177hero001)の二人は、広大な建設予定地を前にテンションを上げていた。
「よーし! あたい達がさいきょーのお城を作るんだからね!」
『冬こそあたし達の本領発揮ってところ、見せてあげよう!』
 冬の寒さなどものともせず、彼女たちは今日も元気全力全開だ。

●打ち合わせ
 建設予定地の端には拠点となるプレハブ家屋が設置されていた。
 まずはそこでサポートの専門家たちも交えて、工事の進め方や、デザインなどの相談を行うことになった。
 すべての基礎となる氷と雪は、H.O.P.E.をはじめ、もろもろの技術提供により不断での供給が可能となっていた。
 まずは氷の運搬と切り出しからがメインの作業となる。
 事前の打ち合わせに沿って、まずは全体での作業の流れと分担を確認後、さらに各施設ごとに分かれて、建物のイメージから設計、手順と分担の打ち合わせに入る。
「スノーキャッスルって、お洒落感満載の夢の国だね」
 琴線に触れるものがあるのか、餅 望月(aa0843)はどことなく楽しそうだ。
『住める? 城主?』
 一方、百薬(aa0843hero001)の発想はもう少し殺伐というか、方向性の違う夢を抱いている。
「百薬はまたそんな発想を……でも、かまくらよりでっかいサイズにはしたいよね。協力して可能な限り大きくしよう。物理的なことは専門家の助言があるらしいし、勉強させてもらおうね」
 望月はいつもどおりの相棒をうまく誘導しつつ、氷の居城建設に意欲を新たにする。
「お城といえば日本の心、武士の魂! 五重の塔ですか? 難攻不落の熊本城?」
 紫 征四郎(aa0076)は嬉々とした顔で、次々と城のイメージを挙げていく。
「恐らく西洋の城であろうと思うが……まぁ、自由に作るが良かろうよ』
 ユエリャン・李(aa0076hero002)はやんわりと征四郎の偏ったイメージを訂正しつつも、今回はなんでもありだと聞いているので、あまり強いて方向修正をしようとも思わっていなかった。
「これでは裏が、こう。登られると厄介です」
 征四郎は広げた敷地の図面と、なぜか周囲の地形図を前に、真剣なまなざしだ。
『ふむ、ならばこうして狭間を作ろう。狭間や石落としのような構造は、西洋の城にも存在しておってな……』
 やがてユエリャンも乗り始めて、難攻不落の氷城計画が練られていく。
「やはり美しく! それでいて強く! それこそが良い居城です」
 きらきらとしたまなざしで力説する征四郎に、木霊・C・リュカ(aa0068)はどこまでも優し気な瞳で応じる。
「ふふ、日本のお城、詳しいねぇ」
『……ユエはよく滑らないな』
 平常運転のリュカの隣で、オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は寒さに縮こまりながら、征四郎に差し入れてもらった淹れたての緑茶で温まっていた。ユエリャンのヒールのある靴にどこかズレた感心を抱いていた。
「穴雪みたいに、ありのーままのーで、ずぁーっ! とできれば良いのに」
『穴雪……?』
 寒さでまだ調子がでないのか、リュカのボケにもいまひとつ、ツッコミが鈍い。
『氷の城か……城と言うと私はミッドガルドの王城や、神の宮殿を思い浮かべるな』
 リーヴスラシル(aa0873hero001)が感慨深げなまなざしを、ここではない彼方の地へと馳せる。
「私達が現在住む涼風邸の建築様式はヴィクトリアン、何か活かせるかもしれませんね」
 月鏡 由利菜(aa0873)は彼女たちが今現在住まう屋敷の構えを思い起こし、取り入れられる部分とそうでない部分を考えていく。
『建築の自由度はやや落ちるが、今回は氷と雪が素材だ。基本は安定性を重視してツーバイフォー方式だろう』
「箱型の氷ブロックを土台に肉付けですね」
『現地の意匠も採用したいところだ。ノルウェーのアーケシュフーズ城をイメージするか』
「了解です。ラシル」
 和洋様々なイメージを取り入れつつ、デザインや設計をすり合わせていく。
「雪と氷の城かぁ」
『ファンタスティーック! 胸がドキワクするよぅ?』
 ニウェウス・アーラ(aa1428)とストゥルトゥス(aa1428hero001)は想像の中の氷のお城を前に、湧き上がる興奮を抑えきれずにいた。
「ん……凄い城、作っちゃおう」
『そしてー』
「『変な初夢、忘れよう。うん』」
 偶然にも二人で見た妙ちくりんな夢のことを思い出し、虚ろな目でうなづきあっていた。
 二人が参加する門のイメージは、西洋の砦風のデザインをベースに、居城にあわせて和洋折衷となることに決まった。
「んー……和洋折衷の門、かぁ」
『門単体だけじゃなく、中のお城とのバランスも考えないとねー。遠くから見たときに、変なことになっちゃう!』
「そう、だねー。なら、皆のコンセプト……一番やりたい事とか、聞いて回って……」
『その中間部分をイイ感じにアレしてソレする訳ですね、分かるとも!』
「具体的、には?」
『その場の直感で考えマス!』
「です、よねー……センス、大丈夫?」
『エビフライおっ立てるような真似はしないから安心してー?』
 ストゥルトゥスのサムズアップとともに眼鏡が怪しく光る。
「その一言で……一気に不安に、なったよ?」
 ニウェウスは不安げに小首を傾げ。
 とはいえ、そこは真の楽しさを解するストゥルトゥス。自分の感性だけでなく、班員の意見や感覚をうまくとりまとめて、デザインのバランス調整に鋭意努めていた。
 食堂の方はシュエン(aa5415)と共鳴したリシア(aa5415hero001)が主体となって、意見を取りまとめつつ、専門家とも相談をして、基礎の設計を進めていく。
 食事をするための場所ともあって、電気水道の配管・配線、人の動線もふまえた入り口や通路、テーブルの配置など、微に入り細を穿った計画が練られていった。
『そして、城といえばスイーツの晩餐会であろう!』
 キリル ブラックモア(aa1048hero001)は握りこぶしを掲げて、声高に宣言をした。
「ナンデヤネン」
 相方の弥刀 一二三(aa1048)が軽妙な口調でつっこむ。
『作るぞ……! 究極の菓子を!』
 キリルはお菓子のデザイン起こしに躍起になって、すでに聞いていないようだ。
「……ホンマモン作らんといてな」
 せめてもと、そっと言い添えて、一二三はそばを離れた。
「せやったら、うちもなんか凝ったもの作ってみよかな。お城言うたら、見張り台とか、兵器とか必要やろし。ほな、氷でどこまで作れるか、勝負どす!」
 一二三もまたへんなスイッチが入ったのか、綿密な設計図の作成に取り掛かりはじめた。どこからどう見ても、相方二人、似たような似たもの同士であった。

●基礎工事
 まずはすべての基礎となる氷の運び込みと切り出しから始まる。
 本来であれば、ダンプやクレーンなどの大型建機をも用いて大掛かりに進められる作業であるが、ここに集ったのは勇名とどろくリンカーたちばかりである。
「力仕事は、やる、ヤンが」
 九龍 蓮(aa3949)のしれっとしたイケニエ発言に、聖陽(aa3949hero002)が本来腕のあるべき袖の方をひらひらと振ってみせる。
『俺様かよって。俺様、片手だぞ』
「無問題。ヤン、出来ない?」
『……まァ、んなことはねェんだがねェ。もしかして、このために、俺様だったってわけか』
「是! あと、終わった後、一服」
 そう言って、蓮は何やら企み顔を見せる。
『しょーがないねェ、うちのドンは』
 一応、形だけの抗議はして見せつつ、聖陽はそれ以上の不満も漏らさず、他の者たちと一緒に会場全体の氷塊の集積地へと向かった。
 今回のイベントのために生産され、運搬されてくる身の丈を遥かに超えた巨大な氷塊を、歴戦のリンカーたちは軽々と抱え上げ、飛ぶような勢いで建設予定地へと運んでいく。
 共鳴した龍哉とヴァルトラウテ、そして鴉守 暁(aa0306)とキャス・ライジングサン(aa0306hero001)もまた、氷の塊を抱えて建築予定地へと駆け込んできては、すぐに取りにもどるというピストン輸送を繰り返していた。
 ちらほらと集まり始めていた観客の間に、絶え間ないどよめきの声がさざめく。
「エージェントならこれくらいも楽々運べます、てか」 
『良い鍛錬と思ってやるのが良いですわ』
 龍哉の皮肉気なつぶやきを、ヴァルトラウテがいさめる。
 次々と運び込まれていく氷塊を前に、皆月 若葉(aa0778)に手を引かれたピピ・ストレッロ(aa0778hero002)がきらきらとしたまなざしを向けていた。
『氷のお城……!』
 今から自分たちの手で作られるお城を思い、期待に胸を膨らませているようだった。
「完成が楽しみだね」
 若葉も微笑みとともに同意する。
 魂置 薙(aa1688)とエル・ル・アヴィシニア(aa1688hero001)も、若葉たちに同行して、氷塊が次々に並べられていく石切り場ならぬ氷切り場へとやってきていた。
 やがて集まった氷塊に、専門家の助けを借りつつ、切り出すべき氷材としてのガイドラインが引かれていく。
 ここからは、彼らの出番だった。
 薙が共鳴、ライブスツインセーバーを手に、黒コート、黒マスクで立つ。
 同様に、若葉もピピと共鳴、黒と白の剣を手に立った。
 氷塊の運搬でかなり集まってきていた観客たちは、今から何が始まるのかと目を皿のようにして見ている。
「まずは、ここから」
 薙の掛け声とともに、二人が飛び出した。
 二対の双剣、二人の剣士が氷塊の間を駆け巡り、演舞さながらに舞い踊ると、歪な形の氷塊は次々と、定められた氷材の形に切り出されていく。
 また、べつの一角では、飯綱比売命(aa1855hero001)と共鳴した橘 由香里(aa1855)が雪の結晶がほのかに浮かぶ青い刀身の薙刀を振るっていた。
 大きな動きで、ひとなぎに、豪快に、氷材を切り出していく。
 白金 茶々子(aa5194)が二人の雄姿を少し離れたところから、年相応にはしゃぎつつ、やんやと声援を送っていた。
 彼女は由香里の彼氏の従妹で、今回、せっかく遠くまで行くのならと、一緒に誘って来ていた。
 なお、そもそもの発端は、飯綱が『雪像を作りに行くのじゃ!』と騒ぎたてたことにあったのだが、どうやら当人は札幌で行われる雪のお祭りと間違えていたらしく、いざフィンランドの地に降り立つと『なんか思ってたのと違うのじゃ……』とションボリ気味だった。
 とはいえ、茶々子の屈託ない笑顔を受けて、すでに気を取り直してはいたが。
 また、氷切り場のべつの一角には、征四郎とユエリャンの姿もあった。
 共鳴した二人は、一振りの日本刀を腰に構えると、一閃。
 無音のうちに、氷塊の内に面が刻まれていく。
 舞うような二対の双剣。
 動の薙刀。
 静の刀。
 四者四様の技の切れに、観覧していた人々は息をするのも忘れて魅入っていた。
『ふ、こんなもので大丈夫であろう』
 ユエリャンのつぶやきとともに、鍔鳴りが静かに鳴る。
 万雷の拍手と歓声が鳴り響いた。
 つづいて、大量に切り出された氷材をもとに、各施設の基礎を作っていく。
『あぁ、なるほど……汚れていると熱を吸収して溶けてしまうのですか』
 構築の魔女は専門家のアドバイスを得つつ、土台の積み上げを監修、調整していた。
『私たち英雄や落児のような能力者ならまだしも、これは大変ですね』
 本来であれば、機材や建機を使って、習熟が必要な作業であるはずだった。
 しかし、リンカーたちは氷材をまとめて抱えると、自らの肉体ひとつで、次々と土台となる氷ブロックを敷設していく。
 土台が敷き終われば、次は建築部分の積み上げとなる。
 びっしりと切り出された氷材を前に、氷鏡 六花(aa4969)とアルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001)の二人が共鳴をする。
 ペンギンの獣人と、冬の女神。冬の象徴にして化身、そして氷魔法の専門家として、真冬の氷雪の祭典には最初からテンションは最高潮に達していた。
 蒼の羽衣をなびかせて、冬の女神は光り輝くライブスの雪を降らせながら、舞うように、軽やかに、氷の城壁を次々と積み上げていく。
 仮初めの雪と氷の結晶が降りしきる中、見守る人々の目に、それは一種の魔法のようにも映っていた。
 美しく、堅牢な、お伽噺に出てくるような豪奢な氷の城が、見る間にその形を露わにしていく。

●居城――外装
 魔法のように積みあがった巨大な氷の建造物を前に、観衆の間からはため息にもにた吐息が漏れる。
 しかし、氷の美術品たる「スノー・キャッスル」の真髄はここから始まると言っても過言ではない。
 日暮仙寿(aa4519)と不知火あけび(aa4519hero001)の二人は共鳴すると、軽やかに氷の壁面を駆け出した。
 雪のような白刃を振るい、氷を舞い散らせながら、城としての輪郭を刻みつけていく。
 ひときわ大きな壁面には、大きな雪の結晶模様をあしらう。
『ライトアップされた時に分かるようにしたいね』
「光源についても頼んでおかなくてはな……ん?」
 城郭の上を舞う見知った姿をみかけた仙寿たちは、壁の上を駆けて、近くに降り立った。
『六花とアルヴィナ、こんにちは!』
「お前達も来ていたのだったな」
 お互いに挨拶を交わし合う。
 六花たちは基礎となる居城のさらに上に、高い尖塔を作り上げている途中だった。
 内側には螺旋階段もしつらえて、誰でも気軽にのぼって、高い塔からの雪景色を楽しんで貰えるようにと、二人が提案したものだった。
 完成したらゆっくり見せあいをしよう、と約束を交わして、それぞれの作業に戻る。
『六花達、まさに雪の女王とお姫様って感じだった!』
「良い息抜きになっているようで何よりだ」
 氷のきらめきを纏って舞う二人のすがたは、まさしく冬と氷の女神と呼ぶにふさわしかった。雪と氷の祭典こそ、二人の本領発揮の場であったとあけびと仙寿は深く納得する。
 由利菜とリーヴスラシルの二人も共鳴、外観の担当として得物を手に、まだまだ無骨は氷の塊にすぎない壁面に、城としての外観を刻んでいく。同時に、安定性の確認も密に、専門家のアドバイスを聞きつつ、補強と肉付けを施していく。
 暁とキャスの二人も、広大な氷の壁に、城としての形を刻み込んでいく。
 居城の入り口付近では、チルルとスネグラチカもまた、英雄神の名を関した両手剣を手に、氷の壁と正対していた。
 二人は居城の出入り口周りを、基礎の敷設から担当して、鋭意的に動き回っていた。氷のブロックはレンガのようにきっちりと組まれ、まさしく氷の居城に相応しい構えとなっている。
『これぞスノーキャッスルであることを、わかりやすく見せていこう』
 チルルたちは両手剣を大胆に、そして繊細にふるって、入り口の周りに文様を彫り込んでいく。
 やがて二人が手を止めた時、そこには大きな氷のレリーフが彫り込まれていた。

●遊戯場
 氷のブロックを積みあげて形作られた基礎の建物の中、荒木 拓海(aa1049)は相棒のメリッサ インガルズ(aa1049hero001)にチクチクとあおられていた。
 ちょっとした勘違いから、打ち合わせが始まってしばらくの間も、なぜか遊戯場を闘技場だと思い込んでいたのだった。
「闘技場を作る! と、思っていたら、遊技場だった……」
 あれー、と斜めに首をかしげる拓海。
『運動不足で欲求不満? 完成したら遊んで発散してね』
 うぷぷとメリッサは口元に手を当てて笑い、慰めるどころかあおりまくっている。
 ともあれ、気を取り直した拓海たちは、闘技場あらため遊戯場の打ち合わせを密に行った。
 モチーフは、不思議の国のアリス。
 大人も子供も楽しめる遊戯場を作ることも目標に、遊具のアイディアもお互いに持ち出しあい、担当もすでに分担してある。
 拓海たちが作るのは、ドーナツの連なるトンネル、キノコの階段をのぼって滑る大きなパフェの滑り台、巨大なケーキの檻にはユニコーンが捕らえられ、見張りにはトランプの兵隊、逃してあげてと語りかけるアリスの像を置く予定だ。
 居城が和洋折衷ということもあって、氷像の衣装には着物も取り入れたいと考えていた。
 さらには、ダーツボードを持って指差す時計うさぎは、きぼうさで、ビリヤード台の横で応援するアリスは、擬人化きぼうさアリスにして、H.O.P.E.らしさも取り入れる予定だ。
 限られた時間の中、拓海たちは協力して、ひとつひとつを丁寧に、素早く仕上げていく。
『遊技ないし娯楽に必要なのは如何なるものだと思うですか?』
 まだ切り出したままの無骨な氷の外壁を前に、ノア ノット ハウンド(aa5198hero001)は紀伊 龍華(aa5198)に問いかける。
「え。……遊び心?」
『当たり前過ぎて0点です。ま、ボンクラなのはいつものことですけど。というわけで今回はノアが動くので、ボンクラは雑用なり実験台役として端にでも寄っておけです』
「え、えぇ……。いや、別にそれはいいけど……珍しいことだし」
 ノアからの申し出に龍華は面食らいつつも、特に嫌がることもなく同意した。
 大抵の依頼の場合、なんだかんだで行動のイニシアチブは龍華にあったが、今回は別行動も多いうえに、ノア自身も珍しく乗り気だった。
 ノアは自身を織りなす愉楽の要素に従って、訪れたものを心から楽しませられる遊戯場を目指して、基礎の積み上げから積極的に皆と協力をして作業を進めていった。
 今回はアリスがメインのモチーフとなるから、外装もメルヘンチックに仕上げていく。
 しかし、ただ装飾を凝らすだけでは芸がない。
 ノアは、氷とは思えないような摩訶不思議な形状の屋根を作ってみたり、氷の反射を利用した錯覚の窓など、それだけでも楽しいギミックを随所に取り入れていく。
 完成の暁には、自ら遊びに来た人々を案内するつもりであった。
 さらに、外装と内装の境界線でもある出入り口の部分は、ヴィクトア・ローゼ(aa4769)と矮(aa4769hero001)たちとアイディアをすり合わせ、アリスといえばこれしかないという入口、すわなち時計うさぎに誘われるトンネルのモチーフで合作を作り上げたのだった。
 内装の担当であるヴィクトアたちは、基礎の積み上げの後、アリスの世界観とアイディアを存分に活かした装飾と遊具の数々を作り上げていた。
 トランプゲームのテーブルをガラス細工のコレクションテーブルのような形で作り上げ、テーブルの中にはハートの女王の庭を再現した。
 チェス盤には女王とアリス、そしてトランプの兵隊をイメージした駒を置いていく。
『いー!!』
 矮は作ったものをその都度、自慢げな表情でヴィクトリアに見せてくる。
 内装の中でも大きな物はヴィクトリアが、小物は矮が担当して、二人で並行して作業を進めていた。
「はい、では、こちらに置きましょうか」
『う!』
 矮は満足げな表情で、次の小物に取り掛かる。
 しかし、途中で作業に飽きたのか、あるいは他所が気になったのか、ふらりといなくなった。
 ヴィクトリアが慌てて回収に走る。
「皆の邪魔をしてはいけませんよ」
『あい!』
「返事だけはいいんですが……」
 結局、内装のモニュメントや小物、壁の細やかな装飾などをメインで担当していたアリスとAliceの二人が一緒に作業をしつつ、見張るような形に収まった。
 二人は繊細な作業が得意というのもあったが、どうにもやはり寒さであまり大きく動ける気がしなかったので、需要と供給の収まるべきところに収まった形だった。
「そうだね、それじゃあ……薔薇でも作ろうか。沢山作れば花瓶にでも薔薇園にでも、色々応用効くだろうしね。後は本、時計……うさぎとか、かな。細かいところは同じ遊技場班の人と相談して決めて行こう」
 時折寒さに震えながら作業する二人と、元気いっぱいな一人で、細やかな内装を仕上げていく。
 龍哉とヴァルトラウテの二人は、必要な分の氷の切り出しを終えた後、何か手伝えることはないかと各作業場を見て回っていた。
 遊技場は細かな小物も多く、人手が必要そうであったが、しかし、あまり芸術性に自信のない龍哉は手を出しあぐねていた。
『仕方ありませんわね。ここは私が』
「マジか」
 趣味が長じて案外と細かな作業も出来るようになっていたらしい。
 ヴァルトラウテは小物作成の輪に入って作業を手伝うことにした。
「じゃあ、俺は玄関周りだな」
 客を出迎える会場の門は、正に顔。
 何か手伝えることもあるだろうと、足を向けた。

●食堂
『作業は任せました! 終わったらここでご飯食べますよ!』
「任された!」
 シュエンとリエンは実作業の段になって、主導権を交代した。
 リエンは中から声で作業指示をして、シュエンは率先して力仕事をこなしつつ、ジャングルランナーで高所の作業もこなしていく。
 由香里と飯綱、茶々子たちも氷の切り出しがひと段落したタイミングで合流、ガンガンと基礎を豪快に積み上げていく。飯綱に曰く、彼氏がいるときはそれなりに女らしさを演出するのだが、そうでなければ効率一辺倒という割り切りの良さらしかった。
 途中、入り口近くの柱にジョークグッズ的AGW双剣『カジキ/マグロ』を突き立てたのは、乙女らしいいたずらごころと言ってよいのかどうか。
 やがて一通りの基礎が積みあがったところで、それぞれの分担に分かれた。
 由香里たちは炎の剣ペイルブレイズをコテやらノミやらの工具の代わりにして、茶々子と一緒に小物などを作っていく。
 まだ齢8歳の茶々子はここまでお手伝いらしいお手伝いができなかったので、ここからが面目躍如とばかりに張り切って作業にとりかかっている。
「彼も誘えば良かったかなぁ……。でも忙しそうだったし。そのかわり茶々子ちゃんと遊べるんだし、いいよね。たまには男の子抜きで遊ぶのも」
『お主はそっけなさすぎじゃからのう。お友達ができてよかったのう。かわいいお友達がのー』
 などと、ガールズトークらしい話に華をさかせつつ、作業を進める。
「だ、大丈夫なのです! 本当にいて欲しいときにはお兄ちゃんはいつもそばにいてくれるのですよ」
 大規模だったり、危険な依頼にばかり飛び込んですれ違い気味の由香里と従兄を心配する茶々子は、ここぞとばかりに精一杯、由香里を励まそうとしたりもする。
 飯綱は年下の相手でも精神年齢を合わせるのが得意、という本人の談の通り、茶々子と親しくはしゃいで小物づくりをしていた。茶々子の犬作りのむこうを張って狐像(本人談)を作ってる。そして、茶々子は茶々子で独特な感性を持っていた。
「い……犬に……つの? え? ……い、いえ。なんでもないわ。かわ……いい。うん、かわいい。……年賀状で見たのより更に……あ、あはは、はは……」
 なんだかんだ、わきあいあいと女子三人で作業を進めていく。
 黄昏ひりょ(aa0118)とフローラ メルクリィ(aa0118hero001)の二人も食堂の基礎設計から参加し、シュエンたちの作業を見倣いつつ、氷のブロックをひとつずつ積み上げていたのだが、いざ積み上げが終わると、外装を一手に任されて、やや途方に暮れていた。残念なことに、ひりょもフローラも、芸術的センスは皆無だと、自信をもって言えるのだった。
 なんとか皆の作業の合間合間にアドバイスをもらいつつ、「考えるな、感じるんだ!」の某有名映画的な精神で挑んでみるも、しばらくして挫折した。
 スマホでそれらしい動画を検索し、フローラと二人でのぞき込んで「おぉ?!」と感嘆の声を漏らしつつ、なんとかかんとか、二人で手分けして外装を彫り込んでいく。
 途中、ひりょが横目にフローラと自分の作業箇所を見比べて、安心とも落胆ともつかないため息をついた。
「……うん、出来はどんぐりの背比べだな」
『私は、どんぐりより丼ぶりの方が好き♪』
「いや、そういう事じゃなくてだな……」
『それにしても、自分達が作った所でご馳走食べるの楽しみ!』
 フローラは鼻歌を歌いながら、ご機嫌に体を揺らしつつ、作業を進めている。
「いや、食べないだろ、ここじゃ。俺たちは」
『……えっ?』
 表情ごと凍り付いてしまったフローラに、ひりょはまた溜息をついた。
 今度の晩御飯はお鍋、と提案して、なんとかモチベーションの維持を図りつつ、作業を進めていく。
 シュエンとリシアの二人は基礎作業の後、大きめの家具類や壁、天上などの装飾を中心に着手した。
 ドーム型の大きな天井を持つ広い食堂に、氷から掘り出した固定のテーブルと椅子が整然と掘り出されて、並んでいく。
 しかし、なによりも力作なのは、やはりその天井だった。
 彩色した氷をはめ込んだステンドグラス風の細工が、万華鏡のごとき幻想的な光りを室内に投げかけている。
 テーブルの上や室内の随所に飾られた氷の花は、それらの光を受けて、色とりどりに染まるよう計算されて置かれていた。
 また、開催期間中の太陽の動きを計算して、光の影は日時計としてつかえるようにもデザインもされている。
 内装の大掛かりな作業が終わった頃、外で作業を進めていたキリルが、自身の作品を中のテーブルに運びこみはじめた。
 精魂こめて作り上げられた、何の晩餐かと思うほどに豪勢な菓子の山が出来上がる。
 まさに思わず手を伸ばしたくなるほどの出来栄えだった。
「こら、あれは作り物。食べちゃダメっ!」
『だって、凄く美味しそうなんだもんっ!』
 今にも氷のスイーツに襲いかからんとするフローラをひりょが必死に押しとどめていた。
 しかし、キリルの造形能力は菓子類に限定されたものだったらしい。
「……すまないが、ここに燭台を置きたいのだ。作ってくれないか?」
 晩餐らしくテーブルにのせる燭台を作ろうとしたらしいのだが、うまく形にならず、断念したらしかった。
 やがて、食堂にまつわるすべての作業が完了した。
 共鳴を解いたシュエンが、尻尾を振り、瞳を輝かせて、リシアを見てきた。
「門、見てきていい?!」
 筆談用のノートにリシアが『ok』とまで書いたところで、シュエンは矢のように飛び出して行った。
『但しすぐに戻……て、もういないのです?!』
 しかたなしに、リシアもひとり、場内の散策へと足を向けた。

●門
 麻生 遊夜(aa0452)とユフォアリーヤ(aa0452hero001)は作業に一息を入れつつ、敷地の中に着々と形作られていく氷の城を眺めて、感嘆の声を漏らしていた。
「実際に泊まれるのはすごいよな」
『……ん、寒冷地ならでは』
 積みあがった氷の建造物が淡い陽の光を受けてほのかにきらめくさまは、何よりも美しく、冬のこの地ならではの光景だった。
 それを彩る自分たちの建築物がどのようになるか。
 見物でもある。
 門のデザインは今回、薙たちの発案によって近隣西欧の砦風に、アーチ状の分厚いものを想定していた。そこに和洋折衷のデザインや意匠を施していく手はずになっていた。
 城の顔たる門の基礎を外装担当が思うがままに作れるようガッチリ頑丈に作ってみせる。
 それが遊夜たちの意気込みだった。
 受け取った設計図をもとに、基礎となる氷材と氷柱を、専門家の意見を聞きつつ積み上げて、頑丈に組み立てていった。
 雪で肉付けして、水と塩で固定し、磨く。
 高所の作業はジャングルランナーを装着した若葉、薙たちも手伝ってくれた。
 仕上げとばかりにチェーンソーで大雑把な形を整えて、遊夜たちは工事を一通り終えた。
「ま、こんな所だろ……後は頼んだ」
『……ん、しっかり出来た』
 あとの細やかな作業は外装担当に任せることにして、二人はべつの作業に移る。
 門から居城に至る途中で、お客を出迎えるための氷の人型像を2体、左右一対で作ることに決めていた。
 そのための参考資料も、実は持参してある。
 その名もずばり、ジャスティン像(クリスマス仕様)だった。
『……ん、ボクが一番…ジャスティンを、上手く作れる』
 ユフォアリーヤはキリリとした表情で、素地の氷像を道の半ばに設置する。
 遊夜もその線対称の位置に氷塊を置く。
 二人はチェーンソーを用いて、大まかな形を切り出していくと、17式自動小銃でダイナミックに外縁部を縁取りして、極めつけは七人の小人による精密作業で、細部まで拘って再現していく。
「この指捌き、二体・七か所同時に行う緻密な作業、命中特化の面目躍如な動きが出来る……はず!」
『……ん、至高の一品。に、なる』
 使い慣れた得物を縦横無尽に駆使して、ニヒルでダンディな男性のクリスマスチックな像を作り上げていく。
 一方、外装を任された若葉とピピは、薙とエルとともに、門の形を整えはじめていた。
 門の氷柱に着色した氷を当て込んだりして、色とりどりの意匠を華やかに彫り込んでいく。中には幻想蝶をモチーフにしたものもあったりと、H.O.P.E.らしさが随所にうかがえた。
 薙はライトアップ用の照明を埋め込むなど、若葉の作業を手伝いながら、着々と出来上がっていく門を前に、わくわくと躍る胸の高鳴りを抑えきれなかった。
 全体のデザインはラフで起こし終えてあるが、実物となるとまたバランスが異なってくる。
 そのあたりはストゥルトゥスたちが外からチェックしてくれていた。
 途中で龍哉も合流して、実物のバランスを見つつ、当初の予定からさらにアレンジを加えていく。
 やがて遊夜たちのジャスティン像が仕上げに入るころ、若葉たちの作業も片がついた。
 まだ時間に余裕もあったので、若葉がジャスティン像に感化されて、その隣にきぼうさ像を作り始める。
「H.O.P.E.……ケミ支部?」
『まさに。H.O.P.E.らしい取り合わせだの』
 その様を、エルが表情をゆるめて眺めている。
 すると、薙もいつのまにかそれらの像の近くに、一体のドラゴンを形作っていた。
 門のそばに横たわり、優し気なまなざしで訪れる人々を見守る、紫の瞳のドラゴンだ。
「どこかで見た事あるような……?」
 若葉が小首をかしげていると、
『エルみたい!』
 ピピはエルと竜を交互に見やって、にっこりと笑っていた。
『はひぇー。さっすがに疲れましたぁー……』
 最後の最後まで、専門家たちと相談をしながら、照明や配置のバランスをとっていたストゥルトゥスが、すべてひと段落して、その場にへたり込んだ。
 手伝っていた龍哉も疲労感をにじませている。
「うん、疲れた……。でも、凄くイイ感じに、なった?」
『なったんじゃないですかねぇ? お客様方の感想が楽しみ!』
 屈託のない全力の笑みをニウェウスとストゥルトゥスが交わし合う。
 若葉たちが差し入れた温かい缶コーヒーを手に、一行は宝石のように輝く門の佇まいを見上げて、しばしの間、達成感と疲労感に浸っていた。
「お疲れ、さま」
「お疲れさま」
 薙がひかえめに手にした缶コーヒーを差し出して、二人で打ち鳴らす。一足早い、祝杯だった。
『ライトアップ、楽しみだね!』
 ピピは身体を左右に揺らしながら、満足げな表情で飽くことなく、門を見上げていた。

●居城――内装
 外装と並行して、建物内部での内装作業も着々と進んでいた。
『削りだしの道具も多様ですね……なかなかに興味深いです』
 主だる役割を終えた構築の魔女は、本職の方々から借り受けた道具を手に、基礎のごくさりげない部分に、フィンランドのお祭りに関するものを彫り上げていくことにした。
『あぁ、これ面白そうですね。携帯電話を投げてというのは誰が考えたのでしょう? 奥様を運ぶのもすごいですね……というか、もしかして一番最初は、ある意味誘拐だったのではないでしょうか?』
 フィンランドで開催される少し不思議な世界選手権の数々をその場で色々と調べていく。
「ロロー…」
 夢中になる彼女の隣で、落児が小首をかしげる。
『そうね、露西亜のときは露西亜の文化を調べてみたけど国が違うとぜんぜん違って面白いわよ?』
 フィンランドの伝説のスナイパーの話にも興味を示した。
『デリケートな話題ですが、白い死神、ですか……私も魔術師となり、英雄として呼ばれ、人でありつつ人を逸脱しましたが……人というのは、やはり素晴らしいですね』
「ローロ……」
『なに、こういう日常を感じられるのも、そして守れるのも、逸脱してしまった私達の特権だわ』
 構築の魔女は嬉々として、氷の土台に壁画の如きレリーフを刻んでいく。
「居城って住む所でしょ? ならお兄さん住みやすくてかっこいい一流ホテルみたいなお部屋作りたぁい」
『……理想だけ高いと後で苦労するぞ』
 くねくねと身体をよじってふにゃふにゃした声をだすリュカに、なんとか本調子の出始めたオリヴィエがどこまでも正論なツッコミを入れる。
 二人はアイロンを使用して、氷の表面を溶かしながら凹凸を平らかに仕上げていく。
「ツルッツルで大理石みたいだねぇ!」
『はしゃいで滑るなよ――』
 オリヴィエが言い切る前に、芸術的にころんだリュカが部屋の端までそのまま滑っていく。
 征四郎たちは手先の器用なユエリャンが壁や家具に、光がきらびやかに屈折するようなカットを刻んだり、花などの意匠を刻み込んでいた。
「きれいなものですね!」
『そうであろう。言えばなんでも作るぞ』
「では、シャチホコを!!」
『鯱鉾……』
 リュカたちも壁に花の模様を刻んだり、あとは氷の手すりや、黄色の点字ブロックにかわるざらついた床など、彼だからこそ気付ける細やかな気遣いを施していく。
 2階のテラス部分を整えて、担当箇所は一通り完成した。
「そういえば、せーちゃんが鯱鉾を置くんだって」
『じゃあ俺は猫をおく』
「猫かぁ……」
 城の完成後、こっそりと天守閣にあたる屋根部分に、立派にそそり立つ氷の鯱鉾と、なにやら猫らしい像が置かれることになるのだった。
 外装の処置を一通り終えた仙寿たちは、急ぎ担当する客室の内装へと取り掛かった。
 こちらは大正浪漫好きのあけびが率先して意匠を考え、壁には大きな桜模様、窓はレトロモダンな格子戸風、ソファとテーブルは猫足で、ベッドは天蓋付きの豪奢な物と、こだわり尽くしたデザインになっている。
「……壁の方が楽だったな」
『ファイトだよ仙寿様! 共鳴中だから寒くないし!』
 最後に仙寿たちはアンティーク調のスタンドライトを配置して、室内照明とすると、作業を完成させた。
 蓮と聖陽は氷の切り出しが終わった後、居城の手伝いに合流していた。
 蓮が中華風の、蛇のように見える龍の雪像や氷像を、居城の各所にそれとなく作っては、ちょっとした祈りを込めておいていく。
「我們祖先将龍,龍的恩惠給予(我らが祖は龍なりて、龍の恩恵を与えん)」
『それ、アイツの前でやったら、発狂するぞ』
 聖陽が横目で蓮を見やる。
「是、だから、やらない。これは、この祭りの、ため」
 どう受け止めるべきか迷った挙句、聖陽はこっそりとため息をついた。
「しばらく溶けそうにないから、磨いたらすごく映えると思うよ。ライトアップとかもやるよね?」
 最後の仕上げとばかりに、望月たちは繊細なレリーフの施された氷の城の壁面を、ひとつずつ丁寧に、上質のガラスのように磨き上げられていった。
「完成したら居城の玉座に座って記念撮影をしよう! やっぱりさいきょーのスノーキャッスルなんだから、さいきょーのあたいが王様であることを見せた方がいいでしょ?」
 あちらこちらと積極的に手伝いにまわっていたチルルは、やがて見えてきた完成を前に、弾んだ声を上げた。
『もちろん。みんなで記念撮影できるとなお良いね。……あれ、でも、玉座なんてあったかな』
「ないの?」
『ないね』
 あくまでホテルとしての機能を重視した居城には、城と呼びならわしつつも、それに類するものはなかった。
「じゃあ、作ればいいのよ!」
 二人は急ぎ、居城の奥に立派な氷の玉座をしつらえた。
 いかにも氷の城らしいその玉座は、後ほど訪れる人々にとって絶好の写真スポットとなったのは言うまでもない。

●スノー・キャッスル
 地平線に薄紫の光が収斂していく。
 ほのかに明かる色とりどりのライトの中に、氷の城はその佇まいを現していた。
 精緻な文様と意匠の刻まれた城壁は丁寧に磨き込まれ、ダイヤモンドもかくやという、複雑で繊細な光をきらびやかに放っていた。
 威風堂々たる門は、砦のごとき西洋建築の意匠の中に、日本の城のモチーフも取り入れて、絶妙なバランスの中に融合し一つの新たな世界観を作り上げていた。
 門をくぐれば、世界的にも有名なダンディでナイスミドルな男性の像と、愛らしいマスコットのうさぎが、今にも動き出しそうな躍動感で、来客をお出迎えしてくれる。
 門により掛かるようにしてうずくまる竜が、行き交う人々を優しげに見守っていた。
 そして、砦風の門の内側には、やはりそこには欠かせない――立派な砦が、いつのまにかそこにそびえ立っていた。
 完成した城内を巡っていた拓海たち一行は、いつのまにか出現した物々しい装備が見え隠れする砦を、まさに開いた口が塞がらない様子で見上げていた。
 中に入ると、砦の頂上部には氷の鐘楼が置かれ、隣には伝声管、敵襲を余すことなく砦の各部に通達できるようになっている。
 矢を防ぐための胸壁の合間から、銃座やら大砲やら投擲機やらが外敵を狙っている。
 それらの氷で出来た兵器の数々は、驚いたことにすべて稼働できるようにつくられていた。
 精密に設計し、計算しつくされた部品を、精工に組み上げてあった。
 そして、胸壁の奥には、今まさに戦に望まんとする、凛々しい顔立ちのジャスティン氷像が、なぜかきぼうさの服を着て立っていた。
「麻生はんに触発されてしもた。ジャスティン会長ときぼうさの服を合わせるとか、どないどす? 我ながらええアイディアやと思うんやけど。ポーズもどないやろ?」
 男の子心をくすぐられるギミックの数々に拓海たちが夢中になっていると、製作者たる一二三がやってきて解説を加えてくれた。
「ここでも戦うのか……欲求不満仲間発見!」
 拓海がしたり顔で笑うと、一二三も挑発的な笑みで応じる。
「お? 何や、戦闘したいんやったら、ついでにもう一つ城作って戦わすか?」
 攻城戦。
 その熱い言葉が、男の子たちの胸を熱くした。そして、女の子たちの視線を冷淡にした。
 一二三を加えた一行は、次に食堂へと向かった。
 ステンドグラスで飾られた天上のドームは、ライトアップの光を受けて淡いパステルの色彩を、中の空間に投げかけていた。
 立ち並ぶ氷のテーブルに、氷のイス、それらを飾る氷の花。
 そして、展示用のテーブルに山と飾られた、豪華絢爛な菓子の山。
『美味しそう! 愛が溢れてるわ』
 キリルの作り上げた自信作を前に、メリッサが感嘆の声を上げた。
 若葉の隣でピピも瞳を輝かせている。
「リサ! ピピ! どうや! エラい美味そうやろ!」
 はじめになんだかんだと言っておきながら、相棒の渾身の作に全力で自慢げな一二三であった。その後も、完成した他の建物を見に回ってきた仲間たちに、次々と自慢して回っていた。
 一行は次に、遊技場を訪れた。
『不思議の国だ♪』
「これはすごいね!」
 ピピは大喜びで中へと駆け込んで行く。若葉も工夫のこらされた遊具の数々に感嘆の声を上げた。
 見た目も楽しげな色んな遊具に目移りして、忙しげに遊技場の中を駆け回る。
『遊具は試しに遊んであげるよー』
「またそんなこと言って。大きなお友達向けじゃないのもあるから。ほどほどにね」
 同じく遊具で遊びにきた百薬と望月たちを巻き込んで、ピピはあっちこっちと忙しなく走り回っていた。
『次あれ! あれがいい!』
 はしゃぐピピの姿を見守りつつ、若葉は拓海たちに提案する。
「俺達、今日ここに泊まるつもりだけど、一緒にどう?」
 若葉と薙たちは今夜一晩、さっそくライトアップされた氷の城を楽しんでいく予定だった。
『すっごくキレーなんだよ♪』
「うん、いい思い出になるね」
 戻ってきたピピが手を引いてはしゃぎ、若葉も同意する。
「良いな~。よし、オレも! 今からでも宿泊予約出来るかな?」
『泊まれなかったら下調べ不足! ペナルティね』
「ぇ。それ理不尽だ」
 結局、拓海たちも若葉と薙たちと一緒に泊まっていくことに決めたのだった。
 居城の方では作業を終えた仙寿たちが六花たちと合流し、互いの担当箇所を順に見て回っていた。
 仙寿たちが内装を施した華やかな大正浪漫風の客室や、壁の桜の意匠に、六花は無邪気に感動していた。
 せっかくだからと、女性陣たちは色々とドレスで装い、記念撮影を楽しんでいく。
 仙寿は見ているだけのつもりだったが、あけびの不意打ちで、一瞬、騎士風の姿に変えられて、写真を激写されてしまった。
 最後に一行は、六花とアルヴィナが担当した城の尖塔から、ライトアップされた城の景色を眺めることにした。
『すっごく綺麗ー!』
 はしゃぐあけびの隣で、仙寿が吹きさらしの風に、くしゃみをする。
『共鳴する?』
 あけびの申し出に、仙寿は首を横に振った。
 皆で並んで、一緒に作り上げた氷の城を眺める。
 寒空と冷たい風の中であっても、それはそう悪くはないことのように思えた。
 無邪気にはしゃぐ六花の隣で、アルヴィナも冬の女神として、氷の城をたたえ、微笑んでいた。
 二人はせっかくだからと、ライブスの力で再び幻想の雪を降らせた。
 寒さを厭わぬこと。雪を愛でること。
 それが六花とアルヴィナの誓約だ。
 今日、ともに城を造り上げた仲間たちが、そしてこの地を訪れる沢山の人々が、冬の美しさを感じてくれたのなら、それが何よりも嬉しいことだった。
 他の面々も各々、出来上がった城の中を楽しげに見て回っていた。
 征四郎とユエリャンは、リュカたちとともに城内を見て回り、仕事終わりの仲間たちに温かいお茶を振る舞いつつ、城内各所の写真を次々に収めていた。
 楽しみすぎて、迷子になっている面々もいた。
『ドーン』
「抱歉(ごめん)」
 作業が終わった後、一服のついでに城内をうろうろしていた蓮は案の定迷子になり、聖陽が回収にやってきた。
『ったく、いい大人が迷うなよォ。で、主催者が打ち上げがてら、なんか差し入れてくれたらしいけど。いい酒もあるってよ』
「真的!? ヤン、ゴー!!」
『俺様は犬か馬かよ。しょーがないねェ』
 蓮は聖陽に抱えられながら、いざ打ち上げの美酒のもとへと運ばれていく。
 また一方、べつの迷子さんのところでは。
「あ、こんなこところに。まったく、本当に、返事だけはいいんですから」
 結局またひとりで城内をうろついていた矮をヴィクトリアが発見、ようやく合流していた。そのまま手を引いて、完成した他の箇所を見て回る。
『あーいお!』
「そうですね、帰ったら、旦那様のために作りましょうか」
『う!!』
 敬愛する主人のことを考えながら、二人で氷の城内をゆっくりと見て回っていった。

●氷の像と祈り
 それは、ひっそりとした薄闇の中で、きらびやかな城の片隅にあった。
 ほのかに浮かび上がるようなひかえめな灯りに照らされたひとつの像と、膝をつき一心に祈る、一人の男の姿が。
 氷の運び込みと、切り出しと、運搬と、裏方の作業を黙々とこなした彼は、華やかできらびやかな氷の城の片隅に、ひとつの氷塊を置いて、あとはひとり、それを黙々と彫り進めていた。
 二年前に出会い、一目惚れをした。
 一年前に裏切り、傷つけてしまった。
 彼にとって今尚、心の中で大切な存在。そして、人の敵なりし者。
 外見年齢10歳、等身大の身長140センチ。
 細く華奢な肢体に羽毛の付いたショールを纏い、下は膝丈のワンピース。
 目は丸く大きく愛らしく極光の輝き、髪は尻を越える位に長く柔らかくサラサラと流れるよう。
 髪の一房や指先の爪に至るまで、想いを籠めて丁寧にクローフィナイフで削り整え仕上げた、その像を見上げ、狒村 緋十郎(aa3678)は雪の降る音にも似た声で、呟いた。
「……タイトルは……『ヴァルヴァラ』……だ」
 美しき少女の像にかしずき、彼はひとり、再会を乞い祈っていた。
 美しくも悲しき少女の像は、城の片隅にあってなお、訪れる人々の目を惹きつけてやまなかったという。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 全てを最期まで見つめる銀
    ユエリャン・李aa0076hero002
    英雄|28才|?|シャド
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • ほつれた愛と絆の結び手
    黄昏ひりょaa0118
    人間|18才|男性|回避
  • 闇に光の道標を
    フローラ メルクリィaa0118hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • ようへいだもの
    鴉守 暁aa0306
    人間|14才|女性|命中
  • 無音の撹乱者
    キャス・ライジングサンaa0306hero001
    英雄|20才|女性|ジャ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
    人間|20才|男性|命中
  • 大切がいっぱい
    ピピ・ストレッロaa0778hero002
    英雄|10才|?|バト
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • この称号は旅に出ました
    弥刀 一二三aa1048
    機械|23才|男性|攻撃
  • この称号は旅に出ました
    キリル ブラックモアaa1048hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • ストゥえもん
    ストゥルトゥスaa1428hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • 紅の炎
    アリスaa1651
    人間|14才|女性|攻撃
  • 双極『黒紅』
    Aliceaa1651hero001
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • 共に歩みだす
    魂置 薙aa1688
    機械|18才|男性|生命
  • 温もりはそばに
    エル・ル・アヴィシニアaa1688hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • 狐は見守る、その行く先を
    飯綱比売命aa1855hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • 緋色の猿王
    狒村 緋十郎aa3678
    獣人|37才|男性|防御



  • 任侠の流儀
    九龍 蓮aa3949
    獣人|12才|?|防御
  • 首領の片銃
    聖陽aa3949hero002
    英雄|35才|男性|カオ
  • かわたれどきから共に居て
    日暮仙寿aa4519
    人間|18才|男性|回避
  • たそがれどきにも離れない
    不知火あけびaa4519hero001
    英雄|20才|女性|シャド
  • 誠実執事
    ヴィクトア・ローゼaa4769
    獣人|28才|男性|防御
  • 癒し系子狐
    aa4769hero001
    英雄|6才|女性|ブレ
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969
    獣人|11才|女性|攻撃
  • シベリアの女神
    アルヴィナ・ヴェラスネーシュカaa4969hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • さいきょーガール
    雪室 チルルaa5177
    人間|12才|女性|攻撃
  • 冬になれ!
    スネグラチカaa5177hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 希望の守り人
    白金 茶々子aa5194
    人間|8才|女性|生命



  • 閉じたゆりかごの破壊者
    紀伊 龍華aa5198
    人間|20才|男性|防御
  • 一つの漂着点を見た者
    ノア ノット ハウンドaa5198hero001
    英雄|15才|女性|ブレ
  • 仲間想う狂犬
    シュエンaa5415
    獣人|18才|男性|攻撃
  • 刀と笑う戦闘狂
    リシアaa5415hero001
    英雄|18才|女性|シャド
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