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H.O.P.E.安全パトロール
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/06/05 22:49:59 -
相談卓
最終発言2017/06/08 09:42:43
オープニング
●正義の番犬
実施日:6月××日
活動時間:10時~15時
活動内容:愚神および従魔の被害地域における見回り
見回り地域:
1東京都……区
2東京都……
3東京……
:
:
「あ、これ……2番ってうちの周りの地域だ」
赤須 まこと(az0065)は募集要項を見て呟いた。この地域が選ばれたのは、かつて自分が起こしてしまった肉屋泥棒のせいである。学生を狙う不審者への警戒目的もあるようだが。
「これ参加しよう! いいでしょ、亮次さん?」
言葉には出さないつもりだけれど、見回りに参加することで町の人々に報告したかった。H.O.P.E.の一員として頑張っていることを。
「なんだ? 要は散歩か?」
呉 亮次(az0065hero001)がからかうと、まことは眉を吊り上げた。
「お仕事だよ! 亮次さん、いつもみたいにふらふらどっかいくのやめてよね!」
「おまえこそ、散歩中の犬とか見つけてもついていくなよ」
「行かないよ、紐がちぎれたわんこじゃないんだから!」
くだらない吠え合いに、まことは我ながら少し呆れた。
「確かに、家で飼えない分、外で会うと嬉しいんだけどね。……それにしても、亮次さんの方が犬にモテるのは納得いかない」
「あっちから寄ってくるんだからしゃーねぇだろ。人望だな」
テレビでは話題のドキュメンタリー番組『救命戦士タイガード=マックス』のCMが放送されている。虎柄のヒーロースーツにサングラス姿のヒーローに視線を移し、まことは言った。
「あ、タイガードだ! 格好良いなー!」
「ふうん、犬にしか興味ないかと思ったら……」
まことは彼の言いたいことを察したようで、顔を赤くする。
「いや、確かにイケメンだけど! 力を失ってもめげずに戦ってるところが素敵なんだよ! 後方支援のお仕事しつつ、戦うためのトレーニングにも励んでるんだよ」
亮次は興味なさげに鼻を鳴らした。
(バリバリ従魔どもを倒してたリンカーが、急に力を失うなんてあり得るのか? あいつがまことの嫌いな『嘘つき』じゃないといいけどな)
タイガードはかつて高レベルの戦闘能力を持つという嘘をついていた。亮次の指摘は的を射ているのだが、今は置いておいて――。タイガードの正体が同じ依頼に参加していることを、まことは知るよしもないのだった。
●見回り地域詳細
1~3の地域を一つ選んで参加してください。仕事の始めと終わりに集合場所にて点呼を取ります。
1、かがやき商店街
東京某所にある商店街。
『かがやき商店街』
集合・解散場所は、商店街の入り口。
全長約600m。アーケードなし。肉屋、八百屋、魚屋、おでん屋(練り物屋)、たこやき屋、クレープ屋など、食材や総菜を扱う店や飲食店が多い。
かつてチーズが従魔化し、人々を襲った。解決に当たったエージェントたちの機転で「チーズフェア」を行い、客足減少の被害も最小限に抑えられた。曲がり角の先に服屋や雑貨店中心の『ときめき商店街』が約300m続いているが、そちらに被害はなかった。
【留意事項】
犀川 ジョージ(さいかわ-)とケント・ミラーが見回りに参加。彼らは人気リンカーヒーロー『救命戦士タイガード=マックス』の正体である。タイガードはテレビのレポーターとして商店街を訪れたことがあり、その際に上記のチーズ事件解決に協力した。
非共鳴状態で依頼に来るのは初めて。混乱を防ぐため、緊急時以外に共鳴はしないとの条件付きで参加を許可。無名の新人として扱うこと。
2、東京某所の住宅街
集合・解散場所は、私立石英高校。
公園や学校(小中高大)が多い。激安スーパーや若者向けのカフェなども点在。暮らしやすい町であるため住民は増加傾向。去年の6月に肉屋の連続襲撃事件があった。深夜に肉が『食い荒らされる』という特異なもの。メディアは『肉裂きジャック事件』と面白おかしく騒ぎ立てたが、住民たちは得体のしれない犯人に恐怖した。
【留意事項】
犯行は赤須 まこと(石英高校3年)・呉 亮次によるものである。当時の彼らは共鳴すると極度の錯乱状態に陥り、自分を狼だと思い込んだ。その暴走の結果が連続襲撃事件である。彼らはライヴス制御などの訓練を受けH.O.P.E.エージェントとなったが、一般には知らされていない。
3、東京某所の古本街
集合・解散場所は駅前。
基本は古本屋が多く立ち並ぶ街。路地裏や雑居ビルの高層階にはマニア向けの店舗(テーブルトークRPG、武器屋、ウィッグ専門店、執事喫茶など)が点在。メイド喫茶『命ドキッ☆』の周辺地域でもある。駅前と店の前にて、メイド服の店員がチラシ配りをしているとのこと。バレンタインに愚神の悪戯の被害に遭い、駅前にチョココーティングされたメイドさん(愚神の人質)が展示された件は「ある意味伝説」といわれている。
【参加者:現在1組】
椿康広(az0002)/ティアラ・プリンシパル(az0002hero001)
解説
【PL情報】
各エリアでは以下のような小事件が起きる。
1、到着直後、チーズフェアの再開催を望む者(リーダー:おでん屋)たちと、また従魔が発生したら怖いと反対する者(リーダー:チーズ屋)たちが道の真ん中で言い合いを始める。人数は10名ほどずつ。殴り合いに発展しそうなので仲裁せよ。
解決法はいくつかあるが、皆さんが能力者または英雄という「力ある存在」であることは忘れないように。
2、12時頃、まことが迷子の女児を発見。うまく接することが出来ず、2の参加者全員にメールで連絡。
女の子は5歳程。猫らしき耳あり。自分のことを「猫のお化け」と自称する。何を聞いても「わからない」と答え、名前すら不明。食べ物には興味を示さない。犬や体の大きな人間を怖がる。
もし家が見つからなくても、15時まで女児を保護し続ければ成功。
3、14時頃、インシィを自称する悪ガキたちがスカートめくりを開始(共鳴済み3名。全員10代男子)。額につけたカメラからネット上に生中継。至急確保せよ。
最初の被害者はティアラ。呆れつつも他参加者に電話連絡。共鳴は彼女が主体。
少年たちは戦闘行動をとらず、逃げることを優先する。土地勘アリ。ヒット&アウェイでスカートをめくる。彼らはHOPEの見回り中であることを知らない
【注意】
・時間は10時~15時。休憩は適宜とること
・能力者と英雄は2人一組で行動。能力者のみで参加の場合、終始共鳴状態で描写します
・各組がバラバラに見回っても、グループを作ってもOK
・PL情報の小事件については関わらない組がいても構いません。(遠くて気づかなかった、意図的に無視した等)
【NPC】
・犀川ジョージ&ケント・ミラー:
ひょろ長眼鏡イケメン(20歳過ぎ)と生意気金髪少年(14~5歳)。
戦闘の才能はゼロ。HOPE所属前はそれを隠してやらせヒーロー番組に出演していた(ジョージの出身施設を貧窮から救うため)
リプレイ
●エリア1~チーズの乱~
「行こう白金ちゃん! 商店街をパトロールだ!」
「……がんばろー」
シエロ レミプリク(aa0575)の元気良い掛け声にナト アマタ(aa0575hero001)が続く。
「はい! 私、頑張ります!」
初任務ということで、緊張しながらも張り切っている白金 茶々子(aa5194)をシェオルドレッド(aa5194hero001)が見守っている。
「ジョージ君とケント君もよろしくね」
「こちらこそ! あ、見えてきましたよ」
ジョージが言う。筋骨隆々なヒーローの面影はあまりない。
「それにしても商店街はすごくにぎやかですね」
「何かイベントでもやってるのか?」
御剣 正宗(aa5043)とCODENAME-S(aa5043hero001)は二人そろって首を傾げる。
「12月には……チーズ型の従魔が出たらしい」
「掃除、すげーだるかったな」
ケントがぼやくと「楽しいこともあっただろ?」とジョージが笑う。
「チーズフェアですか、今晩はチーズフォンデュにしましょうかね?」
平和に思われたパトロールは、波乱の幕開けを迎えることになる。
「俺は反対だぞ、『第2回チーズフェア』なんて! あの従魔のことを忘れたのか!」
「客入りは上々だったろ! チーズを押し出して行けば、一番儲かるのはお前の店だろうがよ!」
興奮した様子の男たちの間に冷静なSの声が割り込んだ。
「何かトラブルですか?」
年嵩の男――おでん屋の店主が営業スマイルを浮かべる。
「すみませんお客さん。ちょっと商店街の方針について話し合ってるだけなんですよぉ」
「話し合い? あんたらの意見を押し付けてるようにしか聞こえないね!」
「なんだと?」
睨む合う相手はチーズ屋の若主人。
「け、喧嘩しないでください……!」
怯えながら発せられた茶々子の声は、怒鳴り声にかき消されてしまう。
「だいじょーぶ?」
ナトが彼女の顔をのぞき込む。
「平気です!」
「えらいえらい」
気丈に頷く茶々子の頭をナトが撫でた。その間にSと正宗が「落ち着いて」と声をかけ、順に両者の言い分を聞き出す。共鳴すれば物理的に引きはがすこともたやすいが、大きな力におびえる人々にとっては逆効果になるだろう。
「あんな従魔が怖い? 死人も出ねーだろうし、H.O.P.E.にちゃちゃっと連絡すれば終わりだろ」
ぼそりと言ったケントの口をジョージが塞ぐ。
「ジョージ君の見立てはどう?」
「反対派の皆さんはチーズ屋周辺のお店の方々が多いですね。直接、従魔の攻撃を受けた人たちかと」
「……私だったら、きっと怖いと思います」
茶々子が言うと、シェオルドレッドが頷く。
「抵抗なんてまるで無意味で、いつ来るかわからない助けを待つだけ。そんな経験を2度はしたくないはずよね」
ジョージは言う。
「賛成派の皆さんはその逆。大きな被害を受けず『チーズフェア』の記憶の方が強く残っている人たちだと思います」
「うん、どっちも間違ってはいないんだろーね」
シエロが不安そうな茶々子から視線を上げると、脂汗を額に浮かべておでん屋の胸ぐらを掴むチーズ屋が見えた。
「正宗」
「あの人は本気で暴力を振るうつもりはない。ポーズだ」
「ええ。とはいえ、うっかり手を出してしまっては取り返しがつかなくなります」
囁き交わした後、仲裁を再開する。
「よそ者は黙っててくれないか!」
邪魔する者たちを振り払おうとした手が勢いよく空を切る。にわかに高まる興奮。前のめりになる集団を止めようとエージェントたちが散る中。
「きゃっ!」
体の大きな若者が茶々子にぶつかってしまった。少女の大きな目に涙の膜が張っていく。
「白金ちゃん!」
シエロは彼女を守るように屈みこむ。――そう、両者の言い分はそれぞれ正しい。けれどこれだけは間違っている。
「おのれらの話は女の子泣かせてまですることなんかい!」
首を回して大人たちをにらみつけ、シエロが吠えた。場がしんと静まり返る。しまったと後悔の表情をしている者もいれば、シエロの表情に怯んだ者もいるようだ。茶々子はというと、驚きで涙が止まってしまったらしい。大粒の涙が一筋だけ流れていった。
「まずは手を放しましょうか。次は、5歩ずつ下がってください」
Sの指示に皆は黙って従う。念のため、彼女らとジョージたちは間に立つことにする。
「もう大丈夫! しっかり自分の言葉を伝えちゃいな!」
肩を叩かれた茶々子は口を開きかけて、また閉じてしまった。
「どうしたん?」
シエロは内緒話を促すように耳を寄せる。
「……チーズフェアを開いて欲しいけれど、私じゃ、従魔をなんとかできますなんて言えないです」
茶々子はまだ従魔と戦ったことがない。だから無責任なことは言えないと思うのだ。
「そういう時は――って言えばいいんだよ♪」
茶々子の目が驚きに見開かれる。
「いいのいいの! 仲良しだからね♪」
頷き合い、茶々子が皆を見る。
「もし従魔のことが不安なら――私とシエロちゃんがなんとかできます!」
「私と正宗も力になりましょう。絶対にこの商店街を荒らさせはしません」
「君たちは……」
呆然とするチーズ屋にSが言う
「申し遅れました。私たちはH.O.P.E.から派遣されたエージェント。今日はこの商店街のパトロールにきたのです。従魔やヴィランの影があれば根こそぎ刈り取りましょう」
「フェアの日程は……? 正式に依頼してもらえれば……護衛につくことも可能だと思う」
すっかり毒気を抜かれてしまった彼らは、照れ臭そうに謝罪し合った。従魔の被害を受けた者たちは、それ故にエージェントたちの雄姿もよく覚えていたようだ。不安要素が消えると知って、素直に引き下がってくれた。
「悪かったね、あんたたち。この上、アイディアまで出してもらえるなんて」
エージェントたちは、そのままフェアの話し合いに参加することにした。地域の人々の交流もパトロールの一環だ。
「僕が提案するのは『チーズフォンデュおでん』」
「ちーずふぉんじゅ? 前回はたまたまおでんの中にチーズが入っちまったんだが、なかなか好評だったな」
「こちらは一味違いますよ! おでんを溶けたチーズにディップして食べるんです。和と洋が掛け合わさったまさに最高の食べ物です!」
正宗とSが熱弁する。
「ほぉ、こりゃまた洒落てるなぁ! チーズ屋、試作してみねぇか!」
元々仲が悪いわけではないらしい二人は、チーズの種類やらおでんの具やらを羅列しながら去って行く。
「仲直りのコラボだね、ケント」
「よくそういうクサいこと言えるよな、お前」
お昼前に話し合いは一段落ついた。昼食がてら試食のお誘いを受けているので、少しばかり時間が余ってしまった。
「白金ちゃん、パトロールにいこっか!」
「シエロさん?」
首を傾げる茶々子。嘘ではないが、どちらかといえば頑張った彼女へのご褒美という意味合いが強い。
「ほら、肩車!」
「いいんですか……!?」
「もちろん! ね、ナト君!」
ナトが頷く。いつもは彼の特等席であるシエロの肩にそろりと茶々子が乗る。
「しっかりつかまっててね! えーい!」
商店街のメインストリートを疾走する大きな影。茶々子がきゃっきゃと歓声をあげ、シエロがからからと笑い、ニコニコ顔のナトが並走する。店員たちは一瞬あっけにとられるが、すぐにつられて笑顔になる。
「正宗、おでんの前にチーズ団子ができたそうですよ。温かいうちにどうぞ」
「えすちゃんも一緒に……」
「もちろん。任務が終わったら『きらめき商店街』にもいきましょう。ファッション系に力を入れているそうなので」
正宗とSは恋人かと見違えるほど仲睦まじげに話しているし、ジョージとケントはおばちゃんたちに囲まれながら、どこか楽し気に小競り合いしている。
「おねぇさん、チラシのデザインどっちがいいと思う? 俺的にはねー……」
店員たちは初対面のシェオルドレッドにも気さくに話しかけてくる。
「本当に賑やか」
彼女は活気ある商店街の様子を愛しげに見回した。
●エリア3~パトロール~
「椿君、今回もよろしくね!」
加賀谷 ゆら(aa0651)とシド (aa0651hero001)は康広たちと挨拶を交わす。
「ライブ楽しかったよ」
「あざっす。よかったら今度はシドさんも来てください」
康広の誘いにシドが頷く。
「ニッタです! こっちは能力者の颯佐君ですよ」
新爲(aa4496hero002)が黒鳶 颯佐(aa4496)の分まで元気よく自己紹介してくれたので、彼は「よろしく」と短く告げるにとどめた。志賀谷 京子(aa0150)と氷鏡 六花(aa4969)も自分と英雄の紹介をする。
「バレンタイン以来ですねぇ、颯佐お兄ちゃんっ」
「ああ……久しぶりに来たな」
アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)が資料を思い出しながら言う。
「確かメイド喫茶という変わった飲食店が現場でしたよね?」
「はい! ニッタ、接客のお仕事してただけなのに、いつの間にか解決してたんですよ!」
愚神の術によりやりたい放題していった客たちを思い出し、颯佐はため息を吐いた。
6組のエージェントが大まかにエリアを決め、散開する。
共鳴状態のナイチンゲール(aa4840)はチラシ配りのメイドに「お疲れ様」と声をかけながら、迷いのない足取りで去って行く。資料にもあった人気スポットを回り、異常がないか見回るつもりだ。
「普段とは全然印象が違うんだな」
ギャップに戸惑う康広を、ティアラが可笑しそうに見やった。
「さてさて……。やっぱり古本屋の方から回ってみるかな」
ゆらはマップアプリを開き、現在地を確認しつつ進む。
「路地裏にも入ってみた方がいいだろう。何があるかわからんからな」
「そうねえ……。入り込む場所が多いと、それだけ目が行き届かなくなるよね」
シドは辺りに鋭い視線を巡らせ注意を払う。
「ご主人様、お嬢様、これどうぞ!」
「チラシ貰っちゃった。シドがメイドさんに絡まれるとこ見てみたいなー」
想像を巡らせるゆらだが、シドが拳を握ったのを見て思わず口をつぐんだ。
同じく、チラシを受け取った六花。むしろティッシュやうちわなど、差し出されたものはすべて受け取ってしまう。
「見慣れない単語ばかりね。カラオケ30分無料? サウナご優待券?」
「……ん。わかんない、けど……六花が、受け取ったら、嬉しそう、だったの」
「良かったわね、六花」
異世界の女神であるアルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001)にとっては、街並み全てが物珍しいようだ。都会に慣れない六花も似たような様子である。
京子はアリッサと2人、のんびり街を見回っていた。
「独特の町並みですね。でも、なんだか落ち着きます。懐かしさを感じているのでしょうか」
「アリッサの世界でも似た風景があったのかな? 古びた本が大量にあるのは、普通の本屋さんとはまた違うよね」
まずは入り組んだ古本街を一通り回り、店の配置や道を確認することにしよう。
「懐かしいですね~。メイド喫茶の皆さんはお元気でしょうか?」
新爲が言う。あの時は寒かったが、今は涼しげな半そで姿へと変わっている。
「あの」
男が近づいてくる。颯佐は思わず身構えるが。
「もしかしてメイドさんですか? 執事喫茶の場所、ご存じないでしょうか?」
面接に行こうとして迷子になったらしい。
「そのお店、見覚えあります! ニッタ、案内しますね!」
ためらいなく言う新爲。
「困ってる人を助けるのもパトロールの一環ですよね! ニッタたちはメイドさんと執事さんでもありますし」
「少なくとも俺は、もう執事じゃないんだがな」
言いつつも、颯佐も道案内に付き合うことにした。
「颯佐お兄ちゃんっ後でメイド喫茶さんに行きませんか? 久しぶりに皆さんに会いたいですっ」
「ああ、構わない」
再び、ゆらとシド。
「古本屋さんがいっぱい。わくわくするねー」
「本好きならそうだろうが……。今日はそれが目的では」
笑顔のゆらに対し、シドの表情は厳しい。
「はいはい。お小言はそのくらいでー。今日はそんなに買わないわよ。パトロールしてるんだから」
「ふむ。お前もだいぶエージェントらしくなったものだな」
彼の脳裏に浮かぶのは以前のゆらの姿。
(ショッピングモールで見回りと称して、旦那とはしゃぎまわっていた頃はどうなるかと思ったが)
「市民の平和を守るのがエージェントの役目なら、パトロールはその基本よね」
「いい心がけだ」
お昼時を待って、六花とアルヴィナは命ドキへと入店した。
「おかえりなさいませ、お嬢様!」
さすがのアルヴィナも目を丸くして、メイドたちを見つめ返す。
「り、六花たちが、お嬢様……?」
「何だか新鮮な気分ね」
六花は目に見えてそわそわし、アルヴィナはやはり興味深そうに観察している。
「お部屋、とっても、可愛い、し……メイドさん、たちも、素敵……」
異世界に迷い込んだアリスのように、非日常を満喫する。
「『ふんわりとろけるかき氷の魔法』と『青い海と南国ドリンクパラダイス』を頂けるかしら」
説明すると、台湾風のふわふわかき氷(イチゴ味)とフルーツを盛りつけたドリンク(ブルーハワイ味)である。
「おいしくなーれ! 命ドキッ☆マジック!」
「メイドさん、も……魔法、使えるの? びっくり、です」
「優しい魔法をありがとう」
澄んだ瞳で予想外の褒められ方をしたメイドは、赤面してしまったのであった。
京子たちは落ち着いた街並みに溶け込むような看板に気づく。
「執事喫茶かー。アリッサもお嬢様とか呼ばれたい?」
「なんか背筋がむず痒くなりそうです……。休憩するならあちらの喫茶店にしましょう」
「ジャズ喫茶だと……? 趣味が渋いなー」
京子の言葉の意味が呑み込めないらしいアリッサを連れて、入店する。軽やかなピアノの音とコーヒーの香りが二人を歓迎した。
「分厚いホットケーキ、美味しそう! ミルクセーキも雰囲気あっていいなー」
「これ、全部コーヒーの種類ですか?」
「そうみたい。『本日のおすすめ』にするのもアリかもね」
ここまでの見回りは平和そのもの。良い気分で午後のひと時を過ごせたのだった。
●エリア2~迷子の子猫~
ナガル・クロッソニア(aa3796)は集合場所への道行きに既視感を覚えた。
「あれ? たしかこの辺りって…」
千冬(aa3796hero001)が答える。
「……記憶が正しければ、"あの"事件の時の場所ですね」
石英高校には、事件の重要人物――まことと亮次が待っていた。
「おはよう、ナガルちゃん。ここにくるのは去年の今頃以来かな?」
「初めて出会った時からもうそんなに経ったんだねぇ」
立派にエージェントを続けている彼女に感慨深い気持ちになる。
(赤須さんが頑張り過ぎないように……)
エールの代わりに、ぐっと手を握って。
「今日も頑張っていこー!」
「おー!」
このエリアも、午前の見回りは順調に進んだ。
「オシャレな町だなー。見回りが終わったら甘いものでも食べたい!」
リオン クロフォード(aa3237hero001)の言葉に、藤咲 仁菜(aa3237)が目を輝かせて答える。
「勿論人気のカフェは調べといたよ! 私パンケーキが食べたい!」
異変があったのは正午近くのこと。SOSに駆け付けた笹山平介(aa0342)とゼム ロバート(aa0342hero002)が見たのは、泣きじゃくる猫耳少女とおろおろするまことだった。亮次はなぜか電柱の影に身を隠している。少女は亮次や散歩中の犬をひどく怖がり、まことにの質問には「わからない」を繰り返すばかりだそうだ。そんな状況を話しているうちにナガルと千冬も合流する。
いきなり大人数で取り囲むのはまずいと考え、ナガルと平介が少女の前にしゃがみ込む。
「人間なのに、猫だ!」
彼女は自分と似たナガルの姿に驚いた。
「あなたも猫さんなのかな? えへへ、お揃いだね!」
ナガルが視線を合わせ続けていると、少女が悲しげな表情をした。
「喧嘩、いやなの」
猫にとって目線を合わせることは争いのサインだ。
「ごめん、私たちのルールと違うから間違えちゃったんだ。私はあなたと仲良くしたいな」
ナガルは説明する。人間は心を通じ合わせたい人と目を合わせるのだ。
「あたちも仲良しが良い!」
「じゃあ、私達と一緒にいこう! お家が見つかるまで、私達が一緒だからね」
ナガルは手を差し出し、彼女を公園へと誘った。
少女が疲れないようベンチに腰を下ろすと、平介は考える。少女は家の場所も名前もわからないらしい。「はい」「いいえ」で答えられる質問はどうだろうか。
「君は一人でここに来たのかな?」
「……おうち、狭くてつまんないから」
「どうやってここに来たのか覚えていない?」
「うん」
そこへ合流してきたのは呉 琳(aa3404)と藤堂 茂守(aa3404hero002)だ。
「知ってる人が見つかるといいな!!」
「そうですね」
琳はすぐに少女の元へ。茂守は遠巻きに見守りながらゼムと推論を交わす。
「可能性が高いのは、ワイルドブラッドかな」
「仕草と言い、考え方と言い、あいつはまるきり猫だからな」
少女はにっとわらった琳の歯にも警戒するような反応を見せたが、敵意がないことを説明すると安心した顔をする。
「友達になろうぜ!」
差し出された手をじっと見つめる少女の手をそっと取って握る。
「これは握手。仲良しになろうって合図だ!」
わからないなら、教えてやればいい。自分がそうしてもらって生きてきた様に。琳は彼女の力になりたいのだ。
「俺はサメのワイルドブラッドなんだぜっ! お前はネコっぽいよな……」
「あたちは猫のお化けだよ!」
「お化けなのか! すごいな!」
ぴくぴく動く耳とぴんと立った尻尾もどうやら本物だ。
「名前がないと『お前』って言わないといけないよな……うーん、ニックネームでもつけるか。ネコは……ミャーって鳴くし……ミヤ……とかかな?」
少女は名前の響きを気に入ったようで、何度も口に出している。
「ミヤはお腹すかないか?」
「空かないよ。だから狩りはしなくていいの」
琳は平介へと視線を送る。彼女はもしや英雄?
「狩りはずっとしてないの?」
「昨日とその前はしてない」
「こういうの、見たことないか?」
琳は幻想蝶を取り出す。
「にゃごが持ってるやつだ!」
にゃごと言うのはミヤの仲間だそうだ。仮説が現実味を帯びてきたその時、ミヤは突然泣き出した。にゃごが恋しくなってしまったのだろう。
「大丈夫だよ、すぐににゃごさんを見つけてあげるから」
ナガルがミヤを慰める。そこへ仁菜とリオンがやってきた。しばらく考え込んでいた仁菜だったが、あるものを思い出した。
「そっか、ミヤちゃんは猫のお化けさんなんだー。私はね、兎の魔法使いなんだよ!」
笑顔で話しかけると。
「リオン共鳴して!」
「お、あれやるの?魔法練習用の遊びを披露する日がくるとはなー」
手にしたのは、メンサセクンダ。
「さぁて君の好きなお菓子はあるかな?」
魔法でできたスイーツが宙を舞う。皆大好き魅惑のチョコレート。ケーキの定番ショートケーキ。カラフルで可愛いマカロン。ふわっふわのマフィン。思わず目を奪われ、じゃれつこうとする彼女を横目で確認すると、お菓子たちのパレードを空高くまで行進させる。
「皆まとめてシューティング!」
素早く星の書に喚装し、流れ星で一気に隊列を貫く。お菓子と光が弾けて、空のスクリーンからきらきらとした光が降り注いだ。まるで金平糖の雨だ。
(泣いてる子を泣き止ませるのは、気をまぎらわせるのが一番さ!)
落ち着いたミヤとエージェントたちに平介がジュースを差し入れた。
「ありがとうな! へーすけ!」
ミヤは琳にプルタブを開けてもらい、美味しそうに飲んでいる。ゼムや茂守、千冬たちは公園にいる人々に訪ねて回ったが、ミヤを知る者はいなかった。
そこで平介は、ミヤにひとつ『お願い』をした。
「君の写真をとってもいいかな? 君の事を知っている方がいないか聞き込みをしてきます♪」
仁菜と琳も一緒に写ると言うと、ミヤは承諾した。
「笹山さん達を手伝ってきます……人手は多い方が早く終わるでしょうし」
茂守が言う。ミヤの傍にはナガル・仁菜・リオン・琳が残ることになった。
「よく行くお店や、いつも遊ぶ公園、覚えてないかな?」
仁菜の問いは空振り。ただ彼女が覚えていなくても、店員がミヤとその連れを覚えているパターンもあるだろう。諦めるのはまだ早い。聞き込み先はスーパーやカフェなど人の集まるところに決めた。まことはクラスメイトやご近所さん、千冬は以前の事件で知り合った肉屋へ連絡を回している。
「こいつを知ってる人間はいるか……?」
ゼムは子供をターゲットに話を聞く。
「しらない」
「……そうか。このあたりで子供が集まる場所があれば教えろ」
質問を繰り返しているうちに、こんな証言を得ることができた。
「猫の耳! この子、さっき名護のお兄ちゃんが聞きに来た子かも」
ミヤは、数日前にこの世界に来た英雄だった。前の世界では大きな猫で、まだ人間の体に慣れていない。英雄としては時々見られる例だった。能力者はにゃご、改め名護という苗字の男子中学生。消えかけていたミヤと3日前に誓約し、H.O.P.E.へも問い合わせをしていたが、所属する決心がつかなかったそうだ。
「大事なモノはすぐそばに……うらやましい限りだ」
茂守が呟く。
「もし僕が所属していたら、すぐに皆さんに連絡できたんだ」
少年はうなだれる。
「名前も可愛いやつが思いつかなくて、ずっと悩んでて……。僕が優柔不断なせいで、余計に迷惑をかけてしまいました。ごめんなさい」
「気にすんなって。ミヤちゃんがお家に帰れて何よりだよ」
リオンが彼の肩を叩く。
「H.O.P.E.への所属は危険を伴う。覚悟がないなら入らなくて正解だ」
ゼムがぶっきらぼうに言うとミヤが彼をにらんだ。
「にゃご、いじめないで!」
「違う、あの人は僕を心配してくれたんだ」
「ゼム、顔が怖いそうだよ? もっと彼らの様に笑ってあげないと」
ある意味3方向からの攻撃を受け、ゼムは顔をそらす。
「今度ゆっくり遊べる時は、私も呼んでね!」
ナガルの言葉に、仁菜も頷く。ミヤが嬉しそうに飛び跳ねる様を見て、名護少年がようやく笑った。
「皆さん、ありがとうございました」
●エリア3~不運~
事件が起こったのは14時過ぎ。風のように現れた少年がティアラのスカートをめくり、逃げたのである。『我々は無限の特異点に突入した』とインシィの声明文を高らかに宣言して。
「わかった! ティアラさんは大丈夫!?」
連絡を受けたゆらが問う。
「平気。私の姿で共鳴して犯人を追うわ」
別の少年は神秘的な女性と幼い少女の2人連れを発見した。薄布をまとう肢体にカメラを向けつつ思う。
「めくるモノが、ない」
ショーの演目は、あくまでスカートめくり。ならば狙うは少女だ。
「えい!」
無警戒だった少女がはっとしてスカートを抑え、赤面する。最高の瞬間である。
「……変態、さん……?」
涙目になった六花を見て、アルヴィナの目つきが鋭くなった。追跡開始だ。
「インシィを名乗って、額にカメラつけてたって? ……ふーん」
京子は通信を切ると冷静にひとりごちる。
「どうします、京子? それなりに広い一帯ですが」
「あわてない、あわてない。イマドキの目立ちたがりといえば生中継だよね。あ、アリッサ、近辺の地図を開いといてくれる?」
言いながらSNSで『インシィ』のキーワードを検索すると、とある動画サイトに行きついた。
「見つけたよ。みんなにも知らせとく」
生中継というだけあって、移動中もカメラはつけっぱなし。撮影者が移動しているせいで見づらいが、ちらほらと見覚えのある景色が映り込む。
「狙ってきてくれるかな?」
「見た目だけならお嬢様ですからね、きっと騙されてくれます
「中身もですー」
共鳴し、イメージプロジェクターで私服っぽいスカート姿を映し出す。
「さ、囮作戦はじめよっか」
メイド喫茶前に現れた犯人を便宜上『少年A』と呼ぼう。Aは物陰から赤髪のメイドを見ていた。
「ターゲット決定。出陣する」
にこやかにチラシを配る彼女へと突進していき、スカートを掴んだ次の瞬間。
「困りますわ御主人様。そういうことはきちんと手順を踏んでからして戴かないと」
頭の鈍痛。間近に迫る顔。その背景は青空。足払いをかけられ、押し倒されたのだと遅れて気が付いた。
第一被害者から連絡を受けたナイチンゲールが急行したのは命ドキだった。店に状況を説明し、チラシ配り担当のメイドと入れ替わったのだ。額のカメラはむしり取られ、レンズは彼女の手で覆われてしまった。
「報告とは背格好が違うね。複数犯か」
頭につけたカメラから察するに、彼らは単独行動をしているらしい。
「さて。今ここで晒し者になった挙げ句『女の敵』っていう無限の特異点に突入するのと、ママにだけ連絡されるの、どっちがいい? ……言ってる意味、分かるよね」
「ふっ、俺はメンバーの中でも最弱。あとの二人が必ずや大望をへぶっ」
強烈な平手打ちがAを襲う。ナイチンゲールは横たわる少年にカメラを向けた。
少年Bが狙ったのは新爲だった。古本街の中でも、比較的大型の書店が並ぶ人通りの多い道。ただの通行人と思われた少年が、突然頭に何かを装着し、新爲のミニスカートをぴらりとめくったのである。
「もーっ怒りますよ! 怒りますからね!」
ぷくりと頬を膨らませて怒る彼女だが、怖いどころかむしろ可愛らしい。
「行きますよ颯佐くんっこっちです!」
新爲が颯佐の手を引く。彼は呆れつつも空いた手で他のメンバーに位置情報を送信した。
「鬼さんこっちらー♪」
少年は路地に飛び込むとゴミ箱を倒す。追いかけられることすら楽しいらしい彼は、ちらと後ろを見て驚愕した。
「え」
彼女のブーツが蹴ったのは壁。ごみ箱トラップは何の意味も為さなかった。上手く撮影できていれば、別の意味で視聴者が増えそうである。
路地から路地。交差する道をノンストップで駆けていく。
「チッ」
道の先、上品な雰囲気の少女が駆けてくる自分を見て身をすくませた。
「どけっ!」
突き飛ばそうとした腕を、強く掴まれた。体が回転する感覚。少女に投げ飛ばされたのだと理解はできても納得がいかなかった。
少女――京子の手を力任せに振り払って立ち上がる。京子も負けじと、背を向けた彼の腕を再びつかむ。彼の体勢が崩れたまま固定された次の瞬間。
「えいっ」
額のカメラが新爲のハイキックによって粉砕された。
「ふふふ、ニッタ怒らせちゃダメなんですからね」
カメラにハイキック。少年Bの脳裏に『撮れてたかな』との思いがよぎったのは無理もない。
「今日は怖いお姉さんたちがいっぱいいる日なんだよ。運が悪かったねえ?」
悪戯っぽく微笑んで京子は言う。
(運のいい悪いではなく、不埒な行いをしてはいけませんからね)
アリッサの声が京子の耳に届いた。
「お前の仲間、既に一人捕まっているな」
報告を受けた颯佐が告げる。
「配信者は3人。てことはラスト一人だね?」
京子は可愛らしく首を傾げ、少年を見る。彼は抵抗する気力を完全になくし、こくりと頷いた。
駅前。最後の少年は、大役をひとり背負うこととなってしまった。なぜかチラシ配りのメイドがいない。彼らの起こした事件に警戒したか。残念である反面、反響の大きさに興奮を覚える。実際は彼が思うほどの大事件になったわけではなく、エージェントたちの根回しによるものだったが。
彼は人待ち顔で立っているツインテールの女に目を付けた。身を屈めて駆け、ローアングルからスカートに迫る。
「きゃーって言うと思った?」
視線の鋭さに少年Cの足がすくんだ。
「俺の相方に不埒を働くとはいい度胸だ」
殺される、と思った。黒い男の姿は女の姿と一つに溶けあう。目の前に現れたのは冷たい美貌の女。
「……リンカー」
「おいたが過ぎる奴には仕置きが必要だな」
冷酷な声が、冷徹な目が、少年を刺す。乏しい人生経験の中でも一二を争う恐怖である。延ばされた手を避けて後ずさる彼は、何かにぶつかってしまう。
「捕まえた」
ひやりとした手の感覚。じわじわと高まっていた恐怖が臨界的を迎え、彼は地面に尻をつく。振り返ると先ほど獲物にした少女――見た目と雰囲気は変わっていたが――が彼を見下ろしていた。まるで鬼ごっこの勝者のように無邪気な笑顔だった。
「おかえり、京子ちゃん!」
「ゆらさんもお疲れ様!」
二人はお互いへ向けてぐっと親指を立てる。少年たちの処分は本部に委ねることとなったため、駅前で迎えを待っているのだ。
「今回は負けを認めるが、次は……ぎゃあ!」
六花は懲りない少年Aのズボン凍らせ粉々に砕け散らせる。内にいるアルヴィナの指示なのだろう。共鳴を解いて6人に増えた少年たちは、足元を凍結されて身動きがとれぬ状態。半ば晒し者の刑となっている。身分証も確保済みだ。
共鳴を解くと、アルヴィナは犯人たちの前に立つとおもむろに自分の羽衣をまくりあげて見せた。
「見ることが目的なの……? それとも、めくることそのものが目的なのかしら……?」
犯人たちと通行人から歓喜まじりの悲鳴が上がる。
「やめて……!」
アルヴィナは六花の必死のお願いに従ったものの、ギャラリーを意にも介さず少年たちを凝視する。彼らの行動や感情に興味があるのだ。
「回答は?」
「チラリズムが至高でしょ! 今のはやりすぎ!」
「俺、女子のリアクション見たい派。めくることに価値があんのよ」
「わ、我々は胸を高ぶらせる熱き欲望に従順になることにより無限の特異点を……」
「馬鹿! 黙ってろ!」
あまりの事態にひととき恐怖を忘れていた3名は、エージェントたちの氷の視線に刺されて震えあがった。6人の少年たちは、思想からしてバラバラだ。インシィうんぬんは建前で『刺激的なオフ会』というのが真相らしい。
「なんだかなあ……」
ナイチンゲールが小さく呟いた。吐く息に犯人たちと自分自身への呆れをにじませて。
●正義の味方
仁菜オススメのカフェで皆と労をねぎらい合っていたまことは、康広から小事件の報告を受けた。もうひとつのエリアでも、エージェントたちがトラブルを解決したそうだ。まことは共鳴の力を利用した悪ガキ集団から自分の黒歴史を連想したが――ぶんぶんと首を振った。ナガルが不思議そうに彼女の顔を見る。
「何でもないの! ただ、頑張りたいなって思って」
今日は皆の協力のお陰で「ありがとう」を言ってもらえた。それは小さいけれど大きな意味のある一歩だ。ほんの少し、憧れる正義の味方に近づけた気がして、彼女は自然と微笑んでいた。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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