本部

変態紳士☆ロシュツマー

一 一

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/05/24 20:31

掲示板

オープニング

●夜道は注意
 コツ コツ コツ コツ――。
 街灯や人気が少ない夜の路地を、1人の若い女性が歩いていた。真新しいスーツと鞄を身につけ、ヒールで歩く姿はどこかぎこちない。
「はぁ。今日も疲れたなぁ」
 コツ コツ コツ コツ――。
 今年度から新社会人となった彼女は、新しい環境に馴染もうと努力していた。現在は目の前のことで精一杯。新人研修を経て先輩社員から教えられる仕事を覚えていき、一人暮らし生活の自己管理も気を配っている。
 とはいえ、彼女が慣れてきたのは会社への通勤と、帰路でのしかかる1日の疲労感でこぼれるため息、後は靴擦れの痛みくらいである。
「……まぁ、ゆっくりやっていけばいいよ、うん」
 慰めの台詞を自身に言い聞かせ、彼女は肩にかけた鞄を抱え直す。帰りのコンビニで購入したお弁当入りのビニール袋も揺れ、自炊って難しいなぁ、と小さく嘆息した。
 その時。
 コツ コツ コツ コツ――。
  ひた ひた ひた ひた――。
(……え?)
 女性は気づく。
 自分のものとは違う足音が混じっていることを。
「……だれ?」
 おそるおそる背後を振り返るが、人の姿はない。
「気のせい、かな……?」
 背筋が薄ら寒い思いをしつつ、女性は再び前を向いて歩き出す。
 と。
 コツ――。
   ひた――。
「っ!?」
 今度こそ確実に『自分以外の足音』を聞き、急いで振り返る。
 やはり誰もいない。
 だが、『誰か』はいる――!
「ひ、っ!」
 女性は恐怖と悲鳴を押し殺し、歩く速度を少しずつ上げた。
 コツ コツ コツ コツ――。
  ひた ひた ひた――。
 ついてきている。
 何で私に?
 でも姿は見えない。
 もしかして、ストーカー?
 ひた。
「っ!?」
 混乱でまとまらない思考の中、必死に足を動かしていた女性だが、いきなり『背後』に迫った足音に思わず立ち止まり、振り向いてしまった。
「ぁ……」
 視線の先には、女性を上から見下ろす不気味な男。ツバの広い帽子の下には黒いサングラスと白いマスク、首から下はロング丈のトレンチコートを羽織っており、シルエットからかなり筋肉質であることが一目でわかる。
 もはや絵に描いたような不審者に絶句した女性が一歩後ずさると、男は突如コートを手にかけ前を大きく広げた。
「……きゃあああっ!?」
 瞬間、女性は絶叫を上げて一目散に逃げ出す。
 彼女が目撃したもの。
 それは、男性らしいムッキムキな灰色の肉体と、だいぶ攻めたフリフリレースで鮮烈な赤が印象的な女性用のブラとショーツ。
 ――以上。
 弁解の余地などない。
 奴は文句なしの変態だった。
「はぁ! は、っ!? きゃああああっ!?」
 必死で逃げた女性は街灯が灯る十字路の中心に立ち、逃げ道を探して視線を巡らして、再び悲鳴を上げる。
 右も、左も、正面も、後ろから追いかけてくる変態と同じような変態が、すでに待ち構えていたからだ。
 コートをコウモリのように広げ、それぞれ別の色とデザインの女性用下着を惜しげもなく披露し、何故かカニのようながに股で走り寄る巨漢の変態×4。めちゃくちゃな走り方なのに妙に素早いのも、女性の恐怖をさらに増長させていた。
「だ、だれか、っ!!」
 ここでようやく助けを呼ぼうとした女性だったが、ふと自分に影が差したのを感じ、反射的に頭上を見上げる。
「きゃあああああっ!?!?」
 その先には、5人目のがに股の変態が、コートのすそをはためかせながら『飛んで』いた。
 人生でもっとも大きな悲鳴を上げた女性は、逃げることもできずに変態と衝突し、意識を完全に手放した。
 ――彼女に残る最後の記憶は、視界いっぱいを埋めつくした誰かの女性用下着(スケスケな白)だけだった。

●変態は敵ではない! 敵が変態なのだ!!
「愚神か従魔と推定される変態をこの世から消滅させてください」
 開口一番、無表情でエージェントへ告げたのはオペレーターの碓氷 静香。元々感情表現が不得手な彼女だが、この日は普段以上に無機質な印象もあり、誰もが彼女の怒気をはっきりと認識できた。
「順を追って説明します。約1ヶ月ほど前から、都内で女性の下着が盗まれるという被害が相次いで報告され、警察が窃盗事件として捜査を開始。程なくして、今度は女性が人気のない夜道で露出魔に襲われる被害が複数発生しました」
 当初は警察も別件として捜査していたが、後に窃盗の被害者と露出魔の被害者から聞いた『下着』の特徴が一致し、同一犯の可能性が浮上。さらに、露出魔の被害者がいずれもライヴス枯渇状態で病院に搬送されたことから、愚神の関与が濃厚になったためH.O.P.E.に依頼がきたらしい。
「被害女性たちの身体的被害はライヴス枯渇の他は軽傷のみですが、全員にPTSD(心的外傷後ストレス傷害)の症状が見られ精神的被害はとても深刻です」
 資料によると、被害者たちは5人の変態に抱きつかれた上、発見時には犯人が使用していたサングラスとマスクを着用させられたまま、路上に放置されていたらしい。目を覚ました被害女性たちは、当時の恐怖を想起させる犯人の特徴などに拒絶反応を示すようになり、程度の差こそあれ全員がPTSDと診断された。
 男性や暗闇への恐怖心だけでなく、中には盗まれた物に似た色や形の下着、果てはマスクさえも直視できなくなった者がいるらしい。
「今回は被害が被害ですので、被害女性たちは男性の捜査に難色を示しているそうですが、変態討伐が最優先です。彼女たちの心情も理解できますが、これ以上被害者を出さないことの方がより重要ですから」
 説明を終え、静香は資料から視線を上げてエージェントたちを見渡す。
「人であれ愚神であれ、これほど下劣で悪辣な変態を野放しになどしてはおけません。皆さん、全力でチリも残さず完膚なきまでに叩き潰してきてください。お願いします」
 被害女性たちの苦しみを知り、日常生活さえ危ぶまれるトラウマを植え付けた犯人をどうしても許せないらしい。最後まで無表情のまますさまじい怒気を窺わせた静香は、そうしてエージェントたちへ頭を下げた。

解説

●目標
 露出狂従魔の討伐。

●登場
 変態紳士☆ロシュツマー…デクリオ級。長身かつ筋肉質の成人男性で総数5体。人気が少ない場所を好み、常に連携行動を重視。顔は帽子とグラサンとマスクで隠し、ロングコートの中は灰色の肌とそれぞれ赤・青・白・黒・紫色の女性用下着(生地少な目)のみ装着。

 能力…魔攻・回避・生命力↑↑、移動・イニシアチブ↑、防御・特殊抵抗↓↓↓

 スキル
・紳士の嗜み…射程1~20、単体魔法、命中+200、胸部および股間の布地から射出する謎のビーム(柔軟剤の香り付き)、命中→BS狼狽
・紳士の慰め…射程1、範囲3、範囲魔法、魔攻+300、広げたコートごと1対象を抱擁し謎ビームを四方へ放射、命中→BS拘束(隣接対象のみ)
・紳士の矜持…生命力25%以下で自動発動、攻撃+20%・防御-20%(常時)、下着以外の装備と恥を捨てた強化

●状況
 推定出没地域は都内の住宅街近辺。人通りと街灯が少なく、監視カメラ等も未設置である夜の路地にて犯行が頻発。いずれも現場は一本道、丁字路、三叉路、十字路などで、乗用車1台が通れる程度の幅しかない。調査期間中、天候は晴れだが風はやや強い。

 4月初旬に女性用下着の窃盗事件が相次ぎ、中旬から夜道を1人で歩く女性を狙った露出魔被害が発生。警察の捜査過程で露出魔の下着と盗品の特徴が一致し、被害者にライヴス枯渇症状が確認されるなどし、H.O.P.E.へ討伐依頼が入る。

 従魔は必ず女性を包囲する形で出現し、コートを広げたがに股走りで急接近。直接抱きついてライヴスを奪うと、失神した女性に自身のグラサンとマスクを着けさせて逃亡。すでに複数の女性が被害に遭い、いずれもPTSDを発症して現在も治療中。

 窃盗事件の被害者も従魔に襲われた被害者も、男性エージェントの捜査に難色を示しているが、従魔討伐が最優先のため参加制限はない。

リプレイ

●二次被害
 依頼の概要を把握した後、エージェントは集まって作戦を話し合う。
「か弱い女性ばかりを狙うなんて、絶対に許せません!」
 真っ先に声を荒らげたのはヤナ・メイヤー(aa5172)。モルモットのワイルドブラッドである彼女はある組織にて医療用人体実験サンプルとして育てられ、手術の被験者や助手としてこき使われてきた過去がある。
 どうしようもない理不尽の中で生きてきたヤナにとって、理不尽な恐怖にさらされた被害女性を他人事とは思えない。そこへ関連の疑いが強い愚神への強い敵愾心も上乗せされたが故の怒りだ。
「私としては犯人に何の恨みもないが……容赦しないでいいのは歓迎だ」
 隣では、理髪外科医(aa5172hero001)がライヴス注射器を手元で弄ぶ。肉を切り刻み血を見ることを好む彼女にとって、被害者感情より己の嗜好の方が優先される。自然と口元には期待の笑みが漏れた。
「俺は女性が好きだ。だが無理強いも相手が嫌がる事もするつもりはない。それが何だ、この連中は。我が神の名の元に、天誅を喰らわせてやらねば気が済まん!」
「まぁまぁ、まずは落ち着こうよマルコさん」
 ヤナと同様、怒りを隠せないマルコ・マカーリオ(aa0121hero001)を宥めるアンジェリカ・カノーヴァ(aa0121)。冷静に見えるアンジェリカも瞳に宿す怒りはマルコとそう変わらず、自分に言い聞かせているようにも見える。
「ヘンタイにはオシオキが必要だな」
「露出魔だなんて、変わった愚神もいるものだよね。ともあれ、これ以上被害を出さないためにも頑張らないと」
 表情を変えず神妙な口調で頷くナイン(aa1592hero001)に、楠葉 悠登(aa1592)も同調する。愚神も従魔も変態も、世にはびこらせる訳にはいかないのだ。
「へんたい、ですか。羽化を行う敵だと?」
「それもまた変態と呼ぶのだが……今回の場合、社会性を損ねてまで趣味に昂じる者のことを指すのであろうね」
『変態』から違う脅威を感じたディエドラ・マニュー(aa0105hero001)の台詞に、ティテオロス・ツァッハルラート(aa0105)が早めの訂正を入れる。
「ジャパンのファッションは、とても前衛的デスね♪」
「……違います。依頼内容を思い出してください、シェルリア」
 他方、変態の格好を日本の服装の一種だと思い始めているシェルリア(aa5139)には、クロノメーター(aa5139hero002)が待ったをかける。が、シェルリアの視線はティテオロスたちにも向けられ、誤解のすべてが解かれたかは怪しい。
「変態か。面白い!」
「主、そろそろ勢いで行動するのやめません?」
 勢いで参加した火乃元 篝(aa0437)は戦意満々だが、巻き込まれたディオ=カマル(aa0437hero001)はため息を隠せない。篝のエゴを止められるとは思わないが、もう少し仕事は選んで欲しいと思うディオ。英雄の心、主知らず。
「……この上は、可及的速やかに対象の排除を」
 同じく篝を止められなかった灰堂 焦一郎(aa0212)も参加。篝が変態に動じるとは考えていないが、変態に触れさせていいとも思っていないのだ。
「はい、主様。私を存分にお使いください」
 傍らには、初めて依頼に同行するMLB-MOONLIGHT(aa0212hero002)の姿が。本質が武器で羞恥心も皆無とはいえ、MOONLIGHTは見目が美しい女性。さすがにこれが初陣だと思うと罪悪感が募り、二重の心労が焦一郎にのしかかる。
「問題は敵をどう引きずり出すかだけど……」
「バラバラだねー」
 相談中に焦一郎が地図を広げて情報を書き込むと、横からヨハン・リントヴルム(aa1933)とファニー・リントヴルム(aa1933hero002)が顔を出す。出現地点には共通点があまりなく、犯行時刻もバラバラ。討伐はこちらから誘い出す必要があった。
「それについては、私に考えがある」
 全員の注目を集めたのはティテオロス。変態が盗んだ下着の色から好みの違いがあると考え、女性が同色の下着を身につけ囮となれば戦力の分散を狙えると提案した。
「何より“狩られる”側であるという意識を、敵に与えない事だ。相手は複数、逃げに回られては困るからね」
「はいはい! それなら恭也が一肌脱ぐよ!」
「待て」
 ティテオロスの意図と作戦に同意が得られると、すぐさま伊邪那美(aa0127hero001)が立候補するも御神 恭也(aa0127)に頭を鷲掴みにされて動きが止まる。
「それなら、私が囮役をやります」
「小動物には適任だな」
 次に志願したのは島 恵奈(aa5125)。シマエナガのワイルドブラッドである恵奈は小柄で、依頼経験もまだ少なく戦闘も不慣れ。囮としては逆に都合がいいと考えての意見で、アレクサンドロス大王(aa5125hero001)も異存はないようだ。
 そうして囮役と護衛役に分かれたエージェントたちは各々巡回コースを定め、夜を待ってから2人1組に分かれて行動開始。
「よく考えたら、下着を見せないとだめってことよね!? い、いくら口だけじゃなく平和のために身をとして戦うっていっても、体の張り方がひどすぎない!?」
『今さら何を躊躇う? 貴様から言い出したことだぞ、小動物?』
 まず、すでに涙目で夜道を1人歩くのは恵奈。極端に丈の短いスカートからは紫色の下着がのぞき、恵奈の表情には羞恥の赤が浮かぶ。幻想蝶のアレクサンドロスから呆れた言葉をもらうが、恵奈には返事をする余裕すらない。
「見せ下着とは言え、目のやり場に困るんだけど……」
 その後ろを、ナインと共鳴した悠登が一般人の振りをしつつ追跡。いつ敵が現れても対処できるよう一定の距離を保ち、通信機で他の護衛役との相互連絡も忘れない。がっつり下着が見えている恵奈への視線は控えめにして。
「ふははははは、何処からでもかかってくるがよい!」
『……うん、せめて恥じらいは覚えてもらおうかな』
 別の場所では、積極的に青色の下着を披露しようとする篝に、幻想蝶で待機するディオが制止とともに盛大なため息をこぼした。
「篝様、囮役とはいえどうか過剰な挑発はお控えに。……お召し物の丈も、気持ち長めにしましょうか」
 護衛役の焦一郎も黙っていられず、いっそ潔い篝の服装を直視せずに調整を促し、何とかちら見になる程度まで抑えられた。
「……これでは、自身が不審者のようにも感じられますね」
 それから距離をとって護衛に移った焦一郎だが、篝を尾行する自分も怪しいのでは? と客観視する。
「露出程度で変態とは片腹痛いわ。本当の変態とは何なのか、あたしが教えてあげる」
 また別の場所では、ファニーと共鳴したヨハン改めヨハンナが謎の宣言をする。メガネをかけて髪を1つに括ったスーツ姿で、シャツから透けるほぼ紐に近い下着の色は黒。ブラのチョイスは女性でいる時に下着をつけないが故だろう。
「恭也くん、エスコートヨロシクね。あたしって『か弱い女の子』だから」
「ああ、……助かった」
『惜しかったな~、もう少しで恭也の女装姿が再臨したのに』
 ヨハンナの護衛は恭也。彼女のおかげで女装囮役を回避できた恭也は心底安堵し、伊邪那美の台詞に眉間にしわを寄せる。そして共鳴状態で一定の距離を保ち、護衛と尾行に集中する。
『う~ん……傍から見たらボクらも十分怪しいよね? 通報されないかな?』
「変態を退治しようとしているのに、不審者に間違われるのは不本意なのだがな」
 しばらくして、焦一郎と同じ懸念に思い至った伊邪那美の言葉に、恭也が表情を歪めた時だった。
「あの、少しよろしいですか?」
「は?」
 恭也が振り返ると、難しい顔をした警官が立っていた。

「なるほど、そういえば警察への連絡を忘れていたね」
 この日変態は現れず、合流後に共鳴した大人状態のアンジェリカが得心したように手を打った。黒のチューブトップとデニムのローライズの下に白のシルクインナーを着用し、下着がちらちら見えるよう露出多めの装いをしている。視線の先には、疲れた表情の男性エージェントたち。
 実は男性の護衛役が全員不審者と勘違いされ、職質を受けていたのだ。焦一郎と伊邪那美の懸念が見事的中した形となる。露出魔の存在もあって警察に終始疑念を抱かれ、最終的に囮役の事情説明でようやく理解を得ていた。疲れもする。
「何、次からは彼らとの連携も考えて動けばいいだけだろう」
 囮役の中で一番露出が激しく、特にアクシデントをせずともチラ見せ状態なティテオロスが笑う。真っ赤なブラとTバックで全身真紅の出で立ちは、夜の街の職業にしか見えない。
『ジャパン来て初めての依頼デスが、まさかこんなエキセントリックな人達に会えるなんて! ジャパンすごいデース!』
「シェルリア、これは日本の特色ではありません」
 最後に、囮役を見渡しとても楽しそうなシェルリアと共鳴したクロノメーターは釘を刺すが、そろそろジャパンのイメージが修正しきれないレベルに達しようとしていた。
 あくまでも囮作戦ですので、あしからず。

●躍動する変態
 翌日、エージェントたちは事前に警察と打ち合わせてから囮捜査を続行。人数を増員した警察は巡回の目を増やして犯行抑止に、エージェントたちは人の目を減らして犯人確保に注力する。
「っ!」
 しばらくして、夜道を歩くアンジェリカの前方に情報通りの変態が姿を現した。
「目標出現。誘導を開始します」
 護衛役のクロノメーターはスマホで仲間へ連絡し、怯えて逃げる演技で変態を誘導するアンジェリカを追跡。しばらくしてアンジェリカが立ち止まると、変態は一気にコートを広げた。
『!? ……わお、エキセントリックデースねー!』
「それ以前の問題だと思います。しかし、あれが話に聞く露出魔ですか。……一体どういう気持ちであの様な行動に出るのか、理解に苦しみます」
 遠目からも確認できる、変態の筋骨隆々な肉体と白い下着。一瞬戸惑いを見せるも楽しそうなシェルリアの反応を放置し、夜闇に同化したクロノメーターは冷ややかな視線でLSRを構える。
「そんなお粗末な物よく見せようって気になるね。孤児院で一緒だったアラン兄ちゃんの方がよっぽど立派だったよ」
 一方、間近で相対したアンジェリカは股間の膨らみを堂々と指さし、ぷっ、くすくすと嘲笑を浮かべる。すると、白の変態は落ち込むように四つん這いに。彼のハートは繊細らしい。
『お前見た事あるのか?』
「小さい頃は皆一緒にお風呂に入ってたからね。お湯の節約で」
 頭の中から尋ねるマルコに孤児院生活を説明しつつ、アンジェリカはシルフィードを取り出し接近。その横をクロノメーターの『ストライク』が追い抜き、白の変態へ先制する。
 が、直前で気づいた白の変態は四肢で跳躍して銃弾を回避。続くアンジェリカの『一気呵成』も躱した変態は即座に反転、がに股走りで肉薄する。
「このっ!」
 アンジェリカはとっさに『メーレーブロウ』で反撃するが、白の変態は止まらない。攻撃を受けつつアンジェリカを抱きしめると、『紳士の慰め』による謎ビームが周囲へ放射された。
『ビーム! ビームデスよクロ!』
「……魔法に特化した者と判断」
 興奮気味なシェルリアをスルーし、クロノメーターは再度『ストライク』を白の変態へ放つ。その1射は足を貫き、アンジェリカの『拘束』を引き剥がす。
「やってくれたね!」
 身軽となったアンジェリカは『疾風怒濤』で追撃。動きが鈍った白の変態は、3本の鋭い剣閃を筋肉の収縮で防御し、ライヴスを消費して足の銃痕を埋めて距離を取った。

「うわあああああああ!?」
 同じ頃。別の場所では、恵奈が紫の下着と対面していた。三叉路を曲がった直後に上から降ってきたため、恵奈から出たのは純粋な悲鳴だ。
「正体を現したな。被害者の恨み、晴らさせてもらうぞ!」
 それを合図に飛び出した悠登は、サルンガで紫の変態を牽制。手傷を負わせつつ後退させる。
「オラアアアアアアアア!!!」
 矢の援護が途切れる前に、アレクサンドロスと共鳴した恵奈が紫の変態へ踏み込んだ。超大柄な男性に変身しクレイモアを振りかぶる姿はとても勇ましいが、服装は恵奈の私服そのまま。こう言っては何だが、外見だけなら変態と同類だった。
 恵奈の大剣を筋肉で防御すると、紫の変態はサルンガで追い打ちをかける悠登へ狙いを変更。腰を大きく前に突き出し、股間の下着から『紳士の嗜み』ビームを放った。
「ちょっ! ヘンタイさんの攻撃、ビジュアルきついんですけど!?」
 威力よりも発射元に度肝を抜かれた悠登は、回避が遅れて直撃を受ける。悠登の防御を突破する威力はないものの、精神的な威力は凄まじい。ふんわり香る柔軟剤の匂いでも消せない嫌悪感に、悠登の表情は大いに歪む。
「ちっ!」
 同時に、攻撃の手応えから紫の変態を脅威に感じた恵奈もまた、舌打ちをこぼして悠登の近くまで後退した。囮役としてなら有利に働いたか弱さも、いざ戦闘になると歯がゆさが恵奈の身を焦がす。
「う、わっ!?」
 直後、紫の変態は軽やかながに股ステップを踏んで急接近。厄介だと判断した悠登の肉体に手足を絡ませ、がっちりホールドした。
「ぐ、おおっ!?」
 そして放たれる、『紳士の慰め』による全方位謎ビーム。単発謎ビームよりも威力の高いそれは悠登へダメージを与えるだけでなく、すぐそばにいた恵奈をも巻き込んで吹き飛ばした。
「くそ、離れろ!」
 直撃を受けて立ち上がることもできない恵奈を見た悠登は、紫の変態を引き剥がすため『ブラッドオペレート』の刃を突き刺す。同じく至近距離での攻撃は変態へダメージを与え、振り払いに成功した。
「島さん! ……くそ、やってくれたな!」
 装備をブラックテールへ持ち替え、悠登はすぐさま恵奈を背にかばうも反応がない。『重体』といえる深手を負ったと判断した悠登は、通信機で仲間の援護を要請。恵奈の安全を優先しつつ、変態の足止めと時間稼ぎに徹し始めた。

「フハハハハハ、待っていたぞ変態!! 変態なのだな!?」
 さらに別の場所にて。一本道の前方から現れたコートの男を、篝が腰に手を当て真正面から見上げる。か弱さゼロの篝を見据え、これが答えだ! と言わんばかりに変態はコートをおっぴろげて青い下着をさらした。
「……こ奴は何をしているのだ? そもそも寒くないのか?」
『見ちゃダメ見ちゃダメ、情操教育に悪い!』
 しかし、腰を左右に振る青の変態の下着姿に、篝は疑問を覚えるだけで微塵も動じない。むしろ、幻想蝶にいるディオの方が焦っている。
 直後、青の変態はコートを羽のように広げたまま、篝へ飛びつこうとした。
「篝様への狼藉は私が許しません。御覚悟を」
『光刃・展開。戦闘態勢に移行します』
 そこへ瞬時に間を詰めた焦一郎が月光の刃を展開。MOONLIGHTの声を聞きつつ、『メーレーブロウ』で反撃を行う。
「くっ!?」
 蒼い刃は青の変態を切り裂くも勢いを止めるまでには至らず、そのまま焦一郎はがっしりと捕縛される。
「灰堂!」
 ディオと共鳴した篝がグロウスヴァイルを振りかぶり、青の変態へ刃を叩きつける――寸前。
『っ!? 主っ!!』
 ディオの鋭い警告と同時、『紳士の慰め』による放射ビームが篝へ直撃した。
「……吹き飛べ、変態!」
 が、篝もその程度で足を止めない。謎ビームと柔軟剤の香りを振り切ると、大量のライヴスを圧縮した渾身の『ストレートブロウ』を青の変態へぶちかます。胴体へめり込んだ刃からさらに火薬が炸裂し、上乗せされた衝撃が変態の体を一瞬で遠方へ追いやった。
「篝様!」
 青の変態の『拘束』から脱した焦一郎は、すぐさま篝の元へ近寄った。が、そこで篝は意識を失い、膝を折って地面へ倒れ込む。謎ビームで大きく負傷した体で、AGWへの過剰なライヴス供給を行ったために力を使い果たしたのだ。
『敵の挙動を確認。主様、来ます!』
 しかし、それで終わりではない。MOONLIGHTが青の変態の動きを伝えた刹那、焦一郎が構えた光刃と変態が振りかぶった豪腕が交差した。
「……これ以上、篝様への危害は許しません」
 青の変態の攻撃軌道が篝を狙っていたことを察し、感情が読み辛い焦一郎の声が明確に低くなる。『戦闘不能』となった篝の護衛を最優先にしつつ、焦一郎は目の前の敵を『消す』ための思考を巡らせた。

●哀れな変態
「悪い豚には仕置きが必要だね……来給え、躾をくれよう」
 予想外にシリアスな戦いが繰り広げられる一方、ローゼンクイーンで地面をひっぱたいたティテオロスの前には、コートを広げた赤の変態が立ちすくんでいた。
「な、なんなのですかあれは!?」
『変態だろう? 私たちの予想以上に、性癖が度を過ぎていただけだ』
 ティテオロスの背後では護衛役のヤナがいたが、赤の変態を見て盛大に引いている。共鳴して聞こえる理髪外科医の声が示すのは、鞭の音に反応して徐々に膨らむショーツの盛り上がり。
 彼女たちが相対した赤の変態は、どうやらM属性があるらしい。需要と供給が一致した、奇跡の出会いといえよう。リンカーになりたてのヤナにとっては迷惑な奇跡だ。
 瞬間、赤の変態は地を蹴り真っ直ぐ女王様の元へ走り寄る。
「堪え性のない豚だね」
 ティテオロスは赤の変態を見下し、鞭を振り回す。もはやそういうプレイにしか見えない中、変態は鞭をかいくぐってティテオロスの体をコートの中に包み隠した。
「離れなさい!」
 2人の攻防に手が出せなかったヤナだが、動きが止まったタイミングでキートゥヘヴンを投擲。ティテオロスから引き剥がそうとしたが、赤の変態は回避もせずに針を受け入れ、ビクンッ! と体を痙攣させる。
 ダメだ、コイツは本物だ。
 そして、赤の変態は『紳士の慰め』を発動。まるで内側から爆発するようにビームを振りまき、ティテオロスへ反撃を加えた。
「っ、……少々、お痛が過ぎるね」
 至近距離からの攻撃に表情をしかめると、ティテオロスは鞭にライヴスを込めて振り抜いた。
 ――――!!
 直後、赤の変態の腰が大きく後方へ突き出され、声にならない絶叫が聞こえそうな悶絶とともに吹き飛ぶ。
「どうだね? 良くなって来ただろう? 跪いて身を委ねるといい」
 膨らんだ下着へ『ストレートブロウ』をめり込ませたティテオロスは、地面を転がり悶え苦しむ赤の変態へゆっくり近づく。
「この、変態!」
 好機と見たヤナは注射器を赤の変態の尻に突き刺しのけぞらせ、上がった顔面をぶん殴る。そのまま仰向けに倒れた変態にまたがると、喉や心臓へ注射器の針を何度も突きまくる。
『ふふふ、いい手応えだ。血が出ないのだけが残念だがな』
 猟奇的な攻撃で肉に食い込む針の感触にご満悦の理髪外科医だったが、赤の変態から出血はない。顔を殴られた拍子に露わになった顔を見ると、マネキンのようにツルツルで、どうやら人の形を模した従魔だと判明する。
「……ふむ、いいかね?」
 怒りに任せて攻撃するヤナに断り、ティテオロスが赤の変態へ『一気呵成』で再びうつ伏せに倒す。さらにヒップで顔面をホールドし、首を鞭で締め上げた。
「他の組から支援要請が入った。急ぐとしよう」
 赤の変態を一気に昇天させると、ティテオロスは通信機から聞こえた内容をヤナに告げ、全力移動で仲間の元へ向かう。
「手を貸そう」
「ぐっ! 助かる!」
 間もなく、ティテオロスたちから近い位置で交戦していた悠登の姿を発見し、紫の変態と相対する。執拗に恵奈を狙ってきた変態に防戦一方だった悠登は、彼女たちと入れ替わりに恵奈を担ぐと戦場から遠ざけていく。
「悪いが、君に構う暇はないようだ」
 悠登とすれ違い、ティテオロスは『電光石火』で紫の変態の足を止め、すぐさま『一気呵成』で地面へ叩き伏せる。そこへ追撃で打ち据えられた鞭が、悠登との攻防で消耗していた変態のとどめとなった。

 時間を戻し、他のエージェントが変態と遭遇する少し前。
『……ふわぁ』
「ファニー、もう眠いの?」
『うん、でも、頑張る、ヨハンナママのかっこいいとこ、見るぅ……』
 共鳴したファニーのあくびを聞いたヨハンナは、眠気を我慢する健気な義娘の言葉に頬を緩ませた。と、タイミングを見計らったように変態が現れ、ヨハンナはすぐにスマホで仲間へ連絡。その間に接近した変態がコートを開放して黒の下着を見せつけた。
「……ハッ!」
 が、股間へまじまじと観察する視線を向けた後、ヨハンナは鼻で笑う。それが黒の変態の自尊心を傷つけたらしく、ヨハンナへさらに迫った。
 直後。
「今回の俺は機嫌が悪い。弱点と言える箇所を晒した己を悔やんで……潰れろ!」
 護衛の恭也が突出し、ドラゴンスレイヤーによる『電光石火』を叩きつけた。
 ――股間に。
「強引な男は嫌われるわよ。女の気持ちになってみたらぁ?」
 致命打を受けた黒の変態は『変態の矜持』を発動するが、ダメージが深くまだ腰が引けている。すると前へ出たヨハンナが、イヤイヤ、と首を振る黒の変態に構わず、リンドブルムの切っ先を突きつけ、深い嘲笑。
 ――――!!
 数秒後、声なき絶叫、再び。
『エクストラバラージ』でリンドブルムを展開。目をとろんとさせたヨハンナは、躊躇なく股間へすべての剣を――。
 後は、何も言うまい……。
『っ!?』
 直後、2人から近い場所で大きな音と爆風が発生。別の班が戦闘中と瞬時に察し、援護に向かうため全力移動で駆け出した。
「流石に、連中のあれを無闇に近付けさせる訳にはいかん。下手をしなくてもトラウマになりそうだ」
『……あの~、ボクも女の子なんだけど?』
 移動中にぼそっと呟く恭也に、共鳴で感覚を共有する伊邪那美がおずおずと尋ねる。
「人様を女装させようとする輩は対象外だ。俺の視覚を通してじっくりと観察していろ」
『いやだ~! 反省するから本当に勘弁して~!』
 が、不機嫌な恭也はにべもない。先ほどの変態を思いだし、伊邪那美に泣きが入るもスルーされた。
「あれは……、ちっ!」
 程なくして現場へ到着すると、恭也は幻想蝶からライフルを取り出し発砲。倒れた篝を背に庇う。
『斬りましょう!』
「情けは掛けません」
 援護射撃で余裕が生まれ、MOONLIGHTの声で焦一郎は『トップギア』を発動。急激なライヴスの高まりを警戒する青の変態だが、背後からの奇襲に意識を奪われる。
「ハァ、ン。ぶちのめすのって、気持ちいぃ……♪」
 攻撃の主はヨハンナ。ミラージュソードのフェイントを交えた剣を、青の変態へ苛烈に突き立てる。
『むにゅぅ。ママ、遊んじゃって平気?』
「大丈夫よぉ! 快感に目覚める前には殺すわぁ!」
 目を潤ませ、顔が紅潮し、涎を垂らすヨハンナにファニーが首を傾けるが、別種の変態の遊びは続く。
「あらぁ?」
 が、青の変態が隙を突いてヨハンナへ肉薄し、『紳士の慰め』で逆襲する。
「ぐ、っ! やった、わねぇ!」
 顔をしかめ、ヨハンナは『エクストラバラージ』の剣群で青の変態の股間を切り払った。
『敵の攻撃は下部の布地からです、踏み込んでください!』
「っ!!」
 直後、不慣れな接近戦をMOONLIGHTの指示で補い、焦一郎は青の変態を『疾風怒濤』で切り刻んだ。
 ――無論、股間を。
「――わかった。すぐに向かう」
 変態の消滅を確認した後、通信機に耳を当てていた恭也は再度大剣を取り出した。
「あと1体らしい。急ぐぞ」

「くっ!? しつこい、よ!」
 アンジェリカは顔に焦りを浮かべ、『疾風怒濤』を繰り出す。が、白の変態はそのすべてを回避し、『紳士の嗜み』ビームを返礼。
「意地でも狩り取ります。逃げられると思わないでください」
 ビームが空を焼き、白の変態が接地した瞬間、クロノメーターの『ファストショット』が直進。変態のわき腹をえぐるも、致命傷には遠い。
 残る白の変態だが、アンジェリカたちはなかなか動きを捕捉しきれずにいた。なのにアンジェリカへ強い執着を維持し、しつこいくらいにつきまとってくる。
「お前たちに変な物を見せられた女性の怒りを、思い知れ!」
 もう一度『一気呵成』を仕掛けるも、アンジェリカの刀は空を切った。
「遅れてごめん! 俺たちも加勢するぞ!」
 そこへ、紫の変態を倒した足で駆けつけた悠登が、サルンガの矢を白の変態へ射かけた。クロノメーターの近くで後衛に収まった後、ダメージが蓄積したアンジェリカへ『ケアレイ』を飛ばす。
 さらに悠登を追い越し、ティテオロスとヤナがアンジェリカの近くまで踏み込み、白の変態へ攻撃を加え動きを制限していく。
「いい加減、うんざりだ!」
 それでも粘る白の変態だったが、反対側の路地から恭也たちが現れ攻撃がさらに激化。『紳士の矜持』でほぼ真っ裸になっても、変態は白の下着を追うことをやめない。
「っ、しまっ!」
 もはや執念か、白の変態は多くのAGWの猛威をくぐり抜け、アンジェリカの体に手足でしがみついた。そして、下着が不穏な発光を始め、謎ビームが放出されようとした。
『ゴー、デスよクロ!』
「……はっ!」
 が、シェルリアの発破を後押しに、鋭い呼気を吐き出したクロノメーターが『ストライク』の引き金を引いた。夜闇を疾駆した銃弾は白の変態の頭部を貫き、弛緩した体がアンジェリカから離れ大きく傾いでいく。
「終わりです」
 その隙を突いたのは、焦一郎。『トップギア』で距離を詰め、股から脳天まで光刃を振り抜いた。
『敵性反応・消失。ありがとうございました、主様』
「……貴方は本当に精強ですね、月光」
 変態の股間を斬りまくった使い手に感謝を告げるMOONLIGHTに、焦一郎は苦笑を返す。
「午後9時21分、任務完了デース♪」
 そして、共鳴を解いたシェルリアが懐中時計を確認して、変態討伐は幕を下ろしたのだった。

●変態去りて
 戦闘後、エージェントたちは最初に重傷や戦闘不能で戦場から遠ざけていた恵奈と篝へ、救急車を手配する。負傷度合いから恵奈が優先で運ばれていき、篝もその後に続いた。残ったエージェントたちは警察とも連携し、事後処理を手伝うことに。
 が、戦闘の熱気が冷めるまで陶然としていたヨハンナは、しばらくして我に返ると共鳴を解いて振り返る。
「それじゃあ、僕は一足お先に帰るよ。ファニーも限界のようだし」
 そうして他のエージェントへ了承を得ると、ヨハンは目蓋の重いファニーを背負って先に帰って行った。
「ヒトはなぜ下着等にこだわるのでしょう? こんな布一枚で大事件とは、人間社会も大変ですね」
「服飾を自然に委ねるエルフ族には分かるまいね。ともあれ、君はまず下着を穿く所から始めたまえね」
 次に変態が残した傷だらけの下着を回収する際、ディエドラは最後まで変態が理解不能と首を傾げ、ティテオロスから苦笑をもらう。
『……ねえ、それを幻想蝶に戻したくないんだけど』
「諦めろ。抜身のまま出歩く訳にはいかんだろ」
 また、変態の股間を穿った大剣の収納を嫌がる伊邪那美へ恭也が説得する姿もあった。さもありなん。
「退治も終わったし、これで少しでも被害者が救われればいいんだけど」
 もろもろを終えた解散後、帰り道で悠登は被害女性たちについて考える。
「恐怖感情はなかなか去らないものだ。いずれ、時間が解決することを願うしかない」
「そうだね。ていうか、今回は真面目だね、ナイン?」
「? 私はいつも真剣だぞ」
「う、うん。……そう、だっけ?」
 神妙に頷くナインに悠登が感心すると、真顔で返され声が詰まる。
 悠登が思い出せたのは、マイペース&天然な言動ばかりのナインだけだった。
「マルコさんは、被害女性を慰めにいったりしないの?」
「今男が近づく訳にいかんだろう。時間が解決してくれるのを待つしかないな」
 アンジェリカとマルコも被害女性について思いを馳せるも、結論はナインと同じ。それでもマルコは少しでも早い回復を願い、また自分の仕える神に彼女たちが再び男性を愛する事が出来るようにと、祈りを捧げていた。

「……っ。ディオ、灰堂?」
 翌日。病床で目を覚ました篝は、自身を見下ろすディオと焦一郎の姿を確認し、気を失う前のことを思い出した。
「主、無茶しすぎですよ。ライヴスを消耗しすぎて倒れたんですから」
「今後はこのような依頼へのご参加は、どうか……」
 ディオはグロウスヴァイルの無茶な扱いに触れて苦言を呈し、焦一郎はそもそもイロモノ依頼を引き受けないよう説得の言葉をかける。
「言うな。私もわかっている」
 すると、エゴの太陽たる篝の口から殊勝な言葉が飛び出してきた。
 驚愕で目を丸くする2人へ、篝は不敵な笑みで拳を高く掲げる。
「『次』に変態どもが現れても、同じ失敗を繰り返す私ではない!」
「主には知っちゃいけない世界ですから、もうダメですってば!」
「ご自愛ください、篝様!」
 堂々と変態との再戦を宣言する篝に、ディオと焦一郎は同時にツッコむ。
 やはり篝は、どこまでもブレなかった。

「こんにちは。調子はいかがですか?」
 さらに後日、自然療法医師としてPTSD被害者を訪問するヤナの姿が。同意した人を対象に、回復魔法やヒルデガルド療法による緩和治療を無料で行ったのだ。熱心なヤナの援助も手伝い、彼女たちの心の傷はゆっくりでも確実に塞がっていくことだろう。
 そしてH.O.P.E.では、汚物に触れたドラゴンスレイヤーの交換か煮沸消毒の相談をする恭也の姿もあった。
 一応、グツグツと煮てもらったそうですよ。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 己が至高の美
    ティテオロス・ツァッハルラートaa0105
  • 単眼の狙撃手
    灰堂 焦一郎aa0212
  • エージェント
    ヤナ・メイヤーaa5172

重体一覧

  • エージェント・
    島 恵奈aa5125

参加者

  • 己が至高の美
    ティテオロス・ツァッハルラートaa0105
    人間|25才|女性|命中
  • 豊穣の巫女
    ディエドラ・マニューaa0105hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • 希望を胸に
    アンジェリカ・カノーヴァaa0121
    人間|11才|女性|命中
  • コンメディア・デラルテ
    マルコ・マカーリオaa0121hero001
    英雄|38才|男性|ドレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 単眼の狙撃手
    灰堂 焦一郎aa0212
    機械|27才|男性|命中
  • 急所ハンター
    月光aa0212hero002
    英雄|22才|女性|ドレ
  • 最脅の囮
    火乃元 篝aa0437
    人間|19才|女性|攻撃
  • エージェント
    ディオ=カマルaa0437hero001
    英雄|24才|男性|ドレ
  • 薩摩芋を堪能する者
    楠葉 悠登aa1592
    人間|16才|男性|防御
  • もふりすたー
    ナインaa1592hero001
    英雄|25才|男性|バト
  • 急所ハンター
    ヨハン・リントヴルムaa1933
    人間|24才|男性|命中
  • エージェント
    ファニー・リントヴルムaa1933hero002
    英雄|7才|女性|カオ
  • エージェント
    島 恵奈aa5125
    獣人|14才|女性|回避
  • エージェント
    アレクサンドロス大王aa5125hero001
    英雄|34才|男性|ドレ
  • エージェント
    シェルリアaa5139
    人間|19才|女性|命中
  • エージェント
    クロノメーターaa5139hero002
    英雄|18才|女性|ジャ
  • エージェント
    ヤナ・メイヤーaa5172
    獣人|24才|女性|生命
  • エージェント
    理髪外科医aa5172hero001
    英雄|18才|女性|バト
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