本部

【屍国】連動シナリオ

【屍国】死者行軍―幻想夜襲― 

山鸚 大福

形態
ショート
難易度
不明
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
6日
完成日
2017/04/18 07:15

掲示板

オープニング

 十の兵力に、二の兵力で挑むとする。
 その差は五倍、真っ向から当たって勝てる道理はない。
 奇策を用いて敵の兵力を三つに分断しようと……それでも勝利にはほど遠い。
 故に、多数の兵力を有する事は、それだけ優位であると言える。
「正道……それ即ち磐石なる備えをし、当然の勝利を収めること。その備えあればこそ、戦は勝ちを拾いうる」
 これに関して言うならば、四国制圧を狙う者達は圧倒的に兵力が足りず、十を備えられるだけの時間もない。
 強力な将が兵力を有していようと数の差は力の差を生んでしまい、時間をかけることは混乱の収束……即ち相手が磐石の体勢でこちらを迎え撃つ事を意味する。
 現状は兵力が少なく、時間の限られた厳しい戦況だ。
 奇襲に失敗した段階で、勝利に至るまでの道筋は険しいものになったと言ってもいい。
「されど……」
 それは途絶えた訳ではなく……神門に仕える彼女……夜愛に言わせれば、充分な勝ち筋の残る戦であると言えた。
「十を備えられぬとも、近付ける事は出来ます」
 十対二の戦であるなら、奇策を労しても勝敗の結果は知れている。
 けれど二の兵力を四や五まで増やせるならば、策によってこれを補い打ち勝つ事は出来るだろう。
 正道の磐石な備えを生かす事で奇道に繋ぎ、奇道によって正道を生かせる有利な戦況を作り出す……奇正を交えてこそ戦術や戦略は色を変え、戦に勝利の華を添える事が出来る。
 数多の軍師がそうであるように、夜愛もまた、勝てる戦を勝つ事の出来る存在であると言えた。
「神門様の為の、明けない夜を……」
 夜愛はその顔をあげ、配下であるゾンビ達に指示を送る。


 ――これより北上し、侵略せよ――


――――Link・Brave ―――――――


 死者行軍――幻想夜襲――


――――――――――――――――――


 ――同時刻・HOPE東京海上支部――


「神門、芽衣紗、朱天野、夜愛を確認、愛媛から香川への同時侵攻が予知により報告されました!」
「大規模の停電発生を確認、対処を!」
「こちら愛媛山間からの従魔による進軍を確認!」
「予知情報の映像化と時期の確認を急げ!」
 プリセンサーからの報告が飛び交い、HOPEは慌ただしい喧騒に包まれていた。
 いつか起こるだろう予見されていた要への侵攻が、ついに始まったと言うことだ。
 橋の爆破から停電……それに続けての同時侵攻……敵が要に対しての総力戦を仕掛けて来たのは明らかだろう。
 そのはずだが……。


「ふっふーん、また妙ですねぇ」
「何が?」
 くるっと髪をカールさせた金髪の男性が報告を聞きながら呟くと、黒髪の……外見としては少年にしか見えない職員が、怪訝な顔で聞き返した。
「はっはーん、いいですか? 香川の防備の状況を考えれば、全軍での突撃は些か早い、今回は要が狙いではないでしょうな、ゆーちん」
「弦(ゆずる)だ。早いと考える理由はなんだ?」
 少年職員……弦が首を傾げる。
 停電まで起こして隙を作ったなら、このタイミングで総力で攻めるのは必然ではないだろうか?
「んっふ、早い早い。今回は愛媛から香川へと向かっての進軍のようですが、香川の要には多数のエージェントが配備されています、ここまではいいですね?」
「いいよ、僕を馬鹿にしてないか? グラッツ」
「んっふ」
 じと、弦は奇抜な容姿の問題職員をねめつけるが、彼はその態度を崩さない。
「もちろんしてませんですとも。して、でぇあるからにして、相手からすればぁ、この配備は邪魔、なんとかしたい……」
「だからこその停電だろう?」
「のんのん、停電で起きる混乱の合間に、愛媛から香川の要まで辿り着くことができますか? 電気設備の破壊は有効ではありますが、それだけ時間があれば代わりの明かりは幾らでも用意出来る。要を崩す為だけに停電を起こすなら、要の攻撃と同時でなければ大きな意味はない」
「……」
「だとするのならば! この暗闇と破壊、侵攻にはぁ、このような可能性が考えられますねぇ、ずばり」
「民間人への煽動と混乱を狙った、とでも言ったところか? 要以外に奴らが狙っているのは民間人だものな」
「んっふ、正解!」
 びしりと指を立てたグラッツを放っておいて、弦はその小さな眉をふむ、としかめて、静かに思考を深める。
(だとするなら、全軍をあげて突撃する意味は……)
 その考えを汲むように、グラッツが言葉を続ける。
「妙なのはその為に人員を動かしすぎていること、リスクが多いですよねぇ?」
 で、あれば、とモニターを見ながら、続けて熱弁を振るう。
「なればこそこの行動の目的は見定める必要があぁる! 敵の狙いはただ要にあらず。要を狙う前の前段階としての攻勢である以上に、慎重な対応がぁ、我々には求められているっ!」


 ――四国・愛媛香川県境――


 夜の市街地を、一台の軍用車両が走っていた。
「……では、エージェントを各所に送り、状況を確認しながらの応戦と言う形ですね」
 その車を運転しているHOPE職員、黒松鏡子は、初めての戦場に向かいながら通信を切る。
 HOPE職員の能力者でもある彼女は感染する可能性が薄い為、この現地での活動を命令された職員の一人だ。
(どう来るのかしらね……)
 相手のこの夜襲には不審な点もあるが、だからと言って能力者を派遣しない理由にはならない。
 全軍で迫ってきているのなら、決して防備を怠る事はできない。
(……なんにせよ、私達の背中には四国がある)
 車両が、静かな夜の道を走っていく。
 この先にいるのは、ただの従魔達であるはずだが……何故か胸騒ぎがする。
 敵が侵攻を始めた山脈の方角……その暗い夜空を、月に照された鳥が一羽、舞っていた。 

解説

『依頼内容』
1.敵従魔部隊との交戦
2.敵の動きの偵察

『詳細』
確認された従魔部隊と交戦しますが、深追いや過剰な交戦は禁物です。敵の侵攻を止めることを主目的として、偵察を考えてください。

『地形』
道幅おおよそ6mの道路。
相手は山から道路に降りて進軍しており、確認されているだけで四十体存在します。


『サポート』
 HOPE職員の黒松鏡子が戦闘や車の移動、通信等を現地でサポートします。

【以下PL情報】

『OP誤情報』
1.神門、芽衣沙、朱天野、夜愛による同時侵攻が起きると予知された地点では、戦闘能力を持たない白骨死体四体とゾンビ達だけが確認されました。
幻術を使った囮の可能性が高いとの報告が任務地到着後にされます。
2.任務地到着後、現地の敵の数が三十より明らかに多いこと(実人数120)、これまで発見されていない奇妙な従魔と、夜愛が存在していることが確認出来ます。
3.夜愛は内情に関わる問いかけや揺さぶり等は基本、受け流します。偽の情報を掴まされる危険もあるので気をつけましょう


『敵情報』
夜愛
スキル
『暗夜弄月』
月なき夜に月を弄する。本来であればありえない光景を見せる幻術。
タイミング:ファースト
範囲:二人以上(詳細不明)
BS【狼狽】【翻弄40】ダメージ無し
抵抗関係:???
『三毒の呪陣』
発動条件:不明
特定範囲に魔法陣を展開、自動攻撃する『紫雷・六道呪縛』を発生させる。
対象の霊力を攻撃に利用していると推測されている。
『紫雷・六道呪縛』
足元から霊力を乱す紫電が発生する
タイミング:メイン
範囲:2(地点)
BS【封印】(魔攻対魔防の特殊抵抗)


奇妙な従魔×50
(大熊と似たサイズの歪なゾンビ。様々な形の者がいるが詳細不明、夜愛周囲に20匹、敵との交戦中、来た道路を埋める形で三十匹出現)
ゾンビ×70
雑兵。移動や攻撃の妨げになる。道一杯に展開

鳥型従魔×?
空を飛びどこかへ行き来しているようです。戦闘に参加してきません

リプレイ

 影が、動いた。
 進軍する夜愛は、足を止めて周囲の気配や物音に耳を澄ませる。
 飛ばした鳥や展開させた従魔の情報から、不審な影がないかを……さらに自作した端末も確認するが、それらに反応はない。
 百を越える軍勢を従えた夜愛は警戒を怠らずに……再び進軍を再開した。


 ほどなくして、一羽の鳥が道路の向こうから迫る車を捉える。
「……来たようですね」
 目的を達するには、一度彼らを退ける必要がある。
 人に仇なす存在となった事に悔いはない。
 斥候でもある鳥を向かわせながら、彼女は慎重に、その歩みを進めた。
 エージェント達が来る、その方向へ向かって。


●愚者と賢者の境目


「四体もの骨と従魔を動かす……今度のも夜愛が近くから操ってたのかな」
 それぞれが闘いの準備をする中で、 GーYA(aa2289)は英雄のまほらまに声をかけた。
 ここに車がついた時、他の地域に現れた神門達が、白骨死体に過ぎないことが判明した。
 数は四、思い起こされるのは、以前の善通寺の事件。
 そのジーヤの考えに、青い髪の英雄 ……まほらま(aa2289hero001) は、少し思案する。
「同じ方法で囮を置くかしらねぇ。だとしたら本命は何かって事になるけれどぉ?」
 同じことを繰り返せば囮としての効果は薄くなる、そして囮を使ってでも行いたかった目的……敵側の行動は気になるところだ。
「うーん……」
 そうして歩きながら考え込むジーヤに、まほらまがチョコレート差し出した。
「少しエネルギー補給しときなさい、あまり食べてないでしょう?」
「小食なのは体質だって言ってるだろ」
 チョコを仏頂面で受け取り、口に運びかけ……ジーヤは手を止めた。
(チョコか……)
 ――はじめから、立ってる場所が、違うのよ――
 耳に鮮明に蘇る……あの日の言葉。
(感染しないエージェントがやるべき事、俺がやれる事……)
 ジーヤは自問をしながら、決意を固める……。
 それからすぐ……道路の遥か先に従魔達が現れた。
 四国の夜、平和な日々は未だ遠く……。
 四国を巡る能力者達の戦いが、今日もまた、始まったのだ。


 夜の静寂を震わせる砲撃音。
 37mmAGC『メルカバ』から放たれたHEGA弾が、道の先から迫るゾンビを撃ち抜いた。
 構築の魔女……そう呼ばれる彼女の正確な砲撃が、迫ってくる集団の数を一匹ずつ確実に減らしていく。
 その魔女の周りには、九人の能力者がそれぞれに行動をして、レーダーによる策敵や低空を飛んだ鳥の撃墜を行っており……状況としては磐石とも言えた。
 ……しかし。
「三十を越えたようですね、それに……」
 闇視装置のついたゴーグルで、道の先から迫る軍勢を確認した構築の魔女は、そこに見えた不可解な存在達を確認した。
 ゾンビの集団の後方、炎を纏った骸骨とぶよぶよと蠢く肉塊、それに赤い皮膚をした耳や眼、鼻のない異形と、背から人間の手を生やしたゾンビの犬。
「……倒す事で病原体を撒き散らすなんてことはないですよね?」
「試してみればよいのじゃろ?」
 声。
 同じように闇視ゴーグルを着けたカグヤ・アトラクア(aa0535)が、魔女の近くで楽しげに大剣を構えた。
「気を付けてくださいね」
「うむ、行ってくる」
 懸念を口にした魔女に気負うことなく、カグヤが敵の軍勢に向かい駆け出していく。
 それに続くように、もう一人が走り出した。
「俺も行きます!」
「ええ、支援はお任せを」
 その少年……ジーヤの背中を見送りながら、魔女はメルカバからフリーガーファウストへ……その巨大な武装へと切り替える。
「……今回はのんびりもできそうにねぇかね」
『今までがのんびりしすぎじゃないかな??』
「のんびりいろいろやってただろ?」
 その間に水落 葵(aa1538)とウェルラス(aa1538hero001)が共鳴を果たし、やれやれと言った様子で前衛に加勢していく。
 今回、敵の数は予知のものよりも多く……報告にない従魔もいる。
 ただの予知の齟齬と考えてもいいのだが、きっと恐らくは……。
(彼女だとしたら、驚きしか出ませんね。予知をここまで手玉に取るなんて……)
 魔女の脳裏には、この時既に、夜愛と名乗った敵の影が浮かんでいた。


(迷いがないなぁ……)
 真っ先に敵陣に駆けていくカグヤと、少年……ジーヤが駆けて行くのを見送った荒木 拓海(aa1049)は、その背中を見てなんとなくそう思う。
 友人から脇役扱いされた事のある拓海にとって、その後ろ姿は少しばかり眩しく見えたのかもしれない。
 もっとも、拓海の行っていること……新型の従魔の反応や、鳥型従魔の向かう先の確認も、現状ではかなり重要な事だが。
 道幅も狭く、至近戦を挑める人数も限られている現状、状況を確認する為に控える事は大切なのだ。
 視界の中、味方が援護として放った砲撃……霊力によって巻き起こされた大爆発と、炎と氷の二つの魔法がゾンビ達を駆逐し、そこに踏み振るわれたカグヤの槍が、敵の一陣を瓦解させる。
 その光に照らされ……微かに陽炎のような揺らめきが見えたのを、拓海は見逃さない。
 拓海に、他の能力者、ニウェウス・アーラ(aa1428) から通信が入った。
『新型従魔の後方に何かいるみたい……反応はあるけど、姿が見えないの』
『夜愛が関わっていると考えて間違いないでしょうね、皆さん、警戒を』
 それに構築の魔女が答え、連絡が飛び交っていく。
 幻術を扱う夜愛と言う相手が関わっている可能性が高いらしい。
 だからだろうか、新型従魔達は攻撃を受けても歩みは止めず、隊列を保ったまま向かって来ていた。
 拓海は火炎放射器を敵の上方に向けて、先ほどの揺らめきがあった箇所や全体の影に視線をやる。
 影に不審な箇所はなく、揺らめきも見えない。
「何か見えたか? 荒木君」
「いえ……でも、あのあたりに反応があるそうです」
 方向としては香川の方向へと向かう鳥型従魔達……その観察をしていた男性……石動 鋼(aa4864)の言葉に、拓海は陽炎の揺らめいた空白地帯に視線を向けた。
「そうか……」
 落ち着いた声音……鋼の物腰は名前の通り、しっかりとして見える。
 年齢の近い二人……拓海は柔らかな広さを、鋼は堅実さと冷静さを兼ね揃えているような、そんな印象を受けるが……。
 彼らに近しい人物であれば、その本質は違うものであると、分かっているのだろう。
 拓海と鋼、二人は一度だけ全体を俯瞰するように眺め……。
「そろそろ行きましょう」
「ああ……」
 闘いに赴くため、前衛として最前線へと駆け出した。


 氷鏡 六花(aa4969)は、闘いながら策敵にもその意識を向けていた。
 今は夜、夜目の効かない能力者であれば視界も悪く、道路沿いの建物や木々によって全てを見通せないとなれば、策敵用のレーダーの確認は重要な意味を持っている。
「どう? なにか見つけた?」
 その六花の後ろから、ペンギン……ではなくその着ぐるみを着たワイルドブラッド、アデリー(aa5068)が、興味深々に聞いてきた。
「前にたくさんいるみたい。反応も見えてる数より多いね」
 レーダーの反応を言いながら、既に共鳴を終えた六花ははっきりと答える。
 それにアデリーは素直に返事をした。
「ふーん、でもこのままなら勝てそうだね!」
 六花とアデリー、二人にはこの依頼に来るまで面識はなかったが、車にいる時からアデリーは六花に興味を示してくれていた。
 理由は、ペンギンっぽいから。
 普通であれば耳を疑う理由だが……ペンギンの獣人でありながら獣人化が出来ない六花にとって……嬉しい言葉であったかもしれない。
 そのアデリーの言うように、今の戦況は、こちらが優勢……敵の数は予定より多いが、着実にその数を減らせている。
 けれど……。
 依頼に同行しているニウェウスから通信が入った。
『姿を現したよ。気を付けて』
「はい」
「くえ?」
 六花が答え、アデリーが不思議そうに首を傾げた……。
 有利であった戦場に、夜愛の姿が現れたのだ。


 六花と同じように戦闘をしながら、レーダーの確認していたニウェウスは、その前方にもさらなる集団……夜愛を中心に据えた新型従魔の軍団が姿を現した事に気付き、現状を理解する。
 夜愛の姿が現れ……主力部隊とも言える敵が多く出現した事を考えれば、これは既に、相手の策の内であると言える。
『こりゃ、ハめられたかなー?』
 その動揺を全く感じさせない、あっけらかんとした声がニウェウスに聞こえた。
 英雄、ストゥルトゥス(aa1428hero001)だ。
「どうしよう、ストゥル……」
 困惑するようなニウェウスの言葉。
 自ら愚者を名乗る英雄は、普段とは違い迅速に意思を伝える。
『鏡子へ連絡。撤退の為に、車をスタンバらせて。後、迅速な後退を提案!』
「ん、分かった……!」
 ストゥルの確かな言葉が、ニウェウスの思考を助ける。
 ニウェウスは知識に偏りこそあるが……ある地方で起きた事件に関わり『カフカスの知』と呼ばれた事もあり、決して思考力が鈍いわけではない。
 ストゥルの助けがあるのなら、こうした場で指揮を取るには充分な人物であると言えるだろう。
 全体の情報を聞き、頼れる愚者の意見を聞きながら、ニウェウスは闘う仲間達への指示に集中した。


 知恵ある愚者、時に人が賢者とも呼んでしまう、境目の存在。
 ストゥルトゥスと言う存在は、あるいはその日に集った強い知的好奇心を持つ者達のその性質を、如実に表していたのかもしれない。
 陽炎のように現れた夜愛に、一人の賢人……あるいは愚者とも言える好奇心の権化が、その口を開いた。
「む、また会ったのぅ。今夜は月が綺麗じゃな」
 カグヤ……彼女は従魔達の中心にいる夜愛に笑みを向ける。
 前方にはまだ新型の従魔を含めて十を越えるゾンビがいる為、声をかけることしかできないが……。
 左右を囲って来た赤色の従魔……目と耳のない、手が刃のような形になったその従魔の攻撃を易々と大剣で受け流すカグヤに、英雄……クー・ナンナ(aa0535hero001)が呆れるように意思を伝えた。
『なんで唐突に口説いてるのさ?』
「好感度は大事じゃぞ、うむ」
 と、夜愛はその口許に苦笑を浮かべ、カグヤに返事を返した。
「とても綺麗な月夜ですね。『死んでもいいわ』とはお答えできませんが……」
 夜愛がそう語ると、カグヤは愉しげに笑う。
「お主は興味深いのぅ、今日はどのような術を見せるつもりじゃ?」
 幻術や魔法陣、数珠から発生する特殊な結界。
 霊力に任せた力業ではない、夜愛の技法。
 その原理や技術を解き明かしたいと思うのは、カグヤの純粋なまでの欲望と言えた。
 敵味方と言う区分さえも、そんなカグヤにとっては微々たる問題なのかもしれない。
 近くに駆けつけた拓海や鋼、ジーヤ、葵と共闘し、後退しながらの戦闘を繰り広げながらも……その眼に浮かぶのは敵意ではなく、夜愛に対する興味と愉悦。
 そんなカグヤの姿に……夜愛は笑みを深めた。
「あなたは面白い方ですね、カグヤさんでしたか……今でなくとも構いません、こちら側に来る気はありませんか。あなたの興味の限り、お話し致しますよ?」
「ほう、ならば夜愛、お主こそ妾の元に来ぬかのぅ? そこで存分語らおうぞ」
 互いに冗談とも本気ともつかない会話をしながら、再び夜愛が数珠に霊力を集め……飛来した砲撃と、鋼の霊力による攻撃を、不可視の結界で防ぐ。
 爆風に髪を靡かせ、数珠を持った手を僅かに切られながら、わざとらしく嘆息する。
「やれやれ、これでは落ち着いて話もできませんね」
 それには、カグヤではなく、他の者が応じた。
「はっ、いいオンナなら注目されるってもんだよ……それでアンタは「いいオンナ」かい?」
「さて……どうでしょうね、黄泉醜女(ヨモツシコメ)と呼ばれておりますので自信はありませんが」
 前衛を防ぐ壁となる従魔達の向こうから、葵にそう受け答えをする。
 仮面のような笑みを浮かべての、悠々とした返事。
 前衛で敵の集団を阻む拓海の援護として鎌を振るい、霊力の刃を飛ばしながら、葵は僅かでも情報を読み取るべく言葉を交わしていく。
「こないだの白骨といい、アンタらずいぶんと趣味がいいようだな」
 会話の最中、遠方から放たれた魔法が、夜愛の前方の従魔を凍てつかせた。
 赤い従魔達が俊敏な動作でそれを避ける中、氷に閉ざされた肉塊が内側からそれを破り、炎を纏った骸骨が氷を溶かして這い出てくる。
「お褒めにいただけて何よりです。人間を材料に作ったのですが、お気に召していただけましたか?」
 余裕を感じさせる態度、挑発を混ぜ混んで来るあたり、問答には馴れた様子だ。
 見え透いた挑発だが、同行しているメンバーの中には従魔達に復讐心を抱く者も多い。
「……アンタら妖怪って言われてるみたいだけど、アンタら的にはどうなんだい?」
「とくには何も……」
 その表情は変わらない、この様子だとあまり多くの情報は得られないだろう。
 ただ、人間が材料だと語った部分に嘘は無いように思える。
 相手にとってはどうでもいい情報なのかもしれないが……。
「夜愛!」
 思案している間に、もう一人……四国に強い想いを持つ少年が夜愛を呼んだ。
 ジーヤ……彼は砲撃で傷付いていた赤い従魔の一匹を斬りつけながら、視線を向ける。
「……如何されましたか?」
 後退しながらの戦闘のお陰で、夜愛の前方の戦力はかなり減っている。
 新型の従魔達の生命力……とくに肉塊のような従魔の生命力には驚かされるが、砲撃と魔法の荒れ狂う中では、長くは保ちそうにない。
 さらに最前線で攻撃を受ける拓海のお陰で、こちらの被害も少ないようだ。
 そんな戦線……後退をしながら、有利に戦況を運ぶ中で……ジーヤはその感情を夜愛にぶつける。
「お前らもそこの従魔と同じでウイルスに感染したゾンビなのか? なぜ意識を保ってられるんだ」
「さて、何故でしょうね」
 含みを持った笑みを浮かべる夜愛に、ジーヤは言葉を畳み掛けた。
「生前に強い思いがあったからか? ならやりたかった事がこれなのかよ!」
「ご想像にお任せしましょう。元より理解など求めていませんので」
 涼しげな顔で受け答えをしながら、夜愛は飛来する砲撃に数珠を向ける。
 結界を破り、防ぎきれなかった爆風が夜愛を襲うが……大きく傷付いている様子は見えない。
 感情を乗せても受け流されるその実感が怒りを誘うが……それを噛み殺して、ジーヤは言葉を重ねる。
 今はあくまで、情報を引き出す必要がある。
「……弘法大師は凄い人だったみたいだな、神門から何か聞いてる?」
 瞬間……。
 夜愛の眼差しに冷酷な色が宿った。
 射抜くような殺気と、虫を見るような瞳……僅かに触れた夜愛の感情。
 それはほんの一瞬の事であり、夜愛の行動に特別な変化があったわけではないが……微笑んでいたものとは違う、明確な殺意をジーヤに向けていた。
「私には答える義理もありませんので……」
 そう答えた瞬間には微笑みを浮かべ、数珠に念じカグヤの足元から紫雷を発生させる。
「神門にとってはあんたもそこの従魔と変わらないんじゃないのか」
「ええ、そうかもしれませんね」
 続いたジーヤの言葉を聞いた時には……夜愛の声に僅か、寂しげな色が混ざったような気がした。
 表情は変わっていないが……。
「しかしそれは、仕えぬ理由とはなりません」
 そして……。


●闇夜の逃避行


 ピュイ……。
 ニウェウスの元に一羽の鷹がやって来たのは、その僅かに前の事だった。
 近くにいた六花が迎撃をしようかと考えるが……それが従魔ではなく、鷹の眼によって産み出された鷹である事に気付いて、ニウェウスは目を丸くする。
 レーダーの確認は怠らず、鷹の足についたメモに、素早く目を通した。
 ――敵、レーダー圏外に展開、移動中、数不明につき注意されたし――
 その情報を見た時、敵が悠長に構えていた理由をすぐに理解する。
 レーダーがあることで安心していたが、このレーダーの範囲は半径100m程度、さらに言えば、稼働中は霊力の燐分が見えるため……こちらがレーダーを使っていることは把握しやすい。
 欠陥とは言わないが、敵がそれを知っているのなら、それを避けて包囲に動くことはあり得る話だ。
 そして夜愛自身を囮とするなら……。
『囮による誘引という奇策、次に大群展開。その後は?』
「……包囲殲滅」
『正道ッスネ。んじゃ、奇策が正道へ移行しきる前に、退路を確保しようか!』
 元々、後退の指示を出した時から警戒はしていた。
 レーダーを回り込んでいるなら迂回に時間はかかるだろうが……こちらが退くのにも時間はかかる。
 もう少し長く、後退をしながら情報を集めて行きたかったが、包囲が完成するまでの時間を考えればここが退き時だろう。
「全員撤収、包囲されかけてるから急いで」
 ニウェウスが全体に指示を飛ばす、今ならまだ間に合うはずだ。
 ピュイ……。
(いやぁ、忍者ってすごいッスネ)
 どこからか飛んできた一羽の鷹……それが霊力の粒子に還るのを確認しながら、この依頼のメンバーの最後の一人の名前を、ストゥルは思い出していた。


 藤林 栞(aa4548)は、忍である。
 彼女の家系……藤林家は、日本古来の忍……間者としての活動と技術を継承した上忍の家系であると言えた。
 SNSや人々の発信する情報、さらに味方の知らない情報源を利用した調査により、移動ルートや裏道……おおよそ四国の主要な道や、地元の人間などしか知らない脇道等も把握をし、移動ルートや使えない道に関しても、充分な情報を蓄えてこの闘いに望み……結果として、能力者達がこちらに着くより前……さらに言えば夜愛が来る前の現地調査を可能として、そのルートとなり得る道を予測し、じっと隠れ潜む事に成功した。
 一度気付かれかけ、命が危ぶまれる場面があり肝を冷やしたが……戦果は充分。
 どうやら夜愛は従魔などによる調査の他に、機械を使った策敵……あるいは何らかの探査や諜報を行っているらしく、能力者達が辿り着くまで、しきりに機器にも目を向けていた。
 考えられるのはこちらに間者がいるか、あるいはネットワークや通信等を利用し諜報しているか……。
 能力者達が来る前にそれをしまっていた事から、機械類での探索は秘密裏に行っていたのだろう。
(予知への対策と、ゾンビと機械での情報収集。この三つが、HOPEが先手を取られる理由でしょうか……)
 考えてみれば、いかに知略や勘に優れようと、正確な情報は必要になる。
 優れた君主や軍師が情報を重宝して来た事は、忍術を受け継いだ栞にはよく理解出来る事だろう。
「……」
 上空から見通せない夜道に潜み、従魔達の動きの異質さに気付いた栞は、敵の狙いを考え……。
 ……やがてその場を静かに離れてから、鷹の眼を飛ばし敵の活動内容を味方に伝えた。
 栞はまさに、忍のお手本とも言える手腕で……目立つことなく夜愛の戦術を暴いたのだ。


 ニウェウスが撤退の指示を通信機で告げると同時……前衛への攻撃が苛烈になる。
 それに合わせるように……拓海は自分の視界が一変するのを感じていた。
 見えたのは、あるスナックの風景。
 聞いていた幻術だろう、その空気感は本物さながらで……それが幻術であると知っていても、一瞬判断が遅れる。
 何より、敵の攻撃が見えないし、味方の状況も判断がつかない。
「これは厄介だな」
 意識を引き戻すような空砲の音が聞こえるが、それで幻術が解ける様子もない。
 時間にすれば僅かの間だが……その間に、身体に刃が触れる感触がした。
(っ……)
 咄嗟に霊力を集め、皮膚を裂かれるのを防ぐ。
 同時、視界が戻ると……すぐ眼前に赤顔の従魔の顔があった。
 眼と耳のないその従魔を盾で押し退け、さらに迫ってきていた炎塊を防ぎながら、状況の確認を行う。
 すると……すぐ近くで、ジーヤが苦悶の表情を浮かべていた。
 衣服のあちこちに焦げ跡が残り、激しい攻撃を浴びたことが窺えた。
 何かを試したようだが、回避が上手くいかなかったのだろう。
「さがって、すぐに行くから」
「……はい」
 その言葉にジーヤは悔しそうに唇を噛み締めたが、すぐに後方へと退避する。
 通信によれば後方で包囲突破を行うようだが……新型の従魔達と夜愛の攻撃は苛烈であり、拓海はすぐに離れられそうにない。
「数の暴力だな。相手が蟻でも群がられたら、やられるぞ」
『普段、私達もしてる事よね?』
 拓海の英雄であるメリッサ インガルズ(aa1049hero001)の声が聞こえる。
『お互いに必死なんでしょ。愚痴は後でね』
 全員退けばすぐに追い付かれ、包囲突破を狙う前に、味方が蹂躙される危険があった。
 そうなれば、撤退は容易ではなくなる。
 数十秒程度は、前方の部隊の侵攻を抑える必要があった。
 だが、包囲の突破を迅速に狙うなら、こちらにも拓海と言う戦力は欠かせない……。
「私が防ごう……」
 隣から、声がした。
 静かな口調……表情を変えずに従魔達に立ちはだかったのは、鋼だ。
 霊力による防御を纏った身体が、従魔達の攻撃を弾く。
「石動さん……」
 拓海は一瞬迷うが……彼がこちらに来た理由を察し、すぐに仲間達の元に向かう。
 包囲突破が遅れれば危険だ。
 事前に把握出来たとは言え、今は重要なタイミング。
「……さて」
 拓海の足音が、仲間達の元に向かうのを聞きながら。
 鋼は夜愛に向き直る。
 すると、その夜愛の周囲を、飛来した光の雨が穿った。
「妾も混ざろうかのぅ、しばし話さんか? 夜愛」
 カグヤが鋼の後方から、そう声をかけて、夜愛がそれに苦笑する。
「いいですよ。……今しばらく、お付き合いしましょう」


 レーダーに、敵が続々と映り始めた。
 栞からの連絡で予め包囲を知らされてなければ、退路を確保する為の充分な余裕は持てなかっただろう。
「私に続いて攻撃を集中、突破するよ」
 ニウェウスは、視界の先に現れた犬と赤色の従魔……新型の従魔達に杖を向け、出かかりに魔法を放つ。
 犬達はこれを浴びながらも立ち塞がり、赤色の従魔は俊敏な動作でそれを避けて接近して。
「ッ」
 鋭利な刃となったその腕が、ニウェウスに振るわれ……。


 斬撃が、従魔の肉を裂いた。
『鋼、余り熱くならないように』
「言われなくてもわかっている」
 英雄のコランダムに返事をしながら、鋼は肉薄してきた肉の塊を切り裂いた。
 きりなどはない、夜愛の方からやってくる従魔達が後方に行かないよう、鋼はその刃を振るう。
 ほんの数十秒……しかし油断の許されないその時間は、当人からすればずっと長い。
 だが……。
『僕たちの力はこの程度じゃないよ!
「あぁ、これくらいでは俺たちは折れない」
 その意思は曲がらない。
 コランダムと鋼が決意を固めた時、その刃の光が増した。
 誓いの剣……英雄との繋がりを力とするその武器が応えてくれたのだろう。
 夜愛と攻撃を交わし合うカグヤに敵を向かわせない為に……彼は不動の壁となり刃を振るい、従魔達を阻み続けた。


 構築の魔女は思考する。
(高機動型のゾンビ……いえ、もうゾンビと呼んでいいかはわかりませんね)
(ロロ――)
 辺是 落児(aa0281)と語らいながら、新たな敵の従魔への思考を深めた。
 新種のゾンビ……特に人の形をした者達は、既にゾンビと呼べる存在ではないかもしれない。
 肉塊であれば高い生命力を誇り、炎の骸骨であれば、魔法を扱うように炎弾を放ってくる。
 さらに今の赤色のゾンビは俊敏で、腕が刃のように変質していた。
 試してみたところ、それらは夜愛を守るように動くようで……連携や統率も取られていたように思える。
 幻術で前衛の動きが止まった瞬間に、夜愛の攻撃に合わせて骸達が一斉に攻撃をしていたのだ。
 夜愛や指揮官となる存在が近くにいる限り、知能がないからと侮れないだろう。
 むしろ痛みや光、音にも反応しない分、厄介かもしれない。
(……今後は、対策が必要ですね。しかしまずは……)
 ニウェウスに迫る、従魔。
 高速で迫るその従魔さえ……魔女と呼ばれる彼女にとって、捉えられない相手ではない。
 その深い思考の海から導き出された結論に従い、霊力を武器に流し砲撃を放つ。
 狙いは……ニウェウスに迫るものだけではなく、さらに二匹。
 絶妙なタイミングで放たれた砲撃が、ニウェウスに接近したばかりの一人を焔に包み……続こうとする従魔達に、その洗礼を浴びせた。
 その爆炎の中に……ペンギンの着ぐるみを纏った少女アデリーと、拓海が飛び込む。
 拓海が盾を振るい、従魔達を凪ぎ払う中……アデリーはジャッカス(aa5068hero001)と共鳴し、その手に握った氷雪剣を、炎の中を駆け抜けて来た犬に振るった。
「氷の剣よ!」
 アデリーは、ペンギンの獣人として理不尽な力に脅かされ、様々な脅威に抗う為に力を身に付けた少女でもあり……この局面でも、その勇気を見せつける。
「南極、なめんなああぁぁ!!」
 感情の爆発とも言える烈迫の気合い。
 今この不条理に抵抗するべく、一気呵成に攻めかかり……彼女は従魔と対峙する。
 だが、そこで……爆風で倒れていたはずの、赤い従魔達が動いた。
「お……?」
 俊敏な動き、振るわれた刃は避ける事を許さず、深々とアデリーの身体を切り裂いて……。
「アデリーさん!」
 拓海の声が聞こえた。
「くぇっ……っ!」
 激痛の中、威嚇するように従魔を睨むアデリーだが……その意識はゆっくりと暗闇に沈み。
(……?)
 懐かしい極寒の地の風と……それにのって流れてくる、微かな同族の匂い……。
 身体を優しく包むその空気を不思議に感じながら、その意識を手放した。


(アデリー……っ)
 六花は……自分をペンギンらしいと思ってくれたその少女が崩れ落ちるのを、その瞳に捉えてしまった。
 不安や恐怖、過去の記憶……冷たい感情が思考と身体を満たすが……その動きを止めることはなかった。
 英雄であるアルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001)との誓約と、彼女と培った日々が……あるいはこの時の六花を突き動かしたのかもしれない。
 夜の闇に咲くのは……美しい氷の花。
 透き通る氷の杖……眩い光を放つそれは、氷雪の杖と呼ばれる、六花専用の武器だ。
 舞い散る美しい氷雪。
 道を阻む者達に流れ込むのは……凍てつく冷気を纏った、霊力の風。
 雪風。
 それは道を塞ごうとしていた従魔達の大半や、アデリーに襲いかかっていた従魔達を一気に凍結させ、粉雪のように細かな破片へと変えていく。
 技の性質上、足止めなどには使えないが……氷のスペシャリストとも言える六花が扱えば、充分な攻撃力を持っていた。
 いくら従魔が新型とは言え……傷付いた状態で耐えられるものではない。
 冷気に閉ざされ、従魔の消えた道路。
 すかさず、仲間達にニウェウスが指示を出す。
「走って」
 まだ精々が十匹程度。
 レーダーを見た限り、次が迫ってきている。
 完全に包囲をされる前に駆け抜ける必要があった。
 迷う時間はない、アデリーを拓海が抱え……仲間達が続々と、突破したその場所を越えていく。
 途中、林から飛んできた攻撃が数人を捉えるが、それで足を止める者はいなかった。


「撤退じゃな、退くぞ、石動」
「……ああ」
 カグヤが鋼に声をかけて、二人も撤退を開始する。
 と、去り際、カグヤは夜愛に振り返った。
「さらばじゃ、また会おうぞ!」
「あなたの生命力には驚きましたよ。ではまた……今宵の勝利は、あなた方に譲りましょう」
 包囲は間に合わないと考えたのだろう。
 すんなりと敗北を認めた夜愛の姿が、夜の闇に消えるを見ながら……能力者達は、閉じていく包囲網の外へと脱出した。
 後方から響く、従魔達の怨嗟の声を聞きながら……。


●エピローグ


「ご無事で何よりです」
 一同が車に乗り込むと、そこでは栞とその英雄、藤林みほ(aa4548hero001)が待機していた。
 車での退路を伝える為に、鏡子に会っていたのだ。
 包囲の内側で合流することも出来たが……栞の得た情報は大切なものであったし、戦闘は専門ではない。
 万一に備え、先に鏡子の元へと向かった栞を咎めるものは、この中にはいなかった。
 貴重な情報はまだある。
「帰りついでだ、みんな見てくれ」
 葵が戦闘中、密かに撮影したカメラの映像。
 その映像を元に互いの記憶の齟齬を確認している際に、幾つか分かったことがあった。
 まず、あの場にいた従魔達や夜愛が幻影ではないこと。
 映像まで撮ったから、この信憑性は高いと思える。
 これもまやかし等と言われたらお手上げだが、闘っていた実感として、これは事実だと思いたい。
 もう一つは……これは記憶の齟齬を確認しあった際に分かった共通項だが、夜愛の幻術を見た者達は皆、『知り合いや友人達が明るく話し合っている風景』が見えていたらしい。
 この事から、恐らくは幻術を食らった相手の記憶を引き出したり、その記憶に基づいた幻術を見せるものであるとも推測出来る。
 範囲はおおよそ20m以下。
 後衛に回っていた者達が巻き込まれなかったのが、その理由だ。
(ってことは、あの依代に使われてる幻術や、姿を隠したのとは別ってことだな……さて)
 夜愛達の生前については、調べられる範囲で鏡子達が調べてくれるらしい。
 この状況ではあまり結果は期待出来ないが……こればかりは考え付ける事も少ないだろう。


 情報。
 闘いにおいて重要なそれは、決して軽視出来るものではない。 
 だからこそ……今回の能力者達の活躍は、四国において大事な意味を持つことになるだろう。
 思考し、闘い、そして手に入れたその戦果は……決して無駄にはならないはずだ。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
  • サバイバルの達人
    藤林 栞aa4548
  • 揺るがぬ誓いの剣
    石動 鋼aa4864

重体一覧

参加者

  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
    機械|24才|女性|生命
  • おうちかえる
    クー・ナンナaa0535hero001
    英雄|12才|男性|バト
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • ストゥえもん
    ストゥルトゥスaa1428hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • 実験と禁忌と 
    水落 葵aa1538
    人間|27才|男性|命中
  • シャドウラン
    ウェルラスaa1538hero001
    英雄|12才|男性|ブレ
  • ハートを君に
    GーYAaa2289
    機械|18才|男性|攻撃
  • ハートを貴方に
    まほらまaa2289hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • サバイバルの達人
    藤林 栞aa4548
    人間|16才|女性|回避
  • エージェント
    藤林みほaa4548hero001
    英雄|19才|女性|シャド
  • 揺るがぬ誓いの剣
    石動 鋼aa4864
    機械|27才|男性|防御
  • 君が無事である為に
    コランダムaa4864hero001
    英雄|14才|男性|ブレ
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969
    獣人|11才|女性|攻撃
  • シベリアの女神
    アルヴィナ・ヴェラスネーシュカaa4969hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 戦場のペンギン
    アデリーaa5068
    獣人|16才|女性|生命
  • エージェント
    ジャッカスaa5068hero001
    英雄|14才|女性|カオ
前に戻る
ページトップへ戻る