本部

息抜き、お料理教室! スイートポテト編

時鳥

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2016/10/12 21:06

掲示板

オープニング

●お料理レッスンのお誘い
 パティシエのお料理レッスン。
 秋の味覚といえば、栗、カボチャ、キノコ、梨、ブドウ、柿、サツマイモ、銀杏などなど美味しさに満ち溢れています。
 秋に相応しいお菓子を覚えましょう!

 秋の味覚の一つサツマイモを使い、美味しいお洒落なスイートポテトで、秋を満喫しましょう!
 たとえ料理が上手くなくても大丈夫、本場のパティシエが手取り足取り教えしします。

●ショコラールの簡単★スイートポテト
 前回二回行われたお料理教室。第二回の冷夏、ゼリー&アイスクリームも職員に配れ大好評だった。
 その為、パティシエ、ショコラール・クロワッサンを呼び、料理教室第三段が開かれることとなったのだ。
 依頼としてはH.O.P.E職員から美味しい秋のスイーツを作って差し入れてほしい、というものになる。
「ムッシュ、マダム、今日はワタシのお料理教室にようこそん! 今日はスイートポテト! 秋の基礎の味を一緒に作っていきまショウ!」
 ショコラールが集まった人たちへ挨拶がてらに投げキッスを送る。
「ワタシがお手本で作るのは基本的なスイートポテトになりマス! ですが、ミナさんそれぞれ好きな形で焼いてみたり、料理が得意であればアレンジしてみてくだサーイネ!」
 広く清潔感が溢れ、幾つも並ぶ長テーブルにコンロとオーブンが付いた部屋。前方には大きなボードがあり、そこにはショコラールの簡単★スイートポテトと可愛らしい丸文字が書かれている。その他の料理器具や設備もばっちりだ。
 チョコラールはいつも通り、始めに手を二度石鹸で洗うことやアルコール消毒をしっかりすることなどの説明を行う。
「まず、下準備として既に蒸してあるサツマイモから……」
 と、順々にスイートポテトの作り方を実践し説明していくショコラール。
「皮の器に混ぜた生地をキレイに入れて、つや出し用の卵黄を塗りマース!」
 サツマイモの皮に生地を盛り付けると、鮮やかな手つきではけを振るうショコラール。黄色い卵黄が弧を描き生地の上を滑り、表面が輝かしい色に包まれた。
「後は焼き色がつくまでオーブンで焼きマースヨ! そして完成品はこちらデス!」
 と、こんがり焼けて美味しそうな甘い香り漂うスイートポテトをオーブンから取り出す。
 そしてウィンク一つ。
「それではミナさん、さっそくお菓子作りを始めまショウ!」
 さあ、いよいよ実践が始まる! 美味しいスイートポテトを完成させよ!

解説

●目的
 スイートポテトを作って食べます。

●スイートポテトを作る手順
1.手の消毒。(二度の石鹸洗いとアルコール消毒)
2.蒸し焼きにされているサツマイモを冷めないうちに、皮を破らないように縦半分に切る。
3.皮からの厚みを残してスプーンで中身をくりぬく。
4.くりぬいた中身を熱いうちに裏ごし器でこす。
5.ボウルに入れ、グラニュー糖、卵黄、生クリーム、バター、バニラエッセンスの順に一つずつ加えながら、そのつどなめらかになるまでよく混ぜる。
6.皮に混ぜ合わせた生地をいれる
7.天板に並べ、艶出し用の卵黄を塗り、オーブンで焼く


●他、アレンジ用の素材
 上級者向けにスイートポテトをアレンジできるよう様々なものが用意されている。
 生クリーム絞り出し器、クッキー、パイ生地、タルト生地、黒ゴマ、チョコペン、などなど
 (プレイングに記載していただければOPに記載がないものでも使用していただいて構いません)

リプレイ


 縦横四列の長テーブルが並ぶ調理室。ボードの前、真ん中横二列とその後ろ二列は講師ショコラールが実践を行う為と必要な器具、材料などが置かれているので参加者の配置はない。
 コルクボードから見て左側、一列目が皆月 若葉(aa0778)とピピ・ストレッロ(aa0778hero002)。その後ろが十影夕(aa0890)とシキ(aa0890hero001)。
 右側は世良 霧人(aa3803)とエリック(aa3803hero002)。その後ろに呉 琳(aa3404)と濤(aa3404hero001)。
 そして三列目、コルクボードから見て一番左、夕の後ろに浅水 優乃(aa3983)とベルリオーズ・V・R(aa3983hero001)。その右隣に順に無音 冬(aa3984)とイヴィア(aa3984hero001)、大宮 朝霞(aa0476)とニクノイーサ(aa0476hero001)、笹山平介(aa0342)と柳京香(aa0342hero001)という配置になっている。
 友人や知人が多い為、なるべく話しやすいように近くにしたり、また知人が少ない組も輪に入りやすいように、など、出来うる限り配慮された配置だ。
「今日は思いっきり楽しもうか♪」
「えぇ、そうね、お土産分もつくれるかしら……」
 平介が隣の京香に笑いかける。鴉の皆や友達の為にも作れたら良いなと思う反面、京香が作る事が第一だと平介は考えていた。京香の参加理由は彼氏の為に作る練習にもなるかな、というものだ。
「スイートポテトってボクたちでも作れるの!? すごいすご~い♪」
「よし、ラドも驚くくらい美味しく作っちゃおうか!」
「うん! がんばるぞー♪」
 とはしゃいでいるのは若葉とピピだ。若葉は料理こそしたことはあるもののお菓子作りは初心者。ピピは料理経験自体無い。それでも嬉しそうなピピと一緒に楽しく作れるといいな、と若葉は思う。
「HOPEの依頼って、いろいろ作らせてくれるね」
「スイートポテトか。わたしにまかせたまえよ」
 ショコラールの説明に夕とシキもそれぞれが口を開く。
(スイートポテトってコンビニのしか食べたことないかも。家で一人で作るのは絶対めんどくさいし、いい機会だな)
 と、夕がぼんやりと思い出している一方、
(わたしなら、おいしいスイートポテトにできるだろう)
 シキは根拠のない自信に満ち満ちていた。
「うまく出来るかな……」
 冬が内心ドキドキワクワクしながら呟く。しかし、それは表面に出ておらず、見た感じ冷めたような態度だ。
「スイートポテトか。上手く出来るかな?」
「レシピ通りに作れば失敗は無いんじゃないか?」
 霧人の言葉に手元に配られているレシピを指さしながらエリックが答える。
「おおおおスイートポテト!! イモか!! 何だかおいしそうだ!!」
 その霧人達の後ろ隣のテーブルで元気いっぱいに琳がショコラールが作るお手本のスイートポテトに歓声をあげた。記憶喪失の為、何をするのも新鮮なのだ。イモ料理も今日が初めてだった。
「作る前から嬉しそうで何よりだ……」
 琳の様子に濤はうんうん、と頷きを零す。
「皆で一杯作ろうな!!」
「今日の皆さんは特にやる気があって大変よろしいデスネ! 必要な手順は分からなければもう一度説明シマスから、安心してくだサーイ。まずは手洗いと、エプロンや三角巾がしっかりつけられてるか確認しまショウネ!」
 実演が終わり、全員の顔を見渡してショコラールは嬉しそうに作業の開始を告げる。
「秋の定番だよね。ベル、エプロン後ろ結んであげるね」
「ねえ優乃。焼き芋って、美味しい?」
 ベルリオーズのエプロンの紐を結わこうとする優乃にベルリオーズは後ろを振り返りながら問いかける。
「や、焼き芋? 美味しいよ。食べたいの?」
「? 作るん、でしょ?」
「今日作るのはスイートポテトだよ」
 何故唐突に焼き芋、という言葉が出てきたのか判別出来ず問い返した優乃にベルリオーズは不思議そうに返す。成程、と今日作るものをきちんと伝えるとベルリオーズは首を垂れた。すごくがっかりしているベルリオーズに優乃は焼き芋は今度、と約束する。
 そんな風に優乃とベルリオーズがやり取りしてる後ろ隣、様子を伺いにショコラールがテーブル一つ一つを見て回っていた。
「きみがショコラールかね。このこに、よくおしえてやってくれたまえよ」
「やめろ」
 通りかかるショコラールにシキが保護者ぶって声を掛けた。即、夕がシキの口を塞ぐ。
「では、まず手を洗いマショウ!」
「シキ、手洗うんだって」
「しっかりあらってくれたまえ」
「皇帝かよ……自分でやるんだよ……」
 そんな二人を微笑まし気に見つめ、優しくショコラールは先を促した。夕は両手を出したシキに手を蛇口に届くよう抱っこして手洗いをさせる。その後自分も手を洗った。
「食材を扱うから、しっかり手を洗わないとね」
「うー……とーどーかーなーいぃっ!」
 水道の前で背伸びをしてみたり、ぴょんぴょん跳ねてみたりしているのはピピだ。シキと同じく小さい為、水道に手が届かない。
「ちょっと待って……ほら、これなら届くだろ?」
 若葉もピピを抱きかかえ手を洗わせる。
「とどいた! ワカバありがとー」
 手を洗いながら明るく笑うピピ。その横で夕はピピとシキを見比べていた。シキのが少し年下だろうか、しかし、向こうの方が無邪気で子供っぽい。
 ピピが作業台も届かないだろう、と若葉は踏み台を貸してほしい、とショコラールに申し出る。
「君のところも作業台、使う?」
 シキと夕を見比べて若葉は夕に問いかけた。自分と同じような年齢の夕と同じように幼い英雄に親近感を覚えたのだろうか。
「あ、シキと夕がいるよ。一緒にやろうよ」
 そこにベルリオーズがぐいぐいと優乃を引っ張ってきた。夕と優乃は同級生だ。
「今日はいっぱい楽しんじゃいましょうね♪」
「一緒に頑張りましょう♪」
 少し遠めだが夕を見つけた平介と京香も声を掛けてくる。夕は頷いて軽く手を振り返した。平介達の隣にいた朝霞も夕に気が付きぶんぶんと手を振ってくる。
「友達いっぱいいるんだね! あ、俺は若葉!」
 若葉が感心したように夕を見て、自己紹介をした。夕もそれを受ける。打ち解けるのは時間の問題だろう。
「英雄以外はみんな初対面だけど……交流……できたらいいな……」
 そんな知り合い同士のやり取りを見つめて冬は小さく零す。受身じゃ今のまんまだぞ、と思いながらもイヴィアは相棒を見つめた。
「ったく、しょうがねーな……」
 と言いつつ、人付き合いの手本ってのを見せてやるか、とイヴィアは思う。だが、その前に準備だ。
「エプロン・三角巾……くらいで大丈夫だよね……」
「手ぇ洗ったか?」
「うん……大丈夫」
 エプロンと三角巾をつけながら確認するように問いかける冬。イヴィアも工程を確認しながら問い返すと冬は頷く。
 その二人の隣のテーブル、朝霞とニクノイーサへショコラールが近づく。基本に従いしっかり良く、手を洗っていた。
「ムッシュ・ショコラール!今日はよろしくおねがいします!」
「ハイ! よろしくお願いシマース! 手の洗い方とてもブラヴォーですネ!」
 元気よく挨拶する朝霞にショコラールも明るく答えた。


「皮に穴をあけないように気をつけてね」
「うん、大丈夫! 任せといてよ」
 若葉とピピが並んでスプーンを持ち焼き芋の中身をくり抜いていく。
「あっ……やぶけちゃった」
 途中でピピが皮を破ってしまった。しゅーんと項垂れるピピ。
「これくらい大丈夫だよ、何とかなるって」
 と、励ます若葉。その真面目にやっている隣で、シキとベルリオーズは蒸し焼きイモを食べたくて二人でうろうろしていた。
「十影さん、調子はどうですか? シキさんは、食べる専門かな?」
 そんなシキを見てか朝霞が夕に声を掛ける。
「問題ないだろう。俺も食べる専門だ」
「ニックもちょっとは手伝ってよ! ほら、さつまいもを皮からくりぬいて!」
 どや顔をしているニクノイーサに朝霞はスプーンを押し付けた。
「手伝わなくても、ジャマしないだけいいんじゃないかな……」
「もちろん、てつだうとも。どれ、あじをみてさしあげよう」
 二人のコミカルなやり取りに小さく口端を上げて笑いを零す夕。その隙にシキが夕のくり抜いた焼き芋を口に放り込む。
「しおこしょうが、たりないのではないかね?」
 シキは塩コショウをシャカシャカするのが好きなので単純にそれをしたいだけ。それを知っている夕は今日は出番がない。ということを伝える。
「笹山さんって、普段からお料理されるんですか?」
「えぇ♪ こういうお菓子は作ると小さい子が喜びますから♪」
 朝霞は今度は平介に声を掛ける。丁寧にくり抜きながら楽し気に返す平介。
「大宮さんはどうですか?」
「私? 私はその……」
「朝霞は、お湯を入れた後のカップラーメンのフタを取るタイミングがうまいよな」
「……それ、フォローのつもり?」
 平介からの問いに言い淀む朝霞の代わりにニクノイーサがすぐに答えた。ジト目を向ける朝霞。
「二人は仲良しなのね……なんだかうらやましいわ♪」
 そんな朝霞とニクノイーサを見て京香が微笑まし気に目を細めた。
 彼らのやり取りが耳に届いて思わず笑ってしまう夕。
「楽しい人ばかりだね」
 横から優乃が夕に声を掛けた。
「お芋……これ焼き芋? 温かくて美味しい」
 と、今度はベルリオーズが優乃がくり抜いた焼き芋に手を伸ばしてくる。はふはふ、と食べながらシキにも渡すベルリオーズ。二人揃ってつまみ食いツインズと言ったところか。
「手順通りに作ろうかな、ってもうつまみ食いしてるし。ほらほら、食べてないで手伝って」
「ん、これでくりぬけばいいんだね。……ちょっとなら、バレないかな」
 ベルリオーズにスプーンを渡す優乃。そんな優乃がよそ見してる間にベルリオーズはくり抜いた傍からつまみ食いをする。
 わいわいと賑やかにそこかしこに溢れる笑顔に冬は見入っていた。
(僕もああいう風に笑えばよかったのかな……)
 と、ふと思う。ふるふると頭を振ってレシピに視線を落とした。とにかく出来ることをしよう。
「スイートポテト作りは初めてだから……レシピを見ながら周りの人を見て真似してみよう……」
 その隣のテーブルで焼き芋をくり抜き終わった冬がレシピと周りの様子を交互に見ながら次の工程を確認していた。その様子に平介が気が付く。
「平介私は大丈夫だから……いいのよ? 行っても」
 京香が平介の視線に気が付き促すと、平介は頷いてやっていた作業を京香に任せ、ある程度の指示を残し冬とイヴィアの元へ足を向けた。
「何かお困りの事があればお手伝いしますよ♪ こういった事は初めてですか?」
「あぁ、悪いが教えてやってくれるか……」
 平介が声を掛けると冬より先にイヴィアが笑顔で平介の申し出を受けた。丁寧に優しく平介は冬に作り方を教える。表情には出なかったが冬は嬉しかった。
 教えてもらうままに裏ごしをしてみるも力がない冬はすぐにイヴィアに任せようとする。
「いつまでも力仕事を避けてたら、そのひ弱な身体のままだぞ?」
「いいよ……力が全てじゃないから……」
「何だよ……やけに真面目だな……」
「料理は愛情……さじ加減が重要……」
 冬はじっと裏ごし作業を見つめる。
(今のはボケか……いや、こいつの場合は真面目にそう思ってるな……)
 反応に困りながらも裏ごしを進めるイヴィア。
「楽しく作る事も大事です♪」
 と、平介がフォローを入れてくれる。こくっと、イヴィアは頷いて冬が早く楽しくできる工程に進めるよう裏ごしを頑張った。
「ところでさ、アニキって料理出来るの?」
「まあ、出来なくは無いって感じかな。でもお菓子を作るのは初めてだよ」
 作業を進める霧人の手元を見ながらエリックが問いかける。レシピを確認しつつ霧人は着々と料理を進めていた。お菓子作りは初めてでも料理のノウハウがあれば左程難しい工程ではない。
「よろしくな! きりひと! エリック!」
 後ろ隣の琳が元気な笑顔で霧人に声を掛ける。友人が隣というのは心強いのだろう。霧人は琳達に初めて会うエリックを紹介し、話しながら作業を進める。
「きりひとは好きな人の為に作るのかな?」
「良い事だ……」
 琳がわくわくと問いを口にする横で濤が一人納得したように頷く。霧人も一つ頷いて見せた。妻に、ということだろう。
「みてよ琳君! 私って裏ごしの天才かも!」
 そこに朝霞が大きな声で琳に声を掛ける。さつまいもをガッシガッシとすごい音を立て裏ごししながら。
「おおお! あさか! 天才だ!!」
 そのダイナミックな裏ごしに琳が感銘を受けたように大きな声で答える。
「琳君の方は順調そう? 裏ごしの魔術師といわれた私が手伝おうか?」
「おい、朝霞。邪魔しちゃ悪いだろう」
 裏ごししながら琳のテーブルにやってくる朝霞を追いかけてきたニクノイーサが止めようとする。が、琳はその朝霞の行動を、(裏ごししたいのかな……!)と、受け取り元気に頷いた。
「うん! やっていいぞ!」
「ニックさん……構わない、琳が楽しめているのであればそれで良い……」
 濤がわざわざ止めてくれたニクノイーサにフォローを入れる。朝霞は豪快に琳達の裏こしもやりきってみせた。
 指導側に回っている平介以外は裏ごしも終わった。次はグラニュー糖や卵黄、生クリームなどを入れて混ぜる作業だ。
「呉さんどうですか♪」
 ワイワイとしている琳達のところに冬の元から一時戻ってきた平介が声を掛ける。
「あさかが裏ごししてくれたおかげで完璧だぜ!」
 と、答える琳の横で朝霞も誇らしげに胸を張る。
「混ぜる時はゴムヘラでやるといいですよ♪」
「ゴムヘラで混ぜるのか……なるほど……やってみるぜ!」
 平介が助言を交え手は出しすぎず、相手の作る楽しさを優先して教えていく。丁寧に作業を進める琳。
 一方、若葉とピピは、若葉が素材を入れピピが混ぜる、という役割分担で楽しく進めていた。
「きちんと混ぜるのが美味しくなる秘訣かな?」
「よーし、おいしくな~れ!」
 ぐるぐると懸命に混ぜるピピ。隣のそんな様子を見ていたがシキは飽きてきたのかアレンジ用の素材を眺め始める。
「ベルはトッピング選んでおいてくれる?」
「分かった!」
 優乃がベルリオーズに次の指示を出した。ベルリオーズは頷きアレンジ用の素材を眺めていたシキの隣にやってくる。
「どんなのがいいかな。シキは、どうするの?」
 ベルリオーズの問いかけにシキは首を傾げた。その間にベルリオーズはトッピング用のクッキーやチョコを手に取る。
「んー……クッキーだ。チョコもいっぱいあるね」
 もぐもぐもぐもぐとトッピング用素材を容赦なくつまみ食いするベルリオーズ。その気配に優乃は心配そうにベルリオーズ達を見遣る。
「ベル……つまみ食いっていうかもう堂々と食べてるね……」
「うん、美味しいよ」
 優乃が生地をスイートポテトとパイ用に分けながら声を掛けると悪びれる風もなくベルリオーズは答える。
 そこでハタ、と虫愛づるチビ、シキはひらめき用事を手に取った。
(そんなにお腹空いてたのかなぁ)
 と、ベルリオーズを時折見ながら、生地を皮に詰めたりパイに包んだりしていく優乃。
 それぞれの工程が次へと進んでいく。
「へーすけ、手伝おうか?」
「先程手伝っていただきましたからね。京香さん、その、お邪魔じゃなければ手伝を……!」
 他の人達に遅れながら裏ごしをしている平介に琳がわくわくと声を掛ける。その隣に濤が並び同じように手伝いを申し出た。
「では、お言葉に甘えて裏ごしを手伝ってもらいましょうか♪」
 笑顔で答え、裏ごしを琳に任せる平介。その間にぐるり、と辺りを見回す。
 ピピが穴の開いた皮を見てしゅーんとしてるのが見て取れた。
「……これ使えないよね、生地余っちゃう……」
「どうしました? 何かお困りの事があればお手伝いしますよ♪」
 平介は若葉達のテーブルに向かい優しく声を掛ける。若葉が皮からくり抜く時に皮を破ってしまったことを説明した。
「でしたら、別のものも作ってみてはどうでしょうか?」
 パイ生地に包んだりとアレンジの工程を二人に教える平介。アドバイスを受けパイ生地の他にもビスケットに生地を乗せたりしてみる若葉。
「こんな感じにしても美味しそうじゃない?」
「……おぉ! 美味しいかな?」
 ピピは嬉しそうに目を輝かした。
「ニック。お料理で一番大切な事って、なにかわかる?」
「さぁ、なんだろうな」
「味見よ、味見!というわけで、味見してみるわよ」
「朝霞、あまり食べ過ぎるなよ? 焼く分がなくなるぞ」
 生地が出来た直後の朝霞とニクノイーサ。つまみ食――ではなく味見としてよく混ざった生地を掬い朝霞は口に運ぶ。
「ところでニックさんの所……ずいぶん減ってませんか?」
 その直後ぐらいだろうか、濤が隣で京香の手伝いをしていたところ顔を上げて朝霞の様子を伺い首を傾げた。どれだけ食べても味見は味見である。
「生クリームか……ケーキ以外で使う事ってあるんだね……考えた人は天才だ……」
「そりゃ色々あるだろ……たとえばあれだ……プリンに乗せたり、パスタに使ったり……」
 と、生地を混ぜながら冬とイヴィアが生クリーム談義をしている。そこへ若葉のところへ行っていた平介が再度、様子を見に来てくれた。
「ありがとうございます……」
「時間取らせたな♪ ありがとーよ」
 どうですか? と問いかける平介に二人が礼を口にする。既に皮の器に生地を移しているところだった。
「あきだからね。スズムシだよ。これはメス」
「なんでそんな気持ち悪いことすんの……」
「オスは、はねがむずかしいね……くふうしなくては……」
「かわいいのにして。ハートとか」
 丸めたスイートポテト生地につまようじを刺しまくるシキに虫が嫌いな夕は拒否反応を示す。言われたとおりシキはハート型を作る。下のほうに黒ごまで目を置いてつまようじを刺し、スズムシ(オス)の正面図を完成させた。


 さて、それぞれ形を作ったりして全部がオーブンの中に納まったころ。
「まだかな、まだかな??」
 オーブンをのぞき込みながらわくわくと待機するピピ。
「ニック。おいしく焼きあがるおまじないをするわよ!」
「……なんだと!?」
「いい? 私に合わせて同じ動きをするの!」
 朝霞がオーブンの前に立ち何やら始めたようだ。無言のニクノイーサ。
「♪おいしく焼けて~。いもいも☆ぽてと」
 ビシィ!
「……いもいも☆ぽてと」
 ビシィッ!
 二人が順にオーブンに向けて指を突き出す。
「オー! とてもフレッシュなおまじないデースネ! こういう思いを込めるのは料理には大切なことデス」
 それを見ていたショコラールが拍手をしながら褒めたたえる。そして……
「これはぜひ、皆さんでやって見まショ!」
 超呪文いもいも☆ぽてとは参加者全員に飛び火した。これもまた醍醐味である。
 そんな工程を終えてついにスイートポテトが焼きあがった。
「ここで食べるのはこのままでも良いけど、持って帰るのには何かアレンジしたいなあ。」
「……アニキ、コレって何だ?」
 焼きあがったスイートポテトを眺めながら霧人が考え込んでいる。チョコペンをエリックが不思議そうに眺めている。
「これはチョコペン。細い口からチョコを出して色々描いたり出来るものだよ。」
「コレで描けるのか! ……よーし、アレンジはオレに任せてくれ!」
 霧人の説明を受け、エリックはお土産用ポテトにチョコペンで家族の名前を可愛い字体で描く。
「これでどうだ!」
 と、すごいドヤ顔のエリック。少し驚いた様子を見せたがいいんじゃないかな。と霧人は続けた。
「他にも何か作れるモンないかなー?」
 エリックは辺りを見回わす。すると隣のテーブルの上に琳達が黒ゴマで参加してない友達の名前などを描いたスイートポテトが目に入る。
「ひらめいたぜ!」
 そう一言呟くと用意されていたクッキーにチョコペンで琳と濤の似顔絵を描き始めたのだった。
 他にも焼きあがったスイートポテトにトッピングをしているのはベルリオーズ。自由にしていいと言われたのでチョコとクリームで犬や猫などを描いていく。
「出来たら前みたいに他の人のも食べてみたいな」
 ベルリオーズはふと前のお料理教室を思い出しショコラールに向けて希望を口にする。ショコラールはウィンク一つ。
「もちろんデース! 皆さんで試食を始めまショウ!」
 真ん中のテーブルを神業で綺麗に整理し、全員が囲んで試食できるようにした。元々失敗しても作り直せるように、また持ち帰り分と職員達への差し入れも含めレシピは多めの量となっている。職員分だけは別の場所に置き、それぞれのスイートポテトがテーブルに並ぶ。
 その中で一番綺麗なのは平介のスイートポテトだ。戻す時のナイフ捌きは素晴らしかった。それぞれにアドバイスや指導をして回っていたのと、皮、タルト生地、パイ生地など様々な種類を使ったことも相重なり、出来上がったのは最後ではあったが。味付けは琳や冬にしてもらったので平介も食べてみないと分からない。
「……」
 何故か琳が俯いてる。
「どうしたのだ琳」
 濤が声を掛けるも琳は黙ったままだ。
「……自分の分がない事に今頃気がついたか……」
 しかしそこは琳の英雄。濤は理由に気が付きやれやれと肩を竦める。
「呉さん達が手伝ってくださったおかげです♪ これは呉さんの分ですよ♪」
「これもやるよ!」
 平介がスイートポテトを一つ、エリックが似顔絵を描いたクッキーを琳に差し出した。すぐにぱぁっと明るさを取り戻す琳。
「これはアサカの分だからな♪ 食べていいぞ! こっちはへーすけ、そしてこれがきりひとの分な!」
 と、琳はそれぞれに黒ゴマで名前の書かれたスイートポテトを分けていく。そっちにも、と名前ではなく特徴を黒ゴマで入れたスイートポテトを若葉や冬など初対面の相手に渡した。
 優乃が全員にお茶を入れて配る。
「ふふ……おいしい」
「うむ。よくできているな」
 朝霞はまず自分で作ったスイートポテトの味を確認してから琳にもらったものに手を付ける。
「朝霞はおいしそうに食べるわね♪」 
「俺もアサカの食べたい♪」
 京香が朝霞の食べっぷりを微笑まし気に眺め、琳の希望で朝霞のスイートポテトが一つ手渡された。
「みんなが作ったのも美味しそうだね」
「ボクたちのも上手くいったかな?」
 若葉とピピが交換飛び交うスイートポテトを見ながら楽しそうに笑う。
「えへへー、美味しいなぁ♪」
「今度、家でも作ろっか」
「うん!」
 あっちを食べてこっちを食べて、美味しさにピピもとても嬉しそうだ。作るのも、楽しかった。だから、また作ろう、と二人で顔を合わせる若葉とピピ。
「おおおお! 流石だ! 美味しいぞ!! へーすけもきりひとも食べてみるか?」
 朝霞のスイートポテトを食べてはしゃぎながら平介や霧人にも琳は勧める。
 一方、一つ異質なスズムシスイートポテトを前にシキ。
「きせつをたいせつにする、わがしのこころだよ」
「和菓子じゃねーよ」
 えっへん、と自慢げに言い切るシキにすかさず夕が突っ込みを入れた。
「……うん、美味しく出来てよかった」
「あ、帰りは焼き芋買って帰ろうね」
 と、優乃が食べながら小さく笑みを零すも、ベルリオーズが焼き芋を蒸し返す。いっぱい食べたのに焼き芋への執念が凄い晩御飯入るのか、と心配になる優乃。
「美味しい……イヴィアも食べなよ……」
「おぉ……良い感じの甘さだな……うまく出来たじゃねぇか」
「先程はありがとうございました♪」
 自分たちが作ったものを賞味している冬とイヴィアの元に平介が自分のスイートポテトを手渡す。ありがとうございます。と返す冬。その表情はクールだが、声は僅かに温かみがあるように感じられる。
「……うん、参加してよかった」
 賑やかなスイートポテトの試食会を眺めながら冬は呟いた。ほんの少し、笑みが浮かんだ。そんな風にイヴィアには見えた。
「初心者ですのに黒ゴマで名前を入れるアレンジも、良かったデース。参加して良かった、と思うはっぴーな気持ちもとても嬉しいデスよ!」
 と、ショコラールは一人ずつ丁寧に感想を述べていく。今回は参加者で教えたり手伝ったり、そういう光景を見れてショコラールは満足そうだった。自分が教えなくても参加者同士が交流することに意味があると彼は考えている。
 こうして無事、和やかに今回のお料理教室は終了した。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 分かち合う幸せ
    笹山平介aa0342

重体一覧

参加者

  • 分かち合う幸せ
    笹山平介aa0342
    人間|25才|男性|命中
  • 薫風ゆらめく花の色
    柳京香aa0342hero001
    英雄|24才|女性|ドレ
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
    人間|22才|女性|防御
  • 聖霊紫帝闘士
    ニクノイーサaa0476hero001
    英雄|26才|男性|バト
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
    人間|20才|男性|命中
  • 大切がいっぱい
    ピピ・ストレッロaa0778hero002
    英雄|10才|?|バト
  • エージェント
    十影夕aa0890
    機械|19才|男性|命中
  • エージェント
    シキaa0890hero001
    英雄|7才|?|ジャ
  • やるときはやる。
    呉 琳aa3404
    獣人|17才|男性|生命
  • 堂々たるシャイボーイ
    aa3404hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • 心優しき教師
    世良 霧人aa3803
    人間|30才|男性|防御
  • フリーフォール
    エリックaa3803hero002
    英雄|17才|男性|シャド
  • ひとひらの想い
    浅水 優乃aa3983
    人間|20才|女性|防御
  • つまみ食いツインズ
    ベルリオーズ・V・Raa3983hero001
    英雄|16才|女性|ジャ
  • 穏やかでゆるやかな日常
    無音 冬aa3984
    人間|16才|男性|回避
  • 見守る者
    イヴィアaa3984hero001
    英雄|30才|男性|ソフィ
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