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BBGを楽しもう

saki

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
7人 / 0~8人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2016/08/27 23:19

掲示板

オープニング

●川辺にて
 がやがやわいわいと、賑やかにバーベキューコンロを用意したり、飯盒の準備をしたりしていく。
 今日はBBQである。
 暑気を吹っ飛ばそうと、今時期ならではの楽しみだ。今日は一日、緊急な要請が無ければリンカーとしてのお役目も置いておいて、ぱーっと楽しむ日である。
 大人陣は持ち込んだ酒類が温くならないように川で冷やしたり、未成年組は持ち寄った花火を見せ合ったりしている。
 そんな中「あーっ」と、悲鳴が響き渡った。
 自然と視線がそちらに向かうと、叫んだのは今回のBBQを企画した職員であった。
 彼は蒼褪めた表情で、クーラーボックスを引っくり返す。しかし、中には何も入っていないようで何も落ちる物さえもない。そして、彼はまるで漫画か何かのように膝を突いた。正に、がっくりとしたポーズである。
「……やらかした」と小さく呟く。そして、「道理で軽いわけだと……」とぶつぶつと呟いている。
 のっぴきならない様子に声をかけると、彼は「すみません」と土下座をした。
「肉、忘れて来てしまいました」
 その言葉に、「えー」という声が幾重も重なってハミングした。
 そう、彼はBBQにメインである肉を忘れてきてしまったのだった。

解説

●目的
→肉の調達

●補足
→BBQなのに肉がありません。……ということで、肉を入手しましょう。
 この川の傍の森では、度々従魔の姿が発見されている……という情報があることを参加者が思い出しました。そこで、従魔を狩って肉を手に入れ、この肉のないBBQを阻止しようという方向に決まりました。
→目撃情報によると、熊と鹿、そして雉の従魔がいるそうです。
 どれもミーレス級で、其々通常の個体よりも一回り大きい肉食です。鹿は思い切り草食ですが、従魔化することによって肉の味を覚えた為肉食になりました。
 どの従魔も元野生動物ということがあって、其々の武器を熟知しています。熊なら爪と牙、鹿なら角そして従魔化することによって発達した顎、雉は嘴で抉るように攻撃してきます。動きも通常よりも速く、また、野生の勘もあるので注意しましょう。
→従魔を狩った後はBBQそして、夜は花火です。楽しんでください。

リプレイ

●肉を入手せよ
 職員の一人が思い出した従魔の件であるが、そのことについて「放置していたのは何故か後で聞こうか職員? 芽は摘み取らなきゃあ」と鴉守 暁(aa0306)は良い笑みを浮かべた。それに対し、職員は目を泳がせた。それを「ああ、依頼出てるなら受けるから手続きしといてね」と更に良い笑みで言葉を紡げば、泣く泣く頷くしかない。
 その横でキャス・ライジングサン(aa0306hero001)は『トリアエズお肉になるヨー』とやる気を見せれば、暁「従魔狩りだなー元動物なら倒せば元に戻るかもだしー」と頷いた。

「……狩り、か」とヴァイオレット ケンドリック(aa0584)は呟いた。それに、ノエル メイフィールド(aa0584hero001)は『狙うとしたら、鹿辺りはどうじゃ?』と提案した。
『雄鹿なんかが良さそうじゃ』と楽しそうなノエルに、ヴァイオレットは頷く。
『ここでの狩りは、初めてじゃの』と、肉が無いためにこんなことになったのに、それすらも楽しんでいるかのように、ノエルは口笛を吹いた。

 肉に拘りをもっている九字原 昂(aa0919)は、肩を竦めながら「本当は何日か熟成させたものを使いたいんですが……背に腹は代えられませんね」と呟いた。
 しかし、まずすべきことは肉の調達である。肉がなくてBBQは始まらない。
 人数も揃っていることもあり、区分を分けて狩りをすることに決まり、セレティア(aa1695)とバルトロメイ(aa1695hero001)は昴と同じ区域を担当することになった。
 他のメンバーの状況などの確認もする為、無線の用意もして準備万端である。
「よろしくお願いしますね」と笑むセレティアに「こちらこそ」と昴も応じる。
 目撃されたと言われている情報を聞き、バルトロメイは『狙うなら、やっぱり熊だよな』とその鍛え上げられた腕を組んだ。

 肉の話を聞き、「自給自足、か。こんな焼肉は初めてだな……」牧島 凉(aa2799)と呟いた。通常の焼き肉なら肉があって……というものだから、それは普通の反応だろう。しかし、ガンロック=ニルスター(aa2799hero001)は『んー、俺の感覚だと火を焚いてから飯を狩りに行くってのはそう珍しい事でもねぇ。つまり、そういう世界から来たって事だな、俺は。記憶ねぇけど。ま、これも悪くない経験だろうよ』と、頼りになるような笑みを浮かべた。

「肉が…無い…だと…?」『そんな…馬鹿な…』と一ノ瀬 春翔(aa3715)とアリス・レッドクイーン(aa3715hero001)は崩れ落ちた。
 楽しみにしていただけにその落胆は大きい。しかし、だからこそ何が何でも肉を食べてやるのだと『これは…アリス達に対する挑戦状…!』「狩って狩って、狩りまくってやる…!」と拳を握るのだった。
 そしてそうと決まっては行動とばかりに、他のメンバーにも声をかけつつ製氷機で必死に氷を制作して飲み物を冷やし、他のものは幻想蝶に仕舞った。

 高橋 直房(aa4286)はレイキ(aa4286hero001)に肉を食べさせて食事を浮かせること、そして自身がやっているブログへの反映効果を狙ってやってきたというのに、初っ端からその出鼻を挫かれてしまった。同様に、肉を食べるつもりでやって来たというのに、それをぶち壊されてレイキもご立腹であった。
「レイキちゃん、ご機嫌だねー」という直房の声に、『今機嫌が悪くなった、いつも呼び捨ての癖に気持ちわるい。なにその喋り方』と鼻を鳴らす。
「大人の事情ってやつさ。初対面の人ばっかりでしょ。第一印象すっごく大事」

 自分たちで肉の調達と聞き、無音 彼方(aa4329)は「いや、何で肉が現地調達なんだよ」と喚いた。それを那由多乃刃 除夜(aa4329hero001)は『クカカカ、仕方があるまい、仕方があるまいのう。いやしかし、喰らい喰らうが獣道、この場においても変わらずか、クカカカ痛っ、何故ぶつのじゃ能力者殿』と言うが、その途中で彼方に殴られた。
 そしてこれが通常運転なのか、彼方は「何でBBQするのに従魔狩ってるんだ? いやそもそも食えるのかこれ?」と首を傾げた。それを『能力者殿、細かい事気にしだすと禿るぞ?』と指摘すれば、「いや禿げねえから、解る?」と彼方は眉根を寄せた。

●狩りへ
 暁は雉を狙い、藪を中心に探す。
 勿論見つけ次第すぐに撃てるように武器を構えてだ。距離によってスナイパーライフルとクロスボウを使い分ける算段である。
 そして目論見通り、雉を発見した。
 向こうも暁に気が付いたようで、軽く飛ぶと、回転しながら嘴を前に突っ込んでくる。その様は宛らドリルのようである。
 暁はそれを回避すると、飛んでくる方向を予測してクロスボウを撃つ。
 狙うは翼と頭。どういう原理なのか翼は身体にぴったりとくっついたまま回転しているものだから、必然的に狙うのは頭となる。
 そして、精神統一によって高められた精度の矢が雉の頭部に突き刺さる。
 堕ちてきたところにもう一撃打ち込んで止めを刺し、逆さにして足を縛ってつるし上げて血抜きも開始する。獣の血は獣を呼び寄せるので穴に埋めるのも怠らない。
 獲物に対する感謝も忘れず、「命の糧に感謝を」『センキュー!』と祈りを捧げると更なる獲物、そして周囲への調査に向かうのであった。


 ヴァイオレットは共鳴した姿のまま身を潜め、獲物を探す。
 少し変わった甲冑を纏った一角の鬼の姿であり、露出は少ないものの身体のラインがハッキリと出たデザインの所為か、何処となくサンバダンサーのようでさえもある。
 保護色からは遠く離れている為、身を低くしながら進んで行くと、鹿の姿があった。
 群れの中、通常の鹿に混じるようにして、一体大きな個体が目に付いた。雄だからというのではなく、そもそもの種類が違うのではないかという程立派な角をしている。
 雄鹿と目があったような気がした。
 ヴァイオレットがはっとするのと同時に、雄鹿が突っ込んできた。涎を巻き散らかしながら突っ込む姿は、まるで闘牛のようである。
 それを、反射的に禁軍装甲を出して受け止める。だが、トラックでも突っ込んで来たかのような馬力に、ヴァイオレットは盾の角度を変えることで受け流す。そして、瞬間的にできた空間に天雄星林冲で突く。
 特性柄燃えないように、柄の方で打ち込む。
 雄鹿の呼吸が乱れると、すぐさま弱点攻撃によって鋭い一撃を入れる。
 雄鹿が倒れる。炎を考慮した分気を失っているだけだが、起き上がる前にとヴァイオレットは縊り殺した。


 熊の足跡を発見した。
 その近くの糞の状態を見るに、そう遠くまでは行っていないようである。
 昴が鷹の目を使って上空から熊を捜している間に、セレティアもセレティアで罠を仕掛ける。ガソリンや香水等に誘引される性質を利用して誘い出す作戦だ。
 周囲を偵察している昴が「見つけました」と呟く。矢張り熊は遠くまで行っていなかったようで、臭いに誘われてゆっくりとこちらに向かっているようである。
 セレティアが熊と正面切って戦い、その隙を昴が付く手筈である。
 熊が近づいてくるのを待つ。
 現れた熊は従魔化しているだけあり、通常よりも随分と大きく、ワゴン車とも遜色がない大きさである。
『相手が従魔なら遠慮はいらねぇよな!』と、共鳴した状態でセレティアがヌアザの銀腕による近接格闘を仕掛ける。
 衝突すれば木も容易く折りそうな巨体を避けると、山の斜面を利用して上から一気呵成を当てて転倒させる。そして体勢が崩れたところで、ボクシングのジャブの要領で拳を鼻っ面にお見舞いする。
 一瞬熊が怯んだ。
 その隙を見逃すセレティアではない。
 眉間、頸、心臓に掌を撃ち込み、押当ててビーム発射する。
 威力は十分。しかし、決定打にはならない。
 攻撃を受け、怒る熊がセレティアへと襲い掛かる。そこに、潜伏を使って熊の背後に回っていた昴から援護が入る。
 女郎蜘蛛で動きを阻害したのである。
 そこで出来た隙を突き、セレティアは熊の口内へと腕を突っ込んだ。そして、舌を掴むとゼロ距離から身体の軟らかい部分にビームを放つという強力な一撃をお見舞いする。
 強烈な一撃に、死の恐怖に駆られた熊は狂ったかのように手を振り回す。
 セレティアの手が口に入っているというのに、熊はそれを噛まなかった。否、噛めなかったのは、熊は舌を掴まれると噛む力が入らない為、噛むという行動をすることが少ないというのを考慮してこその戦法が功を指したのである。
 熊の口から手を抜くと、セレティア目がけて振り回される腕を、昴はハングドマンの鋼線で更に動きを封じる。
 手の自由も奪われ、熊は唸り声を上げる。そして今度こそ噛みつこうと必死な熊を昴は零距離回避で避けると空いた喉元目がけて孤月を振るった。両者の勢いを利用したカウンターの要領で刃が深々と入る。そこから更に刃を滑らせると、そのまま止めを刺した。
 熊が完全に動かなくなったのを確認すると、二人は更なる獲物を狩ろうと、待ち伏せの際に鷹の目で見つけた他の獲物へと向かった。


 涼とガンロックは共鳴せず、慎重に進んでいく。
 獣道や足跡などを中心に入念に探すことで、標的を見つけ出すつもりである。狙いは鹿だ。
 涼が「どうだ? 何か見つかったか?」と声をかければ、ガンロックは『おうともさ』と藪を指せば、不自然に枝が折れている場所がある。
『ここを通った時にでも引っ掛けたんだろうな。足跡もある』
 そしてガンロックは土を触り、『まだ湿っているから、そんなに時間は経ってねぇな』と言う。
 それから少しして、鹿の姿を見かけた。
 涼は従魔から気取られないぎりぎりまで近づくと、ライヴスショットを放つ。
 不意打ちで鹿に命中するが、それでこちらに気が付いた鹿は向かってくる。
 すぐさま共鳴すると、盾に持ち替えて攻撃を受け止める。
 ずしりとした重さがかかるが、そのまま受け止め、もう片方の手で天雄星林冲を握ると容赦なく首元にライヴスブローを撃ち込む。鹿の息がつまり、動きが鈍った所で涼は槍を握る手に力を込めて仕留めた。
 崩れ落ちた鹿を前に、「頭は食わないだろうし、まぁ良いだろう」と呟いた。


 雉の従魔を九陽神弓で仕留めた春翔は「気分は森の狩人ってか」と呟き、更にもう一体急降下してくる雉を見極めの眼でタイミングを計り、弓が頭部を貫いた。
 息が無いのを確認して回収すると、アリスが『次の肉はどこだオラァ!』と吼える。
 お次の獲物――今度は熊を発見すると、戦法をヒットアンドアウェイに切り替える。
 アックスチャージャーをチャージさせながら急接近して、先手必勝を狙う。
 掛け声とともにその首を落とそうと斧を振り回すが、熊が咄嗟に出した腕を斬り落としただけであった。
 もう片方の手で攻撃しようとする熊のそれを掻い潜ると、一度距離をとり、ジェミニストライクで分身を作る。
 熊は時速50kmを越える速さで走ることから、その素早さはかなりのものである。しかし、分身して左右から挟み込んで攻撃することで攪乱、そして相手にダメージを与える。
 アックスチャージャーにチャージをさせながらも避け、縫止も使って動きの阻害を図る。
 そしてチャージの溜まった今度こそ、左右から斧を振り抜いてその首を落とした。
『次の肉はどこだオラァ!』と、拳を握って雄叫びを上げるアリスを春翔は「…」と白い眼で見ながら、他のメンバーの様子を確認しようと連絡を取るのであった。


 分担通り分かれる際、共鳴した状態で向かおうとした直房であったが、話を聞いていないレイキが何処ぞかへといきなり行こうとするものだから、直房は無理やりその支配権を奪い取って身体の動きを停止させる。その際にたたらを踏み、周囲から怪訝な視線を向けられるが「っとと……あー、転びそうになっただけなんで、お気になさらずー」と誤魔化して現在に至るわけである。
 順調なスタートというわけではないが、ブログの為にも肉が無くてはやっていられないから真剣である。
 狙いは熊か鹿。
 肉がないことにテンションが地まで落ちていたが、一周回って暴れてやるというテンションが振り切れている状態なっているレイキは既にやる気満々である。
 鹿の従魔を見つけると、先手必勝というよりは問答無用とばかりに一気呵成でその重心を崩す。
 不意を打つような形になれば、鹿の従魔はあっさりとバランスを崩した。そして朱里双釵で頸動脈を掻っ捌くというよりは、首を落とすような勢いでヘヴィアタックを決める。
 狙いどころが狙いどころなだけに、頚から鮮血が飛び散り、噴出した。
『従魔なんて私の手に掛かれば木っ端微塵』と、既に目的を見失いつつあり、肉を得ることよりも倒すことがメインになっているレイキに向かい、直房は「ちゃんとお肉食べられるように倒してねー」と声をかけた。


「先ずは、鹿か?」
 彼方は潜伏を使用し、従魔から発見されないようにした状態で獲物を捜していると、丁度食事中の鹿の従魔を見つけた。
 成程。確かに従魔である。
 通常の鹿なら草食動物として広く知られているが、この鹿は野兎を食べている。それも従魔化して肉食になった所為か、口を赤く染めながら生肉を食む姿はある意味ホラーである。
 鹿は一応警戒して耳が立っているものの、食事に夢中である。それを利用しない手はない。
 彼方は縫止で鹿の動きを抑える。
 急に動けなくなったことに鹿は驚き、身を捩ろうとするが上手くいかないようである。その隙に、彼方はジェミニストライクを使用して草陰から出ると、摺足の独特な動きで鹿に目晦ましを仕掛ける。
 幻惑によって相手の注意力を散漫にさせると、隙を突いて黒漆太刀を突き立てた。
 絶命したのを確認すると、木に吊るし、勿論お持ち帰りするが、その前に餌としても役立ってもらう。この血の臭いに惹かれ、他の従魔もやって来る可能性があるからだ。
「……しかしあれだ、これも人助けかねえ、面倒な」と呟く彼方に、『と、言いながらきっちりと働いておる様じゃがのう、能力者殿』と除夜が楽し気な声を上げた。

●下拵え、そしてBBQへ
 暁とキャスは、吊るしていた雉から血が滴らなくなってから解体を始め、羽根をむしって焼いて丸裸にすると、頭と足を切り落とし内臓を抜いたらよく洗う。
 解体などは臭いもきついこともあり、暁はそのことを考慮して人の目がつかないようにして注意しながらする。スーパーで売っていそうな肉塊まですると、キャスが『解体デキタヨーもう大丈夫ネー』と調理用へと運んだ。

 慣れない形の所為で少し手古摺りながらも、ヴァイオレットとノエルは解体をしていく。
 狩った獲物は自身が責任を持つつもりで最後までやるつもりだ。
 しかし、ノエルがやるのはここまでのようで『なぁに、狩り以外は相棒に任せるがの……』とヴァイオレットに丸投げ発言をし、持参した一升瓶を手にすっかりと諦観モードを決め込むのであった。

 バルトロメイが流石の腕前で解体していく横で、セレティアと昴は行われた血抜きとワタ抜きの残骸を深く掘った地面に埋める。こうしないと、獣が寄ってきてしまうからだ。
 先に熊を狩ったが、その後にも昴とセレティアは協力して雉の従魔を追い立て破魔弓で狩ったりもした。
 近隣住民やレジャー客の安全を考慮して大量と呼べる従魔を狩った。勿論無駄にすることがないように、食べられる分を除いて先に春翔とこさえた氷を使って幻想蝶の中に入れて持ち帰るつもりだ。
 バルトロメイが大振りな肉を切り分ける横で、昴はせっせと肉を切り分ける。そのサイズはどれも均等であり、肉に拘りがあるというだけあった。「肉奉行としては、肉の管理はきっちりとしなくては……」と、ある意味従魔と対峙しているかのような迫力である。

 涼とガンロックは、解体の知識のあるガンロックが中心となってこなしていく。
 手持ちのナイフでするすると刃を走らせる様は、成程と言えるだろう。
 その横で『ヒャッハァ! 肉だァ! 鮮度落とすなよォ!』「……やるのは俺なんだけど」というテンションのまま、狩りの効率は落とさないように、血抜きだけはやった春翔とアリスであったが、解体は知識のある人たちにお願いして、HOPE職員に「任務外…とは言えな?」『お金! ください!』と従魔を狩ったということを主張して報酬をお願いした。すると、それを聞いていたガンロックもそれならばと『こりゃ、元々肉を忘れたそっちの落ち度だろ? それで俺達に働かせて報酬無しってのもねぇんじゃねぇの? 従魔を倒すっていう本来のエージェントの仕事もこなしてるんだしよ』と主張をし、先に暁からも念押しされていることもあって、職員は項垂れたように「はい」と頷いた。
 それを聞き、春翔とアリスは「よしっ!」『やった!』とハイタッチをし、これで心置きなくBBQを楽しめるとばかりに笑みを浮かべた。

 直房はブログに上げるべく、携帯品のサバイバルグッズを手当たり次第試しては上げるということを繰り返している。勿論他のメンバーのサバイバルグッズや解体の様も上げさせてもらい、ほくほく顔である。
 自分で狩った肉も勿論レイキと解体はするが、それよりもアクセス数のアップ、アフィリエイト収入が期待できそうだとブログ更新に夢中なのであった。

 解体はかなり体力を使う作業である。一通り終わらせた頃には一汗かいたというレベルではなく、彼方は薄着へと着替えていた。その傍で、既にこちらのことなどお構いなしに除夜は水着で川遊びをしている。……かと思ったら、『捕れたのじゃ!』と誇らしげに鮎を掲げている姿に、「凄いな、おい」と声を上げた。
『これも焼いて食べるのじゃ』と捕ったものを渡してくるものだから、彼方は「焼くのは俺にやれってことかよ」とげんなりとした声を出した。

●BBQ、そして花火
「お肉はそのまま塩振って焼いてみよう。定番だね」と、暁は出来上がった手羽先を片手に既に一杯やっている面子の元へと向かう。
「塩味が効いててお酒ともよく合うよー」と暁は混じろうとするが、年齢的な問題でその面子が顔を見合わせてているのを「私は大人だっつってんだろー。見た目で判断するなー。身分証提示ー」と、持参した身分証を提示している姿はこういうことがよくあるのだというのを言外に告げている。キャスに向かって「キャスー一杯飲んでやれー」と言って乱入を告げ、『オイッスー!』と一気飲みするのであった。それを見てノエルが『元気があるのは良いことじゃ。おぬしも飲むか』と一升瓶を掲げるのであった。

 ノエルのつまみとして肉や野菜を焼いていたヴァイオレットだが、自称「肉奉行」の昴に早々とその役目を受け渡すことになる。それは勿論、BBQよりも川遊びに真っ先に向かった除夜に「熱い…暑い、くそ、やっぱクーラーの効いた部屋でゆっくりと休んでおくんだった……てか除夜、手伝えよ」と恨めしそうな声をかけながらも、焼き加減の調整をしている彼方も対象である。
「僕に任せてください」と昴がその仕事を奪うと、顔を赤らめたまま「それにしても……明るいうちから飲むお酒はいいですね」と自身が持ち込んだ七面鳥ラベルのウィスキー、そして他のメンバーが持ってきた酒を始まって早々飲んでちゃんぽん状態であるのにも関わらず、肉の管理には余念も無ければ危なげもない。絶妙な焼き加減、タイミングで網から取る。
「さぁ、どうぞ」と周囲に肉を差し出して回り、その笑顔とは裏腹に「今が美味しいから早く食べてください」と言わんばかりのものを言外に感じ取り、ヴァイオレットと彼方も少々戸惑いながら肉を食べるのに専念するのであった。

 春翔が用意していた氷貰い、高級シャンパン九龍仲謀を口にして『キンキンに冷えてやがるっ…!』とバルトロメイはくぅ~と呷った。
 持参していたトウモロコシも焼くが、矢張りメインは肉である。
『肉食えよ筋肉つかねーぞ』と、肉を取り分けるというよりは食えよ食えと次々に焼けた肉を皿に盛りつけていく。その余波でも言うのか、セレティアは肉を食べすぎて、「お腹が苦しいです」と既に満腹を訴えていた。
 その横で、『肉! そして、酒! 焼肉ってのはこうじゃなきゃな!』とテンションが高いというよりは出来上がっているガンロックは嬉々として肉を受け取っている。『いやー、うめぇな』と、次々と肉にありついている。

 涼は、受け取った肉を食べつつも玉ねぎから視線を全く逸らさない。そんなことをしているから、次から次へと肉が皿に盛られているのにも気が付かずに無意識に肉を口に運んでいるような状態だ。
 そして生焼けの玉ねぎに箸を伸ばしている人がいれば、「待て! その玉ねぎはまだ早い!」と諌めた。その熱の入りようは凄まじく、言われた方は真顔で「おぉう」となる程である。
「それではまだ苦い。玉ねぎは色が変わってからが本番……まずは火が強くなり過ぎないように網の端の方で焼き、焦げないように注意しながら細心の注意で裏返すのだ。玉ねぎはしっかり焼けば甘い。苦い印象を持つ者がいるが、それは間違いだ!」と熱弁を振るうその姿は、何時にもまして輝いていたと後にメンバーは語る。

「フゥ~ !たまんねーぜオイ! 一仕事した後は格別だ! なあ!」と、春翔は酒を一気飲みする。見た目はともかく、年齢的にはもう飲めるアリスであるが、春翔が羽目を外し気味の為、今日はセーブへと回っている。
『いつもは酔っぱらいの世話したくねーって言ってるくせに…』とアリスはぶつくさ呟きつつ、『でーも美味しいからいいやー! もっと肉もってこーい!』と気にしない方向でテンション高く皿を掲げれば、すかさず待っていましたとばかりに、昴とバルトロメイから肉が次々と乗せられるのであった。

 直房は相変わらず食べるのはそっちのけでブログの更新をしている為、食べるのは主にレイキである。レイキはレイキで、ここぞとばかりに肉を食べている。食費を浮かせに来たという目的は伊達ではない。
 そして、皿が空になれば只管盛られる状況に満足気に箸を進めるのであった。『肉、肉……』とご機嫌で、余った肉も持ち帰ろうと密かに考え中である。


 まだBBQに夢中な面子は置いていおいて、ぼちぼち花火も始めている。
 徐夜は花火を振り回し『二刀流じゃ』とやっているのを、彼方に「おい、危ないから止めろ! そういうのは注意書きで書いてあるだろうが」と止められていた。
 折角金魚の浴衣に着替えたセレティアであったが、見せる相手のバルトロメイが満腹と酔いで寝ているものだから頬を膨らませ、「せっかくわたしが可愛い浴衣着てるのに、見てくれないからですよ!」と油性ペンで落書きをしている。
 そんなセレティアに呆れつつも、ヴァイオレットは呆れつつ予想よりも地味で蛇花火にきれそうにはなったが、トラウマとなった爆発物を思い出した。そして、相変わらず無法地帯と化し、呑めや騒げやとやっている面子に向かい、「リンカーが腹壊さないとは、限らないだろう。それも良い思い出には成るが」と呟いた。


 まだまだ夜は始まったばかりだ。
 愉しいのはこれからだ、と川辺は盛り上がりを見せるのであった。
 肉が無いと初っ端からハプニングはあったものの、良ければ全てよしである。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • ようへいだもの
    鴉守 暁aa0306
  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
  • 生命の意味を知る者
    一ノ瀬 春翔aa3715

重体一覧

参加者

  • ようへいだもの
    鴉守 暁aa0306
    人間|14才|女性|命中
  • 無音の撹乱者
    キャス・ライジングサンaa0306hero001
    英雄|20才|女性|ジャ
  • LinkBrave
    ヴァイオレット メタボリックaa0584
    機械|65才|女性|命中
  • 鏡の司祭
    ノエル メタボリックaa0584hero001
    英雄|52才|女性|バト

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避



  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
    人間|11才|女性|攻撃
  • 過保護な英雄
    バルトロメイaa1695hero001
    英雄|32才|男性|ドレ
  • アステレオンレスキュー
    牧島 凉aa2799
    人間|17才|男性|防御
  • アウトドア
    ガンロック=ニルスターaa2799hero001
    英雄|32才|男性|ブレ
  • 生命の意味を知る者
    一ノ瀬 春翔aa3715
    人間|25才|男性|攻撃
  • 生の形を守る者
    アリス・レッドクイーンaa3715hero001
    英雄|15才|女性|シャド
  • 悪事を知悉る(しる)男
    高橋 直房aa4286
    人間|43才|男性|命中
  • エージェント
    レイキaa4286hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • ひとひらの想い
    無音 彼方aa4329
    人間|17才|?|回避
  • 鉄壁の仮面
    那由多乃刃 除夜aa4329hero001
    英雄|11才|女性|シャド
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