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ペイント弾で復讐しましょ
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相談卓
最終発言2016/06/06 07:34:56 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/06/05 23:36:22
オープニング
●大人の思惑
「高校から果し状がとどきました……」
HOPE職員は、その言葉に唖然とする。
「以前カラーボールを作っている会社の製品テストのために、高校生と戦ったでしょう。その高校から、リベンジのための手紙が来たんです。生徒と校長から」
そういえばそんな話もあったような気がするな、と多忙な事務職員たちは思いをはせるう。危険な任務ならともかく、そんなお遊びの事までは詳しく覚えてられない。
「随分と丁寧な学校ですね……」
生徒たちからの手紙には『今度こそ雪辱を晴らす』的な内容が書かれていた。
一方で校長からの手紙には『生徒の挑戦する気持ちを我が校としては優先したい。できれば大怪我をしないように監督お願いします』的なことが書かれていた。
「スポーツで有名な学校ですからね、そこらへんはきっちりしているんでしょう。ほら、生徒たちからの手紙は毛筆でかかれてますよ」
それはどうでもいいけれども、と手紙を持ってきた職員は言う。
「今回のリンカーの慰安イベントの企画に、これを使いませんか? 飲み会とかするより未成年も参加しやすいだろうし」
女性職員が持っていたのは訓練用のモデルガンである。彼女のいわんとしたことが分かった職員たちは、そろって手を打った。
「いいかもしれないですね。サバイバルゲームならば、高校生に怪我を負わせる事もありませんしね」
「念のためジャックポットと命中特性の方には、ハンデとしてナイフを使ってもらうようにしましょうか」
●子供の思惑
スポーツ強豪校として有名な、喜多野高校。
最終学年の彼は、復讐に燃えていた。
「おまえらー! 受けた屈辱は絶対に返すぞ!!」
前回ベルトを取られて、ピンクのパンツを晒す羽目になったサッカー部部長の気合の入り方は異常だった。
「まぁ、負けたままにはしておけないよね」
三年生のリーダー格の少年黛は、クラスに集まった有志たちの姿を見る。その顔は敗北を知った弱者の表情ではなく、勝利をもぎ取ろうとする挑戦者の顔であった
「前回の失敗を生かして、今度は普通のサバイバルゲームをしようと手紙には書いた。装備も普通のサバイバルゲームの装備のみを使用可能。さらに」
クラスに集まった全員が、にやりと笑う。
――共鳴の禁止!
「これだけ、ルールで雁字搦めにしちゃえば俺達だって戦えるさ。さぁ、挑戦者たち。王者に喧嘩を売りにいこうか!」
クラスに集まった高校生が、空に向かって拳を突き上げた。
『――われら常勝、喜多野高校!!』
解説
・ペイント弾を使って、高校生とサバイバルゲームをしてください。
ルール・
・青(高校生チーム)赤(リンカーチーム)に別れ、互いの陣地にある旗を先に取った方が勝ち。
・ゲームスタート前に動くことは可能であるが、スタート前に中央線を越えて相手の陣地に近づいてはいけない。
・一発でも当たれば、そのプレイヤーは死亡とみなされて退場。
禁止事項
・使用できるものは通信機を含むサバイバルゲームで使用できるもの一式(HOPEより貸し出し)自前のアイテムなどは使用禁止。
・共鳴の禁止。
・制限時間は一時間。
※ジャックポットと命中特性の方は銃ではなく、ナイフ(当たると色がつく玩具)が武器となります。
場所……サバイバルゲーム用に作られた会場。中央に障害物が多く設置され、普通のサバイバルゲームではそこが激戦区となる。また、中央には小さなやぐらが設置されており、陣取ると防御が有利となる。(※ゲームスタート前には行けない)山に周囲を囲まれているが、山道に入って相手に奇襲をかけることも可能である。なお、時間は昼のため視界は良好。
高校生たち
壁役組……中央突破してくる敵を警戒し、中央付近にいる。ゲームの最初ではやぐらを奪取するために、動く。先陣役が全て倒されないかぎりは、守りに徹している。七名出現。その内一人が、サッカー部部長。
先陣役……山道に入り、奇襲を企てる。何事もなければ壁役が倒され始めた時点で、奇襲をかけてくる。旗を積極的に取ろうとする。五名名出現。
旗守り役……陣地の一番奥で旗を守っている。他の面々と比べると射撃が上手く、命中精度が高い。三名出現。
リーダー役……サバイバル会場から少し離れた木に登り、双眼鏡で戦況を見ている。敵チームの比較的手薄な場所に遊撃役を送り込む。一名出現。黛少年。
遊軍役……四人。手薄なところに攻め込んでくるが、あくまで相手の人数を減らすのを目的としている。
リプレイ
●やぐら班
「雪辱戦たぁ良い度胸だ。撃てないのは残念だが……全力で相手してやろう」
『……ん、また遊んであげる』
麻生 遊夜(aa0452)とユフォアリーヤ(aa0452hero001)はゲームが始まってそうそうに、双眼鏡をのぞいていた。前回も勝負した高校との一騎打ちだが、今回の面子は男子高校生ばかりだ。やはり、こういうゲームを好むのは男子より女子ということか。リーヤの目が若干楽しそうに輝いているような気もするのだが。
「敵は……七人か、一人動きの良い奴がいるな」
どうやら彼らは、最初にやぐらを目指すらしい。
「そっちにも敵はいるんだぞ。高校生」
遊夜はにやりと笑いながら、再び双眼鏡をのぞいた。
「ふむ。さばげーでござるか、変わった訓練でござるな。……色々と勉強になりそうでござる」
小鉄(aa0213)は、わくわくしながら配布された武器を握っていた。稲穂(aa0213hero001)は『うむうむ、服に色が付いちゃうの』と心配をしていたが、そんなことを気にしない小鉄はどこふく風である。どうせ服もレンタルだし、と。
『一撃貰えば即終了、良い刺激になりますね』
エミナ・トライアルフォー(aa1379hero001)は銃を構えながら、物陰に隠れる。七人の高校生は警戒しながらも、やぐらを目指しているようである。
『銃はナイフや斧と違い、傷付ける為だけの道具。あまり好きではありませんが……』
握りしめた銃を持ちながら、エミルは呟く。
『でも、これは傷付けぬ様作られた遊戯の道具。折角の企画です。楽しみましょう』
ペイントナイフや銃を装備した迫間 央(aa1445)は、実戦ではないせいなのか「赤より青が良かったかなー」と気楽な様子である。
『共鳴出来なくても正面からなら十分反応できる筈。死角からの攻撃に気を付けて』
「マイヤはどうすんだ?」
動きやすい服に着替えマイヤ サーア(aa1445hero001)も銃を構える。無論、ペイント弾入りのである。
『睨み合いは性に合わないの。突っ込んで炙り出すから仕留めてね』
「身体能力ではこっちが上だから、乱戦はむしろ好都合か」
二人は背中合わせに構えた。
その様子は、戦争映画の一場面のようだ。
だが、先に飛び出したのは黒金 蛍丸(aa2951)と詩乃(aa2951hero001)であった。蛍丸は先陣を切って、やぐらに向かっていた生徒に一瞬で接近する。
エミルと九操は、それぞれ頷き合うと武器を構えて物陰に隠れつつ移動する。すでに蛍丸はかなり近くまで接近しているものの彼の武器は、ナイフだ。未だに致命傷になりうる傷を与えられるほどに近づけてはいない。
一発撃っては隠れる。一発撃っては隠れる、という堅実な方法でエミルたちは蛍丸を援護する。そして、彼を援護する人間はもう一人いた。
『蛍丸様!』
それを援護するのは、詩乃である。戦いなれていない彼女は狙いを定めるのではなく、玉を乱射することで蛍丸を援護しようとする。
「前回なにがあったのかは知らないが、相手が全力なら全力で戦います」
蛍丸は姿勢を低くして、高校生たちに近づく。高校生たちは蛍丸と詩乃のどちらを撃つか迷い、詩乃のほうにも狙いをつけた。
詩乃の近くまで、弾丸が飛んでくる。
本物ではないと分かっていても、戦いなれていない彼女には恐ろしく感じる。それでも足を止めないのは、行動を通して蛍丸を助けたいからだ。共鳴という形をとらなくとも彼を助けることが、彼女には嬉しい。
「男の方の武器はナイフだ。近づかれる前に、援護の女の方をやれ!」
男子生徒の声に、蛍丸ははっとする。
詩乃が戦いなれていないことを見抜かれてしまっている。放たれる弾丸は、もはや蛍丸のほうに向かっていない。全て詩乃のほうへと流れていく。
「詩乃! 一時撤退して、央さんに助けを求めます」
二人だけでは、詩乃が撃たれる。
そう判断しての蛍丸の決断であった。
蛍丸は、詩乃の側まで走る。側にいれば、詩乃を誘導することは可能だ。そうすれば、弾丸から詩乃を守ることができる。
「蛍丸様……ごめんなさい。私、どうすれでよかったのでしょうか?」
「詩乃、大丈夫です。一度、仲間と合流してからッ――!」
蛍丸は、飛んでくる弾丸から詩乃を守った。後ろから撃たれた蛍丸は、倒れた振りをしながら詩乃に囁く。
「……央さんのサポートを頼みます」
「蛍丸様……」
戸惑う詩乃を救う人間が現れた。
央とマイヤであった。二人は互いに背中を合わせて、詩乃まで近づく。身軽なマイヤは、銃を抱えて高校生たちに近づく。央は詩乃に手を化しながらも、マイヤの援護を試みる。
「距離を間違えず相手の動きが見えれば、なんとか回避出来そうだ」
いくら運動神経が優れていても、相手は高校生である。
それに持っている銃も所詮は玩具だ。命中精度など、高が知れている。
『央の取り柄はそこだもの。ゲームとしては彼らの方が慣れているかも知れないけれど、私のパートナーはそう甘くはないわ』
マイヤは二人を撃ったが、学生たちはまだ五人も残っている。
『城攻め、膠着状態とくれば……忍の出番ですね』
エミナは、ちらりと小鉄を見やる。
小鉄は静かに頷いた。
「では……押して参る」
「私もいきますよ!」
唐沢 九繰(aa1379)は、自慢の機械足を作動させる。トップスピードで駆け、生徒たちの弾を避けていく。九操の素早い動きに生徒たちは、なんとかついていこうと銃口を向け続ける。生徒たちもよく考えてはいた。暴れ回るマイヤには比較的腕のいい人間に狙わせ、九操にはあまり射撃が上手くはない人間に狙わせている。おそらくは九操のスピードでは、狙いは定めにくいと考えたのであろう。生徒たちの読みはあたっている、今の九操は弾をばら撒いているだけである。
そのなかで小鉄はあえて、ナイフを握っていた。今の現場は混乱している。この状態で、小鉄は銃よりもナイフを好む。
「この方が拙者にはやはり馴染むでござるか……?」
生徒の首に、赤い線が引かれた。
背後からの忍びの奇襲に、生徒たちの陣形が崩れた。
●先陣
「久しぶりだな、ガキ共……俺の相手してくれや
『……ん、ここは通行止め、だよ?』
今まさに敵陣に攻め込もうとしている高校生たちに、遊夜は後ろから声をかける。
くすくすと笑うリーヤに警戒するように、高校生たちは身構えていた。前回の敗北の記憶から、どうやら今回の高校生達は色仕掛けでは籠絡できないようだ。
ふむ、賢いぞ。
遊夜はそう思いながら、高校生たちにナイフを向ける。
「ナイフが銃に敵うか!」
『ん……こっち』
リーヤが、生徒の横から姿を現す。正面の遊夜に意識を向けていた生徒たちは、彼女の存在を一瞬忘れていた。咄嗟に銃を盾にして、ナイフの赤を防ぐ。
「ふむ、流石に良い動きだな」
『……ん、でもまだ甘い、ね』
生徒たちの動きは所詮は、アスリートだ。
ナイフ戦を想定してはいない。
だが、それでもずば抜けて運動神経はいい高校生である。すぐにリーヤたちの動きにも目をならし、ひやひやするところに撃ちこんでくる。
『……やーん。……痛いのやー』
けだるげなリーヤの声に、遊夜は一瞬ぎょっとする。リーヤは艶っぽい演技をしながらも、顔には『有効だったらいざと言うときにまた使おう』と書かれていた。
「……変なこと覚え出した、止めるべきだろうか」
色々と悩みどころである。
『……ん、やぐら班が奪取成功したって』
通信機で仲間の言葉を聞きとったリーヤが、遊夜に伝える。敵の高校生は、後退を始めていた。武器がナイフのリーヤと夜遊では深追いは危険である。
「やぐら班と合流するのが堅実か」
『……ん、面白かった』
尻尾をふりふりとリーヤは随分とご機嫌だったが、ナイフ戦が楽しかったのがうろたえる高校生の反応が楽しいのかはちょっと聞けない遊夜であった。
●遊軍
「やぐらは取られたけど、手薄になっている場所がある。遊軍班は、そっちを優先に動いて」
リーダー黛より連絡を受けた遊軍班は、武器を抱えながら道なき道を歩き出す。敵は戦いに関しては玄人であるから、人数が少ないところから確実に責めなくては。
――旗の奪取はあくまで先陣役たちの仕事。
バタッ!
ものすごく恰好よく決めた男子生徒は、草に足を取られて転んだ。周囲にいた仲間たちは、その光景に笑いを噛みしめる。
「違う! これは、罠だ!! 草が結んである」
「チビだからって舐めないでください。戦場では油断したものから死ぬのです!」
高校生の前に現れたのは、紫 征四郎(aa0076)であった。大きな銃を抱えた彼女の登場に、高校生も油断なく銃を構える。征四朗は自分の体の小ささを生かしつつも、生徒たちの足元を狙っている。その光景を見ている少年がいた、オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)である。
『征四郎は……本格的だな』
オリヴィエはもうちょっと遊び感覚の強いゲームだと思っていが、皆本気で銃を振りまわしている。そのなかでも一番大人げないことを言っていたのは、自分たちのパートナーたちであろう。
「高校生たちが負けたら、プリプリ着て今期のEDのダンス踊ってもらうってどう?」
木霊・C・リュカ(aa0068)が冗談交じりで提案した罰ゲームを思い出し、オリヴィエはため息をつく。総勢二十人による魔法少女コスプレを想像するだけで、気が遠くなる思いである。そして、リュカとガルー・A・A(aa0076hero001)は絶対にそこに混ざる。それだけは、阻止しなくては。
「くっ、ここらへん罠だらけだぞ!」
『罠は大量にしかけたからな。……女に寄ってたかるのは、よくないと思うぞ』
征四郎という囮におびき寄せられた敵に向かって、オリヴィエは下降する。
今の今まで、彼は征四郎の近くの木の上で待機していた。
オリヴィエの足が地についた瞬間に、征四朗の近くにいた高校生に切りかかる。そして、流れるような動作でオリヴィエはナイフを投げた。
『ナイフを投げちゃいけないとは言ってない』
「ルールが如何に変わろうと、征四郎は負けないのです!」
手持ちのナイフを高校生にあてたオリヴィエは、征四郎の手を引いて一時撤退する。罠も奇襲も十分に役目を果たした。これ以上ここにいても自分たちは不利になるだろう。それを考えての戦術的撤退であった。高校生は持った通信機でリーダーの指示に事態を報告する。
「くそっ。三人もやられたぞ! 生き残りは、俺一人だ」
「おちつけ。君たちは、先陣役と合流して旗を狙ってくれ」
●やぐら
「よし、説明を聞いたな。今回はアレだ、戦闘訓練みたいなもんだ」
飯野雄二(aa0477)はレンタルした武器を確認する。玩具と言えばどもHOPEよりレンタルした品である。整備不良をおこすようなことはなかった。
『もちろんだよ、雄二。背中は任せてよ』
淡島時雨(aa0477hero001)は、銃にナイフを設置して即席の銃剣装備まで整えていた。これで接近戦に対応するつもりらしい。
「ああ、頼むぞ」
やる気十分な頼もしい相棒は、にやりと雄二を見て笑った。
『ちゃんと雄二の背中に全弾叩き込むからね』
「お前は、さっきの説明の何を聞いてたんだ」
やばい。
この相棒は、ゲームのルールをそっちのけで自分の背中に全弾を撃ち込む気だ。
「高校生は、まだやぐらをあきらめてないみたいだな」
銃を構えつつも、央は高校生の動向を観察していた。高い所から狙う撃てるリンカーチームが圧倒的な有利となっても、高校生やぐら班はあきらめる気配を見せない。約一名「絶対に、パンツを恨みをはらしてやるぅ!」と叫んでいる高校生もいるが。
『ほらほら、もっといくよー』
時雨は装備した銃で、そんな高校生たちをどんどんと追いつめていく。即席の銃剣装備を生かして接近戦をしたりとやりたい放題である。彼女のまわりだけゲームではなく、本当の戦闘をしているようだった。
「ドンパチは時雨に任せっきりなんだ、あんな真似俺にできるかっての!」
雄二はそう言いつつも、生徒の背後をとっていく。
「ぐはぁ!」
「あっ、パンツ少年悪いな」
後ろから襲った少年を、雄二はうっかり転ばせてしまった。さっきからパンツパンツと煩い少年だったから、うっかり力が入りすぎてしまったのだ。
「雄二、隙有り!」
「だから、俺を狙うな!! 今のちょっとかすっただろうが」
だが、時雨の攻撃を避けながらの攻防戦はとても効率が悪かった。応援しようとしても、ペイント弾の命中精度で不安が残る。
「場所によっては、上からでも狙いづらいか……」
「拙者と九操殿で、後ろから奇襲するでござるか?」
たしかに、それは有効な手の一つであろう。
だが、央たちはすでにその手を晒している。奇襲も何度も仕掛ければ、失敗しやすくなるのは自明の理だ。なにか、工夫をしなければ。
「マイヤ、もう一度下に降りて戦えるか。詩乃さんは、マイヤと時雨さんたちの援護をおねがいします」
央の言葉に、詩乃は銃を握りしめる。一人でいるとなにをやったいいかわからなくなる詩乃にとって、指示はとてもありがたかった。だが、戦うということは遊びでも少し怖い。マイヤが大丈夫と肩を押してくれなければ、決断できなかったかもしれない。
「私とエミナは、さっき派手にやったから小鉄さんと同じように警戒されてます。ここは詩乃さんたちに囮になってもらいましょう。それで、また後ろから奇襲します」
九操は、自慢の足をチェックしながら微笑んでいた。
『央は、あくまで私たちがやぐらの上にいるように演じてください』
「さぁ、第二ラウンドをはじめるでござるよ!」
●リーダー
「さて、勝ち誇りたい勘違いしたアホ共を全霊で叩き潰すとしようかね」
迷彩服を着込んだ“皮肉屋” マーシィ(aa4049)は、ナイフを持ちながら通信機に向かって喋る。
『大人気無いな、皮肉屋』
“不可思議な放浪者”(aa4049hero001)は、気に登りつつ双眼鏡で敵の状態を監視していた。それぞれが上手く動いて、敵の高校生たちの数は着実に減っている。リンカーチームで脱落となったのは詩乃を庇った蛍丸ぐらいか。あと、味方のはずの時雨の攻撃を受けている雄二も危ないらしい。
「そりゃあな。ルールで縛れば勝てるって、そのクソみてえな思考が心で負けてるって証左だ。そのくせに常勝だなんだとほざく、その心根が気に入らねぇ」
『だから、叩き潰す?』
木から木へと飛び移りながら、放浪者は戦場を駆ける。
「おうよ、骨の髄までな」
『嫌いな奴には本当キツいな、お前』
相手はまだ高校生だろ、と放浪者は付けくわえた。
木の上から戦場を冷静に見た放浪者は、それぞれのチームに今の状態を無線で伝える。
『いやぁ。地味な仕事だけれど、ナイフだけだと私は的だからね』
銃を持たせたら勝負にはならないだろう。
自分たちジャックポットが高校生を狙い撃って、それで終わってしまう。
「投擲もいけんだろ、お前」
それではそれでつまらないし、弾丸のほうが玉数も多い。敵が複数いたら、こちらが的になりかねない。
「高校生の動きは統率がとれてるな。これは誰かが指示を出している」
あくまで学生にしてはのレベルであるが、残念ながらそれはどこかで誰かが自分たちのように『戦場を見ている人間がいる』という証拠に他ならない。
「となると、場所はかなりかぎられてるな」
『俺のほうも探して見る。指示を出しているのは、おそらくはリーダーだろう』
戦場を駆ける皮肉谷は、木の上に登る少年を見つける。
双眼鏡に通信機、戦場を見ている自分たちとあまり似ている姿である。
「リーダーを見つけた。後ろから忍びよれる」
音もなくマーシィは、リーダーの少年黛の後ろについた。
ナイフを握りしめて、マーシィはリーダーの少年を突き刺そうとした。
「悪いけど、こっちも気がついてるよ!」
黛は振り返り、銃を構える。マーシィはその弾丸を避けたが、二人分の体重に耐えきれなくなった枝がぽきりと折れた。
二人は柔らかい腐葉土の上に落ちたがマーシィはすぐに起き上がり、高校生の首筋にナイフを突きつけた。
「よぉ、煙の同類(=馬鹿)――届いたぜ」
「悪いけど、煙って有害なんだよね」
だから火事のときは吸わないように気をつけて、と少年はマーシィに銃を突きつけた。
マーシィの服と黛の首に、それぞれ赤と青のペンキがついた。
●旗守り(高校生)
『これがサバゲーでござるか? まあ、修行の役に立たない事も無いでござるな』
高校生チームの旗守りに何度目かの奇襲を加えた宍影(aa1166hero001)は、そう呟いた。
「えー? 面白そうじゃないか?」
骸 麟(aa1166)は武器を構えながら、うきうきいていた。ゲームはゲームでも、テレビゲームなどとは別のわくわくがある。
『こう言ったものは奇襲がし易い様にわざと見通しが悪いフィールドにしたり、手段に制限が付いたりとこれに馴れると悪い癖が付いてしまうでござる。まあ、一般の方が考える隠密戦とは何かと言う所を把握する程度に留めておくべきですな』
宍影の言葉に、麟はため息をつく。
「……ま、固い事言うなって!」
ゲームは、楽しんだもの勝ちなのだ。
「でも、さすがに高校生たちもそろそろオレたちの動きになれた頃合いか」
旗を守っているのは、どうやら高校生チームの精鋭たちらしい。狙いも他の面々と比べるとえらく正確である。
『あっちも連絡手段を持っているなら、そろそろ応援を呼ぶ頃合いでござるな』
宍穴と麟の狙いは、その応援をひっかきまわすことだ。
『罠はたっぷりと仕掛けたでござるよ』
悪い大人の顔をして笑う宍影に、もしかして彼なりにゲームを十分に楽しんでいるのではないだろうか……と麟は考えた。
「来たよ」
麟は、藪をかき分けてやってくる高校生を発見すると武器を握りしめる。
「さぁ、攻撃開始!」
麟は武器を持って、高校生の前に現れる。旗守り役と合流した高校生(先陣+遊撃)は、敵の襲来に素早く対応した。
『こっちでござるよ!』
誘導されていた高校生たちの動きが止まる。宍影の仕込んでいた罠――結んだ草に足を取られたのであった。
「またかー!!」
高校生は叫んだ。
どうやら、どこかでも草を結んだ奴がいたらいし。
「うわっ」
「ぐはっ」
高校生の顔に枝が当たったり、物が落ちてきたりと地味な罠が高校背たちを襲う。ちなみに蜂の巣を落とすというアイデアもあったが、高校生相手に危険すぎるとストップがかかった。
「だいぶ冷静になったころだよね」
銃を構えた麟は、罠に翻弄された生徒たちに狙いを定めた。
●旗守り(リンカー)
『これを守ってれば良いの? 旗を守るってなんだか不思議ねぇ……』
稲穂は銃を構えつつも、旗を守る。感情もなく、動く事もない旗を守れと言われてもいまいちピンとこない。
「共鳴無しだと圧倒的不利だね。やだなー。負けるつもりなんてそうそう無いよ。なんせ汚い大人ですから!」
ふふふ、と旗の前でリュカが笑う。
『あいつら余程プリプリ衣装が着たいらしいな。大人気ない大人の怖さを見せてやろうぜ』
隣にいたガルーも、また笑う。
旗の周囲には小さいながら、落とし穴とちょっとした罠を設置させてもらった。
ガルーは語る。大人は高いプリプリの衣装を二十人分大人買いできる財力もあるのだ、と。あとで怒られることは必須だが。
「……ん、遊夜さんとリーヤちゃんたちが突破された」
通信機での連絡をもらったリュカが、ガルーに呼びかける。
『わかった。大人の怖さをみせてやろぜ』
そんな悪い大人たちを、高校生が物陰から狙っていた。
「敵は……?」
「三人。一人はナイフで、接近戦でくる」
「よし、一気に行くぞ」
生徒たちが茂みから飛び出そうとする。
「待て、そっちには!」
いつのまにか生徒たちの足には、赤い線が引かれていた。
「気をつけてね。そこにはお兄さんたち特製のコットンテープと水鉄砲地雷をしかけているから」
物音で生徒たちの方向を割りだしたリュカが、とても楽しそうに笑った。
『私もいるのよね』
稲穂は銃を、高校生に向けて銃を撃った。ほとんど狙いをつけないバラ撒き作戦であった。
『映画でやってた見様見真似も、侮れないでしょ? んー、か・い・か・ん』
かっこいい撃ち方を真似してみたのよ、と稲穂はご機嫌である。映画の真似ができて、ちょっと嬉しいらしい。
『さぁ、お前たちの今の敵はこっちだぜ』
ガルーは、生徒たちの前に立ちはだかる。
銃を構えた生徒たちは、その姿に一歩下がる。前回戦い、ガルーのことを生徒たちは少しだけ知っていた。
そして、勘違いしていた。
ガルーが映像を自分の体にあててしまったばっかりにあんな姿になったのだが、それはガルーが趣味であると勘違いしていたのだ。
そう――ブルマの戦士、と。
『お前さんがその弾を撃ち、着弾した。その瞬間に俺様が服を脱いだらどうなる?』
にやり、とガルーは笑った。
その笑みに、生徒たちは警戒を露わにする。
『いいか、よーく狙えよ? ちゃんと当てなければ、俺様はお前より早く服を脱ぐぜ』
冷静に聞いているものがいればツッコムであろう。
いや、よく考えようよ。
弾があたった時点で失格だし、服を脱いだ的で警察に通報される。
『この下に何を着てるか。プリプリかもしれないし、ブルマかもしれない。いや、何も着てないかもしれねぇ。……さあ、変態を世に放つ覚悟はできてるだろうなァ?』
ごくり、と生徒たちは唾を飲み込む。
稲穂が、ガルーに向かって数発撃った。
『あっ、あぶねー』
『ごめんなさい。……でも、服は来ていたほうが良いと思うのよ』
稲穂の目は、本気で露出狂の気ある仲間を心配している目であった。おそらく彼女はガルーのテレビに映ったら不味いものが現れる前に、ガルーを撃ち殺すであろう。無論、ペイント弾で。
ガルーは、両手をあげて首を振る。
『本気じゃない。脱ぐの本気じゃないから』と味方の稲穂に向かって無言で弁明していた。だが、稲穂には通じないらしく彼女の銃口はガルーに向いていた。
「だれかー! 110番に連絡しろ!!」
生徒の一人が、悲鳴を上げる。
『待って! まだ脱いでねぇだろうが!!』
ガルーは助けを求めて、リュカの方を見た。
リュカは、必死に声を殺して笑いをこらえていた。その姿はどうみても、犯罪者として通報されそうな友人を庇ってくれそうになかった。
『リュカ――!!』
このゲームは麟が旗をとったことによって、リンカーチームの勝ちとなった。しかし、その日の警察には「あと数秒で脱ぐ変態が現れました!」という謎の通報があったという。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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