本部
闇の山で蜘蛛の姫は駆ける
- 形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 10人 / 4~10人
- 英雄
- 10人 / 0~10人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/05/18 09:00
- 完成予定
- 2017/05/27 09:00
掲示板
-
ベンド救出相談会
最終発言2017/05/18 03:12:52 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/05/14 00:00:12
オープニング
●闇夜
「やれやれ……一仕事終えたのに酒も飲めんとは……」
夜も深くなった時間に山道を走る一台の車。その運転席でハンドルを握りながら二ノ宮利勝はそうぼやいた。
彼はH.O.P.E.に所属するベテランエージェントだ。つい先ほど一つの事件を解決し、その後処理も終えたところである。
そこで助けた住民達からぜひともお礼をと宴会に誘われたが、見ての通り彼は自家用車である。
このような山奥に来るようなタクシーも無し。彼は断腸の思いでその誘いを断り、こうして帰路に着いていた。
「帰りに高めの日本酒でも買って帰るか……」
「好きだね。そこまで酒にこだわるのも俺にはよくわからんが」
助手席で背もたれを倒して座っている男がフードで目元を隠しながら呟く。今にも寝ようという体勢である。
見た目は二十台中盤だろうか。既に初老を超えた利勝の友人としては若すぎる男である。
「ふん、酒は男の嗜みだ。お前も覚えたらどうだ」
「別に飲めないわけじゃないがね。好きじゃ無いだけで」
彼はベンド タグハーツ。利勝の相棒たる英雄である。
「どうせ飲まないんならお前に車の運転を覚えてほしいんだがな」
「嫌だよ。何で爺さんのアッシーをやらなきゃいけないんだ。女にキープされるよりなお酷い」
「運転できる方が何かと便利だろう」
「別に。元の世界に比べればこっちは便利すぎる。バスに電車にタクシー。歩く必要すらない」
ベンドの感覚では『歩く』というのは数十キロ、場合によっては百キロ以上に渡って行うものだ。
この世界ではどこかに行くにしてもせいぜい数キロ。彼にとっては『歩いて』すらいない。
「お前もこっちにきて十年だろう。もっとこっちの感覚にあわせろ」
「合わせてるさ。こっちにきて『魔法』も使えるようになった」
言ってポケットから出したスマートフォンを振ってみせる。
「爺さんこそ、そろそろガラケーから変えた方がいいんじゃないか? 使い方なら教えてやるぞ」
「ぐぬぅ……」
思わぬ反撃に苦虫を噛みしめたような顔で黙り込む利勝。
この英雄はいつまでたっても口が減らない。
「ん?」
と、そこで利勝の視線の先に妙なものをが映る。
「事故か?」
路肩に頭から突っ込むように止めてある車。尋常な様子ではない。
「ふむ……」
利勝はその車を少し過ぎたところで停車する。
「怪我人がいないか見てくる」
「……念の為、共鳴しておいた方がいいんじゃないか?」
「お前は心配性だな。大丈夫だ、ちょっと見てくるだけだ」
ベンドの言葉に軽く手を振り、車を降りる利勝。ベンドはそれ以上は何も言わなかったが、車で待つ事はせず着いていく事にした。
「おーい、大丈夫ですかー!」
大きな声で呼びかけながら車に近付く利勝とその少し後ろを歩くベンド。
――と、利勝の言葉に応じるように止まっていた車の後部座席の扉が開いた。
「子供?」
それは中学生くらいの容姿の女の子だった。
●誰そ彼
それよりおおよそ一時間ほど前。
つい先ほど従魔の群れに襲われ、そしてH.O.P.E.のエージェントに助けられた集落で一人の男の子が外を歩いていた。
「おう、佐々木んところの坊主じゃねぇか。どうしたこんなところで」
「あ、田辺さん、こんばんは」
妙にきょろきょろと辺りを見渡しながら歩く少年に老人が声を掛ける。
「こんな夜にうろついてたらいかんぞ。あんな事もあったばかりだしな」
「うん。……ねえ、田辺さん。女の子見なかった?」
「女の子?」
言われてふと思い出す。そういえば朝にもそんな話を聞いた。佐々木少年が女の子を探してると。
「お前なぁ。女の子の飢えるのもわかるが、こんな夜に探してもどうにもならんべ」
「いや、そうじゃなくてさ、いたんだよ」
呆れ顔で言った言葉に佐々木少年は真面目な顔で返す。
「公民館にいたんだ。最近たまに見かけるんだよ、あの子」
「避難した中にいたって事か? あんときはそれどころじゃなかったからなぁ」
「後で話してみようと思ったけど、落ち着いてから探してもどこにもいないんだ」
「うーん、ここの住民なら知ってるはずだが……まあ、どっちにしろ明日にせい」
「うん……」
老人に言われて少年は素直に頷く。
今は宵闇。
ここから先は闇が深くなる時間だ。
山の中は、特に。
●最期の意地
「おい、爺さん。やっぱり共鳴を――」
不穏さな空気を感じ取ったベンドが無理矢理にでも共鳴しようと利勝の幻想蝶に手を伸ばす。
しかし、それを遮るように正面の少女から白い槍が突き出される。
「なにっ!」
「――!」
少女の手から真っすぐ伸びたそれは、右と左で正確に利勝とベンドを狙っていた。
「くそっ!」
ベンドがそれを躱せたのは一種の嗅覚――危機的状況であるという事にいち早く気付けたのと、彼が比較的身体能力の高い英雄だったからだ。
「爺さん!」
しかし、利勝はそうはいかなかった。ベンドに声を掛けられ、そちらに振り向かけていた状況では避けようもない。
「ぬぅぅぅ……!」
白い槍に見えたそれは『糸』だった。いくつにも束ねられ、幹のように太く頑丈になった蜘蛛の糸。それが利勝の体にぐるりと一周巻き付いている。
辛うじて右手は無事だったが、左手および両足が完全に拘束されていた。
「……まさか避けられるとは」
少女が言いながら利勝を捉えた糸を引く。
「うぉ!」
それで利勝の体は容易に宙に舞った。体を拘束され、受け身を取る事も出来ず、地面に激突する。
「爺さん!」
「来るな!」
思わず走りかけたベンドを利勝が制止する。
「ここまで拘束されてはもう無理だ! 逃げろ、ベンド! お前の足ならまだ逃げられる!」
「――っ!」
そんなことはベンドも分かっている。しかし、はい分かりましたと従えるほど、十年という時は短くなかった。
「逃げられるのは困るのですよ。母様の栄養は多い方がいいですから」
その隙にベンドに跳びかかろうとした愚神。
「行かさん……!」
その脚に利勝がしがみ付く。
愚神の気まぐれか、利勝の最後の意地か。その必死の行動は愚神の動きを一瞬押し留めた。
「……親父だと思っていた。――ありがとう」
迷いを振り切り、最低限の別れの言葉と共にベンドは後ろに跳躍する。
「邪魔です」
愚神の背から生えた脚が利勝の体を貫く。手が離れる。
「ぐはっ!」
急いで視線を戻すが、ベンドの姿は既にガードレールの向こうに消えていた。
「逃がしはしませんよ。レミノーラ母様の為に……」
ガードレール越しに崖の下を見下ろし呟く。
彼女の背後からいくつかの大きな影が這い出して来る。
それは彼女が使役する蜘蛛の従魔達であった。
●命綱
「ん?」
従魔の起こした事件の事務処理のために残業をしていた奥山俊夫の元に珍しい人物から通話が届く。
画面の表示はベンド タグハーツ。
その通話は彼の命を繋ぐ唯一の命綱だった。
解説
●目的
ベンド タグハーツの救出
●敵
※PL情報
・デグリオ級愚神「ベラ」 ×1
人型だが、背中から二対の虫の脚と腹を生やす、蜘蛛型愚神。
手から強力な粘着を持つ糸を放ち拘束してくる。また、脚に強力な毒を持っているようである。
比較的冷静で賢く、また森の中の移動力はかなり速い。
彼女の目的はベンドの捕食であり、現段階ではH.O.P.E.と正面から事を構えるつもりはない。
※PC情報
・ミーレス級従魔「黒蜘蛛」 ×?
彼女の使役する蜘蛛型従魔。糸を放ち【劣化(回避)】を付与してくる。
以前の事件に現れた従魔と同一で、事前に奥山が情報をくれる。
●状況
場所は深夜の山中。
ベンドの場所はGPSによりおおよその場所は探知可能。彼は見つからない様に位置を変えながら潜伏している。
こちらから彼のスマートフォンに連絡を入れることは可能だが、深夜の山中で光るスマートフォンを取り出すのは相応に危険行為である。
敵の規模や位置が不明な為、ヘリコプター等空からの接近は許可が出ない(墜落の可能性がある為)。
エージェント達の到着はおおよそ15分後、山のふもとである。
マスターより
『蜘蛛』関連シナリオになります。
過去のシナリオに関してはマスター告知欄をご確認ください。
もちろん、以前のシナリオに参加していない方でも問題なく参加可能ですので、どしどしご参加ください。
関連NPC
リプレイ公開中 納品日時 2017/07/11 01:51
参加者
掲示板
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ベンド救出相談会
最終発言2017/05/18 03:12:52 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/05/14 00:00:12