本部

【神月】連動シナリオ

【神月】電撃作戦、最奥に眠る秘宝

鳴海

形態
イベント
難易度
普通
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
44人 / 1~50人
英雄
44人 / 0~50人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2016/06/11 21:01

掲示板

オープニング

● 緊急指令アルファチーム。
 司令官アンドレイはすぐに出動可能なエージェントを講堂に集めプロジェクターのスイッチを入れた。
「前回の激戦冷めやらんうちに集めてしまってすまない。時は一刻を争うため君たちを招集させてもらった」
 アンドレイが告げると講堂が暗くなる、そして画面には無数の写真、そして文献資料が表示されている、それらは全て大英図書を探索した末、得られた情報のコピーであり、今回の戦いの舞台を指し示す重要な情報である。
「今回の任務はエジプトの砂漠地帯、そこにあるピラミッドが転座する地域での戦闘になる、強大なドロップゾーンが展開されているため今まで未調査のままだったが、この度の調査によってここに短剣があることが判明した」
 短剣はコクマー。知恵をつかさどる短剣であり。能力は未知数だという。
「問題は同時この図書館の重要資料が多数持ち出されてしまったことだ。おそらく相手も我々と同じ結論にたどり着いている可能性が高い」
 もし先を越されてしまえば短剣が相手の手に渡る、そうなれば事態がどう転ぶか分かったものではない。
 その焦りから上層部は電撃作戦を提案。現在に至るわけだ。

「ただ、斥候部隊からの報告によれば、ゾーン内には大量の従魔が確認される地獄絵図だということだ、おそらくこのゾーンを管理しているのはトリブヌス級。その中に突っ込んでいくのだから無策では厳しいだろう」
 作戦内容については現場で戦うリンカーたちに任されることとなった。
 必要な装備についてはあらかじめ申請するようにとのこと。
 車両や通信機と言ったものであれば用意可能とのことだった。
「さらに今回は同時にいくつもの作戦を展開する必要がある。最低限必要なのは」

1、砂漠上で従魔、愚神を相手に戦う、陽動班
2、ピラミッド内部に侵入し短剣を探す 探索班

「直ちに部隊を編成し、目的地に向かえ。現地へはヘリやティルトローター機で輸送する。その後ヘリ等は砂漠上で待機、君たちの帰りを待つことになる。何か質問は? なければ班分けに移ろう」
 こうして作戦会議を終え、班分けの時間となった。


●ピラミッド構造
 構造が記された書物の一番最初にはこう記されている。

『知恵なきもの先に進んではならない。セクメトの目覚めを妨げる恐れがある』

 次いでヒエログラフの写真がのっている、訳すとこうである。

『知恵の神は一柱のみである』

 次いでピラミッド内部のフロアについての説明が乗っていた。。
 ここに描かれているのは、鍵の間というものを三つ解放すると、ピラミッド地下への階段が開かれるという内容である、
 ちなみにこのピラミッド迷路化している上に、鍵の間と階段部屋は離れているので迷子対策をしなければ厳しいかもしれない。
 ちなみにピラミッド内は当然明りはなく、リンカーたちは何らかの光源に頼り探索することになる。


1.『宝玉の間』 鉄、銀、銀、ルビー、サファイア、エメラルド。この世界のメジャーな鉱石や宝石が棚にずらっと並べられた部屋、この中央に台座があり、そこに文字が書かれている。ヒエログラフだが、訳すと。
『私をここに』と書いてある。

2、『知識の間』
『私を讃えよ』と書かれており、石のふみ机が置かれている。大量に巻物が陳列されており、その中から特定の巻物を探すようだ。
 本一冊一冊には著者名が書かれている。
 
3 何もないフロア。
 天井には月が大きく描かれている以外に特に何もない。部屋の足元には大きく。
『私の支配を終わらせよ』と書かれている。

 階段を下りると試練の間が待っているらしい。
 内容は下記の通り。


● 部屋が三つある間

 『王はもっとも罪なき者を受け入れる。
 罪なき自信のあるもののみ入れ』
 と書かれている。

 そのフロアに三つの小部屋があり、それぞれ中に入ることができる
 ここは入ったものが罪人であるか判別するための部屋で。小部屋の左右には壁画がある。
 この壁画はその小部屋の左右にある部屋に対応しており、左右の小部屋に誰かが入れば反応して色が灯る。
 部屋に入ったものが罪人が入った場合、赤に染まり、罪なき者だった場合白く染まる。
 ただし自分の色を確認する術はない。

 電波妨害がされていて通信機などでも連絡を取ることはできない。

 部屋の中央にある石碑を踏めば、この部屋を出ることが出来はするが、自分が罪人であった場合は罰が召喚されるという。
 
 罪人はこの部屋で罪が許されるまで、部屋の隅にある鋭い刃で自分を突き刺さなくてはいけないという。
 ただし、この三つのフロアすべての壁画が赤く染まることはない。
 罪を比較し、もっとも罪の軽いものから王は会うつもりであるためだ。


● 墓所に眠る影
 そこはおりだった、対数の霊石の柱と魔方陣によって、結界が生成されており、中心に佇む黒い何かは動けないようだった。
 しかし時折吐く息は赤く、熱を帯び。その瞳には常に憎悪と敵意がぎらついている。
 彼女はまっているのだ、愚かなもの達が自分を解放することを。
「迷宮のトラップに引っかかってしまったんだね。かわいそうに。でもいまその封印を解いてあげることはできない」
 そして彼女は期待しているのだ。解放された後にそこにいるアリどもの血で、この砂漠を染め上げられることを。
「けど安心して、H.O.P.E.は無知でバカだから、君をすぐに開放するよ」
 それを眺めてほくそ笑む少年が独り、立っていた。
「すぐに君を自由にしてあげるよ、存分に殺せばいいよH.O.P.E.を」

解説

目標 短剣の奪取
 今回は従魔、愚神、セラエノの妨害を掻い潜り、短剣を奪取することが目的です。

 今回掘り出された情報は『時鳥MS』さんの『【神月】大英図書館、蔵書に隠された秘密』にてえられた情報になります。
 そちらもよろしければ確認をお願いします。

従魔 マミー 
 砂の下から出てくるミイラ、体長二メートル程度。頭の中身が空っぽなのでドジを踏みやすい。
 包帯を伸ばしての捕獲や、手にもった短刀で切り付けてくる。
 やけに耐久力が高い。
 ピラミッドの外は倒した数だけ沸いてくる。初期配置20体
 ピラミッド内部には20体程度

従魔 怒りのオベリスク×30体
 要は石碑ですが、手足が生えて襲いかかってきます。基本物理攻撃ですが、対象に抱き着き自爆する能力があります。
 この自爆であればリンカーはともかく、霊力技術を介さない物体はひとたまりもないでしょう。
 こちらはピラミッド外にのみ登場
 
ケントゥリオ級愚神 セクメト
 死をつかさどる愚神。その息は病をもたらし、その爪はあまたの敵を切り割くと言われている。体長は人間とさして変わらない程度だが、その動きは素早く近接戦闘を強いられる迷宮内では本来の実力以上に手ごわく感じられるだろう。

下記PL情報
セラエノ構成員 十人前後
 短剣を回収するために差し向けられた工作員。シャドウルーカ―が多く、直接戦闘よりは搦め手や奇襲、逃走を得意とする装備を持つ。
 また、彼等の行動優先度は下記の通り。
1 短剣の奪取
2 H.O.P.E.リンカーへの攻撃
3 H.O.P.E.リンカーの足止め。
 なので、トラップなどではぐれたリンカーから優先的に狙ってくることでしょう

ちなみに、このドロップゾーンを管理するトリブヌス級はピラミッドから遠くに位置しているので、ティルトローター機での着陸、離脱に成功すれば戦う危険はほぼありません。

リプレイ


●プロローグ

「ママ、砂漠ってどんな所?」
 機内にあどけない、下っ足らずな声が響いた。
「そうね……砂場の大きいのみたいね」
 そんな少女の声に答えるのは穏やかな女性の声。
 その声にはこれから戦場に向かう緊張感など微塵も漂っていない。
「楽しそう! 依頼終わったらお城作りたいな!」
「まあ、真白ったらまだまだ子供ね」
 そう穏やかに微笑むのは『シャルボヌー・クルール(aa3601hero001 )』
 彼女はその笑顔の下に戦場への不安を押し隠し。『真白・クルール( aa3601 )』への気遣いを見せる。
 この子だけは絶対に守ろう。そんな決意を胸に抱いて。窓の外を見つめた。
 そこには見慣れない光景が広がっている。
 地平線の先まで続く黄砂。陰炎すらたつほどに熱された砂漠は果てに至るまで隆起し、この世界はすべて砂なのではないかとも錯覚させる凄みを持つ。
 しかしその予想を裏切るように地平線の向こうにピラミッドが出現、それがリンカーたちには、悪の住まう巨城のように見えた。
 直後機内アナウンスが聞こえ、ヘリが着陸態勢に入ったことをリンカー全員が知る。 
 リンカーたちは武装の最終確認を行うことにした。彼らに許された最後の準備時間である。
 機内に適度な緊張感と、武装をいじる金属がこすれる音、作戦の最終打ち合わせをするひそめた声。それだけで満たされる中。
 『努々 キミカ( aa0002 )』は火之迦具鎚を握り振って見せる。その手になじむ感じを確かめ。そして次は失敗しない、そう誓いを新たにする。
 彼女をはじめとした、大英図書館の資料集めを担当していたもの達の胸の内は複雑である。
 セラエノに一杯喰わされた屈辱をねじ伏せ、戦場を見やった。
 あそこに、奴らもいるかもしれない。
 そう思うといてもたってもいられなくなる。
「英雄の風上にも置けぬ醜態……招いたこの状況……なれば、己の手で取り返さねば……」
『ネイク・ベイオウーフ(aa0002hero001 )』がそう言い。
「えぇ、何とかしなくちゃ……短剣をセラエノに取られたら、大変な事になるかも……」
 キミカがそう答えた。
 二人は目を閉じ共鳴し、仮面の下に焦燥を隠す。
 対してその表情に真の余裕を浮かべるものもいる。
「とにかく、戦わない事には……そこに敵があり、目的がある限り」
 そう謳うのは『羽柴 愛( aa0302 )』だ。
「探求心無くして、人は成長しない」
『Nikolaus Wiren(aa0302hero001 )』はその言葉に柔らかく微笑んで見せた。
「それは確かに大切な物だ。だが、目的の為に誰かを犠牲にするのは間違えている」
「今日のちかちゃんは珍しく饒舌ね?」
 Nikolausがが問いかける。
「理想の先に待つのが幸福とは限らないのにね。私達が止めて気が付かせてあげないと」
 思うところがあるのだろう、目が細められ、そして二人は背中合わせに寄り添い。そして目をつむる。
 リンク。
 二人を眩い光が包んだ。
 それに習うように各々共鳴を進めていく。
 そしてヘリはピラミッド周囲を旋回、着陸する場所の選定を始めた。
 今が好機とばかりに『コルト スティルツ( aa1741 )』はあわてて相棒を蹴り起こす。機内で力尽きた『アルゴス(aa1741hero001 )』の尻を叩いて言った。
「暑さでへばってんじゃねーよ、起きろアルゴス」
「ギギ、ギチギチ」
「まぁまぁ」
 そう止めるのは『唐沢 九繰( aa1379 ) 』だ。彼女たちは今回彼女たちはペアで作戦に臨む。ちなみに九繰はすでに『エミナ・トライアルフォー(aa1379hero001 )』と共鳴済み。
「それより、本当にやるのですか?」
 コルトは華麗な猫かぶりを発揮し、愛らしい表情を浮かべ九繰に向き直る。
「当然です、 ちょっと片してきますね!」
「うーん、危ないのでやめておいた方がいいと思うのですが。電撃作戦にしてもやりすぎかと……」
 そんな九繰の無茶を止めるコルト、そして二人の話が聞こえていたのか、とある男が少女たちに話しかけてきた。
「……面白そうな、話をしています、ね。……その話、聞かせてもらってもいいですか?」


●第一章 電撃作戦。始動。

 ピラミッド上空を通過するヘリ。その暴力的なまでのプロペラ音に反応し砂漠上でうねるミイラたち。
 彼等は声にならない呻きを上げて、届くはずのない腕をヘリへと伸ばす。
 その怨嗟の声はこの世に未練を残して死んでしまった死人そのもの。
 まるで生者が憎いとばかりにわめきたてる彼等だったが、その祈りが通じたのか。ヘリのハッチがあいていく。
 そして、何の前触れもなく、何かが投下された。
 それは物資などではなく。人。少女だ。
「飛び降りやがった……はぁ俺達も行くぞ」
「ギチ」
 コルトは呆れたようにつぶやき、その少女のあとを追う。

「エジプトでも上空の風は冷たいですね」

 その飛び降りた少女はというと、やけに爽やかな表情を浮かべながら風を楽しんでいる。
 バタバタとはためく戦闘装束、気圧の変化で鼓膜に負荷がかかる。
 普通の人間であれば墜落する恐怖で身をすくめたくもなるだろうが。共鳴しているリンカーが落下程度では死なないことは証明済み。だから。
 九繰は空を舞うことに何の不安も抱いていない。
 地を満たす亡者どもの中心に降り立つこともまた、何の不安も。
「武器を!」
 九繰は精神を統一、目を開き、幻想蝶を構える。
 空中に展開される武装、アステリオス。モアストライク
 そして彼女が選んだのはアステリオスだった。
 少女が振るうには大きすぎる大斧を右手に掴み、力を込める。
「はああああああああ!」
 気合一閃、アステリオスを軸に体を引き寄せ、全身の筋肉で回転力を生み出す。 まるで丸鋸のように回転し始めた九繰は、マミーたち事、砂漠に爪痕を作った。
 突如砂漠全体が揺れるような轟音。巻き上げられた砂はあたり一面を覆い、指先すら見えない砂嵐となる。
「よし、成功です!」
 直撃で吹き飛ばされたマミーも多数いたが、他のマミーも津波のように押し流されてくる砂で前後不覚に陥る。
「くっ! みえねぇ」
 その光景を上空から見つめていたコルトは歯噛みする。
 幸いマミーは動きは早くない。黄砂が舞いあがる前の光景を写真のように脳裏にやきつけ。それを頼りにフリーガーを乱射すれば当たるだろう。
 そうトリガーを引くとありったけのロケット弾が発射され、砂漠の地形を変えていく。
 そしてコルトが着地、同時に砂嵐が収まると、二人は背中合わせに周囲を警戒。
 案の定怒りをあらわにするマミーたち、その視線は二人に注がれている。
 二人はお互い顔を見合わせてにやりと笑うと戦場を駆ける。
 コルトは銃を構えたまま開脚、ほぼ砂漠に寝そべる形となり、その頭上を通過するアステリオス。
 その刃がマミーの腕を切りとばし。左右の敵をコルトが射抜いた。
 背後に迫る敵に九繰は右方向から回し蹴り。足を払い滞空するマミーを右斜め下から斧で叩き切った。
「くっ」
 苦悶の声を漏らすコルト、見れば砂漠下から伸びた腕が、彼女の足を捕まえている。
「こういうことか」
 
「……二人とも、気をつけて! はぁぁあ…ッ!」

 その声に上空を見やる二人は、一瞬空に何があるか分からなかった。
 くびをかしげる二人。
「二つ目の太陽?」
 二人の頭上に燃え盛る熱源反応。それは太陽にも確かに見える。
 しかし違う、その色は燃立つような赤の色。
 真上にある、ほぼ白色の太陽光とはまるで違う。
 そして二人はすぐにその正体を察する。
 あれは、あれは。

 暁隊長『煤原 燃衣( aa2271 ) 』である。

「……おおおおおおおお!」
――体制制御は両手の爆風でやれ、慣性を計算しろ
「……そんな、難しいことを言われても」
『ネイ=カースド(aa2271hero001 )』の言葉に苦笑いを浮かべる燃衣。
「こうですか!?」
 燃衣は両手に霊力を集中。燃え上がる【鬼心劫炎拳『空也』】
 それがさく裂することによって体制を制御、および加速。
 見えない壁でもあるかのように空中で方向を転換。着陸地点誤差修正。そして。
 陰炎を纏い、彼は隕石のように加速。ピラミッド出入り口付近を穿つように着地した。
 その姿はさながら燃え尽きることのないシューティングスターと言ったところ。 その影響で先ほどの比ではない砂嵐が起きる。
――これではまだ小さいな……
「この戦……初動です! 初動で『形』を作れば勝てるッ!」
 直後だった、燃衣の耳にかけられたインカムが震える。
「こちら春翔。隊長大丈夫か」
『一ノ瀬 春翔( aa3715 )』からの通信である。
「……、ええ、無事ですよ」
 周囲に広がる砂漠、そして大量のマミーを見つめながら燃衣はいう。
「それはよかった」
 むちゃくちゃ言い出した隊長が空中でバラバラになっていないか心配だったが、燃衣の返事で春翔は安堵のため息を漏らしていた。
「こっちは無事到着したぜ」
 燃衣が空を見上げれば鷹が飛んでいる。
 『佐藤 咲雪( aa0040 ) 』そして『迫間 央( aa1445 ) 』の鷹の目だ。周辺索敵を終え、すぐに応援の部隊が駆け付ける手はずとなっている。
「……作戦開始ですね」
 群がる死者の咆哮が砂漠の隅々まで轟いた。

   *   *

「……。あつい」
 一方そのころ、輸送ヘリの外で周囲を警戒する咲雪。
――リンクしてても暑いの?
『アリス(aa0040hero001 )』が思わず問いかけた。リンクすれば、寒さや暑さで身体に影響を受けることはない。
 まぁ霊力が通った凍結や燃焼は命の危険をもたらすが、砂漠を吹く風が霊力を纏っているはずもない。
「……気分的に」
 咲雪はけだるげに答えた。彼女はバックアップ役。常に周辺状況をチームに伝えマップを更新していく係りだった。
――では先行し、かく乱し。部隊が突入できるように隊列に穴をあけましょう
 そう口にするのは央の相方『マイヤ サーア(aa1445hero001 )』
 その言葉を皮切りに、輸送飛行機に搭載されたバイクやジープが唸りを上げる。
 砂漠使用に改修されており、誤作動もないことは確認済み。
 ここまでは手はず通り、作戦通りだ。
「先行する。あとは安全を確認しながらついてきてくれ」
 数台のバイク、そして央が一足早く戦場へ駆けていく。潜伏しマミーを掻い潜るつもりだった。
 そして物資輸送用の飛行機が飛び去ったことを確認した後。
 作戦は第二段階へと進む。
 第二段階とは、すなわち突破。
 ここでの鍵を握るのは。新編成された新たな小隊【オルカ】である。
 『麻生 遊夜( aa0452 )』は愛銃立てかけジープのエンジンを入れた。
「全く、暑いってのに忙しいったらねぇな」
「……ん、暑い」
『ユフォアリーヤ(aa0452hero001 )』が同意する。胸元をパタパタとやるものだから男性陣は目のやり場に困ってしまう。
 そしてジープが走り出すと。愛やそのほかの面子が乗り込んだバイクが追従し陣形を組んだ。。
 そしてジープの後部座席に乗っていた『ゼノビア オルコット( aa0626 )』つまりこの部隊の隊長は通達を端末越しに、メンバー全員に通達を流していく。
『レティシア ブランシェ(aa0626hero001 )』はその光景を黙って見ていた。少しの不安はあれど、自分が口を出す段階ではない。そう判断した。
《みなさん、準備はいいです? 弾丸の備蓄はジープにあります、救援物資をまずピラミッド前に届けるところから始めましょう、麻生さんのこの車を中心に陣形を組んで遊撃するです。先行した三人を回収できないと心配ですから、なるべく最短ルートで行きます》
「了解しました」
そう同じくジープの後部に乗り込んでいた『鬼灯 佐千子( aa2526 )』は答える。彼女もすでに『リタ(aa2526hero001 )』と共鳴済み
「あのお嬢ちゃんたちは心配だが、燃衣は大丈夫だろ。殺しても死ぬ奴じゃない」
『カイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001 )』はそう不敵な笑みをこぼす。
「た、確かに」
『御童 紗希( aa0339 )』が苦笑いを返しす。
《信頼の証ですね》
「あ、みなさん稜さんからお知らせです、これから敵の密集地帯に入るそうです」
 紗希が言う。
「やっと引き金が引ける」
 そう佐千子はにやりと笑みをこぼした。
 そんな大騒ぎなオルカの面々を見やり、遊夜は穏やかな笑みを浮かべる。
「それじゃ初陣と行こうか!」
――……ん、大騒ぎ、だね。
 直後戦場は一変した。まず待ち構えていたかのように地面から数体のマミーが出現。
 ジープの前に立ちはだかる。それを避けるために遊夜はハンドルを切った。
『古賀 佐助( aa2087 ) 』は両足で踏ん張り愛銃を手にマミーを狙う。
「そんじゃま、突入班の為の露払いと行きますか」
――……ん……敵の、足止め……
『リア=サイレンス(aa2087hero001 )』がポツリポツリとつぶやく。 
 それに合わせて佐助は的確にマミーの足を弾き飛ばしていく。
 その動きをサポートするように両脇のバイクが展開。『花邑 咲( aa2346 )』もそのバイク部隊の一人だ。
「院長さん、あの敵は私が倒します、直進してください」
「おう、任せた」
 その宣言通り咲の銃弾はマミーを車の直線上からはじき出すことに成功する。
――お見事です
 そう『ブラッドリー クォーツ(aa2346hero001 )』は言った。
 しかし以外にも早くマミーは素早く体制を立て直してジープに接近。
 わずかなでっぱりを利用してジープに張り付く。
 間近で見る腐った死体に女性陣はどんびいたことだろう、腐った顔が窓にこれでもかと押し付けられたのだ。よって窓を開けて打ち落とすのもためらわれる。
「大丈夫か、お前たち」
 そこに駆けつけてきたのは『防人 正護( aa2336 )』砂漠でバイクを駆る姿はまさにライダーと呼ぶにふさわしい
――佐助! だいじょぶ? 今落すから、ジーチャンが。
『古賀 菖蒲(旧姓:サキモリ(aa2336hero001 )』が言うように正護はパンチ一発マミーを叩き落とすことに成功する。
《敵は十分に引きつけてください、私たちに注意を向けさせて。そして……》
 周囲を走るゾンビどもに銃口を向ける。そしてゼノビアの合図にて、一斉にオルカメンバーは射撃。
「文字通りの、足手纏いにしてあげるよ!」 
 そう佐助は敵の機動力を奪っていき後続が続く道を作る。
「ハッ、探索班の邪魔はさせんぜ」
「……ん、遊んであげる」
 遊夜も遊夜で、器用にハンドルを片手操作。開いた手でトリガーを絞り、ジープを追うミイラを無力化していく。
「あ、麻生さん前!」
 佐千子が叫ぶとゼノビアは素早く車内上部のルーフを開き、前方に展開されたマミーを狙う。その数五体
「古賀さん!」
 佐千子と佐助は同じく窓から身を乗り出して前方の敵へと狙いを定めた。
 そして一斉射。タイミングを合わせたトリオがマミーたちの足や腕をえぐり飛ばし。たまらず体制の崩れたマミーたちは砂にめり込むように倒れる。
「捕まってろよ!」
 そう遊夜はギアを操作。甲高くなるエンジン音。アクセルをめい一杯踏み込んでマミーの壁を突破する。
 第一防衛ライン突破と言ったところだろうか。直後全員のインカムをききなれた声が震わせた。
「此方、オルカ所属の天城稜」
「天城さん!」
 咲は驚きの声を上げた。通信相手は『天城 稜( aa0314 )』だ
「戦況が更新されたから共有するよ」
――連絡が遅れてごめんなさい。
 そう『リリア フォーゲル(aa0314hero001 )』が言う。
「一人で先行したから心配していました」
「意外とマミーに突っ込まなければ何とかなるものだよ」
「とりあえず無事が確認できてよかった」
 佐千子が言う。
「引き続き僕は、戦域管制と偵察をさせてもらうよ、皆よろしくね?」
 そう稜が通信をきると、戦場を眺め観た。
「エジプトのピラミッドで戦闘とか……アレだね? 映画ト○ンスフォーマーの2の最後の戦闘だよねぇ……どう思う?」
――そうやって、変なフラグを建てないで下さい……そもそも私達は偵察役だからあの映画みたいに囲まれはしないですよ?
 そう楽しそうな二人の通信を遮り、カイは言う。
――で、マミーの数が一気に減ったが、それに関して連絡してきたんじゃねぇのか?
「見たところ、目の前に石板や石柱みたいなものがごろごろ転がっているが」
 正護が目を凝らして言う。
「そう、それについて報告、煤原さんたちのところまでたどり着くための最短ルートを案内するね。このルート上にはマミーが7体、オベリスクが……言い辛いなぁ、爆弾岩が20体居るよ」
 それがムクリと起き上がり、小さな手足で立ったのが見えた。
 そしてオベリスクたちは奇声を上げながらオルカメンバーたちに突貫してくる。
「方向はそちらから十二時方向で時速20kmで接近中。接敵までざっと30秒程度。警戒を……」
 オルカ舞台に殺到するオベリスクたち。そしてオルカメンバーが敵を引きつけているおかげで包囲網に穴が開いた。 
 そこを抜けて暁のメンバー、そして探索班のメンバーはピラミッド入口へと到達する。
 そこでは九繰、コルト。そして燃衣が待ち構えていた。春翔が燃衣が掘削中の堀を見て言う。
「ずいぶん掘ったな」
「……これなら、リンカーは、越えられてもマミーは……越えられません。でも少し長さが足りませんね」
「では、私も穴を掘るのを手伝いましょう、それとも周辺警戒をした方がいいですか」
 そうメガネを持ち上げ『アガサ( aa3950 ) 』は言った、彼女は妹の紹介により急遽助っ人として暁の作戦に参加しているのであった。
「では……。アガサさんは南の方に掘っていってください。僕は北の方に」
 その指示に頷くとアガサは堀の底までジャンプ。そしてライヴスショットの爆発を利用し堀を掘っていく。
「マミーはこれでいいとして。あとは探索班のみなさんがどれだけの時間で戻ってくるかだな」
 そう春翔はピラミッドの入り口で固まる探索班のメンバーを見やった。


●第二章 索班突入

『ヴェントット ルッリョ( aa4169 ) 』は深淵を覗いていた。
 先に広がる暗闇が、まるで化物の虎口のように感じられ、その先に進むのがためらわれた。
 いわばこの先は従魔の巣。敵のテリトリー。
 はたして、自分立たちは無事に帰ってこれるのだろうか……
 そんな不安を抱くヴェントットに『カテリーナ スフォルツァ(aa4169hero001 )』は問いかけた。
――緊張してますの?
「誰がだ」 
 それとは対照的にためらわずに闇に進んでいくものもいる、理性も蒸発し恐怖も感じない者というのもいるのだ。
「図書館でネズミ逃がしたケジメは仕事でカタつけんとな」
『ヴィヴィアン=R=ブラックモア( aa3936 )  』は悠々と先頭を務める。
――アイツ等には短剣は過ぎたオモチャンゴ
『ハルディン(aa3936hero001 )』は同意し妙に体になじむ空気を感じていた。
「お友達のエステルが短剣必要みたいだし、探してあげるんだー」
『ギシャ( aa3141 ) 』はそう『カグヤ・アトラクア( aa0535 )』にじゃれ付きながら。
「そうじゃな、ところでギシャ、短剣を見つけた場合、真っ先にわらわを呼んではくれんか」
 カグヤが慈愛に満ちた表情で言う。なんだがとても怪しい。
――ああ、気にしないで、悪い癖が出ただけだから
『クー・ナンナ(aa0535hero001 )』がカグヤを嗜める、そう言わなければギシャは本当にカグヤに短剣を渡してしまいそうだったからだ。
 首をかしげるギシャ。
「むぅ……単純にどんな能力があるか気になっただけじゃ。奪おうなど、思ってしかない」
――思ってみたことはあるんだね……
 クーはため息をついた。
――短剣……。全部集めた先に何が待ち受けているのかは楽しみではあるな
『どらごん(aa3141hero001 )』がとりあえずそうまとめる。
 リンカーたちの反応は三者三様、というより十人十色で気分はインディージョーンズのものもいる。
「ピラミッドでお宝探しかぁ。ワクワクするねぇ」
『折原 紫依( aa3697 ) 』が言った。
その言葉に相方である『加賀 千尋(aa3697hero001 )』がため息交じりに言葉を返す。
――気ぃ引き締めろよ。何があるか分かったもんじゃないし。
――この奥に宝が?!
「宝やのうて短剣どす……今、大量の菓子想像したんちゃいます?」
 胸躍らせる『キリル ブラックモア(aa1048hero001 )』に 『弥刀 一二三( aa1048 )』は意地悪く言った。
――ば、バカを言うな! 秘宝ならこの中に……
 そうだ、幻想蝶にはたくさんのお菓子が入っている、全てはご機嫌取り。
 彼女に任務のために大量の供物を捧げなければ、また魔法少女になってしまう、それを回避するための苦肉の策である。
「……仕事せん方が金掛からんかもしれんどすわ……あ、今度拓海に買わせよ」
「なんでだ!」
『荒木 拓海( aa1049 )』は絶句し『メリッサ インガルズ(aa1049hero001 )』は少し笑った
「古よりの地、荒らす事を許してください。貴方を蹂躙する為に来たのではありません 」
 そう拓海は黙祷を捧げる、その隣で同じようにいのりを捧げる少女が一人。
『斉加 理夢琉( aa0783 )』である。
「土地神様お邪魔させて頂きます」
――許しを請うなら墓主だろう?
『アリュー(aa0783hero001 )』
「目的の物が手に入り皆で無事帰れますように」
――眠りを邪魔しといて願うのか!?
 さっそくピラミッド内に突入する一行。案の定明りは一筋もなく、各々懐中電灯やヘッドライトをつけ先を急ぐ。
 意外なことにピラミッド内は黴臭い。空気も湿っているのでもしかしたらどこかに水源などがあるのかもしれなかった。
「あ、そこふまないでね、踏み込んだら矢が出るよ」」
 ギシャが鼻歌交じりにトラップを発見し、誰かから借りた蛍光スプレーを利用してマーキングしていた。
「結構いたるところにあるよね。それにしても古典的……。あ、昔のお墓なんだから当然か」
 紫依が偶然発見した骸骨から目を背けて言った。
「通路の損傷が激しいのはなんだろうね」
――正規ルートが崩れて使えないなんてないよな。
 理夢琉とアリューがきょろきょろあたりを見回して言う。
 隠れる場所を探しているのだろう。
「なんつううか……トレージャハントというより墓荒しだよなこれ」
――どちらも似たようなものじゃろう
『リィェン・ユー( aa0208 ) 』は殿を務めている。
 慎重に、他の探索メンバーを気遣いながら先に進む。
「まぁ……たしかにな」
『赤城 龍哉( aa0090 ) 』が同意した。
――しかし古今東西、このような場所では何かしらの罠はお約束じゃから気をつけていくのじゃぞ
『イン・シェン(aa0208hero001 )』の言う通り、このピラミッドには多くのトラップが仕掛けられているはずだ。
 見事それを突破できるかはリンカーたちの運と実力次第。
「了解……さて……何が出てくるやら」
 そうリィェンは龍哉をみやる。
――どうかされましたか?
『ヴァルトラウテ(aa0090hero001 )』がそう答える。
「いや、べつに……。しかし、まさか本物のピラミッドに入り込む事になるとはな」
「鬼が出るか、蛇が出るか」
 龍哉はおかしそうにそう言い、リィェンを見やる。
「愚神が確認できてないことも気になる」
 リィェンは頷く。
「どちらにせよ、片付ければ済む話だ」
「そうだな……邪魔者にはご退場してもらおうか」


●第三章、怒りのオベリスク


 春翔と『アリス・レッドクイーン(aa3715hero001 )』の声が重なる。
『「ちょっと荒い運転になっちゃうけどごめんよ! さ、行っくぞォ~!」』
 二人はグロリア社から買い与えられた、ごっつい黒塗りバイクに目を輝かせると、エンジンをふかして遊んでいたが。やがてエンジンが温まってくるとヘルメットもかぶせず『イリス・レイバルド( aa0124 ) 』を乗せた。
 ルートはイリスが戦いやすいように調整する手はずになっている。
 そしてイリスの役目は。堀が完全に完成するまで敵を引きつけるのが役目である。
「大丈夫ですスラスター使いだったのでちょっとの荒っぽさなら平気です」
 急加速、急減速ならお手の物。また空中戦を何度も経験しているのだ。急激なG変化でも耐えられるのは彼女の強みだろう。
――可能なら足を狙うのがいい、機動力は重要だよ
「だからタンデムしてもらってるんだもんね」
――オベリスクに注意だ。ピラミッド付近で自爆させて脱出経路を増やさない事だよ
 了解。
 そうイリスと春翔はアイリスにそう答えると、爆音轟かせ従魔の注意を引きに行った。
 そんな中、アガサは堀にさっそくマミーを蹴落とし。イグニスでマミーの包帯を焼いて丸裸にしていく。肉の焦げる嫌なにおいが立ち込めるが、関節が炭化して思うように動けなくなるマミーを見ているのは楽しかった。
「ミイラってよく燃えるって聞いたことあるじゃない? 一回やってみたかったのよね」
 ぼおおおおお、パチパチパチパチ。あああああああああああ。
 そんな効果音が響く中、黙々と作業的にアガサは敵を無力化していく。
――アガサにイグニスを支給したグロリア社は罪じゃの……
『カリオフィリア(aa3950hero001 )』が残念そうにつぶやいた。
「倒すと別のマミーがわきますから、生殺しで……」
 先行した九繰によって、マミーを倒すと新しいマミーが沸いてしまうという、事前情報の正しさが証明された今。ご丁寧に倒してしまう必要はない。
「アガサさんこれを!」
 その時タイヤを軋ませて、遊夜の運転するジープが穴の前に乗りつけた。後部の扉が開き佐千子はウレタン噴出機をアガサに渡す。
「ありがとう」
 また追加されたマミーたちに今度はウレタンを噴出し固めていく。
 その上に缶ジュースを流し込む。
「ねぇ! これ、全部砂場なの」
――ええ、穴を掘って遊びましょうね
 真白が興奮した様子でスコップ片手に塹壕を掘っていく。
 疾風怒濤のごとくがりがりとすごい勢いで堀は長さも深さも増していく。
 万が一にもマミーが越えられないように注意が必要なのだ、ここでぬかることはできない。

   *    * 

 そんな穴掘り班の少し前の方で暁隊員、陰陽師担当『沖 一真( aa3591 )』は単身でオベリスクと向き合っていた。
 そのでかい図体の前で攻撃をひらひらとかわし、体制が崩れたところで横っ面を陰陽術でぶっ飛ばす。
 そんな行動を続けていると、わりと狙われるものだ。
 いつの間にかマミーに囲まれていた。
「おっと」
 マミーの接近を許すが、拒絶の風を纏う一真を捉えることは難しい。包帯攻撃をかするだけにとどめた一真は反射的に距離をとって破魔弓を叩き込む。
――間一髪だったね
『月夜(aa3591hero001 )』が言った。
「いい加減気を引くのも限界だぞ……」
 ちょっと前衛が少ないので出張をお願いされた一真であったが、本来彼は前衛ではない。
 ただ燃衣のOKサインがないまま戻るのもちょっと気が引ける。
「木乃伊って禍々しいイメージあるけど、古人の心の底にあったのは死の克服だよなぁ」
――死にたくないって気持ちは分かるよ。
 目の前で体制を立て直したオベリスクとマミー。
 その中心に符を放ち、そこから幻影蝶を召喚。マミーたちを混乱の渦に陥れる。
「『惑え』」
  その間に弓でマミーたちの四肢をはじいていく。足の骨を砕かれ足狙い膝立ちになったマミーを一真は堀の中に蹴り込んでいく。
「悪鬼退散」
――急々如律令!
「あああ!」
 その時一真のインカムをキィンと震わせる稜の声。あわてていてチャンネル設定を間違えたのだろう。戦場全てのインカムがなっていた。
「麻生さん! ジープか六時の方向、さっき手足を吹き飛ばしたマミーが群になってきてる」
 手足を吹き飛ばされた群が一直線にピラミッド入口に押し寄せている。
――それがどうした。探す手間が省けていいだろ
 カイが答える。
「堀は完成したの?」
「たった今完成しましたよ」
 燃衣が口の中に入った砂を吐き出しながら言った。
「だったら、あとは手はず通りに、だな」
 遊夜はマミーの群、その直線状にジープを停車、
 ジープを固定砲台として。オルカメンバーが車内から残る手足を吹き飛ばしていく。
 遊夜もアンチマテリアルに持ち替えて一緒に群がる、その爆発的な威力の弾丸は当たらなくても衝撃波だけで四肢を引きちぎる化け物である。
「足がない方が似合ってるぜ?」
――……ん、大人しくしてて、ね?
「無力化完了だよ、回収宜しく!」
 佐助がそう合図を送ると。愛や正護たちがバイクで向かう。マミーたちをロープで括り束にしてジープのフックに引っ掛けた。
 鈴なりのゾンビたち。
 ゼノビアが引きつった笑みを浮かべた。
「まぁ、ちょっとの辛抱ですから」
――マミーはあらかた片付いたな。次はオベリスクか……
 カイが言う。
「う~~暑い。砂漠暑い……」
――我慢しろ、マリ、あともうちょいだ
「はーい」

   *   *

 叫びをあげて殺到するオベリスクへはイリス考案人柱計画で対応することにした。
 まずマネキンを用意します。マネキンにバルムンクと呼ばれるAI搭載型剣を突き刺します。
 それを二体作ります。
「や、やめてよぉ」
 そう叫びをあげるバルムンク。
 ちなみにグロリアス・ザ・バルムンク は好評発売中です。
――大丈夫だ、心配ないよ
 アイリスがすごく優しい声で言った。
「心配するよぅ。だってこんな、らんぼうなぁ」
――ロープを取り出します。マネキンヘッドを刺したバルムンクに結びます。イメージプロジェクターを使います。
 その光景を守っている春翔、この幼女はいったい何をしようというのだろうか。
――そして、バイクで引っ張ります
「いいんだな!」
「よくないから!」
 そんなバルムンクの声を無視して春翔はエンジン全開。
 ぎょえええええええええという叫びがこだまする。
「大丈夫かよあれ」
 春翔が呆れた調子で言った。
「この子達すごく怯えているよ?」
――なにちゃんと距離を測って危なくなったら引っ張るさ、何も問題はない。
 しかし効果は絶大、オベリスクたちが釣れる釣れる。怒りの声を上げて、獲物を追うチーターのごとく殺到する。
 ぎゃあああああああ!
「光刃で一体一体たおしていくんだよね!」
――その通り。
 そこから離れた戦場でも、イメージプロジェクター作戦が開始されていた。
 正護もイメージプロジェクターで擬態させた岩にやマネキンで敵をおびき寄せ。
 無防備となったところで、高く空に舞い上がる。太陽を背に蹴りのタイミングをわからないようにさせ。
 そしてオベリスクに落すような蹴りを見舞う。
「防人流雷堕脚……」
 オベリスクの爆発をその背に受ける。そして正護の耳には同時に近づくオベリスクの足音が聞こえていた。
 振り返りざまに回し蹴りを叩き込んで。距離を行ったんとる。
 そのオベリスクに殴り掛かってきたのが。燃衣である。
 彼は堀が完成すると同時に休む間もなくバイクで出動。オベリスク退治にあたっていた。
「【暁】加勢しますッ! さぁ来い……粉々にしてやる…ッ!」
 オベリスクのブローをくぐるように回避し、膝の裏側に手を当て爆破。もう片方の足をからめ捕り、重たい音を響かせて倒れたオベリスクに跨ると。
 その燃え盛る拳をオベリスクに叩きつける。
 バックファイアが鮮烈に空を赤く彩った。
「赤くなりながら近づいてくる!」
 そう叫びながらライフルを乱射するのは、堀の向こう側からオベリスクを迎撃していたキミカ。
 鬼気迫る表情のオベリスクであるが、何の目的があってか走るのをやめない。
 焦りが募る。
 間に堀があるので敵の攻撃が届くわけではないが。それでも堀を崩されるとたまらない。
「この!」
 そう放った最後の銃弾がオベリスクの膝を粉砕。
 しかしそのオベリスクは最後の力を振り絞って。堀の下に。
「まさか!」
 そうそのまさか、である。
 自爆するオベリスク、マミーの断末魔。
 そして大量のマミーが堀の向こう側の安全地帯に沸いた。
 遠距離武装を構えていた射撃班はとっさに対応できず。
 砂の下から伸びた包帯や、マミーの噛み付きなどを受け混乱状態に陥る。
 しかし。
「掴まれ!」 
 春翔のバイクがジャンプ。堀を飛び越え向こう側に着地した。
 ちなみに、追いかけていたマミーは全て堀の中に落ちて言った。
 春翔は手早くマミーの四肢を破壊し堀の中に戻していく。
「光刃!」
――機動力が減ったのならば陣取ればいい
「生かさず殺さずって難しいね」
「はぁーい、負傷した方々はこちらねぇ」
 そう手を振るのは『榊原・沙耶( aa1188 ) 』である。『小鳥遊・沙羅(aa1188hero001 )』 は熱さにやられ他のかよくわからないがなりをひそめ、共鳴状態の彼女は黙々と負傷者たちを治療していく。
 イリスたちもついでにと処置を施してもらい、またバイクで戦場へと戻っていった。


●第四章 謎謎謎

 再び視点は戻りピラミッド内部。
 道中は楽ではなかった。

「みんな走れ!」 

  人が持ち込める明りには限界がありどうしても見えにくいものができてしまうというのもあるが、何せこのピラミッドを作った人物は隠すこと言うことがうまく。
 壁の網目模様や、何の変哲もない小石に偽装されたトラップスイッチに、リンカーたちはあれよあれよという具合で引っかかった。
 今回もそのトラップの一つを誰かが発動させてしまったようで。
 それに気づいて叫んだのは『帯刀 刑次( aa0055 )』で彼が前方の大穴を指さすと、ちょうどそこから地響き轟かせ丸岩が転がってきたのだった。
――古めかしいトラップだね……
『アストリア(aa0055hero001 )』は呆れてつぶやいた。
「そんなこと言ってる場合じゃねぇ!」
 あわてて通路を引き返す一行。その左右に大穴があいており。まったくのランダムにリンカーたちはその穴に飛び込んだ。
 すると石はそこで止まるようになっていたようで二つの通路の間に大きな隔たりができてしまった。
 つまり隊は早速に分割されたわけだ。
「聞こえるか!」
 そう刑次は声を張る、するとあちらからはギシャの声が帰ってきた。若干くぐもってはいるがとりあえず無事であることはわかった。
――この岩。なぜか攻撃がきかない
「俺たちは別のルートから短剣を目指す、試練の間で落ち合おう」
 そう刑次は『語り屋(aa4173hero001 )』と『佐藤 鷹輔( aa4173 )』の声を聞き取ると、岩の撤去をあきらめて刑次も暗闇の奥を見やる。なぜか刑次は楽しそうだった。
「いいねいいねえ……お宝の匂いがぷんぷんしやがるってやつだ。これ手に入ったら1割くれたりしねえの?」
 そう刑次は危機的状況にも関わらず笑って見せる。
――お仕事の報酬だけで我慢しなよー
「人間の欲ってやつは、よくよく際限がねえのさ。みんなワクワクしてんだろお?」
――もー……おじさんなんか罪の重さでへし折れたらいいんだ!
「コーシュー、コーシュー」
「嬢ちゃん、それどうしたんだ?」
 その隣で大きな銃をもつ小柄な少女『卸 蘿蔔( aa0405 )』は、どこかのダークサイドに落ちた将軍みたいなマスクをかぶりあたりを見回していた。
「それ自前か?」
 刑次が尋ねる。
――マスクとゴーグルを要求したはずなのに、届いたのがこれだったらしい
 そう『レオンハルト(aa0405hero001 )』が代わりに答える。
「神秘的というか……意外と怖い雰囲気ですね」
 蘿蔔はマスクを気にせずもごもごとそんなことを言った。
「嬢ちゃんの方が怖い雰囲気だがな」
 そう言いつつリンカーたちは部隊を再編制。シャドウルーカ―を先行させての罠索敵、そしてマッピングを慎重に死ながら先へと進んだ。

  *   *

 ここで、刑次や蘿蔔がいる班をAとし、岩に阻まれて向こう側に行ってしまった班をBとする。
 そして気になるB班も、独自で行動を開始していた。目指すは試練の間をロックしている三部屋だ。
 この班を先導するのは『八朔 カゲリ( aa0098 )』『北条 ゆら( aa0651 )』『東海林聖( aa0203 )』である。
 三人が先陣を切り、異常が発見された場合は。舞台全体をストップする。
 しかしマミーなどの従魔が通路のど真ん中にいる場合は、回避のしようがないので。カゲリと聖が躍り出て処理をする。
「こういう、ミイラって絶対必須だよね。ピラミッド大好き」
「おい、あんま先いくと罠にはまるぞ、ただでさえ後衛だしよ」
 聖がたまらず急ぎ足でゆらの前に出た。
 その光景に『シド (aa0651hero001 )』は苦笑いをこぼす。
 そんな彼女は行き止まりの道やトラップのある道に蛍光スプレーで目印をつけていく。
――ふむ、不浄の者の気配があるな……
 『ナラカ(aa0098hero001 )』が継げたとおり、通路の先からゆらゆらとこちらへ歩み寄ってくるマミーたち。
「ギア上げて行くぜ! ルゥ……!」
 その叫びに『Le..(aa0203hero001 )』は応じ。前衛を買って出る聖。
「っし、後ろは任せろ! 北条!! 謎解きは任せたぜッ!!」
「まだ、謎解きの間も見つかってないんだけどね」
 

 ■宝玉の間

 一方そのころ、A班は大量のマミーに追いかけられていた。
「うわあああああああ! 何でこんなことに」
『世良 霧人( aa3803 ) 』は叫びをあげながら通路を疾走していく。マミーたちも両手を振りかざし結構なスピードで走ってくるので速度を緩めるわけにはいかない。
 だがピラミッド内は足場が悪すぎる、朽ちて剥がれ落ちた天上のあれこれや、かつて侵入した墓あらしのあれこれが散乱し、足がもつれ走りにくい。
 何より嫁の手を引いては知っているのだからなおさら速度が出ない。
「大丈夫? 杏奈」
「私は、大丈夫……」
 そうはいいつつも『世良 杏奈( aa3447 )』は息が上がってきている、疲れを知らないマミーたちに追い立てられるのにも限界が来ているイメージだ。
 だがその時、霧とはあるものを発見する。
「穴?」
  奇跡的に見えたのだが、足元、そして天井に片手大の穴が無数に開いている、ということは。
「映画だと、こういう所にトラップが仕掛けられてたり……?」
 杏奈が足を止めて足元を探ると、小石に偽装されたボタンがあり、床と天井から矢が発射、マミーたちは串刺しになる。
――あったじゃない、すごいわアンナ!
 大はしゃぎの『ルナ(aa3447hero001 )』
――お嬢様、別のものに気が付かれます、お静かに。
そうやって『クロード(aa3803hero001 )』にたしなめられたことがちょっと面白くないルナである。ちょっと機嫌を損ねてしまった。
「杏奈は楽しそうだなあ。やっぱりこういう事柄だと燃えるのかな? クトゥルフ的な物大好きだし。」
――……奥様が妙な物を見てしまわないか心配です。正気度、というものが減ってしまうのでしょう?
 そう興味津々あたりを見やる杏奈。壁に引っかかった骸骨を見て楽しそうに話しかけてくる。
「杏奈はオリハルコンメンタルだから大丈夫だよ、多分」
 そう言いつつ、霧人は思っていた。
(というか、魔導書とかがあったら真っ先に読んじゃうよな絶対)
 まぁ、そう言うところも好きで結婚したのだから、今からいろいろは言うまい。
 そう思い直して先にすすむと。開けた部屋に出た。
 そこには先に向かっていたA班の仲間たちがいて、周囲のかべには宝石やら鉄やらが無数に並べられていた。
「ここが、石の間」
 室内に入るとすでに『麻端 和頼( aa3646 )』が石を手に取り状態を見ていた。
――……神話ってホント多いネ……特に古いと枝分かれ激しーし混乱するー!
『華留 希(aa3646hero001 )』がはしゃいでいった。
 和頼はつまらなさそうに石を手に取ってみる。
「……オレには言ってる意味すら分からねえよ……」
――……和頼がもっと頭良ければ、ネ……
 宝玉の間である。
 ここは鉄、銀、銀、ルビー、サファイア、エメラルド。この世界のメジャーな鉱石や宝石が棚にずらっと並べられた部屋、この中央に台座があり、そこに文字が書かれていた。
 ヒエログラフだが、訳すと。『私をここに』と書いてある。
――石ころ集めて豪勢な部屋ンゴねぇ
 ハルディンはぽつりとつぶやいた。
 大図書館の資料を確認すると、ここは『デェフティ王』のピラミッド、『デェフティ王』とはすなわちトートのことだ。
「トト神っつったらトルコ石らしいけど」
 ヴィヴィアンのたどり着いた結論に『レミア・ヴォルクシュタイン(aa3678hero001 )』もたどり着いたらしい。
「知恵の神は一柱……トト神のことよね」
 レミアは囁く。
「トルコ石から誕生し銅鉱石の採掘をも守護した神、わかったわ。トルコ石を探して持って来なさい」
――レミア主体だからな、動けないぞ
『狒村 緋十郎( aa3678 )』は命に従えない苦しみと戦いつつ和頼がトルコ石を探して持ってくるのを黙って見ているしかなかった。
 そして中央の台座に石をセットする。すると意外と大仰な音でガチャリ、カギがあいたような音が部屋にこだまする。


■ 知識の間

 時を同じくしてB班も知識の間にたどり着いていた。
「周囲のマッピングがすんでないな」
 鷹輔がマップを受け取り確認する。
 誰かがこの部屋を探索している間に周囲の索敵、地形確認をしておく必要があった。
 それにうなづいたのは『国塚 深散( aa4139 )』
――ヴィランも多数いるようだけど……深散
 『九郎(aa4139hero001 )』が心配そうに深散に問いかける
「うん、わかってる。大事な作戦、私情は挟まないわ。行きましょう」
――さっきのようにはいかない。僕たちも先行する。分担して罠の解除に当たろう。
 そう深散の背を見送り、カゲリは部屋の中央に視線を移すと、すでにゆらがふみ机を調べていた。
『私を讃えよ』と書かれており、石のふみ机が置かれている部屋。
 全て事前情報と合致する。
 ここが知識の間だろう。
 噂通り、部屋にひしめく本棚には大量に巻物が陳列されている。
 ゆらは楽しそうに巻物をひっぽん紐解いた。
 希が言う
――『私』が『トト神』をさすなら。トトの書。ヒエログリフを人に伝えたのもトトの為。ヒエログリフのトトの書 死者の書もトト神の守護と助力を願う文句が繰り返し語られている為該当する。かな?
 見事あたり。カチッと音がする。
 鷹輔は大英図書館で得た資料を全てスマホに入れている、繰り返し見ているが。
 この三つのチェックポイントの謎は簡単だ。だが最後の試練の間だけ謎が多すぎる。
「罪が何を指すのか判然としねえ。盗掘を罪と考えるなら、マミーへの攻撃や謎解きに関わるのもNGかもだ。万一に備えて戦闘能力が高い人間は、温存しておこうぜ」
――それにしても……さ
 希がぽつりとつぶやいた。
――……セクメトの目覚めって……人間を滅ぼして新世界創造の事カナ……?


 ■何もないフロア
 そして最後の関門、何もないフロアA班はたどり着いていた。
 こちらも事前情報にある通り何もない。『私の支配を終わらせよ』とあるだけで、本当に何もない。
「トト様は夜の守護者だったみたいだねぇ。この月がある限りトト様の支配からは逃れられないってことだよねぇ」
――夜の神様か。じゃあここを明るくしてやろうじゃん。
 そんな千尋の提案で蛍光塗料を塗ることを試みる。
 ペンキ缶を開け、部屋にシンナーの匂いが充満する。
「刷毛は当然全員分あるよ」
 千尋はそう刷毛を手渡していく。
「早く終わらせましょう」
 蘿蔔が言った。
「トト神は月の神と賭けをして勝ち、月の神から「時」の支配権を奪ったのよね?」
 レミアはハタッと立ち止まり、天井の月の絵を見やる。
「月を塗りつぶして太陽に変えるか……月の描かれている場所をぶっ壊せば良いんじゃない?」
レミアは九陽神弓構えつつトンデモないことを言い始めた。皆が止める。
「月の神の支配は太陽によって覆すに限る」
 ヴィヴィアンが言うが、具体的にどうしたらいいかはわからない。
――効果なしと感じたらぶっ壊すンゴー! 文化財破壊ヒャッホー! 
 ハルディンの指示の元、クレヨンやらイメージプロジェクターで月を赤く染める試みがなされるがそれでもなにも怒らない。
「天井に月の絵……私の支配を終わらせよ、か」
『鹿島 和馬( aa3414 ) 』がぶつぶつとつぶやきながら、そのヒエログリフをまじまじと眺めていると、何か小さな穴が見える。
 気がした。それを受けて閃く『俺氏(aa3414hero001 )』
――室内を明るくすれば良いかも? 夜明けは即ち月の支配の終焉だよ
「でもなぁ、もう、部屋明るいしな」
――さっき、かちりという音が聞こえた気がしたけどな
 全員が、顔を見合わせた。
 まさかね……。
 そういったん全員が明りを消して、もう一度つけてみる。すると。
 さっきも聞こえた、かちりという音が確かに聞こえるではないか。
――まさか、本当に、これだけ……
 若干の戸惑いも抱えつつ。和馬のおかげで道は開けた。
 そう試練の間への扉がこれで開いたのだ。
 その証拠に周辺警戒に出ていた霧人が走って戻ってきた。
「大丈夫? 霧人」
 そう彼の背をさする杏奈。
「隠し扉が開いて新しい通路が……」
 だがこの時ハタッと和頼は気づく。
「でも、これだと、明りを置いて行かないといけないんじゃないか?」
 全員が顔を見合わせ会議が始まった。
 その会議の結果。結局ライトを五個失った。
 
 ■ ミイラ取りが……

 怪しい気配がするということで、一部のリンカーは部隊を離れ。網を張っていた。実際にはセラエノ対策。
 前回大英図書館でリンカーたちの活動を妨害したのだセラエノだとわかっている時点で、ここに襲撃、もしくは先回りしていることは容易に想像できる。
 だから逆に罠をはり、敵を捕まえることにしたのが一二三、拓海、そして理夢琉。ギシャもいる。
「聞こえてる一二三、……英雄交換する?」
 拓海はインカム越しに一二三へと囁く。
――……言って良い冗談と……
 冷たい声音のメリッサ。二人は長いことピラミッドの暗がりに陣取っていた。
 それこそ突入当初からずっとである。
 マップは電子端末によって共有が成されているので罠をはるにも問題はなく。
 むしろセラエノを誘導するために通路を封鎖する余裕まであった。
「あ、マミーじゃない影」
 その時、一二三と拓海は会話をやめ、息をひそめた。
 ギシャからの通信。マミーと人間の挙動を間違えるわけがない。間違いなくセラエノの一味だった。
「そっち行くよ、理夢琉」
「はい……」
 ギシャが言うと理夢琉は息をひそめ杖を構える。そして。
「えい!」
 物陰から躍り出た理夢琉は足を払い。口をふさぎ。足を爆破した。
「ぐああああ!」
 セラエノの一味は足を抑えてその場に転がる。
「うわ、えげつないこと言いはりますなぁ」
 近くをはっていた一二三はいち早く追いついてその光景を見つめた。
――理夢琉、目が座ってる……
 アリューが言う。その後理夢琉は拘束バンドで後ろ手に親指を拘束。力が入らないようにする。
「全て終わったら治療するから、ごめんね……」
 そう理夢琉が謝る隣で。持ち物を漁るギシャ。
 装備として何か有用なものは何もない、逆に彼らには知識以外にこのピラミッドで有用なものは何もないと言える。
――情報を出せ。
 アリューが言う。だがセラエノはそっぽを向いて答えない。
「何人殺めてきた? 今から何人やる気だ? 終らせてやるよ」
 拓海が言う。その剣を喉元にかざし、いつでも命をうばえると、そう示して見せた。
 たまらずそのセラエノの構成員は雄たけびをあげ、そしてその場で縮こまる。
「わ、わかった全部言う。」
 四人は顔を見合わせて男の話を聞く姿勢に入った。


●第五章 忍び寄る機影

「おい、あれ。あれはなんだ?」
 戦場をバイクで駆りながら、共鳴ライダーサキモリは遥か上空に、点のようなものが見え、目を凝らす。しかし。
「ちょちょっと。防人さんまえ!」
 佐千子のインカム越しの声におどろき、視線を前に向けた。
 そこには、地面の下から生えてくるマミーたちが見える。
 誰かが間違えて倒してしまったのだろう。
 あわてて方向を転換し。先を急ぐ。
 オルカの遊撃部隊は戦域の外の方に偵察に行っていた。ついでにマミーを捕獲しジープでつって輸送している最中でもあったが。
 稜の通信によって、残党が堀めがけ一気に押し寄せてくることを確認、一度後退することに決めたのだった。
 愛と正護は銃片手に器用にバイクを操作しながら戦場を駆けていく。
「前方にオベリスク……、確認」
 正護の隣を走る愛は正護と目配せしオベリスクの目の前で交差、そのタイミングで銃撃を浴びせる。
 ひるんだところで、戦場を走り回っていた咲雪救援として乱入。
 シャープエッジをオベリスクの膝に放つ、その巨体が砂漠にたおれこみ、完全に動けなくなったところで。愛と正護は集中砲火を浴びせた。
「これで通算二十一体目……」
 稜のアナウンスで、やっと一桁だと知った面々。あと少しと思えば気合も入るものだ。
 だがしかし、数が少なくなれば敵も必死になるのは通り。
 ひょっとするとここからが本番なのかもしれない。
「みなさん。迫間さんが」
 咲は央を追うオベリスクに後ろから銃撃を浴びせる、だが行動パターンが変わったのか、オベリスクはしつこく央を狙って走っていた。
 このままでは追いつかれる。
 そう央が後ろを振り返った時、その巨体が跳ねまるで恋人に飛びかかる女性のような挙動で央に迫ってきた。
 おおおおおおおおおおお!
 オベリスクの叫び声が聞こえる。
「しまった!……」
 だが、そう驚きつつも央の口元は笑っていた。
「なんてな、そいつは囮だ」
 ジェミニストライク。
 オベリスクが飛びかかったのはあくまでも分身、一瞬の撃家に残像を複数体生み出した央は反転。オベリスクに切りかかる。
 おおおおおお!
 オベリスクは叫びをあげて爆発四散。
 赤々としたたき火が砂漠に一つ出来上がった。
 その直後。
 どこから現れたのだろうか、オベリスクが一体。炎を突き破って央の元へ迫る。
 今度こそよけられない。そう咲の目にも見えた、しかし央は振り返らずに指をクイッと曲げると、オベリスクの動きが完全に止まる。
 ハングドマンを利用した女郎蜘蛛 である。
「任せた!」
 央が叫ぶと。
――あっちゃん!
「ああ、OKだ」
 ジープが砂を削り停車、そしてゼノビアの号令のもとオベリスクを蜂の巣にする。
 迅速かつ効果的な連携だった。
 オベリスクは残り七。
「これで……」
 そう遊夜はアンチマテリアルライフルの弾倉を取り換えるために両手をハンドルから離した、その瞬間。
 ずごごごごと、砂漠が揺れ、そして王は先ほどのオベリスクがどこから現れたか知ることになった。
 砂のしたからだ。
 あいつらは砂の下を移動できたのだ。
 そのイレギュラーに完全に虚を突かれたオルカの面々は前後と右側を抑えるオベリスクに反射的に銃弾を見舞う位しかできることがなかった。
 そしてオベリスクは満足そうに微笑むと、その体を赤く変えていく、自爆する兆候である。
「く! にげろ!」
 正護がバイクを全力でふかして、前方をふかすオベリスクにぶつけるも。
 間に会うはずもなく。
「みんな!」
 稜が、叫んだ。
 次いで今日一番の大爆発が、砂漠の端の方で起こった。
 上がる黒煙、狼煙にしては派手すぎるようなそれを。
 遠くで見守る少女がふたり。
 戦場はピラミッド付近だけではない。戦域外にヘリは止まっており、このヘリを撃墜させないように守る必要があった。
――今回護るべきは操縦士の方々ですね
 エミナが言う。脱出手段が失われればどうなるか分からず、やがてはゾーンルーラーに攻撃される可能性もある。
「平和ですね~」
「私達は暇な方が良い役割ですもの」
――ギチギチ
アルゴスが肯定するように鳴いた
――各班の心配も減り、敵への牽制にもなります。無駄ではないでしょう
 そう黙って話を聞いている九繰の傍らにはALBが投げ捨てられていた。
 移動手段として悪くはないが、やはり砂漠ように調整されていないと、戦闘で使えるほどの機動力は確保できないというのが九繰の見解である。
 そのレポートをグロリア社に提出すべく、この暇な時間でメモをまとめていたのだが。
 ピラミッドの方角から接近する何者かに気が付き。九繰は筆記用具をしまった。
「前衛に出ます」
「ご武運を……」
 二人は頷くと、コルトは焼けた砂の上に寝そべり、LPCを構える。 
 先の戦いで有用性が証明された超兵器、威力射程はトップクラスだが、使用者の命を削る代償つき。それを今は九繰のリジェネによって補っている状態で使用するか試す、そんな目的もある。。
「はあああ!」
 そしてきっ45秒後、九繰がオベリスクと接敵した。そのブローを掻い潜り、抱き着かれないように距離をとり、アステリオスで引っ掛けるようにして斜め上に切りつける。
「せーのっ!」
 九繰のその掛け声で打ち上げ。
「ナイスパスですわ」
 コルトはLPCの射角度を合わせて狙い撃ちにした。
「あまり、こちらに割ける戦力もなさそうですね」
 コルトは、そうつぶやいて高熱を排出するLPCから手を離す。
 その時だった。
 上空から風を切る音が聞こえてくる。
「あれは?」
 コルトは見た。あれはヘリだ、しかしH.O.P.E.のものではない。
 では誰の……。決まっている。
 セラエノの輸送ヘリだ。


● 第六章 蘇る厄災

「や、やっとついたぁ」
 そう紫依はふらふらになりながらもピラミッドの最下層にたどり着く。
 その衣服はズタボロで、深い傷はないものの細かい傷がたくさんあった。
 それは他のリンカーも同じで体に傷をおっている。
「おお、東海林たちがいる」
 上がった息を整えて、いま入ってきた部屋を見渡すと、そこには先ほど別たれたリンカーたちが集合しているようで和馬は安堵のため息を漏らした。
「ということは、ここが試練の間」
 その部屋には三つの小部屋が存在し、それぞれ人が独り入ることができるようになっている。
 噂通り小部屋の中には壁画があり、そこに色が灯るようだ。
 そして部屋の中央に柱がある。そこには
 『王はもっとも罪なき者を受け入れる。罪なき自信のあるもののみ入れ』
 そう書かれていた。
――ハルディンちゃんをマアトの羽根で計れると思うなかれンゴ
 ハルディンが言う。
「おい、八朔、ナラカ……お前らコレ解るか?」
 カゲリとゆらは、黙って聖を見つめる。
「ちなみに、オレはサッパリだぜ!!」
 だろうね、そうゆらは笑った。
「私に考えがあるわ」
『蝶埜 月世( aa1384 )』が手を挙げた。
「とりあえず入ってみてから決めたらいいんじゃないかしら」
 手元のメモ用紙にペンを走らせながら説明していく。
「入ってみて両側が赤の人が通過すればいいし。片側が赤の人は壁の色がそろうまで待てばいい」
「けど、これって一度入ったらら出られないんじゃ……」
 霧人が言った。
「その可能性は十分にあるな」
 カゲリも、フムと考え込む。
 結論として、この部屋の謎を解けるものはいなかった。
 現在出ている情報は全て憶測で、憶測に憶測を上塗りして今は身動きが取れなくなっている。
 しかしこれ以上この場で得られる情報はなく、であれば考えも進展しない。
――どうする? このまま無駄に時間を費やしても、外の人間の負担が増すばかりだ……
『アイザック メイフィールド(aa1384hero001 )』は言った。
「だったら、情報を一つ一つ増やしていくしかない」
 鷹輔は言う。その言葉の真意とは、誰かが実際にあの中に入ってみるしかない、ということである。
 リンカーたちには追加の情報が必要だったのだ。
 では、誰が入るかが問題になる。
――ねぇ、気になってたけど
 希が言う。
――罪って年齢じゃないかな。ハルディンも言ってたけど、人は生まれた時から罪を持ってるし、長く生きればそれだけ罪深い事にされるのカモ
俺氏が細くした
――最も罪少なき者、汝は赤子
「ま、人間生きてりゃ多かれ少なかれ罪を背負うわな」
 和馬が補足する。
――若さの順に罪は軽いって事かもね
 刑次が言う
「俺的には誰かちゃんがチラッと言った、単に体重って線はアリだと思うね。つっても体重っていうか、装備やら持ち物を含めた重さ、ってとこか」
「なるほど」
 蘿蔔は何か思い当たったのか頷いた。
「ここに来るまでにしこたま稼いで来た奴。武装満載で来た危険人物なんて、王様も会いたくねえだろうなー、なんて思ったかねえ」
「そうね、それもあり、でも私は……」
 レミアは言う。
「私は本気で罪を量ってる気もするわ。霊力技術って言ってたし」
 杏奈が手を上げる
「体重と年齢なら満たす子がここにいるわ」
 光が杏奈を包むと、杏奈は幼女になっていた。
 ルナ主体の共鳴し姿である。
「体重でも年でもこの姿なら大丈夫じゃない? アタシは罪人でもないしね」
 声もルナの声に代わり、とても可愛らしい感じだ。
「危険だよ杏奈」
 霧人が言う。そう妻を制しようとしたとき、ヴィヴィアンが一歩前に踊りです。そして謳うように言った
「我らに罪無し。罪の意識も無し」
サイコパスに罪の意識など無いのだ、そう言って小部屋に歩み寄っていく。
「ちょっと……」
 ゆらが止めようとするが、聞く耳持たずに、部屋一号へ入室してしまった。
「「万歳、汝アンヌより来るその股の長き者よ、我は不正を行わざりき」」
 レミアも手を上げる。
「……本当に罪の重さが量れるのなら、わたしは赤ね」
 かつてレミアは異世界で大量の人間を殺していた。それをつみと呼ばずしてなんと呼ぶのか。
「今更古代の神に赦しを乞うつもりもないけれど……先に進む為に必要なことなら」
 そうレミアが二号の部屋に入り、ルナは三号の部屋に入ってしまう。
 そして三人が入室したことを何かが感じ取ったのか、一斉に扉が閉まった。
 そして開かなくなってしまう。
 全員の中に不安はあった、謎が解けきっていないままに部屋に入ってもいいのか。そしてこの小部屋自体がトラップではないのか。そんな心配が。
 ただ、そんな心配は杞憂に終わることになる。
 その部屋に、理夢琉が駆け込んできた。その後ろに続くのは一二三、拓海、そしてギシャ。
「大変です、この仕掛け」
 理夢琉は息も絶え絶えに言う。
「え! もう入っちゃったんですか?」
「あーあ」
 ギシャがあっけらかんと言い放った。
「せっかく答えがわかったのに」
「答え?」
 月世が言葉を返す。
「いや、シカけなぁ。結果から言うとなぁ。罪なんてないねんて」
 一二三がそう言い放ったのと同じタイミングで、各部屋の壁画に明かりがともった。
 一号の左右の壁画は白。
 二号の左右の壁画は白。
 三号の左右の壁画は白。
 全員の壁画が白く染まる。
「これは罪の意識があるものは入ってくるなっちゅう意味らしい。むしろ刃物で体を傷つけさせるためのトラップやったんや」
「複雑にロジックについて説明されたけど、忘れちゃった。要約するとそんな感じ」
 拓海がそう補足する。
「誰も刃物に触っちゃだめだよ」
 そうギシャが戸を叩くが中の声は聞こえない、おそらく外の声も聞こえていないのだろう。
 場は大混乱に陥る。
「いっそ壊すか?」
 聖と龍哉は武器を構える。
――いや、短剣をみつけるための仕掛けまで壊してしまうと、不都合なんじゃないかな。
 そう俺氏が二人を嗜めた。
「なぁ、俺氏」
――なんだい、和馬。
「ちょっと考えたんだけどさ。こういうタイミングで狙われんのは定番だよな」
――目標を目の前に気を抜くとかあるものね
「きゃ!」
「ちょっと、何よ!」
 その時、フロア全体に乙女の悲鳴が響きわたる。
「動くな……」
 全員が後ろを振り返るとそこには人質にとられた、月世とゆら。そして五人のセラエノメンバーがいた。
「そこまでだ」
「いつから……」
 カゲリは歯噛みする、敵の気配は全くなかったはずだ。なのに……
「最初からだ。お前たちがご丁寧に一つ一つロックを解除している間、ずっと隠し通路前で待機していた」
 そして隠し通路解放と共に試練の間に潜み、リンカーたちの混乱が最大になるのを待っていた。
 つまりそう言うことだった。
「なぜこんな真似を」
「短剣を奪っても脱出する前にお前たちにつかまれば意味がない。こちらは人質を得ることが最重要の問題だったのだよ」
 その場にいる全員は願う。
 もし理夢琉の報告が本当であれば。全員が罪人でないとするならば、だれが石板を踏んでもコクマーへの門は開かれる。
 であれば、今は時間が、時間が欲しい。
 この状況を打開できる策を誰かが思いつくまでの時間が。

「罪はない!! 信じる!」

 不思議だった。
 今まで、個室内の声は外に、外の音は個室内に聞こえなかったのに。
 なぜかその声、ヴィヴィアンの自身を信じる声だけは、全員の耳に届いた。
 これが、生死を共にしたもの達のシンパシーだとでもいうのだろうか。
 終わった……。誰しもがそう思った。

 その瞬間のことである。
 
 試練の間全体が震えた。そして、壁がスライドしていく、両側に、ずずずずと重たい音を響かせながら。
 その奥からは光が溢れていた。
 長い長い階段があり、その向こうに輝く何かがある。
「おお! 美しい。これがコクマーの輝きか……」
 そうセラエノの幹部らしき男が、光に誘われる蛾のように歩み寄っていく。
 その短剣は、緑色の光の中に浮いていた。台座の上下から霊力的光が発せられ、それによって守られているようだった。
 その短剣をセラエノの男は恭しく手に取る、そして階段を下りると告げた。
「一人殺せ、人質は一人で十分だ。」 
 全員が唖然とする。武器を構えるものもいるが。
 月瀬とゆらにナイフが突き立てられてしまうと思うと、誰も動くことができなかった。
「どちらがいい? 選ばせてやる」
「この野郎……」
 聖は剣の柄を握りしめる。
 絶体絶命のピンチである。
 その時、小部屋内の緋十郎とレミアはというと。
「ああ、左右が白いわね。つまり、これは私が赤ということかしら。残念ね、緋十郎」
 レミアは溜息をつく。
「良いのよ、わかっていたことだし、それに共鳴中の痛覚はぜーんぶ緋十郎が引き受けてくれるもの」
――そうだな、それが俺の役割だ。
「ねぇ緋十郎……わたしの罪の痛み、代わりに引き受けて頂戴。嬉しいでしょ?」
――ああもちろんだ!
 ちょっと食いぎみに言った緋十郎。
 仕方ないだろう、いろんな種類の嬉しいという感情がごちゃまぜになってしまったんだから。
 そしてその返事を快く受け取ると、レミアはその錆びたナイフを手に取り、笑った。
「じゃあ、いくわね、三カウントで」
――よし、こい。
「いーち」
 振り下ろされる刃。
――ぐおっ!
 それは太ももに突き刺さり白い肌を赤い血が濡らす。
――カウント……さんって。
「あら、口答え? 生意気ね」
 そして振り下ろされる刃。
――がは!
 今度は腕だ。勢いが良すぎて壁画に血が付着する。
「痛い? 緋十郎痛い?」
――痛い……
「たのしい?」
――たのしい……
 息も絶え絶えの緋十郎であったが、痛くて痛くてたまらない緋十郎であったが。
 決して、もうやめてくださいとは言わない緋十郎であった。
「ねぇ、緋十郎……日本には切腹って文化があるのよね」
――あ、ああ
 震える声の緋十郎、しかしその声は恐怖で震えているわけではない。断じてない。
「罪を償うには、必要な行為よね」
――ああ!
 レミアはうっとりと、完全に悦に浸った表情で刃を首に当てて見せる。一筋赤い線が入り、そこから滴る赤い滴。
そしてレミアはその手のナイフを逆手に握り直し。腹部に軽く押し当てた。

「さあ……セクメトが目覚めるわよ!」

 そして次の瞬間。
 ピラミッド内を満たす遠吠え。そして。
 爆発する試練の間の壁、その側面。
 なにごと!
 そう小部屋内で起こったことを知らない誰もが思ったであろう。
 直後この部屋のシステム自体が壊れたのか、小部屋の全ての扉があいた。
 そしてその場にいる全員が、濛々とたちこめる煙の向こうへと目を凝らす。
「ほう、伝承通りじゃのう」
 うれしそうに微笑むカグヤ。そして、露わになるシルエット。
 体格はやや背の高い女性と言ってもいいだろう、だが決定的に違うのは顔。それは恐ろしいほど獰猛な獅子の顔を持ち。その両手は硬質化して赤銅のように輝きを帯びている。
「笑ってる場合じゃねぇ。大丈夫か。ゆら!」
 先ほどの衝撃で吹き飛ばされたのだろう。二人ともセラエノの手からは解放されたが瓦礫の中に埋まっていた。カゲリと聖が駆けより抱き起す。
「く、セクメト! 今の我々の戦力では勝てん! 逃げるぞ」
 彼等の判断は迅速だった。短剣を持ち逃走するセラエノ。
 それを。
「追え、ギシャ」
 輝夜はセクメトの前に立ち、背中だけでギシャに言い放った。
「うん、でもカグヤは……」
 その光景を見て思った。入り込む余地などない。
 むしろ、彼女の足を引っ張る結果になりかねい。
「ギシャよ、いくのじゃ。お主意外に誰が奴らに追いつける……」
 他の面々もセクメトに対処するか、セラエノを追うかを迫られる。
「私はセラエノを!」
 理夢琉が駆けだそうとする。その手を取って蘿蔔は言った。
「あ、待ってください! これ」
 マスクを投げ捨てて蘿蔔は理夢琉に地図を渡す。
「これ、持って行ってください」
「はい、ありがとうございます。卸さんは……」
「私は、ここに残りますです」
 そうセクメトを見やる蘿蔔。いつの間にか、セクメトを取り囲むようにすでに陣形が完成していた。
 セクメトを真っ向から見据えるのはカグヤ。
 その後ろに武器を持ち構えるのは聖、龍哉、リィェン。
 ヴィヴィアン、血まみれの緋十郎が幻想蝶から武器を取り出しセクメトに向けた。
 ゆらが書を構え。彼女を守るように。一二三、拓海。カゲリ。ダイヤの陣形で展開。
 そして蘿蔔が弾倉を地面に落とし、新しい弾倉を装填。スライド。撃鉄をお越し。両手で祈るようにその銃を額に当てる。
「嬢ちゃん、肩を並べるのは、ずいぶん久しぶりだねぇ」
 刑次はショットシェルをもてあそびながらショットガン担ぐ。そして。
「ええ、そして勝ちましょう。絶対に生きて帰りましょう」
 そう言って蘿蔔は目を見開いた。
「騒がせてすまぬ……」
 リンカーたちが駆け抜けていった今、セクメトと相対する覚悟を持つリンカーのみが残った。
 そのリンカーたちは無言で、セクメトの動きを注視していた。
「……血の供物を捧げるので見逃してくれぬか?」
 それににこやかに歩み寄るカグヤ。そして赤く着色した、グロリアビールを差し出す。
「これは、わらわの血。わらわは敵ではない、荒らして悪かったのう」
 だが。セクメトはそれが気に入らなかったらしい。
 一度受け取ったビール。それをカグヤの頭にかけて笑うセクメト。
 一同は青ざめた。どうやらセクメトは墓所を荒らす者を許すつもりはないらしい。
 バキバキとセクメトの拳が鳴る。
「そうか、そうか、お主がそのつもりならば、仕方あるまい」
 輝夜は武器を展開して笑う。
「ふふふ、解剖すしてしまおうかのう」
 そしてビールにぬれた髪をかき分け、真っ向からセクメトを見据えた。
 その目には強い光が宿っており。挑発的な笑みも相まって。
 セクメトの神経を逆なでていく。
「のう……子猫ちゃん」
――挑発してどうするのさ
 相変わらず緊張感が足りない調子でカグヤの蛮行を嗜めるクー
(ふふふ、さて、どうするかのう)
 そして一つ息を吐きカグヤは言った。
「こい猫神よ!」
 その瞬間、セクメトがぶちぎれた。咆哮を響かせ、その拳をカグヤに叩きつける。
「くっ」
 甲高い音を響かせて盾に長い傷が刻まれる、それが瞬きしない間に三発。
 そしてセクメトの咆哮
「カグヤ! 下がれ」
 カグヤの両脇からセクメトに駆け寄るのはリィェン、そして龍哉。
 振るわれたフルティングをセクメトはバク天で回避。龍哉のジャブを手の甲でそらして、ストレートを体を半分そらして回避。
「そう簡単に逃がしちゃくれなさそうだな」
「そのようですなぁ」
 次いでセクメトを襲うのは一二三の陰刃。それをセクメトは高くジャンプして回避。
「この!」
 ヴィヴィアン、レミアが切りかかる。それをセクメトは、小部屋の側面を蹴ることによって、飛び回り、全て避けて見せる。
 だがその程度の誤魔化しでその弾丸はよけられない。
 まず肩に二発。蘿蔔の弾丸が突き刺さる。
 セクメトが歯噛みする。
 たまらず地面を転がるセクメトに。拓海がSMGを浴びせるも。セクメトは転がり、いわっばの陰に。
「っし! 行くぜ!! 暴れる方が性にあってらァ!!」
 聖は跳躍、デュランダルを高々と掲げそれでいわばごと。
 セクメトに振り下ろした。
 轟音。たちこめる粉塵。
 その霧の向こうに暗殺者の陰。
 まずい。そう思った瞬間。輝夜が盾となりセクメトの攻撃をはじいた。
 セクメトはその粉塵の中から脱出する。
「ああ、わりぃ、カグヤ」
「よいのじゃ、それに……」
 あわてて聖から距離をとった、無防備なセクメトの横っ面に。イカヅチの槍が突き刺さる。そしてばら撒かれるベアリング弾。セクメトの体が吹き飛んだ。
 見れば刑次がショットガンを構え。ゆらが雷神の書片手に逐電している。
 その額に一筋きりきずがつく。
 怒りに燃えるセクメトの目。
「他人の血は好きじゃが、自分の血は嫌いか? それとも感じておるのかのう? 生命の危機を」
 その輝夜は手を広げながらセクメトに歩み寄る、その背後では障害物が邪魔だと龍哉が小部屋を破壊している。
「さて、仕切り直しじゃ」
 今の一瞬の攻防で全員が最適なポジションをとった。ここからが勝負だ。
 刑次の放つ弾丸をよけ。龍哉へと人跳躍で接近するセクメト。
 その一撃をカグヤは盾で受ける。重たいチャージを歯をくいしばって耐えるが、それは攻撃ではなく、本命はセクメトの口からちらちら漏れ出す炎だと知った。
「離れろ!、単なる炎ではない」
 しかし時すでに遅し、セクメトの口から放たれた炎は信じられないほど広範囲に広がり、龍哉をはじめとする前衛陣を焼き払った。
(熱ダメージだけではない。徐々に体力、いや霊力が奪われておるのか)
 そう分析するカグヤ、しかし。
「この程度、しくみがわかれば分解もたやすい」
 そうカグヤは膝立ちになり、熱せられた盾をとる。
「くそ!」
 カゲリは息を吐き終えたセクメトに接近。陰による斬撃は地を走り、空を駆けセクメトに殺到する。それを四肢に受け、動きが鈍ったところに。聖、リィェンが切りかかる。
 鋏のように左右から襲う刃、それを地面すれすれに上半身をそらすことによってセクメトは回避。素早く体を起こして右回りに体を回転聖へと蹴りを放とうとするが、蘿蔔の弾丸が顔面にめり込み吹き飛ばされる。
 しかしセクメトは空中で体制を手直し、追撃をもらわないように災厄の息を漏らした。
 しかも先ほどとは規模が違う。
 輝夜は思った。まずいと、しかしとっさにかばえたのは身近にいた聖だけ。
 全員が服の裾を焦がしながらも、その炎に耐える。
「ずいぶん好き勝手に!」
 雷光と影。が放たれる。ゆらと一二三の攻撃だ。
 それをセクメトは両手ではじくと。無防備になった腹部にレミアが。刃を突き立てた。
 腹部から盛大に出血するセクメト、そのままの勢いでレミアは体を回転させ、首を吹き飛ばそうと大刃を回転させる。
「え?」
 信じられない者をレミアは見た。
 その牙にて、レミアの刃は止められていたのだ。
「その子をはなせ!」
 拓海が残弾がゼロになるまで敵を撃つ。
 そしてセクメトはレミアの小さな顔を片手で握り、引き寄せる。そして無造作に振り投げ。壁に叩きつけた。
「地獄に送ってやる!」
 ヴィヴィアンが横なぎに大剣を振るうも、それも叩き落とされて、愚直な、それ故によけがたい、神速の前蹴りで弾き飛ばされた。
 二人は意識を失う。
 二人のリンカーを倒したことでセクメトは余裕を持ったのか、周囲を見渡す。
 そしてカグヤを見つけると、にたりと笑った。
 セクメトは弾丸のように突貫。その膝蹴りをカグヤは盾で受ける。しかし衝撃をうまく吸収しきれない。わずかに盾が斜め上にはじかれる。
 そしてその隙を、セクメトは駆け抜けざまに攻撃。カグヤの腹部に鋭利な傷が生まれた。
 膝蹴りを盾で受ける。衝撃でわずかに後方へ。ガードが溶けた瞬間に、爪が翻り。上半身に食い込む。
「この!」
 しかしただで終わるカグヤではない。そのセクメトの横っ面を盾で殴る。
 頭を揺らされたセクメトはそのせいで気が付くのが遅れた。
 龍哉のその拳がその腕を狙っていることに。
 直後炸裂音、セクメトは瞬時に距離をとる。
 しかし攻撃はかわせなかった。
 龍哉の手にはには硬いものをへし折った時の感触が残っている。
 おそらくあの腕はもう使い物にならない。
 これぞ好機。そう接近する聖を足蹴にし跳躍。
 しかし、その動きを呼んでいたカゲリはあらかじめ同じ高さまで飛んでいた。
 空中で体を回転させ、その刃から発された黒焔が、龍のごとく渦巻いてカゲリにつき従う。
――放て!
 ナラカが命じると、その黒焔は幾千の魔刃となり、セクメトに殺到する。
 血の雨が石の床を濡らしていく。
 そこで本気を出したのか、セクメトは地面に降りると共に全身から霊力を噴出させた。筋肉が肥大化し、その目が真紅に染まっていく。
 原理としてはリンクバーストに近いかもしれない。
 直後、セクメトは天井や壁を両足ではじきながらパチンコ玉のようにフロア内を駆け巡る。
「こんなのに当てられんのかよ……」

――散々練習してきたろ、信じろよ。自分の腕を。

「はい、レオ」
 蘿蔔は息を吸うとともに銃を構え。そして吐くとともに一発の銃弾を放った。
 その銃弾はセクメトのようにありえない角度に跳弾し、その足に命中した。
 テレポートショット。である。
 それがさらにもう一発、今度は耳に。
 
 があああああああああああ!

 セクメト、怒りの咆哮、そして直後。今までにない温度で災厄の息をばらまいた。
 それこそ、そのフロアにいるもの、全員が受けてしまうほどに。
 歯噛みするカグヤ。さすがに全体攻撃では護りきれない……。
 さらにその息は焼いた砂をまきあげ、赤い砂塵がフロア全体を覆うという奇妙な状態を作り出していた。
 闇の中で響く銃声。それは拓海のものだ。直後打撃音。そしてうめき声が聞こえる。仲間たちの。
 ここではライトアイも明りも全く意味がなく、一寸先も見えない赤い闇が支配するという、心にやさしくない状況に陥った。
 直後聞こえるのは ゆらの悲鳴。拓海の悲鳴。 
「本気を出したとでもいうのかのう。面白い!」
 そう挑発してみてもセクメトはこちらには来ない
 やがて。その赤い霧が晴れた時。
 フロアの中央に立っていたのはカゲリとリィェン、その手の刃がセクメトの喉元に当てられていた。
 やったのか。カグヤはそう思った、しかしそうではない。
 力尽きたように倒れる二人。
 歯噛みするカグヤ、そして蘿蔔の前に躍り出る。
 そのカグヤにセクメトのタックルがさく裂した。
 カグヤは大きく吹き飛ばされることになる。
 短剣が奉納されていた、光台座の方へと。
「立ってるのは、俺たちだけだな、セクメト」
 左腕をだらりと下げた状態のセクメトに、龍哉はファイティングポーズを見せた。
 そして、龍哉が動く。
 牽制の右、そして本命の左、それをセクメトは右手でそらし、左の突きを後退してよける。
 踏み込む龍哉。爆炎纏った拳を振り下ろすもセクメトはその拳に右手を打ち付けてそらす。
 左手を封じられているはずなのに、攻めきれない、その焦りから龍哉は下段への回し蹴り。
 それに足をとられたセクメトだったかが、その口から火焔を掃出し、龍哉を炎包む。
 それを受け龍哉は稜膝立ちになりそして、倒れた。
「みんな……」
――だめだ、蘿蔔、こいつには……勝てない
 レオンハルトは蘿蔔を立ち上がらせようと叫んだ、しかし蘿蔔にその声は届かなかった。
 こんな時に自分が、この子から体の主導権を奪うことができれば。
 そう悔やんだ。
「ここまでですね」
 そう蘿蔔はフラガラッハを置こうとした瞬間。

「安心せい。皆の命は、わらわが守る」

 フロアにこだまするのは、女性の声。
 気高く、不遜で、愚かなる神を恐れない。
 凛として響き、いついかなる時も、その色は不安に染まったことなどない。
 
「のう、セクメトよ」
 その女性は叡智を守護する光を浴びて、その台座に腰を下ろしていた。
 緑色の輝きを受け、流れるような黒髪に血をにじませて、しかしその目は死んではいなくて。
「そちらが死神じゃろうと、わらわは生命の救済者じゃ。わらわがおる限り誰も殺させぬ」
 カグヤは両手を広げた、その瞬間。
 その場を満たす暖かな光、霊力それは。カグヤのケアレイン。
 それだけはさせない、そうセクメトは瞬時に判断。カグヤとの距離を一瞬で詰めて、その右腕をカグヤの腹部にさしこんだ。
 あたりに血が飛び散る、香しい血の香りがセクメトの鼻を衝く。
 これで……。
 そうセクメトは思った。これで完全勝利だと。
 しかし、次の瞬間、カグヤの表情を見て、セクメトは思った。
 セクメトは反射的に後悔した。
 彼女の過ちは脅威度を見誤ったこと。
 この女がいる限り誰も殺せない。そう本気で思ったこと。
 そし過信した、自分の力を。この女程度一撃で殺せる、そう思ったのが間違えで。
 カグヤの腹部にめり込むセクメト腕、そして吹き出す血液。その腕を引き抜き輝夜の首を跳ね飛ばしたいが、なぜかその腕は抜けない。
 見れば輝夜の腕が、これでもかというくらいにセクメトの腕を締め付けていた。
 セクメトは呻く、そして腕を上下に動かしたり、内臓をわざと抉ったり、痛みで手を離させようとした。しかし。
 カグヤはセクメトを解放することもなければ、ケアレインを止める気配もない。それどころか重症者からクリアレイ、ケアレイをかけていく余裕すらあった。
 なぜだ、そうセクメトは混乱する、想像を絶する苦痛を今味わっているはずなのに。
 内臓をひき潰される痛みを味わっているはずなのに。
 なぜ、この女は止まらない。
 自分の痛みすら、二の次で。顔をしかめることすらせずに。
 なぜ微笑み続けることができる?
「壊すことしかできない者はつらいのう」
 気が付けば。セクメトの背後には、リンカーたちが立っていた。軒並み傷を癒し、しっかりとした足取りで剣を握っている。
 そんなセクメトの頭をカグヤは盾で殴りつける、反射的にそれから逃れようと飛ぶセクメト。その先には。
 一二三とカゲリの無形の影刃がから作り出された闇があった。
 闇に飲まれながらも、バック転で抜け出そうとするセクメト。しかし。
「そいつはもう見た。確かに素早いってのは強みだが……」
 背中にさく裂する龍哉の爆拳。背骨が砕けるような感触。はじかれるセクメトの体。
「おらあああ!」
 リィェンがチャージ。大剣をまっすぐ地面に水平に構え。音すら切り割く速度でセクメトへと突き立てた。
 その一撃でセクメトは背後の壁に叩きつけられて。そして。
「喰らいやがれ!」
 聖の手の中で閃く刃。
「千照流(翠騎)ーー……双撃!! 時雨(レント)」
 一気呵成で上段切り、衝撃波を突きで放ち、紙のように宙を舞ったセクメトを、追撃の一太刀で一刀両断にした。


●第七章 撤収

 マミーとオベリスクがあらかた片付いた陽動班は、それを眺めていた。
 リンカーたちの手の届かないはるか上空をかけるヘリがピラミッドの天辺に向かうのを。
「あれは、なんだ?」
 正護が歩いてピラミッド入口付近まで戻ってきた、そこでは疲れてダウンしているキミカや、他のメンバーが寝そべっている。
 移動手段を失ったオルカメンバーも例外ではない。
「敵もやけだな」
「LPCでもいけないのか?」
 遊夜が言う。
――無理だろ
 カイが間髪入れずに言った。その時である。
ピラミッド上部が爆発した。
 その頭頂部に立っているのはギシャ。
 彼女は片手で短剣をもてあそんでいる。コクマーである。
「く……忌々しい、リンカーども!」
「言いたいことは、それだけ? 頭痛いから帰りたいんだけど」
 ギシャは肩を抑えながら言った。
 逃走したセラエノを追うのはマッピングのおかげで容易かったが、焦って罠にかかってしまったのだ。しかも厄介なことに傷がふさがらない。
「だが、私もこのまま捕まるわけにはいかない。その短剣は一時預けよう」
 そうセラエノメンバーは近づくヘリの梯子に手をかけた。
「楽しみだな、夜は近い。君たちの絶望に沈む顔が今から楽しみだ」
 そうヘリはセラエノの隊員を回収し空に飛び去っていく。
 リンカー輸送用のヘリ以外に何かあれば追うこともできたのだろうが。
 今回は最低限の航空機のみしかなく。
 リンカーたちはそれを指をくわえて見ているしかなかった。


 エピローグ

 今回の一件、短剣の奪取は成った。
 ピラミッド内外問わず激戦で、帰りのヘリでは元気なものは一人もいないが。それでも脱落者はいない。
 上場な戦果だろう。これはひとえに全員の連携と気合あっての戦果だろう。
 そう暁隊長、燃衣は微笑む。
 のんきに寝息を立てる同小隊の仲間たちを見やりながら、この先に待ち受ける更なる激戦のために牙を研ぐことを己に課す。
 対して初陣を華々しく飾ったオルカのメンバーも披露困憊の様子だった。
 まぁ仕方ない、かなり積極的に動いていたし、戦場の中心と言っても過言ではない働きをしたのだから。
「ふふ、顔に砂がついているわよ? ダメじゃないの女の子なんだから」
 そう言うとNikolausはゼノビアの顔を持っていたティッシュで綺麗に吹いていた。
 ゼノビアがその腕から逃れようともがくも、ニコニコ顔のNikolausはそれすらもうれしいようで。
「はい、可愛いゼノビアちゃんに戻ったわ」
 そうにっこりとほほ笑むと、髪も軽く整え始める。
「お疲れ様、頑張ったわね」
 そう真白はシャルボヌーの膝の上でじゃれている。
「お城作りたかったなぁ」
<よかったら……今度、一緒に作りましょう>
 そうゼノビアは真白に向けて手帳を広げた。
 
 そうリンカーたちは完全勝利に酔いしれる。
 新月の闇がどれほど深いかも知らずに。
 それがどのような試練を、皆に課すかもわからずに。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
  • シャーウッドのスナイパー
    ゼノビア オルコットaa0626
  • Twinkle-twinkle-littlegear
    唐沢 九繰aa1379
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
  • 緋色の猿王
    狒村 緋十郎aa3678
  • 生命の意味を知る者
    一ノ瀬 春翔aa3715

重体一覧

参加者

  • 夢ある本の探索者
    努々 キミカaa0002
    人間|15才|女性|攻撃
  • ハンドレッドフェイク
    ネイク・ベイオウーフaa0002hero001
    英雄|26才|男性|ブレ
  • 魅惑のパイスラ
    佐藤 咲雪aa0040
    機械|15才|女性|回避
  • 貴腐人
    アリスaa0040hero001
    英雄|18才|女性|シャド
  • エージェント
    帯刀 刑次aa0055
    人間|40才|男性|命中
  • エージェント
    アストリアaa0055hero001
    英雄|10才|女性|ドレ
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
    人間|22才|男性|攻撃
  • 義の拳姫
    イン・シェンaa0208hero001
    英雄|26才|女性|ドレ
  • 想い深き不器用者
    羽柴 愛aa0302
    人間|26才|男性|防御
  • 朝焼けヒーローズ
    Nikolaus Wirenaa0302hero001
    英雄|23才|男性|バト
  • 惑いの蒼
    天城 稜aa0314
    人間|20才|男性|防御
  • 癒やしの翠
    リリア フォーゲルaa0314hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
    人間|16才|女性|命中
  • アサルト
    カイ アルブレヒツベルガーaa0339hero001
    英雄|35才|男性|ドレ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
    機械|24才|女性|生命
  • おうちかえる
    クー・ナンナaa0535hero001
    英雄|12才|男性|バト
  • シャーウッドのスナイパー
    ゼノビア オルコットaa0626
    人間|19才|女性|命中
  • 妙策の兵
    レティシア ブランシェaa0626hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • 乱狼
    加賀谷 ゆらaa0651
    人間|24才|女性|命中
  • 切れ者
    シド aa0651hero001
    英雄|25才|男性|ソフィ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • この称号は旅に出ました
    弥刀 一二三aa1048
    機械|23才|男性|攻撃
  • この称号は旅に出ました
    キリル ブラックモアaa1048hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • Twinkle-twinkle-littlegear
    唐沢 九繰aa1379
    機械|18才|女性|生命
  • かにコレクター
    エミナ・トライアルフォーaa1379hero001
    英雄|14才|女性|バト
  • 正体不明の仮面ダンサー
    蝶埜 月世aa1384
    人間|28才|女性|攻撃
  • 王の導を追いし者
    アイザック メイフィールドaa1384hero001
    英雄|34才|男性|ドレ
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 木漏れ日落ちる潺のひととき
    コルト スティルツaa1741
    人間|9才|?|命中
  • ギチギチ!
    アルゴスaa1741hero001
    英雄|30才|?|ジャ
  • 厄払いヒーロー!
    古賀 佐助aa2087
    人間|17才|男性|回避
  • エルクハンター
    リア=サイレンスaa2087hero001
    英雄|13才|女性|ジャ
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336
    人間|20才|男性|回避
  • 家を護る狐
    古賀 菖蒲(旧姓:サキモリaa2336hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 幽霊花の想いを託され
    花邑 咲aa2346
    人間|20才|女性|命中
  • 守るのは手の中の宝石
    ブラッドリー・クォーツaa2346hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • 対ヴィラン兵器
    鬼灯 佐千子aa2526
    機械|21才|女性|防御
  • 危険物取扱責任者
    リタaa2526hero001
    英雄|22才|女性|ジャ
  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141
    獣人|10才|女性|命中
  • えんだーグリーン
    どらごんaa3141hero001
    英雄|40才|?|シャド
  • 初心者彼氏
    鹿島 和馬aa3414
    獣人|22才|男性|回避
  • 巡らす純白の策士
    俺氏aa3414hero001
    英雄|22才|男性|シャド
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命
  • 魔法少女L・ローズ
    ルナaa3447hero001
    英雄|7才|女性|ソフィ
  • 御屋形様
    沖 一真aa3591
    人間|17才|男性|命中
  • 凪に映る光
    月夜aa3591hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • お母さんと一緒
    真白・クルールaa3601
    獣人|17才|女性|防御
  • 娘と一緒
    シャルボヌー・クルールaa3601hero001
    英雄|28才|女性|ドレ
  • 絆を胸に
    麻端 和頼aa3646
    獣人|25才|男性|攻撃
  • 絆を胸に
    華留 希aa3646hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 緋色の猿王
    狒村 緋十郎aa3678
    獣人|37才|男性|防御
  • 血華の吸血姫 
    レミア・ヴォルクシュタインaa3678hero001
    英雄|13才|女性|ドレ
  • エージェント
    折原 紫依aa3697
    機械|17才|女性|命中
  • 執事候補
    加賀 千尋aa3697hero001
    英雄|15才|男性|ドレ
  • 生命の意味を知る者
    一ノ瀬 春翔aa3715
    人間|25才|男性|攻撃
  • 生の形を守る者
    アリス・レッドクイーンaa3715hero001
    英雄|15才|女性|シャド
  • 心優しき教師
    世良 霧人aa3803
    人間|30才|男性|防御
  • 献身のテンペランス
    クロードaa3803hero001
    英雄|6才|男性|ブレ
  • 発想力と書物を繋ぐ者
    ヴィヴィアン=R=ブラックモアaa3936
    機械|30才|男性|攻撃
  • ウサギのおもちゃ
    ハルディンaa3936hero001
    英雄|24才|?|ドレ
  • ツンデレお嬢様
    アガサaa3950
    人間|21才|女性|防御
  • 星辰浮上
    カリオフィリアaa3950hero001
    英雄|32才|女性|ブレ
  • 喪失を知る『風』
    国塚 深散aa4139
    機械|17才|女性|回避
  • 風を支える『影』
    九郎aa4139hero001
    英雄|16才|?|シャド
  • エージェント
    ヴェントット ルッリョaa4169
    機械|33才|男性|回避
  • エージェント
    カテリーナ スフォルツァaa4169hero001
    英雄|10才|女性|ドレ
  • 葛藤をほぐし欠落を埋めて
    佐藤 鷹輔aa4173
    人間|20才|男性|防御
  • 秘めたる思いを映す影
    語り屋aa4173hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
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