本部

【東嵐】連動シナリオ

【東嵐】惨禍流離う玻璃の宮殿

昇竜

形態
イベント
難易度
難しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
25人 / 1~25人
英雄
24人 / 0~25人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2016/04/16 00:51

みんなの思い出もっと見る

掲示板

オープニング

●広州市都心

「ゲームは中々楽しいんだけどさぁ……ちょーっとシゲキが足りないんだよね」

 再開発で脚光を浴びる珠江新城――地上400メートルを超えるそのビルのホテルの一室で、愚神は少し考える素振りをした。悪魔染みた爪の長い指が、結った黒髪を弄ぶ。腰掛ける椅子の足元に横たわるのは、この部屋の住人の変わり果てた姿。

「そろそろ、顔出しちゃおうか? ああ~楽しみだなぁ、」

 怒り? 憎しみ? 彼らはボクにどんな表情を見せてくれるだろう! そうと決まれば、相応の舞台を用意しなくては。ネタ探しだ。愚神は立ち上がり、周囲を見渡した。そして足元に落ちたリモートコントローラを拾い上げ、血塗れのボタンを押してみる。惨殺現場に他愛無いバラエティ番組が流れ出した。

『即将推出是愚人節這一天――』
「ん~……エイプリルフールかぁ。そういえば、そんなお祭りもあったよねぇ」

 それは確か、人間どもが嘘を吐いて吃驚させあって遊ぶ日だ。愚神はしばし沈黙ののち、名案に思い及び肩を震わせてけたけたと笑い声をあげた。

「じゃあボクが、とっっておきのサプライズでお祝いしてあげるよ!
 ふふ、ふふふふふ……間違いに気づいた瞬間の君たちのカオ、早く見てみたいなぁっ」



「トリブヌス級、反応出ました!」
「来たか! どこにいる?!」
「珠江新城西南……103階建て超高層ビルです!」
「よし、すぐエージェント招集だ! ……!! こいつか――道理で、手口が小汚い」

 広州市を襲った愚神・従魔の襲撃。それらを主導したと思われる高位愚神の足取りがようやく掴めた。時刻は午後7時、込み合う香港の街路に緊急対策チームの乗った専用車両のサイレンが響く。両脇へ退避する自動車の群れを駆け抜け、あなたたちは現場へ急いだ。

「敵、トリブヌス級愚神。識別名『幻月』(ファンユエ)」

 アラビア半島で消息を絶っていたこの愚神の活動が、ここ広州で観測されたという。

「殺人ショークラブの惨劇は知る方も多いと思いますが、それも幻月の仕業と言われています。
 人間の絶望を至上の悦びとし、ゲームと称しては事件を引き起こす危険な愚神です。
 特筆すべきは、その異常なまでの生命力……倒しきるのは難しいかもしれません。
 撃退し、生還を。情報を今後に活かすことが、最終的に私たちの勝利を導きます」

 そして今回のゲームの舞台に選ばれたのは、透明な水晶をコンセプトに作られたタワービルディング。この建物は筒状の耐震構造体を軸としてスーパーストラクチャーによって建造され、巨大な開口部を有する。強化ガラスで覆われた外見は正にクリスタル・パレス。

「このビルは70階から100階まで吹き抜け構造で、高級ホテルが入っています。
 一般人の方々は従魔から逃げて、今は70階ホテルロビーを目指しています。
 幻月は100階付近にいるでしょう。そこで何をする積りか分かりませんが……
 今ならまだ、ゲームが始まる前に到着できるかもしれません」

 急げば間に合う、その想いでエージェントたちはビルに駆け入った。幻月の従魔は一階から入って暴れながら上へ一般人を追い立てており、低層階は無残に破壊されている。直通エレベーターを使う方が早いのは確実だが、全員で一つの移動手段を利用すべきではないとも考えられた。そこで一行は二手に分かれ、一方が階段で、一方がエレベーターで上層を目指すことにする。

 そしてエレベーターで上層へ向かった面々を、爆音が襲った。

 振り返ると、二重の窓の向こうで建設中の高層ビルが黒煙を噴き上げている。階段を選択したメンバーにもその気配は感じられた。直後、支部より通信が入る。

『幻月は、ツインタワーとして建設中の隣のビルにも手を差し向けていたようです……!
 そちらにも、作業員が取り残されていると連絡がありました。
 とても見捨てられません……どうか、彼らも助けて頂けませんか!』

 止めねばならぬ惨劇はふたつ――あなたは、どう戦う?

●幻月の夜

「アハハハハ、アハッ、アハ、アハハハハハハハっっ!!」

 幻月は100階、吹き抜けの頂上部で。女性とも男性とも、大人とも子供ともつかぬ声で狂ったように笑っていた。すべてを卑下したように細められた目が、今は遥か下界に居るあなたたちの方を見る。

「どう?! ボクのサプライズ、気に入ってくれたかな?!!
 実はさっきあっちにも行ったんだけど、出来上がってないからつまんなくって。
 嗚呼でも――畜生の君たちには“面白い”かもしれないね?
 さあ……カードは2枚」

 このビルと、隣のビル。その中の人間、どちらを見捨てるか?
 君たちにはそういうルールのゲームだということにしておこう。

「選べないもんねぇぇ、君たちはさぁぁぁ?
 どうせ、どっちも助ける! とか言っちゃうんだろ???
 アハハハハハ、君たちはどっちも助けられないんだよ!」

 適当に遊んだところで隣のビルを倒壊させて、畜生もろともこの塔は串刺しだ。
 かくして、幻月直々の遊戲(ゲーム)は始まる。

「ボクはね、不死身なんだ……だからいつも暇で、面白いこと探してるの。
 さあ、見せて! その苦悶、悔恨っ、絶望をおおおおォォっ!! アッハハハハハハハハ!!!」

 その言葉の本当の意味を、エージェントたちはまだ知らない。

解説

概要
超高層ビル(以下、水晶塔)の解放を目指します。一般人は70階へ集合し、皆さんは上へ向かっていました。しかし隣の建設中ビルも襲われたと連絡が入りました。

行動選択肢
この依頼では離地に主戦場が3つあり、最初期の動向A~Cによって対応戦場が変動します。
A、直通エレベーターを選択し、70階もしくは100階で降ります。70階では大勢の一般人が広いロビーにひしめく中、階段から上がってくる『凶水怪物』を倒します。なお、避難が現実的な状況ではありません。100階では『幻月』と対峙します。
B、階段を選択し、通報を受けたあと建設中ビル50階へ急行します。『寿華徒』『凶水怪物』を倒し、逃げ惑う作業員を救出してください。広く明るく、建設資材が散乱した戦場です。
C、それ以外の行動をとります。

敵構成
トリブヌス級愚神『幻月』(ファンユエ)
 特殊攻撃
 ・絶死界(ジュエスージエ)
  床や壁から死者の手が伸び、纏わりつく。範囲5(射程1~10)
  命中対象へ【拘束】【狼狽】付与。(魔法防御と特殊抵抗による判定有)
 ・啼苦悦(ティークユエ)
  直線の重力波を放つ。(射程5、貫通)
  命中対象へ【劣化5】(命中、回避)付与。
  更に対象を転倒させる。(特殊抵抗による判定有、転倒からの復帰は次ラウンド)
 ・その他、未判明の能力が2つある。
ケントゥリオ級愚神『寿華徒』(ショウハアト)
 外見は獣のような巨人で、無口。攻撃と命中が高い。
 特殊攻撃
 ・チャージ
  パッシブ。攻撃が上昇するが、2ラウンドに一回しか攻撃宣言できない。
 ・エンチャントファイア
  パッシブ。攻撃が命中したとき、対象に1d6の追加ダメージを与える。
デクリオ級従魔『凶水怪物』(スンセグァイウ)
 水晶塔70階、建設中ビル50階にそれぞれ最大20体ずつ出現。
 外見は多頭の巨大両生類。
 特殊攻撃
 ・魔法ブレス(射程1~2)
 ・幻月の合図で、一斉に自爆する。

リプレイ

●神で無し

「バベルの塔っていう神話――」
『気が滅入るだけだからそれ以上言うな。仕事だ』

 ギシャ(aa3141)の言葉を、どらごん(aa3141hero001)が遮る。物語の中で、神は天まで届く塔を築こうとした人々に試練を与えた。

「けど神は神でも、こいつ愚神だし」
『領域の不可侵を謳う程度には自信家と見た。侮るな』
「勿論。皆が上に集められてるから、何かあるとしたら下だよね」

 戦場へ急ぐ仲間を見送り、ギシャは禍中二棟の塔を望む位置でそれらを見上げた。爬虫類染みた金色の瞳を伏せると、ビル外周を飛ぶライヴスの鷹と視界が共有される。

「さっきリュカが通信で、下から階段で様子を見に行くって言ってたね。じゃあギシャは、各階ぐるっと一周調べてみよっと。ガラス張りだから、ある程度は外から見えるしね。従魔のせいでボロボロだし、何かのキッカケで崩れるかもしれない」
『成程、そういう罠がないか探すという訳か。だが、鷹の目は2分も保たん……10階程度までが限界だろうな』
「まあね。……んー、特に何も見当たらないか。報告報告、っと……うわ、スゴイ混線してるじゃん」

 ライヴス通信機の機能は一般的な携帯電話同様。発信と受信を同時に行う事や、複数発信を同時に受信する事はできない。戦闘組には回線を発信状態で維持している者も多いうえ、距離が離れているので、上手く繋がらないようだ。彼女は知る由も無いが、障害の原因は他にも有った。

「しょーがない、何度か試してみよう。情報は力だからね、少しでも早く伝えたい」

 ギシャは鷹をライヴスに帰すと、低層の探索をする為にビルへと向かう。大通りを跨ぐその陸橋の上は実に景色が良い。

「この辺が、ビルが倒壊したら一番見晴らしいいかなぁ」
『……俺にはおまえの発想が理解出来ないが、賭けには付き合おう』

 息をする様に残酷な思い付きをするギシャを複雑に思いつつも、どらごんはただ彼女を見守った。

●鉄箱

「チッ、本当に厄介な野郎だなぁおい!」
「こういう人、だいっきらい……! 自分だけ安全な所に居て見物とか、なんだと思ってるの!」

 高速昇降するエレベーター内からは、通り向かい双塔の片割れが黒煙を噴く様が見えて。

「……ん、落ち着いて」
「馬鹿と何やらは高い所が好きと言いますからね。……ゲームなんでしょう、これも」

 声を荒げる麻生 遊夜(aa0452)と御代 つくし(aa0657)を、ユフォアリーヤ(aa0452hero001)が抑える。メグル(aa0657hero001)は言ってから、蔑みの視線を上方へ投げた。十影夕(aa0890)は平坦な口振り、シキ(aa0890hero001)は一人、窓縁を占領して。

「これって本当にゲームなの? スポーツっていうなら、まだわかるけどね」
「まったくもって、おうぼうなやからだね。すておけないよ」
「……どっちにしても、強制エントリーなんて冗談じゃない、でしょ」
「プレイヤーは俺達、マスターは幻月……本人は遥か上で見下ろしている……絶望を好む愚神のゲーム、か」

 高まる緊張の中、真壁 久朗(aa0032)はぼそぼそと途切れとぎれに。セラフィナ(aa0032hero001)の銀糸は静やかに夜街の光をはねる。

「乗れば危険は必須、ですけど……でも、やるんですよね? クロさん」
「……心して掛かるしか無いな。盤上となるのは此処か向こう、果たしてどちらのビルか……」
「何方であっても、」
「……ん、今はやれることをやる、だよね?」

 かくり、首を傾げるリーヤの頭を、麻生が撫で。

「おぅ、それしかあるまい」
「……ん!」

 刺毛の長い尾をブンブン振って、リーヤは嬉しそうに擦り寄る。

「幻月……人質をとったつもりかの?」
「んー……何か違う気もするけどね……でも、」

 巨大な密室と化したビルの状況を煩う奈良 ハル(aa0573hero001)に、今宮 真琴(aa0573)はぽつり、ぽつりと言葉を紡ぐ。

「選択肢は他にないんだよ……助けなきゃ」
「……そうだ、俺達の選択は決まっている……」

 真壁はそれ以上を言わない。誰もが同じ気持ちだから、言う必要が無い。救いたいのは、全ての命。彼らは、その使命を課せられている。

「これだけの人を、守ることが……」
「恐れるなよ。俺様は決めた、お前さんも全員救うなら腹を決めろ」

 震える手でブローチを握る少女に、襦袢の薬師は言い放つ。二人の過ごした生の長さの差を考えると、その仕打ちは冷酷ですらある。だが、ガルー・A・A(aa0076hero001)にとって紫 征四郎(aa0076)は、宥め賺して扱わねばならぬ子供では有り得ない。

「はい。征四郎は、決して足を止めません」

 顔を上げた瞳、宿る決意はガルーの期待を裏切らない物で。其が契りし誓約なれば、彼は彼女の望みを叶えるだろう。紫はブローチを外して握り、ガルーと拳を合わせる。――菫色の光蝶の群れに、白衣が舞った。性別が生む力差、鍛錬に要する年月、その全てを超越して、守りたい物を守れるだけの力が紫へ。

「――必ず、守り抜いて見せます」

 共鳴した紫は、凛々しい騎士の姿。柔和なテノールは力強く空気を揺らす。間もなく70階、仲間達も続けて共鳴状態に入った。紫はドアの前に進み出る。

「私達は、70階へ」
『蕾菜、自分達も70階へ行きましょう』
「風架さん……でも、上の階が。隣も……」

 戸惑う零月 蕾菜(aa0058)を、宿る英雄 十三月 風架(aa0058hero001)が諭した。

『気になるだろうけど、今は集中。守れるものも、守れなくなりますよ』
「さて。皆、分かっておろうが……重要なのはゲームの指し手を理解し、次なる戦いの布石を打つ事じゃ。死に急ぐでないぞ」
「はいっ! 受けた攻撃は、どんな攻撃だったかきちんと覚えておきます!」
「うん……まぁ、そうなんじゃが」

 元気よく答える御代に、カグヤ・アトラクア(aa0535)は神妙な面持ち。彼女が病み上がりなのは皆承知の上。

「……つくし、無理はするなよ……」
「うん! 全然大丈夫だよ? 身体もうなんともないし!」
「……今何考えてるか、当てテあゲよウカ? くろー」

 その声に混じる機械音声はシルミルテ(aa0340hero001)の物。佐倉 樹(aa0340)は真壁にだけ聞こえる様に。

「愚神小泉の事――でしょ?」
「……」

 沈黙は肯定の意。

「あいつのあの言動……マガツヒと組んでるらしいとは思えなかった」
「分かってる……」
「一般人の中にだって、ナニカが混じってるかも。不審に思ったら、」
「無論だ。パニッシュメントの用意ならある……余計な世話を焼くな」
「……スナおニハイテ言えバイイのニ」
「シルミルテ」
『もう、クロさん』

 視線だけでうるさいぞ、と言わんとする真壁を、セラフィナが諫める。返事をする様に、佐倉の瞳で二色の光彩がコントラストを強めた。

「私の通信機、くろーのと回線繋げっぱなしにしとくから。何か有ったら直ぐ言って」
「……ああ」
『クロさん……先の事件を思えば、何もかも疑わしくて当然だと思います……でも、イライラしちゃダメですよ?』
「……分かってる」

 自分は人々を救うだけではなく、見極めねばならない。真壁は信頼する親友・齶田 米衛門(aa1482)へ上階を託した。

「ヨネ、俺も70階で降りる……上は頼んだ」
「任せて下さいッス! な、スノーさん。こったらはらわり奴さ倒されっがや!」
『あぁ、行こうぜ兄弟! ぶッッッッッ潰してやる!!』

 今回の相手、スノー ヴェイツ(aa1482hero001)が最も嫌う類の様だ。何時になく怒気滾らせる相棒に、齶田は無言で拳を打ち鳴らした。

「へば轍、行って来る。連絡密にして、幻月の手も明かして行きてぇな。もし何かあったら、どうすれば良いが聞く」
『ああ……通信機、お前のと回線繋げっぱなしにしとく。僕は気になる事を調べて来るよ……』

 今はまだ遥か階下に居る不知火 轍(aa1641)は、齶田に通信で。

『佐倉さんも、多分、何か考えがあると思う……僕はあの人を信頼してる。何か有れば、フォローを頼む……』
「おう、ぜってぇそうする。みまぎだがら」

 不知火は低い声で応え、通話口を離れた。

「では、指し手の顔を拝むとするかの。いずれ食い破り泣かす為に」
「さて、僕もこの狂ったゲーム主催者の顔を拝みに行くとしますか」

 クー・ナンナ(aa0535hero001)は同じ事を言っている召喚者とシウ ベルアート(aa0722hero001)に辟易として。

『シウも大概だけどさ……カグヤ、また悪趣味な事考えてるでしょ?』
「何を言う、知るということはそれだけで力じゃ。幻月とやら、じっくり観察させて貰うぞ」

 謀略と篭絡を好む蜘蛛の様な女は、意匠を凝らした着物の胸を抱いてにたりと笑った。ここまでマッドで無いにしろ、シウも近しい気質と言えるだろう。対して、桜木 黒絵(aa0722)は素直で単純。

『嫌な予感がする……手遅れになる前に、このゲームを止めないと!』
「そうだねクロエ、直感でそこまで分かる君の感性、凄いと思うよ」
『むぅ。お兄さん、何かイヤミー……』
「そんな事無いさ、どちらかのビル襲撃が罠である可能性は充分有る。考察の精度を上げるのに、出来れば情報が欲しかったけど……」
『うーん、やっぱり間に合わないみたいだね』

 来る途中で本部に申請した資料は手元に届いていない。

「まあ、人が大勢集まる場所を狙うとか、中々いい性格の愚神だって事は分かってるよ。もし自分が幻月だったらどんな手口を使うか考えてみたんだ……結果、一般人の中に罠――例えば変身できる従魔が紛れ込んでいる可能性に至った。70階は気を付けて見ているよう、頼めるかい? 征四郎」
「はい、シウ。マカベ達もそう言っていました」
『私達も、ライヴスゴーグルで警戒しておくね! ……あれ?』
「念のため拓海の方にも通達を……何だ? 雑音がひどいな。何とか連絡は取れそうだけど……」
「こんな時に、故障ですか?」

 紫がシウに問う。――否、故障ではない。ライヴスゴーグルで見ると、水晶塔が巨大な結界で覆われている事が分かった。桜木が言う。

『幻月の能力……! 資料が来ないのも電波障害のせいかな?』
「おそらくね。一体どんな効果を持った結界だろうか……情報は少しでも引き出しておきたいな。夕君、スマホはどう?」
「……ダメ。繋がらない」
「インカムもアカン……連絡取りにくいのは往生するな。けど、ライヴス通信機やったら何とか。逐一連絡取り合っとこ」

 弥刀 一二三(aa1048)の言葉に、皆頷いてヘッドセットを直した。

『良かったなヒフミ、私にやる気があって』
「アホ、こないな場所でふざけた格好できるかい」

 キリル ブラックモア(aa1048hero001)はおそらく今日の報酬に、菓子を約束させているだろう。

『しかしやり辛いな。今までH.O.P.E.が愚神幻月とやり合って分かったことは、兎に角生命力が高いという事だけ、か』
「いや、分かっとる事はもう一つあるで。奴はえげつない愚神や……70階に避難者集めて、何もせへん訳が無い」
『では、如何すると?』
「例えばやけど……従魔に仕掛けをして、何か残酷な殺し方が出来る様に細工しとるとか。ガラスの多いこのビルを狙ったんも、理由が有るかもしれん。派手にビル壊してくるかもしれへんし、」
『ふむ、それで応急修理セットとウレタン噴射器か』

 それぞれに幻月の思惑を想像するエージェント達。エレベーターは、減速を始めた。
 ――階下。事前に報告書類に目を通した不知火が注目したのは“映るもの”、特に“水”。

「幻月って、自分で名乗ってるんだろうし……名前の意味、湖に映った月とも取れるんだよな……とすれば、反射する物を媒介に何かの能力を発揮出来ると考えても、不自然ではない……」
『ガラス、鏡、水、水晶――姿の“映るもの”を介して、移動や遠視が出来る能力……ですか?』
「そう。鏡映しなのかなと、何となく思った」

 雪道 イザード(aa1641hero001)と共鳴し、不知火は階段で上階を目指す。道中はオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)と同じだが、彼らとは別れ低層からしっかり見て回る。

『オリヴィエ、俺達は先に行こう。確認する事は確認して、せーちゃん達の所に全速力だよ!』
「ん。……あんた達も、気を付けろ……」
「あぁ」

 白い肌と髪をオリヴィエの色に染めた木霊・C・リュカ(aa0068)は階段を駆け上がる。不知火はフロアに降りると壁を蹴り、素早く移動しながら“映るもの”を探す。とは言えこのビルは四方が窓。

『本当にそんな能力を持っていたら、一大事ですよ』
「……どう検証するか? 潰すしかないよね」

 不知火はそれらしい物に片っ端からクレヨンで落書きをしていく。
 敵を倒す為に、敵から遠ざかる……二律背反、面倒だ、本当に。

「……あー、やんねぇと、かぁ……メンドイな……」
『やれる事をやるのでしょう? シャンとなさい!」
「チッ……分かってるよ」

 不知火は悪態を吐きながらも、足を動かし続ける。オリヴィエは数階毎に階段から顔を出し、各階の様子を伺いながら走った。

『隣のビルが爆発したのは従魔の能力かもしれないし、70階の皆が極力一体ずつ撃破出来る様に、敵同士の距離は開けさせたいね』
「分かってる」

 階段を登り切ると、其処には多頭を持つ体長3メートル程の両生類の姿が。それも一匹や二匹では無く、廊下を埋め尽くす様に蠢いている。

「ここから階段の位置が変わるのか」
『フロアマップを探そう。こいつらに構っている時間はないから、回避に専念してスルーした方がいい!』
「分かった……数や移動スピードは見ておこう。弱点は目鼻や腹部の装甲が薄い部分――見た目通りと言った所か」

 オリヴィエは従魔達の隙間をすり抜け、階段を目指す。

『オリヴィエ、せーちゃん達に弱点とか連絡した方がいいんじゃない?』
「そうだな……けど、さっきからライヴス波が良くない。ちょっと時間かかる」

 通信機を取り出し、オリヴィエは通話を試みた。

●人間絨毯

 エレベーターが止まる頃には、外の様子は音で感じ取れる様になっていた。悲鳴、入り混じる怒号、無数の足音、何かが倒れ壊れる音――チン、と品の良い音を立てて開いた鉄扉の向こうは、地獄だった。扉は閉じ、中に残った者は100階へ。

『すごい人の数ですね……』
「……掻き分けて移動していたら、間に合わない……跳ぶぞ、セラフィナ……」
『はい、何時でも!』

 真壁は背後の壁を蹴って跳び上がった。白いコートが人々の頭上を翻る。オブジェ、ソファ……様々な障害物を足がかりに階段へ。目指した暗がりからは、数体の従魔が飛び出して来た。一見すると巨大な蛙。

「おっと、もうお出ましか……偵察の手間が省けるのは有り難いこった。急いで階段前に陣取ろう。あの大きさなら上手く戦えば各個撃破は可能そうだが……」
『……ん。問題は、総数が分からない事』

 麻生達も人込みを避けながら階段へ。同時に駆け出す紫の手には、大きな盾。

「うわああああああーーーッ!!!」
「キャアアーーッッ!!」

 従魔達に、人々が踏み潰されていく。紫は一体の前に立ち塞がり、その攻撃を弾き返した。超重量を誇る盾は所作にブレ一つ無い。反撃はブラッドオペレート、ライヴスの刃が従魔を切り刻む。

『――よし。この傷から流れる血は自然には止まらねぇ……征四郎、今のうちだ。味方と対象を合わせて、一体ずつ片づけよう』
「はい、ガルー。麻生さん、援護をお願いできますか?」
「おう、任せな! 熱ぃが、我慢してくれよ!」

 階段に向かっていた麻生は紫の要請に応じ、従魔にイグニスの銃口を向けた。トリガーを引くと加圧・炎上したライヴスが凄まじい勢いで噴き出し、周囲が熱気で包まれる。

「ちっと干乾びてくれや、両生類」
『……ん、こっち来ちゃ嫌よ?』

 蛙の様な悲鳴に、リーヤはクスクス笑い。従魔は逃げ惑った末に滑っていた皮膚を燻らせて倒れる。

「さあ、次はあっちだ」

 あちこちで従魔に襲われる人々に対し、エージェントの数は限られている。麻生は次の標的へ走った。紫はへたり込んだり泣き出したりする一般人達に、強く訴える。

「不安があるとは思いますが、ここへ敵は来させません。必ず殲滅します」

 ――だから、どうか信じて。その言葉は人々の心に深く染み入り、彼らを落ち着かせた。誘導は、零月が行ってくれている。

「さあ、彼女の指示に従って下さい。皆さんを守ってくれます」
『征四郎。狭い場所で迎え討てば、順当に倒せそうだな』
「はい。私たちも階段へ行きましょう」

 ガルーの言に従い、紫も階段へ。彼らが一般人を救っている間に、真壁は階段の前で後続の従魔を押し留めていた。

「紫か……俺が前に出る。引き付け役は任せろ……」
「分かりました、では私が後方を持ちます。二重の壁といきましょう、マカベ」
「俺がその後ろで控えてるから、三重の壁でしょ? 真壁さん、紫さん」

 振り返ると、そこに居たのは十影で。

「……危ないだろう、下がってろ」
『クロさん、そんな言い方!』
「でも、通信機通じないし。これって非常階段だよね? 下の階段壊されると、いざってとき誰も避難できなくて、けっこうやばいかもしれないよ?」
「だからと言って……階下で戦った所で、状況は変わらない」
「それだけじゃない。従魔が見えると一般人にも不安感を与えると思うし、できるだけ階段の中に押し込みたい」
『……なるほど、征四郎、』
「はい。確かに、そうかもしれません」

 紫が頷く。フラメアの一閃が道を拓き、真壁はじりじりと前進した。

「……分かった。押し返せるようにしてみよう。いいな、紫」
「もちろんです」
「うん……二人が要だから、よろしくね。俺は邪魔にならないように、下がってるから」

 十影は距離を取り、ライフルでの狙撃に戻る。

「……最初の乱入を許しちゃったのは悔しいな。本当は先手を取りたかったんだけど、民間人が逃げ回っていて。でも、これはちょっとゲームみたいかもね」

 真壁と紫が抑えている敵を、彼らに攻撃を当てないように撃ち抜くのは、かなりスリリングなシューティングだ。

「……何か来る……」

 従魔の不審な動きを注意して見ていた真壁は、その僅かな予備動作に気付いた。盾を構え、味方の前に立ち塞がる。浴びせられたのは爆轟するライヴスの息吹。

「……ッッ……」
『これは……『魔法のブレス』ですね』
「……『範囲は前方4メートル』と言った所か……セラフィナ、リジェネーションだ」
『はいっ』
「紫、食らってるよな? 大丈夫か?」
「侮らないで下さい、まだまだ平気です!」

 紫は通信機を取り、従魔の能力を後方と、隣のビルに居る味方と共有する。真壁の通信機は佐倉と通話状態になっているので、彼女達も此方の状況を知り得ている。

『なるほど、魔法ブレス。蕾菜、違和感を感じた点があれば、自分達もすぐ報告しましょう』
「はい!」

 零月は到着後、直ぐに敵と一般人達との間に入っていた。

「皆さん! 可能な限り、階段と反対側に固まって下さい!」

 このビルは開口部が大きく、壁は殆ど無い。できる限り敵から人々を遠ざけるには、階段とは反対側――大通り側に、一般人を集めるのが一番だ。しかし取り乱している者も多く、彼女の必死の呼び掛けが全ての人に届いたとは言い難い。それでも自分を信じてくれた人々を守る為、零月は扇子を構える。

「討ち漏らしが結構いますね。……! ブレスが来る、」
『幻影蝶を』
「はい、風架さんっ」

 不審な動きに注意していた零月はそれを察知。彼女の放ったライヴスの蝶の群れに翻弄され、従魔は動きを封じられた。しかし、複数が次々に襲い掛かって来る。

『蕾菜、全て庇っていては、身体が……』
「……絶対に、後ろには通しませんっ! けど、手が足りない――」

 フラッシュバン、目も眩む閃光に零月は思わず顔を覆った。

「大丈夫……任せて」
「! 今宮さんっ」

 加勢はチョコバーを咥えた今宮。従魔が怯んだ隙に、ファストショットが従魔のターゲットを一般人から攫う。

「ありがとな、零月さん。あんたが一般人を集めてくれたお蔭で、大分ぶっ放し易くなったぜ」
「麻生さんも!」
「今、そこから従魔を引き離す。ちぃと待ってな」

 更に麻生が、連射性能の高いSMGルアールによる圧倒的な弾幕で従魔を制圧。じりじりと後退し、攻勢に出るタイミングを計る。

『従魔の射程は短いようじゃの。真琴、近いのは遊夜に任せ、ワタシ達は奥を殺ろう……近づかせる前に叩け』
「わかった」
「蕾菜、今です!」
「はい!」
『……ユーヤ、いま!』
「おう!」
「響け……鈴鳴り……!」

 零月のゴーストウインド、麻生と今宮のトリオが従魔達を襲う。

「とどめです!」

 駄目押しは零月のブルームフレア。業火に焼かれ、従魔は灰と崩れ去った。

「や、やっとひと段落つきました……」
『幻月……このままで終わるはずはないな……戦力分散か、もしくは他に目的があるのか』
「とりあえず今は、」
『うむ、救助が先じゃな』
「こう派手にやらかしてくれんなら、新手も察知し易いだろうが……」
『……ん、それだけじゃない、可能性』
「だな。敵は絶対に何か仕掛けてるはずだ、何かわからんのが悔しい所だがね」
『……ん、すぐ動けるようにしとく』
「あとは……一般の人は、なるべく壁を背に固まって貰って。四方が窓じゃ難しいけど……それに、上方注意……」

 今宮の言葉に、同じ事を考えていた麻生と零月も頷く。

「……なんか、早く降りた方がいい気がする……」
『奇遇じゃの……ワタシもそう思った。他の者もその様じゃな』
「これ、上に避難させるのが目的だよね……」
『じゃが、従魔を殲滅せん事には如何にも。早めにやらぬとな……』
「うん……階段の方に合流して、昇ってくる元を断とうか。でも、もうひとつのビルの状況も気になる……一応連絡、してみよう」

 そう考えたのは、彼らだけではなく。

『クロさん……』
「? どうした、セラフィナ」

 階段上まで従魔を押し戻し、尚戦い続ける真壁の心に、少年の様な訝しみの声。

『幻月は……そのつもりがあれば、もっと下の階で一般人の皆さんを殺せた筈です』
「……そうだな。此処に集めたのなら……何か罠があると思っていいだろう」

 その横で彼と戦線を支える紫の心にも、ガルーの声が囁き掛ける。

『征四郎。自分の知覚を、あまり信用し過ぎるなよ……何処に“嘘”があるか分からねぇ。例え相手が人間だとしても、明らかに違和があれば、最悪セーフティガスで判別する事も視野に入れておく』
「はい……私達が守るべきものだけは、見誤ってはいけません」

 紫は警戒の為にライヴスゴーグルを付けている。ふと、そこに強い波長を見た。それは従魔に類するものでは無く――同時に通信機が着信が。

「もうすぐ……そっちに着く」
「――!! オリヴィエ! リュカ!」
「従魔の弱点……分かったぞ。目とか腹とか、柔らかそうな所、だ」
「そんなの……絶対無茶しちゃダメだって、言ったじゃないですか!」

 遠目にもオリヴィエが怪我をしているのは分かった。彼らの間を阻む従魔が、オリヴィエの弱点看破込みのダンシングバレットと、紫の剣戟に沈む。紫はオリヴィエを支え、視線だけで「行け」と言う真壁に戦線の維持を任せ、一旦前線を離れる。

「すまない……囲まれた。フラッシュバンで離脱するのが、リュカと考えた作戦だったんだけど……」
『敵の数も、多かったもんね……道も、分かり辛かったし』
「もういいです、喋らないで」
『待て、征四郎。オリヴィエは危険を冒して、敵の情報を探りに行ってくれたんだ。得たもんを聞け。そして皆に伝えろ』
「ガルー……分かりました。オリヴィエ、確認できた事を教えて下さい」
「ああ……覗く程度の確認だから、正確かは分からないが……敵の数は数えた。階段の出入り口は防火扉で塞いでおいたから……従魔なら直ぐに壊してしまうだろうけど、多少はバラけさせる事ができたと思う。脚も遅いし、対処が楽になってる筈……」
「ありがとうございます、オリヴィエ、リュカ」
「紫さん、従魔、もうすぐ打ち止めだよ。俺、数数えてたから分かるんだ。状況次第では従魔を押し込みながら避難するしかないかも、って思ってたけど……何とかなりそう」
「流石です、トカゲ。もう少し頑張りましょう」

 話の聞こえていた十影は、従魔が残り僅かである事を伝えた。
 その少し下階では、不知火がビル機械室の設備を調べて。

「見取り図は手に入らなかったけど……僕に掛かれば、何処に何があるとか、大体分かるんだよね。特に細工は無い……やはり経済に興味は無いか。まぁ、だろうとは思ったけど」
『轍……それを調べに、ここへ来たんですか?』
「このビルは経済の象徴、機械室を調べておくのは定石……問題は結果じゃないんだ、イザード。やるかどうかだ」
『そう、ですね……』
「……後は、上に合流するよ。窓を割ってネビロスの操糸で降下しながら従魔を数えようかと思ったけど、正確性イマイチだし、オリヴィエ達が頑張ってくれたから。特殊強化ガラスって高いしね……」

 雪道は不知火の目から、上階を見据えた。

●少し前、100階にて

「ゲームの盤上へようこそ。舞台は気に入って貰えたかな?」

 エレベーターを降りた面々を出迎えたのは、ガラス柵の手摺上に立ち吹き抜けを見下ろす、幅広の烏帽子。

「――はじめまして、ボクは幻月」

 振り返った愚神幻月は、中性的な容貌に絡み付く様な笑みを浮かべ、恭しくお辞儀して見せた。

「随分礼儀正しいね……では、失礼の無い様に」

 進み出たのは佐倉。外套の裾を持ち、僅かに腰を落とし。

「はじめまして――あぁ、もしかして……""お久シぶリ""の方がいいのかな?」

 幻月は動きを止めて魔女を見下ろした。

「面白い事を言うね。さあ……何処かで会ったかもしれないねぇ?」
「……」
「佐倉さん……なすてすたら事を?」

 齶田がひそひそと尋ねる。佐倉はその聲に聞き覚えが無い。唯、""ゲーム""という単語を口にする敵には見えた事が有る。

「愚神小泉は""ゲームオーバー""だと言っていた。それに、覚えてる? 倒された愚神の消え方、まるで幻影の様だった」
「確かに……だば、愚神小泉は幻月の変身だった、って事っスか?」
「もしくは、それに類する何かだった……ソウいウ可能性モあル、って程度だけどね」
「寂しいな、挨拶してくれるのは一人だけなの?」
「これは失礼、出遅れたわ」

 続いてカグヤが、どこか楽しげに幻月の前へ。

「わらわはカグヤ・アトラクア。いずれそなたを泣かす者じゃが、一つだけ質問に答えてくれろ」
「……なあに?」

 幻月は可笑しそうに眼を細める。

「――敗北というものは心蝕む楽しいものなのじゃが、味わって見る気はないかの?」

 勝気な笑みを浮かべたカグヤに、幻月は益々笑って。

「ハハ、君も変わってるね? でも、一つ勘違いしてるよ」
「……ほう?」
「ボクはね、君達と遊んでるんじゃなく、ゲームで遊んでいるんだ。分かる? 君達は、ボクの娯楽に過ぎないのさ。だから困った事に、敗北の仕様が無い――どうしようか、カグヤ?」

 ――如何に人間の様に喋ろうとも、彼らは目の前の人間を同等などと微塵も思っていない。カグヤは幻月の返答に嗜虐欲を高まらせ、にっこりと笑って。

「安心せい。わらわ達が、その悦びを教えてやろう」
「くっくっく……アッハハハハハ! やって御覧よ、ニィンゲエエエエン!!」

 開幕は突然。俊足の踏み込みが、カグヤに向けて。幻月より先に動けたのは弥刀だけ。

「カグヤはんが! キリル、リンクバリアで……」
「駄目だヒフミ、自分の周囲6メートル位が限度だ。届かん」
「なら、先手必勝や!」

 弥刀の60口径携行砲が火を噴き、幻月を直撃する。しかし、その勢いは止まらない。カグヤは回避ではなく、防御を選択。紐解かれた英雄経巻が散る。

「性格悪い敵は魔法系という予想は当たったかの?」

 尚も挑発し、スキルを誘うカグヤに、幻月は耳まで裂ける程笑って。

「さー……どうだろうね?!」

 幻月が繰り出したのはボディブロー、カグヤは咄嗟に其れを禁軍装甲で受け、海老反りで床を転がる。ゴホ、と咳き込むと、幻月は腹を抱えて震えて。

「あっは、はははははは、ヒー、ヒー……面白い……呻いてれば結構カワイイじゃないのさ、君ィ?」
「……素手とは、舐められたもんじゃな」
「人の事言えないでしょ? 皆、ボク達を舐めすぎ。君達を素手で八つ裂きにする位ねぇ、朝飯前なんだけど??? 何なら下に居るデクノボー共でゲージュツ的なアートとか作って見せようか? んん???」
「――私ッ!」

 開口一番は、もう我慢ならなくなって口をついた勢いで。

「人の命を弄ぶような人、だいっきらい……!!」
「……、……ん?」

 ぐるり。首だけ回して幻月は御代を見る。キッと見返す少女に、幻月はこの上なく楽しそうに。

「アハハハア、怒らないで? ウソウソ、嘘だよぉお……ここに、こんな面白い玩具がいるんだからさぁ!!」
「――絶対、許さない!」
『つくし、行きますよ』
「うん!」

 御代の位置取りは吹き抜けの傍、柵を背に。攻撃を回避し、初撃はブルームフレア――爆炎、熱気に長い銀髪が踊る。

「休む暇なんかやらないよ!」

 間髪入れず、佐倉のブルームフレアで炎は勢いを増し。

『ブッ込め!』
「――おらァッ!」

 齶田の烈風波が、それを渦と巻き上げる。

「どうだ!」
『ウィザードセンスモ入っテタ。効いタはズ』
「くっくくくくく……効ッッかないねェェェ!!」

 佐倉が見つめる炎の中、幻月の影はゆらりと立ち上がる。徐々に消える炎の中、現れる愚神はおよそ無傷。

「ど……どうして?」
『おかしいですね……此方もウィザードセンスがあったのに。他の方が与えた筈の傷も見当たりません』

 困惑する御代、メグルは考える。

「でも、幻月の服は破けてるよ?」
『攻撃は入っている……? つまり、瞬時に再生したという事……?』
「何ボーっとしてんのさ! 来ないなら、こっちから行くよ?!」
「余所見してんじゃねッスよ!」

 初手直後、接近していた齶田は電光石火を仕掛ける。

「物騒だなぁ」

 幻月は攻撃を見切り、轟きをあげて回転するホイールアックスの刃を避けて跳ぶ。この隙を弥刀は見逃さない。

「よっしゃキリル、火之迦具鎚で……」
『いや、隙が少なすぎる。距離を取っているから間合いを詰める時間も無い』
「ほんなら、ブロー乗っけた速射砲でドカンや!」

 引き締まった腕が砲身を操り、精密な射撃が幻月を直撃する。

「どや! しかし結界の中やと、そこいら中ライヴスまみれでゴーグル意味あらへんな……しゃあない、普通に見たる。一挙一動一投足見逃さへんで」
『ああ、何か有ればすぐ仲間に伝えよう』
「まだまだこんなものじゃないよ!」

 御代の次手は幻影蝶。しかし、幻月はライヴスの蝶の群れを押し退けて。

「くすぐったいじゃないのさぁ?!」
「! 効いてないっ」
『攻撃は確かに命中しています。魔法防御が高いのでしょう』
「それに、あの異常な再生能力……不死身、なのかな?」
『いえ、そんな事は有り得ない。何かに特殊効果が……所持品でしょうか。あるいは、シウさんの言っていた結界……』

 メグルが、幻月の傷を癒しているものの正体に心当たる。

『通信機が機能不全に陥る程のライヴスの奔流――……この『巨大な結界が、全て幻月の再生能力の効果範囲』だとしたら、』
「えっ……じゃあ『近くに居る他の愚神や従魔も回復する』って事?」
『……信じたくはありませんが、おそらく。強いですね、幻月……』
「兎に角、この事を皆に伝えなくちゃ!」

 御代は通信機に手を。齶田はウレタン噴射機を取り出す。

『床は大理石、柵はガラス! 映るものだらけだぜ!』
「轍から聞いでらんで、気を付けてはおくッスよ。それに、真っ向からの攻撃はすったらさねんでねぇが? けど――怪我が恐くちゃ戦えねぇ」
『ああ、取り敢えず奴の周りに、映るものが無くなりゃいいんだろ! 行くぜ!』
「おう!」

 スノーの喝に、齶田が床を蹴る。

「突っ込んで来るか。怖いもの知らずだね」
「んでねばこったら場所さ居らいねべよ!」
「違うね――君がこれから感じるのは、死の恐怖さ!」

 幻月は背後、ガラスの柵を蹴り壊した。ガシャンという大きな音と共に、巨大な破片が階下へ。

『よし、ぶっ掛けろ!』
「させない!」
「ウチも!」

 齶田、佐倉、弥刀がウレタン噴射機を損壊個所に噴射、破片の落下を食い止める。

「ははは、そうすると思った! そんな物を用意しているとは思わなかったけど……いい感じに集まってくれたね! さあ、食らいなよ!」
『……! 何かする気だぜ!』
「ああ、直接手を出してこねがったって事は……」
『偏屈な攻撃が来るんだろうな!』
「さてクー、受防体感といくかの」
『程ほどにね』

 身構える齶田、間に入るカグヤ。瞬く間に床という床から死者の手が伸び、エージェント達に掴み掛る。佐倉を庇ったカグヤを襲う魔法攻撃を、英雄経巻が展開するフィールドが和らげた。空気の変動を察知した齶田はそれを防御するが、伸びてきた腕に床に釘付けにされる。

「いっ、」
「ヨネさん!!」

 佐倉は齶田を範囲外まで運び、彼を助ける。

「まるで水辺の妖怪ね……『抗えなきゃ捕まるし、捕まえられたら狼狽える』って訳か」
「遠距離なば!」

 齶田は二丁板斧の一方を投げ、幻月に突っ込む。腕に巻き付けた雷神ノ書が雷を呼び、ライヴスの電槍が愚神を貫く。それでも幻月の笑みは揺るがない。蹴りに浮く齶田の身体。

「ぐあッ」
「アハハハハハ! 色々考えてるみたいだから、教えてあげるよ。ボクがこの舞台を選んだのは、タロットの寓意画に準えてさ!」
「……何やて?!」

 直後、來燈澄から弥刀に連絡が。

『弥刀さん。そっちにもいる従魔、自爆能力を持ってるよ。こっちも早期撃退を目指すね』
「ほんまか! 爆発、それに“塔”……まさか、あっちの一階壊して、それを吹き抜け上から突き刺すとかか? せや! 吹き抜けにパイルバンカーとディシプリンウィップで土台作って、ウレタンで補強したらどやろ?!」
『これから鞭を繋ぐのか? ウレタンも一個しか持っていなかっただろう』
「無理か……どないしよ!」
「どうする? そろそろ死ぬ?!」

 幻月は御代に向き直る。傍に居た佐倉は、咄嗟に彼女を庇おうとした。だが、先に動いたのは御代。齶田が強い圧力を感じた次の瞬間、超重力の波が彼らを襲う。

「つくし……」
「御代さ……」

 佐倉と通話状態の真壁の通信機が、耳を劈く快音で非常事態を知らせる。直後、上階から爆発に近い音。

「樹……つくし……」
「マカベ!」

 真壁は頷き、治療を終えて戻った紫にその場を預けてロビーに戻った。

「アッハハハハハ! いい吹っ飛び具合だね! さあ畜生共、よーく見ておけよ? お前達が救いたかったモノ――その手から全部、零れ落ちていくトコをさ!!」

 幻月は嘲笑い、そしてぱちんと指を鳴らす。

「ショータイムだ!!」

●少し前、建設現場にて

「間に合ってください……!」
『急ぎましょう。今宮さんに確認した結果、爆発があったのは50階です』

 唐沢 九繰(aa1379)は建設中ビルの階段を全力移動で駆け上がっていた。共鳴したエミナ・トライアルフォー(aa1379hero001)が脳内でオペレーションする。リスク分散の為、残りのメンバーはエレベーターで移動中。

「この道、避難する皆さんが通るのですよね……経路確保の為、状況確認をした方がいいのでしょうか」
『いいえ、九繰。今は切迫した状況です』
「……そうですね。目の前の被害の最小化が、一番大事ですよね。エミナちゃん、ドロップゾーンの感じはしますか?」
『基本的には分からないものなのですが、ここは違う気がします』
「そうですか……無限に従魔が湧いてくるような空間でなくて良かったです」
『そうですね。その場合は救助対象の早急避難が先決になりますから』

 唐沢は一瞬脳裏を過った考えよりも、人命を優先すべきだと思い直し、50階へ直行する。

「……大丈夫、何もいない」
『行きましょう』

 荒木 拓海(aa1049)は左右に開く鉄扉の影から通路を確認、メリッサ インガルズ(aa1049hero001)の言に従い、突入の合図を出す。

「途中で止まったりも無し、か」
『敵は腕ずくで此方を排除したい様ね。望むところだわ』
「下の階の様子も気になるけど、何か有れば階段で来る唐沢さんが気が付いてくれるだろう。オレ達は早くこのフロアの敵を殲滅しないと」
『彼女によるとこのビル、外枠は既に100階近くまで完成してる。終わったら其方も確認に行かないと』
「ああ……ともかく助けたい。今は目の前の人達だ」

 全力移動で来た為、誰もが息を切らしている。

「わたしにダイエットは必要ないと思うんだけどな」
『余計なこと言ってないで急ぎますよ!』

 軽口を叩きながらも、志賀谷 京子(aa0150)とアリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)の心に燃え上がるの物は怒りの炎。

(「『……幻月ッ……!』」)

 その想いはライロゥ=ワン(aa3138)も同じ。祖狼(aa3138hero001)は押し黙るライの心中を察す。

『あちらが気になるか? だが、我らは此方を預かった』
「ああ……此処にも、助けを待ってる人がイル」

 ライは跳躍し、壁面を蹴って立体的に移動を始める。彼の鼻が、人の臭いを捉えた様だ。

『ライ!先行しすぎるな!』
「……もう誰も死なせないと……誓ったんダ!」
『連携をとれ! 従魔がいるのやもしれんのだぞ!?』
「……悪いが待てない! 盾にはなれル!」
『ライ!』
「――居タ!!」

 視界に飛び込む愚神と従魔、逃げる人々。

「集エ集エ……異界ノ蝶ヨ…纏エ!」

 ライは巨漢の獣人と作業員の間に入り、其れに幻影蝶を浴びせた。

「早く逃げテ――……!」

 しかし、愚神の動きは止まらない。ライは鈍重な一撃を受けて床を数メートル跳ねた。追撃を試みる従魔の前に虎噛 千颯(aa0123)が滑り込む。振り下ろされる拳を大鎌の腹で弾き返し、虎噛はライに手を。

「大丈夫か?」
「ああ、すまナイ」
「俺がこいつを抑える。救助を頼めるか?」
「分かっタ」

 虎噛はライを見送り、獣の様な大男と対峙。周囲は人、人、人。彼ら一人ひとりに、虎噛と同じように家庭がある。

「これがゲームだってのか…胸糞の悪い奴だ」
『何としても助けるでござる』

 低い呟きに、白虎丸(aa0123hero001)も力強く同調する。虎噛は背後に庇う一般人を安心させたくて、声を張り上げた。

「大丈夫だ! 俺たちが守ってみせる!」
『パニックにならないで落ち着いて待っていて欲しいでござる』
「策を考えるのは、他の皆にも出来る事だ……けど、ここでこいつを押し留める事は、俺にしか出来ない!」

 避難の方も気になる。虎噛は通信機で仲間達の様子を探った。

「京子ちゃん、煙の出処はどう?」
『確認中!』
「真赭ちゃん、責任者は見つかった?」
『ええ、唐沢さんが移動中に色々調べてくれて。咄嗟の機転は流石ね』

 來燈澄 真赭(aa0646)は逃げ惑う人々をぐるりと見渡す。

「皆さん、落ち着いて下さい」
『真赭……ライヴスゴーグルで見ても、特に変わった様子は無いな』
「そうね」

 緋褪(aa0646hero001)に応え、写真で見た監督の姿を探して駆け寄る。作業員に従魔が化けていないか調べる作業は彼らに分からないように行いたいと思っていたが、よく考えれば一般人にはライヴスゴーグルは馴染みが無い為、問題では無かった。

「監督、取り纏めをお願いします。作業人数も教えて下さい、全員いるか確認します」
「わ……分かりました。おい、整列してくれ! 点呼を取る、」
「固まらないで! 隠れて!」

 志賀谷が叫ぶと同時、複数の従魔が襲い掛かり、数人の作業員が蛙の口内に消えた。彼女の放ったトリオが、従魔達を貫く。

「來燈澄さん、その人達を何処か閉塞した場所へお願い! 絶対助けるから、其処に居て貰って!」
「了解よ、志賀谷さん」

 大声で告げ、志賀谷は従魔を連れてビル中央の開けた場所に出た。

「これで作業員の安全は確保できそうね。さあ、あんたたちの相手はわたしよ!」

 しかし敵は多く、一人ではターゲットを固定し切れない。作業員に向かい掛けた従魔、そこへ地を走る様に飛来するモア・ストライク。

「やぁっ!!」

 唐沢の投擲は従魔の首根に食い込む。更に別の従魔には、レミア・ヴォルクシュタイン(aa3678hero001)のストレートブロウが炸裂。巨体を誇る従魔がざりりと押し戻された。

「唐沢さん! レミアさん!」
「加勢します!」
「わたしも手伝ってあげるわ」

 志賀谷を囲う従魔達を、レミアの紅爪が繰り出す怒涛乱舞が屠っていく。

『爆発については來燈澄さんが調べて下さるそうなので、私達は殲滅に専念しましょう』
「はい! いざとなったら、ザグナルも投げますよ!」
『頼もしいです、九繰』
『わたし達も従魔に注力しましょう、京子』
「分かった、アリッサ」

 倒した従魔から斧を引き抜き、唐沢は次の標的へ。黒衣の裾を翻すレミアに、狒村 緋十郎(aa3678)が問う。

『レミア、本当に奴と直接遣り合わなくて良かったのか? 闇夜も人狼も、この幻月って奴が黒幕みたいだぞ』
「ええ……でもわざわざ顔見に行って構ってあげたら、却って喜ばれそうな気もして癪に障るわ」

 二つの事件の手応えから推察し、彼女は灼眼を思案の色に。

「この愚神は、狂った愉快犯の典型みたいな……ううん、もっと性質が悪い存在かも。この世界に来る前のわたしは……幻月と似た様な事をやっていた、かもしれない。だから何となくだけれど、やり口というか、目的……想像が浮かぶ」

 永遠を生きる不死者の暇潰し、即ち悪意のみで動く鬼畜の所業。

「嫌な予感がするわ……今は、幻月の企みを潰すことであいつに吠え面かかせてやりましょう。初動はまあまあ上手くいったわね。この調子で、襲われる只人が一人でも減る様に……迅速に殲滅しなければ。何処かに何か“隠し玉”がある筈だから」

 その正体を明かすため、状況が落ち着いたと見た來燈澄は作業員の許へ。

「……じゃあ、このフロアからまだ壁が入っていないから、ここは塔の中でも折れ易い部分だという事ね」
「はい……」
「特に重要な柱の場所が分かる方は?」
「すみません、設計士ではないので、そこまでは……」
「なら、爆発する瞬間を見た人は居る? 何が爆発したのか知りたいのだけど」

 作業員は「従魔です」と答えた。來燈澄は各部に連絡をし、幻月の真意を考える。

「……なんでわさわざこっちを爆破したんだと思う?」
『向こうの一般人を上に集めているのと同様に何らかの意図があるんだろう』
「そうね……建設中のビルを爆破したって、それ自体の被害はたかが知れてるもの。狙いがあるんでしょう。こいつってあげて落とすの好きそうだよね……」
『助かってホッとしたところに次の絶望を……か』

 ズシャアと従魔を切り倒し、現れたのは一般人を隠した事務室を守るレミア。

「相変わらず派手ね、レミアさんは。このビル、倒れたら向こうの上の方に当たりそうだと思わない?」
「そうね、來燈澄……わたしなら、この塔を倒してあっちにぶつける位派手にやるわ。階下にも何か潜んでいるかもね」
『デカいの倒す前に下を見てきた方が良さそうだな』
「そっちはよろしく、デカイのなら任せて?」
「分かった、下層を見て来るね……何かあれば、すぐに連絡する。単独で危険な事するつもりは無いから」

 來燈澄は階下へ、アリッサは彼女の報告を聞いて。

『建物が破壊される可能性があるとしたら、この階が爆破された時……という事ですね』
「なら、従魔を倒してその可能性を潰そう。幻月のやりたい事、多分分かったね」
『はい。ビルの倒壊――ひいては水晶塔への衝突を狙っているのでしょう』

 それが幻月の仕掛けたサプライズ。罠が有ることは、月鏡 由利菜(aa0873)も重々承知の上。

「私達は敢えて乗ったのです――其の思惑を砕き、人々を救う為に」

 守るべき誓いは複数の従魔のターゲットをさらい、狙いを月鏡に釘付けにした。従魔がブレス攻撃を持つことは、既に紫の周知で知れ渡っている。吐き出される爆轟のライヴスは、彼女の盾に容易に弾かれて。

『温い。お前達の息吹など、光の鎧の前では霞も同然』
「ラシル、数を纏めて減らしましょう。――弾けよ、深紅の波動!」

 リーヴスラシル(aa0873hero001)の力を借りて、月鏡のソルレットが益々輝く。蹴り出されたライヴスは着弾、爆散。その光は敵だけを貫く。

『拓海、狙いを絞らせちゃダメよ。常に動いて』
「分かってるって」

 荒木が重厚な大剣を振るうと、メリッサを反映した銀糸が遠灯りを孕んで虚空を滑る。頬にはブレスによる熱傷、翠眼に宿るは不屈の精神。振り下ろされる従魔の前足は幅40センチに及ぶ大剣が難なく受け止め、其れを斜めに弾く。

「リィェンさん!」
「おう!」

 しゃがむ荒木、ガードの上がった隙を突いてリィェン・ユー(aa0208)が斬り掛かる。

『後方クリア、前はちゃんと見ておれよ』
「任せろ、死角なんて作らねぇよ」

 イン・シェン(aa0208hero001)に応え、振るわれる屠剣。流出するライヴスが齎す切れ味は如何なく従魔の肉を裂いた。更に荒木が、立ち上がりざまに喉元を逆袈裟に斬り捨てる。土煙を上げ、巨体の従魔は横倒しに。

『まったく、いやらしい手を考える愚神がいたものじゃな』

 インは幻月の遣り口に憎悪を隠せず。

「だが……俺達に有効な手であることは確かだ」
『じゃから余計に腹が立つのじゃ』
「だったら、敵の目論見を破綻させてやろうぜ。悔しがらせてやるよ、幻月! 厄介な従魔共は、もうすぐ殲滅完了だ」

 とどめはリィェン、両断された従魔は塵に帰した。

「ラシル……本当に、普通にビルを倒壊させただけで被害を与えられるのでしょうか?」
『ああ、上部には建設用クレーンも有る……この位置から大通り側に倒壊させれば、確実に水晶塔に当たるだろう。それも70階付近にな』
「成程……ですが、あらゆる可能性を考慮しておかなくては」
『その通りだ、ユリナ』

 彼女達もゴーグルでの警戒を怠っていない。不審な点は見つからず、潜行従魔の警戒には來燈澄が。抜け目ない完全な作戦構築が成されている。

「……幻月は姿を反射する物質を好むようですね。有り得るとすれば、物質転送能力――ビルの一部を水晶塔の吹き抜けへ落とす気でしょうか?」
『水晶塔か……奴が力を発揮するには最適な環境かもしれない。触媒と考えられる「姿を映すもの」には注意しておこう』

 仲間達が従魔掃討に注力する間、愚神は虎噛が抑えていた。彼の高い生命力と鉄の意思が無ければ、これだけの安定性は出せなかっただろう。

「大分やられちまってるけど……ここが正念場! 死ぬ気で気張れよ白虎丸!」
『死ぬ気は無いでござるが皆を守る為なら踏ん張るでござる!』

 愚神が大きく振り被る。そろそろ意識の飛びそうな虎噛が、ぎりと歯を食い縛った瞬間――リィェンの放った烈風波が愚神を襲った。

「そうそう、敵の思惑通りに動くわきゃないだろう!」
「虎噛さん……お、お待たせしました……加勢、します!」

 月鏡は破魔弓で脚を狙い、その動きを鈍らせる。

「助かったぜ、リィェンちゃん、由利菜ちゃん! 今リジェネーションを……そうだ、秘薬で、」
『千颯。秘薬で増える回復量より、秘薬を使っている時間で受けるダメージの方が大きいでござる』
「そうか……分かったぜ。スキルは有限だ、常に最大限効果を引き出せるようにしないとな。みんな、一気に攻勢に出よう!」

 愚神の攻撃が途切れたタイミングで、集合した面々の傷を虎噛のケアレインが癒す。

「これで俺ちゃんはガス欠だけど……」
『大丈夫だ、まだチョコレートがある。あ、でござるよ』
「ありがとうございます、虎噛さん! エミナちゃん、行きますよ!」
『はい、フルパワーです!』
「アリッサ、威嚇射撃で援護しよう!」
「ええ、ぶちかましましょう!」

 邪魔をする従魔はもういない。怒涛の連携攻撃に、愚神は遂に力尽きた。虎噛は愚神が砂と崩れ去るのを見送り、糸が切れた様にその場に倒れ込む。唐沢が慌てて彼を支えた。

「虎噛さん!」
「だ、大丈夫……生きてる! どうだ、幻月! お父さんの力、見たか!」

●――其の頃。

 幻月が指を鳴らしてから、数秒が経過していた。

「……アレ?」

 幻月は間の抜けた声を上げ、階下を覗き込む。傷を押さえながらも、カグヤは不敵な笑みを浮かべて。

「突っ込んで来る筈の隣のビルの頭が見えんのか?」
「……へぇ、気づいてたんだ?」
「忙しく下を見ておったからのう。此方に居る従魔も爆破してみるか? 残りの数では、誰一人殺せんじゃろう」
「そうかもね」

 70階、真壁は窓から外を見た。隣のビルの外観に変化は無い――向こうの担当は従魔掃討に成功した様だ。此方の従魔も間もなく殲滅が完了する。

「一体たりとも、行かせるものですか!」

 紫が振るう剣、麗しい白銀の刃、鳥兜の彫刻に従魔の青い血が伝う。踏み付けを剣腹で受けては弾き、オリヴィエが教えてくれた弱点を狙って薙ぎ、突き倒す。

「此処から先は、通行止めだ」

 重傷を負ったオリヴィエも、後方から支援を。紫の通信機には、虎噛とギシャから連絡が。

『やっとつながった! 低層異常なしだよ』
「ありがとうございます、ギシャ」
『あ、征四郎ちゃん? 隣のビル、バッチリ片付いてるからね!』
「流石です、チハヤ」

 真壁は吹き抜けを見上げて。

「……俺は上に行く」
「僕も一緒に行こう」
「ボクも……」
「面倒だけど……僕も行くよ」

 ロビーへ戻ったシウと今宮、不知火も。四人はエレベーターで100階へ急行する。扉が開くと、そこにはカグヤに介抱を受ける御代と佐倉、齶田の姿が。真壁が駆け寄ると、御代は声を絞り出して。

「リーダー、あのね……」
「……喋るな、」
「つくし……っ喋らないで下さい……」

 ごぽ、と血を吐く御代が、真壁に訴える。メグルの悲痛な懇願にも、御代は言葉を止めず。

「幻月の能力、見たよ……! 『真っ直ぐに、10メートルくらい飛ぶ重力波で、槍みたいに貫通する』……!」
「分かりました……もう、分かりましたから……」
「御代、よくやった……」
「くそッ!」

 血塗れの拳で床を叩く佐倉。その心中、真壁には痛い程分かる。こんな時、それは二人にしか掛け合えない言葉で。

『……まだくたばるなよ、貧乳』
「うるさい……!」

 佐倉は悔しげに顔を歪め、奥歯を噛み締めた。

「つくし……くろー……」
「……寝ていろ。ヨネもだ」
「ッス……」
「幻月。お前は仮にもゲームと称した遊びで、ルールの開示もしていない。お前は一方的に優位な状況でしか戦えない腰抜けか?」

 シウは挑発を仕掛けながらも、この間にマジックアンロックを試みた。だが、それらしい物は見つからない。
 さらに不知火が罠師を試行したが、これも結果は同じ。

「あは、面白い冗談だね! エイプリルフールだからねぇ、ふふふ……」

 幻月が余所見をしたその隙を突いて、不知火がウレタン噴射機で動きを止めに掛かる。

「今までの手口からして狡いのは分かってる。罠が無いのは意外だったけど、もう何もさせない……」
「――ん?」

 幻月の足が、ウレタンで床に固定された。それは一瞬だったが、この間に真壁は不知火の前へ、シウは幻月にリーサルダークを打ち込む。

「今や! キリル!」
『ああ』
「……ハルちゃん!」
『おう』

 弥刀が叫び、今宮と二人が放った弾丸が弦月を襲う。粉塵が舞った。ひどく静かだ。それから聞こえてきたのは、幻月の笑い声。その声は少しずつ大きくなり、やがて耳障りな高笑いへ。埃の落ち切る頃、その傷はすっかり癒えている。

「幻月……」

 その様子に、佐倉は力を振り絞って。

「目論見が破綻したって言うのに、その笑い方……お前は、ゲームを愉しんでいたんじゃないのか? お前は、本当にプレイヤーとして此処に居るのか? まるで駄々っ子の鳴き声だ」
「アハ、アハっ……、……ハァーー」

 長い溜息の後、幻月はぎょろりと眼球を回す。

「畜生風情がボクを語るなよ、人間」
「黙れ愚神……お前もダミーかナニカか……? 中に何人居る?」
「あのねぇ……君達、一人じゃ何もできないから集まってるんだろ? じゃあ今自分達の置かれてる状況、分かるよね? 見なよ、総力上げてもボクにかすり傷しか付けられてないじゃないのさ? そんな体たらくじゃ、ボクがその気になれば、全員あっと言う間に殺されるよ?」
「――じゃが、お前はわらわ達をさくっと殺したりしない。そうじゃろ?」
「……まあね」

 カグヤの横槍を気に留めた風も無く、幻月は余裕たっぷりにニタリ。

「だが、お前の予定は狂った筈だ……ビルの爆破はもうできない……ならばどうする?」
「……どうする?」

 真壁の問いに、幻月は益々口端を歪めて――

「こうするんだよ!!!」
「……よせッ、」

 真壁の制止と、ガラスの柵が割れて落ちる音は同時。尖った破片が、70階へ。上方に注意していたエージェント達によって幾つかは撃ち落されたが、それでも破片が消える訳ではない。

「ああ~~~最ッ高だよ、もっと、もっと見せてよそのカオ!」

 吹き抜けの底から噴き上がる人々の悲鳴、それを聞くエージェント達に、幻月は両腕を抱いて悦楽に震える。

「別に直接殺ったっていいんだよ?! ボクを止める方法が分かるか? えぇ? カグヤ、君なら分かるよね?」
「分かった。見逃してくれ、頼む」
「ダメダメ、失格! 全然興奮しない!」

 さらりと言うカグヤをはねつけ、幻月はねっとりとエージェント達を見渡し。

「君がいいな」

 指名されたのはシウ。桜木はその心中で息を呑んだ。

「どうした? 命乞いの仕方くらい知ってるだろ? ん?」
『シウお兄さん、絶対、言わないで』
「……」
「君賢そうだし、分かってるよね? 今ボクが暴れたら、手負いの君達がどれだけ邪魔立てしたって、死人の数は減らせないよ?」
『お兄さん、私嫌だ』
「……、」
「言え」
『誰が!』
「言えよ!」

 幻月の剣幕に、シウはゆっくり視線を上げた。大事なのは、意地を張る事では無い。

「……お願いだから、下の人達には、手を出さないでくれ……」

 シウがそう言った瞬間の、仲間達の顔。幻月はガクガク震える。

「うぅ……ふ、うふふ……今の……イイ、良かったよ……」

 そしてそのまま、エージェント達の横を通ってエレベーターを呼ぶ。

「君に免じて、この場はこれで我慢してあげる……余興が失敗しちゃったのは残念だけど、また新しいのを用意しておくから。楽しみにしていてね?」

 開くドア、幻月は顔だけでエージェント達を振り返る。その瞳は三日月の様に細められて。

「再見、ボクの娯楽達」

 幻月がエレベーターへ消えた後、今宮は拳を握り締めた。

『……やられた……』
「あぁもう……本当に嫌なやつ……」
『……借りは返す』

 奈良は憎々しげに呟く。作戦完了の報せが、各位の通信機に入った。

「うーん、まさか本当に何もしない結果になるとはね」
『そうでもないさ。情報提供はしている』

 陸橋の上、潜伏を使用して幻月を待っていたギシャは、寝そべっていたアスファルトから勢い良く起き上がった。

「ゲームの結果を見るには、こーんないい場所だったのになぁ」
『幻月の名は、幻のように消える移動手段を示す物ではないようだな』
「何だっけ? 天気にもそういうのあったよね」
『主に雪の結晶に反射して、月が三つに見えたりする現象の事だな』
「どういう事だろー? あーあ……盤面の外から殴り付けてやりたかったぁ」

 70階に残っていた零月は、負傷者を連れて戻って来た弥刀達に駆け寄る。

「大丈夫でしたか?! 突然上から柵が落ちてきて……」
「零月はん達がおらんかったら、誰かに当たってたかもな……助かったで。ありがとさん」
「……麻生と十影は?」
「はい、避難経路の確保に。エレベーターも使えるか見て来ると」
「そうか……俺も出よう」
「僕も行くよ。念のためブルームフレアを一発残してる」
「……用心深いな」

 真壁とシウは二人の後を追って非常階段を降りて行った。零月は負傷した一般人の応急手当に戻り、周囲を見渡す。

「十影さんと木霊さんの心遣いで、従魔の姿を見た時間が短いお蔭か、一般の皆さんは比較的落ち着いておられますね」
『ええ、すぐにでも避難を始められそうです』
「樹……安静にしておけ」
「いえ、カグヤさん……これだけはやっテおカなイと。皆さん!!」

 佐倉は支配者の言葉を使用し、避難時の移動を補助する。それに、狙いはそれだけでは無かった。

「""ヒト""はこちらへ動いてください!」

 紫も速やかな避難誘導に尽力した。円滑に進んだのは、佐倉のスキルで人々がエージェントに好感を抱いていた為だけでは無い。

『今日はまあ、征四郎は良くやったと思うぜ』
「できる限りを尽くしました……全ての人の、明日を守る為に」

 紫の、皆の想いが、人々に届いていた。それは建設中ビルでも同様で。

「いてて……また奥さんに怒られちゃう……」
「虎噛さん、大丈夫ですか……? すみません、ふ、負担を掛けてしまって」
「皆さん、本当にありがとうございました……」
「いいって、早く帰って家族を安心させたげてよ!」

 負傷の軽い月鏡に肩を借りる虎噛の許に、作業員がお礼にやって来る。資材が滅茶苦茶に散らばった50階、まだ枠だけの窓辺には、ライの姿。

「ファンユエェェーーッ!!」

 怒りの叫びは、失われた命への追悼。

「また……失ってしまったノカ……! 俺は……何度誓いヲ……!」
『こいつは悪趣味な奴だ……笑い話にもならんな』

 幻月にとって、人間は玩具。

『ライ、二度と誓いを破りたくないのなら、元を断つしかない……』
「……それしかないナラ……俺は今から断罪者ダ……!」

 金の瞳に、憎悪の炎が燃え上がる。

「で、何が分かったの?」

 御代の搬送を終え、共鳴を解いたカグヤはクーを振り返る。聞かれているのは幻月の事。

「判明した能力は三つじゃ。一つは『死者の手』、一つは『重力波』、一つは『半径約50メートル、リジェネーション効果を持つ結界』じゃな。ちなみに従魔爆破の合図は、指パッチンじゃ。つくしが気にしとったから教えてやった」
「へー。それにしても、良く喋る奴だったね」
「まあスキルはもう一つ位有りそうじゃな。ふふ、更に大発見があるぞ」
「……なに?」

 含みを持たせるので、クーは一応聞き返した。カグヤは髪の毛をくるくると指に巻き付ける。

「奴の癖じゃ」
「……分かってたけど、やっぱり聞いて損した」
「しかし調査ができんかったのは残念じゃなあ、轍が機械室に細工は無いとは言っとったが。広州の一連の事件、奴はどうやって此方を伺っていたのかの? 異界の技術じゃったら欲しいんじゃが」
「あっそ。ほら、次の救急車来たよ」
「お。樹、待たせたな」
「……別に、病院なんて」
「そう言うな」
「樹……ダイジブ?」

 心配そうに覗き込むシルミルテに、ストレッチャーの上で佐倉は微笑む。

「大丈夫。全部ね、次に繋げるから」

みんなの思い出もっと見る

結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
  • 花咲く想い
    御代 つくしaa0657
  • エージェント
    十影夕aa0890
  • Twinkle-twinkle-littlegear
    唐沢 九繰aa1379

重体一覧

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で・
    木霊・C・リュカaa0068
  • 雄っぱいハンター・
    虎噛 千颯aa0123
  • 深淵を見る者・
    佐倉 樹aa0340
  • 花咲く想い・
    御代 つくしaa0657
  • 我が身仲間の為に『有る』・
    齶田 米衛門aa1482

参加者

  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
    機械|24才|男性|防御
  • 告解の聴罪者
    セラフィナaa0032hero001
    英雄|14才|?|バト
  • ひとひらの想い
    零月 蕾菜aa0058
    人間|18才|女性|防御
  • 堕落せし者
    十三月 風架aa0058hero001
    英雄|19才|?|ソフィ
  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
    人間|22才|男性|攻撃
  • 義の拳姫
    イン・シェンaa0208hero001
    英雄|26才|女性|ドレ
  • 深淵を見る者
    佐倉 樹aa0340
    人間|19才|女性|命中
  • 深淵を識る者
    シルミルテaa0340hero001
    英雄|9才|?|ソフィ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • エージェント
    言峰 estrelaaa0526
    人間|14才|女性|回避
  • 契約者
    キュベレーaa0526hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
    機械|24才|女性|生命
  • おうちかえる
    クー・ナンナaa0535hero001
    英雄|12才|男性|バト
  • 撃ち貫くは二槍
    今宮 真琴aa0573
    人間|15才|女性|回避
  • あなたを守る一矢に
    奈良 ハルaa0573hero001
    英雄|23才|女性|ジャ
  • もふもふの求道者
    來燈澄 真赭aa0646
    人間|16才|女性|攻撃
  • 罪深きモフモフ
    緋褪aa0646hero001
    英雄|24才|男性|シャド
  • 花咲く想い
    御代 つくしaa0657
    人間|18才|女性|防御
  • 共に在る『誓い』を抱いて
    メグルaa0657hero001
    英雄|24才|?|ソフィ
  • 病院送りにしてやるぜ
    桜木 黒絵aa0722
    人間|18才|女性|攻撃
  • 魂のボケ
    シウ ベルアートaa0722hero001
    英雄|28才|男性|ソフィ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • エージェント
    十影夕aa0890
    機械|19才|男性|命中
  • エージェント
    シキaa0890hero001
    英雄|7才|?|ジャ
  • この称号は旅に出ました
    弥刀 一二三aa1048
    機械|23才|男性|攻撃
  • この称号は旅に出ました
    キリル ブラックモアaa1048hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • Twinkle-twinkle-littlegear
    唐沢 九繰aa1379
    機械|18才|女性|生命
  • かにコレクター
    エミナ・トライアルフォーaa1379hero001
    英雄|14才|女性|バト
  • 我が身仲間の為に『有る』
    齶田 米衛門aa1482
    機械|21才|男性|防御
  • 飴のお姉さん
    スノー ヴェイツaa1482hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • その血は酒で出来ている
    不知火 轍aa1641
    人間|21才|男性|生命
  • Survivor
    雪道 イザードaa1641hero001
    英雄|26才|男性|シャド
  • 焔の弔い
    ライロゥ=ワンaa3138
    獣人|10才|男性|攻撃
  • 希望の調律者
    祖狼aa3138hero001
    英雄|71才|男性|ソフィ
  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141
    獣人|10才|女性|命中
  • えんだーグリーン
    どらごんaa3141hero001
    英雄|40才|?|シャド
  • 緋色の猿王
    狒村 緋十郎aa3678
    獣人|37才|男性|防御
  • 血華の吸血姫 
    レミア・ヴォルクシュタインaa3678hero001
    英雄|13才|女性|ドレ
前に戻る
ページトップへ戻る