本部

赦されない懺悔と地下墓地迷宮の白骨

中臣 悠月

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2015/12/04 19:34

掲示板

オープニング

●ゆるしの秘跡
 花の都パリ。そこには、観光スポット以外にも、歴史的な建物が数多建ち並んでいる。
 ここは、何世紀も前に建てられたと思しき石造りのとある教会。とはいえ、観光客など訪れない、町のどこにでもあるありふれた教会である。その教会の奥には、「ゆるしの秘跡」を行うための小部屋があった。「ゆるしの秘跡」、つまりは信者が懺悔をして神の許しを請うための場である。
 教会の聖堂の中にあるが、他の人の目に触れないよう、小部屋として区切られ、告解を聞く聖職者のいる部屋と告解する信者の間も、お互い顔が見えないよう格子によって区切られている。
「どうぞ、お話しください。神はすべての神の子の罪をお赦しくださいますよ」
 穏やかな声で、男性の聖職者は話しかける。
 信者は、その声に促されたように罪を告白し始めた。

「実は、今付き合っている男性のことなのですが……。親友が好きだとわかっていたのにも関わらず、私から告白して恋人になってしまったのです。そのことが苦しくて……」
「大丈夫です、神の御前ではみな平等に神の子、赦しを請えば赦してくださいますよ」
「ああ、神よ。わたしの罪を取り去り、どうか洗い清めてください」
 聖職者は答える。
「神は、あなたの罪を赦します。さあ、安心してお行きなさい。地下墓地(カタコンブ)へ」
「は?」
 女性は一瞬戸惑った。
 これまで、「ゆるしの秘跡」の後に、地下墓地へ行きなさいと指示されたことなどなかったからだ。それに、パリ市街の地下に600万体の白骨が安置される共同墓地があり博物館として公開もされていることは市民なら誰でも知っていることだが、その入り口はこの教会の近くではなかったはずだ。それとも、公開されていない地下墓地の入り口がこの教会近くにあるのだろうか。なにしろ、パリの地下には300kmに及ぶ地下通路があるのだから。
 いずれにせよ、教会がそのように指示するなら、そうすべきなのだろう。
 
 女性が告解室を出ると、足下まで届く長く黒いスータンを纏った聖職者が立っており、俯いたまま、女性に火の点いたロウソクを渡す。
「こちらへ」
 先ほど告解を聞いてくれた聖職者より、少し高いトーンの声で女性に指示をする。
 俯いたままの聖職者に導かれるように、女性は教会の外へ出た。聖職者の後に従って歩いてしばらくすると、小さな目立たない石造りの階段が女性の目に写る。今まで気付かなかっただけなのか、ここが地下墓地への入り口だった。
「どうぞ」
 ここから先は一人で、ということだろう。女性は、地下墓地へと続く階段を降りて行った。

●赦さぬ白骨
 薄暗い階段を降りて行くと、カビの臭いがツンと鼻を突く。もちろん、白骨なのだからカビの臭いだけではないだろう。
『止まれ! ここが死の帝国である』(Arrête! C'est ici l'empire de la Mort)という碑が、先に行くことを躊躇させる。しかし、これは聖職者に指示された「ゆるしの秘跡」の儀式なのだ。甘んじて受けねばなるまい。女性は、勇気を振り絞って狭い螺旋階段を一段ずつ降りて行った。メトロの階段よりも、はるか下まで降りただろう、というところで地面はようやく平らになる。ところどころに灯りはあるもののあまりの薄暗さに、女性は躓いてしまった。
「あっ!」
 思わず掴まった壁はもろく、欠片が床に落ちた。壁を触った指先に違和感が走る。
「ほ……ね……?」
 ロウソクで照らした先に落ちているのは骨片。そして、壁を埋めるのは無数の骸骨。
 そう、ここは共同墓地なのだ。
 女性の周囲の壁は、右も左もすべて骸骨で埋め尽くされている。
「ひっ」
 一瞬、声を上げたが、ここは納骨堂。悲鳴を上げるのは無礼であると、女性は口を抑えた。
 しかし。
 女性は、今度は悲鳴をこらえることができなかった。
 ガラガラと音を立てて壁から白骨が飛び出ると同時に、人体標本のように骨だけで人の形を作る。それが、女性の周りに5体はいるだろうか。
 そして、女性の周りで白骨たちは騒ぎ出す。
「おまえはなんて汚い心の持ち主なんだ!」
「ひどいわ、私のことを裏切って親友面していたのね!」
 彼と親友の声で、白骨は女性を責める。
 他の白骨がさらに女性を叱責する。
「神は赦しても、愚神はお前の行いを赦さないだろう。お前は死刑だ!」
と。
 女性はそのまま、そこで気を失った。

●消える市民
 パリ警視庁。とある警部は、捜査ファイルを前に腕組みをしたまま考え込んでいた。
 今日の昼前に届いた捜索願を含めると、全部で5件。しかし、一人暮らしの世帯も多いことから、実際の被害者は5人ですまないだろう、と予想している。
 5件の捜索願を提出した家族のうち、3家族は「『Q教会に行く』と行って外出してから家族が帰って来ない」と証言している。先日の白いワニ型の従魔の被害と言い、今回も何らかの愚神か従魔が絡んでいるのではないか。能力者である警部はそう睨んでいた。
 しかし、愚神が絡んだ事件と断定できない段階で、パリ警視庁に詰めているすべての能力者の刑事をこの捜査だけに駆り出すことは、他の地区で事件が起きたときのリスクを考えると危険すぎる。
 そう悩んでいたとき、警部の携帯電話が鳴った。スマートフォンの画面には、「Sara Aoyagi」の文字が表示されている。
「アロー」
 通話ボタンをタップすると、いつも通りの色っぽい女性の声が聞こえてきた。H.O.P.E.のエージェントであるヴィクター・ライト (az0022)の英雄、青柳沙羅(az0022hero001)だ。
「地下墓地の件で悩んでいるのか?」
「な、なぜそれが!?」
「あたしは、占い師。何でもお見通しだって忘れたのか? フフフ」
「しかし……」
「悪いことは言わない、この捜査、甘く見ないでH.O.P.E.との共同捜査にすることだ。愚神退治に加え、迷いそうな地下墓地での白骨従魔との闘い、さらに被害者の救出。警視庁の能力者だけで対処できると本気で思っているのか? ただ、自殺したいなら止めはしないぞ、ククク」
 沙羅との通話を終えた警部は、溜息を吐きながらH.O.P.E.へのナンバーをコールした。

解説

●目標
 地下墓地捜索、白骨型従魔を殲滅。生存者保護。事件の黒幕と考えられる愚神も退治。

●登場
デクリオ級愚神 偽りの聖職者×2
 信者の告解を聞き地下墓地へ行くことを指示する聖職者と地下墓地に案内する聖職者がいる。本物の聖職者が愚神と誓約したのか、本物の聖職者に成り代わったのか不明。聖書やロウソクしか手にしていないため、魔法攻撃の可能性が大。ただし、信者の前で見せている姿が真の姿とは限らない。

ミーレス級従魔 ガイコツ×5
 パリの地下墓地に納骨された白骨を依り代とした従魔。女性が気を失ったところから察するに、精神的BSを与えて気絶させライヴスを奪うようだ。

被害者×10
 地下に引き込まれて24時間以内なのは、昼前に捜索願が出された女性のみ。ライヴスを吸い尽くされていなければ生存している可能性がある。また、以前に行方不明になった中で、生存している被害者がいるなら奪還を。

●時間
 午後。

●場所
 教会の聖堂内部は、入り口から祭壇までの距離が約10m。身廊の左右に、木でできたベンチが配置されている。奥の方に告解室があり、聖職者たちが執務を行う部屋は、聖堂の裏(奥)。
 パリ地下墓地の一部は博物館として公開されているが、今回捜索して欲しい地下墓地は一般人の立ち入りが禁止されている。地下墓地へ通じる複数の入り口のほとんどはレンガで塞がれているはずだが、今回はそれを愚神が開いたと予想される。
 深さはメトロより深い地下30m。気温は1年通じて約12.7度、真夏でも14度までしか上がらない。公開されている地下墓地は約1.7km、通路の高さはおよそ1.5〜2mでその壁全面に白骨が埋まる。通路の高さは公開されている地下墓地を参考にできるだろう。
 今回は教会近くの入り口から地下へ侵入し、その周囲3km四方内を捜索。灯りはところどころにしかなく暗い。また、通路はまっすぐではなく曲がり角も多数、脇道もあるようだ。

リプレイ

●合同捜査開始
「……ということで、今回の依頼はパリ市警との合同捜査となります」
 H.O.P.E.職員に促され、亜麻色の髪の警部が一歩前に出る。彼もまた、英雄と共鳴する力を持つ能力者であった。
「現在、捜索願が出されているのは5件だが、おそらくその倍は被害者がいると予測する。被害者家族の証言に共通しているのは、『Q教会に行く』と外出してから家族が帰って来ない、というものだ。教会内に被害者がいるなら、ミサの時などに助けを呼ぶことも可能だろう。しかし、信者たちから教会内で行方不明者を見た、声を聞いたという証言は取れていない」
「ミサの無い日に教会に行くのって……懺悔……かな」
と、荒木 拓海(aa1049)の英雄であるメリッサ インガルズ(aa1049hero001)が、緑の瞳で拓海を見上げる。
「もしそうなら許せない……ね」
「人に言えない、けど聞いて欲しい、許しが欲しい……そんな思いで縋る場所なのに……」
「判ってる……助けような」
と、拓海は慰めるように、俯くメリッサの銀色の髪を撫でた。
「救いを求めてやってきた人の気持ちを逆手に取るなんて、よくないの。悪い子は、めっ、てしなきゃ」
 幼い子どもにしか見えない紫の髪と瞳の少女ルーシャン(aa0784)も、同意する。そこに、
「告解室が怪しいんじゃないか? 個室で人目に付かない。攫うならもってこいの場所だ」
と、拓海の友人であるカトレヤ シェーン(aa0218)が口を挟んだ。揺れる金の長い髪はバンダナでまとめられているが、それ以上に目立つのは美しい顔を隠すように付けられた右目の眼帯だった。
「我々もそう考え、Q教会付近を捜索した。すると、教会近くに地下墓地へと続く入り口が数カ所あることを発見した。もし被害者を隠すならこれ以上にふさわしい場はない。しかし、今回の行方不明事件が愚神によるものという確証がなく、Q教会が関与している証拠もないため、捜査令状が取れないという苦しい状況だ」
と、警部はエージェントたちに頭を下げる。
「だから、共同捜査を依頼したそうだぞ。あたしの占いによるアドバイスも効いたか?」
と、紫の髪に角を生やしたタロット占い師、青柳沙羅(az0022hero001)は艶然と微笑んだ。彼女は、エージェントであるヴィクター・ライト (az0022)の英雄である。
「あたしのカードの結果、教会はクロ。さらに、地下墓地には白骨従魔がいる」
 沙羅の言葉に、柔らかく鷹揚な笑みを浮かべつつ九字原 昂(aa0919)は、
「僕は信徒のふりをして、教会で囮役をやりますね。しかし、大分手の込んだことを仕出かしますね」
と、言う。その横から、昴の英雄であるベルフ(aa0919hero001)が、フードに顔を埋めるようにして、
「目論見がばれる様じゃ、二流もいい所だがな」
と、ツッコんだ。
 カトレヤも
「俺も囮役をやるつもりだ。聖職者の正体を暴いてやる。ヴィクター、そして警部、教会内で騒ぎを察知したら踏み込んで来てくれるか?」
と、ヴィクターたちに頼む。
「なら、私は警部さんと一緒に隠れて待機していますね」
と、御童 紗希(aa0339)。純粋な日本人には見えない茶色の髪に緑の瞳の少女に、その英雄で2m近い大男のカイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001)が、見下ろすように尋ねた。
「そーいやマリ、お前フランス人の血が半分入ってるんだよな? フランス語喋れるんだっけ?」
 マリとは、紗希のミドルネームからの呼び名である。本名は、御童・カイレ・マリエル・紗希だった。
「ううん、ママが家でも日本語しか喋らなかったもん」
と、紗希は答える。それで、フランス人の警部と一緒で大丈夫なのかというように、カイは心配そうに紗希の方を窺っていた。
「ではワシは、生存者を助けに行くのである!」
 和服の少女、泉興京 桜子(aa0936)が宣言する。その小さな身体に似合わぬ尊大な態度は、古流剣術を伝え続く旧家の次期当主であるという気構えからか。
「まずは入口の発見からですね」
 桜子の友人である紫 征四郎(aa0076)……、男名ではあるがれっきとした女の子である……も、共に行くと言う。
 小さな女の子たちに負けていられないとばかりに、東海林聖(aa0203)も名乗りを上げる。
「オレも地下墓地へ行って戦うぜ!」
「僕も。救急医療班は現場近くに待機してもらえますか?」
と、被害者たちを心配するように榛名 縁(aa1575)は、警部に尋ねた。
「むろん」と、警部も頷く。
「私も地下に行きますわ」
と、艶やかな腰まである黒髪が印象的な紅鬼 姫乃(aa1678)が、赤紫の瞳を皆に向けた。
「自分も、行方不明者を捜索に行きます」
と、メリッサに視線を向けてから、拓海は皆に宣言した。

●いざ地下墓地へ
 今回はパリ市警との合同捜査ということもあり、地図や防寒具、照明、無線機器といった必要なものはあらかじめ用意されていた。それに加えて、行方不明者の置かれている状況から必要な物資をエージェントたちが予想し、警察や救急隊が準備をする。
「地下は寒いんだよな? 水筒に温かいスープを入れて持って行きたいな」
と言う聖に、
「寒いの……? お腹空いた……ルゥもスープ」
と、目で訴えるのは聖の英雄であるLe..(aa0203hero001)だ。緑の髪で、まだほんの少女にしか見えない。
「甘いキャンディにブランケットがあるといいと思うの」
と、聖に同意するルーシャン。その意見を聞いた縁は、
「確かにブランケットは必要だし、スープもキャンディもいいね。でも、もし温めた経口補水液が手に入るなら、それを水筒に入れて持って行くといいかもしれないね。それと、キャンディの他にもチーズやチョコなど手軽に栄養を取れるもの……用意できますか?」
と、救急隊員にルーシャンの意見もまとめて尋ねる。
「では、こちらを。発見されたら無線でご連絡下さい」
「容体によっては、救命方法を無線で指示してもらえますか?」
 行方不明者が危険な状態で発見された場合も、救急隊との連携で少しでも生存の可能性を伸ばしたいと縁は考えているようだ。しかし、行方不明事件が発生したのは昨日今日ではない。もしものときの覚悟も必要である。姫乃は、赤、青、緑の色紙を準備していた。
「それは何だ?」
と、桜子が興味深そうな顔で覗き込む。
「緑は死亡者。赤は重体者。青は軽症者という目印にするのですわ」
「ワシは、皆に生きていて欲しいと考えるのだ! しかし、間に合わなくとも家族のもとへ出来る限り還すのだ! ベルベットよ、行くぞ!!」
と言って、戸惑う姫乃を尻目に桜子はさっさとH.O.P.E.の車輌に乗り込もうとする。呼ばれた英雄のベルベット・ボア・ジィ(aa0936hero001)は、ルーシャンの英雄でまるで王子様のようなアルセイド(aa0784hero001)に見とれていたところだったが、
「あら、もう行くのね」
と、白い尻尾を揺らしながら、桜子の後を追った。

 地下墓地入り口は複数あるが、不自然にレンガをどけた痕跡や蝋が垂れた跡が見られるため、怪しいと目星を付けた所があると警部は言う。そこで、地下墓地捜索組は、H.O.P.E.車輌によって近くまで行き、その入り口から地下へ潜入することにした。その間、パリ市警の車輌でカトレヤとその英雄、王 紅花(aa0218hero001)、昴とベルフ、紗希とカイ、ヴィクターと沙羅、能力者の警部が教会に向かう。
 H.O.P.E.車輌に乗り込んだのは、征四郎とその英雄ガルー・A・A(aa0076hero001)、聖とLe..、ルーシャンとアルセイド、桜子とベルベット、拓海とメリッサ、縁とその英雄ウィンクルム(aa1575hero001)、姫乃だった。
 車窓を眺めながら、のんびりとした口調で縁がウィンクルムに話しかける。
「花の都ふたたび、だねえ。観光できたら良かったんだけど」
「……以前も同じことを仰っていた記憶がありますが」
 一方のウィンクルムは従者然とした口調で、縁に答える。
「そだっけ? ま、今は少しでも早く……」
「行方不明者の方々を捜索し、救出せねばなりませんね」
 ちょうどその時、車輌が静かに停車する。
「……急ぎましょう。時間は有限ではないのですから」
 ウィンクルムに頷き、縁たちは車輌から墓地の入り口を目指した。

 人気のない裏通り。パリ市警によって立ち入り禁止区域とされた場所に小さな穴があった。よく見るとそれは石造りの階段で、覗き込んでもその先が見えないほど遙か遠くまで続いている。
「……寒いし、狭いし、暗いんでしょ……? だったらルゥは蝶にいるし……」
と、いち早く階段に駆け下りようとする聖の英雄であるLe..は、幻想蝶の中に身を隠した。
「ルゥ、行方不明者の捜索は手伝ってくれよな?」
 英雄に文句を言いつつ、聖は友人の征四郎を振り返る。
「紫は大丈夫か? まぁ、オバケ屋敷みてーなモンだよなっ!」
 茶化しながらも、その言葉には征四郎が苦手としている虫から意識をそらせようという聖の優しさもこもっていた。
「なんだかお化けが出そうなのですよ……」
 代々剣士の家柄の子どもとして育てられたためか、常に冷静でいようとする征四郎にしては、珍しく弱気な台詞が口をつく。しかし、征四郎のことを対等な相棒として扱うガルーは、
「お化けも幽霊もいやしねぇよ。しゃっきりしやがれ」
と、征四郎に活を入れた。
「周囲の音、壁や床の傷やホコリの状態を注意しながら行動するのだ! 人が通ったあとはホコリが少ないであろうからの!」
 幼いながらも気丈に振る舞う桜子の手を友人のルーシャンがそっと握る。
「だ、大丈夫なのよ……」
と、自分が桜子を守っているというようにルーシャンは呟いた。
 しかし、下れども下れども、なかなか地下にたどり着かない。まるで、地獄への道行きのようだ。行方不明者たちもこんな不安を抱きながら、この石段を降りたのであろうか。

●告解室で
 同時刻。カトレヤや昴、紗希たちは、パリ市警の車輌で教会を目指していた。
 昴、カトレヤの順に告解室に赴き、信者の振りをして懺悔をする手はずである。その間、紗希、ヴィクター、警部は教会の近くで身を潜め、戦闘になったら突入するという段取りだ。
「さて、付け焼刃の演技だが、案内させるまでボロを出すなよ」
と、ベルフは昴に茶々を入れる。しかし、昴は平然と胸を張って答えた。
「大丈夫、告解する内容は誰かの実話を元にしているからね」
 どういうことだ、と首を傾げるベルフに、昴は
「ベルフの生活のことだよ」
と、にんまりと笑って見せる。ベルフは一瞬、昴の言葉に眉をひそめたが、気にしないそぶりで「行ってこい」と昴を促した。

 教会の聖堂に入ると、正面に祭壇。そこまではいわゆるヴァージンロードが10mほど続く。その左右に信徒たちが座る木製のベンチが並んでいた。
「すみません……懺悔をしたいのですが……」
 なるべく暗い声音を装い、昴が教会の奥に声を掛ける。
「どうぞ、こちらへ」
 教会の奥から現れた聖職者は、昴を祭壇の奥にある小さな小部屋へと導いた。
「神はすべての神の子の罪をお赦しくださいますよ」
 格子を挟んで昴と対峙した聖職者は、穏やかな声で話しかける。
「実は……今、僕は友人の狭いアパートに転がり込み、家賃も払わず自堕落な生活を送っていて……これではまるでヒモだと心苦しく思っているのですが、働こうという意欲も湧かず……いったいどうしたらよいのでしょうか?」
「神は、赦しを請えば赦してくださいますよ」
 聖職者は、演技と気付いているのかいないのか、昴に答えた。昴もそのまま演技を続ける。
「ああ、神よ……。わたしの罪を取り去り、どうか洗い清めてください」
 聖職者は答える。
「神は、あなたの罪を赦します。さあ、安心してお行きなさい。地下墓地(カタコンブ)へ」
 いよいよだ。
 しかし、ここでは驚いた素振りを見せねばなるまい。昴は一瞬、
「え?」
と言った。
「地下墓地で赦しを請うのですよ」
と、聖職者は外へ出るよう促す。
 昴は小首を傾げる演技を続けながら、告解室の外へ退出した。そこには、もう一人の聖職者が待っている。火の点いたロウソクを渡すと、祭壇に向かって左手にある小さな扉を開けた。
 外へ案内された昴は、聖職者の後に付いて歩いて行く。
「出てきたぞ、ヴィクター頼んだ。後を追ってくれ」
 カトレヤの指示にヴィクターは沙羅と共に、昴たちの後を追う。紗希とカイもいつでも戦闘に参入できるよう、息を飲んで待った。
 一方、カトレヤも信徒の振りをして、教会内へと入って行く。
「何しに教会へ行くのじゃ?」
 派手な衣装を引きずった紅花が、無邪気に尋ねる。
「お前の行いについて告解しに行くんだ」
 どういうことかわからぬといった様子で問い返す紅花の容姿を、カトレヤはあらためて上から下まで眺める。膝まで届く長い赤髪、鎧の上に派手な柄の赤系の陣羽織、頭には鈴やらリボンやらが結びつけられている。どうひいき目に見ても、教会に懺悔をしに行くような殊勝な性格には見えない。
「しばらく、幻想蝶の中に入っているか?」
「なぬ?」
 有無を言わさぬカトレヤの言葉に、紅花はいったん幻想蝶の中へと収まることにした。
 そのとき、カトレヤの耳に
「……案内の聖職者……教会へ戻った……」
と、ヴィクターからの無線が入る。
「昴さんは、階段を降りる振りをして潜んでいます」
と、紗希からの報告も続く。
 できれば各個撃破が望ましい。正体が判明したところで順番に聖職者を倒して行くか、とカトレヤは思案した。

●行方不明者との遭遇
 昴が偽の懺悔をしていた、ちょうどその頃。地下墓地捜索組は、ようやく地下へとたどり着いた。それぞれ、英雄とのリンクを済ませ捜索を開始する。
 ベルベットと共鳴したことで、狐のような耳ともふもふの尻尾の生えた桜子は、分かれ道に来ると、周囲を細かく見回して
「こちらは、ホコリが少ない。よし、こちらだ!」
と、周囲に指示を出した。尊大な様子は、リンクする前とさして変わらない。
 青い髪に金色の瞳、少女の姿に成長したルーシャンは、方位磁石で現在位置を確認すると、地下墓地の地図にチェック印を書き込んでいた。
 リンクによって大人びたメリッサのような女性となった拓海は、迷わないようチョークで壁に印をつけていた。とはいえ、周囲には頭蓋骨が壁のように積まれているため、チェックができるただの壁を探すのに一苦労であるが。
 征四郎は、男として生まれ成長したならこういった風貌になるであろうという騎士のような凜とした佇まいに変じていた。悲鳴や救援を呼ぶ声が聞こえないかと、征四郎は耳を澄ます。より、周囲の音を聞こうと、壁に耳を近づけようとした征四郎は、それが髑髏だったことに気付き、思わず悲鳴を呑み込んだ。
「そいつは、ただの抜け殻だ。わかってるよな?」
 心の中で語りかけて来るガルーに、
「わかっています」
と、毅然と答えた。
「ん? これは?」
 先ほどからマグライトを使って、周囲の髑髏を丹念に観察していた縁が声を上げた。縁の外見は、リンクしても普段とさほど変化はない。ただ、いつものおっとりした雰囲気が消え、顔つきも口調もウィンクルムの影響か、きりっとした感じになる。
「どうかしたの?」
 問いかける拓海に、縁は床をライトで照らす。
「骨片が。そして、ここ」
 縁は、今度は壁の髑髏を照らす。
「欠けているよね? 誰かが触れた跡なんじゃないかな?」
 獣耳と尻尾の生えた状態に変じた姫乃は、ライトであちこちを照らし脇道や誰かが倒れていないか探した。
「ここに、道がありますわ」
 姫乃の声に、桜子も尻尾を揺らして駆け寄る。
「この脇道は、ホコリが積もっておらぬようだ」
 その道へ入ろうとする桜子の手を、「わ、私が桜子ちゃんを守ってあげるから!」と、ルーシャンがギュッと握った。
 姫乃、ルーシャン、桜子たちが進んだ先には、一人の女性が倒れていた。
 縁が、外の救急隊員と他のエージェントへ無線連絡をしてから、救急キットを持って脇道に走る。縁は毛布で抱きかかえるように女性を暖めた。
「飲めますか?」
 縁が声をかけ、桜子は水筒の蓋を開け口元へと持って行く。ルーシャンは、キャンディを用意していた。
 女性は、薄目を開けると、ストローを口に含み一口飲み込んだ。
 姫乃が、青い紙を取り出し、
「軽傷者ですわね。もう少しで助かりますから意識を保っていなさい」
と、毛布に貼り付ける。
「あなたたちは……赦してくれるの? 私を……」
 女性は脅える瞳で、エージェントたちを見回した。

●再び告解室で
 カトレヤは、紅花を幻想蝶に追いやった後、告解室へと向かった。
「すみません……懺悔したいことがあるのですが」
 普段のカトレヤとは打って変わった弱々しい口調で、演技を始める。
「おや、どうされたのですか」
と、穏やかな声で聖職者は答えた。その化けの皮をはがしてやると、カトレヤは演技を始める。
「実は……私の家の居候が大飯ぐらいの上に、家事は手伝わず、ゴミは散らかす、私の物を勝手に使う……、とんでもないごく潰しで」
 カトレヤが猫なで声で告解するのは、普段の紅花の行状だった。幻想蝶の中から紅花が
「おい」
と、カトレヤにツッコミを入れるが、カトレヤは聞こえぬふりで懺悔を続ける。
「私も我慢していたのですが、鬱憤が積もりに積もって、ついに、……居候の食事に、ど、毒を……」
「なんと!」
 こちらも演技であろうが、聖職者が驚きの声を上げる。一方、
「お、おい……」
とカトレヤに呼びかける紅花の声は真剣だった。
「思い留まったとはいえ、自分がしようとした行いが恐ろしくて……」
 幻想蝶の中の紅花はホッと胸をなで下ろす。
「神は赦してくださいますよ」
 聖職者は相変わらず猫を被ったまま、カトレヤに話しかける。そして、一方のカトレヤもまた完璧に猫を被っていた。
「神よ、どうかお赦しください」
「神は、あなたの罪を赦します。さあ、お行きなさい。地下墓地へ」
 その聖職者の言葉に、カトレヤは声を裏返す。
「え? 今まで告解の後に、地下墓地へ行けと言われたことなどありません! あんな所に一人で行くなんて……怖い!」
 カトレヤは、なんとかして聖職者の尻尾を掴もうと演技したが、動揺すら見せない。
「大丈夫ですよ。外にいる者があなたを案内しますから」
 聖職者は、告解室の外を示した。
 このままでは二人が愚神だという確証はない。が、万が一、二人とも愚神だった場合、今のままでは多勢に無勢である。まずは、案内の聖職者に的を絞るかと、カトレヤは「わかりました」と涙をぬぐう演技をしながら案内の聖職者の後を追った。

「聖職者……入り口に着く」
 ヴィクターの声が無線で響く。
 それを受けて、カトレヤも、階段の下に潜んでいた昴も、物陰に身を潜めていた紗希も、警部も一斉にリンクした。
 共鳴すると共に、カトレヤの身体のうち機械のパーツだけが、紅花と入れ替わる。そのまま、カトレヤは案内役の聖職者に向けてセーフティガスのスキルを放った。
 しかし、聖職者はポカンとしたまま、リンクで変わったカトレヤの姿を見つめている。一般人ならば、このスキルを受け起きていられるはずがない。
「一般人じゃないとわかれば遠慮は無用、退治するぜ」
 カトレヤの言葉を合図に、大剣のコンクンユシオを構えた紗希が、飛び出して来る。髪はカイのように黒く染まり、瞳は左だけ薄い青色に光っていた。何より普段の紗希と異なるのは、その攻撃的な表情である。カトレヤに気を取られ、まったくがら空きだった右側に、紗希のヘヴィアタックが食い込む。
 続いて、背後から昴がシルフィードで斬りかかる。斬っては離れ斬っては離れのヒットアンドアウェーの攻撃を加える昴に、先ほどまでの笑みはない。素早く相手の死角に潜り込むその戦い方は、名うての暗殺者だったというベルフが培ったものなのだろうか。
 紗希と昴の二人はみるみるうちに聖職者の体力を削って行く。
「教会の中のヤツも仲間なんだな?」
 もう間もなく倒れそうだと見てカトレヤが聖職者に尋ねる。頷く聖職者に畳みかけるように質問を投げかける。
「おまえの目的は? なぜ次々と人を攫うんだ?」
 聖職者の答えを待つ一瞬の間、昴と紗希は攻撃の手を緩めた。しかし、反撃の余力はもう残ってはいない。
「ド、ドロップゾーン……ライヴスを……」
「ライヴスが補給できるなら、従魔も次々と作り出せるんだな?」
 頷いたところに紗希がとどめを刺した。
 聖職者は地面に膝をつき倒れる。そこには、聖職者の装束と白骨だけが残されていた。
「教会に戻るぜ」
 カトレヤの声に、昴、紗希、ヴィクターたちも続く。警部は無線で、部下たちに教会の周囲を包囲するよう指示を出した。さらに、地下墓地探索メンバーにも教会突入に加わるよう、無線で連絡をした。

●白骨従魔との闘い
 時間はそれより少し遡る。カトレヤが告解室で懺悔をしていた頃、地下墓地の探索も着々と進んでいた。しかし、最初の行方不明者発生から時間が経っているせいもあり、既に遺体となって発見された被害者もいる。
 征四郎は、「ご愁傷様です」と言いながら、これ以上、遺体に傷がつかないよう端に寄せ、警察に無線で発見の連絡を入れる。姫乃は苦い表情を浮かべ、緑の色紙を置いた。桜子は短い黙祷を捧げ、遺体発見場所を地図に記し、
「少しの間待っておれ……すぐに迎えにくるからの!」
と遺体に話しかけた。

 異変が起きたのは、8人目の行方不明者を発見したときのことだった。
 被害者の女性にはまだ息がある。縁が救急キットを持って走り、拓海が毛布で被害者を抱きかかえ語りかける。
「貴方に罪は無いよ……辛かったね」
 聖が水筒を手渡そうとしていたそのとき。
 行方不明者の奥の壁……いや、壁に埋まっていた髑髏が蠢いた。
 カタカタ、カタカタ……。
 音を立てながら、壁から骨が一本ずつ飛び出てくる。そして、その骨は足から骨盤、背骨、頭蓋骨と下から順に人の形に組み上がっていった。
 聖は手にしていた水筒を縁に預けると、大剣のフルンティングを構えた。
「紫、従魔が出て来やがったぜ」と無線でもう一方のグループに伝えてから、
「いくぜ、トップギアでぶっち切るぜッ!」
と、ガイコツ相手に怒鳴ると、そのまま大剣を振り回し膝の関節を狙い、叩き斬ろうとする。
「ヒジリー。狭い室内の戦闘だからね、考えて武器使いなよ。もっと身体のバネを使って、突き刺すようにすればいいんだよ」
と、聖の後ろに影のように重なったLe..がアドバイスする。
「わかってる!」
 しかし、目の前のガイコツが、
「ケケ……わかってない……お前は弱いぞ」
と、聖をあざ笑った。
 今のところ、聖に影響はない。しかし、被害者の女性は、
「ああ……赦して……」
と、呟き始めた。
「どうやら人の心の弱さを突き、精神を乱すようですね」
 ウィンクルムが縁に話しかける。場合によっては、精神攻撃で受けたダメージを回復する必要もあるかもしれない、ということだ。
 頷きつつ、縁は外の警察や救急隊、途中で離れてしまったもう一方のグループに手早く無線で連絡を取る。
「マップ、A-22付近でガイコツ従魔1体と遭遇、現在、被害者救護しながら戦闘中です」
 聖に続き拓海が、拳闘武器のハンズ・オブ・グローリーで骨が粉々になるよう殴りかかる。
「ルゥ、なんとなくわかったぜ!!」
 Le..のアドバイスをもとに左手に大剣を持ち替えた聖は、剣の側面を使って頭蓋骨を抑え込んだ。そのまま拳を上から振り下ろす。さらに、ヘヴィアタックでガイコツを壁へ叩きつけた。
「……使い方ヘンだけど……まぁいいや」
 Le..のお許しが出たところで、ガイコツは粉々に砕け散った。
 そこへ、息を切らし征四郎が合流した。
「応援呼ぶ必要なんてなかったな」
と、剣を鞘に収めようとする聖に
「いえ、後ろ……」
と、征四郎が注意を促す。聖の背後から、再び、カタカタ、カタカタ……と骨の鳴る音が聞こえた。
 合流する直前、それに気付いた姫乃がスナイパーライフルで、形を成し始めたガイコツの額を射貫く。
 しかし、さらにその左右からも、都合3体のガイコツが人の形を取ろうとしていた。ルーシャンは被害者の女性を守るよう傍に駆け寄った。桜子も、コンユンクシオを構え、被害者を背にガイコツとの間に入り盾となる。
 ライトアイで視界を確保してから、征四郎は
「人の弱みに付け込んで、許せないのですよ!」
と、挑発するように怒鳴りつけて、ガイコツ一体を自分の方へ引きつけた。盾で攻撃を躱しつつ、ブラッディランスを叩きつける。
 聖は被害者が、ルーシャンたちに庇われているのを確認してから、敵全体に向け怒涛乱舞を放った。
「アタッカーとしての見せ場ってヤツだ!」
 ガイコツが地面に崩れる。しかし、ガイコツは倒れてもまたすぐに人の形を取ろうとしている。
 一方、被害者の女性からは、だんだんとライヴスが失われていた。
 気付いた征四郎は、急ぎケアレイでライヴスを回復させる。
 そのとき、地上の警部から無線が届いた。
「皆、急いで教会へ上がってくれ。そこは、ライヴスがある限り従魔が生まれ続ける。ドロップゾーンを作るための温床だ!」

●偽りの聖職者
 エージェントたちは全員合流し、警官たちと共に教会を囲んだ。警部の合図のもと、地下墓地側へ出る裏扉から侵入する。
 メリッサはここまでの愚神のやり口が相当気に触ったらしい。可憐な様子が一変、突如冷徹な声音で拓海に囁く。
「私にやらせて」
「ああ、思いっきり行け」
 突入前にトップギアのスキルを使用して、命中を上げる準備をした。
 扉をそっと開く。昴が、背後から猫騙のスキルで聖職者の不意を突いた。一瞬、怯んで扉の方を振り返った聖職者に、姫乃がスナイパーライフルを放つ。
「何も気にせず武器を振れるのはいいもんだな!!」
 聖は豪快に大剣を振り回し飛びかかった。
 聖職者は攻撃を躱しながら聖典を開き、何か口の中で唱え始める。
「おまえたちは全て罪人だ。我らの餌となり、ライヴスを捧げ続ければよい!」
と、エージェントたちの精神に混乱のダメージを与えようとする。
 前衛の征四郎は皆を守るように盾を構えた。
 しかし、紗希が征四郎を飛び越え聖職者の懐に飛び込もうとする。その瞬間、大剣を構えた紗希の様子が変化した。先ほどまでの攻撃的な表情が消え、声音も内気な少女のものに変わる。
「日本人なのに、こんな緑の瞳をしているから……皆、私のことを嫌うのですね……」
 俯く紗希の中で、カイが叫んだ。
「マリ、こんなヤツの言うこと気にするな! そのままでいい、マリのことは俺が守るからな!」
「誰だって悩みやコンプレックスのひとつやふたつ持ってる。でも、そういうの全部含めて自分だし。それを裁く権利なんて、こいつらには無いっ――」
 縁も怒りを抑えるようにしながら、まやかしの呪縛から逃れられるよう紗希に向けてクリアレイを放つ。
 昴は、相手の攻撃を抑えようと、ジェミニストライクで分身を生み出し聖職者に狼狽を与えた。そこに拓海と精神を交替したメリッサが、ストレートブロウで聖職者を吹き飛ばす。
 聖職者は、そのまま壁に強く背中を打ち付け苦しそうに呻いた。
 ガルーは征四郎の脳内で、
「カミサマなんていやしねぇし、いたって赦す権利なんざねぇ」
と話しかける。かつて、征四郎は女児であるがために望んだ未来を失った。しかし、他人を裁き未来を決める権利は誰にもない。
「神様が許しても、私達が許しはしませんわ」
 姫乃がスナイパーライフルの引き金を引く。
 征四郎もガルーに頷くと、高く飛び上がる。
「つまり、ここにあなた達は必要無い!」
 ブラッディランスを偽りの聖職者の頭に勢いをつけて叩きつけた。
「ぐ……」
 聖職者の姿をした愚神は倒れ、装束だけ残し骨と化した。既に亡くなっていたこの教会の聖職者に成り代わったのか、それとも聖職者を依り代にしたのか。真実は闇の中である。ともあれ、この地域でのドロップゾーン生成を防ぐことには成功したのだ。
「信心に付けこまれるのは、どうにも嫌なものがあるね」
と言う昴に、
「奴らの常套手段だからな」
仕方ないというようにベルフが答えた。

「わしはご遺体を迎えに行くぞ」
 桜子はきりりと前を向いて言った。
「私も」
 ルーシャンは、桜子の手をぎゅっと握りしめた。縁も頷き、救急隊もそれに続いた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
  • エンプレス・ルージュ
    カトレヤ シェーンaa0218
  • もふもふは正義
    泉興京 桜子aa0936
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049

重体一覧

参加者

  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • エンプレス・ルージュ
    カトレヤ シェーンaa0218
    機械|27才|女性|生命
  • 暁光の鷹
    王 紅花aa0218hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
    人間|16才|女性|命中
  • アサルト
    カイ アルブレヒツベルガーaa0339hero001
    英雄|35才|男性|ドレ
  • 希望の守り人
    ルーシャンaa0784
    人間|7才|女性|生命
  • 絶望を越えた絆
    アルセイドaa0784hero001
    英雄|25才|男性|ブレ

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • もふもふは正義
    泉興京 桜子aa0936
    人間|7才|女性|攻撃
  • 美の匠
    ベルベット・ボア・ジィaa0936hero001
    英雄|26才|?|ブレ
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 水鏡
    榛名 縁aa1575
    人間|20才|男性|生命
  • エージェント
    ウィンクルムaa1575hero001
    英雄|28才|男性|バト
  • エージェント
    紅鬼 姫乃aa1678
    機械|20才|女性|回避



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