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エルスウェア連動

世界総カンガルー化計画!

高橋一希

形態
イベント
難易度
普通
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
21人 / 無制限
英雄
19人 / 無制限
報酬
普通
相談期間
16日
完成日
2015/12/17 18:00

掲示板

オープニング

 自然公園は今日も賑わっていた。
 滝や森など自然の合間を、そして動物たちのいるエリアの合間を、一台のバスが縫うように走っていく。
 バスの中はほぼ満員。人々は窓の外を見て、ときに歓声をあげる。
 そんな中、バスが大きめの建物の前で止まった。
 この建物は休憩所になっており、テーブル、ベンチが設置されている。窓も大きくとられた明るい場所だ。
 窓の外はカンガルー達の棲むエリアとなっており、動き回るカンガルーをじっくり観察することもできる。
 バス誘導のおじさんが指示をし、停車したバスのドアが開き、人々が乗降する。そんな中――。
「おじさん、こんにちはなのです~」
 大きなカンガルーのぬいぐるみを抱えた、7歳くらいの少女が一人。少々危なっかしい足取りでタラップを降りる。
 彼女の姿を見て、バスの誘導を行っていたおじさんがにこりと笑った。
 彼女が最後の乗降客と確かめ、おじさんはバスに発車するよう指示を出し、それから少女へと向き直る。
「嬢ちゃん、今日も来たのか。お前さんのツレも、もう来てるぞ」
 おじさんが指す先は、大窓の前。
 そこには腕白そうな少年がいた。年頃は少女と同じくらいだろう。
 彼は腕を組み、カンガルーに目もくれず、じっとこちらを睨んでいる。
「ありがとうなのです!」
 少女は、おじさんへと軽くお辞儀をし、それから少年めがけてぱたぱたと駆けだした。
「……ススムくん、もうきてたのです?」
 少女に声をかけられ、ススム少年はニッと笑って見せる。
「おせぇよ、あかね」
「ごめんなさいなのです~」
 少女――袋谷・あかねはぺこりと頭をさげた。
「今日はどうしたんだよ」
 ススムの問いかけに、彼女は抱えていたカンガルーのぬいぐるみをむいっとつきだした。ぬいぐるみの耳の部分は、ちょっぴり破れた跡がある。
「やぶれ耳さんを忘れてきてしまって、大慌てで迎えにいったのです……あと……」
「あと?」
 少しだが曇った表情に、ススムも心配げに問いかける。
 だが、あかねは何かを振り切るように首をぶんぶん、と左右に振った。
「なんでもないのですよ~」
「それにしても、あかねはカンガルー好きだよなぁ」
 彼女の抱えたぬいぐるみ「やぶれ耳」の頭を撫でながらにススムが告げる。
「ほよ? ススムくんだってカンガルーすきですよね?」
「まあそうだけどさぁ……」
 初めて会ったのも、このカンガルーエリア前の休憩所で、二人で出かけるときの待ち合わせは、いつもこの場所。
 動物が好きで、とりわけカンガルーが好き。そんな会話から友達になった。
「そんじゃ、次のバスで園内まわってくか。お前ちょっとボケボケだからさ、一人だと危なっかしいだろ? オレがナビゲートするよ」
「ありがとうなのです」
 ススムはさりげなく、あかねの手を握る。
「さて、今日はどんな動物みたい?」
「えっと、えっと~……」
 あかねが考えはじめた時、先ほどバスの走り去った方から悲鳴が上がった。
 休憩所にいた人々はそれを耳にし、怪訝そうな表情を浮かべる。
 直後、異形の存在が建物の中へと飛び込んできた。
「従魔だ!!」
 即座にススムが声を張り上げる
 突然の従魔の出現に、バス誘導のおじさんはあわてふためき、居合わせた客たちが悲鳴をあげ逃げ惑う。
 だが、あかねも、ススムも、恐怖に凍り付いたように動かない。
 しかし――。

「みなさん、動物はお好きですか?」
 H.O.P.E. 受付はエージェントたちへとそう切り出した。
「ここから北西にしばらく行った所に、自然公園があるのですが、そこに従魔と愚神が現れたようです」
 H.O.P.E. の感知した所によれば、愚神はすくなくともデクリオ級以上。自然公園はドロップエリアと化しているという。
「一刻も早く倒さなければ、愚神は残された一般人や動物などのライヴスを奪い、さらなる強化をとげることでしょう」
 厳しい表情で彼女は告げる。
 従魔や愚神には一般的な兵器はきかない。故に対等に渡り合えるのはAGWを自在に操る事のできるエージェント達だけ。だからこそのH.O.P.E.の依頼なのだ。
 自然公園はきわめて広く、通常時はバスでの移動しかできない。
 しかしながら現在の状況では、バスの運行は期待できないだろう。
 公園の姿は、ドロップゾーン化する前とさほどかわりはないとは言うが、公園外周付近に一般人がおり、公園中央近くにホンモノのカンガルーや、カンガルー型従魔が棲み着いている。従魔の配分から見るに、恐らく公園中央部に愚神がいるのではと目されている。
 なお、カンガルー以外の公園内の動物たちは、かなり弱っているようだ。
 ライヴスを奪われた以上、弱るのは当たり前の話ではある。だがそれでも不思議な部分はあった。
 受付はこう続ける。
「本来ならば、もう既に死亡者が出ていてもおかしくない状況なのですが、今のところ死者が出たという情報は入っていないのです。そして、残された一般人たちは何故か全員カンガルーのきぐるみを着ているようです」
 ちなみに、基本はきぐるみなのだが、ないすばでぃなおねーさんなどは露出度もなかなかのカンガルーコスチュームだったりする。
 通常、ドロップゾーン内では一般人や動物は昏倒してしまう。こんな一見愉快な事態が発生しているのは、エリアルーラーである愚神によって、そのようなルールが定められている、という事なのだろうが……。
 受付はどこか沈鬱そうな表情で続けた。
「更には、何故か屋台を作って、お土産物の販売しようとしているみたいなんです……」
 曰く、カンガルーせんべいとか、カンガルーまんじゅうとか、カンガルーマカダミアナッツチョコレートとか「一体どこの土産だよ!?」的なものばかりなのだとか。
 どう考えてもドロップゾーン内では買いに来る客などいない。もはや愉快を通り越して頭が痛くなりそうなルールである。
 一体何を考えているのか、とでも言いたげに受付は頭を振る。
「どうであれ愚神たちにとっては我々は捕食対象でしかありません。生き延びるためには――」
 そう言いかけた時、取り乱した様子の中年女性が駆け込み、エージェント達へとすがりつこうとする。
「助けて! あの自然公園には私たちの娘が……」
 そんな女性を、夫と思しき男性が宥め、それから、エージェント達の前で深々と礼をした。
「私達は日本からやってきた袋谷と申します。実は、うちの幼い娘がたった一人で自然公園にでかけてしまいまして」
 動物好きだという娘は、何かと自然公園に出かけたがった。時には伝言だけ残して勝手に出かけてしまうくらいだという。
 そこに丁度この事件だ。
「もし巻き込まれていたらと思うと生きた心地がせず、妻もこの有様で……娘の名は『あかね』と言います。どうか皆さん、私達の娘を取り戻してください」
 カンガルーのぬいぐるみをいつも大事に抱えているため、それが目印になるだろうと告げ、紳士は再び深々と頭を下げる。
「みなさん、私からもよろしくおねがいいたします」
 受付もエージェント達へとそう述べ頭を下げたのだった。

 ――その頃。
 真っ暗な室内に、何十人と座れる大きな机があった。
 足元のあたりを僅かに照らす明りに、多数の人物が座しているのが辛うじて判る。
 上座に向かうにつれて照明は更にしぼられ、ほぼそこに居るべき人物の姿は見えない。
 最も奥の席には身なりの良い紳士然とした人物が一人。背後に黒いサングラスをかけた屈強そうな身なりの男を二人従えているあたりからみても、ただものではないと察することができるだろう。
 その紳士然とした人物が音もなく立ち上がると、途端に席をかこむ一同が彼の方へと視線を向けた。
 彼は大仰な身振りをつけその場の一同へと語り出す。
「例の自然公園で起った事件……たんなる偶然だと思うかね?」
 彼の言葉に、周囲の空気が苦さを含んだものへと変わっていく。
 男は更にこう続けた。
「動物たちの暴走は能力者のせいなのではないのかね?」
 途端にささめく声が各所から湧きだす。
「まさか、そんな事が?」
「いや、やつらの持つ人間離れした力なら、可能かもしれないぞ」
 紳士は彼らの言葉に答える事なくただ黙するのみだ。
 会議場は次第にヒートアップしていく。
「そうだ! 能力者のせいだ!」
「あいつらが、我々に、人間に危害を与えようとやっているに違いない!」
「あいつらは人間ではない! 能力者を全て滅ぼせ!」
 熱情に浮かされた場を、口火を切った紳士はただひとり静かに眺めていた。

解説

■注意事項
 ・このシナリオは全三回を予定しております。
 ・三話構成の予定、かつ謎解き要素があるため、オープニングでの問題提起が必ずしも一回目で解決できるとは限りません。一回目でどこまで謎が解かれるかは皆様のプレイング次第です。
 ・また、二回目以降、ストーリーが進めば新たな謎が発生する可能性もあります。
 ・他のオーストラリアシナリオと内容的にもリンクしておりますので、そちらも読むと何かヒントがあるかもしれません。
 ・皆様の発想で自由にプレイングをかけてください!

■現状解説
 シドニーから北西に200キロほどの場所にある自然公園に従魔と愚神が出現しています。
 愚神はドロップゾーンを形成しているため最低でもデクリオ級以上と目されています。
 自然公園の外周部には一般人が多数おり、何故かカンガルーの着ぐるみを着て、カンガルーっぽいお土産物を売る屋台を作ったりしています。
 カンガルーエリアそばの休憩所に、事件発生時には袋谷・あかねと、正体不明の少年ススムがいたようです。
 園内は渓谷があったり森林地帯があったりするため、通常時はバスが運行していましたが、現在はそれらの足はさすがに望めないでしょう。
 園内の動物たちはかなり弱っており、人前に姿を現わす事はありません。ただしカンガルーだけはさほど弱っておらず、遭遇した場合、襲撃してくる事があります。
 エージェントの身体能力的には、問題無くカンガルーの攻撃は回避できますし、受け止めてもダメージはほぼありません。しかし、園内にはカンガルー型従魔も存在しているため「カンガルーだと思ったら従魔だった」という事態も発生する可能性があります。油断は禁物です。
 また、通常、ドロップゾーン内では一般人や動物は昏倒しますが、彼らが意識を失っていない上、不可解な行動をしているところから察するに、エリアルーラーである愚神により何らかのルールが定められていると見て間違いないでしょう。

■キャラクターが取り得る選択肢例
選択肢1、自然公園に乗り込む!
・解説
 文字通り、自然公園内へと乗り込みます。
 現在自然公園内部はドロップゾーンと化しており、愚神が出現した際その場にいた一般人たちは概ね自然公園の外周部に配置されております。なお、何故か彼らはカンガルーの着ぐるみを着ていたり、カンガルーっぽいお土産物を売る屋台を作ったりしています。
 従魔が多数出現する可能性があります。
 愚神について探るなり、従魔を少しでも減らして今後に備えるなり、ご自由にどうぞ。

選択肢2、シドニーで周辺で聞き込みをする
・解説
 シドニーにはH.O.P.E.の支部がある他、自然公園に勤務する職員なども暮らしている市街地があります。そしてオペラハウスやハーバー・ブリッジ等、観光スポットとしても有名なので色んな人が居るかもしれません。
 そういった場所で聞き込みをします。もしかしたら、あかねの行方や、自然公園の日頃の状況について知っている人がいるかもしれません。
 具体的に「どの時間帯に」「どんな場所で」「どんな内容を尋ねるのか」が書かれていると有利になるかもしれません。
 また、どうしても観光がしたい人は聞き込みのフリをして観光しちゃうのもアリかもしれません。

■NPC情報
袋谷・あかね(ふくろや・あかね) 7歳 女性
 旅行でオーストラリアにやってきた少女。
 自然公園内にとり残されているらしい。両親から捜索願いが出されている。
 動物、とくにカンガルーが好きらしく、カンガルーのぬいぐるみを抱えてシドニーを歩く姿が幾度か目撃されている。

ススム 8歳 男性
 自然公園内にとり残されていると思われる少年。
 素性は不明ながら動物に詳しく、現地についても土地勘がある模様。どうやら、あかねと親しいらしい。 

■お願い
 お友達と一緒に参加される方は、お互い相手の名前とIDをプレイングの最初に書いて下さると助かります。
(同名の人物が参加していた場合の混乱や、迷子防止の為です)
 団体で参加される場合は、プレイングの最初に団体名でもOKです。

リプレイ

●縦横無尽に市街地を!
 斉加 理夢琉(aa0783)はH.O.P.E.オーストラリア支部から、子カンガルーぬいぐるみを抱えて歩き出す。
 道に出た所で、彼女は自らの英雄を案じるように幻想蝶に触れた。
 彼女の英雄は、資料で見たカンガルーに拒否反応を示し、出てくるのをイヤがっている状況だったりする。
「情報収集しながらいろんな所、見て回りたかったのにぃ~」
 勿論、一人でも見て回れるが、やっぱり英雄と一緒にあちこち歩きたい。
 色々思う所はあれど、理夢琉は駆け出す。
 まずは、お仕事だ!

 シドニーに残った能力者たちは、それぞれに情報を得るべく、街を駆け巡る。
 活動開始にあたって、入念に準備をしている者もいた。たとえば……。
「N・P・Sの人と、もめたくないですから、能力者ってばれないように観光客風の格好をしていきましょうね!」
 セレティア・ピグマリオン(aa1695)は英雄バルトロメイ(aa1695hero001 )へと力説していた。
 さすがに鉄鎧など纏っていたらバレバレだろう。しかも、どう頑張っても誤魔化せそうもない、実用仕様の傷だらけだったりするやつだ。
 そこで、セレティアは真新しいTシャツを引っ張り出す。このために彼へと準備したものだ。
 早速着せてみた。が。
 赤銅色したぶっとい腕が、むきっとシャツから伸び、胸筋がっちり、腹筋は六つにしっかり割れている。
「……バルトさんTシャツ姿スゴい……筋肉とかほんとむり……」
 目を逸らしながらにセレティアが訴える。
「カンガルーの着ぐるみとかだめですか?」
「夏だぞふざけんな」
 今まで黙って着せ替えられていたバルトロメイだが、一言切り捨てた。

 そんな一幕も挟みつつ、二人はロックス地区にある警察署を訪れた。
 午前中の陽光に照らし出された建物は、焦げ茶色っぽいシックな色合いが特徴だ。
 行方不明の少女についての聞き込みという事で、警察の協力も得られればと思っての行動だったわけだが……。
「人相の悪い男が、少女を連れまわしている事案が発生してるんです!」
 セレティアは力を込めて相手を説得する。
 少女とは、恐らく、捜索を頼まれた、袋谷あかねの事を指しているのだろう。しかしながら、人相の悪い男とは、誰の事だろう?
 人捜しのためならば多少の嘘も方便、という所だったのだろうか。
 だが、警察あいてに虚偽申告は少々問題がある気がする。
 更に言えば、万一愚神や従魔との戦いに警察が巻き込まれた場合、一般人でしかない彼らに抗う術などないのだ。
 さておき、警察官は、目前で懸命に語る、ふりふりひらひらメルヘン少女と、背後に立つむきむきマッチョマンなバルトロメイを幾度も見比べ、口を開く。
「……それは、お嬢ちゃんの事ではなく?」
「え? ええっ!? バルトさんはとっても頼りになる人ですよ?」
(「噛み合ってねぇ……」)
 あまりのままならなさにバルトロメイは大きくため息をつくと、セレティアを小脇にかかえ警官へと一言。
「すまん。ジャマしたな」
 述べてその場を後にした。

「バルトさん、なんで止めるんですか」
 バルトロメイに抱えられたまま、ぶーたれるセレティアだったが、そんな状況でも調査メモを読みなおし、あかねが出かけた当日の同行を確認する。
 きちんと調べる事は調べていたらしい。
「寄り道の可能性はなさそうですね」
 寄り道をした様子はないが、二度このあたりを行き来したと思しき証言はあった。
 恐らく忘れ物を取りに帰ったのだろう。
 メモから顔をあげ、セレティアは自然公園のある方角を見やる。
 ここからでは公園そのものの姿は見えないが、今、そこに、沢山の仲間達が向かっているはずだ。
 そろそろ彼らとの連絡も行わなければなるまい。
「カンガルーまんじゅう買っていきましょうか~」
「そんな得体のしれないもん食ったら腹こわすぞ……」
 セレティアの何気ない言葉に答えながらも、バルトロメイは仕方なしといった調子で自然公園方面へと足を向ける。
 一応、あかねの当日行動をトレースするためにも、現地には向かわねばならない。
 しかしながら。
「あー日本に帰りてェ……」
 あまりのままならなさに、凄まじい疲労感を覚えたバルトロメイは、そう宣ったのだとか。

 如月樹(aa1100)は、昼時のロックス地区に繰り出していた。
 何せ、ここは観光にやってきた人が必ず訪れる場所だと聞く。ここなら、あかねの情報も得やすいに違いない、と踏んだらしい。
「何か一つでも情報見つけれればいいんだけどね」
 イヤフォンとマイクもつけて、仲間との連絡は万全!
「カンガルーのぬいぐるみを抱えて歩く少女」の目撃情報は、意外なほど沢山あった。
 あまりの危なっかしい動きと、でっかいカンガルーが特徴的だったためか、人々の印象に残ったらしい。
「まずは上々、かな?」
 ごちて、一休みとばかりに、前から目をつけていたカフェへと入り込む。
 ナチョスやピザも美味しいらしいが、ここは有名どころなパンケーキを注文。
 やってきたボリュームたっぷりバターもたっぷりなパンケーキには、アイスクリームががっちり乗り、シロップがとろり。フロストシュガーもその名の通り、粉雪のようにふわりとかかり、パンケーキを飾り付けている。
 できたてのふんわりパンケーキをナイフとフォークで切り分けて、如月は早速味わうのだった。

 ちょうどそんなカフェの外を、六条融(aa0176)が歩いていく。
「親御さんの言うあかねの性格考えると巻き込まれてそうだな……」
 カフェにちょっぴり興味があったのか、ライラ(aa0176hero001 )は一瞬気をとられ足を止めたが、再び融の傍へと駆け寄る。
 彼らの聞いた、あかねの性格は、自然公園好き。
 そしていつの間にやら勝手に出かけている。
 だが、幼い子供が一人で、土地勘のない場所に出かける事など可能だろうか? 観光客向けのガイドブックなどがあっても、理解できない事も多かろう。
 そこで融は考えた。
「あかねと接触してる日本人でも、いるんじゃないかな?」
 彼の言葉にライラも、うんうん、と頷く。
「女の子が見知らぬ土地で一人でお出かけは、ライラ的にもないと思いますの!」
「ライラもちみっこいからよく間違えられるしな」
「そー言うこと言うんじゃありませんの!」
 融の混ぜっ返しに、ライラは慣れた調子でツッコミを入れている。
 両親ならば、もしかしたら接触している人物に、心当たりがあるかもしれない。
 そう考えた二人は袋谷夫妻のもとを改めて訪れる事にしたのだ。
 H.O.P.E.本部で教えてもらった住所を頼りに、やってきた場所は、気後れしそうなくらい立派な建物だった。
 融を迎え入れた袋谷夫妻は今日も疲れた顔をしていた。
「すみません、あかねさんの件でちょっと聞きたいことがあるんですけど」
 勧められたソファに腰掛け、早速とばかりに融が訊ねる。その合間に夫人が紅茶を淹れてくれ、ガラスのティーポットの中で踊る茶葉を、ライラが興味深そうに覗きこむ。
「一緒に出かけてそうな日本人の知り合い居ませんか?」
 途端、袋谷夫人がヒステリックな甲高い声をあげた。
「ああ、あの孤児の子ね! あれだけ、つきあうなと言ったのに、あの子があかねを……!!」
「落ち着きなさい!」
 少し時間を頂けますか、と一言断り袋谷主人は夫人を別室へと連れて行く。
 暫しして戻ってきた彼は申し訳なさそうに深々を頭を下げた。
「すみません。あかねが居なくなってから、だいぶ参っているようで」
「いえ…………」
 一生懸命丁寧に話そうとするも、融の声色は少々かたい。夫人の刺々しい声は融の心にもざっくりと刺さった。
 ソファの肘掛けの上、きつく握りしめられた融の手を、ライラの手が包む。大丈夫。辛いけれども、ライラは一緒に居てくれる。
 気を取り直し、融は袋谷主人に話の続きを促した。
「孤児の、って言ってましたけど……」
「ええ、オーストラリアに来てから同い年くらいの友人が出来たようでして。男の子で、ニューカッスルの郊外に住んでいると聞きました」
 幾度か会って、余程仲良くなったようで、あかねはその少年の事を、嬉しそうに語っていたという。
「しかし、奥さんはそれを拒絶した……?」
「恥ずかしながら、その通りです」
 袋谷は申し訳なさそうに縮こまった。
 彼が言うには、妻は、他人の産まれ育ち、学歴などを気にする癖があった。お受験ママタイプとでも言おうか。
「その男の子の名前、判りますか?」
「たしか、ススムくんと言ったはずです」
 情報への礼をし、融は袋谷主人に別れを告げる。
 主人は申し訳なさそうに、姿が見えなくなるまで見送ってくれた。
 暫く歩いて、融がぴたりと足を止め口を開いた。
「……にしても何でカンガルーなんだ? いやたしかにカンガルー可愛いけどさ」
 彼の言葉にライラも思う所があったのか、考えを巡らせはじめる。
 オーストラリアは動物も、植物も、どちらも豊富な場所だ。確かにカンガルーは人気があるかもしれない。だが他にも人気の動物は沢山いるはずだ。例えば、コアラとか。
 何故、カンガルーなのだろうか?
 ライラが融の思考と同じ地点にたどり着いた時、彼はぽつりと呟いた。
「オレ、ウォンバットのほうが好きなんだよなぁ」
「融の趣味なんて聞いてないですの!?」
 考えが遮られた感にライラはツッコんだ! だが、融のいつも通りの反応に、彼女は少しだけ安堵したのだった。

 CERISIER 白花(aa1660)は、彼女の英雄プルミエ クルール(aa1660hero001 )に幻想蝶にこもっているよう指示をした。
 プルミエ本人も「白花様のいう事ならば」と即座に了承はした。
 これなら能力者とは判らないだろうし、N・P・Sのメンバーに絡まれる事態は避けられるだろう。
 反面、出来ることならば、プルミエと一緒に大手を振ってシドニーを歩きたかったと思う自分も居る。
 指先で軽く幻想蝶へと触れ、白花は考える。プルミエは仕事上の良い助手だ。自分はともかく、彼女がN・P・Sに絡まれ、不快な思いをするようなことは出来れば避けたい。
 観光客向けだというホテルの間を歩く内、見かけた一軒には、異様なラクガキがされていた。
 彼女はぴたりと足を止めラクガキされた壁を見つめた。
「能力者に与する、人間のクズ」
 白花の普段は穏やかな顔に、一瞬だが苛烈な感情が過ぎる。
 ラクガキがされた壁は、よくよく見れば、ラクガキを繰り返されていると思しき跡もある。
 こんな方法でしか行えない主張に、誰が心動かされるというのだろう。
 書いた人物の品性も知れるというものだ。
 実に皮肉なものだと白花は考える。
 人間が、能力者を異質と感じるのは、仕方のない事かもしれない。白花としてはある程度は割り切ってはいる。
 彼女は仕事柄、様々な人々と会話を交わす。だから、人と人の考えの差違による、無意識な言葉の刃には、ある程度は慣れて居る。
 だがあけすけな悪意は、やはり好ましいものではない。
「日本人の知人のお嬢さんを捜しているのですが……」
「ああ、それなら袋谷さんちのあかねちゃんかな?」
 彼女は周囲の人々へと訊ね歩く。
 依頼とはいえ見知らぬ子供を捜し、人々をまもるために戦う能力者たちと、特殊な能力を持つものを恐れ、それらを攻撃し、排斥しようとする人間。
 はたして、どちらが人間らしい情を持っていると言えるだろうか。

 すっかり昼も過ぎ、ご飯時にも少々遅くなった頃、水落 葵(aa1538)は休憩がてら入ったカフェで、外をぼんやり眺めていた。
 どうせならウェルラス(aa1538hero001 )も一緒に食事をしたかった。そう思いながらに彼は幻想蝶の中の英雄を思う。
 幻想蝶の中に入っているよう指示をしたのは葵自身だが、なんとなく物足りない……などと思ってしまうのは、普段、ウェルラスがこまめに世話を焼いてくれているという証拠かもしれない。
 彼はスマートフォンを取り出すと、仲間達から入ってきている情報を確かめる。
 自然公園攻略中の仲間達が今の所は大きな事件には遭っていない事に安堵し、シドニーで活動中のメンバーからの情報をまとめ、自然公園側の中継メンバーへと送る。
 中継役として情報の管理は勿論行わなければならないが、それはそれとして自分も聞き込みを行おうと、葵はぶらりと外に出る。動けば、もしかしたら、なんとなく物足りない気持ちも、紛れるかもしれない。
 彼は、カンガルーのぬいぐるみを持った少女について訊ねていく。やはり、カンガルーのでっかいぬいぐるみはひときわ目を引いたらしい。
「ああ、カンガルーを持った女の子ね。あの子ならモンローハウスの子と一緒に居るのを見たわよ」
(「モンローハウス……確か、能力者排除運動の矛先になっているという……」)
 話に応じてくれた女性の言葉に、葵は記憶を掘り起こす。
 仲間達からの情報をまとめるに、N・P・Sの事はあまり口に出さない方が良い雰囲気だと葵は考えた。
 能力者の排斥と言うのなら、H.O.P.E.を狙ってもおかしくはない気がするのだが、N・P・Sは、ニューカッスルの郊外にある「モンローハウス」を集中的に狙っているという。
 そもそもが、これだけ歩き回ってもN・P・Sを名乗る人物に遭遇していないのも不思議だ。
「自然公園は、普段どんな感じなんだ?」
 話の方向を変えようと葵が訊ねると、女性はこちらも軽く答えてくれた。
「観光客が良く来るわよー」
 自然公園は、その広大な敷地に、たくさんの動植物を保護している。
 敷地はエリアごとに分けられており、動物たちはそのエリアを自由に動き回ることが出来る。
 観光客は、そこをバスで移動し、彼らの生態を間近で観察できる、というわけだ。
 余所の国からの観光客は勿論、オーストラリア内でも人気が高い。
 一通り話を聞き、葵は「ありがとな」と礼を告げ、更に他の場所に向かう。
 空は茜色に染まりつつあった。

「従魔が自然公園に……って、ちょっと唐突すぎないかな?」
 夕暮れ時、楠葉 悠登(aa1592)は自然公園職員たちが暮らすあたりに向け、市街を移動中。
 おやつ代わりに買ったドーナツを頬張り、ナイン(aa1592hero001 )へと自分の考えを語りきかせる。
「……そういうものか?」
 ナインは、ガン見していたドーナツ……いや、ドーナツの穴から視線を外し、少し不思議そうに首を傾げた。
 悠登は頷き先を続ける。
「カンガルーに拘りあるみたいだし、前から公園内で予兆みたいなものがあったかもしれないよ。関係者に当たってみよう? あかねちゃんの事、見たことある人も多いだろうしね」
 ドーナツをぺろりと平らげ、彼は職員の住宅を訪れた。
「そうだなぁ、あかねちゃんなら、ちょくちょく来ていたよ」
「そんなにですか?」
 悠登は目を丸くした。職員が言うには、自然公園はバスが運行されていたとはいえ、一日でまわるのは不可能なレベルの広さだったという。
 そのためか、あかねは何度も訪れていたらしい。
 そこで悠登は懸案事項の1つを訊ねる。
「誰か一緒だったりしませんでした?」
「確か、ススムっていう名前の男の子と一緒だったみたいだな」
 外見の詳細を訊ねると、あかねと同じくらいの年頃で、日系の子だと職員は語った。
「その、ススムくんの名字とかは判ります? どこに住んでいるか、とか」
「うーん。どうだったかな……確か、モンローハウスの子供だってのは聞いた事があるよ」
「モンローハウス……?」
 悠登の鸚鵡返しな問いかけに、職員は頷く。
「そう、能力者の子供達や、孤児なんかを保護している場所で、持ち主のモンローさんの名を取ってそう呼ばれてるんだ」
 その後、従魔が現れる予兆がなかったか訊ねたが、こちらについては心当たりはないという答えだった。
「それにしても……俺は偶然非番だったから、こうして助かったけれど……」
 当日勤務していた同僚や、世話をしていた動物たち。彼らのその後を考えると居ても立っても居られないのだろう。
 職員の辛そうな表情に、悠登は一言こう添えた。
「すぐに、とはいかないかもしれないけど……俺、頑張って助けるから」
「頼む。あんたたちだけが頼りなんだ……」
 悠登の言葉に、職員は今まで堪えてきた苦しい胸のうちを零し、彼の手をぐっと握る。
 ついでとばかりに冷蔵庫からちょっとした飲み物なんかを渡してくれた。
 それくらいしか、できる礼が無いといった様子で。
 職員に見送られ、二人はその場を立ち去る。
「カンガルー……見たかった」
 ぽつ、とナインが語る。ちょっと意外な一言に悠登の表情に笑みが浮かんだ。
「それはまた今度! 事件が解決したら遊びに行ってみよ?」
 やはり平和になってからじゃないと、落ち着いて楽しむ事もできない。
 事件を解決できれば、きっとあの職員だって、動物たちに会えるし、笑顔も見せてくれるはずだ。

●おいでませカンガルーの園
「オーストラリアってすごい広大ですねー!」
「俺も海外は初めてだ。すごい森だな」
 上機嫌なセラフィナ(aa0032hero001 )に真壁 久朗(aa0032)が答える。
 どこまでも続くような深い森、切り立つ崖、そして広い湖。
 日本では中々見られない光景に、二人は目を奪われた。
「純粋に、観光で来てみたかったですね……」
 月鏡 由利菜(aa0873)の表情は複雑だった。気兼ねなく楽しめる状況なら良かったのだが、今回は、まずは依頼を片付けなければならない。
 それも、少々厄介そうなやつだ。
 依頼について、餅 望月(aa0843)は大層おかんむり。
「H.O.P.E.も、ずいぶんのん気な対応じゃない? 本当に調査だけでいいなら、そうとはっきり言って欲しいものね」
 不機嫌さを隠しもせずに、ずいずいと歩いていく彼女を、百薬(aa0843hero001 )が「愚痴はそれくらいにしようよー」と宥める。
 ドロップゾーンの中には囚われた一般人たちがいる。
 勿論、出来るならば愚神を倒すのがベストだ。これは間違い無い。
 ただし、相手は広大なドロップゾーンを作り上げる程の強さを持つ。情報の少ない現状では、迂闊に動けば、ゾーン内に囚われた一般人だけではなく、エージェントたちの命にも関わる。
 エージェント達の敗北は、巡りめぐって人類の滅亡にも繋がるのだから。
 勿論、現状でも倒す秘策があるというなら、愚神を見つけて戦いを挑んでも構わない。
「みんな衰弱していくっていうのに!!」
 百薬が宥めても、望月は納得いかないといった調子で、のしのしずいずい歩いていく。
「シドニーの方は、特に事件は起っていないようです」
 中継役の佐倉 樹(aa0340)は、いつ何が起こっても大丈夫なようにとシルミルテ(aa0340hero001 )とは共鳴状態に入っている。
「一帯がドロップゾーンと化しているようですが、死者の報告は無し。愚神ならばライヴスを集めにかかる筈ですが……妙です」
 エミナ・トライアルフォー(aa1379hero001 )は現状をまとめていく。
「何かの準備期間とも考えられますし、状況が変わらないうちに、愚神の位置を特定、撃破する事を推奨します」
 一同の進む先に、次第ににぎにぎしく飾り付けられた屋台たちが姿を現わす。
 おじさん、おばさん、お兄さん、お姉さん、ちびっこたち。
 みんなそろってカンガルーの着ぐるみを着込み、屋台へと土産物を陳列している。それどころかカンガルーのぬいぐるみやら、その他の色んなものやらをのせ、ディスプレイまできっちり頑張っている。
「変なドロップゾーンもあったものですね……」
 愉快過ぎるそのビジュアルに、唐沢 九繰(aa1379)の表情が引きつった。
「……衰弱、してるのよね?」
 激怒していた望月まで困惑してしまう程に、彼らはせわしなく動き回っていた。
 ただ、よくよくみれば目の下にくっきり濃いくまが出来ていたりする。
 一応衰弱しつつはあるらしい。
「と、とにかく愚神は中央辺りにいるようですし、突撃しましょう!」
 進もうとする九繰だが、愚神はあくまで中央付近に居ると「目されている」だけだ。
 これは周囲の環境から想定されているだけで、必ずしもそこに居ると特定されたわけではない。
「じゃあ、一緒に行く?」
 望月はカンガルー耳カチューシャを百薬に渡し、自らも付けながらに、九繰にも声をかける。
 突入メンバー分準備したいと思ったものの、流石にこの短期間では厳しかった。
 カンガルー装備を自前で準備したものは他にもいる。
 守矢 亮太(aa1530)はマウンテンバイクにまたがり、カンガルーの耳付き帽子を深々被りなおす。
 後ろに乗った李 静蕾(aa1530hero001 )に至っては「I am kangaroo」と書かれたTシャツを着込んでいた。
 ……何か斬新な格好だった。
「そんじゃ、ボク一走り行ってくるよ!」
 軽く手をあげ、仲間達に一声かけてから彼は自転車をこぎ始める。
 とはいえ、あまり孤立しないようにと含められた事もあり、外周部がメインだ。

 まずは一般人と接してみようと試みる者もいる。
 一般人たちのカンガルースーツ姿に、暁 珪(aa0292)は自らの服装をあらためた。
 いつも通り、完全ビジネススーツ姿。大切なエンゲージリングも身につけている。
 どう見ても、自然公園に出かけるという格好では、ナイ。
 そして今、彼の手元には、カンガルーカチューシャがある。
 だが、スーツの彼がこのカチューシャを付けるのはハードルが高すぎる。
 というわけで。
「リーヴァ、あなたが付けていてください」
 彼はシグルドリーヴァ・暁(aa0292hero001 )の髪へとカチューシャを差す。
 まだまだ幼さの残る彼女なら、十二分に似合うだろう。
「子供たちの安否が心配ですね……親御さんの心情を考えれば」
「では、ご主人様とあたしは、子供達を探しに……?」
 珪の零した言葉にシグルドリーヴァが訊ねる。
「それは別の班に任せますよ。こちらは、愚神の情報集めに向かいます」
 指示にシグルドリーヴァは「わかりました」と丁寧に答え、彼へと続く。
「ただ……なんか、このドロップゾーンを見る限り、いやな感じはしますねぇ。誰かが愚神に取り込まれてそうで……このゾーン子供っぽくないです?」
 珪の懸案はシグルドリーヴァにも判る。聞きつけたセラフィナも頷いた。
「なんだか、お祭り、みたいですね? たくさんの屋台と人とカンガルー。大好きな物を集めて一緒に楽しく遊ぼうと言っているかのような……」
「そんなにカンガルーさんが好きな愚神なのかな」
 ルーシャン(aa0784)は周囲の光景に首を傾げる。
「でも、カンガルーさん以外の動物さんが弱ったり死んじゃうのはダメなの。皆いるから楽しいんだもん」
「そうですね。ルゥ様の言う通りです」
 きゅっと眉根を寄せたルーシャンを見て、アルセイド(aa0784hero001 )は穏やかに追従する。
 自然公園外周部の、もはや屋台村と呼んでも良さそうな場所は、歩くだけでも一般人たちが「カンガルーまんじゅう買わないかい?」等と話しかけてくる。
「ルーシャンちゃん、あまりカンガルーグッズとか買わない方が……」
 言いいつつ、浅木 光汰(aa1016)も、お土産パッケージを見ると、買いたい気持ちがうずうずと。
 しかしながら好奇心を抑えきれなかったのか、ルーシャンは、店員一般人へと問いかけた。
「カンガルーキーホルダーとか、ストラップとかってありますか?」
「今丁度作ってるところよー」
 答えながらに店員は、木片を懸命に削っている。
 不器用なのか、削られた木片は「なんだかわからないもの」へと進化しつつあった。
 ドロップゾーン内で売っているお土産が、普通のモノかは判らないと、覚悟はしていた。
 だが、元木片だったものは、予想外な意味で普通のモノではなかった!
「……ルーシャンちゃん、あまりカンガルーグッズとか買わない方が……」
 先ほどと同じ台詞にも関わらず、光汰の口調はどんよりと! 先ほどまで声色に滲んでいた好奇心は瞬時になりをひそめた。
 デンジャラスすぎるストラップは見なかった事にしよう。
 ルーシャンは話題を切り替える。
「あ、あと大きいカンガルーのぬいぐるみを持った女の子、居ませんでしたか?」
「さあ、最近はとんと見ないねぇ」
「最近は……という事は、以前は見かけたんですか?」
 店員は指おり日数を数える。彼女の答えた日にちは、大凡、自然公園に従魔が発生した日と合致している。
 だが事件の後となるとその足取りは途絶えてしまう。
「ドロップゾーンが何時出来たか判りますか?」
 光汰の問いかけは、着ぐるみ一般人にはわからないようだった。
 ドロップゾーンについての知識が無いのか、それとも愚神の敷いたルールにより認識出来ないだけなのか。それは判らない。
「こういう時は相手に判るように話してやらねばならぬよ」
 華月(aa1016hero001 )がそれをフォローする。
「いつからこういう商いをしているのかの?」
「そうねぇ……」
 再び日数を数えるおばちゃんに、華月は愛想よく訊ねていく。
 日数から考えるに、従魔発生の日であり、同時に、あかねらしき人物を見かけた最後の日あたりから彼らはここに居るらしい。
「……とまあ、こんな感じじゃ」
 にっこり微笑む華月に、光汰は軽く礼を告げる。
(「それにしても、愚神は一体何をたくらんでいるんだろう……」)
 一般人たちがあかねを最後に見た日や、ドロップゾーンが出来たと思しき日の関連性を考えると、イヤな予感がする。
 慣れない土地、そして見通しのつかない戦い。考えれば考えるほどに不安は大きくなっていく。
 光汰は軽く自分の頬を両手で叩く。そして不安を払おうとするように頭を振った。
 ここに来ているのは自分ひとりじゃない。華月、ルーシャン、他の仲間達だっている。
 みんなと協力すれば、きっとなんとか出来るはずだ。
 そう信じて彼は聞き込みを続けるのだ。

 珪とリーヴァは、カンガルーの着ぐるみを着込んだ人々の間を歩いていく。
 着ぐるみの人が、笑顔でもりもり動き回る様は、一周回って悪夢っぽくも思える。
 しかし、誰かが取り込まれているとしたならば、それはいったい誰なのだろうか?
 その答えを求めて、珪は活動を開始する。
「まずは平和的に情報収集です」
 とりあえず、とばかりに珪はリーヴァと腕を組む。途端にリーヴァが赤面した。
「すみません、少々お伺いしたいのですが」
 珪は手近な着ぐるみの人物へと話しかける。
 スーツ姿で完全ビジネスマンな彼が、着ぐるみと会話する様は斬新だった。
 デフォルトで笑顔とはいえ、営業スマイルっぽく見えるあたりも含めると、たいへんプログレッシブだった。
「おや、新婚さんかい?」
 着ぐるみ一般人の返答にリーヴァの頬が更に赤く!!
 何一つ間違っていないが、そう言われると照れるもの、なのかもしれない。
 情報収集は意外な程に平和的に進んだ。
 一般人たちは、驚く程に好意的に接してくれた。あまつさえ「新婚さんなら」と、怪しいお土産を贈呈される事態に。
 幸いといえば幸いだが、それでも神経を使う事には代わりはない。
 屋台から少し離れ、珪はふう、と小さくため息を付く。
 表情こそ普段通りの笑顔だが、リーヴァには彼の表情に疲労の色が滲んでいるのが判る。
「ご主人さま、お疲れのようですが、大丈夫ですか?」
「ええ、勿論です」
 案じる声に、珪は答える。
「操られてても一般人、ケガはさせたくないですからね。何ごともないならそれが1番でしょう」
 さあ、もう少し頑張りますよ、と彼は再びリーヴァと腕を組み、屋台に向かって歩き出した。

「いらっしゃいおにいちゃん! このカンガルービスケット買ってかない!?」
「こっちのカンガルーまんじゅうも美味しいよー!」
 呼びかけてくる着ぐるみのおっちゃんおばちゃんに、セラフィナはにっこり微笑んだ。
「カンガルーまんじゅう二人分ください!」
「ど、どんな味なんだ、それ」
 躊躇いなど微塵もなく言ってのけたセラフィナの傍で、久朗は目を見開いた。
「はいよ、まんじゅうだね!」
 即座に着ぐるみのおばちゃんが、包装紙につつまれたお土産を差し出してきたのだが……。
(「……包み紙の下に、見覚えのあるロゴが透けてるような……」)
 どうみても怪しいお土産である。
 それは、日本でもよく見かけたまんじゅうのロゴのようだった。だが口に出して良いものか悩んだあげく、久朗は言葉を飲み込んだ。
 何せセラフィナが、もの凄く目を輝かせながら包みを受け取っている。今ここで中身を告げて、夢も希望も大破砕……というのはいくら何でも忍びない。
「ところで、その着ぐるみ、どこで売ってるんだ?」
 久朗の問いかけにおばちゃんは機嫌良く答える。
「ああ、それなら丁度最後の1着を隣のおじさんが作ってる所よ。もう材料が無くてねぇ……」
 指された先では、ミシンを操り布地を縫い合わせているおじさんが居る。
「これが最後の1着だし、良かったら買わないかい?」
 数秒だが久朗は逡巡した。だが彼が答えを出すより前に――。
「買います!」
 セラフィナが爽やかな笑顔で即断した。

 購入したカンガルースーツは、まずは久朗が身につける事になった。
(「セラフィナに着せて、何かあっても困るしな……」)
 守ると決めた人物のため、久朗は自ら着用を志願したのだ。
 着込んで、すぐ、久朗は自らの身の異変に気づく。
「クロさん、どうしたんですか?」
「ドロップゾーンに入った直後から感じてた、圧迫感みたいなものが、薄くなった気がするんだ」
「それってまさか……?」
 セラフィナの表情に不安が過ぎる。
 能力者とて、長時間、1つのドロップゾーンに居続けたなら、ここにいる一般人たちと同じように、ルールに縛られ、ライヴスを提供するだけの存在となってしまう。
 だが久朗は首を振った。
「いや、そういう感じじゃないな」
「もしかして、この着ぐるみが、ドロップゾーンからの影響を抑えている……のでしょうか?」
 セラフィナは顎に手をあて考え込む。
 一般人のライヴス減少を抑えているのも、着ぐるみの効果かもしれない。
 だが、そうであるならば、愚神は何故そんな事をしているのだろうか。
 複数の着ぐるみが手に入れられれば、ゾーン内での活動も、かなりラクになるかもしれない。
 しかしながら、先ほど一般人は「最後の1着」と言っていた。
 2着目以降を手に入れるには、余程の手段を講じなければ難しいだろう。
 何か良い方法はないだろうかと思案しつつ、彼らは更に情報収集を続ける。
「あかねちゃんとススム君達は大丈夫でしょうか……」
 由利菜が見回った限りでは、屋台の一般人の中に、二人と思しき人物の姿は無かった。
「お嬢さんもカンガルー好きなのかい?」
 小ぶりなカンガルーぬいぐるみをかかえた由利菜に、おじさんが声をかけてくる。
 おじさんも着ぐるみのお腹の袋に、ちびカンガルーぬいぐるみを入れている。
「ユリナ、例の案は試してみるのか?」
 リーヴスラシル(aa0873hero001 )に訊ねられ、彼女は頷く。
 仲間達にも知らせておいた秘策。
 一度しか使えないし、ごく僅かな時間しか効果は無い。
 上手くいく保証は無いが、それでも考え得る中で一番と思える方法だ。
 由利菜はスキルを行使する。途端に彼女のライヴスが広がり、周囲を包んだ。
 途端、一般人の瞳に、正気が戻る。笑顔から驚愕へと、その表情が変わっていく。
「あ、あんたたち、一体どこから!? それに、俺の、この格好は? 俺は確か休憩所に居たはずなんだが……?」
「皆さんを助けに来ました」
 由利菜の言に、おじさんは語る。
「いや、従魔は、あのお嬢ちゃんが倒してくれたんだよ。だけれど、お嬢ちゃんも具合でも悪かったのか……」
 おじさんの記憶は、自然公園が従魔に襲撃された時まで戻っているらしい。
「あのお嬢ちゃん、とは?」
「カンガルーのぬいぐるみを持った、危なっかしいお嬢ちゃんだよ。だけれど……」
 由利菜の脳裏に、救助対象の少女が浮かぶ。
「従魔は、やはりカンガルーの姿でしたか?」
「カンガルー? いや、あれは、もっと醜悪な……」
 おじさんの表情が恐怖に引きつった。だが言葉の途中で、周囲に張ったバリアは効果時間を終え消えていく。
「さあ、お嬢さんも饅頭を買わないかい? 美味しい美味しいカンガルー饅頭だよー」
 恐怖に満ちていたおじさんの表情が、一瞬にしてにこやかな笑顔へと戻る。
 愚神の敷いたルールに再び囚われる様は、理解出来ていてもショックが大きかった。
「大丈夫か? 由利菜」
 リーヴスラシルは、由利菜を案じる。
「私は大丈夫、です……ですが……」
 一刻でも早く、一般人達を救い出したい。いくら見た目は楽しそうでも、望んで行っているわけでは無いことを、まざまざと目にしたからだ。
「今すぐここから救い出す事は出来ませんが……」
 由利菜は強く唇をかんだ。一般人をドロップゾーンから連れ出す為には、ゾーンそのものを何とかしなければいけない。
 ゾーンの解除も、手段さえ揃えば可能だ。しかし、愚神が生き延びていれば、またどこかにゾーンを作られるという、いたちごっこになりかねない。
 だが、愚神さえ倒せば、根本から断ち切る事が出来るはず。
 愚神を倒す決意を固め、由利菜はその場を後にした。

●奸智術数、蠢く。
 シドニー市街を歩く白花は、再びあの品性を疑うようなラクガキに遭遇した。
 一度は消されたはずが、また似たような内容を書かれたようだ。
 数日出歩くうちに判った事だが、こういったラクガキがされているのは夜間らしい。
 また、シドニーではラクガキ程度で済んでいるが、ニューカッスルでは放火や、建物の打ち壊しなども偶にあるのだと漏れ聞いた。
 幸いにして、というべきか、今のところ、N・P・Sのメンバーが、能力者に好意的な一般人を殺害するような事態は起こっていないようだ。
 だが、それも時間の問題かもしれない。
 むしろ、ニューカッスルの様々な事件で、一般人が命を落としていないのが奇跡的なくらいに思える。
 聞き込みを続け、気づけばあっという間に夕暮れは訪れた。
 早くプルミエも出してあげたいと、白花は帰路につく。
 ここ数日の聞き込みで教えて貰った近道をしようと、彼女は倉庫の合間を歩いていく。
 その時、何かが聞こえた気がして、白花は耳をそばだてた。

 ほぼ同時刻、夕方のショッピングモール。
「すみません、自然公園の観光ルートを考えてるんですけれど……」
 月見里 深月(aa1644)は、観光客を装って問いかける。
 懸命に丁寧に訊ねる彼に、買い出しのおばちゃんがホイホイされた。
「あら、あなた最近来た人なの?」
「はい、カンガルーとか、コアラとか、見てみたいなって思って」
「だとしたら残念ねぇ……今自然公園は立ち入り禁止になっているのよ」
 話し好きのおばちゃんは、深月が日本からやってきたと聞くなり「日本ってどんな所なの?」などと訊ねてくる。それどころか日常の愚痴まで語りだした。
 おばちゃんの秘技・日常の長話に、星見里 瑚華(aa1644hero001 )が彼の袖を引いた。
「あ、そうだ!」
 深月はおばちゃんの長い話を一旦切ろうと、別の話題を投げかける。
「昨日、能力者排斥を訴えてた集団を見かけたんだけど、あれって何なのか教えてくれません?」
 途端に機嫌よく喋っていたおばちゃんが口ごもる。
「……ええ……まあ……あの人達は……ねぇ?」
 あからさまに言葉を濁し、おばちゃんは長話を切り上げ立ち去った。ちょっと不思議に思いつつ深月は他の人にも訊ねていく。
 しかしながらN・P・Sについては、誰しもが口を噤む。
「誰かに聞かれては叶わない」「どこでN・P・Sが耳をそばだてているか判らない」とでもいうように。
 一方で、褒める人もおらず口を噤むという事は、N・P・Sは決して好かれているというわけでもないのだろう。
 N・P・Sは、現地住民でも、どこまで浸透しているのか、判らないものなのかもしれない。
 隣人がN・P・Sかもしれないとなれば、迂闊に批判など出来やしない。
 暑いはずのオーストラリアの夜が、薄寒く感じられた気がして、深月は、ふるるっと身体を震わせた。
「深月、風邪とか引いても困るし、帰ろう」
「そうだね」
 二人は、連れだって帰る事にする。
 信頼できるお互いの存在を確かめ、決して不安に負けないように。

 気づけば空は真っ暗になっていた。
「随分と遅くなっちゃったな……」
 ごちて深月は路地を駆ける。途中、彼はぴたりと足を止めた。
「深月、あんまり頻繁にきょろきょろしないで、また迷子に間違えられる……」
 瑚華が彼へと注意を促そうとした所、深月は口元に指をあてた。
 直ぐに意図を読み取り、瑚華は言葉を飲みこむ。深月は何かを耳にしたのだろう。
 遠くには同じくH.O.P.E.で依頼を受けた仲間、白花の姿もある。
 彼女もまた「何か」に気づいたのだろう。目配せし、物陰に潜み、息をつめ、耳をすます。
 それは、人の話し声だった。
「遠いところ、ご苦労だったね」
 落ち着いた雰囲気の、男性の声が聞こえた。
「なに、この足なら散歩みたいなもんだ。気にすることはない」
 それに若い男の声が答える。
「ところで――この街、本当にいいんだな?」
「気に入ったかね? ならば、キミのしたいようにするがいい」
 落ち着いた声が、問いかけを肯定した。
「あの美人さんのゾーンにするって訳でもなく? 何一つアンタの得にはならないと思うが」
「この街」「ゾーン」という言葉に、能力差達の胸中がざわめいた。
 会話の主の姿を確かめようと倉庫の周囲をそっと探るも、窓も、中を覗ける隙間もない。
 その合間にも話は続く。
「……キミとはこれからも良い取引相手でいたいのでね」
「なるほど。何を企んでいるかは知らないが、とりあえずは借りとしておこう。早い所ゾーンを増やさなければ、どうにも収集が上手くいかない」
 紳士然とした声とは対称的に、若い男の声には、焦りが滲んでいる。
「その身体は、それほどまでに使い勝手が悪いものなのかい?」
 落ち着いた声が、くすりと笑うが、若い男は問いに答えず話を先に進める。
「借りを作りっぱなしというのも気色悪い。何かあったら声をかけてくれ。オレに出来る範囲で協力しよう」
「ならば1つ頼まれてくれないかね?」
「……オレに出来る事なら、1つだけな」
 即座に返った言葉に、苦々しさを込めて若い男が念押しする。
「その……キミの喋り方には少々違和感があってね。出来ればもう少し自然にならないものかね」
 僅かに笑いを含んだ言葉に、若い男は不満そうにため息をついた。
「やれやれ、これでもオレも気をつかったつもりなんだけどな。姿通りのままでいいなら、オレとしても消耗せずに済む」
「ならばその愛らしい姿に似合う喋り方をしてくれたまえ」
 僅かに間があき、再び会話が始まる。
「それじゃー、ガルーは疲れちゃったので、公園に帰るのです。紳士さん、また次の機会に、ですー」
 ……続けられた言葉は、舌っ足らずな少女の声色をしていた。

 壁からそっと離れ、深月は今聞いたことをまとめようとする。
 取引。ゾーン。そして、少女の声をした人物。
 そこから導き出される答えは……。
「中継の人に連絡しないと」
 瑚華の言葉を聞きつけ、白花は二人を制する。
「二人とも、まずはここを離れましょう。気づかれたら面倒な事になりそうです」
 一同は極力物音を立てないようにその場を離れたのだった。

 H.O.P.E.へに戻ってすぐ、葵は自らの英雄に、幻想蝶から出ても大丈夫だと知らせる。
 ウェルラスは顔を出すなり葵の身を案じた。
「葵、ちゃんと飯食ってる?」
「ああ、昼頃にコーヒーは飲ん……うん?」
 答えながらに、彼はスマートフォンへの着信に気づく。
「すまん、ちょっと待っててくれ」
 即座に彼は電話に出る。表情が険しくなっていく様に、ウェルラスにも緊張が走る。
「……おっさん、何があったの?」
「だからおっさんではなく……」
 呼びかけを正そうとしてから、ウェルラスの、珍しい程に真剣な視線が彼を射貫いた。
 中々幻想蝶から出せなかった事を、少しだけ後悔しつつ、葵は語る。
「白花さんと、深月と瑚華たちがどうも、妙な話を聞いたらしい。自然公園組に連絡を――」
 いいかけた所で彼は、自然公園組からの連絡にも気づく。
「おっさん、オレも手伝うよ」
 今まで出られなかった分、とばかりに、ウェルラスもスマートフォンを引っ張り出す。
「じゃあ、シドニーで活動中のメンバーに、自然公園での出来事を、まとめて送ってくれ」
「OK!」
 二人はそれぞれに暫くの間、スマートフォンと格闘する。
「それにしても、おっさん、そんなにまずい事になってるのか?」
 情報をまとめて書き込みながらにウェルラスが問いかける。
「ああ、どうも自然公園がらみで暗躍しているやつが居るらしい。こっちもだいぶ忙しくなりそうだな……」
 自然公園と、シドニー。それぞれの情報の仲介役として、彼の戦いが始まった!

●わけいってもわけいってもカンガルー
「カンガルーって遠目では可愛いッスけど近いと怖いッスよね」
 びよんびよんと跳ねるカンガルーを長め、火鳥 翔(aa0245)は述べた。
 体長そのものは、大きいものでも翔と同じくらいなのだが、至近距離で見ると筋肉ムッキムキなのだ。
「やだー☆ 私超怖いー☆」
 魔法少女なリリア(aa0245hero001 )は思いっきりしなを作って見せる。が、一緒に居るのは翔に小鉄、それから稲穂。全員彼女の本性を知る人物である。
「……あ? 他に誰もいねぇのか。チッ、無駄なことしたぜ……」
 見知らぬ誰かが耳にしたなら「魔法少女とは、こんなにやさぐれていいものだろうか?」などと思ってしまう勢いの、全力で舌打ちだった。
 勿論、ここにそんな「誰か」が居ないのは判った上での言動なわけだが。
「沢山の人が巻き込まれてるみたいだし、私達が頑張ってなんとかしなきゃね!」
 稲穂(aa0213hero001 )はやる気十分な様子。
「まずは従魔を倒すでござるよ」
「でもこーちゃん、どうやって見分けるつも……ってリリアちゃん!??」
 小鉄(aa0213)に疑問を投げかけようとした稲穂に、隙ありとばかりにリリアが急接近! 彼女のおなかをふにっとさわり出す!
 慌てる稲穂を余所に、リリアは唖然とする小鉄にも、挨拶代わりとばかりにおなかをふにふに。
「太って無いわよ! ま、まって……もしかしてこの間のお菓子が……!?」
「た、鍛錬が足りぬでござるか……!?」
 オロオロする二人を見て、リリアは「ケケケっ」と、さも悪そうに笑っている。
 頬を赤らめながらも稲穂はこほんと咳払いを1つ。
「でも、さっきも言いかけたけれど、どうやって見分けたら良いのかしら?」
「殴ってくる奴は全部敵だろ? 燃やす以外ねーだろ」
 不安そうな稲穂の問いに、リリアはファイティングポーズを取った。だが彼女の誓約相手である翔はあまり乗り気ではなさそうだ。
「……そうもいかないっスよ」
「あ? なんでだよ!?」
 即座にリリアは噛みついた。
「カンガルー、倒しちゃったら、色んな人が悲しむっス」
 翔はリリアの視線を真正面から受け止め、告げた。
 みんなを守りたい。そう願う翔は、動物たちの命だって、人の心だって守りたい。
「うっ……わ、判ったよ……」
 まっすぐ見つめる翔の瞳に、リリアはちょっぴり押され気味。
 何時だったかも、こんな事があったような気がする――思いつつ、リリアと翔が共鳴する。
 びょんびょん跳ねるカンガルーが、こちらへと迫ってくる。
 普通のカンガルーなら良いが、従魔ならば、倒さねば。
 従魔か? カンガルーか? 判断出来ず焦れる仲間達の間、小鉄が何かを持ち上げた。
「こんな事もあろうかと、これを持ってきたでござる」
 それは、ペンキの缶だった。
「どうやって使うつもりッスか?」
「これはでござるな……」
 翔に問われ、小鉄が解説しようとした時。
「カンガルーさんこーちらー?」
『来られても困るでしょう……』
 御代 つくし(aa0657)の言葉に気づいたかのように、カンガルー達がスピードを上げ、メグル(aa0657hero001 )のツッコミも間に合わない勢いで襲ってきた!!
 既に共鳴中だし、傷を負う事はなくとも、痛いものは痛い。
 一般人だったらあっさり骨折する。それを考えれば「ちょっと痛い」で済んでるだけスゴイ話なわけだが。
「という事は、これはノーマルなカンガルーだよね?」
 つくしは武器を一旦手放し、素手でカンガルーを確保! ゲッシゲシと蹴りつけられているが、がっちり掴んで離さない。
「つくし殿、手を離すでござる!」
 小鉄の一声。
 指示に、つくしは躊躇い無く手をはなした。小鉄がカンガルーの頭上を飛び越えつつ、手にしたハケを一閃! カンガルーの頭頂部にぺたりとペンキでラインが引かれた。
 印を付けられたカンガルーは必死の勢いで逃げていく。
『なるほど、相手がカンガルーだって判ったら、これで印を付けるって事だったのね』
 こーちゃん、かしこいー! と、稲穂は褒めそやす。まるでテストで100点取った息子を褒める母親の如く……!
『珍しく、だろ』
 ごくごく小さくリリアが毒づいた。
『リリアちゃん、こーちゃんは出来る子なんですよ?』
 即座に言い返す稲穂。喧嘩する程仲の良い二人である。
 しかしながら、二人が仲良く喧嘩している間に、更なるカンガルーがやってくる。
 増えるカンガルーに、つくしが武器を構える。
「うーん、何がどうなっているのかさっぱりだけど、とりあえず従魔をやっつければいいんだよね!」
『……やりにくいですね』
 共鳴中のメグルは少々困ったように告げた。
 通常のカンガルーと見分けるために、初手がとれないのは厄介だった。
 それでも彼らは懸命に戦う。
「従魔殺すべし、でござる」
 小鉄が従魔たちのまっただ中に飛び込む。翔たちの方に敵を向かわせないよう、彼は前衛を担っているのだ。
 彼の、勢いを付けた一撃が、カンガルー型従魔を吹き飛ばす。その先には翔が待ち構えており、裂帛の気合いとともに、槍をフルスイング! ライヴスが炎となって広がり、カンガルー型従魔を爆破する。
 従魔は断末魔と共に燃え尽きそのまま消滅した。
「流石オレ様だぜ。超☆絶魔法美少女過ぎて敵わねぇな!」
 共鳴を終えたリリアは、赤の髪をばさりと掻き上げ高笑いをする。
 ……魔法少女のはずなのに、そのビジュアルは、ナンか悪役っぽかったという。
『それにしても、愚神は何を目的にしているのでしょうか……動物を攻撃させることが目的、というわけでもなさそうですが……』
 意図の掴めなさにメグルは深くため息をつく。その動きにあわせ、頭上のカンガルー耳つき帽子が揺れた。
 帽子を被っても、被っていなくても、普通のカンガルー達の行動は変わらない。
 しかし、従魔からの攻撃の手は、心持ち程度だが、緩んだ気もする。
 愚神の意図を掴むには、まだ情報が足りない、という所か。
 いっそ当人から聞き出せれば良いのかも知れないが、訊ねていったとしても「はいそうですか」と教えてくれるものでもなかろう。
 彼女は公園中央方面へと視線を向け、改めて大きなため息を付いた。

●どこまでもどこまでもカンガルー
 その「いっそ当人から聞き出せれば」を実行中の人物がいた。
 速攻解決をしたいと、望月は中心部を目指し進攻中。
「一人でも、行ける所までいくよ!」
 既に何体かの従魔は倒してきてはいる。しかし、愚神への手がかりは糸口さえつかめていない。
 どうやって一般人洗脳の原因を突き止める?
 そして、愚神が居た場合はどうやって倒す?
 目的はあれど、具体的な解決策を思いつかない焦りがあったのかもしれない。
 九繰とその英雄エミナも一緒だが、戦いは決してラクなものではなかった。
 ケアレイも、クリアレイも残弾は少ない。
 そんな状況で、従魔の団体に遭遇してしまったのだ
 カンガルー型従魔が、拳を振りかぶる。
(「避けきれない!?」)
 さしもの彼女も覚悟を決めた。
 そこに――。
『ふーむ、拳を武器としているのか? 私の世界では見ん獣だ』
 声とともに何者かが彼女のカバーに入った。
 刀を手にした壬生屋 紗夜(aa1508)が望月の前に立ち、従魔の拳をがっちりと防いでいる。
 声の主は、共鳴中の英雄ヘルマン アンダーヒル(aa1508hero001 )だったらしい。
「本命の一撃は、あの下半身から繰り出すキックらしいですよ?」
 興味津々なヘルマンへと、紗夜が豆知識を披露。
 そこから押し返し、間合いを取り直し、斬撃を繰り出す。
 既に傷ついていた従魔は真っ二つに切り裂かれた。
『それにしても面倒だな』
「そうですね!」
 ヘルマンへと答えながらに、紗夜はカンガルーと距離を保ち、注視する。
 油断すると観察しようとしている間に、距離を詰められ攻撃を喰らいかねない。
「……あ、でも、あれは……」
 目をこらし、カンガルーと思しきものを観察していた紗夜が声をあげた。
『どうした?』
 ヘルマンも直ぐに反応する。
「あれ、従魔ですよね?」
 紗夜の指す先には、一匹のカンガルーがいた。だがその頭部に、小さくではあるが、獣の牙を思わせる印がある。
 だいぶ傷ついても居るあたり、既に望月たちがダメージを与えていたのだろう。
 素早く紗夜は竜の牙でできた太刀を振るう。その銘に違わぬ切れ味で、従魔を両断。敵は死体すら残さず塵となって消えていく。
「額面通りに受け取るなら、従魔たちの背後にいるものは、カンガルー型愚神なのでしょうが……どうにもここは人間臭いですね、それも、子供の、といわれたほうが納得もいくというか……」
 もし相手が人間の子供であったなら、躊躇わず切れるだろうか。
 紗夜の言外の意図に、ヘルマンは押し黙った。
「まあ姿形がどうあれ私は斬るべきと思えば斬りますよ」
 相手が、あきらかな敵意を持っているのなら、紗夜は躊躇わない。
 いや、本当は強い相手を「斬る」事が出来ればそれでいい。紗夜は手にした刀の柄を強く握る。その手を、共鳴を終えたヘルマンの手が柔らかく包んだ。
「まずはそれが、確実に斬るべき悪だと確かめてからだがな」
 紗夜が力に飲まれないように、踊らされないようにするのも、自らの務め。そんな雰囲気で。
「勿論、そうしますよ」
 にっこりと笑いかける紗夜の手を、ヘルマンは暫くの間、離すことは無かった。
「ところで、どうしてここに?」
「佐倉さん経由で連絡が来たんですよ。もう少ししたら他の皆もこちらに――」
 九繰からの問いかけに、紗夜が答える。最中。
「どいてどいてどいてどいてー!!!」
 マウンテンバイクで走行中の亮太がやってきた! その上、後方には大量のカンガルーが!
 これでは従魔かそうでないか見分ける余裕も無い。
「静蕾! カンガルーがこっち来てるよ!」
『了解! リョタ! ちゃんと捕まるヨロシ!』
 共鳴状態の二人は懸命にマウンテンバイクを漕ぐ。
 そんな様を見て望月は百薬と共鳴。
「九繰さん、やれる?」
「モチロン!」
 応えて九繰もエリナと共鳴。大量のカンガルーたちの前へと立ち塞がる。
 そして、温存していた最後のスキルを発動。
「えぇいっ!」
 周囲にもふぁっとガスが発生。吸い込んだカンガルー達がぱたぱたと眠りにつく。
 眠っていない何体かは、エージェントたちへと向きなおる。先ほど紗夜が気づいたように、そいつらの額には例の印があった。
「まだまだ切るべき相手はいるようですね」
 嬉しそうに紗夜が刀を構える。
「従魔の攻撃、衝撃があるから気をつけてー!」
「あと、動きもとても素早いです。翻弄されないように!」
 望月と九繰は、ここまでの戦いで知った敵の攻撃手段を仲間達に伝える。
 従魔単体はさほど強い相手ではない。だが、とにかく数が多すぎるのだ。
 このままでは押し切られかねない――そんな時、風を切り振るわれた刃が従魔を切り裂いた。
 片刃の曲刀を手にした由利菜が、踊るように戦場を駆け抜ける。
「間に合ったようですね!」
 スキルは愚神との戦いに向けて、温存する方向だ。むやみやたらに撒いて息切れをしてしまっては元も子もない。
 援軍にはルーシャンと光汰の二人もいる。
「アリス、私に力を貸してね」
「君のお望みのままに。我が女王」
 ルーシャンの声に、アルセイドが応える。
 幻想蝶に触れ、二人は共鳴する。
 栄光を意味する刃を手に、ルーシャンは、信じる者と共に従魔へと躍りかかった。
 その少々後方には光汰が、彼女のフォローをすべく参戦する。
(「ルーシャンちゃんて僕よりずっと強いからな……」)
 光汰は、何時しか彼女に負けないくらい強くなりたいとは願っている。
 未だ彼女に届かなくとも――光汰にも意地があるのだ。
(「でも、守れるところは体を張ってでも守っていきたい!」)
「ルーシャンちゃん! 右後ろ! 左は僕がやる!」
 光汰は声を張り上げ、自らも左に迫ろうとしていた従魔へと一撃を叩きこむ。
 ルーシャンもまた右後方の従魔を切り裂いた。
「光汰くんありがとう!」
 笑顔でルーシャンが応える。そして。
「一緒に、一体ずつ、着実に倒そう?」
「わかった。僕も頑張るよ!」
 光汰は共鳴中の英雄へと願う。
「華月姉さん、力を貸して」
『今さら水くさい事を言うのう』
 くすくすと笑う英雄の声が、光汰にのみ聞こえる。
『勿論じゃ。その為にここに居るのだからのぅ』
 華月にも、心に決めている事がある。
 溺愛する光汰を傷つけるものは、絶対に許さない。
 肩を並べ、二人は共闘する。
 時に相手をフォローし、フォローされ、ただひたすら懸命に。

 紗夜が嬉しそうに刃を振るい、九繰と望月も死力を尽くす。
 他の仲間達も到着し、それでも戦闘は続いた。
 そしてどれだけの時間が過ぎただろうか。
 最後の一体と思しき従魔を倒し、とりあえずは一段落と、誰しもが思った時の事だった。
 自然公園中央方面から、数体のカンガルーを率いて、大きな何かが2体やってくる。
 それは、大型カンガルーっぽかった。
 一体は、両手にボクシングのグローブを付け、腹部にはチャンピオンベルトらしきものを巻いている。ついでにたすきをかけており、そこには「ガッツがあります」なんて書いてある。
 もう一体は一見は普通のカンガルーっぽく見えたが、腹部の袋には、スーツを着込んで眼鏡をかけたカンガルーが入っていた。
 あまつさえそのスーツ姿のカンガルーは首から「営業部長」と書かれた名札を下げている。
 あきらかに微妙なビジュアルに、能力者達は脱力しかけた。
 しかし、今まで倒した従魔と比べても圧倒的に強い事は判る。
 能力者達の間に緊張の糸が張り詰める。
 だが大型カンガルー達は、能力者たちへとくるりと背を向け、森の中へと帰って行った。
「一応助かった……んでしょうか」
 その場にぺたりと座り込み、九繰は大きく息をついた。

●拾得物(少年とぬいぐるみ)
 一同が揃った所で、佐倉が問いかける。
「それで、亮太さん、どうしたんですか?」
「それなんだけど……」
「リョタが男の子拾ったよ」
 どこから話したものかといった様子の亮太のかわりに、共鳴を終えた静蕾が、近場の草地に横たえた少年を指す。
 傷だらけで、カンガルーのぬいぐるみを抱え込んでいる。
 先ほどのセーフティガスを吸い込んだ彼は、どうやら眠っているようだった。
「外周部をまわってたら、従魔に囲まれて蹴られてるのを見つけたんだ。大慌てで回収したんだけれど……」
 結果、あのカンガルー大移動を引き起こした、というわけだ。
「この男の子って……それに、このぬいぐるみ……」
 少年はぬいぐるみをしっかりと抱え込み、手放そうとしない。
 光汰が、起こさないようにそっとぬいぐるみの耳元を確かめると、破れたような跡がある。
 それに、光汰にはもう1つ思い立った事がある。
 従魔の攻撃で死亡しなかったなら、もしかすると彼は……。
「ううん……にーちゃん、オレ、守れなかった……」
 うわごとのように少年は繰り返し、その頬を涙が一筋流れていった。
「コノ子、大好きナもノ、イッパイあるミタい……」
「そうなの?」
 シルミルテの言葉に佐倉が訊ねる。
 シルミルテは、少年の思いを何となくだが察した。
 大好きなものが沢山あって、それを守れなかった。だから辛いのだろう、と。

 自然公園メンバーは、見てきた事をまとめに入る。
「ライヴスの収集自体は一応行われてはいるようですね……」
 最初に語り出したのはエミナだった。
「エミナちゃん? どういう事なんです?」
「……何らかの理由で、本来よりも僅かずつしか、ライヴスを集められないのかもしれません」
 九繰の問いかけにエミナは告げる。そこにセラフィナも続いた。
「それは僕も考えました。先ほど購入したカンガルースーツを身につけた所、クロさんが、ゾーンの圧力みたいなものが弱まった気がする、と言っていましたし」
 ならば、ぬいぐるみやカチューシャ、その他装備はどうだったのか?
 それらは僅かながら効果はあった。だが着ぐるみに比べると微々たるもの。
 流石に「I am kangaroo」なTシャツは効果が無かったらしい。
「とはいえ、それ自体が罠という可能性も否定は出来ません。油断は大敵でしょう」
 淡々と、エミナは状況を分析していく。
「まずは、彼を何とかしなければいけません」
 エミナは先ほど回収した少年を見やる。
 傷だらけで、うわごとのように「守れなかった」と繰り返す彼を。
 元々は医療用機械だったというだけに、エミナは彼の傷の深さを理解し、案じている。
「それから、あの2体の従魔ね」
 次に話し出したのは望月だ。
 普通の従魔でさえ、状態異常を持つ攻撃技を放つ。あの大型2体は、彼らより遙かに上の力を持つだろう。
 彼らはこちらの姿を見るだけで、積極的に攻撃はしてこなかった。だとしたら、何かを守っているのかもしれない。
 一番ありえそうなのは、愚神の居場所への道……という所か。
「普通のカンガルーは極力印を付けたでござる」
 小鉄が告げる後ろで、稲穂が胸を張った。どう見てもおかんである。
 しかしながら不安も多い。
 自然公園内に従魔が現れたタイミング。そして、それを撃退したと言われる少女。
 少女の足取りはその後追えず、更には同タイミングで自然公園はドロップゾーンとなった。
 ……あまりに、状況が揃いすぎる。
 まずは、とばかりに佐倉がシドニー組に連絡を行う。
「傷だらけの男の子を一人、回収しました。大きなカンガルーのぬいぐるみを抱えています」
 急ぎの内容という事もあり直接の電話だ。
「それから、かなり大きめの従魔が2体出現しました。今まで倒したものよりもどうやら強い力を持っているようです。通常の従魔たちの攻撃方法についても後ほど連絡しますね」
 こちらの情報を伝えた所で、佐倉は葵からの答えに、一瞬耳を疑った。
「……えっ、何ですって……?」
「どうした、佐倉」
 彼女の異常を察した久朗が案じる。
「白花さんたちが、奇妙な取引を耳にしたそうです」
 彼女は仲間達へと語る。
 シドニーで白花たちが耳にしたという、その内容を。
「ユリナ……今回の依頼、長丁場になるかもな」
 リーヴスラシルの言葉に、由利菜も頷く。
 自然公園だけではなく、シドニー、オーストラリア全土まで波及しかねない危機が迫っている事を、エージェント達は察する。
 オーストラリアでの戦いは、未だ始まったばかりなのだ。

結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
    機械|24才|男性|防御
  • 告解の聴罪者
    セラフィナaa0032hero001
    英雄|14才|?|バト
  • エージェント
    六条融aa0176
    機械|18才|男性|命中
  • エージェント
    ライラaa0176hero001
    英雄|14才|女性|ブレ
  • 忍ばないNINJA
    小鉄aa0213
    機械|24才|男性|回避
  • サポートお姉さん
    稲穂aa0213hero001
    英雄|14才|女性|ドレ
  • エージェント
    火鳥 翔aa0245
    人間|18才|女性|生命
  • エージェント
    リリアaa0245hero001
    英雄|15才|女性|ソフィ
  • エージェント
    暁 珪aa0292
    人間|28才|男性|攻撃
  • エージェント
    シグルドリーヴァ・暁aa0292hero001
    英雄|17才|女性|ドレ
  • 深淵を見る者
    佐倉 樹aa0340
    人間|19才|女性|命中
  • 深淵を識る者
    シルミルテaa0340hero001
    英雄|9才|?|ソフィ
  • 花咲く想い
    御代 つくしaa0657
    人間|18才|女性|防御
  • 共に在る『誓い』を抱いて
    メグルaa0657hero001
    英雄|24才|?|ソフィ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命



  • 希望の守り人
    ルーシャンaa0784
    人間|7才|女性|生命
  • 絶望を越えた絆
    アルセイドaa0784hero001
    英雄|25才|男性|ブレ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • エージェント
    浅木 光汰aa1016
    人間|11才|男性|攻撃
  • エージェント
    華月aa1016hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 雪中の魔術師
    如月樹aa1100
    人間|20才|女性|回避



  • Twinkle-twinkle-littlegear
    唐沢 九繰aa1379
    機械|18才|女性|生命
  • かにコレクター
    エミナ・トライアルフォーaa1379hero001
    英雄|14才|女性|バト
  • ヘイジーキラー
    壬生屋 紗夜aa1508
    人間|17才|女性|命中
  • エージェント
    ヘルマン アンダーヒルaa1508hero001
    英雄|27才|男性|ドレ
  • エージェント
    守矢 亮太aa1530
    機械|8才|男性|防御
  • エージェント
    李 静蕾aa1530hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 実験と禁忌と 
    水落 葵aa1538
    人間|27才|男性|命中
  • シャドウラン
    ウェルラスaa1538hero001
    英雄|12才|男性|ブレ
  • 薩摩芋を堪能する者
    楠葉 悠登aa1592
    人間|16才|男性|防御
  • もふりすたー
    ナインaa1592hero001
    英雄|25才|男性|バト
  • エージェント
    月見里 深月aa1644
    人間|13才|男性|生命
  • エージェント
    星見里 瑚華aa1644hero001
    英雄|12才|女性|ソフィ
  • 龍の算命士
    CERISIER 白花aa1660
    人間|47才|女性|回避

  • プルミエ クルールaa1660hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
    人間|11才|女性|攻撃
  • 過保護な英雄
    バルトロメイaa1695hero001
    英雄|32才|男性|ドレ
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