本部

あったまりましょ

絢月滴

形態
イベントショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
4人 / 4~6人
英雄
4人 / 0~6人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2018/12/25 21:04

掲示板

オープニング

●寒い時は……
「ねぇ、純くん!」
 ノルン・ペオース(az0121)の声に、西原 純(az0122)は顔を上げた。彼女の弾けんばかりの笑顔に既視感を覚える。これは――あれだ、ハロウィンパーティーをやりたいと言いだした時の――。
「鍋パーティーしたい!」
「……鍋パーティー」
「うん! 日本にあるんでしょ? 皆でお鍋?っていうのを食べるパーティー! 美味しいんでしょ?」
(こいつ、”お鍋”を食べ物だと思ってるのか?)
 まあそうだろうな……と純は思う。
「ノルン。やるにしても、何処でやるんだ?」
「私の家! 十人くらいなら入れるよ!」
 ハロウィンの時と違って、大規模にやろうとしている訳ではない、ということに純は少し安心した。
「じゃあ純くん! 人集めよろしく!」
「は? 俺がやるのか?」
「だって!」
 ノルンは両手を大きく広げて主張する。
「純くんお友達多いでしょ!」
 いや友達じゃなくて知り合いだ……と純は言おうとしてやめた。言っても無駄な気がした。それに。
(久々に鍋も……悪くないか)
「ちなみにノルン、費用は割り勘か?」
「ううん、私が出すよ! あ! でもお酒だけは出して欲しいな!」
「分かった」


●皆であったまろう
 集まったエージェント達に対して、純は説明を始めた。
「……という訳で、ノルンの鍋パーティーに付き合ってやってくれ。道具を揃えるところからよろしく頼む」

解説

ノルンの家に集まって鍋パーティーしましょう。



◆ノルンの家の二階、リビングが会場です。

◆材料だけでなく、道具も全くそろっていません。
 純も言っていますが、道具を買うところからお願いします。
 (もちろん持ち込みも歓迎です)
 ノルンの家の近所にスーパーマーケットがあるので、買い物はそこで。

◆鍋の種類はご自由にお決め下さい。
 但し、闇鍋を提案すると、純が全力で止めてきます。

◆費用はノルンが持ってくれます。お酒だけ自腹です。飲む方は200G戴きます。

リプレイ

●まずはお買い物!
「……という訳で、ノルンの鍋パーティーに付き合ってやってくれ。道具を揃えるところからよろしく頼む」
「ふふーふ、お兄さんに任せなさい!」
 純の言葉に対して、木霊・C・リュカ(aa0068)は自信満々に答えた。
 年の瀬も近く、寒さが染み入る今日この頃。
 終わりの足音も聞こえてくる。
 ――だから今日は鍋の煮える音で気を逸らすのだ。
「お鍋だけでなくお酒もね!」
『……自腹、でな』
 はしゃぐリュカの背中にオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)の言葉が刺さる。ちょっとだけ控え目に飲みます、とリュカは答えた。
「おいしいお鍋、食べれるようにがんばりましょう!」
 キラキラと目を輝かせ、紫 征四郎(aa0076)は大きく頷く。彼女の相棒であるガルー・A・A(aa0076hero001)もそうだな、と同意した。
『手伝えることもそれなりにありそうだ』
「そういえばノルンさんは?」
 征四郎の問いに、純が答える。
「あいつなら家を片付けてるよ」
 そのやりとりを見ていた麻生 遊夜(aa0452)とユフォアリーヤ(aa0452hero001)は目を細めていた。道具を揃えること。まさに最初の一歩。自分達もまた最初は何もなかった所から今までやってきたことに想いを馳せる。
「……何とも懐かしいな」
『……ん、最初の頃を……思い出すねぇ』
 ゆらり。
 ユフォアリーヤの尻尾が揺れる。
「ま、ここは俺達に任せるがいいさ」
『……ん、これだけいれば……良い案もいっぱい』
 おとーさんおかーさんの真価を発揮すべき時だね。
 そう言って小さく、けれどとても楽しそうに笑うユフォアリーヤに遊夜も同じ表情を返した。
 水落 葵(aa1538)は傍らに居るミラント(aa1538hero002)の手元を見た。彼はメモ帳と二色ボールペンをしっかりと握っている。色々とメモをするつもりなのだ。葵の視線に気づいたのかミラントが笑って。
『ノルンさんに渡すんです。何を買って、どういう風に使ったのか……それがあれば役に立つでしょう?』
「……まあ、そだな」



 純に案内され、一行はスーパーマーケットに到着した。征四郎が店内図をチェックする。
「食料品はこっち、道具類はこちらですね」
「鍋は俺達が一個持ってきたが、もう一個買っていくのが良かろう。色々使えるからな」
『……ん、今後の為にも……持っておくと楽』
「……さて、皆」
 遊夜は一同を見渡した。
「何鍋にする?」
 その問いに各々が悩み始めた。闇鍋、とリュカがこぼせば純がそれは止めてくれ、と反対する。すき焼き、もつ鍋、いや、色々食べれる寄せ鍋……いっそのことあんこう鍋。色々と意見が出たが、最終結論として”しゃぶしゃぶ”に落ち着いた。
 もちろん、候補に挙がった鍋料理は全て美味しい。
 だが”肉を純粋に楽しんでいる”感があるのは、やはりしゃぶしゃぶだ。
『……ん、じゃあせっかくお鍋二つあるから……片方は水炊き……もう片方は……チゲの素、とか?』
「いいですね!」
 征四郎が大きく頷く。鍋の種類が決まったところで、食材を買う班と道具類を買う班に分かれた。



「おたま、コンロ、取り皿……あと何が必要?」
「……アク取り、とかか?」
「葵君、アク取り、とは何ですか?」
「……あー……鍋つつく時に説明してやるよ」
 三人が言うものを、純がどんどんカゴに放り込んでいく。結構重いな、と純が呟いた。持ちますよ、とミラントが返事をする。お兄さんはしない、とリュカは言った。
「あ、そうだ。西原くん、一人用の土鍋って売ってる?」
 純が辺りを見渡す。隅の方にあるのを発見した。
「それ、ノルン嬢にプレゼント。一人で好きな味のお鍋をつつきたくなることもきっと出てくるよ」
「そうだな」
 リュカの意見に同意し、純が籠に一人用土鍋を入れる。ミラントはなるほどなるほどと幾度も頷きながら、メモをしていた。



「安く、いっぱい買えるのが、いい買い物、なのです!」
『……手が出しやすい値段で、助かるな』
 肉は遊夜とユフォアリーヤに任せ、征四郎とオリヴィエは水菜や白菜、キノコなどをどんどんカゴに放り込んでいた。
『あ、征四郎。つくねも作るから追加で小葱もな』
「はい、ガルー」
 少し離れた肉売り場で遊夜とユフォアリーヤは肉の吟味をしていた。
「鍋二つあるから……牛と豚の半々」
『……ん。あと鶏つみれも加えて……三種類制覇』
「賛成」
 人数が多いし、量があった方がいいだろうと遊夜は肉を選ぶ。ある程度の量を確保して、野菜を選んでいる征四郎達と合流した。と、買い物袋を下げた道具班もそこに居た。カゴの中を見て、遊夜は口を開く。
「白菜、水菜と人参、豆腐に白ネギ、シイタケやエノキ。いいね。後は練り物に豆腐か……売ってるのか?」
「売ってる。ここのスーパーは日本食に強い」
「なら安心だ」
 レジに向かいつつ、一行は残りの食材を選ぶ。オリヴィエが乾物コーナーで足を止めた。普通の”ぐるぐると巻かれた”春雨と、某メーカーが作っている”まっすぐ”の春雨を手にする。
『両方買うのか、リーヴィ?』
『ノルンは鍋初めてだって聞いたから。選べる方が楽しいだろ。……多分』
 それに地味に好みで戦争が起こると、聞いた。
 オリヴィエがカゴに二つの商品を入れる。
 練り物コーナーの前ではミラントが”ちくわ”と”こんにゃく”を手にしていた。
『自分はこの二つを食べてみたいのです。他にオススメはありますか?』
「さつま揚げとかどうだ? 家ではよく入れるんだ」
『……ん。甘いからね……子供達が喜ぶの』
 遊夜が棚からオーソドックスな楕円の形をしたさつま揚げを取る。これも練り物なのですか、とミランドは喜々としてメモをした。それを見てユフォアリーヤがユーヤ、と呼び掛ける。
『……ん。ノルンさんにレシピ、渡そう……?』
「ああそうだな。今後の鍋ライフに多いに役立つだろう」
「皆さん!」
 征四郎が突然大声を出した。
「飲み物も買うのです! あと雑炊用のたまごも!」
「そうだねせーちゃん」
『自分は日本酒が欲しいです。もちろんお茶も』
 各々、楽しそうに声を弾けさせ。
 買い出しは無事に終了した。



●さあ、鍋パーティーだ!
「お帰り純くん!」
「俺はここに住んでない」
「あ! 皆買い物ありがとう! さあ、上がって上がってー!」
 ノルンの家は、ごくごく普通の一軒家だった。玄関入って、すぐ左の階段を昇る。白い木のドアを開ければ、そこは広々としたリビングだった。テーブルが綺麗に磨かれている。アイランド型のキッチンはテーブルかそう遠くないところにあった。これなら鍋を運ぶのも楽だ。
「さぁて、準備するか」
「征四郎はテーブルの用意をしますね!」
『……ん。野菜を切るのは、任せて』
 そう言ったユフォアリーヤに対し、ノルンがエプロンを差し出す。ありがとう、とユフォアリーヤは受け取って身に着けた。シンプルな赤いそれはユフォアリーヤに良く似合う。その姿に遊夜はある感想を抱いたけれど、あとで言おうと心に秘める。
 ガルー、遊夜、ユフォアリーヤは並んで食材の準備を始めた。豆腐とネギに焼き目を付け始めたガルーの手元を、ノルンが興味深そうに見ている。一方征四郎とオリヴィエ、葵とミランドはテーブルの上の準備をしていた。ガスコンロは誰からも手が届きやすい位置に。なるほど、この距離ならとミランドは先程から感心しきっている。こだわりと持って配膳を進める征四郎とオリヴィエを葵は彼らに気づかれないように見る。こういうことはこだわりがある者がやった方がいい。リュカはソファに座って、場の雰囲気を楽しんでいた。キッチンから出汁のいい匂いが漂ってくる。初めて見る”鍋料理”にはしゃぐノルン。それを窘める純。ガルーと遊夜がどちらの鍋に何をどれだけ入れるかを話し合いをしている。ユフォアリーヤの鼻歌が聞こえ。テーブルの上に置かれる二つのガスコンロにノルンが興味を示したのか、感嘆の声を出して。
 ああ、きっと今夜はいい夜になる。
「おっし、出来たぞ!」
『……ん。あついの、いくよー』
 遊夜とユフォアリーヤがそれぞれ鍋を持ち、ガスコンロの上へ置く。鍋がきちんと置かれたことを確認してから葵はコンロのスイッチをひねった。ちちち、という着火音。ミランドがまたメモをとった。
「こっちが昆布出汁。こっちがチゲの素が入ってる」
 二つの鍋にノルンだけではなく、純も嬉しそうに頬を緩めていた。
「故郷の料理だもんねぇ」
 リュカの言葉に、純がああ、と答える。彼のこんな表情を見るのは初めてかもしれない。ガルーが肉を盛り合わせた皿を持ってくる。
『後は……ああ、ポン酢とか、薬味か』
 ガルーがテーブルの中央にそれらを置く。ぐつぐつという音。火が通り、鮮やかさを増している野菜。片隅ではひそやかに、”まるまった春雨”と”まっすぐな春雨”が共演している。
「すごいね! これが”お鍋”!」
 ノルンが喜びの声を上げる。
「ふふーふ、何はともあれ乾杯からでは?」
 リュカが既に酒を注ぎ終わっているグラスを示す。
「あー、そうだな」
 空いているグラスに葵は酒を注ぐ。もちろん未成年と――酒が飲めない遊夜にはお茶だ。皆にグラスがいきわたったところで、リュカが咳払いをする。
「えー、それでは僭越ながら、お兄さんが乾杯の音頭をとらせていただきまーす!! ……かんぱーーーーい!!」
 かちん、かちんとグラスとグラスが触れる。これもまた心地よい音だ。何だろう。今日は良い音に満たされている。音だけでなく、匂いも、そしてもちろん、味も。
『葵君、いいですね、鍋!』
 満面の笑みを浮かべるミランドに、葵は小さく頷いた。今度家でしてみるのもいいかもしれない。
『つくねはスプーンで1つずつ、うまく落としていくといい』
「えっと、こう?」
 ガルーに教えられるまま、ノルンはつくねを作る。その様子を見て、征四郎も上手です! とノルンを褒めていた。
『……ん。お肉、火通ってるよー。皆、食べて食べてー』
「言われなくてもお兄さんが食べるよっ」
「あ、木霊さん。そんなにたくさん取るのは」
「食べない皆が悪ーい。……あ、なになに、葵ちゃん、日本酒? 日本酒? さあ、もっと呑もう呑もう!」
「あー……わり、明日に響くから、あまり……」
『……殴って、いいぞ』
「よしよし酒飲みにはおとーさんがこれをやろう」
『……ん、自家製……美味しい、よ?』
「お、いいねーいいねー。チャルケセット!」
『これが、アク、というものですか』
「取った方が美味しくなるのです!」
『リュカちゃん、俺にも注いでくれ』
「いいよガルーちゃんっ、さあ呑もう!」
 皆、心から鍋を楽しむ。オリヴィエの皿が空になったことに気づいて、ガルーはシイタケと豆腐をよそった。ありがと、とオリヴィエは礼を言う。だが、シイタケの軸は苦手だ。さりげなくガルーの皿に押し付ける。苦手なのかリーヴィという問いには答えない。オリヴィエの回答を待たず、ガルーは押し付けられたシイタケの軸を食べた。
『……ん、具材少なくなってきたね』
 ユフォリアリーヤが立ち上がり、キッチンからうどんとご飯を持ってきた。
「どっちにどっちを入れようか」
『普通はどうなのですか?』
 ミランドの問いに、好みだな、とガルーが答える。はい、と征四郎が手を上げた。
「やはりここは、ノルンの初お鍋ということなので――出汁にご飯でお雑炊、チゲにうどんでいきたいです!」
『……征四郎に、賛成』
「お兄さんはどちらでもー」
『自分はまずは”普通”を体験したいです』
 リュカとミランドが言った。葵は俺もどっちでも、と言ってから”まっすぐな春雨”を食べた。
『……ん。じゃあ、決まり、かな』
「よし俺の雑炊作りのテクニックを披露する時だな!」
 ユフォリアリーヤからご飯が入ったボウルを受け取り、遊夜は中身を出汁鍋の方へと入れる。ゆっくりとかきまぜ始めた。
『麻生君、こうったものにもやはりコツが?』
「当然。ご飯の調子――そして卵を投入するタイミングで決まる……っ」
 遊夜の横で、ユフォリアリーヤが卵の準備をする。一方、葵はチゲ鍋へ投入したうどんがこびりつかぬよう、菜箸を使ってなべ底をこそいでいた。ミランドはそれもメモをする。葵君もコツを持っているとは、と感嘆の声を漏らす。
「よし、今だリーヤ!」
『……ん。いくよー』
 ユフォリアリーヤが溶き卵を注ぎ込む。あっと言う間に黄金色に輝く雑炊が完成した。小葱切っておいた、とガルーが小皿を持ってくる。
「うどんもいい具合だな」
『葵君、よそって下さい!』
「自分でやれ」
 雑炊とうどん。〆も皆存分に堪能し。
 二つの鍋は、見事に空になった。



●想い想い
 食事の後、征四郎はリビングの隣の部屋で、道具の使い方を記したカードを作っていた。こうしておけば、次にノルンが鍋料理をする時、役に立つ。
 ふと、征四郎は手を止めた。
 すぐ側のソファーに座っているリュカに話かける。
「リュカ」
「何、せーちゃん」
「……大きな戦い、終わったら、1つおねがいを聞いてほしいのです」
 ペンを置き、リュカの隣に座る。
「あの、お仕事の関係なしに、たまに――たまにお泊りに言ってもいい、ですか? ……古本屋さんのお仕事も、少し、お手伝いできたらと思うのです。いろいろ、覚えたいので」
 それは恋心に近づく一歩。一つの我儘。
(むしろ――来ないつもりだったの、せーちゃん?)
 受けたショックをリュカはもちろん隠した。笑って、征四郎の方に顔を向ける。
「もちろんですよ、マドモアゼル。俺は何時だって、貴女と過ごすことが何よりの楽しみなんですから!」
 リュカの言葉に征四郎は安堵の息を吐く。良かったと、朗らかな声。
(叶うならきっと、征四郎は頑張って戦えるのです)
(……大丈夫。待つのは人よりちょっとだけ得意なんだ)



『……あれ、くっつくと思うか?』
 リュカと征四郎の様子を見て、オリヴィエはガルーに問うた。まだ中身が残っているグラスを傾け、ガルーが答える。
『あん? くっつくに決まってるだろ。うちの相棒は強くて可愛いんだぜ』
『……驚いた。あんたの征四郎へのデレは貴重だ』
『あー、そうかな。少し気が緩んでるのかもな、俺様』
 ふ、とガルーは笑う。それを見て、オリヴィエは目を見開いた。
『……もう一回!』
『あ?』
『録音しそこねたっ』
『もう言わねえ』
 ふ、とガルーは目を細めた。オリヴィエは――恋人は、随分と表情が変わるようなった、と思う。言い換えればとても人間らしく――綺麗になった。先程、皆と鍋をつついているのも快かった。それと同等、いやもしかしたらそれ以上に――こうしてオリヴィエを見ているのも快い。
 世界で起こっていることに、ガルーは想いを馳せる。
『……これが最後になっちまうのは、やだな』
 ぽつり。小さく零す。
『ガルー? ……どうしたんだ』
『何でもない。リーヴィ、もうちょっとこっち来いって』
『っ……あ、ああ』



「やっぱり大勢で鍋をつつくっていうのはいいな」
 片付けを手伝いながら、遊夜は感慨にふける。彼が洗ったお皿を受け取りながら、ユフォリアリーヤもこくこくと頷いた。
『……ん。楽しかった。今度、家族皆でやりたい、ねぇ』
「準備が大変そうだけどな。なんせ32人分だ」
『……ん、でもきっと楽しい』
 ゆらゆらとユフォリアリーヤが尻尾を揺らす。遊夜も目を細めた。二人、その場面を想像する。――楽しさと幸せ、そして子供達の笑顔で満たされた空間――。
 遊夜はそっとユフォリアリーヤと距離を詰めた。視線が絡む。そこに込められる想いは、同じ。世界がどうなろうとも。
「生きるぞ」
『……ん。もちろん」



『ノルンさん。これをどうぞ』
 自分がまとめたメモをミランドは差し出した。ありがとう! とノルンが笑顔で受け取る。どんなメモになったか気になって、葵はメモを覗き見た。「……うるせぇメモだな。しかも勝手に評価なんてしてやがって」
 食材一つ一つに対して、ノルンの反応と純の反応が書き込んである。ノルンは凄い観察眼だね! と素直に喜んだが純の表情は微妙だ。
『外れてましたか?』
「……いや」
『なら良かったです。……それにしても』
 ミランドの目が光る。始まりやがった、と葵は思った。
『こちらの世界の食品加工技術は素晴らしいですね! えぇ、その他の技術ももちろん素晴らしいのですが一番”体感”しやすいのはやはり食だと思うのですよ。食とはヒトが生きていく上で必要不可欠の要素です。しかもただ技術が反映されているだけではなく――』
 ミランドの話をノルンは目を輝かせて聞き始めた。純は”帰るタイミングを逃した”という表情をしている。あーと溜息をついて、葵はミランドの肩に手をかける。
「ミランド」
『ですから……何でしょう、葵君』
「帰るぞ」
『仕方ありませんね。ノルン君、純君。また今度」




結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 実験と禁忌と 
    水落 葵aa1538
    人間|27才|男性|命中
  • エージェント
    ミラントaa1538hero002
    英雄|28才|男性|ブラ
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