本部

【終極】連動シナリオ

【終極/機抗】作戦コード「聖像の破壊」

影絵 企我

形態
ショートEX
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/10/31 16:04

掲示板

オープニング

●General theory of Livus
 ――広い研究室の中、一人の研究者が黒ずくめの獅子ともう一人の研究者を前に何やら説明を繰り広げていた。“彼女”は電子タバコをふかしながら、そんな彼らの話を黙々と聞いている。
「思うに、ライヴスは無限に広がる一枚の布のようなものなんだよ」
 研究者――ロジェ・シャントゥールは語る。薄いビロードを広げた彼は、微笑みながらその布の上に幾つもビー玉を放り投げていく。腕組みをしたまま、獅子――ヘイシズはロジェに尋ねる。
「そのビー玉は一体何を模している?」
「今はミクロの話だから、このビー玉は生命活動を行っている有機体だと思ってほしい」
「なるほど。……この布の凹みが、お前の言う人類の意志ってわけだ」
 もう一人の研究者――ケイゴ・ラングフォードは得心して頷く。ロジェは微笑む。
「そういう事さ。卵が先かニワトリが先か、という議論にはあるけど……生命活動を行う有機体は周囲のライヴスを自らの下へと引き寄せ、何処までも真っ平らな相を歪める。その歪みが意志なんだ。そしてその歪みは……こうして動き回る」
 ロジェは指示棒を伸ばすと、ばら撒いたビー玉をつついて転がす。やがて、二つのビー玉がくっついた。
「そして、時としてその歪みは繋がり合う。これは尊敬と呼べるかもしれない。あるいは畏怖かも。興味執着、愛情或いは憎悪かもしれないね。でも、肉体が別々である限り、この意志は一体化しない」
「だが、本質は思念体である英雄は、この垣根を越えて一体化出来る……」
 ヘイシズが呟くと、ロジェはいかにも嬉しそうに手を叩いた。
「そう。そうなのさ。一つの肉体に二つの意志が乗る……それは、さしずめこういう状態だ」
 ロジェはビー玉と同じ大きさの鉄球を取り出すと、新たにビロードの上へ放り出した。鉄球はさらなる歪みをビロードに作り出す。
「共鳴したリンカーに、ライヴスはより強く集まり、相はより強く歪む。それは世界に対してより強く影響するという事だ。君や、その他のプリセンサーが予見した未来を易々と彼らが打ち破ることができるのも、それが所以というわけだね」
 ヘイシズは僅かに眉間へ皺を寄せる。知らんふりして、ロジェはそのまま話を続ける。
「じゃあそろそろ本題に入ろう。マクロの話だ。……あー、重たい」
 彼が手に取ったのは、砲丸サイズの球。両手でやっとこ抱えて、彼は球をビロードの上に乗せた。球は途上のビー玉を巻き込みながら、中心へ向かって転がっていく。
「それは」
「“王”さ。君が言った」
 球はビロードの中心に沈み込む。ビロード全体が歪み、散らばったビー玉もやがて中心へ落ち込んでいった。
「まだこれは仮説だが……ライヴスの相の歪みはこうして一つに集まろうとする性質を持っている。そもそも人が恋をし愛を育むのも、能力者が英雄とリンクするのも、……君達愚神がライヴスを掻き集めようとするのも、ライヴスがこうした性質を持っているとすれば説明がつく。王が幾つもの世界を呑み込もうとするのも、そのせいさ」
「私の王は、ライヴスに操られている……と?」
 口調は穏やかだが、ヘイシズのたてがみはふわりと膨らみ、剣吞な空気を身に纏っている。しかしロジェは物怖じしなかった。
「そうさ。……ヘイシズ。君は愚神が、王という存在とリンクした存在だと言ったね。私に言わせればね、シュヴァルツシルト半径に囚われて二度と抜け出せない、哀れな犠牲者というところだよ」

「ねえ、君はどう思う――」

●For the Nation
 とある官邸の一室。一組の男女が黙々と書類に目を通していると、軍服を着た一人の少女が息せき切って飛び込んできた。
『"カイメラ"にて大量の従魔が出現したようです』
『そうか。やはり来たか』
 男はソファからおもむろに立ち上がると、ファイルを閉じた女に向かって言う。
『イザベラ、今回は俺と行こう。セオドラは例の放送の準備をしておけ』
『承りました。イザベラ様、キスク様。御武運をお祈りしております』
『大丈夫だ。俺が出向くのなら万一は無い。そうだろう?』
 イザベラは漆黒のロングコートに袖を通すと、眉間に皺を寄せたまま頷く。
「頼りにしている。……あの時までも、今までも、これからも」
『じゃあ行こうぜ』
 キスクは立ち上がると、大きな掌でイザベラの華奢な背中を叩く。
『“GLAIVE”の初陣だ』

「……全ては、祖国安寧の為に」

●希望の盾と死の剣戟
 アルター社の開発した高速VTOL機に乗り、君達は従魔が大量に出現したという現場へと急行していた。モニター越しに、オペレーターが君達の任務についての説明を続けていた。
[……“カイメラ”は最近出現した大規模な異世界です。古今東西の廃墟が入り混じった外見から、王に滅ぼされた世界の断片が世界蝕に乗じてこの世界に押し込められているのではないか、と考えられています]
 奇妙な風景が画面に映し出された。中央に鉄塔が聳えているかと思えば、その周囲ではヨーロッパ風の城壁とビルの鉄骨が噛み合っていたり、瓦葺きの寺院らしき建物が半分だけ生えていたりもしている。
[この地点は常時ドロップゾーンが展開されているような状態に近く、その為に強力な従魔や愚神が出現し得る温床となっています]
 映像はさらに移り変わり、無秩序な建物の塊から這い出す巨大な異形の群れを映し出す。キマイラ、スフィンクス、マンティコア、ヒッポグリフ……寄せ集めの生物ばかりだ。
[事前に申し上げた通り、地形は非常に入り組んでおり、かつ無秩序です。ロープなどの準備はしてあると思いますが、不意の接敵や落下に気を付けてください。また……]
 オペレーターは言葉を切る。映像は再び切り替わった。黒いコートに身を包み、ゴーグルとマスクで顔を被った兵士達が幽霊型の従魔を次々に討ち取っている。
[今ご覧になっているのは、リオベルデ内で撮影した、特殊部隊の戦闘の様子です。この地はリオベルデのほぼ国境付近であり、場合によっては彼らもこの場に出撃している可能性があります]
 一斉射撃が、幽霊を纏めて吹き飛ばした。
[これまでの調査からリオベルデをヴィランとする事が各国に承認されました。困難を極めるかもしれませんが、可能ならば、ここで無力化を図ってください]
 言い終えると同時に、鋭くパイロットが叫んだ。
「配置完了! いつでも作戦開始できます!」
[着いたようですね。……では、皆さんご無事で]
 ハッチが開く。君達は立ち上がると、垂れ下がったロープに掴まり、廃墟に向かって一斉に飛び降りた。廃墟の窓から顔を覗かせたグリフィンに遠隔攻撃を見舞いながら、君達は不気味な伏魔殿へと降り立ったのだ。

解説

メイン ケントゥリオ級従魔を自らの手で五体撃破せよ
サブ 特殊部隊と接触せよ
EX 特殊部隊を無力化せよ

ENEMY
☆ケントゥリオ級従魔キメラ×15
 異世界と接触した地点から次々と溢れた強力な従魔。キマイラ、スフィンクス、マンティコアなど、いずれも複数の生物を組み合わせたような外見をしている。行動の特徴は外見上の存在に拠るが、攻撃方法などに違いは無い。
●ステータス
 物攻B 生命C その他D~E(外見によって前後する)
●スキル
・鉤爪
 歪んだ爪による一撃。[命中時、物攻vs物防の対抗判定。敗北すると減退(1)付与]
・咆哮
 歪んだライヴスの籠った咆哮。[ドレッドノートスキル「臥謳」と同等]

NPC
☆特殊部隊×10
 リオベルデの精鋭軍団。RGWの粋を集めた技術でスキルなどを強化している。
●ステータス
 命中ジャ(70/40)
●スキル
 ドーラ(アハトアハト強化)
 フラガラッハ(テレポートショット強化)
 イチイバル(トリオ強化)
 弾道思考
 回避予測

☆イザベラ&キスク
 『カイメラ』に出現した大量の従魔を狩るために出撃してきた特殊部隊の首魁。
●ステータス
 攻撃ジャ(80/55)
●スキル
 ドーラ フラガラッハ ゲイボルグ(バレットストーム強化)
 見極めの眼 誓約復唱
●固有技能
・将軍の魂
 彼女は父を、彼の英雄を通じて受け継いだ。[キスクとの共鳴時、攻撃適性に変化する]
●作戦行動
・ブリッツクリーク
 強力なスキルを先んじて使い、敵に対する優位を取る
・テルシオ
 密集して弾幕を張り、敵を接近させない

FIELD
・カイメラ
 様々な時代の廃墟が入り混じった空間。生存者は確認できない。
→廃墟
 内部構造は穴や亀裂で滅茶苦茶になっており、足場が確保しにくい。
→暗闇
 内部は光が届かず暗い。敵を見失いやすい。
→高濃度ライヴス
 モスケールなどの索敵道具の効果が半減する。
→反響
 銃声や咆哮は虚ろな空間に反響する。注意が必要。

リプレイ

●闇の中へ
 ロープを伝い、エージェント達は滑るように地上へと降りていく。氷鏡 六花(aa4969)は瓦礫の陰から顔を覗かせたグリフィンに向けて氷の槍を擲った。喰らったグリフィンはその場で怯み、すごすごと内部へ引き下がっていく。
 赤城 龍哉(aa0090)は化け物の背中を見送るついでに、廃墟全体を見渡す。一つの山が丸ごと変化した異世界からは、瘴気が滾々と湧き出している。
「常時ドロップゾーン発生状態とは、シャレにならねえな」
『それも織り込み済みで、特殊部隊は動いているのでしょう?』
 ヴァルトラウテ(aa0090hero001)が言うと、龍哉は眉間に皺を寄せる。
「国民にはいい迷惑だろう、こいつは。連中、危ない橋を渡ってると自覚してるなら尚の事性質が悪いぜ」
 エージェント達はロープを手放し、廃墟の山の麓に降り立つ。迫間 央(aa1445)は籠手を嵌め直しながら、聳える廃墟のモザイクを見上げた。マイヤ サーア(aa1445hero001)は、その中に混じった寺のような建物を捉える。
『神無月の居たはずの世界に近い……東洋の名残がある建物も混じっているわね』
 央は金の瞳で廃墟を見渡した。時代も場所も滅茶苦茶、壊れたジオラマを次々積み重ねたような世界。共通しているのは、誰一人生きていそうにないという点だけだ。
「痛々しいほどに歪だ。愚神の手で終焉を迎えた世界は、こういう末路を辿るという事なのか?」
『そうだとしたら、空恐ろしい話だな』
 プライベートモードのまま、榊 守(aa0045hero001)がぽつりと呟く。そのまま執事モードに切り替えると、主人たる泉 杏樹(aa0045)のサポートに取りかかった。
『御嬢様、まずはライトアイを』
「はい、皆さん、集まってほしい、です」
 杏樹はエージェント達を呼び集める。キース=ロロッカ(aa3593)は真っ先に駆けつけると、愛用の銃“Artemis”を構えながら仲間を見渡した。
「よろしいですか。特殊部隊を発見した場合は何らかの形でボクに伝えてください。直ぐに其方へ向かい、共同戦線の構築を持ち掛けます」
「素直に聞いてくれればいいがな」
 バルタサール・デル・レイ(aa4199)が淡々と言うと、キースは自信ありげに頷いて見せる。
「聞きますよ。彼らが本当に国の事を考えて行動していれば、の話ですが」
 杏樹が周囲に霊力を放つ。全員の眼に藤色の光が沁み込み、瘴気の漂う廃墟の世界さえもその眼に捉える力を得た。キースは銃を胸元に抱え、真っ先に廃墟へと足を踏み出す。
「さて、仕事に勤しみましょう、紙姫。まずは人探しから行きましょうか?」
『出る前に聞いてきたよぅ! イザベラさんは高いところにいるんじゃないかって。あそことかどうかなぁ?』
 匂坂 紙姫(aa3593hero001)の意識が山の中腹へ向く。キースが焦点を合わせると、崩れかかったアパートが、ボロボロの鉄筋を晒していた。
「そうですね。ボク達はまずそこを目指してみましょうか」
 瓦礫の陰にカバーリングしながら、キースは早々に山へと突っ込んでいった。その後を追いかけつつ、十影夕(aa0890)は視界の端に六花の姿を捉える。
「(あの子も来てる……ヘイシズさんを憎んで討った……)」
 彼女はその小さな体躯に収めるにはあまりにも強い感情を秘めて、廃墟の中へと駆け出していく。その背中をそろそろと追いかけながら、夕は心の奥底で独り言を呟いた。
「(俺には……無いから、少し羨ましい、な)」
 空虚、渇き、それとも。自分の心に広がる穴のようなものに、彼はまだ名前を与えられずにいた。
 日暮仙寿(aa4519)とアークトゥルス(aa4682hero001)は肩を並べて走る。一人の傭兵に絆されてしまった者達だ。君島 耿太郎(aa4682)は呟く。
「RGWを通して、アルター社と繋がって、ラグナロクと繋がって……一体何なんすかね」
『今からそれを知りに行くのだろう。時ここに至ってまで、彼らがそれを隠す理由も無い筈だ。……手遅れになる前に、確かめなければ』
《手遅れに……》
 仙寿は“彼女”の手記に刻まれていたニーチェの一節を思い出す。

 われわれ一人ひとりの気が狂うことは稀である。
 しかし、集団・政党・国家・時代においては、日常茶飯事なのだ。

《なあ、あけび》
 気付けば、仙寿は不知火あけび(aa4519hero001)に問いかけていた。
『なに?』
《国が狂うのなら……それは誰の意思なんだろうな》
『それは……』
 あけびは答えに窮する。その間に、彼らは廃墟の暗闇の中へと足を踏み入れていた。中も崩れ落ちた内壁が散らばり、見るからに足場が悪くなっている。ナイチンゲール(aa4840)は鉄筋がむき出しになった柱の陰に隠れ、静かに耳を澄ませた。
『(……戦場の音楽が鳴り響いているな)』
 廃墟の彼方から聞こえる銃声を、彼女は墓場鳥(aa4840hero001)と共に聞く。片手を上げると、ナイチンゲールは傍の仙寿とアークを呼び止めた。
「待って。銃声が遠くから聞こえる」
 眼を見開くと、二人もまた立ち止まって周囲を窺う。
『確かに聞こえるな。人数は判り難いが……』
《少なくとも五、六人はいる。俺達の誰かが戦ってるわけじゃないな》
 即ち、特殊部隊が居る。悟った彼らは、迷宮のように入り組んだ道を見渡す。
《俺は一旦あの廊下の先を見てくる。他は任せた》
『ならば、私はあの部屋の内部を見てくる。くれぐれも無理はせぬよう頼む』
 仙寿とアークは銃声を追って走り出した。ナイチンゲールがそれを見送っていると、傍に駆け寄ってきた六花が彼女の腕を引く。
「……行こう、ナイチンゲールさん」
「うん。すぐに見つけないとね」
 ナイチンゲールは頷くと、六花の先に立って廃墟の中を走り出す。六花はその後を小走りで追いかけながら、どこかで戦っているであろう兵士達に意識を傾ける。
「今は……人間同士で戦ってる場合じゃない……から。従魔を殺す邪魔をするなら、特殊部隊も殺す……けど」
『(……大丈夫よ。優れた軍人である彼らなら、今何を優先すべきかは……きっとわかってる筈)』

●奇妙な共闘
 一羽のフクロウが闇を飛ぶ。藤色に光る眼が、廃墟の暗闇を睥睨している。その視界を頼りに、央は広い廃墟の探索を続けていた。微かなマズルフラッシュの光が、フクロウの視界の端で瞬いている。
「(ライトアイの効果が切れないうちに見つけてしまいたいな)」
『(反響が酷いけれど、こうすれば位置も聴き分けられそうね)』
 央のそばでマンティコアが歌っている。獲物を求めて徘徊しているらしい。壁の陰に隠れてやり過ごしている間に、マイヤがさらにフクロウを廃墟の奥へ飛び込ませる。壁の一面が、マズルフラッシュで白く染まった。マイヤはフクロウを止まらせ、くるりくるりと周囲を見渡す。
『(……見つけたわ。間違いなくあれがそうよ)』
 央もフクロウの視界に意識を向ける。うすぼんやりと光る暗視ゴーグルを付けた兵士達が、周囲に向かって引き金を絞り続けていた。
「(よし……)」

[リオ・ベルデ……特殊部隊、発見した。周囲……従魔も集まっている……]
 通信機から、ノイズ混じりに央の声が聞こえる。位置情報を聞きつつ、キースは素早く廃墟の亀裂を飛び移っていく。壁に跳ね返る銃声も、俄かに大きくなってきた。
『あれだよ!』
 瓦礫を砕きながら、スフィンクスが傍を横切る。咄嗟に物陰へ身を隠しつつ、キースは吹き抜けから一階層下を眺めた。方陣を組んだ十一人の兵士が、四方八方に銃を放っている。激しい弾幕が群がる敵を寄せ付けない。キースは通信機の周波数を変えながら、兵士達に向かって語り掛けた。
「皆さんはリオ・ベルデの特殊部隊で相違ありませんか」
[……そうだ。お前……米軍か? ……とも、H.O.P.E.か?]
「H.O.P.E.のキース・ロロッカです。共同戦線の申し出の為に接触させて頂きました」
[共同……か。……どんな風の……回しだ?]
「なんてことはありません。互いに背負うものは違えど、この場で達成すべき目標は同じはず。どうです、一旦各々の事情は棚上げにして、この場では手を組みませんか」
 キースは声色を低く止め、淡々と問いかける。友好的な雰囲気は出さず、只ビジネスライクに臨む。部隊の一人が右手を上げると、他も一斉に手を止め、アンカー状の金具を射出しキースの階まで上がってきた。
「よかろう。その方が速やかに片付く」
「迅速な理解に感謝します。では従魔を効率的に捌く為にも、区域を分担しませんか」
「考える事は同じだな。では君達はここから東と南と下を頼む。我々は残りを担当しよう」
 彼女はさっさと言い放つと、部隊を纏めて再び銃を構えた。

[……以上の通りです。ここからは従魔の掃討へ移りましょう]
 通信報告を聞いていた龍哉は、傍に居た杏樹に目を向ける。
「だそうだが」
「特殊部隊と、合流する、です」
 杏樹は周囲を見渡している。部隊が居る上階層へ向かう手がかりを探していたのだ。背後から見ていた龍哉は、アンカー砲を担いで上の階へ狙いを定める。
「そうだな。奴らの動きに一口乗せてもらうのが良さそうか」
 放たれたアンカーは、ボロボロのコンクリートにどうにか引っ掛かる。鎖を一気によじ登ると、龍哉は下の杏樹に向かって叫ぶ。
「それに掴まれ! 俺が引き上げる」
「はい、お願いします、なの」
 杏樹が鎖に掴まると、龍哉は怪力でひょいひょい鎖を手繰り寄せる。上まで十秒とかからなかった。
「よし、さっさと合流するか」
 二人は銃声の聞こえる方角へ向けてひた走った。

 ライトアイの効果は長くない。ノクトビジョンを取り出しながら、夕は仙寿に尋ねた。
「暗視装置は使えそう?」
 同じゴーグルを被って、仙寿は頷く。微光増幅機能だけを稼働させて、何とかマシな視界を確保していた。
《何とかなりそうだ。ライトアイは温存してくれ》
「それなら……」
 夕もゴーグルを被る。ライトを直接手にしたアークは、足元だけを照らしながら慎重に周囲を見渡す。周囲を蠢く敵の足音は、今も徐々に遠ざかっていた。
『敵も特殊部隊の方へ集まっていると見える。我々もなるべくその近辺で戦うとしよう』
《承知した》
「そうだね」
 三人は今にも崩れそうな階段を駆け登る。マズルフラッシュの光が、彼方で僅かにちらつくのが見えた。従魔達の影も映っている。足を速めようとした瞬間、頭上から甲高い鳴き声が飛んできた。
「これって、こっちに来てるよね!」
 夕は咄嗟に見上げた。翼を広げたグリフォンが、真っ逆さまに降りて襲い掛かってくる。槍を構えた夕は、咄嗟に背後へ飛び退いた。グリフォンが鉄骨に爪を打ち付けた瞬間、火花が散って桃色の髪を一房照らす。夕は瓦礫の端から落ちそうになるのを堪え、仙寿とアークを探した。
「大丈夫?」
《こっちは問題無い。……どうする、アークトゥルス》
 仙寿とアークは同時に得物を抜いた。三人に取り囲まれたグリフォンは、嘴を鳴らしながら彼らを威嚇してくる。
『中央へ進出しながら相対しよう。そうすればミス・ナイチンゲール達と合流できる。その方が連携も取りやすい』
「そっか。じゃあ上手く相手しないとね」

[我々……交戦を開始。しかし、予定通り……流する]
「わかった! 私達もすぐ向かうから!」
 ナイチンゲールと六花は崩れそうなビルの廊下を駆け抜ける。銃声がそこら中に反響し、甲高く叫んだ。
「もうすぐ合流するって!」
『まずは三人が戦っている従魔を倒して……それから作戦実行、になるかしら』
 アルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001)が尋ねると、ナイチンゲールはこくりと頷く。
「このビル、大分脆そうだし、ここが作戦に使いやすいかもね」
『この騒ぎだ。少なくない従魔が特殊部隊へと向かっている可能性はあるがな』
「それならそれってことで」
 ビルと城が食い合っている地点へと辿り着いた。アーク達三人が、グリフォンを引き連れ階段を駆け登ってくる。六花は階段の上からグリフォンを見下ろすと、一本の氷槍を取り出して構える。
『さっきの個体とは別みたいね』
「同じでも、別でも、同じようにするだけ……」
 グリフォンの喉元目掛け、六花は氷槍を擲つ。通り抜けるのがやっとの空間では躱す事など出来ず、グリフォンは直撃を喰らって呻いた。ナイチンゲールは鞘を結ぶ鎖を払うと、追い打ちでレーヴァテインの炎を飛ばして叩きつけた。

 バルタサールは、石造りのバルコニーに腰を下ろし、階下へライフルの銃口を向けた。紫苑(aa4199hero001)は映画でも見に来たかのように愉しそうな声を放った。
『此処からなら、特殊部隊の戦いの様子も良く見えそうだね?』
「……そうだな。照明もそれなりにある」
 左へ眼を向けると、部隊がウェポンライトで周囲を明々と照らしていた。バルタサールは引き金に指を掛けつつ、彼らを観察していた。“イザベラ”と思しき女の声が、絶えず兵士に指示を送り続けている。彼らの右腕には、歪に輝く霊石が嵌め込まれていた。
『RGWかな。あれが』
 紫苑が呟く。彼もまた、十中八九そうに違いないと思った。
「(リオ・ベルデが、霊石が多い土地柄だったのは偶然なのかもしれない)」
 彼の生まれ育ったメキシコの隣人、リオ・ベルデ。世界蝕が起きる前は、只の農業国に過ぎなかった。それが変節していたのは、一体いつの事だったか。
「(そこに目を付けたケイゴ・ラングフォードに唆され、霊石をより多く得るために異世界転移を発生させ、手に負えなくなったか……?)」
 麻薬カルテルに身を置いていた彼が、リオ・ベルデの内情を知る由も無い。気付けばその国は鎖国し、強硬な工業化を推し進めようとしていたのだ。
「(工業化によって農業が廃れ、自給自足も叶わずか。諸国とも敵対を深め支援を求める事も出来ず、後戻りできない状態、なのだろうか)」
 だが、彼の知る限り、リオ・ベルデはアメリカからの支援を受けており、関係はむしろメキシコよりも良好なはずだった。
「(しかしなぜ、そもそも大佐はクーデターを起こし、世界を敵に回したのだろうか)」
 その支援を断ってまで、戦う道を選んだのは何故か。
「(霊石が多いが故に産業は栄えたが、何か代償があったのか……? ライヴスのせいで、一般人に何か影響があったのだろうか。人体実験を行ったのもそれが理由か? 領土を侵犯したのも、ライヴスの影響から逃れるためか……)」
『(ふうん、珍しい。僕が色々言っても興味ない顔する癖に、今日は随分考えるね)』
 不意に紫苑が茶々を入れる。思索の腰を折られたバルタサールは、口を結んで銃を構え、スコープを覗く。
「(土地が土地だからな。たまには、空想に耽る時だってあるだろう)」
 央や龍哉が相対している従魔へと銃口を向ける。その眼を狙い、人差し指に力を込めた。

●脅威のスキル群
「Shooting!」
 杏樹の目の前で兵士達は銃を構える。迫りくるスフィンクスに狙いを定め、一斉に銃弾を撃ち込む。スフィンクスは身を捩って躱そうとするが、時空を幾度も跳び越えた弾丸は、次々に従魔の急所を撃ち抜いていく。血が噴き出し、体勢を崩したスフィンクスは勢いよく床に叩きつけられる。杏樹は、目まぐるしい弾の動きを追いかけるのがやっとだった。
「これって……?」
『空間を跳び越える様子を見るに、テレポートショットだとは思いますが……』
 守はうすぼんやりと銃弾の軌跡を思い浮かべ、仲間がこれまで放った弾丸と照らし合わせる。しかし、時空跳躍は二度も三度も起きていなかった。
『こんな飛び方はしないはずです』
 従魔はのっそりと立ち上がる。大剣を抜いた龍哉は、その脇腹に向かって大振りの一撃をざっくりと叩き込む。従魔は反射的に跳び上がり、その場で更に転げた。腰を落として構えたまま、彼は物陰からライフルを構えている兵士の右腕を見つめた。
「その右手についてる、いかにも怪しいブツのおかげか?」
「そうだ。今更偽ることも無い。そうだと答えてやる」
 立ち上がろうとする従魔に、兵士達はさらに銃弾を撃ち込み、龍哉は遠心力の乗った一撃を叩き込む。精鋭リンカーの一撃を何度も受けては堪え切れず、従魔はこの世から消え去った。
「それにしても、良いのか? 手分けすると君達の仲間は言っているぞ。我々の事など放っておいた方が良いのではないかね」
 ゴーグルとマスクに覆われた、女将校の表情は窺い知れない。冗談めかした声が空間に響くだけだ。扇子を構えて四方を見渡しながら、杏樹は訥々と、しかし力強く応える。
「正々堂々としているべきと、言われたの。だから正々堂々、協力する、です」
「そうか。なら邪魔だてだけはしてくれるなよ。従魔のついでに蜂の巣にするぞ」
「それでも、いいです」
 暗闇の彼方で目が光る。翼を広げたヒッポグリフが、鉤爪を剥き出しにして突撃してくる。杏樹は素早く飛び出すと、兵士が身構えるよりも早く敵の爪を受け止めた。
「H.O.P.E.がヴィランと認定しても、関係ないの。杏樹は、お話ししてみて、イザベラさんが、信用できそうな人だなと、思った、です」
「まあ、いいが……」
 聞いた彼女は、言葉尻を濁らせる。ゴーグルを外すと、難しい顔をして杏樹を見据えた。
「これは人生の長としての忠告だが、そんな事を軽々しく言わない方がいいぞ。どこでどんなに悪い奴が聞いているか分からんからな」
「その悪い奴がお前らなんだろうが?」
 弓を取って矢を番え、龍哉は眉間に皺を寄せる。イザベラはからから笑うと、ゴーグルを戻して銃を構える。
「そうだな。その通りだ」
「……まあいい。万が一にもこいつらを外に出す訳には行かねぇ」
『従魔とは言え、ケントゥリオ級がこの数では前回とも比較になりませんものね』
 ヒッポグリフが威嚇するように上体を持ち上げた瞬間、二人同時に一発撃ち込む。
「だから、今だけはお前らの動きに乗っといてやる」

 彼らのやり取りを横目に掛けていたキースは、再び己の持ち場に目を戻す。紙姫が意識を視界の端へと向けて叫んだ。
『次はあっちだよぅ! 兵隊さんの銃声に引っ張られてるみたい!』
 見れば、階下で双眸が輝いている。キースは幻想蝶に手を翳し、中から重厚な目覚まし時計を取り出した。
「なるほど……ならば足元まで一気におびき寄せます。央、夕、準備は宜しいですか」
 階下で哨戒していた央と夕は、物陰に身を潜める。
「問題無い。どのようにでも動ける」
「いいよ。どんどん行こう」
「了解です。では……」
 目の前の穴に向かってスイッチを入れた目覚まし時計を放り込み、自身は改めて銃を構える。数秒後、激しい爆音が廃墟中に轟いた。目を光らせたキマイラが、四つ足で荒々しく駆け出してくる。ついでに、別の方角からマンティコアまで飛び出してきた。
「こうして使うと、やっぱりうるさい撒き餌だなぁ……」
 一斉に振り被った爪を、従魔は目覚まし時計に向かって叩きつけようとする。狙いを定めたキースは、その腕を撃ち抜いた。急襲に従魔がたたらを踏んだところへ、央と夕が一気に間合いを詰めていく。
『……今回はあまり長居するつもりじゃないから、悪いけど早々に決めさせて貰うわ』
 化け物二体が振り返った瞬間、央は剣で空を切り裂く。空間が僅かに捩れ、その隙間から蒼い薔薇の花弁が次々に飛び出してくる。花弁は獣の頭を覆いつくし、彼らの足を無理矢理止める。その隙にヌアザの銀腕を起動すると、刃を振り抜きキマイラの足下を切り裂いた。
 腱を裂かれ、キマイラはその場に転げる。夕はその頭を素早く跳び越え、槍を頭上に構えてマンティコアへと飛び掛かった。花弁を振り払ったマンティコアは、囀り続けたその口をかっと開き、劈くような悲鳴を上げる。
「ゾクゾクするほど怖いなんて……すっごく楽しいじゃん!」
 心臓を握り潰されそうな衝撃にも何とか耐え、夕は槍の鋭い切っ先を開かれた口蓋の奥へと突き立てる。鮮血が噴き出し、口から血を流したマンティコアはくぐもった声を零した。
 倒れていたキマイラが起き上がり、夕の背後を狙う。しかし、その眼は時空を超えて飛んだ一発の弾丸が貫き、再びキマイラは混乱の中へと叩き込まれた。夕が振り返ると、銃口を他所へ向けたまま、バルタサールが冷たい眼だけで暴れるキマイラを捉えていた。
「この調子なら、押し切れるかな」
 槍を抜き取ると、夕は血を払いながら間合いを取り直した。マンティコアとキマイラはゆらゆらと立ち上がり、並んで飛び掛かってくる。央は飛び出し、紙一重で爪を交わすと、その姿を二つに分かって切りかかる。キマイラはそのうちの一体に噛みつくが、それは霞となって消え去り、本物の央が剣をキマイラの眼から脳天に向かって突き立てた。
「十影」
 夕は頷くと、槍をぶん回して遠心力を乗せ、口蓋から柄も通り抜ける程深々と刃を突き立てる。キマイラは一度ぶるりと痙攣し、その場に崩れ落ちてしまった。
「とりあえず、一体か……」
 央は飛び退き、マンティコアの一撃を躱す。その耳は、彼方から響く新たな咆哮を捉えた。夕はちらりと背後を振り返る。
「今の声に反応しちゃったのかな?」
「だろうな。……だがあの方角なら……」

 崩れそうな廃墟のビルを前に陣取り、仙寿は弓に矢を番える。耳を澄ませて、彼は迫り来る従魔の存在を探り続けていた。
《こっちに来ている。……用意は出来ているな?》
「……はい」
「オーケー」
 矢が鋭く放たれる。その後を追うように放たれた氷の槍、炎の球が、矢と共に天井の罅割れに直撃した。砕けた床が廃墟に降り、鈍い音を次々に立てる。新手のキメラが一体、その音に吸い寄せられるようにしてその姿を露わにした。
 幾つもある口で吼えながら、今にも崩れそうな廃墟を荒々しい足取りで駆け抜けてくる。六花は素早く魔導書を開くと、罅割れたコンクリートに向かって氷槍を放った。
 キメラが床を踏み込み、氷槍が罅割れに突き刺さった瞬間、鈍い音を立ててコンクリートが砕ける。鉄筋が引き千切れ、キメラの足下が一瞬で崩れ落ちた。体勢を崩したキメラは、六花達の前でちょうど崖にしがみつくような格好になってしまう。
「チャンス!」
 ナイチンゲールと仙寿、アークが一斉に刃を構えた。跳び上がった三人は、キメラの眼や脳天、腕に刃を突き立てる。悲鳴を上げたキメラは、崖から手を放して下階に墜落した。仙寿は地不知の力を発揮し、壁に張り付いてキメラの様子をその脳天から見下ろす。
《来い、こっちだ》
 キメラの身体にも飛び移りながら、仙寿はキメラを挑発する。唸りながら全身を震わせ、爪で仙寿を捉えようとするが、紙一重で届かない。むしろ伸ばした手の先を刀の切っ先で細かく切り裂かれ、血が滲んだ。キメラが怯んだところへ、仙寿が崖を見上げて叫ぶ。
《アークトゥルス》
『参ろう』
 上階から一気に跳ぶと、アークはライヴスを纏わせた刃を高々と振り上げる。キメラが振り返った時にはもう遅い。振り下ろした刃がキメラの顎を穿っていた。再びキメラは叫び、その場に転げてのたうち回る。
『このまま一気に押し切るぞ』
 今度はアークが叫ぶ。崖の上に構えていた女子二人は、互いに顔を見合わせた。
「六花」
「……ん」
 ナイチンゲールは剣を再び鞘へ納める。流し込まれた霊力が鞘の中で増幅し、満ちたライヴスが鯉口で輝きを放った。六花も天へと手を掲げ、一際鋭い氷槍を生み出す。
「はっ!」
 二人は氷と炎を同時に放つ。キメラは身動きすら取れないままに頭から地獄の洗礼を浴び、そのまま消滅した。

 H.O.P.E.のエージェントが各自連携を取って敵を討つ中、派手な銃声に集まってきた五体の従魔に向かって特殊部隊は一斉にマグナムを構える。
「Burst」
 イザベラのコールと同時に、特殊部隊は一斉に、何度も引き金を引いた。現れた五体に一発ずつ、次々に。ケントゥリオ級と言えど、一度に十発も銃弾を受けては堪らない。怯んでその場に立ち止まった。
「(あれって……)」
 従魔を倒し終えた夕は、物陰に潜みながら特殊部隊の攻撃を見つめていた。複数体に同時攻撃を行う“トリオ”攻撃。ジャックポットの基礎中の基礎であり、夕も使っている。
「(でも今、五体に纏めて撃ってたような)」
 スキルが明らかに変化している。その考えに夕が至った頃、特殊部隊は従魔に向かって苛烈な爆撃を見舞い、跡形もなく一掃してしまったのであった。

「従魔の反応確認できず。これを以て任務完了とする」

●真の計画
 静寂を取り戻した廃墟。部隊もエージェントも、それぞれ武器を下ろす。キースは銃を幻想蝶へ収め、イザベラへと歩み寄っていく。
「見事なお手並みでした。流石に特殊部隊の長を務めるだけはある」
「君達も大したものだな。五体の従魔を苦も無く捌ききるとは」
 イザベラはゴーグルとマスクを外し、その表情を露わにする。二人とも、その顔に浮かべた笑みの向こうで、互いに探り合いを始めていた。
「ところで、ボクから良い機会なので一つ聞いておきたい事が」
「何だ」
「軍属として、いえ、一人の兵士として、その武器は何のため、誰のためにあると思ってますか?」
 キースは物差しを投げる。彼女の忠誠心、説得による平和的解決の可能性を探るために。イザベラは電子タバコを取り出しながら、淡々と応える。
「……民の為だが? それが――」
 ナイチンゲールがつかつかとイザベラへと踏み込んでいく。言葉を切った彼女は、その眼をナイチンゲールへ向けた。
「ふむ。君は、そうだな。あの時の……」
「どうも、大根役者です」
 ぺこりと頭を下げると、にこりともせずに口を開く。
「知っての通り腹芸は苦手なの。だから早速用件に移るよ。あなた達を“可能なら無力化しろ”って要請が来てる。意味わかるよね」
 イザベラは黙って煙を吐き出す。初めからそう言われると予期していたかのようだ。ナイチンゲールもまたそのふてぶてしい態度には動じなかった。彼女の目的も何となくは判っているつもりだった。
 だからこそ、止めなければならないと信じていた。
「ここ、まるであなた達みたい。いつか国中こうなるかもね。いいの? 止めなくて。血を流さずそれが出来るのはあなただけだよ、イザベラ」
 獅子と同じく、彼女も止まりはしないだろう。それでもナイチンゲールは請わずにいられなかった。
「投降して……お願い」
「投降。投降とは随分とまた……」
 彼女の背後に立っていた兵士達は、次々にマスクを被って臨戦態勢へと移る。その右手も、腰の拳銃にぴったりと触れていた。物陰で様子を窺っていた仙寿は、刀に手を掛けいつでも飛び出せるように腰を落とす。
(何事も無ければ、と思っていたが)
『(ちょっと……マズい感じかも)』
 一方の六花も、背後に潜めた魔導書に手を翳す。いざとなれば、いつでも氷槍を放てるように。
『(私達が動くのは、相手が動いてからよ。慎重にね)』
「(……うん)」
 一触即発。央は腕組みして様子を窺っていたが、ここで一歩前へ踏み出す。
「今すぐにとは言わん。お前達がH.O.P.E.殲滅の命令を受けているなら此方も相応に対応するが、今回はそうではないだろう。我々も可能なら、としかまだ言われていないからな」
 イザベラは央を一瞥する。いつでも動けるように踵を浮かせながらも、央はあくまで武器には手を伸ばさない。
「軍人として、命令外の行動を起こして隊から欠員が出た。というのはお前達も望むところではあるまい」
「……よくわかっているじゃないか」
 央をじっと見ていた兵士は、静かに銃から手を離す。彼らの士気の高さを目の当たりにした央は、眉根を寄せる。自分達の国を、財産を自らの手で護ろうというのなら、その意思には共感も出来た。だが。
「とはいえ……今は人間同士の内輪揉めで徒に戦力を消耗していい時期ではない筈だ。その事は良く考えろとは言っておく」
「そうだな。考えるだけ、考えておこう」
 イザベラは再び薄ら笑いで応える。飄々として、掴みどころがない。仙寿は刀を腰に差したまま、そろりと陰から踏み出し彼女の前に姿を見せる。
《単刀直入に尋ねるが。お前は一体何者だ?》
 仙寿は渋面のまま尋ねる。ラグナロクの事件から連綿と続く、因縁の終着点。彼は全てを知りたかった。イザベラは首を傾げたが、仙寿は構わずに言い放つ。
《分かっている。あの戦いの時、ハワード大佐に扮して戦場に立っていたのがお前だろう》
 仙寿の言葉に、僅かに彼女は眉を上げる。声が昂らないよう気を付けながら、仙寿は彼女へ静かに詰め寄っていく。
《人体実験を行い、RGWを開発し、愚神と関わり……全てを知った上で、それでも大義を掲げているのか》
「……The End justifies The Means」
 イザベラの呟きが聞こえる。伝える意志の無い言葉。あけびはなんとか訳した。
『(目的の達成は……手段を正当化する……?)』
 彼女の言葉の意味をあけびが考えているうちに、銃を肩に担いだままのバルタサールがふとイザベラに尋ねた。
「ハワード・クレイは既に故人……そうだろう?」
 その言葉にエージェントは様々な反応を見せる。しかし、兵士達は揃って押し黙っていた。沈黙を肯定と受け取ると、バルタサールはそのまま続ける。
「だがそれを知られてはならない。国が崩壊するからだ。だが今日はいつもと英雄が異なるようだな。……公表する事にしたのか?」
 鎌をかけるつもりだった。しかしイザベラはあっさりと白状を始める。
「大方その通りだ。まあ、ハワードはクーデターが完了する前に死んでいたがな」
 イザベラは共鳴を解く。総白髪の男が彼女の隣に現れると、彼は深い皺の刻まれた顔に笑みを浮かべて言葉を繋げる。
『保身に走って愚神と契約した政治屋に殺されたのさ。共鳴を解いた隙を突かれてな。……その時に娘であるイザベラが俺を受け継ぎ、クーデターを完遂した。それ以降は……俺が全てを仕切ってきたのさ』
 二人は再び共鳴する。その姿は、紛れも無く皆が知るハワード大佐のそれだった。
『こんな風にな』
『“軍事国家”リオ・ベルデに、ハワード大佐など最初から存在しなかった……という事か』
 改めて共鳴を解いた二人に、アークは押し殺した声で問いかける。ハワードの生存を偽ってでも、リオ・ベルデの全てを把握し成し遂げたい事が彼らにはある。アークは感じていた。
『ヘイシズは倒れアルター社も崩れた。その上でなお戦う、お前達の目指すものは何だ』
 アルター社やヘイシズに人体実験の罪を全て被せ、情状酌量を乞い世界に助けを求める道もあった。同じ為政者として、彼女も気付いていると確信していた。
『(……それを選ばないということは、何か為すべき事があるという事)』
 もう二度と、嘗ての彼のように、何かを守る為に自縄自縛となる者を生み出す事は彼の本意ではない。その状況に陥っていないか、せめてそれだけは知っておきたかった。
『我らにはもはや敵味方を見誤る猶予は残されていない。お前達の大義は何処にある』
 あの二の舞だけは防ぎたい。必死の形相をしていたアークだったが、イザベラは悠々と煙を吐き続けるだけだ。口元を歪めるアークに、イザベラは淡々と言い放つ。
「言いたい事がある奴は全部言え。聞くに、我々の答えは一言で済みそうだからな」
「(一言で……)」
 耿太郎は彼女の眼を見つめる。ふてぶてしい表情の向こうに、どこか諦めてしまったような、燻った暖炉のような輝きがある。耿太郎は何となく感じていた。
「(あの人とおんなじ気がするっす、この人も)」
 自分はまるでその側ではないと言わんばかり。仙寿もさらに一歩踏み出した。
《お前の言う国とは何だ。国土か。体制か。国民か》
 国を守る為に人間を犠牲にしているとすれば、手記の言葉が現実味を帯びてくる。しかしイザベラの憂いが無い表情を見ていると、どこかに信念も感じるのだ。
『(ダスティンの二の舞だけは御免だよ)』
 あけびの呟きに仙寿は頷くと、彼はイザベラへと切り出す。
《H.O.P.E.としてではなく、俺個人としてお前達を理解したい。何も分からず刃を取りたくはない。……お前の“憂慮”とは何だ? その行動は本当に国の為になるのか?》
「なるさ」
 一拍も置かず彼女は応えた。口調に一切の迷いがない。俯きがちで話を聞いていた杏樹は、思い切って面を上げる。
「ラグナロクに入った、ダスティンさん達は、助けられなかったの。ヘイシズさんとも、共に歩めなかった、です」
 リオ・ベルデを守る為、世界を敵に回す。それだけの覚悟を彼女は持っている。杏樹はそんな気がしていた。だからこそ、止まってほしいと思った。
「でも……まだ、可能性があるなら、杏樹は、イザベラさん達と、手を取り合いたいと、杏樹は願ってる、です」
 イザベラは肩を竦める。背後の部隊も仏頂面のままだ。それでも杏樹はめげずに訴えた。
「この世界と、リオ・ベルデの危機、繋がりがあるなら、知りたいの。杏樹は、世界とリオ・ベルデ、両方救いたい、です」
『繋がりか。考えるまでもあるまい。経済封鎖を受けていてもな、リオ・ベルデは紛れも無くこの世界の一部なのだよ』
 白髪の男は腰を曲げ、杏樹に目線を合わせて応える。その穏やかな表情を見ているうちに、夕はピンときた。
「……もしかして、貴方が“キスクのおじさん”?」
『そうだが?』
 夕はリオベルデの人々を助けた時の事を思い出す。キスクの名が出た途端に、彼らは安堵したような顔をしていた。それほど誰かを安心させられるような人が、いたずらに人を傷つけるとは思えなかった。
「貴方の事、市民は信頼してるみたいだった。……多分、皆の事守りたいんだよね?」
 夕はイザベラとキスクの顔を交互に見つめる。イザベラは電子タバコをケースに収めると、眉間に皺寄せ答える。
「そうだ。我が祖国だけではない。世界を、人類を救うために我々は“剣になる”と誓った」
「“剣になる”……」
 黙ってやり取りを聞き続けていた龍哉にも、徐々に話が見えてきた。固く腕組みをしたまま、じろりとイザベラを見据える。
「お前らもお前らなりに、あの王と決着を付けるつもりがあるって事か? 国に引きこもってRGWを開発し続けていたのも――」
「ユナイトシステムと呼んで貰おう。それこそがこれに本来与えられるべき名だ」
 イザベラは龍哉に右手の甲を突き出す。金属製のグローブに取り付けられた小型化されたRGWドライブが、歪な光を放っている。
「……それとやらを開発し続けたのも、愚神と戦う為の力を得るためだったってのか?」
「そもそもだ。君達は本当にアレに自らだけで勝てると思っているのか?」
 イザベラの眼光は猛禽のような鋭さを帯びた。戦意が剥き出しになっている。
「今はまだいい。だがそのうち愚神の軍勢は世界の全てを覆いつくすぞ。尽きぬ軍勢は“前線が伸び切る”という事を知らんからな。……だから我々も戦ってやろうというんだ。有難い事に君達は我々をヴィランだと認めたからな。我々はどんな誹りも最早気にする必要はないというわけだ」
「そっか。だから貴方達は……」
 ナイチンゲールは悟った。彼らが頑なに世界との繋がりを断ち切り、諸国から白眼視されながらも陰謀を巡らせ続けた理由を。イザベラはぎらついた眼のまま笑みを浮かべた。歯を剥き出しにして、彼女は堂々と言い放つ。
「痛快だな。いつ銃を向けられるかと怯える者達を尻目にして戦ってやるのは。マジシャンにでもなった気分だ」
『ピカレスクロマンでも気取るつもりか』
 アークもまた答えに辿り着いた。つまるところ、彼女達はザミエルに魂を売ったのだ。この世界を覆う“愚神”という名の脅威を討ち払う為に。
『……確かに、今しがたお前達が見せた力は、我々には比肩し得ない力かもしれない。だがそんな事をすればお前達はただで済まないだろう?』
「本望だよ。そうだろう?」
 イザベラは仲間を振り返る。武器を担いだ彼らの眼は、痛々しいほどに真っ直ぐだった。拳を固め、仙寿は声を絞り出す。
《……止めろ。只の特攻だろう、それは》
『そうだよ。それに、貴方達が死んだら、リオ・ベルデはどうするの』
「代わりならいるだろう。ニューヨーク支部にな」
 六花ははっとする。再起の時を窺い、暴徒としての誹りに黙って耐え続けている少女の横顔を、六花は思い出す。
「レジスタンス……フィオナさん……」
『……まさか、レジスタンスの発生も計算の内だったというの? 貴方達が居なくなった後の後釜を用意しておくために、その為に悪党を演じて……』
 アルヴィナが呆気に取られたように言う。無線を片手に取ったイザベラは、ふと神妙な笑みを浮かべた。
「彼らには悪い事をしたと思っている。だがあそこで倒れてやるわけにはいかなかった」
 無線のスイッチを押し、そのまま彼女は六花の鼻先を指差す。
「言ってくれるなよ。世界は知ってはならない。我々はリオ・ベルデを弄んだ悪党でなければならんのだ。彼らがやりやすくなるようにな」
 それだけ言うと、イザベラは踵を返した。部隊を引き連れ、僅かに光が差し込む吹き抜けを目指して歩き出す。ナイチンゲールは思わず叫んだ。
「ダメだよ、そんなの! 貴方達だって人間じゃない! そんな、命を投げ出すような真似――」
「我々の征く道を遮ろうというのなら」
 声を荒げてナイチンゲールの言葉を遮る。イザベラは部下達と共に振り返り、一斉にエージェント達へ向かってサムズダウンを突き出す。
「答えはこうだ。……覚えておけ」
 一瞬流れる静寂。彼らは再び背を向けると、今度こそ決然と歩き出した。吹き抜けから激しい風が吹き込み、数本のロープが降ってくる。
「友人が貴方達に伝言だそうです」
 キースはその背中を見つめたまま、独り言のように呟く。
「『ありがとう』、『やってる事は許されない。が、同時に感謝したい事もしてくれたから』だそうです。どういう事かはわかりませんけど」
「……そうか。私にも皆目見当がつかんな」
 イザベラは肩を竦めると、天井の穴から垂れてきたロープに掴まり、一瞬にして宙へと消えてしまった。

 取り残されたエージェントは、それぞれの思いを抱えたまま暫し立ち尽くしていた。

●存在意義
 ブリーフィングルームに戻ってきたエージェント達は、テレビに映るイザベラの姿を見つめていた。輸送機に乗った彼女は、全ての世界に向けて演説を行っている。アルヴィナはじっとそれを見上げ、小さく嘆息する。
『結局、彼女は祖国を救う為にあらゆる力を求めていた、という事なのね。全ての愚神に勝てるような力を』
 一般人にさえリンカーと対峙できる実力を与えるRGW。つまり、RGWが有れば一般人が愚神と対決できる戦力として計算できるという事でもある。
「……ん。六花と、あの人。……大事なものの為に戦ってるのは、一緒……だった」
 非道に手を染めた彼らを、六花は責める気になれなかった。父親が殺されたという彼女の痛み、愚神を滅せんとする彼女の闘志は理解できてしまうからである。
「……」
 彼女の演説を聞きながら、六花はただ沈思するのだった。

 イザベラは復讐を呼び掛けていた。愚神に希望を奪われ、絶望に堕ちてしまった者達へ向けて。その想いを掻き立てていた。仙寿に耿太郎、杏樹は曇った顔でそれを見上げている。
「……駄目だ。そんなの、認められるか」
 仙寿はテーブルを拳で殴る。廃墟で話し合うにつれ、演説を聞くにつれ、彼女達は愚神と共に心中しようとしている気がしてならなかった。
「何となく……あの人は俺達に物凄く期待してるんじゃないか、って気がするっす」
 耿太郎は俯く。どうしても、“彼ら”の姿を思い出さずにはいられない。
「あんな事を言っていても、自分達が“王”に勝てるとは、さらさら思ってない……そんな気がするっす」
 心の内を全て押し隠して、自分で勝手に解釈しろと言わんばかり。耿太郎は顔を歪める。
「ああいう目をする人は、いつもそうなんすよ」
『何とか……止められないのかな』
 あけびは仲間達を見渡すが、守は難しい顔をして首を振る。
『厳しい事になるぞ。止まれといって止まるような雰囲気じゃなかっただろう。……あれと力ずくでやり合ったら、それこそ共倒れになりかねない。俺達がその手段を取る訳には行かない事をわかってるから、向こうも強気なんだろう』
「……でも、じっと死んでいくところを、見るなんて、杏樹も、嫌、です」
 杏樹の言葉に、仙寿は深く頷く。
「あんな露悪を指くわえたまま眺めさせられるなんて、癪だろ」
『そうだな。彼女らの罪は、殉死ではない方法で償ってもらいたいところだ。……何か方法があればよいのだが』

 イザベラの演説は佳境へ入る。彼女は己を“GLAIVE”と名乗った。一体でも多く、ひたすら愚神を葬り続ける剣戟であると。央は眉根を寄せる。
「アジテーションですね。過激な言葉を並べて、不満を無理矢理喚起しようとしている」
「……だが効果はあると思うぜ。H.O.P.E.の中にだって、愚神に対して強い恨みを持っている奴は多いしな」
 そもそも、英雄との出会いは大抵が愚神やヴィランによって窮地へ追い込まれた瞬間に齎されることが大半だ。龍哉とヴァルトラウテの出会いもそうだった。
『それが戦う為の原動力となっている人もいますわ。脇目も振らず敵と戦い続けられるというなら、むしろ彼らに付く、というリンカーが出てきてもおかしくないかもしれませんわね』
 二人はただ修練の為に戦っているようなものだが、愚神に対して強い憎悪を抱く英雄や能力者は何人か心当たりがあった。目の前にいる英雄も、その一人だ。
「恨み、ですか」
 央はちらりとマイヤの横顔を窺う。過去には彼女の敵愾心に振り回されるような事もあった。今でも、マイヤは愚神従魔を“仇敵”と捉え、その胸に復讐心を抱えているには違いない。
 それでも、マイヤはふっと微笑み央の腕を取った。
『私は……央の全てを犠牲にしてまで、復讐したいとは思わないわ』

 イザベラはシートベルトを切って立ち上がり、カメラに向かって手を差し伸べる。夕は椅子に腰かけ、じっとその手を見つめていた。
「……あの人達は、これからどうなっちゃうのかな」
 彼らの言わんとするところも、彼らの意志も、よくわかった。これから彼らがどうなろうとしているのかさえも。キースは傍に腰掛けながら応えた。
「今の所、H.O.P.E.としては静観になるかもしれません。やっても、エージェントを何人か送って動向の監視をするくらいでしょうか」
『でも……悪い事はしてるんだよねぇ……』
 紙姫がぽつりと呟く。キースは曇った顔で頷く。
「それも事実ではありますが。彼らを制圧するのは困難ですし、愚神勢力が拡大を続けている今、彼らの戦力が欲しいのも事実です」
「今の所、か……なんだか、このままみんな死んじゃいそう、だけど」
「そうなる前に、解決策を見つけたいところですがね」
 夕はキースの言葉を聞きながら、静かに俯いた。頑張らないといけない。そんな気持ちだけは、靄が掛かった心の中に有った。
「(でも……何を?)」

『命を投げ出すような真似、か』
 墓場鳥はナイチンゲールの傍らで呟く。
『よく言ったものだな』
 ナイチンゲールはバツの悪そうな顔をする。何かと危険に身を晒そうとする自分の性質は、自分自身よくわかっていた。
「……でも、黙ってあの人達を放っておくわけにはいかないでしょ。あの人達は、百パーセント死ぬつもりだから。あんなスキルを連発して、絶対無事じゃすまない」
 決然とした顔で、ナイチンゲールはテレビを見つめていた。オルリアもアセビも、ヘイシズ達も死んでいった。その死を越えた彼女は、独りイザベラへ問いかける。
「まだ……貴方は間に合うでしょう?」

 ハッチが開き、暗闇に光が差し込む。イザベラはマスクを被ると、そのまま戦場へ向かって飛び出していった。それを見届けた紫苑は、いつものように薄ら笑みを浮かべた。
『恨みか。復讐か。……面白いね。そんな気持ち、僕はもうすっかり忘れちゃったから』
 隣でバルタサールは窓の外を見つめ、ただ黙々としていた。窓ガラスに映り込むその眼からは、やはり何を思っているのか窺い知ることは出来なかった。

 突如現れた第三勢力、GLAIVE。H.O.P.E.が何の為に存在しているのか、その意義を今まさに問われようとしていた。

●Operations: GLAIVE
 ごきげんよう。私はリオベルデの特殊部隊であった者だ。私は今から、ある者に問いかけようと思う。
 ある者よ。君は、大切なものを愚神によって奪われた事がある筈だ。それは家族かもしれない。生業かもしれない。住処かもしれない。何より、希望そのものかもしれないな。
 私も知っている。その抜け殻となってしまったような感覚を。灯を失い、一寸先も見えぬ闇の中で彷徨う感覚を。今は立ち上がっているかもしれないが、それは光を見つけたからではない。暗闇に慣れてしまったからだ。
 ある者にさらに問う。君は希望を守る為に戦えるか。他者の幸福を守る盾となれるか? 愚神一体を見逃さなければ人が五人死ぬという時、君は迷わず五人救う道を選べるか? 暗闇の中で育てた憎悪という名の怪物と共に、五人の命を贄に捧げて一体の愚神を殺したいと思わないか?
 さあ、愚神へ復讐を遂げたい者よ。今すぐ立ち上がり、我々の下へと集え。我らはGLAIVE。地獄へと行進しながら、一体でも多くの愚神を葬らんとする一振りの剣戟だ! 我らの方針は見敵必殺ただ一つ。省みる祖国も民も無い! 目の前の敵を討つのみだ! その為の力も、我々は用意している!

 さあ“ある者”よ、来るんだ。我々は君達の“絶望”を歓迎する。



 To be continued…

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 藤の華
    泉 杏樹aa0045
    人間|18才|女性|生命
  • Black coat
    榊 守aa0045hero001
    英雄|38才|男性|バト
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • エージェント
    十影夕aa0890
    機械|19才|男性|命中



  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 天秤を司る者
    キース=ロロッカaa3593
    人間|21才|男性|回避
  • ありのままで
    匂坂 紙姫aa3593hero001
    英雄|13才|女性|ジャ
  • Trifolium
    バルタサール・デル・レイaa4199
    人間|48才|男性|攻撃
  • Aster
    紫苑aa4199hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • かわたれどきから共に居て
    日暮仙寿aa4519
    人間|18才|男性|回避
  • たそがれどきにも離れない
    不知火あけびaa4519hero001
    英雄|20才|女性|シャド
  • 希望の格率
    君島 耿太郎aa4682
    人間|17才|男性|防御
  • 革命の意志
    アークトゥルスaa4682hero001
    英雄|22才|男性|ブレ
  • 明日に希望を
    ナイチンゲールaa4840
    機械|20才|女性|攻撃
  • 【能】となる者
    墓場鳥aa4840hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969
    獣人|11才|女性|攻撃
  • シベリアの女神
    アルヴィナ・ヴェラスネーシュカaa4969hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
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