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お願い! スーパー七夕様!
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/07/14 00:49:50
オープニング
「さーさーのーはー」
ふんふんと機嫌良さそうに鼻歌を歌いながら、リンが笹飾りを作っている。
「おや、愛情節ですかぁ~」
姜が間延びした声でリンに問い掛ける。
ぴん、と立った猫耳を得意げにぴこぴこさせて、リンは鉢巻きを締めた。
「そうで御座います。まさに戦場……恋人達の戦場……嗚呼、私は恋人達の為に心を尽くして一年に一回の逢瀬を応援する覚悟!」
「ああ~。牽牛と織女が会う日ですからねぇ~。ですが、一応手先が器用になる為のぉ~」
「だまらっしゃい! 恋人達の為の、お祭りなので御座います!」
「はぁ~い」
笹飾りを飾って、リンは満足そうに眺めている。そのポケットからひらり、と落ちる紙切れを姜が拾って眺めた。
「……スーパーの七夕セールですかぁ?」
「う、べ、ベツニワイロヲモラッタリシテオリマセンヨ?」
「はあ~。ふ~ん」
こしこし、と頬を擦って、誤魔化すリン。
姜の持っているチラシには、スーパーの大特価セールが大々的に載っていた。
『恋人も! 子供も! 大人も! 皆大好き! 赤字覚悟の大特売!』
リンは笹飾りを持って、そそ、とその場を去ろうとする。
「リン殿、その飾りはスーパーに置くんですぅ?」
「ふ、ふふ……慈善事業で御座いますよ……なんか文句あるかコラァ!」
突然ぶち切れるリン。どうやらスーパーから大分(厚意と言う名の賄賂を)貰ったらしい。
「恋人だろうがなんだろうが来いよ! 米も惣菜もお菓子も大セールだぜ!」
「はあ~。リン殿は何をしているんですかぁ~」
「俺は金が貰えて、皆は安く物が買えて、恋人達はハッピーだろうが! ぜーんぶ丸く収まるんだよ!」
その、リンが貰っている額が聞きたくなった姜だったが、気にしないで流した。そう言えば、リンが夏のスーツを新調していた事を思い出したからだ。
「あ、でさぁ。織姫と彦星の格好したエージェントがバイトしてくれないか、頼もうかって思ってるんだよ。何組かいると更に良いし。姜、交渉を頑張ってくれな」
「ええ~……」
大人も子供も、恋人達も。ついでに無関係なエージェントも。
皆、多分楽しみ、七夕セール。
解説
某所の大型スーパーの七夕大セールです。
大体のものは揃い、イートインスペースもある綺麗な店舗です。
エージェントの皆さんは、バイトをして下さい(ただしバイト代はリンの懐に入る)。
レジ打ちや品出しをして働くも良し。
織姫と彦星の格好をして宣伝するも良し。
お客様の子供達と笹飾りの飾りつけをするも良し。
ちゃっかり買ったものでイートインスペースでサボるも良し。
セールのお勧めは、この夏大活躍間違いなしの夏の星空の柄の浴衣です。
他にも七夕限定ケーキやアイス等のスイーツやジュースもお勧めです。
リンは売れ残りの商品を格安で貰えるように交渉しています。
なので、バイト中に姜から飲み物や食べ物の差し入れがあるでしょう。
沢山売れたら、機嫌の良いリンから多少のお礼が出るかもしれません。
最後は皆で笹飾りに短冊を吊るして願い事をしましょう。願い事が叶うかもしれません。
リプレイ
●集合
スーパーの裏側。開店準備に追われる店員に混じって、エージェント達が集まってそれぞれの役割を確認していた。
「くくく……予定通りにエージェントが集まっていますね……」
ほくそ笑むリンに、はあ、と溜め息を吐く姜。
「怒られますよぉ~? リン殿。お給料を自分の懐に全部入れたら~」
「私とて鬼ではありません。頑張ってくれましたら些少のお礼を出す予定です」
「些少……ですかぁ~」
『あ。これ出ないんじゃないかな』
と姜が思った事は内緒。
荒木 拓海(aa1049)とメリッサ インガルズ(aa1049hero001)は、従魔騒ぎで傾いたスーパーのボランティアと聞き参加していた。
「聞いた話の割りに活発な店だな」
拓海が店員と店を見て、不思議そうに首を傾げる。
「地域密着型店舗で、お客が応援……ん、確かにイメージと違うわね?」
メリッサも聞いていた情報と違い、困惑しているようだ。
九重院 麗羽(aa5664)と烏丸(aa5664hero001)は張り切っていた。エージェントになってからの初仕事だからだ。
とは言え、九重院には不満があるらしい。本人は従魔や愚神と戦う仕事を希望していたが、資金が足りない。久重院財閥の令嬢だが、実家からの援助は拒んでいる為、武器や防具の強化が出来ず、資金繰りに苦労していた。その為に烏丸が探してきた仕事なのだが……。
「もっと責任のある仕事を任せてくれないの? 私の初仕事なのに随分な対応なのね?」
アルバイトなのに高飛車に振る舞った故に、面倒だと判断されて当たり障りのない仕事を任されてしまった。
「エージェントになって、すぐに出来る仕事なのだから、もう少し愛想良くしなさいな」
烏丸も苦笑いしてフォローに回るつもりでいる。
セールに釣られて来たエージェントもいる。
白市 凍土(aa1725)は家計簿と睨めっこする主夫思考の少年。英雄のシエロ シュネー(aa1725hero001)と話しながらそわついていた。
「バイト……バイトする方かぁ。隣町のスーパーに行った方が良かったかな」
「トウ君トウ君! ささのは―サラサラだよ!」
「セール品が残ると良いな……よし、働くぞ」
ただで夕食が手に入るとなれば、働く気力も湧くらしい。
「今夜のご飯はハンバーグかな!」
シエロは暢気にそうはしゃいでいる。
炉威(aa0996)とエレナ(aa0996hero002)はリリィ(aa4924)に誘われて参加したらしい。バイトや笹飾り、と言った珍しい依頼に惹かれ、エレナを誘った(序でに)炉威を誘ったと言った所か。
「エレナさまっ! 炉威さまも! 来て下さって嬉しいですの」
「リリィお久し振りですわ」
リリィがほわほわと笑顔で挨拶をするのに応えるエレナ。その隣でカノン(aa4924hero001)がクールに会釈をする。
「炉威、エレナ。ごきげんよう。お久し振り、ね。まさか王子様が来る、とは思っていなかったけれど」
くすりと笑うカノンに、炉威が飄々と返す。
「やあ、久し振りだね。可愛い姫2人の為なら何処へでも……ってトコだよ」
「確かにリリィの様な可愛らしい姫ならば、わたくしも会えるのは嬉しいですわ」
エレナが微笑むが、どす黒い感情が背後にある事は、炉威は察していた。
「お前さんの考えている事はいい加減分かって来たが、その執念深さは凄いね」
にっこりと微笑んで逸らすエレナは、カノンの始末を目論んでいた。
『まあ……あの女の始末はいつでも出来ますし、今は炉威様と可愛いリリィとの一緒の時間を悦びますわ』
そんな思惑が絡んでいるスーパーのアルバイト。既に戦場と化している。
「ほらほら、皆様。開店ですよ」
リンがにこやかに腕時計を指差す。スーパーの開店時間だった。
「皆様、元気に、いらっしゃいませー! で御座います」
●スーパーの表側
凍土は彦星、シエロは織姫の衣装を着用して宣伝を兼ねて品出しをしようとしていた。
「ひらひらーって面白いね!」
織姫の衣装を着たシエロがはしゃいでいる。中性的な見た目に衣装は違和感がない。
「ちょっと動き辛いけど……品出しとかなら問題ないな」
凍土も彦星の格好に問題なさそうに動きを確かめていた。
「よーし! イッパイ売ろうね!」
「気になるモノがあっても遠くに行くなよ。あと今日のご飯はハヤシライスだ」
「トウ君たいちょーラジャーであります! 昨日がんばってた奴だね!」
凍土は品出し前に広告チラシを確認して、目玉商品以外に他の消耗品や食料品の方が品薄になりやすいとチェックをしていた。値札はメモ用紙に2色ボールペンの赤と黒を使って大きくポップを書いて添えている。値段が分かりやすいように、とでかでかと書き込んでいるカラフルなポップは客の目を惹く。
タイムセールに呼び込みをするのも忘れない。今日のタイムセールは卵。
「惣菜の揚げ物で卵とじとかどうですかー!」
卵とじ、好きらしい。
限定ケーキは直ぐに無くなりそうだと見込んで、通常のアイスやスイーツを特に推して行くスタイル。
「食後のデザートにどうですかー?」
「浴衣売り場はこっちですー。限定スイーツもありますよー」
凍土の隣でエクトル(aa4625hero001)が浴衣姿で客引きをしていた。
連れ出した夜城 黒塚(aa4625)が裏方に回ったのにぶーぶー言いながらも、接客を頑張ろうと頑張っていた。此方は特に勧めているのは売れ筋の夏の星空の柄の浴衣の浴衣。
流行のヒーローのお面を頭の横に飾ってみたりして、子供の目を引きやすくしている。浴衣は大人も買うだろうが、お祭りに行く小さい子供をターゲットにしての事だ。子供は成長も早いから、新しいのを探しに来る人も多いと見越しての事。
実際に親子連れが子供の浴衣を買いに来る事が多い。
因みにエクトルは見た目が幼いので、事前にリンに『あるばいと』と手書きで書かれたワッペンを持っている。迷子と間違われないように、との案だったが、微妙にコレジャナイ感が溢れてる辺りがリンの適当な仕事。
「笹飾りも一緒にやろーっ。あっちあっち」
同年代の子供に混じって、にこにこと客と立ち話を始めているのを見て、裏方の黒塚が窘めていたりもした一幕も。
「じゃ、まあバイトを満喫すると良いよ。俺はサボらせて貰うがね」
エレナ達を送り出した炉威は普段着。堂々とサボる宣言をして、カノンと話していた。
「カノンは如何するのかね?」
「あたしは客引きをするわ。炉威も手伝いなさい」
サボる気満々だった炉威が苦笑いして、自分には似合わないと客引きを始める。
「カワイイ感じなら、俺はコレを推すかね。他だと……」
始めてみると、案外客引きを確りとしている。ただし女性(16歳以上)にしか声を掛けていないは気の所為では……ないだろう。
「1年に1度の大セール、かもしれないわ。皆、ゆっくり見て行って。買い逃さないでね」
カノンは織姫の格好をしている。その姿で歌を歌うことで客引きを促進し、はんなりした動きで呼込む。
「へぇ……歌か。見目の良さに声の良さとあれば、確かに客引きには良いカンジだね」
「ね、炉威? 誕生日、珈琲だけじゃなかったのよ? 聴こえなかったかもしれないけれど…こうして、ね」
炉威に囁きつつ、緩やかに歌い始め、道行く人の足を止めるカノン。
「珈琲と歌か。悪くない誕生日だよ。ま、そのうちもっとイイ事を貰いたいもんだがね」
●品出しも裏方も大事
黒塚は品出しや裏方で働いていた。エクトルに連れ出されたが、自分の外見が近寄りがたいのを気にして、客が怖がると思っての事だった。エクトルに浴衣を着ようと誘われたが、自分が着ても極道に見えるとしか思えない。
一応、身嗜みは接客業らしく、オールバックの前髪は下ろして、サングラスはスクエアフレームの普通の眼鏡に変えて、多少人に与える印象は柔らかくしてある。
商品を並べたり整理する序で、エクトルがはしゃいでいたり一か所に長く留まっていると、真面目に働くように小声で注意しに行く。
「ちゃんと周り見て仕事しろ。店は店員の駄弁り場じゃねえぞ」
注意だけでは無く、人手が必要な場所を確認しながら、エクトルに教えて誘導している。
御神 恭也(aa0127)は店の品出しやレジ打ちを手伝っていた。特にレジ打ちは忙しいので、無口ながらもきっちりと仕事をこなす御神は重宝されていた。
レジ打ちから品出しに代わると、特価セールになっているものをチェックして、購入しようとメモをしている。伊邪那美(aa0127hero001)に少々呆れられた感じでくすくす笑われる。
「みみっちいって言うか所帯じみてるって言うか……」
「バイト代は出ないんだ。これ位の役得があっても良いんじゃないか?」
特価の卵や他のセール品をメモしたものを伊邪那美に渡しつつ、御神が伝達する。
「それと、売り切れになりそうな時は連絡するから買っておいてくれ」
メモを受け取りながら、伊邪那美が不満そうに口を尖らせる。
「少し抜けて、自分で買いに行ってよ」
「仕事中に下らん私用で抜ける訳にはいかんだろ」
「変な所で真面目なんだから~」
伊邪那美が文句を言いつつも、確りとメモが渡ったのを見て、御神は満足そうにバイトに戻る。
御神がバックヤードの拓海に声を掛けつつ、品出しのチェックを行っている。
拓海は荷下ろしや各売り場への商品の分配、個人宅への配達サービスと言った、地味ながら大事な裏方を買って出ていた。「頑張るって大事だね」と言われる拓海らしい仕事と言える。
「ダンボールの山だ……こりゃ大変だなぁ」
手馴れた様子で商品を出し終った箱を畳み重ねて、一息吐く間もなく、次の配達に向かう。
「オレが行きます、この地域なら納車で何時も走ってますから任せて下さい」
エージェント業の合間に働いている仕事と趣味とを活かし、車の抜け道・裏道・農道・河川道路と駆使し短時間で個人宅へ配送。
戻ってくると、品出しやレジ打ちで商品の流れを把握している御神と連動して、商品の展示スペースの配置替えを提案する。
メリッサは商品棚への陳列と接客を担当していた。
「お求めの品はこちらで宜しいですか? では少々お待ち下さい、数を揃えて参ります」
ぱたぱたと混雑の邪魔にならない程度に歩き回る。
「九重院さーん、この品は何番通路に並べますか?」
次々と来る仕事を溜めず進めるメリッサ。
「ええと、ちょっと待って頂戴」
九重院が笑顔で品出しと商品整理をする、と言う当たり障りのない仕事に回されていた為、陳列棚の場所を確認してメリッサに指示を出す。
もっと上の仕事が良いと言っていたのだが、結局文句を言い過ぎたらしい。ただ、責任者に面と向かって文句を言ったので、今の仕事はきっちりと思考を切り替えてこなしている。
品出しの最中に客に商品のことを聞かれたり、売り場の案内を頼まれれば、笑顔で対応していた。育ちが良いだけあって、礼儀は確りとしている。愛想はいまいちで笑顔が引き攣っている気がしなくもないが。
九重院が家柄的に子供を相手する事に慣れていない事もあり、走り回る子供にどう対応して良いのか迷っていると、メリッサが優しく対応してくれる。九重院は苦戦しながらも、子供に好かれようと頑張っている。ただし、悪い子には怖い。
●笹の葉さらさら
伊邪那美は売り上げと宣伝を兼ねて、夏の星空の浴衣を着用して、笹飾りの飾りつけを手伝っていた。
「やっぱり、浴衣は涼しくて良いね~」
リリィとエレナも色違いのお揃いの浴衣姿で笹飾りの飾りつけをしていた。
「でも……年に1度の恋人の逢瀬の日にお願い事をするとなんで叶うのかな? 恭也は知らないって言うし、誰か知ってる人はいるかな?」
伊邪那美がちら、と隣のリリィとエレナに声を掛けようか迷っていると、二人が丁度、その話について話題を出しているのが聴こえて来た。
「エレナさまは……七夕、をご存知でして?」
「ええ。勿論。織姫と彦星のお話の事ですわね」
「素敵なお話がある、と聞きましたわ。でも……同時に哀しいお話である、とも」
「そうですわね。わたくしが織姫ならば、彦星は炉威様」
「エレナさまはどうお思いになりまして?」
「言うまでもなく、何時でも駆けつけますわ。1年に1回だなんて待っていられませんもの」
当たり前のように言うエレナに、リリィは思う所があるのか、少し黙り込んだ。
「それが駄目なら、炉威様という永遠をわたくしが与え、全てわたくしのモノにしますわ」
「あの、七夕はなんで願い事が叶うのか知ってる?」
二人は首を傾げた。リリィに至っては、短冊の存在を知らなかったらしい。
シエロが織姫の格好をして、笹飾りに近付いてくる。した事がないからしてみよう!精神。
途中で迷子になった子供を見付けて、一緒に笹飾りを作って待とうと誘い、烏丸に迷子のお知らせをお願いすると笹飾りを作り出す。
「すっごい目立つ飾り作ろう!」
色々な飾りが見られて、シエロはご満悦らしい。
烏丸は迷子の知らせを聞くと、インフォメーションに保護者の呼び出しを頼み、七夕飾りを楽しんでいる子供達を見守っている。願い事の書き方を教えたり、願い事が決まらない子には、今一番のお願い事は何かな?と助け船を出している。子供の家族にも是非思い出作りにお子様と一緒にどうぞ、と心配りを欠かさない。
時折、九重院の様子を見に行って、はらはらしつつも彼女の仕事と任せて助言をするに留める。プライベートでも接客業だからか、クールながら気配り上手なお姉さん、と言った立ち位置。
●差し入れ&休憩のお時間
「はい~。お疲れ様ですぅ~。差し入れですよぉ。熱中症には気を付けて下さいね~」
姜が仕事中も小まめに飲み物を配って歩いていたが、入れ替わりに休憩するエージェント達に差し入れにお弁当やお惣菜、スイーツ等をせっせと運んでいた。
黒塚が差し入れの中から、エクトルの好きなチョコミント系や果物系のスイーツを取っておいてくれ、と頼むと、姜が「エクトル様」とメモを書いて休憩所の冷蔵庫に入れておく。
「お前にしちゃ上出来だ」
と、休憩が一緒になった黒塚がエクトルの頭をわしゃわしゃと撫でて褒めてやると、疲れも吹っ飛ぶ位に喜んで頑張ると売り場に戻って行く。
二人同時に昼休憩となった拓海とメリッサがお弁当を食べながら雑談をしていた。
「お疲れさま。ねぇ、とっても素敵な浴衣があったの」
「リサもお疲れ、気に入ったなら売り上げ協力も兼ねて買って帰ろうか?」
メリッサは可愛い服が大好きで、浴衣も大好きなので、買ってくれると言われて張り切って頑張る気力が湧いてくる。休憩所で他のパートのお姉さま方とも仲良くなり、話しを聞いていると、最初の依頼の内容と違う事に気が付いた。
「? ……特に従魔騒ぎは起きてないですか?」
拓海も意気投合した店員達から色々聞いた事を話して、首を捻る。
「……うーん……どう言う経緯でHOPEにこの仕事が?」
仕事の合間に本部へ依頼かどうかを含め確認してみると言って、拓海は休憩所を立ち去って行った。
休憩後、直ぐに判明した依頼の内容をメリッサへメールする。どうやら、リンが私腹を肥やしているらしいとかなんとか。
「直接リンさんへ問い合わせ物件だな……」(送信)
「言われてみると……お手伝いは頼まれたけど、従魔云々は日頃の流れで思い込んだかも」(返信)
リンへの疑惑が湧くが仕事を途中放棄せず、最後まで働き続けようと頑張る二人だった。
炉威とカノンが休憩所で珈琲を飲んで話している。
「また炉威と一緒に珈琲を飲めるなんて思っても無かったわ。贅沢な贈り物をくれるわね、織姫と彦星は」
ふふ、と妖艶に笑うカノンに、炉威が肩を竦める。
「1年に1度か。俺なら願い下げだねぇ」
「1年に1度しかない逢瀬……か……他人まで幸せにするほどに幸せな出来事みたい、ね」
「それだけ価値ある何かには……出会う事すら無いだろうがね」
「あたしは1年、手をこまねいて待っている。そんな殊勝な心掛け、出来ないけれど」
くすくすと笑うカノンと、飄々とした炉威の言葉のやり取りは、戯れ以上でも以下でもない。今は、まだ。
●短冊に願いを
最後の客が居なくなった閉店後。
「お疲れ様で御座いました! 皆様のお陰で……」
リンが口上を述べようとした所、メリッサが言葉を遮る。
「ねぇ……今日の日当はどちらに?」
にっこりと笑ったメリッサの言葉に、ぴゅーと口笛を吹いて誤魔化そうとしたリン。
拓海がリサに相槌しながら逆さ蒲鉾の目……で対応しようとしたが、直ぐに噴出す。
「すっかり乗せられちゃったよ、やるなぁ」
軽快に笑い、普段と違う経験が出来たし、沢山話しも聞けて楽しかった、差し入れ美味しかったご馳走様と伝えられ、リンが、あー、と視線を彷徨わせる。
「一応、少々では御座いますが、バイト代を用意致しましたのでお収め下さい」
リンが辞儀をして、エージェントそれぞれに少しばかりの金額が入った封筒を差し出す。皆がバイトを頑張ってくれたお陰で追加ボーナスが出てしまって、流石のリンもタダ働きで済ませられない事態になってしまったらしい。
「あと、これはぁ。お礼と言いますかぁ~。お土産と言いますかぁ~。売れ残りのお惣菜と、スイーツと、浴衣ですぅ~。お店が無料でくれるそうでぇ~。頑張った皆様にぃ、と~」
各自、取り置きしていた商品以外に、限定ケーキや夏の星空の柄の浴衣が包まれて渡された。
「皆様、最後に短冊に願いを書いて、笹に吊るして終わりましょう」
「ええ~。短冊と言うものはそもそも中国では五色の糸で~。技芸の上達を、特にお針事のぉ」
「長くなるので姜様の話は割愛。さあさあ、皆様どうぞ」
各々、願い事を書いて吊るしていく。
御神は「無病息災」、伊邪那美は「おこずかいUP」。「偶には自分のお願い事をしてみたら?」と伊邪那美に言われても、御神は「思い付くものがなくてな。それよりもお前の方は我欲満載だな……」とやり取りをしている。
エレナは「わたくし自身だけの願いなど、自分で捕まえますわ」と、リリィの願いが叶うようにと。
メリッサは「新作浴衣一式が欲しい」と吊るすつもりが貰ってしまったので「来年も」と付け足し、拓海は「確認をする癖を身に付けれます様に……」と今回の教訓を身に染みて感じて。
凍土は「健康第一」、シエロは「素敵な物が見れますように」。
黒塚は「稼ぎのいい仕事が来るように」と書いてエクトルにもっと夢があるのにしなよ、と言われた。エクトル自身は「クロやお友達ともっといっぱい仲良くできますように」。
リリィは「皆にキラキラの幸せが沢山降ってきますように」。
九重院は、七夕は自分に余り関係がないものと思っていたので、願い事を考えるのにうんうん唸っていた。
そんな願い事はきっと、叶うものではなく叶えるもの。
結果
シナリオ成功度 | 大成功 |
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