本部

【愚神狂宴】連動シナリオ

【狂宴】咲き乱れた花は統べる女王となった

紅玉

形態
イベント
難易度
不明
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
24人 / 1~25人
英雄
23人 / 0~25人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2018/08/31 23:43

掲示板

オープニング

●清き少女の魂を呼び起こす
「さぁ、貴女達はお行きなさい」
 と、花を統べる女王アルノルディイ(az0116)が言うと、周囲に居た妹達は名残惜しそうにその場から去った。
「アルノルディイ、此処は苦しくないの? 痛くないの? 悲しくないの?」
 植物で作られた少女が、母親にすがる幼子の様に問う。
「そうですわ。でも、初雪……此処に平和を脅かす人達が来ますわ」
「やだ。ゆき、その人たちをたおすから……アルノルディイ、おねがい」
 母親の様に接するアルノルディイに、初雪と呼ばれた少女は必死で言った。
 本来ならただの植物、だがアルノルディイのドロプゾーン内部ではその弱点を補うように、人と似た植物の細胞で出来ている為に内臓等の器官は無いが見た目は本物の人間と見間違う程だ。
「お友達……いいえ、姉妹達と此処を守れば良いのですわ」
 アルノルディイが初雪に、他の少女達を指しながら笑顔で言った。
 明らかに、人間とは言い難い部分を持つ少女も居たが、初雪はアルノルディイの言葉を信じて『うん!』と、元気よく返事をすると少女達の元へ駆け寄った。
「……ベーゼル」
「なんでございましょう? 女王」
 アルノルディイが名を呼ぶと、ポッと巨大なハエの霊体が羽を震わせた。
「貴方の力をお借りしてもよろしいかしら?」
「ええ、女王自身の力を取り戻した今なら幾らでも我が力をお振るい下さい」
 ベーゼルブブが頭を垂れると、アルノルディイは根っこの部分にある口から、ハーッと息を上げると中から無数の大きなハエが大きな羽音を立てながら飛び出した。
「いやー、沢山の魂をご馳走さまです」
 と、涎を啜る音と共にベーゼルブブが嬉しそうに言った。
「プロバンス地方にある小さな村ごと飲み込むとはー。小さかった頃が懐かしいですね」
「大きくなりすぎて、見つからなかったのが奇跡というモノですわね。さぁ、ベーゼルは特等席で見てて下さいませ……これから、花畑が戦場になる様を……」
 ドロプゾーンの境目に築かれる植物の壁、それはエージェントを拒む為なのか?

 それとも……

●H.O.P.E.ロンドン支部
「さて、とうとうアルノルディイの居城が分かったよ。場所はフランスのレ・ボー=ド=プロヴァンスという小さな町」
 圓 冥人(az0039)が、花を統べる女王の討伐に集まったアナタ達を見つめた。
「アルノルディイのドロプゾーンの境目には、植物で出来た壁が遮っているね。村ごと飲み込むほどまでに力を蓄えたのか……それとも、誰かが手を引いているのかは分からない。先日には、月下美人に似た夏君と名乗る愚神が造られた……どういう事なのかは、俺にもさっぱり分からないけど」
 と、言い終えると冥人は、息を吐いた。
「今まで他の愚神との戦いに勝ち抜いた皆だ、負けるとは思ってないからね。全力で花を統べる女王アルノルディイを倒そう」
 静かに言うと、冥人は眼帯を外して紅玉の様に紅い瞳でアナタ達を見つめた。

解説

【目標】
アルノルディイの討伐

【場所】
フランスのレ・ボー=ド=プロヴァンス(昼)
本当に小さな町なので、ドロプゾーンは半径2kmしかありません。
岩や古城もありますが、全て植物と花に侵食されております。

【一般人】
全員殺されておりますので居ません。

【敵】
《花を統べる女王》アルノルディイ
トリヌブ級
・ステータス
 物攻E 物防B 魔攻S 魔防A 命中A 回避C 移動C 生命A 抵抗A INTC
・スキル
『花を統べる女王』
 ドロプゾーン内部の植物、花を自由自在に操れます。
『夢現』
 常にドロプゾーン内部で発生している霧で、低確率でBSが付与されます。
 ただし、女王から直接吐かれた霧のみ確実にBSが付与されます。
※BSの内容はランダムとなります
他のスキルは未だに不明
・武装
『アスフォデルスの槍』
 アスフォデルスの花弁で出来た1m程の長さの槍。投擲用。

愚神『初雪』
10歳位の少女
水・氷の魔法を操る(ソフィスビショップ 相当の能力)

愚神『鈴音』
14歳位の少女
刀の使い手(ドレッドノート相当の能力)

愚神『久世』
15歳位の少女
盾の使い手(バトルメディック相当の能力)

愚神『アヤメ』
12歳位の少女
槍の名手(バトルメディック相当の能力)

愚神『サンドリオン』
16歳位の少女
下半身と頭の角が山羊の様だが、服に隠れてて分からない。
銃撃戦になれている(ジャックポット相当の能力)

愚神『ゼルエル』
10歳位の少女
赤黒い翼の背負い、顔に逆さ黒い十字架が描かれた白い布で隠している
理性のあるバーサーカー(カオティックブレイド相当の能力)
※全員デグリオ級

従魔『偽ベーゼルブブ』
ミーレス級
全長2m程の大きなハエ型の従魔で、毒を体内や体の表面にも保持しているので、近接攻撃する場合は注意が必要

【NPC】
愚神化した少女を任せる事が可能ですが、難易度相応になる代償に冥人の生死は不明となります
※5人でも戦う方が居たら大丈夫ですが、危険なのは変わりません

リプレイ

●女王の庭園へ
 フランスのレ・ボー=ド=プロヴァンスは、約300人程の住民しか居ない小さな町であった。
 そんな小さな町を食い尽くすかの様に、ドロップゾーンが展開されておりエージェント達の前にツルで出来た壁が立ちはだかった。
 城の大きなドアの様に形を変えると、地響きと共にツルのドアが開いた。
 大半のエージェント達は訝しげな表情でドロップゾーン内部に視線を向けた。
 資料の写真で見た風景より更に新緑に覆われ、四季折々の花が咲き乱れて庭園に迷いこんだかのように錯覚する程だ。
 すると、耳障りな羽音が響くと巨大なハエが6本の足を擦り合わせながら、エージェント達の前に立ちはだかる。
『気を付けても死ぬことはあるでしょうけど……誰かの為には死なないでくださいね? 人間、背負える命は一個限りなのですから』
 構築の魔女(aa0281hero001)が絹の様な髪を靡かせて振り向くと、ルビーの様な赤い瞳で見つめると圓 冥人(az0039)に笑みを向けながら言った。
「皆が命を張っているのに、俺だけ何もしないのは、ね?」
 と、冥人が答えると辺是 落児(aa0281)が小さく首を振り、皆より後ろの方へと押した。
「大丈夫やて、うちらがついとる」
 翡翠の様な瞳を細めながら弥刀 一二三(aa1048)は、ガシッと冥人の肩に手を置いて落児に言う。
『だから、構築の魔女殿は心配せずに戦ってこい』
 白銀の雪の如く美しい髪を揺らし、瞳の奥には強い闘志が見えるキリル ブラックモア(aa1048hero001)の言葉に、構築の魔女は頷くとツルの壁沿いに歩き出す。
「そないいえば、聞きたい事があるちゅうわけやが」
 一二三が冥人に視線を向けた。
「能力使用時に浮かぶ模様が弱点は変われへんか?」
「基本はね……しかし、女王に関しては最も知っているのは姉妹と、真田豪雪自身とその子供達だろうね」
 一二三の問いに冥人が少し不安そうに答える。
「そないと、奪われた太刀はどうなったんどす? オーパーツとか何か関係はあらへん?」
「太刀はその場で椿姫は倒されたので、俺の手に戻ってるよ。……オーパーツ、オーパーツ……以前アルノルデイィが置いたモノは、研究者から『多少違うがコチラのモノとは変わらない』と聞いたよ。もっと詳しく聞くならロンドン支部の研究者に聞くと良いよ」
 冥人が答える隣で一二三は、資料に目を通しながら少し考え込んだ。
「あと、何や執拗に冥人はんのライヴス狙うとる気いしますな……」
『しかも妹御に似せ、態と怒りを煽っている感が否めんな』
 キリルが一二三の横から端末に写る姉妹の写真を見て、二人は低く唸る。
「皮肉にも、愚神の少女達の一人が妹だとは……俺にも予測が出来なかったよ」
 自身を嘲笑うかの様に笑みを浮かべる冥人。
「会ったほうが……いいんや、余計に情に流されるんかもしれへん」
 目を伏せると小さく首を振り、一二三は言葉を選びなおす。
『女王を理解しようとしたらダメです。友愛や愛情を憎しみに変えて、自分の手を汚さずに殺すのが手口です』
 真神 壱夜(az0039hero001)が、一二三とキリルの思考を止めるかの様に強い口調で言った。
『そうか、それが目的なら女王の術中にハマってしまうところだった』
 キリルがハッとした表情になると、端末の電源をオフにして幻想蝶にしまう。
「女王にしちゃ醜いねぇ」
 禍々しい大きな花を下半身に生やしてる花を統べる女王を見て、鐘田 将太郎(aa5148)は嘲笑うかの様に口元をつり上げた。
『愚神に相応しい容姿だ。気を引き締めないと命を落とすぞ』
 将太郎を一瞥すると海峰(aa5148hero002)は見えないが、女王の存在を感じながら力強い声色で入った。
「冥人、思う存分戦え」
 因縁がある事は資料で知った将太郎は、冥人の肩をぽんぽんと叩きながら笑顔で言う。
『力不足なところもあるが協力する』
 将太郎の言葉に同意するかの様に頷くと、海峰はぐっと拳を握り締めた。
「大丈夫、うちが守ってから安心してや」
 と、一二三が言うと、重傷の身なので後方から援護している獅堂 一刀斎(aa5698)の声が上がる。
 その後ろで比佐理(aa5698hero001)が淡々とした口調で何かを言っていた。

「何? 女王とやりあうのか?」
 優しい笑みを浮かべた榊原・沙耶(aa1188)が、面会室で真田 雪にこれから向かう事を伝えると彼女は表情を1つも変えずに聞き返した。
「ええ、だから貴女にちょっと話をしようかと思ってねぇ」
「お疲れ様だな。一言だけ言っておく、“けして女王に感情を向けるな”……仲間の首を締めたくなければ、な?」
 一瞬だけ雪の表情が変わる。
『人の心を操ってた愚神よ? 今更、感情なんて湧かない』
 藤の花の様な瞳で睨みながら小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)は、大きく首を振りながら答えた。
「それで良い。君たちに武運を」
 立ち上がり、そそくさと面会室から出ながら雪は言葉を残した。
(しかし、住民を殺害したわりには死体が無さすぎるのよねぇ)
 H.O.P.E.で雪と面会した時を思い出しながら沙耶は、骨の1本も無い庭園を見渡した。
 
「宜しく壁役」
 柔らかなブラウンな少女の廿枝 詩(aa0299)は、不敵な笑みを浮かべる白髪でオールバックの女性アイギス(aa3982hero001)に視線を向けた。
『さて。俺が倒れる前に倒してくれ、フェン』
 既に東宮エリ(aa3982)と共鳴済みのアイギスは、詩を愛称で呼ぶと庭園の中央で咲く『ラフレシア・アルノルディイ』を横目で見る。
「アルノ……」
 名前を口で発音しずらいと思いつつ詩は女王を見据えた。

(……姉妹達が知らないならば、女王自身に聞いても分からないでしょう)
 サングラス越しに石井 菊次郎(aa0866)が現状の把握をする為に周囲に視線を向けながら思う。
(愚神の少女達はどうだろうか?)
 テミス(aa0866hero001)が小声で提案をした。
 5体の愚神である少女達をテミスは、冷ややかな瞳で見つめた。

「やれやれ、何とも萎える光景だな……」
 苦虫を噛んだような表情の麻生 遊夜(aa0452)が低く唸る。
『……ん、ボク達には……とてもやりにくい、分かってはいるけど』
 黒曜の様な瞳が揺らめくユフォアリーヤ(aa0452hero001)の視線の先には、巨大なハエの従魔の奥に孤児院の子供達と同じ位の歳であろう少女達が武器を手にして立っていた。
 愚神で、もう人ではない少女達。
 無邪気に笑って、本来ならば楽しく駆け回り趣味の話で花を咲かせるであろう少女達は、重たく殺す為の武器を手に険しい表情を向けられたユフォアリーヤは、黒い狼の耳と尻尾が力なく地面に向かって垂れる。
「女王顕現、いや、直接倒せる絶好機」
 アメシストの様な瞳に強い意思が籠った餅 望月(aa0843)は、ぎゅっと拳を握り締めた。
『みんなが味方だったら良かったのにね』
 首を傾げると黒いツインテールが揺らしながら百薬(aa0843hero001)は、ぐるりと愚神の少女達を見回した。
「そうはいかなかったね」
 望月が嘆息すると、少し残念そうに言いながら遊夜達に視線を向けた。

●真田 雪の妹『初雪』
 寒い。
 思わず身を震わせる藤咲 仁菜(aa3237)は、空の様な青い瞳を揺らす。
 共鳴しているとはいえ、寒さは感じるので少し不安に思いながらリオン クロフォード(aa3237hero001)は視界に映る少女を見つめた。
 平然としている氷鏡 六花(aa4969)は、寒さに馴れておりリジェネーションを仁菜に掛ける。
 氷結晶混じりの海水の如きライヴスの粒子と化したオールギン・マルケス(aa4969hero002)が、六花の傍で佇んでいる。
 愚神『初雪』が仁菜と六花をじっと見つめる。
 見た目は全く違うが、六花の瞳には雪姫と姿が重なる。
『氷絶……』
 初雪が幼い子供の声色で呟く。
「一緒に戦って、負けたことないもの。貴女の攻撃は1つも六花さんに届かないよ。そのために私がいるんだから」
 六花を庇うように仁菜が前に出る。
「……ん、氷は、六花の得意分野なの……!」
 【SW(杖・本)】ダメージ・コンバートを終焉之書絶零断章に挟み、書の紐を解くと六花の背に氷柱のような翼が煌めいた。
 前には仁菜が絶対守ってくれているという安心感と、雪姫が残した爪痕でボロボロになった好きな人達の為に六花は戦う。
 強い決意と共に翼から生成された氷の槍を放つ。
『……拒絶』
 初雪は大きな盾を生成し、氷の槍を素早く防ぐのと同時に溶かす。
「……ん、そんな事は……ムダなの……」
 溶けるのを阻止する為に翼を羽ばたかせ、凍らせようと六花は対抗すると初雪は十文字槍を手に駆け出した。
「ダメだよ。そんな攻撃は私ならば余裕で防げるもの」
 仁菜がアイギスの盾で十文字槍を弾くと、金属がぶつかる音が辺りに響いた。
『同じ目だね。アナタも、大切な人を失ったの?』
「……ん、話さない……敵……六花が、倒すの……っ!」
 初雪の言葉、いや愚神という存在そのものに『怒り』や『憎しみ』を抱く六花は、もはや耳障りな騒音でしかない。

 倒すべき憎き相手

 胸の中は黒い気持ちが、ふつふつと風船の様にただ膨らんでいく。
 ただ、憎き相手を殺す為に六花はその力を振るう。
『ごめんなさい。力があるゆきがわるい……でも、ゆきも負けられないの……水絶、水竜』
 激しい水流が渦を巻き、初雪の頭上から仁菜と六花に向かって水の槍が降り注ぐ。
 仁菜がアイギスの盾で防ぐが、全ては盾1つでは庇いきれない。
 六花も槍を凍らせようとするも、常に流るる水の槍は凍らずにそのまま体を貫かれた。
 血の気が引いていく……いや、刺された部分の血液が冷えていくのを感じる。
「六花が……六花が……倒す、の!」
 氷柱のような翼から氷の槍を生成し、六花は最後の力を振り絞って投げた。
『ゆき……やっぱり、わるいこ……』
 深々と初雪の胸を氷の槍が貫くと、仁菜が星剣「コルレオニス」で斬る。
 地面に膝を着け、初雪がぽろぽろと涙を流しながら小さく呟くと倒れた。
「ごめん……六花さん」
 仁菜が急いで六花の傍に駆け寄ると、深傷を負ってしまった体を見て項垂れる。

 守りきれなかった、とーー……

 六花が事前にリジェネーションがあった仁菜自身は軽傷で済んだのが奇跡で、デグリオ級の愚神1体に対し二人で挑んで倒せたのは強い意思を貫いた結果なのかもしれない。
 遠くから耳障りな羽音が聞こえた仁菜は、六花を抱えて後方の安全な場所まで連れて行った。

●全てを失った久世、全てを壊したアヤメ
「攻城戦よ! 全員突撃ー!」
 雪室 チルル(aa5177)が元気よく号令を口にした。
『確かに古城っぽいのがあるけど、主戦場は町の中じゃない?』
 庭園と化した町を見回しながらスネグラチカ(aa5177hero001)は、チルルに視線を向けると小さく首を傾げた。
「こういうのは雰囲気よ雰囲気! さあ行くわよ!」
 ぐっと拳を握りしめると、チルルは目の前にいる愚神『アヤメ』を指す。
『ここで女王を仕留めて全部終わらせよう!』
 共鳴するとスネグラチカも力強く言った。
「今回あたい達はアヤメの撃破に動くことにするよ! 相手は槍の名手って事だから主力である剣での戦いが辛い相手ね」
 アヤメの手に握られた不釣り合いで、2メートルはあると思われる槍に視線を向けた。
『少なくとも相手の方がリーチに勝るんだし、何かしら良い手がないとダメそうだね』
 と、スネグラチカが低く唸る。
「だからまずはそのリーチとは戦わない戦術で行くことにするよ」
 チルルはロケットアンカー砲を射出すると、アヤメではなく槍をクローで掴もうと試みる。
 火花を散らしながら槍はクローを叩き落とし、アヤメは生気の無い瞳でチルルを視界に捉える。
 まるで手足を動かす様に、アヤメは槍をチルルに向かって素早く突きを繰り出す。
「武器を取るんじゃない、武器を扱う時の弱点を突くんだよ」
 冥人はチルルの首根っこを掴んでぐっと後ろに引っ張られた瞬間、槍先が鼻先を掠めた。

『愚神のスキルも無尽蔵じゃないわ』
 と、メリッサ インガルズ(aa1049hero001)は少女の愚神を見据えた。
「ああ、使い切って貰うか使わせる前に……倒す」
 共鳴すると荒木 拓海(aa1049)はオネイロスハルバードを手にし、自身より大きめの盾を持った愚神『久世』に降り下ろした。
「盾使いが相手ならば…敵を仲間と挟撃して前後から攻撃を試みろ。盾で前も後ろも防ぎきることは……如何に愚神であっても困難なはずだ」
 通信機から一刀斎の落ち着いた声色が響いた。
「頭良いな! ありがとう! ……お大事に」
 明るい声で拓海が通信機越しに一刀斎に礼を言うと、駆けつけた一二三に一瞬だけ視線を向けた。
「ヒフミ、左は頼んだ!」
「おっしゃ、任せい!」
 拓海が久世の右側に駆け出すと、一二三は左側に素早く移動をする。
「はぁぁっ!」
 オネイロスハルバードにライヴスを込めた一撃、一気呵成で拓海は久世を斬りつけた。
 微動だにしない久世は、盾を重心にして回転すると一二三も巻き込んで二人を弾き飛ばす。
『簡単に、傷を付けれないとは……賢い愚神ね』
 激しく揺れる視界でメリッサは、攻撃する瞬間をしっかりと見ていた。
「でも、傷は浅いからそんなに力は強くないようだ」
 素早く立ち上がった拓海は、横に首を振ると一二三に視線を向けてからオネイロスハルバードを構えた。
「それに、敵はんは……そないに体力があらんようどす」
 盾で殴られたが打撲した程度で、一二三が久世に視線を向けると少女は肩で息をしていた。
「わぁぁぁ! そっちはダメ! あたいが相手だよ! って、無視されてる!?」
 しかし、アヤメがチルルを無視して久世の元へ駆け寄った。
 不機嫌、否……憎しみ、怒りに近い感情を拓海達に少女達は向けた。
「触らないで! 近付かないで! 男は、男は……大嫌っい!」
「アヤメちゃん……うちは大丈夫だから……あっ……!」
 久世が叫ぶと、一二三のザミェルザーチダガーがアヤメの胸を貫く。
「本当に、人という生き物は……身勝手、ね。もう、男だけは……イヤ……」
 と、口から血を吐きながらアヤメは呟くと、ばたりとうつ伏せに倒れた。
 その姿を見て久世は両手で顔を覆い、大きな瞳からはぽろぽろと大粒の涙が頬を濡らす。
「ーーッ!!」
 久世の悲しみの気持ちは声にならず、口は金魚の様に口をパクパクと開閉させる。
 後方から従魔を退治していたユフォアリーヤは、胸に針が刺さったかの様にチクリと痛みを感じた気がした。
『直ぐに、後を追わせてあげるわ』
 哀れみなのか、ただ敵として倒したいのか、本意は分からないがメリッサは淡々と拓海に言う。
「恨んでも良い。君達みたいな犠牲者が出ないように、オレ達は戦ってる……だから」
 拓海はオネイロスハルバードにライヴスを込めて、久世の小さな体にを重たい一撃で貫いた。
「ごめんな? アヤメちゃん……力不足で、うちダメや……」
 アヤメの隣に倒れると久世は、涙で汚れた手でつかの間だけれども姉妹だったアヤメの手を握りしめた。
『何か、悪い事をした気がする……』
 何時もは元気なスネグラチカが落ち込んだ様子で言った。
「良いんだよ! あたい達が女王を倒せば!」
 前を向いて歩くチルルは、明るく前を向いたまま元気よく答えた。
 消え行く少女達の亡骸。
 その亡骸を歩き越えて、エージェント達は庭園の主である愚神『アルノルディイ』の元へ向かう。

●人を明るくした少女『鈴音』
「母様綺麗なお花畑です!」
『ええ、不自然な程に綺麗なお花ね』
 空の様な瞳を輝かせ無邪気に庭園を見回すアトルラーゼ・ウェンジェンス(aa5611)が言うと、優しい笑みを浮かべたエリズバーク・ウェンジェンス(aa5611hero001)が冷ややかに言った。

 桜の木の下には死体が埋まっていて

 その血を吸って桜の花は色づくのだ

(この花はまさに人の命を吸って咲いているのでしょうね)
 町の住人のライヴスを吸って育った花達を、深海の様な瞳に映すとエリズバークは迷信の言葉が脳裏に過る。
(本当、綺麗すぎて反吐が出そう)
 くしゃりと足元に咲いていた花を踏み潰すと、エリズバークは声に出さずに呟いた。

「花を統べる女王を冠する愚神討伐か。あのような姿だが、かなりの強さを感じる」
 左頬に大きな十字傷の付いた東江 刀護(aa3503)は、庭園の中央で笑みを浮かべてたたずんでいる愚神『アルノルディイ』に視線を向けていた。
『刀護さん、あの少女と戦ってみたいです』
 藤の様な紫色の瞳を輝かせながら双樹 辰美(aa3503hero001)は、静音を指しながら言う。
「剣士として、正々堂々と勝負しろ」
 紅い着物に幼い身体に不釣り合いな刀を手にしている静音を見て、刀護は辰美の背中を押した。
『ありがとうございます』
 嬉しそうに辰美はお辞儀をすると共鳴して駆け出した。
「皆、相手は少女だが侮るな」
 と、言って刀護は忠告をした。
『自分は東江 刀護の第一英雄、双樹 辰美。いざ、尋常に勝負!』
 静音の前に立つと、辰美は正々堂々と名乗る。
「私は圓 静音……いえ、今は鈴音と申します。兄よりは劣る剣術でよろしければ、お相手致します」
 穏やかな笑みを浮かべた静音は丁寧に挨拶をした。
「攻撃はタイミングをずらしてくれ」
『同士討ちになりかねませんので』
 辰美達が後方から援護するエリズバークに伝えると、通信機から淡々とした女性の声で返答が聞こえた。
「それでは……参ります!」
 チン、と鈴が鳴るような音がしたかと思えば、辰美が素早くドラゴンスレイヤーで攻撃を防いだ。
『荒削りなのに、結構正確……それに』
 エリズバークの攻撃も察したのだろう、辰美の影に隠れる位置へと移動した。
 鈴音の剣術が“完璧”ではない事を悔しくもあり、内心ほっとしている自分がいた。
(嫌な娘。分からないように注意していたのに、もう位置もやろうとしている事を察知された)
 魔導銃50AEの銃口を下げると、エリズバークは鈴音が意識を向けているのを感じながら隙が出来るのを待つ。
「上手くいきませんね。お兄様なら完璧なのでしょうが……」
 鈴音は嘆息すると、ワニの頭を跳ねる兎の様に素早く跳躍して辰美に接近する。
『扱いが、なってないっ!』
 辰美がドラゴンスレイヤーで攻撃を受けると、軽く金属同士がぶつかる音がした。
 そのまま押し返すがーー……
 鈴音は猫の様にしなやかに着地すると、エリズバークが水晶体を複数召喚した。
『刀護様。右に避けて下さいな』
 辰美が指示通りに動くと、水晶体から魔法が放たれライヴスキャスターで一直線上の全てを破壊する。
「本当、甘いとつくづく思います。だから、もう少しだけ頑張りますね」
 破れた振り袖を切り落とすと、鈴音は微笑みながら立ち上がり。

 音も無く、鈴音の顔が辰美の鼻先に現れる。

 腹部から鋭い痛みがした。
『アルノルディイの愚神だけあり、かなりの威力ですね……』
 刀が腹から背中を貫かれており、辰美は苦虫を噛んだ様な表情で鈴音を睨んだ。
 火事場の馬鹿力とはよく聞く言葉はこうなのか、と思いながら倒れそうになる体を“負けるものか”という気持ちだけで保つ。
 今、攻撃をすれば相手は武器を捨てて逃げるか、そのまま倒されるかの2つしかない。
『絶対に負けられん!』
 辰美はドラゴンスレイヤーを鈴音に向かって降り下ろした。
「ごめんなさい。本気で……戦えません……どうか、お兄様を……冥人お兄様には、言わないで下さい」
 鈴音は優しく微笑みながら、辰美のドラゴンスレイヤーで潰される様に斬られた。
 最後の言葉を言い終えると鈴音の体は消え、墓標の様に刀の鞘が地面に残った。
『それでも、本気で戦って欲しかった』
 辰美は呻く様に、刀の鞘に向かって言った。

●堕ちた天使『ゼルエル』
 6体の愚神の中では最も危険だと迫間 央(aa1445)は、ゼルエルを前にしてそう感じた。
『笑ってるわね。余裕があるのかしら?』
 マイヤ サーア(aa1445hero001)が、ゼルエルの顔を覆う布越しから微かに聞こえる笑い声に淡々とした口調で言った。
「分からない」
 と、琥珀の様な瞳で見つめたまま日暮仙寿(aa4519)は首を振った。
『短期決戦で行くよ!』
 不知火あけび(aa4519hero001)は直ぐに共鳴姿になると、カルンウェナンを手にライヴスで作った分身から、無数の羽が空に美しく舞った。
「くっくっ……壊して、あげよう!」
 狂った様に笑い声を庭園に響かせながら何とも言い難いモノが、ゼルエルの周囲に召喚された。
 央が白夜丸でゼルエルに切りつけようと振るうが、漆黒の翼が羽ばたき宙へと舞ってしまい110cmもある大太刀の刃は掠りもしなかった。
『壊されるのは、貴女の方よ!』
 間髪入れずにジェミニストライクで作られた分身と共にあけびは跳躍し、カルンウェナンで素早く切り裂く。
「うぁぁぁぁぁぁぁ! ニンゲンは、だからキライなんだっ!」
 ゼルエルの顔を隠してた布が裂かれ、ざっくりと切られた傷口から血が溢れる。
 憎しみを込めた咆哮を上げながら闇より深く、底の無い穴の様な目であけびと央を睨む。
『元から人じゃないようね』
「他の世界なら居てもおかしくはないだろう?」
 ぽつりとマイヤが言うと、央は小さく首を傾げた。
『そうね。でも、アレは純粋な別の次元の生命……近い』
「そうか。ならば、在るべき場所に帰すのが一番、か」
 央はヌアザの銀腕を装着し終えると、ゼルエルが召喚したモノが蠢き口の様に穴が開くと、ソコから不規則に軌道を変える光線が放たれた。
『空に逃げたままなら、翼を落とすまでよ!』
 【SW(ナイフ)】Red string of fateをカルンウェナンに結ぶと、あけびは攻撃が止んだ瞬間を狙って投げた。
 翼に刺さったものの、貫いたり、切り落とす程に小さくはないのでゼルエルは平然と宙に浮いたままだ。
 【SW(ナイフ)】Red string of fate自体、強度が無いので刀身を引き抜いてカルンウェナンを手元に戻すしかなかった。

 だが、それがゼルエル自身に仇となった。

 ひっくり返る視界、ぼたりと地面に落ちる体と翼は自身が流した血溜まりに濡れた。

『だから、短期決戦って言ったよね?』
 あけびが不敵に微笑むと、落ちてきたゼルエルに視線を向けた。
 最初に央が攻撃した瞬間に、あけびはザ・キラーで気付かれぬように攻撃をしていたのだ。
 その時に、ゼルエルは深傷を負っていた。
「デッドエンド……アガートラム!」
 央がヌアザの銀腕を装着した掌をゼルエルの眼前に突き出し、発射口からビームが放たれた。
 光が貫き、ビームが消えた頃にはゼルエルは消滅し、黒い羽が風に吹かれて庭園に音もなく落ちた。

●全てに裏切られた『サンドリオン』
 鐘の音が鳴った気がして、サンドリオンは目の前に現れた望月達を見て体が思わず震えた。
「愚神化した子も助けたいけど、やっぱり殴り合ってからじゃないとわかりあえないよね」
 望月が静かに言うと、蹄の軽快な音がする方に視線を向けた。
「敵が幼げな少女ばかりで微妙にやりにくい……でもまあ、武器をとったんなら殺られる覚悟もあるんだろ?」
 不機嫌そうに眉をひそめるとリアン ベルシュタイン(aa5349)は、白いワンピースを着た少女サンドリオンに言った。
『難しい事は、わからない……けど……アリスたち、に武器を向けるなら……敵。だからアリスと、いっぱい遊ぼう? おねえちゃん』
 無邪気な笑みだが瞳には狂気を孕んだアリス(aa5349hero001)が、くすくすと小さく笑いながら愛らしく首を傾げた。
『……当てないよう、に気をつける、ね』
「おー……そうしてくれ。……フレンドリーファイアは洒落になんねぇからな」
 楽しそうに言うアリスに対し、リアンは最低限の事を言うと共鳴姿になる。
 お伽噺に出てくるお姫様の様な少女サンドリオン。
 しかし、身なりや容姿とは不釣りあいな大きく、くるんと丸まった角が頭に生えていた。
『羊? みたいだね』
 と、百薬が言った。
「確かに、でも何処かで見たことがあるよね」
『ふふ、遊ぼう……?』
 そんな望月を横目に、アリスが前に出てコールブランドを降り下ろした。
 軽快な足音をさせ、サンドリオンは庭園には不釣りな岩場に飛び乗る。
「相手が撃っても避けるか耐えるかして接近戦に持ち込む」
『前にもそんなことなかったっけ』
 望月の言葉に百薬は首を傾げた。
「以前より相手が強いんだけどね。どうして、君は戦うの?」
 聖槍「エヴァンジェリン」を握り締めたまま、望月は岩場に飛び乗るとサンドリオンに問う。
「姉妹の為……ううん、もしかすると自分の為かもしれない」
 サンドリオンは首を振ると、両手に持っている銃を握り締めた。
 ガラスみたいに透明な2丁銃。
「お姫様は見た目の醜さ故に、魔女から与えられたのはガラスの銃でした。魔女は言いました『お前は人外の部分を隠せば、この国の誰よりも美しい。その美しさを利用して、王を暗殺しておいで……今宵は宴があるからね』と、だから貧困のあまりに死んだ家族の為に私は王を暗殺しました」
 素早く接近戦に持ち込もうとする望月の攻撃をギリギリで回避すると、サンドリオンは銃弾を撃ち込みつつ語る。
「何処かで聞いたおとぎ話に近いけど、そんなに物騒な話だったけ?」
『さぁ? 最近の二次創作は凝ってると耳にするね』
 望月が小さく首を傾げると、百薬は何処かで見たアニメ調の絵本を思い浮かべていた。
『……鬼ごっこは、アリス……好きだけど、そっちが有利なのは、いやよ……?』
 岩場に乗ったものの、足場の悪さと狭さで思いっきりコールブランドを振るえないアリスは、不満そうにサンドリオンを見つめた。
「それで、『めでたしめでたし』だったの?」
 と、望月がサンドリオンに問う。
「まさか……王子に捕まり、彼は私をペットの様に扱い。好奇の瞳で見てくる兵士達に……」
 思い出された記憶にサンドリオンは、金色の瞳からぽろぽろと涙を流す。
『……遊ぼう? お話は、飽きたよ……』
 アリスがロストモーメントで、自身の周囲に武器を複数召喚した。
「そう……ですね。私は、虐げられし白銀の姫『サンドリオン』です! 女王様の為に、姉妹の為に、この忌まわしきガラスの銃を扱いましょう!」
 跳躍すると岩場の斜面に着地し、サンドリオンは銃のトリガーを引いて銃弾を射出する。
 すると、アリスの周囲に召喚された武器が一斉に射撃を開始した。
「何か、スッキリしないなぁ……」
『無力化したらちゃんと話を聞いたら?』
 望月が聞けなかった彼女の末路に少しモヤモヤしながら言うと、百薬は明るめの声で言った。
「そうだね。何か、百薬と気が合いそうだし!」
 望月は何時もの明るい表情になり、反撃を被弾しつつも回避しているサンドリオンの元へと駆け出した。
 神々しい輝きを帯びた白銀の槍が、サンドリオンの胸を貫き白いワンピースを朱色に染め上げる。
 聖槍「エヴァンジェリン」を引き抜くと、望月は直ぐにサンドリオンを抱えて花の上にそっと仰向けに置いた。
「サンドリオンさん、行き場がないなら、うちに来ませんか?」
 望月は、サンドリオンの手に白色の花を握らせた。
「百薬にもそろそろ仲間が増えても良いですし。生き残ったり、生まれ変わったり……」
「必要としてくれる言葉……ありがとう。王子や、周囲の人々にも、虐げられてきた、私を……どうか……探して……」
 望月の言葉を遮るように言うとサンドリオンは上半身だけ上げ、額同士をそっと当て瞳を閉じた。
「うん……」
 目の前の“サンドリオン”は無理だという事を理解した望月は、消え行く彼女の手を最後まで放さなかった。
 手の内に残ったのは、ギンモクセイの白い花弁が咲いている枝だけ。

 リアンはどうしても疑問を抱いた。
 何故、花の名を冠する姉妹ではなく愚神として蘇らせた少女達なのか? と。
 女王の思考を考えるものの、何か、重要な部分が抜けている気がした。
 小さくとも町を呑み込む程のドロップゾーンが今まで、プリセンサーに感知されなかったのは弱かったのだろう。
 では、何故最近になって急激に広がり、町の住人が全員死んだのか?
 力を与えられた?
 姉妹を倒して、強くなったのか?
 オーパーツを使い、力を増した……これなら辻褄が合う。
 それで、負ける気がしないから姉妹を自由にしたのだろう。
『リア、考えるの、まだ……かかる?』
 考え込んだリアンの隣でアリスが、服の裾を掴んで引きながら首を傾げた。
「……いや、大丈夫だ、もう終わった 」
 少女達は倒された、後は女王とハエの従魔のみの庭園に視線を戻すと、リアンはアリスに向かって頷くと仲間の元へと足を向けた。

●花を統べる女王『アルノルディイ』
 微笑みを浮かべたままアルノルディイの周囲に、ブンブンと耳障りな羽音をさせながら巨大なハエ達がエージェント達の進攻を遮る。
「それに何ともきな臭い、が……」
『……ん、今は敵を倒す……ただそれだけを、考える』
 遊夜は、次々と襲い掛かる偽ベーゼルブブを猟犬の名を持つハウンドドッグで撃ち落とす。
「そういう事……ね」
 沙耶がハエの残骸から、人骨の破片を見付けて呟いた。
『うぇ……エサって事よね、コレ?』
「ええ、文字通りライヴスを骨までしゃぶったようね」
 沙羅は顔を青ざめるが、沙耶は偽ベーゼルブブの死体が消えても誰かが倒すので、延々と漁る事は可能だが最低限の情報だけ得ると共鳴して仲間の援護に向かった。
「これだけの愚神が居ると言うのに全て外れですか……」
 愚神の少女達が倒される前に一通り聞いた菊次郎は、嘆息すると目の前に迫ってきた従魔を倒す。
『しかたあるまい……どれも造られたばかりのようだ』
 造られても生きていた時の記憶にもしや、と思っていたテミスだったが若くして死した少女達は会う機会が無い事にも気が付いた。
「身体が動く限り……! 腕一本になっても戦い続けてやる!」
 サファイアの様な瞳に強い意思を込め、黒く長い髪を風に靡かせながら恋條 紅音(aa5141)は声高らかに言った。
「立てる限り……護りきってみせる!」
『常に言っているが、盾役のベストは戦いの最後まで立ち続けること、そしてパーティで自分以外の誰もが傷つかないことだよ。それを忘れないように』
 緋色の長い髪に、爬虫類のヘビの様な細い瞳孔を持つ金の瞳でヴィクター・M・メルキオール(aa5141hero001)が、紅音に視線を向けながら言う。
「もちろん! 変身!!」
 力強く頷くと紅音は、共鳴して足に装着してるアダーラレガースで偽ベーゼルブブを切り裂く。
 羽を落としてしまえば近接で噛まれない限り大丈夫だろう。
『アルノルディイを倒すことに集中しろ。回復は俺がやる』
「思う存分、戦えよー」
 海峰が《白鷺》/《烏羽》の双槍で次々と偽ベーゼルブブを凪ぎ払うと、女王の元へと向かう仲間に将太郎は軽く声を掛けた。
「さいきょーのあたいが負ける要素は無いだろうけど、他の人が負ける可能性は十分考えられるし」
 自信満々にチルルが言いながら、ウルスラグナで従魔を倒す。
「戦いの邪魔はさせん、悪いがここで落ちてくれ」
『……ん、オイタする悪い子は……オシオキ、だよ?』
 鮮やかな銃捌きで、央とユフォアリーヤは交互に主導を交代しながら従魔を撃ち落とす。
「的が沢山で、女王も狙えるなら最高だな」
 【SW(銃)】バイポッド を設置し、共鳴姿の詩は別人として攻撃を楽しむ。
 その場から動けなくなるのは欠点だが、目の前に沢山浮いている的を壊すだけなら問題ない。
『さっさと倒してくれよ?』
 アイギスは聖盾「アンキレー」で詩に従魔が近付かないように守る。
 傷付いた仲間を癒し、無限に湧き出る従魔『偽ベーゼルブブ』の間から見える女王と戦う仲間にも、届かないだろうが呟いた。

『ゲンティアナの花……これって竜胆よね。花言葉は……「悲しんでいるあなたを愛する」「正義」「誠実」……だったっけ?』
 砺波 レイナ(aa5558hero001)は、手にしている青い花をじっと見つめた。
「レイナねーさまは、物知りですの。でも、如何想いますですの? 花言葉……どれが真意か……ですの」
 赤いリボンで結ばれたツインテールを揺らしながらクリスティン・エヴァンス(aa5558)は、レイナに向かって問う。
『分らないわね。プリザーブドフラワー……枯れない、花……ま、貰った本人に聞くのが早いわ』
 幻想蝶に仕舞いながらレイナは、金の瞳でアルノルディイに視線を向ける。
『じゃあ、クリス、本音を聴きに行くわよっ!』
 と、レイナが言うと。
「はいですのっ!」
 クリスティンは元気よく答えると共鳴した。
「……アルノルディイ……様。貴方との闘い……とても待ち遠しく、そして……とても悲しい思いでいっぱいです。ですが、私はただのメイド風情。なので、今この時を、心ゆくまでお楽しみくださいませ」
 Гарсия-К-Вампир(aa4706)が、氷の様な青い瞳を細め、銀の髪を風に靡かせながら恭しくお辞儀をした。
 その隣でЛетти-Ветер(aa4706hero001)もГарсияのマネをして、少しぎこちないがお辞儀をする。
 共鳴すると、ポイズンスローをウェポンディプロイで複製をし、女王の側に行く仲間の背を見つめた。

『…ユリナ、今回の一連の事象が愚神十三騎の手口と判明した以上、奴とこれ以上の対話は不要だ。アルノルディイ、貴様達花の愚神との因縁をここで断つ』
 凛としたリーヴスラシル(aa0873hero001)の声が庭園に響く。
「……我が名は月鏡由利菜。愚神十三騎、アルノルディイ……! HOPEの騎士として、あなたを討つ!!」
 共鳴し銀色の鎧に身を包んだ月鏡 由利菜(aa0873)は、ミラージュシールドを手にし決意の言葉と共に盾を掲げた。
「こうしてしっかりと会い見えるのは初めて、でしょうか」
 ザクロの様に赤い瞳に、黒く長い髪を風に靡かせながら花邑 咲(aa2346)は、花を統べる女王アルノルディイに話し掛ける。
「実際は、ですわね」
 アルノルディイが静かに答える。
 戦ううちに守るべきモノが増えた、困惑して甘い考えを持ったりもした。
 だから咲はこの戦いで己の覚悟と、誇りを問う。
 ブラッドリー クォーツ(aa2346hero001)は何時ものように寄り添うと、共鳴して小銃「S-01」の銃口をアルノルディイに向けた。
「さぁ、本当の宴を始めましょう?」
 アルノルディイが両手を広げ、笑みを浮かべると周囲に槍が生成され、草木等の植物が蠢きエージェント達に向かって襲い掛かる。
「愚神は撃破しました! あとは女王だけです! 一気に畳み掛けましょう!」
 仁菜が【SW】救国の聖旗「ジャンヌ」を掲げると、クリーンエリアで範囲内の仲間が状態異常の耐性を高めた。
 甘くは見てない、それは未知の力を相手にする事は無謀であっても、エージェント達は戦わなければならない。
 数名は最悪の状況を想定し、ライヴスソウルと祈りの御守りを所持していた。
「全力で戦うのは久し振りですわ。楽しい、楽しい……ひとときを過ごしましょう?」
 アルノルディイはアスフォデルスの槍をエージェント達に向かって放ち、回避や盾で防ごうとするが全ての槍は急に角度を変えて突き刺さる。

「何だ。曲がりやがったな」
 詩は素早く【SW(銃)】バイポッドを地面から外し、足に刺さった槍を虚ろな瞳で見つめた。
 だが、そこに気を取られすぎるのも良くない。
 耳障りな羽音が増え、エージェント達に向かって滑空してくる。
『花を統べる女王と名乗るだけのことはある。手ごわい……』
 海峰が盾「サーフボード007」で仲間は守れたが、脇腹に前から貫かれた槍を抜いた。
「仲間の負担を軽くするのが俺らの役目だろ。弱音吐くな!」
 と、言って将太郎は、後方の一刀斎以外は槍に貫かれているのを確認した。
「植物だ! 投擲した槍を植物が軌道を変えている」
 通信機から一刀斎の声が響いた。
『花を凪ぎ払っても、凪ぎ払っても、直ぐに再生してしまうのが面倒ね』
 と、忌々しく花を見つめながらエリズバークは、ギリィと歯を噛み締めた。
 守るべき誓いで狙われやすい紅音は、針ネズミの様に全身に複数の槍が貫かれていた。

「お久し振りですの。此処は”茨姫”のお城みたいですの」
 そんな戦いの最中でクリスティンは、共鳴を解除して女王の側に寄る。
『居るのは王女じゃなく、女王だけどね』
 その隣でレイナは、アルノルディイを睨む。
「お忙しいですけれど、少しだけお話がしたくて来ましたですの」
「……戦う仲間をほっといてまで聞きたいのかしら?」
 クリスティンの言葉にアルノルディイは、エージェント達を指して嘲笑いながら問う。
『見れば判るだろうけど、悔しいかな、私達弱いから』
 レイナはぎゅっと拳を握り締めた。
「クリスにはやっぱり判りませんですの。真実は何時も自分で起こす眠った感情ですの」
 クリスティンは胸元を握り締めると、困惑した瞳でアルノルディイに視線を向ける。
『率直に言うと、アンタの目的ってなんなの?』
「知っているの通り、王の命令ですわ」
 レイナの問いに、アルノルディイは即答する。
『そうだけど、アンタ自身の目的よ』
「そんなにのんびり話をしていますと、狂犬がそろそろわたくしの元に来ますわよ」
 レイナの言葉に、アルノルディイは嬉しそうに微笑みながら遠くを見つめた。
「クリスは戦おうとそうで無かろうと、納得したいだけですの。クリスはクリスの在るべき様に、アルノルディイさまはアルノルディイさまの在るべき様に」
 と、クリスティンが凛とした声で言った。
「わたくしは、お兄様に恋焦がれてるだけですわよ」
 アルノルディイが嬉しそうに言うと、冥人が凶暴化した獣の様に女王に大太刀を斬りつけた。
 あの時よりも、彼は完全に憎しみに囚われていた。
『状況に変化あり! 気を付けてください!』
 構築の魔女が通信機に向かって叫んだ。
「やめなはれ!」
 一二三が冥人を止めようと手を伸ばす、が。
 邪魔されまいと、アルノルディイは無数のアスフォデルスの槍を投げた。
 共鳴を解除しているクリスティン達も居るので、一二三は回避もせずにただミラージュシールドで槍を払うが、地面から生えるツルに足を絡め取られしまい。
「目ぇ、覚ましなはれ!」
 咄嗟に冥人の腕を掴んで耳元で叫ぶと、アルノルディイは一二三を槍で貫いた。
 執着に、何度も、何度も、槍で一二三を刺してると、仁菜が間に割り込み盾で槍を弾いた。
「……邪魔、しないでくださる?」
「させない!」
 クリスティンは共鳴すると、一二三を後ろの方に運びに向かうのを見て仁菜は、アルノルディイから離れて攻撃をする仲間に飛んでいく槍から守るために駆け回る。
「望月さんや拓海さん達、皆の決死の努力を無駄にするわけにはいかない……! 私にだって、騎士としての誇りはある!!」
 由利菜は、ただ傷だらけになっていく仲間を見渡すと、決心する。
「倒して、サンドリオンを探すだよ!」
 迷いは無い、強い決意と次の絆の為に。
「でも、彼女を倒すのは関係者に任せます。……彼女にも心があるだろうから」
 全て使いきった拓海は、最後の手段を取ることに躊躇いはない。
「これが、わたしの……決意です。貴女の個人的な気持ちも含めて、全て受け止めます」
 ブラッドリーは何も言わずに頷くと、咲を含めた4名のエージェント達がリンクバーストをする。
 一瞬で傷は癒え、強い力が体から湧き出るのを感じる。
「はぁぁぁぁっ!」
 超過駆動で更に身体能力を上げて、由利菜はライヴスソウルを使いリーヴスラシルとの強い絆を力に変えコンビネーションを繰り出す。
「倒されていった少女愚神達の為にも、そして仲間の為に!」
 望月が仲間をケアレインで癒し、聖槍「エヴァンジェリン」でアルノルディイを貫く。
「女王の境遇は判らないが、どんな生立ちでも両価感情は己の中に止め置くもの。今日迄と先の犠牲を容認は出来ない……がせめて、女王へ思いある者の手で旅立たせたい」
 拓海は、オネイロスハルバードを手にしてアルノルディイに素早く近付き、武器にライヴスを集中させた一撃『一気呵成』で叩き切る。
「さようなら、花を統べる女王アルノルデティ」
 と、母親が子供に言うような優しい声色で言うと、咲は風魔の小太刀を両手で握り締めてアルノルデティの胸元を貫いた。
「アルノルディイ様、もし……圓様に最期、何かお伝えしたいことが御座いましたら何なりと仰ってくださいませ。私が、代わりに伝えておきます」
 ドロップゾーンが消え行く中でГарсияは、今花の命が散っていく姿を見上げながら問う。
「さようなら、お兄様……この気持ちは、わたくしが……持っていきますわ……だから……伝えなくとも……良いで……」
 ドロップゾーンが完全に消えると、アルノルディイは無害なライヴスの粒子となり空気に溶けるかの様に消えた。
 同時に、あんなに暴れていた冥人は突然倒れた。
 終わった、と安堵のため息を吐くエージェント達は、重傷者達を背負ってH.O.P.E.本部へと帰還するのであった。
 最後に聞いたアルノルディイの言葉は、愚神ではなくただ一人の少女として逝けた事に安心した者も居た。

 来世では幸せにーー……

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
  • この称号は旅に出ました
    弥刀 一二三aa1048
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
  • 幽霊花の想いを託され
    花邑 咲aa2346
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
  • 守りもてなすのもメイド
    Гарсия-К-Вампирaa4706
  • エージェント
    恋條 紅音aa5141
  • 春を喜ぶ無邪気な蝶
    クリスティン・エヴァンスaa5558

重体一覧

  • まだまだ踊りは終わらない・
    餅 望月aa0843
  • 永遠に共に・
    月鏡 由利菜aa0873
  • この称号は旅に出ました・
    弥刀 一二三aa1048
  • その背に【暁】を刻みて・
    藤咲 仁菜aa3237
  • 絶対零度の氷雪華 ・
    氷鏡 六花aa4969
  • エージェント・
    恋條 紅音aa5141

参加者

  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • マイペース
    廿枝 詩aa0299
    人間|14才|女性|攻撃



  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
    人間|25才|男性|命中
  • パスファインダー
    テミスaa0866hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • この称号は旅に出ました
    弥刀 一二三aa1048
    機械|23才|男性|攻撃
  • この称号は旅に出ました
    キリル ブラックモアaa1048hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 幽霊花の想いを託され
    花邑 咲aa2346
    人間|20才|女性|命中
  • 守るのは手の中の宝石
    ブラッドリー・クォーツaa2346hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 守護する“盾”
    リオン クロフォードaa3237hero001
    英雄|14才|男性|バト
  • その背に【暁】を刻みて
    東江 刀護aa3503
    機械|29才|男性|攻撃
  • 優しい剣士
    双樹 辰美aa3503hero001
    英雄|17才|女性|ブレ
  • エージェント
    東宮エリaa3982
    人間|17才|女性|防御
  • エージェント
    アイギスaa3982hero001
    英雄|24才|女性|バト
  • かわたれどきから共に居て
    日暮仙寿aa4519
    人間|18才|男性|回避
  • たそがれどきにも離れない
    不知火あけびaa4519hero001
    英雄|20才|女性|シャド
  • 守りもてなすのもメイド
    Гарсия-К-Вампирaa4706
    獣人|19才|女性|回避
  • 抱擁する北風
    Летти-Ветерaa4706hero001
    英雄|6才|女性|カオ
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969
    獣人|11才|女性|攻撃
  • 南氷洋の白鯨王
    オールギン・マルケスaa4969hero002
    英雄|72才|男性|バト
  • エージェント
    恋條 紅音aa5141
    人間|18才|女性|防御
  • エージェント
    ヴィクター・M・メルキオールaa5141hero001
    英雄|27才|男性|ブレ
  • 臨床心理士
    鐘田 将太郎aa5148
    人間|28才|男性|生命
  • エージェント
    海峰aa5148hero002
    英雄|20才|男性|バト
  • さいきょーガール
    雪室 チルルaa5177
    人間|12才|女性|攻撃
  • 冬になれ!
    スネグラチカaa5177hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 口の悪い英国紳士
    リアン ベルシュタインaa5349
    人間|19才|男性|命中
  • 狂気の国の少女
    アリスaa5349hero001
    英雄|10才|女性|カオ
  • 春を喜ぶ無邪気な蝶
    クリスティン・エヴァンスaa5558
    人間|10才|女性|防御
  • 山瑠璃草
    砺波 レイナaa5558hero001
    英雄|16才|女性|バト
  • …すでに違えて復讐を歩む
    アトルラーゼ・ウェンジェンスaa5611
    人間|10才|男性|命中
  • 愛する人と描いた未来は…
    エリズバーク・ウェンジェンスaa5611hero001
    英雄|22才|女性|カオ
  • 黒ネコ
    獅堂 一刀斎aa5698
    獣人|38才|男性|攻撃
  • おねえちゃん
    比佐理aa5698hero001
    英雄|12才|女性|シャド
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