本部

灼熱の王者 トリスアイギスメギストス

鳴海

形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
15人 / 4~15人
英雄
15人 / 0~15人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/06/23 23:20

掲示板

オープニング

●灼熱の血での戦い
 そのドロップゾーンはまさに戦争と言っても過言ではない規模だった。
 火山を中心としたドロップゾーンはそのマグマの熱エネルギーを使い大量の霊力を加工。骸骨型の従魔と化し人間たちに送りつけている。
 この愚神の名をトリスアイギスメギストス。
 自身を王と呼び、実際に王と名乗るには十分な実力を有し。
 そして先日、リンカー12人で構成された部隊を撃ち破った。
 これをきっかけにアイギスは人間界への進行、その勢いを強めた。
 現在敵勢力は増大中。このまま手を打たなければ手がつけれなくなる。
 そこで白羽の矢が立ったのが君たちだ。
 愚神との戦いが本格化する前に、この強力な愚神を撃ち破ってほしい。

● 作戦内容
 今回は皆に三つの内どれかの役割を担ってほしい。
1 リーダー
2 アサルト
3 アサシン
 である。
 今回の作戦は敵が火山口付近にいるという性質上山を登らなければならない。マグマが噴き出す山をまともに上ろうと思うとルートは三本に限られる。(マグマにも霊力が浸透しているためリンカーでもダメージを受ける)
 この三本のルートには当然敵がわんさか押し寄せてくる。
 なので、その三本のルートで敵を撃退し続けるために指揮を執るべきリーダー。
 三本のルートの中にあって、一騎当千の活躍で道を切り開くアサルト。
 そして四本目。マグマの中を通過しアイギスの背後をとるアサシン。
 の三つの役割を今回お願いしたいのだ。
 順番に説明しよう。
1 リーダー
 今回は皆さん以外にリンカーが36人程度参加する。
 このリンカーはレベルが40前後。英雄のレベルが20前後という設定だけ守れば自由に自分の部隊として配置可能である。
 自分の好みの部隊を編成してください。
 その場合。リーダーになった方の手足のようにリンカーたちを動かせるのでそのつもりでプレイングを書いてください。

2 アサルト 
 アサルトは戦場をこじ開ける単騎の勇者です。
 アサルトに設定されたリンカーは敵の従魔を倒すとリンカーの指揮をあげることができます。
 指揮が上がると多少ステータスが伸びると思ってください。
 またアサルトは従魔を倒すと敵の従魔の指揮を低下させることができます。連携が乱れ戦闘力がおちますので、アサルトは積極的に戦ってください。

3アサシン
 アサシンは耐熱潜溶岩艇に乗って一気にアイギスの背後をとる班です。奇襲を仕掛けるタイミングが大事です。
 ただし、溶岩艇は弐隻しか用意できませんでした。また一回に運べるリンカーは参人が限界です。
 またこの溶岩艇は撤退に使うこともできます。


●戦場について。
 三つのルートにもそれぞれ特徴があるので説明する。

1 アイギスまで最短距離のAルート。
 これは真っ直ぐ、急な勾配の坂を上り続けアイギスまでたどり着くというルートになるが、敵に頭上をとられているので不利かつ危険なルートである。


2 マグマを避けて進む細い道のBルート。
 グネグネと伸びる道を進むBルートだが人が横に三人並ぶのが精いっぱいという道幅の狭さである。というのが両側をマグマが流れているからである。


3 マグマの海と崖を踏破するCルート。
 マグマの海に浮かぶ小さな岩石の島を飛びながら進むcルート。
 この小島はリンカーが二人から四人乗れる程度の大きさのものが無数に並び、攻撃すると簡単に壊れるため。上空から敵が狙っています。
 ただ相手は降りてくることができないので、上空からの攻撃をしのぐことができれば、あとは30Mの崖を上るだけです……。
 とまぁ、書いてみてかなり現実味がないルートなので、無視していただいても構いません。

EX 前回リンカーの潜入任務の時に冷却装置の設置が行われました。
 一瞬で物体をマイナス100度にすることができる代物で設置した後にリモコンで操作して起動します。
 それを回収し再設置することによってドロップゾーンの熱によるダメージの緩和。溶岩を固形化させる。敵従魔の戦闘力を削ぐことができます。
 各ルートに参つずつ存在します。うまく使ってください。

解説

目標 トリスアイギスメギストス

● ケントゥリオ級愚神 トリアイギスメギストス
通称 アイギス
 蒼い炎を操る全身鎧の愚神です。体長は三メートルで、火焔を纏った大剣とその肩に宿った炎の塊を叩きつけることでダメージを与えてきます。
 驚異的なのはその耐久力で、鎧を破壊しないことにはダメージが20%カットされます。
 その戦闘能力のほとんどがスキルではなく、基礎ステータスに割り振られたような愚神ですが。
 たった一つだけ特殊な能力があります。
 彼を中心とした火山のドロップゾーン。
 このドロップゾーン内に集まってきた愚神たちはトリアイギスメギストスの霊力を受け、従属する代わりに大幅なパワーアップを受けるのです。
 この能力を彼は王国と言いました。
 彼は現在南アメリカの自身のドロップゾーンに閉じこもっていますが、内部構造や配下の戦闘力など不明な点が多いです。

● 従魔について
 アイギスは自身の王国内の従魔を改変することによって軍団としての強さを得ました。
 従魔の種類は参種類。
1 アーチャー
 骨の弓を構える従魔です、命中精度には欠けるので、脅威度は低いのですが。高い位置をとられることが多いので厄介です。

2 ミノス
 体が大きく突進力のある個体です。
 ミノスはアーチャー、セイバー型の弐倍の物理耐久と物理攻撃力を有し、身長も弐メートルある、骨のミノタウロスです。
 武装は斧で、角による突進攻撃が得意ですが、個体として強い反面、連携は苦手のようです。
 あと反応速度に難があります。

3 セイバー。
 一番オーソドックスな剣で攻撃する個体です。盾を持っているとそれはリーダー個体です。
 リーダー個体はセイバー型だけでなく、アーチャーの指揮も任されているので、倒すと部隊がすごく混乱します。

リプレイ

プロローグ

「おいおい、いきなりハードな依頼だな。大丈夫か?」
 民家は飛び去るように後ろへ。荒れた道を進む護送車の動きはお尻にいたく。
 その護送車が加速すれば加速するほどに窓から見える景色は、生命の気がなくなっていく。
 緑は枯れた枝木にかわり、やがてそれすらなくなった。
 硫黄や焼けた土の香りが漂う火山地帯。この世の地獄。
 王国の入口へようこそ。
「……大丈夫だよ。オレだって能力者だもん。たまには頑張らなきゃ!」
「そうだな。お前がそう言うなら手伝うぜ」
『最上 維鈴(aa4992)』と『鯉寧(aa4992hero001)』は護送車の中で頷きあう。
 今回は大きな作戦らしい。皆が戦いに赴いているのを知って自分もと奮起しこの依頼に参加した。 
 決して楽な戦いではないとわかっている。だがそれでも自分にできることがあると信じる。
 しかし戦闘経験もLVも低いので、始めから共鳴状態で不安をやる気でカバーし挑む。
「ここのトリスなんちゃらを倒さないともっと大変になるんでしょ? だったらやるしかないよね」
 見上げる火山口。それが全てドロップゾーンに飲まれているなんて信じられるはずがなかった。
 敵は軍団である。
 その舞い散る炎を見ていると蘇る記憶があった。
 思わず『無明 威月(aa3532)』は視線を伏せる。
「…………大丈夫かよ、威月」
『青槻 火伏静(aa3532hero001)』がそう声をかける。
 だが威月は頷き拳を握った。
 大丈夫、大丈夫だ、単に炎が苦手なだけだ。昔を思い出すから。
 けれど威月の背にも炎が宿っている。
 炎を象徴とする暁。威月はそんな自分が炎を象徴する暁と、炎の化身とも言える隊長の後を付いて行くことがおかしくて笑みを浮かべる。
 そして上げた顔の先には仲間がいる。
『阪須賀 槇(aa4862)』が心配そうな顔をして見つめている。
『藤咲 仁菜(aa3237)』がひんやりするシートを首に張ってくれた。
「だい…………丈夫です」
 そう微笑みかけると『煤原 燃衣(aa2271)』は笑みを返してくれる。
『阪須賀 誄(aa4862hero001)』に『ネイ=カースド(aa2271hero001)』そして『彩咲 姫乃(aa0941)』も見える、狭い護送車の中で威月を囲むようにみんながそこにいてくれた。
「では、作戦を確認しましょう」
 燃衣が告げる。その姿に威月は思う。
 ……この人は変わった。
 いや、恐らくこの人は本来こういう人物なのだろう。
 何かがこの人を歪ませ、復讐者に貶めた。
(その背中の炎を見ても《彼》とは大違いですね)
 威月は思い浮かべる。その、悪辣な笑み。
(この本来の焚火のような優しい暖かさが、暁に人を集めた。
 そして皆さんがが一つ一つ薪をくべて、共に大きな強い炎に変わって行った。
 仁菜さんも、姫乃さんも、阪須賀さまも、元ヴィランの焔織さまでさえも)
 その事実を胸に刻み威月は立ち上がる。
 暁のジャケットを羽織った。紅蓮の赤は火山の炎に負けず鮮やかで。威月はその紋章に手を伸ばし……慌てて手を引っ込めた。
「皆様…………あれを!」
 威月が示す先には軍勢がリンカーの訪れを察し山の表面に集結している場面。
 ざっと200はいるだろうか。
 今からあそこに攻め入るのだ。
「下手な特殊能力を持つ輩よりも、こういう隙のない輩の方が余程厄介だ」
『ベルフ(aa0919hero001)』の言葉に『九字原 昂(aa0919)』が頷く。
「付け入る隙が無いのなら、どうにかしてそれを作らないとね」
「有るものは全て利用しろ。一度でも主導権を握ればこっちのものだ」
 告げると昂が作戦の説明を始めた。
「基本方針としては、複数ルートから同時に仕掛けて、アイギスまでの到達・撃破を試みます。
 予め無線機の類を人数分用意しておき、お互いに連絡を取り合える様に準備しておきました。使ってください。
 現地に到着次第、各ルートから進行を開始します」
 その話を聴きながら。
『百薬(aa0843hero001)』が暑そうに自分を仰ぎながら告げる。
「前から思ってたけど、恋の呪文みたいな名前だよね」
「そう? 赤いし鯉の守護神だったらいいんだけどね」
『餅 望月(aa0843)』がそう告げた。百薬は苦笑いを浮かべる。
「主にBルートからの進行を目立たせる様にし、敵の注意がBルートに向いている間に他のルートが進行。
 複数ルートでの進行に気づかれたら、各ルートに敵を分散させて対応能力を圧迫。
 アイギスの所までたどり着けたら、鎧の破壊又は無効化をまずは実施」
 ガチャリと次弾を装填する音。
『麻生 遊夜(aa0452)』がスコープを覗いていた。
「やれやれ、見事なまでにハマった戦術だな」
「……ん、王国……言い得て妙、マグマと骨だけ……だけど、ね」
 そう遊夜にもたれかかって尻尾を揺らめかせるのは『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』
「従魔も剣に弓に盾、と……まさに軍団だな、堅実な構成だ」
 そう遊夜は窓の外を眺める。
「と言う訳で、戦の常道と行きますか」
「……ん、本隊と……別の撹乱と、奇襲……裏をかくのは、大事」
「各ルートにある冷却装置も発見したら回収し、余裕があれば鎧の破壊又は無効化に役立てないか試しましょう」
 昂が告げる。
「鎧を攻略した、もしくはアイギスの所に味方が集合できれば、そのまま包囲して撃破を目指します」
 作戦を説明し終わると居住まいを正して告げた。
「この作戦、大きな作戦です、成功させましょう」
 その言葉にリンカー全員が頷いた。

第一章 王国襲撃

 本命はBルート。そちらに最大の戦力を叩き込むのが今回の作戦だ。当然下位のリンカーたちもそこに多く配置される。
 その小隊二つ分の瞳が今、燃衣に注がれていた。
「皆さん、緊急事態です」
 告げる燃衣のそばには暁幹部が立っている。
「なんだか緊張するね」
 仁菜がフードの内でにやりと笑うと『リオン クロフォード(aa3237hero001)』にたしなめられた。
――集中して話を聴かなくていいの?
「王国の王を名乗る略奪者が向かってきています」
 燃衣は語る。
「今日ボクは皆さんと初めてお会いしました」

「だけど、その心は一つです」

「皆さんの中にはボクの様な境遇の人も居るでしょう」
 燃衣は胸を叩く。
「大切なものを、これ以上奪わせてたまるか!」
「そうだおーーー。ふざけんなー」
 槇が拳を突き上げると槇が率いる射撃部隊も燃衣が率いる前衛部隊も拳を突き上げ叫び始める。
 それを合図に骸骨どもが続々と顔を出し始めた。
 曲がりくねった道の先でリンカーたちを待ち構えている。
「今日は壊すもの、いっぱいですね母様!」
――えぇ、目を瞑っていても当たりそうなほどね。
 そう完成の中で敵に微笑んでみせるのは『アトルラーゼ・ウェンジェンス(aa5611)』と『エリズバーク・ウェンジェンス(aa5611hero001)』
――期待しておりますわよ。
 エリンズバークが阪須賀兄弟の背に微笑みかける。
――パソコンを弄る時間くらいは稼いで上げますわ?
 そう射撃部隊に混ざってアトルラーゼは移動。
 燃衣は自分の部隊を引き連れて陣を組んだ。
 舞台はオーダー通りの配分。 
 ソフィス増し増しの射撃部隊。
 ヒーラーにタンクを前衛に。側面に機動力の高い戦闘部隊。
 燃衣の補佐に二名ほど優秀なリンカーをつけた。
 しかし先陣を切るのは燃衣。
「行きますよ! ぶち殺せ!」
 進軍が始まる。
 盾の間から槍を突きだし進軍。
 それに対して知能の低い骸骨部隊はそのまま進軍、真っ向から衝突し何体か骸骨はその場に倒れた。《刺殺》部隊のお手柄である。
 さらにタンクたちの盾ではじかれた骸骨はマグマの中に。
 哀れ骸骨はもがき溶けていく。
 次いで《魔撃》の支援射撃。
 敵の矢が降る。
 それはタンクたちの盾で部隊全体を覆うように守った。
「《城壁》部隊! いい動きですよ」
「しかし隊長! 前方の防備が」
「それは大丈夫です」
『イリス・レイバルド(aa0124)』が舞台中央から躍り出た。
 重たい盾の一撃は骸骨たちを舞い上げ吹き飛ばす。
 そんなイリスの勇士を見届けながら『アイリス(aa0124hero001)』は告げた。
――王国ね……そう呼ぶ事に意味があるのか、ただそう呼びたいだけなのか。
「意味があるなら王国と呼ぶ事でゾーンルールを強化するとかかな」
 イリスが刃を構えて告げる。
 狭い道に、しかし小柄な幼女が一人、だというのにもかかわらず、骨身の戦士たちは突撃を仕掛けられないでいる。
――その場合は王国である事を示す国旗の様な物があるのかもね。
「例えば地形そのものとかね……お姉ちゃんって可能性低いの追うの好きだよね」
――余興のようなものだからね、当たれば楽しい、外れても痛くない。
 告げるとアイリスはにやりと笑う。
――さぁどこからでもかかってくるがいい、この盾を打ち破れるものならばな。
 同時に、絶壁とマグマの海、Cルートも動き始めたとインカムの向こうで声が聞えた。
――それより台頭した時期を考えるとこれもワイスキャンセラー案件かな?
 だとすると意外と臆病かもねぇ。
 そしてヒエラルキーの底辺で鬱屈した上昇志向でもあったのかもね。
「こっちの予測のほうが生き生きしてる!?」
 CルートはBルートより困難を極める。
 燃えたぎるいわばを飛びながら崖に取りつきそれを上らないといけないのだ。
 当然敵の遠距離攻撃は分厚い。
 姫乃はそれを巧みにかわしているが足場の悪さから何度も冷や汗をかいた。
 今は岩場に隠れて敵をやり過ごしている最中だ。
「暁勢はほとんどBルートか」
――ご主人隊員デスのにニャ。
 告げたのは『朱璃(aa0941hero002)』
(こういう時はメルトの共鳴姿のほうが目立たなくていいんだがな)
 やれやれとため息をつきながら仲間のために時間を稼ぐ。
「それと……これだ!」
 上から降りてきた骸骨たちの足をワイヤーで絡め捕りマグマに落す。
 それを繰り返しながら潜伏。
 こちらの戦場が盛り上がるのはまだ先のようだ。
「たとえ火に耐性があったとしても無傷じゃいられねえだろ」
――ついでにどろどろの中なら動きづれーはずデスニャ。速さの大敵デスニャ。
 暁部隊はじりじりと戦線を押し上げている。
「よーし、良い位置だお! 美少女漂流作戦開始だお!」
 槇がそうBルートの真ん中で宣言すると部隊員がせっせと冷却装置を運び、それを発動させた。溶岩が急速に熱を奪われて大きな石のステージとなる。
 足場は悪いがこれで側面が攻撃できるようになった。
 そこに槇の舞台は展開する。
「さー行くお! 気合の言葉は『にゃっぽい』だお!」
 弓や狙撃銃を構えた部隊員たちがその場にずっこけた。危うくマグマに落ちそうだった者もいる。リオンが首根っこ捕まえて助けていた。
――……ほらほら、黙ってないで。はい「にゃっぽい」!
「「にゃぽい」」
「ちげーお! にゃっぽい!」
「「「にゃっぽい!」」」
 ほとんどやけくそである。
――こういうオバカな号令って実は悪くないよ。バカになるって自分を曝け出すコトだからね。暁外の人間も居る中で、連帯感を作れるんだな。
 告げながら射撃部隊は一斉掃射。イリスを恐れて固まった部隊へ射撃を繰り返していくと同時に、敵の射撃部隊のヘイトをこちらに向ける。
「敵の弓は盾役にまかせるお! ばんばん撃つお!」
 そんなH.O.P.E.側の快進撃を許すわけが無い。
 敵部隊背後から見上げるほどの巨体が姿を現す。
 それは骸骨たちを巻き上げてイリスに迫った。
 それをイリスは真っ向から受ける。
――まずい。
 アイリスが言った?
「どうしたんですか?」
 燃衣が大声で問いかける。
「僕たちは大丈夫だけど、足場が持たない」
 溶岩で溶けかかっている足場は脆いのである。
 その時上空からミノスの顔面に蹴りを入れる物がいた。
 ミノスは半身のけぞらせてダメージを耐える。掴もうと手を伸ばすがそれは空を切った。
 ミノスの肩を蹴って『鬼子母 焔織(aa2439)』が敵の背にまたがり。その首に刃を突き立てた。
「…………鬼子母 焔織、馳せ参じ申しタ」
 流血するミノスを背に焔織が地面に着地。
「サァ…………参りまショウ。我ら暁、悉くの悪しきを滅ぼ……」
――あぁあぁあぁああ子供こども子供こどもおお!
 騒ぎ始める『青色鬼 蓮日(aa2439hero001)』にセリフを遮られる焔織。
――ははは、あとで抱きしめさせてあげるから、今は目の前の敵に集中してくれるかな。
「お姉ちゃん!?」
 振り返ると蓮日は火山を見あげる。
「灼熱の主か! たいちょー、そして紅孩児と呼ばれたお前の炎と、どちらが上かな!」
「まずは僕らの炎を見せつける必要がありますね」
 告げると燃衣と焔織は顔を見合わせミノスの側面に回った。
 二人で立ち位置を変え。位置を変え。相手の股を潜りながらジャブを浴びせていく。
 焔織のオセロトルソードが閃いた。
「門開き、八方が極遠まデ届け…………八極の極意…………トクとごろうじろウ」
 背を切り裂き顎を撃ち。拳をかわして腕を斬り飛ばす。
「……マサカ、コレだケが我が武と、オ思いデ?」
 腿を斬り傾いだ体その横っ面に燃衣が斧の柄を叩き込む。
――……その命、叩き潰す。
 ネイの殺意と共に霊力が爆発。ミノスの首が斧によって吹き飛ばされた。
 だが吐出した二人を倒すチャンスと骸骨たちが迫る。
「隊長!!」
 追いすがってくるリンカーたち。
 だがそのリンカーたちは信じられない無茶苦茶を見る。
 燃衣が斧の柄に乗せて焔織を投げたのだ。
 焔織はそのまま空中で一回転すると敵陣中央に切り込んだ。
 ショルダータックルで敵を吹き飛ばし刃を振るって敵を切り上げる。
 骸骨の残骸が無数にマグマの中に放り込まれていく。
 そして槇の支援射撃を受けて離脱。
「サァ、コレで10でス!誰ぞワタシより殺した猛者はオラぬのでスか!」
「行こう! ボクらは必ず勝つ! 斗魂を燃やせッ!」
 燃衣と焔織の鼓舞で指揮は高い。
 いける。そう槇は拳を握った。
 しかし前方からさらに二体のミノス。
「あれを隊長たちに近づけさせちゃだめだお! いくお!」
 槇の号令で正確に銃弾を撃ち込んでいく。
 ミノスたちの動きが止まると骸骨たちが前に出てくる。
 するとその中に一体、装備が違う骸骨兵が見えた。
――全軍、敵の足止めを。兄者あれ。
「そうだお。あれが敵の親玉だお」
 周囲の監視に放っていたシャドウルーカーから強い個体がいると聞いている。
 あれがリーダーで間違いなさそうだ。
「もう少し前にくるお。そうだお」
 その時、槇の足をからめ捕る指があった。
 見れば骸骨が溶けかけながらも槇をその地獄に引きずり込もうと呻いている。
「く、やべーお」
――兄者に構わず敵を牽制して。だいじょうぶ、こっちは。
「俺が何とかするよ」
 リンカー部隊の側面を風がかけた。
 急速に近づいたのはリオン。
 異変を感じて戻ってきたのだ。
「たまには俺もいいとこ見せなきゃな?」
 そのまま骸骨をすくい上げるとその頭を一撃で粉砕し槇に尋ねる。
「あれを倒したいの?」
「そうだお」
「無茶しないでよ。こっちでやるから支援を頂戴」
 そう簡単に言ってリオンはまた走った。
「おう、こっちは敵指揮官をやるお。弾幕展開。にゃっぽい!!」
「「「「にゃっぽい!!」」」」
 リオンは敵をすり抜けて走る。障害となる雑魚敵は全て槇の部隊が処理してくれた。
 そのままセイバーと呼ばれる個体に迫り。
 その剣を受け流し、潜り抜ける。反転。
 背後をとって、切っ先を滑らせ、その頭蓋骨を両断した。
 しかし敵の中央に取り残される。
「敵の指揮官が死にました。今です《虎狼》!!」
 燃衣の号令で全部隊が猛烈に敵をおしあげた。
 二体のミノスは絶命しマグマに沈み。残党を一掃するように戦線を一気に押し上げる。
――休んでる暇はないよ。
「そうだね、仁菜」
 燃衣の斧に乗りリオンは敵の退路を塞ぐ。
 左から迫る剣を上にそらして回避、右から迫る剣を叩き落として止め。
 そしてその敵を斬り飛ばす。
 その動きはまさに流れるように舞うようにと言ったところ。
(まだまだリオンの剣技には敵わないなぁ……)
 そうため息をつく仁菜であった。

第二章 運命の分かれ目

 ルートAを担当する『望月 飯綱(aa4705)』の眼前から続々と兵が撤退していく。
『綾香(aa4705hero002)』は思う。回されているのだと。
 Cルート。Bルートの攻めはよほど苛烈らしい。
「ふぅ……あっついなぁ。こんなとこいつまでも長いなんてしたくないよ……でも下手に涼もうとするとばれるし……あーもー、早いとここっちの警戒薄れないかなぁ……」
 そうため息をつく飯綱はちょこちょこちょっかいをかけに来る敵を苦無で斬り飛ばしていた。 
 あちらもこちらの様子を見ているらしい。
 当然だろう。飯綱は責める様子をみせないのだから。
「手薄になったら駆け上がって。それから」
 作戦を何度も確認しながら飯綱その時を待つ。
「冷却装置があそこにあって、あれを使って……」
 戦いはまだ中盤戦である。
 Cルートでは敵のけん制が続いている。
 その崖を上ろうと試みる維鈴。
 そのでっぱりでいったん身をひそめ周囲を確認した。
 敵や足場、敵の位置そして効率のいい進路を考えての移動。
 熱さは耐えるしかない。額の汗をぬぐいながら熱を持ちがちな装備は幻想蝶にしまう。
 そんな維鈴の動きがばれればすぐに移動。無理な戦いはしなかった。
 そんな維鈴に敵が迫らないように遊夜が撃つ。
 遊夜からすれば敵が近付いてこないのは逆に利点である。
 そして敵の練度も高くない。
 サンドエフェクトを纏い敵を射程に収められる位置に陣取り、遮蔽物があっても迂回して敵を撃ちぬく。
――……ん、盾持ち発見……ボク達の目からは、逃げられない……よ。
 セイバーが無防備に後頭部をさらしている。
「あいつがここらのリーダーか、悪いがここで仕留めさせてもらうぜ」
 放たれた弾丸は見事に敵指揮官を潰した。
 反撃とばかりに放たれる弓も。その弓事打ち抜いたり、手を打ち抜いたりして無力化していく。
 別の指揮官がミノスの背後に隠れた。
「すまんが俺達の弾はその程度じゃ止まらなくてな」
――……ん、眉間に脳天……好きな所を、選んで良い……よ?
 放たれた弾丸は跳弾し見事脳天を打ち抜いた。
 その間に『氷鏡 六花(aa4969)』が動いた。
 マジックブルームで氷の箒を作って飛行し溶岩の海を一気に渡る。
 本当にうまくいくのか不安がる『アルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001)』をなだめ。冷却装置を詰め込んだ幻想蝶を撫でる。
「絶対うまくいく、大丈夫」
 そのまま敵の頭上を飛び氷の柱を断章で落していく。
 敵はパニックに落ちいった。
 その隙に小島を駆け抜ける望月。そんな彼女が六花に親指を立てて見せる。
 その手にはトリアイナ。
 トリアイナの水で眼前の溶岩を冷やして足場にしながら走る望月。
 冷気。それは彼らが体感したことが無い脅威だったから。
 その慌てふためく姿を眺めながら氷の氷槍をさらに降らせる。
 やがて氷のオブジェが連なる一帯が出来上がる。
 その混乱に乗じて維鈴と姫乃が崖の上によじ登った。
 不意を突かれた骸骨たちを9-SPで射抜く。
「オレの武器は射程短めだからギリギリまで引付けないとっ」
 その背後から支援射撃、仲間を頼ればまだまだいける。
「飛び石は得意だけど、こんな緊張感あるの初めてかも……」
 銃の慣れない感触を感じながらただひたすらに敵を撃った。
「御苦労様」
 告げたのは望月。
 追いついてきたのだ。
 そして維鈴の傷を癒す。
「おら!」
 その隙に姫乃は敵を駆逐していた。
 登頂に使ったロケットアンカーで足場の弱いところをひっくり返して敵を攪乱。
 足場を崩して敵を落す。多勢の優位をどんどん削って行った。
「弓兵の多さが仇になったな !!」
「よし、俺達も上るか」
 その様子をみて遊夜は装備をグラセウールに換装。
 敵の本拠地を目指す。
「さて、本番はここからだな」
――……ん、そろそろ火口……ボスの出番。

   *   *

「エリー! リーダーあいつだ!」
 群がる骨どもにたまらず、リオンは後退し、その最中にそう叫ぶとエリスバーグは銃口を向ける。
 Aルートから回されたのだろう。新たな軍団、その中心にいるセイバーをロックオン。 
「その距離ならば一気に蹴散らしましょう。巻き込まれたくなければ、各自で退避してください」
 武装を大量展開。本命は自身の持つ銃一本だが周囲の敵をまず、蹴散らす。
 トリガーをかちりと絞ると無数の銃弾が嵐のようにうち放たれた。
「うお! 背後をとられお」
 その言葉に振り返るエリスバーグ。
 ミノスが背後から突進してきていた。
 敵もバカではないらしい。
「足場ごとふきとばします」
 告げ、エリスバーグは武装を展開。
 ウエポンズレインで銃弾を雨のように降らせる。するとミノスの足場が崩れその体はマグマの海に放りだされた。
 しかしその体は完全に沈むに至らない。
 じりじりと接近するミノス。
 その眼前に立ちはだかったのが威月。
 負傷したリンカーが多かったため一時的に戦線を離脱していたのだ。
 敵のアーチャー部隊はすでに壊滅している。であればミノスを抑えるのは自分の役目だ。
 そして退路を断たれたリンカーたちの戸惑いをケアレインでカバーする。
「どこに行くんですか無明さん」
 隊員一人が不安げに尋ねた。
 その隊員を振り返って微笑む威月。
「……諦めちゃ……ダメです!」
 そして仲間を鼓舞する。
「貴方も…………私なんかより、ずっと強いです……私は……こうして盾を構えることしか、出来ないから……」
 振り上げるミノスの拳を避けトリアイナを突き立てる。
 周囲のマグマが冷えて岩石となりミノスの動きを制限する。
「こんな火の粉が何ですか……! 日本男児であれば! 今こそカッコいい所を、見せる時です!」
 告げるミノスはいつの間にか拘束されていた。それをエリスバークは。
「どんなに丈夫な体でも頭を撃ち抜かれたら同じですわね?」
――大きいと狙いやすくて楽しいです。
 何度も何度も銃で撃つ。
「何を呆けているのですか?キリキリ働いてくださいませ」
 その言葉に槇の隊員が頷き、ミノスに集中砲火を浴びせた。
 沈黙するミノス。
 上がる歓声。
 その時である。
 槇たちが鎮座する離れ小島に炎の雨が降り注ぐ。
「あづっ!」
 上がる槇の悲鳴。
 何事か。 
 そうエリスバークが振り返るとイリスが全身マグマだらけになりながら岸から上がっている。
――すまないね。私たちはわりとエイジスとティタンのおかげで平気なんだが。
「イリスたん、どうしたんだお?」
「あ、いえ。投げられました」
「誰にだお? 隊長?」
「いえ、あれに」
 その時膨大な霊力をBルートにいる全員が感じた。
「あいつ、自分からでてきたのかお」
 そこには火山口が放つ火とは全く違いう蒼い炎を纏う戦士。
 三メートルの巨人。トリスアイギスメギストスが佇んでいた。そして多くのリンカーが足元に散らばっている。



第三章 切り札
「逃げて!」
 燃衣がたまらず叫べばその巨大な足から新米リンカーを一人逃がす。
「隊長!」
 そう手を伸ばすリンカーの先で燃衣はアイギスの足によって動きを封じられた。巨大な圧力が燃衣を容易く踏み潰そうとじわりじわりとくわえられる。
「まずは体勢を立て直すお」
 槇はハーネスを取り出す。
 半分の射手に牽制で射撃をさせ、残り半分は敵の隙を狙っての一斉射撃を行う。
 その射撃に体勢を崩しもせず鎧で全てを撥ねのけて燃衣を掴みあげ。
 そして投げた。
「おおおおお!」
 今度は浮島事粉砕される槇の小隊。リンカーたちは木端のように巻き上げられマグマの中に沈んでいく。
 そして大剣を振り上げるアイギス。怯えるリンカーたちに追い打ちをかけようと迫る。
 しかしその眼前に立ちはだかったのは焔織、そして威月。
――フン! 意志も先も無い人形どもを操って《王国》とは、これまた皮肉が利いてるじゃあないか、えぇ王さま?
「いかにも、世が王。この世を総べる絶対君主」
――王国とは民草あってのものだ。民草は子を産み、地に満ち、豊かになる。ホンシツを間違えとりゃせんか?
「よい、そのうち認める、我が恩寵を」
 振り下ろされる刃をかいくぐる焔織、すると地面が割れた。
 砕ける岩石を足場に飛んでアイギスに一撃加えると。
 同タイミングで背後に回っていた威月が動いた。
 膝を切り付け、冷却。
「ぬう」
 振り上げる大剣。それを戦線に復帰したイリスと共に受け止める。
 これ以上足場を破壊されるとまずい。
――青い炎か、あの悪党と一緒だな。
 蒼い炎をたぎらせ出力を上げる威月、そして告げる火伏静。
「…………こんな炎が何ですか。薄黒くてガスが足りてねぇんじゃねーですか!」
「…………ハッ(赤面)」
――……フフ……オメーも、隊長やら仲間やらに随分と毒されてんなぁ。
「煌翼刃・螺旋槍」
 イリスがすかさず前に出てアイギスの胸をつく。その一撃を受けてもなお不動のアイギスはイリスをその手で叩き落とし、威月を蹴り上げた。
 その体を駆け上がる焔織。
 先ずは顔面に蹴りを一撃。
 落下する勢いを使って斬撃。
 その焔織をアイギスが見失っている間に焔織は背後にまわり、そして渾身の一撃を叩き込んで転倒を狙う。
 しかし鎧が歪んだだけだった。
 実感する、戦力がバラバラのままでは勝てない。
 エリスバークが関節部を狙って銃弾を放つ、エクストラバラージ。
 だがそれはアイギスが振り返っただけで鎧に阻まれる。
「みなさん。待たせましたね」
 その声に振り返る焔織。
 そこには燃衣が立っていた。ぼろぼろの姿で。
 その背後では槇と燃衣の部隊。その中でも戦えるものだけで再編成された部隊があった。
「希望はあります。戦っているのは僕達だけじゃない。だから信じる。僕が信じた先にできること。それは僕が命を燃やして戦う事」
 燃衣に肩を貸していたリオンが見上げると、燃衣は一人で立って歩きだす。
 その拳に膨大な霊力が宿った。
「面白い、真っ向から勝負か」
 アイギスはその拳に蒼い炎を纏わせる。
 そして燃衣は飛んだ。
「……行きますッ! 潰れて砕けて消え失せろッ!《貫通連拳》ッ!」
 炎と炎が拮抗する。その余波はリオンの髪を揺らすほどに周囲に伝わる。
 リオンは隊長の勝利を信じた。 
 しかし次の瞬間聞こえてきたのは、鈍く何かがひしゃげる音。
 燃衣が脂汗をうかべていた。
「小さき命よ。果てよ」
「それは、こちらのセリフです」
 その瞬間。全員が動いた。
「オンッ!ドドマリギャキティソワカ!」
「煌翼刃・崩蓮華!」
 全員というのはこの場にいるリンカーだけではない。
 潜伏していたリンカーたちもである。
『零月 蕾菜(aa0058)』が飛び出してきた。
 驚きを隠せないアイギス。
 なぜ、どこから。
 それは簡単。マグマの中からだ。
 ずっと蕾菜は潜伏していた。インカムでこまめに状況を確認しながらここまでやってきた。
「しかし、まだ!」
 そう蕾菜の一撃を受けてもまだ王は倒れない、しかしアサシンは二人いる。
 昂である。
 その昂にはアイギスは最後の最後まで気が付けなかったそれが命取り。
 彼は素早くアイギスの足元に駆け寄ると致死の一撃。ザ・キラーにてアイギスの膝を切り裂いた。
 鎧すら貫通する渾身の一撃でアイギスの体勢が大きく崩れる。
 アイギスはマグマの海へと落ちた。
「絶対成功させるッ! でないと意味がないもん」
 響いたのは維鈴の声。
 その声で周囲四か所で同時に冷却装置が作動。アイギスを含めて周囲のマグマを一気に固形化させる。
 アイギスは完全に動きを封じ込められた。
「おお、うまくいきすぎだお」
 告げる槇、彼は他のルートのメンバーが合流すると攻撃開始前にこの状況を作っておいた。
 アイギスを封印する冷却方陣。愚神封印作戦である。
「運んできたかいがあった」
 そう維鈴は溜息をつく。
 冷却装置は人の身長ほどある装置だったため背中に括り付けて改めて壁を登ってきたのだ。
「今のうちに」
 そう武装を構える維鈴。
 維鈴と同じようにアイギスを攻撃できる位置にリンカー全員が位置していた。
 六花は断章に霊力を全力で注ぎこむ。
 生成したのは巨大な氷槍、そして吹雪吹雪そのもの。
「いっけ!」
 放たれた冷気はさらにアイギスから熱を奪う。
 昂はジェミニストライクで肩のアーマーの隙間を攻撃はがすように鎧を粉砕、燃衣と焔織も一撃加える。
 その後昂はもう一度潜伏した。
「一斉射撃!」
 燃衣は自分たちが離れると後続のリンカー部隊に絶え間ない攻撃を命じる。
 360度を囲みながらの飽和射撃はアイギスのうめき声すら塗りつぶした。
 だがやられっぱなしのアイギスではない。
 氷ったはずの地面が溶けアイギスの腕が登場した。それは燃衣に迫るが受け止めたのはリオン。
「そんな攻撃で俺達が負けると思ってる?ガデンツァの攻撃より全然弱い!
 それで王を名乗ろうなんて傲慢すぎない?」
 ガデンツァの名前に眉をしかめたアイギス。
「もっと本気出してこいよ」
 剣を構え不敵に笑うリオンにアイギスは雄たけびをあげた。自身の熱で周囲を溶かし脱出を試みる。
 マグマの流れが荒れた。
――リ、リオン……! どうしよう……!
 マグマを操ることができる。その脅威を仁菜は感じていた。
「大丈夫。ちゃんと対策してあるよ」
 次の瞬間溶岩流の供給が止まる。
 火山光に設置した冷却装置が稼働し一時的に溶岩の流れをせき止めたのだ。
 溶岩は重力に従って流れ、徐々に減っていく。
「長くはもたないぞ! 一気に片をつけよう!」
 その功績の立役者は飯綱。
 飯綱が設置し。そして今合流した。
 気配を感じ振り返るアイギス。
「王だか何だか知らないけど……あいつを斃せばこの周りのは一気に弱くなるんでしょ。なら真っ先に倒せばこんなの、簡単な仕事です!!」
 その飯綱を射すくめる殺気。内心飯綱はがくがくぶるぶるである。
(とは見栄貼りつつも僕の力だけじゃ斃すのは絶対無理……とにかく気を乱させなきゃ)
 そう本音は胸に隠す。
 その飯綱へアイギスはマグマをすくって投げつけた。
 それを回避しようとするも範囲が広すぎて避けられる気がしない。
 しかしその炎が飯綱を焼くことはなかった。
 望月に守られたのだ。
「火山だったけど爆発とかしないよね。
 強化だけ受けて上手いこと逃げた残党もいるかも知れないし、今後にも注意だね」
 そうあたりを見渡して望月が告げる。
「その前にアイス食べたいよ」
「百薬はいつでもでしょうに」
 そう体勢を立て直して望月は走り去っていく。
「あの!」
 飯綱の言葉に望月は振り返った。
「ありがとう」
「どういたしまして」
――お礼はアイスでいいよ?
 その言葉に頷くと、アイス何が喜ぶだろうと考えながら飯綱は銃口を構える。
 とにかく距離を取り、ロングショットで相手の射程外からの攻撃に努める。
 その飯綱とは別の弾丸がアイギスを狙う。
 遊夜がグラセウールで肩の炎や鎧の隙間を的確に打ち抜いていく。
 すでに相当なダメージを負っている鎧だ。遊夜の射撃でいとも簡単にはがされていく。
「どうよ? 効いたか王様よ」
――……ん、貴方は……本当に、強かった。
 荒れ狂うアイギス。ダメージをものともせず剣を振るう。
 すでにBルートを渡ってきたリンカーは満身創痍である。
 であれば。蕾菜が踏ん張るしかない。
 盾役としてアタッカーのダメージを軽減。剣を受けるのではなくそらしていくが。
 蕾菜の体力もつきかけだ。
 だから奥の手を使うことにした。
「武器を放棄せよ」
 支配者の言葉。
 その言葉は直接愚神の核とも言うべき場所に作用し、武器を捨てさせようとするがアイギスは思いとどまった。
 その一瞬の隙で姫乃が攻める。
 最高速で突っ込みジェミニストライク。
 その足はすでにズタボロで痛みに耐えきれずアイギスはその場に転倒した。
 それでも体から発する熱量でリンカーの接近を許さない。
 しかしすでに姫乃は上空に逃げている。
 そして最後の冷却装置を上空で発動。
 大量の冷気がアイギスの全身に降り注ぐ。
「ぐあああああああああ」
「すぐに死ねない手前の不幸を呪いな!」
――じわじわと嬲り殺しデスニャー。
 姫乃はそのままハングドマンを使いながら高速で飛び回りアイギスの腕や足を浅く切り続ける。
 立ち上がるアイギスの顔面に蕾菜のブルームフレア。
 その間背後に迫る六花が霊力浸透に成功する。
 虹色に輝く氷の翼を展開し蒼白のドレスを翻し。
 踊るように、舞うように氷の槍を四肢に突き立てていく。
 すでに鎧はない。
「おおおおおおお」
 それでも王は剣を杖に倒れない。その剣をマグマだまりに投げて最後の抵抗とばかりに周囲にマグマをまき散らせる。
 その炎の雨の中で氷の妖精はひるまない。
 その火を消すべく吹雪を召喚。
 アイギスの体力を削り取る。
「あとは、単純な力比べだよ。炎の王様」
 次いで六花は予め換装しておいた魔血晶を砕き、膨大な霊力で最大の氷槍を作成。
 それを胸に突き立てた。
 炎の王は口から灼熱の血を吐いた。
――おや、臆病というのも当たりかもね。
 アイリスがアイギスの目の前でそう挑発する。
「鎧で守って引きこもり。力は強くても技を持たないか……なるほど」
 しかしその鎧はもう存在しない、むき出しの体は脆弱でリンカーの攻撃も防げない。
 イリスは構えた。
「煌翼刃・天翔華」
 その光の翼が刃として伸び、その体に四つの斬痕を刻む。
「みごと」
 アイギスはそうつぶやくとその体を傾がせ。そしてマグマの中に溶けて消えた。

 エピローグ

 ドロップゾーンが解除されアイギスの消滅を確認したリンカーは火山を徒歩で降りていた。
 すでに霊力が混じらなくなったので熱さも感じない。
 そんな中。アトルラーゼは大きな破片を抱えている。
 アイギスの破片だ。
 もしアイギスがガデンツァと繋がっていたなら。ガデンツァについて都合のいい存在では?
 そう考えた。もしくはミラルタの様に何かに役立つ成分が見つかるかとも。
 ただその結果が出るのは先になるのだろう。
 それはグロリア社を取り戻すことができてからのお話し。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452

  • 九字原 昂aa0919
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 槇aa4862

重体一覧

参加者

  • ひとひらの想い
    零月 蕾菜aa0058
    人間|18才|女性|防御
  • 堕落せし者
    十三月 風架aa0058hero001
    英雄|19才|?|ソフィ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
    人間|12才|女性|回避
  • 疾風迅雷
    朱璃aa0941hero002
    英雄|11才|?|シャド
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • 我ら、煉獄の炎として
    鬼子母 焔織aa2439
    人間|18才|男性|命中
  • 流血の慈母
    青色鬼 蓮日aa2439hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 守護する“盾”
    リオン クロフォードaa3237hero001
    英雄|14才|男性|バト
  • 暁に染まる墓標へ、誓う
    無明 威月aa3532
    人間|18才|女性|防御
  • 暗黒に挑む"暁"
    青槻 火伏静aa3532hero001
    英雄|22才|女性|バト
  • 妙策の兵
    望月 飯綱aa4705
    人間|10才|男性|命中
  • 妙策の兵
    綾香aa4705hero002
    英雄|17才|女性|ジャ
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 槇aa4862
    獣人|21才|男性|命中
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 誄aa4862hero001
    英雄|19才|男性|ジャ
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969
    獣人|11才|女性|攻撃
  • シベリアの女神
    アルヴィナ・ヴェラスネーシュカaa4969hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 着ぐるみ名人
    最上 維鈴aa4992
    獣人|16才|男性|回避
  • エージェント
    鯉寧aa4992hero001
    英雄|33才|男性|ジャ
  • …すでに違えて復讐を歩む
    アトルラーゼ・ウェンジェンスaa5611
    人間|10才|男性|命中
  • 愛する人と描いた未来は…
    エリズバーク・ウェンジェンスaa5611hero001
    英雄|22才|女性|カオ
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