本部

アクスム王国 ―ヴィランズ討伐作戦―

ふーもん

形態
シリーズ(続編)
難易度
普通
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
能力者
4人 / 4~8人
英雄
4人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/04/18 21:56

掲示板

オープニング


「……はい。……はい。ですが、あの地での事件は一段落ついたものかと……」
 1人の年若きH.O.P.E.職員が電話での応対を行っていた。
「――ええ、まあ。そう言う事でしたら、現時点ではこちらでは判断が付きかねますね。何せ、あの管轄はアフリカ合衆国それもエチオピア州のアレキサンドリア支部に全ての権限が委ねられたはずですから」
 しかし、どうも様子がおかしい。相手のくぐもった声が年若きH.O.P.E.職員の意識を困惑させ、かえって苛立たせる。
 あまりにもおかしな発言をしている相手に好い加減怒鳴り返してやろうかと、その青年が思った矢先――
「――え?」
 不意にその声はかすれ、緊張がにわかに高まった。
「――それ、本当ですか? しかし、一体こちらにどうしろと……」
 しかし、今度は逆に青年の方が一瞬にして縮こまる。そして次の瞬間――
『だから大至急エージェントを要請して欲しいんだよ!!』
 電話口で逆に怒鳴り返されてしまった。
 そして、電話は唐突に途切れた。
「相手は誰だったのかね?」初老のH.O.P.E.職員がその青年に近付いて、聞いた。
「ええ。あの、実はメロエ遺跡での一件に関して――予期せぬ事態が判明したとか何とか」
「ああ、あのアレキサンドリア支部管轄の出来事か。しかし、我々H.O.P.E.東京海上支部には関係の無い事だ。違うかね?」
「私もそう思っていました。ですが、何か重大な事実が明るみになったとか……それで、こちらの方でもリンカーの要請が至急必要だとの事でして……」
「――それで? 国際電話まで掛けてきて明るみになった重大な事実……とは何の事かね?」
「……それがですね――」


「ほーう? あのメロエ遺跡での一件。解読したメロエ文字の石板にはクシュ王国の女王様と王子様の名が書かれていたのか!」
「あ、それ私もテレビの臨時ニュースで見た! ど偉い大学の考古学を専門とした教授だか博士だかが難解な顔をして難しい事喋っていたよ」
 場所は所変わって金光邸。どうやらあのメロエ遺跡での事件の過程はここでも尾を引いている様だ。催奇金光とサーマ・ネリーも珍しく神妙な面持ち。
 金光が持っていた新聞の文字をなぞる様に読み進めていくと――
「――何々? 例のクシュ王国が建てたピラミッド、メロエ遺跡に侵入したリンカー達は観光客を無事に救出。親玉の愚神も倒し、暗号の解読に成功。アレキサンドリア支部の大図書館で照合した後、とんでも無い事実が明るみになった……と」

 ――クシュ王国とローマ帝国との抗争での不可思議な事態。『名もなき戦争』の事の発端――


「……なるほど。オーパーツか。にわかには信じ難いがそれは事実だな。それで? なぜ今になってこちら側からリンカーの派遣が?」
 初老のH.O.P.E.職員が頷くと、青年の年若きH.O.P.E.職員は少し驚いた様子だったがすぐに冷静さを取り戻し――驚くべき事態が起こっている事を告げた。
「どうも……そのオーパーツを巡って現代でヴィランズが動き始めたみたいなんです。場所はまたもアフリカらしいんですが、人手が足りないので至急応援要請を――だそうです」
「ヴィランズ――だと? しかし、そのオーパーツは――」
「何か知っているようですね? もっと言えば、そのアフリカ全土を覆った『光』――つまり、オーパーツはアクスム王国。現代のエチオピア州に当たる紀元前の頃、アラビア半島南西部から人々が移住していた中心地。そして4世紀のアクスムの王、エザナはクシュ王国を滅ぼした」

 ――クシュ王国の女王の名はファナ クシュ王国の王子の名はミケル――

「現代のヴィランズにとって都合の悪い代物――それが、オーパーツ……か。それで? そのヴィランズとやらは一体何者なんだ?」
「――ヴィランズの正体は地中海沿岸、紀元前のプトレマイオス朝から発展したローマ帝国領の血統を受け継いだ子孫達……らしいです」

 ――全ての鍵を握っているのはオーパーツ――

 そして、犯行声明を出したヴィランズ達の主張は――我等ローマ帝国の誇りに懸けて『名もなき戦争』を再びこのアフリカの地で起こしその終止符を打つ。つまりクシュ王国との火種を生んだオーパーツの奪還にある、と言う事だそうだ。
 どうやら、クシュ王国が生み出した幻――宙を舞う『光』オーパーツは今でもローマ帝国との間で尾を引いている様だ。

「そうとなればとにかくヴィランズ達に例のオーパーツを渡さない為にも至急リンカーを派遣しなければ……!」


 場所はアフリカ。かつてのクシュ王国を滅ぼしたアクスム王国のステッセと呼ばれる高さ24メートルの花崗岩製の石柱が並ぶ遺跡での出来事。
「おい! 援軍はまだか!?」
「チッ! アレキサンドリア支部は何をやっているんだ? 連絡はどうなってる!?」
 オーパーツは今、とある御者(御者とは言っても、馬車では無く海外製のRV車に乗った人)によって輸送中の所――例のヴィランズによって周囲360度取り囲まれていた。
「クックック。貴様等はH.O.P.E.アレキサンドリア支部のリンカーだな? 大人しく我々に例の物を渡せば、命だけは助けてやるぞ?」
「ふざけるな! どんな理由によってもあれは渡さん!」
「――状況を理解しているのか? あの古の『光』の正体を我々に譲れば、『名もなき戦争』もやっとピリオドを打てると言うのに」
「違う! 貴様等の目的は単なる戦争では無い! 今、ここにある例の物――オーパーツだろう?」
「――ほう。そこまで知っておるのか。ならば貴様等をここで生かす訳にもいくまい」
 その時、ローブと甲冑を身に纏ったそのヴィランズ達の両手から何かが迸った。ライヴスの力だ。
「憎きエザナ王の権力を示したアクスムのステッセの地で戦うのは気に障るが、人を殺めるのには格好の場所とも言えるな」

 しかし例のオーパーツは果たして一体何なのだろうか? 事態は一刻の猶予を争う。
 それを知る為にも、リンカー達はアフリカへと赴く。かつて2つの王国が争った『名もなき戦争』の再現を阻止し、オーパーツの正体を暴く為に……!

解説

 さて、またしても始まりました。『メロエ遺跡の暗号解読』の続編。今回は戦闘がモチーフです。
 いつも通り条件を幾つか提示しますが、単純に戦うだけ――になりそうな予感がします。

 ・相手はヴィランズ。ライヴスの力を駆使し、炎や氷、雷や土など属性を活かした魔法使いみたいな役割で集団戦で挑んできます。
 ・相手が持っている武器や防具は属性を付与して強化&無効化した物が多々あるので、一撃一撃が強烈だったりこちらの攻撃が効かなかったりします。
 ・敵の狙いはもちろんオーパーツ。なので、RV車の周囲360度に張り付いて護衛をした方が良いかもしれません。
 ・戦う舞台はアレキサンドリア支部へオーパーツ輸送中のアクスム王国の石柱(ステッセ)です。エザナ王の権力を示す遺跡の様な場所です。
 ・石柱(ステッセ)は高さ24メートルあるので身を隠すのにはもってこいです。奇襲を仕掛けたり、よじ登って敵の位置を把握し指示を出したり遠距離攻撃をしたりできます。
 ・敵のヴィランズもバカではありません。ライヴスによる属性攻撃で石柱(ステッセ)破壊を目論んだりします。なので、石柱(ステッセ)を利用するのは早い段階に作戦を組み込んでおきましょう。
 ・RV車の中には民間人もいます。なので、彼等を守らなければ現地での通訳は不可能です。
 ・オーパーツの正体を暴くのは、アレキサンドリア支部に無事到着してからか、もしくは敵のヴィランズの1人に聞くかその二択に分岐します。
 ・かつてのローマ帝国領の血統を受け継いだヴィランズのプライドはやたらに高く、オーパーツに関して口を割らせるのはかなり困難だと思っておいた方が良いかもしれません。

 久々のバトル展開! 皆さまのプレイングお待ちしております!

リプレイ


 ――アクスム王国。
 それは4世紀、かつてのメロエ遺跡を滅ぼしたエザナ王により繁栄した地域であり現代ではアフリカ合衆国エチオピア州の一部。
 アレキサンドリア支部管轄内にあるその諸地域はナイル川が流れ、クシュ王国時代には地中海沿岸のプトレマイオス朝そしてそこから発展してきたローマ帝国領との抗争があった。
 鉄器文明の栄えていたクシュ王国の幻――『名もなき戦争』の始まり。

 そしてそのオーパーツを巡り現代でヴィランズとの戦いが始まっていた。


 緊急要請された4人のリンカーと英雄。
「さて、過去の因縁との事ですがまずは撃退ですね」
 既にリンクしていた辺是 落児(aa0281)と構築の魔女(aa0281hero001)はやや遠方の斜面に見えるアクスム王国の石柱(ステッセ)を見てニヤリと微笑む。共鳴時は構築の魔女が主体で行う。
 他のメンバーも既に現地入りしていた。彼女は、ライヴス通信機でそれを知り、また更に互いの連絡を取り合うと通信を切った。
 まだ敵のヴィランズ達はこちらに気付いていない。上手く餅 望月(aa0843)と百薬(aa0843hero001)がRV車に同乗し、敵を引き付けている間に構築の魔女は颯爽と行動に移る。
 目標は石柱(ステッセ)の出来るだけ高い位置――可能ならば、仲間達と例のヴィランズとの戦いが俯瞰出来る中央付近が理想だが、さすがにそれは無理かもしれない。
 しかし、彼女は衝動で走った。助走を付けた跳躍で、石柱(ステッセ)に取り付き、登る際は敵の射線を石柱(ステッセ)で遮る様に留意。攻撃を受けない為の奇策だ。
 助走を付けたジャンプと、それに伴う移動力&身軽さ、そして回避力を活かし上部まで移動する。
「遺跡を盾にして戦うのは些か気が引けますが……」
 敵との戦闘は既に始まっている。緊迫した状況下でも、彼女は愚痴を零した。そんな戦場の状況を視界に収めながら。
 どうやら俯瞰出来る場所へと無事到達した模様。

「オーパーツ争奪戦だね」
『神秘の力はワタシに宿っているよ』
「そんな事まで考えてたの? じゃあその力でがんばろうか」
 餅と百薬はアクスム王国の石柱(ステッセ)が周囲360度に広がるヴィランズと救援を求めていたリンカー達、そして目的のRV車がある戦いの中心地に乱入。
『ワタシが来たからには安心です』
 百薬が胸を張って言うと同時にヴィランズは一斉にライヴスの属性攻撃を仕掛けてきた!
 飛び散る炎、空気を圧縮させて生み出される氷河、天から降り注ぐ稲妻、大地を切り裂く土の地響き――!
「キャア!」餅が悲鳴を上げた。
 それと同時に――
「早く乗れ!」
 RV車の後部座席のドアが開いて、転がり込む様に餅と百薬は同乗に成功した。2人の目的は防衛及び回復係。
 近くにいる味方をいつでも回復出来る様に身構えた。そしてお互いの額をコツンと合わせて共鳴。
 海外仕様のRV。車内はキャンピングカーなのでやはりかなりの広さを誇る。
 先程の仕打ちに腹が立った餅と百薬は、大きめの窓を目一杯開けて『≪白鷺≫/≪鳥羽≫』で応戦する。純白と漆黒の翼の柄が周囲360度にいたヴィランズへと飛んでは、手元に戻ってくる。
「チッ! 仕留めそこなったぜ! 奴等、援軍だ!」
 土埃が舞う中、ヴィランズの1人がそうのたまい、アクスム王国の石柱(ステッセ)の真ん中で疾駆するRV車を追い掛け回すと、今度は聖槍での迎撃が待っていた。
「『喰らえ~!』」リンクし、常よりも大きな羽を纏った天使――相変わらず飛べそうにない――である餅と百薬は同時に叫ぶ。

「オレ達は選りすぐりですから安心して、少しだけ身を縮めて隠れててください」
 アクスム王国の石柱(ステッセ)――遺跡近辺にいた民間人へ不安を与えない為にも荒木 拓海(aa1049)は説得を続ける。
 何せ、この遺跡はユネスコの世界文化遺産にも登録されている場所で一般観光客がいても不思議ではない。
 メリッサ インガルズ(aa1049hero001)もそれに同調。こんな所で余計な混乱は招きたくはない。
 しかし、例のメロエ遺跡の件でのニュースからか、この騒ぎを聞き付けたのはH.O.P.E.アレキサンドリア支部の関係者だけではなく一般市民もいた様で、支部が封鎖指令を出す前に逃げ遅れた観光客は明らかに少人数だった。
 拓海とメリッサの2人は共鳴し、通信機を頭に固定。随時敵位置の連絡や特別な行動を起こす際に全員へ知らせる為に準備は整った。
 自らの移動能力にプラスして『陰陽玉』、パッシブスキル『カバーリング』効果をフルに活かし防御可能射程を広げRV車の後部から左側面を主に守る。
 そして、戦闘は始まる。相手のヴィランズが言う――『名も無き戦争』の再現。
『善性愚神の関係かしら、どこも人手不足なのね……この人数じゃきつくない?』
「そんな事を改めて話すより倒し方を考えてくれ!」
『ヴィランズって貴方と同じ人間でしょ? エージェントと同じ様な能力しか無いと思うわ』
「……えーと」
 共鳴状態で脳内会話をしていた拓海とメリッサの死角にいつの間にか例のヴィランズの1人が割り込んできた!
 敵の右手には雷の属性が付与された三日月型の曲刀が握られていて、ビリビリとしたそのライヴスの音を感知してようやく自分達の危機的状況を察知した2人。
 瞬時に会話を止めて、確実に戻れる距離で位置取りをしていた移動力範囲の車にテレポートの如くリターンし、飛盾能力を利用。敵の攻撃を受け止めつつ同時に攻撃。
 ――ガキン!――
 ライヴスの雷――云わば閃光が手にしていた武器『ウコンバサラ』と敵の曲刀と摩擦してジリジリと引き起こされ瞬時に弾かれた。
「ほーう? やるじゃねえか若いの!」
「それはこっちの台詞です。ヴィランさん!」
「――では、これはどうだ?」
 次から次へと繰り出されるヴィランの剣の舞踏。そしてその攻撃を弾いて弾いて弾き返す共鳴中の拓海とメリッサ。
 両者の火花は文字通り切って落とされた。

「メロエ遺跡を探索した時から気になってた石板に書かれたオーパーツ。その正体も解らない内に奪われる訳にはいかないよ。何としても守り切らないとね!」
 RV車の正面と右側面の防衛に就いたアンジェリカ・カノーヴァ(aa0121)はそう言い、隣には英雄のマルコ・マカーリオ(aa0121hero001)が立っていた。
 RV車を取り囲むヴィランズを前に――
「ボクはイタリア出身だから貴方達と同じ旧ローマ帝国領の血を引く人間と言えなくもないけど、こんな強盗紛いの事をする人達と一緒にされたくはないね」
 と、更に畳み掛けマルコとリンクして戦闘態勢。敵の動きを『回避予測』し、読んでRV車に敵の攻撃が当たらない様、場合によっては身を盾にしつつ、『モアキーン』で敵の回避を抑えながら大剣を力強く振るった。
 5人纏めての攻撃に敵の態勢は一度崩れ、その隙に『一気呵成』ですっ転ばせて再攻撃する。狙う部位は主に敵の足。動きを鈍くさせる。
「さすがは援軍! やりやがるな! ただのリンカー気取りじゃない訳だ! しかし、オーパーツは渡さん!」
 戦いの最中、敵が吠える。共鳴したアンジェリカとマルコはそれに便乗した。
「そんなに欲しがるオーパーツの正体って何なのさ。同じローマ繋がりで教えてよ」
「こちらの世界の『マハーバーラタ』と言う書物にインドラの雷という核を思わせる物が出てくるそうだが、強烈な光を発するのなら同様の物なのか?」
 カマをかける2人。しかし、相手はそれに応じない。
「ほう。貴様も我等と同じイタリア出身か。ローマ帝国領の血を引く者よ。その誇りと忠誠に懸けてここアクスムで決着を付けようではないか」
 キン! キン! ガキン! と、更に刃の応酬は激しくなってきた。やはりここは力尽くでヴィランズの口を割らせるしかなさそうだ。
 ――それにしてもマルコさん、ボクよりこの世界の書物とかに詳しいんじゃない? やっぱり唯のエロ坊主ではないのかな?
 強化した厄介な武器を振り回すヴィランを相手に、『一撃粉砕』で武器の破壊を試みる。柱上にいる落児と構築の魔女の敵の動きに関する情報に注意しつつRV車正面と右側面両方注意を怠らない様に努める。
 ――ガキン!――
 武器の破砕には成功したが、相手は1人では無い。
 そして、アンジェリカとマルコも激しい戦闘に駆り出されていく。


 一方、石柱(ステッセ)の頂上で周囲の景色を見渡していた共鳴中の落児と構築の魔女は、敵の総数の把握と展開位置をRV車の護衛等をしているマルコと拓海達へ通信機で適時連絡。
「敵の総数およそ20名。加速しているRV車の周囲360度を取り囲んでいる模様。相手の出方は石柱に身を隠しながら徐々に近づいて来るRV車に奇襲攻撃を仕掛けるものだと思います。それと前後左右からの挟み撃ちにご注意を」
 特にRV車の進行方向に配置されている敵の動向と状態は詳細に伝える。この情報のやり取りが仲間達への命綱となっている事を承知の上で、落児と構築の魔女は続ける。
「拓海さん。そちらには石柱に敵が潜んでいますからお気をつけて。アンジェリカさん、RV車の正面と背後には常に敵がいるのでなるべく距離を離さない様にご注意を。連携はお任せします」
 石柱(ステッセ)が破壊されるまでは重力加速度を加算した重砲撃での攻撃を実施。
「こちらの位置がバレない限りこちらからも適時援護をしますので、爆風や視界を遮る砂埃に巻き込まれない様に常に警戒をお願いします」
 仲間達へそう伝えると、RV車の周囲に散り散りになったヴィランズへと容赦なく重砲撃を連射。更に『ロングショット』での高い位置からの遠距離攻撃は効果大だ。
 しかし、今回の敵ヴィランズもそう甘くは無い。すぐさまこちらの援護射撃に気付くと、石柱(ステッセ)破壊や長距離からの銃弾を浴びせてくる。
 それを装甲版での防御で対応した後、陣形や動きから指揮官を探し攻撃による圧力で連携の阻害及びRV車前方に展開する敵部隊を排除するように行動。
 優先順位は――RV車前方の部隊よりも敵指揮官!
「先頭に立つか……後方で俯瞰しているか動きの違う人物を探しましょう」
 そして敵指揮者を発見し、『ストライク』を発動。激しい銃撃を浴びせる。
 敵指揮官はどこから攻撃が来るのか見定めている間に止めの一撃を喰らった。

 指揮官を失い、仲間達の援護で段々と弱ってきたヴィランズ達は劣勢に立たされた。
 しかし、先程のライヴスの属性攻撃に相変わらず怒っていた餅と百薬は弱っても抵抗してくる敵に対して遠慮なくセーフティガス。
「『少し落ち着いてください』」
 どちらかと言うと落ち着いて欲しいのは餅と百薬の方だったのだが……。
 しかし、彼女等は気にもせずに近くのRV車護衛中の仲間達へいつでも回復出来る様にする。

 ヴィランとの刃での一戦を一通り熟した後、餅と百薬のセーフティガスが効いたのか相手は深い眠りに就いた。それ程相手も衰弱していたと言える。
「モチさん、百薬さん感謝です!」
 RV車越しにその声が届いたかはともかく、護衛対象への直接的な命の危機以外で決して殺さない手段としてはセーフティガスはとても有難い。
 まあ、そこまで敵を無力化した拓海とメリッサの実力でもあったが、そうこうしている内に多数のヴィランズが視界に迫っていた。
「そう来ますか――!?」
 共鳴時の拓海はそう叫ぶと、『怒涛乱舞』で敵を食い止める。防御が固い者には『トップギア』で力を蓄えその後『疾風怒濤』を繰り出す。
 だが、武器防具を特化した連中には攻撃が効かない。それでもめげずに拓海とメリッサは攻撃の手を緩めない。
 相手の手足を攻撃し動きを抑制、その後転倒させ地を蹴り土を目に飛ばし視界の自由を奪う。
 呻いている連中に止めの一撃を入れ気絶させ『ロケットアンカー砲』を使用し拘束。
 更に暴れる者には『睡眠薬』を投与。民間人が乗るのとは別車で本部へ護送。
 次から次へとヴィランズは襲い掛かってくる。
 識別不可なスキルを使ってくるが、相手の射程内に敵を引き込み同士討ちを狙う。
 石柱(ステッセ)の上で主に遺跡全域を俯瞰して連絡を取り合っている落児と構築の魔女の位置に気を付け、『ウコンバサラ』で別の石柱(ステッセ)を叩き折り敵との間に倒しバリケードとしタイヤを狙われるのを防ぐ。
 遠距離にいる敵は『SVL‐16』で攻撃。
「やりました!」
 敵の数は確実に減っていく。

 石柱(ステッセ)は戦闘により壊滅的なダメージを受けた。その間、RV車を巻き込む様に倒れそうな場合、自身の砲撃で倒壊させる事により倒れる方向を調整する落児と構築の魔女。
 RV車が退避可能な状況になり、護衛の仲間に伝え指示を仰ぐ。
「RV車の退避は完了しました。後は存分に暴れて下さい。出来ればオーパーツの詳細について口を割らせるのもお願いします。私も加勢しますので」
『了解』
 そしてRV車の方向を見つめながら、共鳴中の落児と構築の魔女は呟いた。
「離脱するなら……距離を開けて待ち構えている敵に注意ですね」
 そう言いつつ、落児と構築の魔女は次の行動に出た。
 攻撃を受けた際の威力や攻撃を当てた際の敵の状態は細かに観察。妨害や追撃を受けようと勝算があると予測。
 武器の相性が悪い相手は対応を交代し無力化を目指す。
「特殊な武具ですか……守られてない部分を狙ってみましょうか」

 敵の数は減っていたが、民間人を守り切れぬと判断した拓海とメリッサは戦場よりRV車ごと離脱も視野に入れ仲間4人で連絡、連携し一点突破を狙う。
 アンジェリカとマルコは最期まで気を抜かず戦い抜き、餅と百薬は車内から味方の回復を怠らず、落児と構築の魔女はRV車に近付くヴィランに対し護衛が間に合わない時、『トリオ』を遠慮容赦なく発動。
 相手の追跡を振り切る為、拓海とメリッサは石柱(ステッセ)を倒し道を塞いでいく。その際、落児と構築の魔女は『カチューシャMRL』で敵の追撃やRV車前方の布陣が厚くなったので、妨害。突破する為に攻撃する。

 ――こうして、敵は殲滅した。


 拓海とメリッサが起こしたRV車逃走劇は民間人を見捨てる為では無く、残った敵を一気に全員引き付ける為の一か八かの策だった。
 そして、それに同調したアンジェリカとマルコ、餅と百薬、落児と構築の魔女も見事に敵を出し抜いた。
 その後RV車はUターンし、現場へと戻った。これ以上敵との衝突を避ける為に相手の乗り物は破壊。追跡不能にした。
 勝利したアンジェリカとマルコは共鳴を解き、ヴィランズを『野戦用ザイル』でふんじばり、4人のリンカー達の援護によって戦いに耐え抜いたRV車にもし故障があれば『応急修理セット』で直す。
 落児と構築の魔女も『アレストチェーン』でヴィランズを拘束。基本、ヴィランへの対応はH.O.P.E.の規則に基づいて行動。

 H.O.P.E.への輸送中、リンカー達は様々な質疑応答をする。今回の事件のヴィランズの目的、そしてオーパーツの詳細について。
「フン! 貴様等がどんな尋問をしようとも我々は口を割らん」
 ヴィランズの指揮官はそう言ったが、構築の魔女は無知を装いどうせ大それたものではないだろうと挑発し口を滑らせる事を期待する。
「たかだか……過去の遺物、でしょう?」
「過去の遺物……か。言ってくれるじゃねーか姉ちゃん。だが、そんな軽口を叩いて挑発しても無駄だぜ。貴様等がH.O.P.E.のリンカーである事はもう分かってるんだ。しかし、オーパーツに関してそんなに知りたいのであれば……今ここで俺達を解放するんだな」
 構築の魔女はウンザリだと言わんばかりに溜め息を吐く。
 オーパーツの正体は詳しい人に任せる体裁を取り繕っていた餅はこれ以上悪さされなかったら別に良いと割り切っていた。だが、百薬はと言うと――
『美味しいご飯盛りだくさんだったらもったいないよ』
「さすがにそんな便利なのだったら隠されてないと思うよ」
 そのボケにツッコミを入れるのだけは忘れない。
「フン、確かにな」
 そして口を閉ざすヴィランズの親玉。
『貴方って強いのね。戦う姿を見てて驚いたわ。世界中が認める歴史を持つ国、ローマ帝国の戦士……それだけでゾクゾクする。ねぇ、その貴方に守られる価値があるオーパーツって存在するの? 実はたかが知れた能力じゃなくて?』
 メリッサが移送途中、頬を若干赤らめて、一応ツンデレ風に聞いてみる。
「俺達は所詮ヴィランだ。だが、ローマ帝国領の血を引いているが故に強いのだ。やはり……俺達はあの人の思い通りの駒にはなれなかったのだな」
 ――あの人?――
「フン! ローマ帝国領の血を引く俺達に勝った冥土の土産さ。貴様等はどうしても知りたいようだが、後は自力で何とかするんだな。いずれ俺達は消される」
 そしてその後、そのリーダー格の男はうんともすんとも言わずに黙した。


 派遣された4人のリンカー達が支部へと到着し、ヴィランズを無事に連行した後、オーパーツの正体に迫った。
「正体が解れば、ヴィランズが言ってたみたいに『名もなき戦争』にピリオドが打たれるのかな?」
「そもそも『名もなき戦争』とは何だ?」
「確かにね。それについても何か解るのかな?」
 アンジェリカとマルコを筆頭に皆口々に疑問を露呈し、オーパーツの検証に当たっていた職員達は皆一様にして驚きの声を上げた。
 一体何が明らかになったのだろう――?
 研究室から出てきた職員の1人が遂に口を開く。
「このオーパーツなのですが……アフリカ全土を覆った『光』――かつてローマ帝国側にクシュ王国との戦争の火種を生んだそれは、女王ファナ、王子ミケルによってある隠された事実を浮き彫りにさせる物でした」
 そこにいたリンカー達は皆一様にして頷く。それはあのメロエ遺跡の件で暗号解読した石板に書かれていたクシュ王国の女王と王子の名だろう。
 しかし、隠された事実とは――?
「けれど、そこには『名もなき戦争』の内容は書かれていませんでした。これはあくまで推測ですが、それには続きがあったのです」

 例のオーパーツは異世界と密接に関わってライヴスとの親和性を高める物として過去――それもかつてのクシュ王国とローマ帝国との抗争の発展となった。
 そしてその強大な力、つまりライヴスを秘めた『光』は二つの国の間で戦争に利用され畏怖の対象とされた。
 やがてクシュ王国が滅びる頃、女王ファナと王子ミケルはこの強大な『光』の力――ライヴスを邪悪なる者の手に渡らせない様に後世へと伝え、死んでいった。
 だが、それは女王ファナ、王子ミケルにとって悲劇的な結末を迎える。
 確かに伝えたはずの例の強力なライヴスの力。オーパーツの『光』は、その後栄えたアクスム王国の秘宝となり厳重に管理されたが、異世界と密接に関わり、どこかへ忽然と消えた。

 そして、現代へと出現したのだ。ローマ帝国領の血を引くヴィラン達は『名もなき戦争』と言う先祖伝来に伝えられてきた伝説が事実だと知り、オーパーツ略奪を目論んだのだ。
 全てはそのトップに立つ邪悪なる――あの人――の手に渡らせ、強力なライヴスの力を手に入れる為に……。(続く)

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 希望を胸に
    アンジェリカ・カノーヴァaa0121
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049

重体一覧

参加者

  • 希望を胸に
    アンジェリカ・カノーヴァaa0121
    人間|11才|女性|命中
  • コンメディア・デラルテ
    マルコ・マカーリオaa0121hero001
    英雄|38才|男性|ドレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
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