本部

立ちはだかるA

鳴海

形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/01/09 12:24

掲示板

オープニング


● 招かれざる塔の客。
 ハードモードトライアル。
 かつてそう呼ばれたドロップゾーン、そしてそのゾーン内の戦闘があった。
 竜人型の愚神。封印された武力王。
 その力の解放をめぐる戦いはリンカーたちの勝利で幕を閉じ、ゾーンは動きを止めるはずだった。
 だが。その安らかなる眠りを妨げる者がいる。
「長年、待ったぞ」
 Aと名乗る男はその塔の入り口に立つと、開いたゾーンの入り口に視線を向ける。
 今回、このドロップゾーンを修復できたのは彼らの開発した技術のたまもの。
 そして彼らの目的はここに封印された武力王の支配である。
「その忌避されし力を我々のシンボルとして使わせていただく。死者の再利用。無駄が無くて私は好きだがね」
 だがそんな彼の目の前に邪魔者が現れることとなった。
「ここに私が来るという情報はH.O.P.E.側は掴んでいなかったと思うのだが」
 Aは鋭い視線を君たちにむける。
「そうか、踊らされていたか」
 H.O.P.E.側は度重なる捜査によって、内通者を暴き出した。
 それだけではなく内通者を使ってAをこの場におびき出すことに成功したのだ。
「そうか、良いだろう、ここで何人か見せしめにするのもよさそうだ」
 Aが告げるとAの足元に魔方陣が敷かれる。
 その陣の中から召喚されたのは無骨なゴーレム。
 戦いが始まろうとしていた。





●Absorb・Dについて
 
 彼は秘密結社Dと呼ばれる。組織の管理人を務めている存在である。
 さらに彼は組織の中でもトップの戦闘能力を有する。
 そんな彼が塔に入ることを阻止してもらいたい。

・Aの能力
 Aは吸収・緩衝という能力を得意とする。
 具体的には相手のスキルや攻撃を吸収して無効化。緩衝して無力化する力に特化しているのだ。
 Dの要な瞬間火力はないものの。優れた防御性能から難攻不落と称されるほどである。
 攻撃性能についても低くはない。
 近接戦闘は水の属性が付与された槍で。
 遠距離戦闘は、黄金の弾丸を放つ銃で戦う。
 正確な間合いについてはわかっていないので戦いながら情報を集めること。

 また、前回のDシナリオで、塔にて出会った女性が簡単にAについての情報を教えてくれた。参考にしてほしい。
・スキル『置換』
 吸収した霊力を自身の霊力に置き換えステータスアップの要とします。

・スキル『変換』
 膨大な霊力を消費し、自身の武装を1レベル上の物に変換する。攻撃力はもちろん、射程や性能、特殊機能も強化される。

・スキル『再現』
 相手の攻撃を吸収し、そこから相手のスキルや武装を逆算。
 膨大な霊力を使用し、それを再現する。
 Aはこの武装を自在に操り変換対象としてしまう。

・眷族『ゴーレム』
 岩の塊を削りだしたような無骨な兵士です。
 特徴としてはその体が砕かれても、その砕かれた破片が宙に浮かんだり、皆さんにまとわりついたりしてきて、妨害攻撃を仕掛けてくること。
 武装はなく肉弾戦等を得意としていますが。その攻撃速度、精度は高めです。
 ただし、移動力だけが致命的に低いという特徴を持ちます。
 Aがいる限り存在しつづけ、リンカーを妨害する厄介な敵です。

解説


目標 愚神の討伐。

 こちらの任務少々特殊です。
 こちらの任務は皆さんに任務の結果が交付された時点で次なる展開に進む可能性があります。
 分岐する未来としては可能性が三つ存在し、よほどのイレギュラーが無い限りどれかに当てはまる事でしょう。
 
1 派生依頼が出ない。
 この場合皆さんは見事D関連の事件を解決しました。
 Aをこの場で倒したことで組織は瓦解。あとはH.O.P.E.の調査が得意な人たちがやってくれることでしょう。
 多くの謎は残るかもしれませんが。それでもハッピーエンドです。
 
2 派生依頼【電撃作戦】
 電撃作戦のタグで、D関連の依頼が届く場合があります。
 この場合、相談期間は三日で難易度も高く。リンカーにとって厳しい戦いになるでしょう。
 この選択肢に突入した場合。Aの奥の手によるリンカーへの危険や、Aが塔への侵入を果たした可能性が考えられます。
 ただし、内容は純粋な戦闘系になることが予想されます。

3 派生依頼【追跡】および【追撃】
 Aを撤退させた場合です。
 この場合、H.O.P.E.はAを追跡するために余力を残していることになり。まだ力が残っていればAの追跡、追撃任務に参加していただきます。
 これは相談期間も四日から五日で設定される普通の難易度のシナリオになる事でしょう。

リプレイ

\プロローグ

 塔での戦いが始まる前『榊原・沙耶(aa1188)』は相棒の『小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)』を連れ立ってその場を訪れていた。
 日本が誇るもっとも厳重な警備施設。監獄である。
 そこで一人の男と面会の予定があったのだ。
「この後に及んで何のようかな?」
 BDと呼ばれていた男は、そう気力も震えず沙耶に問いかけた。
「今日は最後のあいさつに」
 いつもの笑みを耐えさせず沙耶は告げる。
「組織も瓦解しているしもう会うこともなくなるんでしょうけど…………刑期を満了したら叶うといいわねぇ。その夢とやら」
「終身刑さ。日の目を見ることはない」
「そう、それは御愁傷様ね。でもね、坊や。1つだけ言っておくわ。あまり悪い事はするものじゃないわよぉ?」
「何のことだ?」
「小悪党らしく、弾に当たらない様に頭を低くして謙虚に生きていきなさい」
 告げると沙耶はギラリと輝く瞳で告げる。
「H.O.P.E.の中にも、いるものよ。まっとうな権力を盾にした大悪党がねぇ」


第一章 相対

 吹きすさぶ風が強く髪を巻き上げる。嵐が丘も顔負けの激しい丘にその兄弟はいた。
 迷彩によって潜伏しSVLで認識外からの長距離狙撃を行うために、その場に這いつくばっている。全ては持続的な支援でボス戦を《攻略》するために。
「あーあー、こちらHQ!」
――OK兄者。HQは本部だ。
「うるせーお! ポイント到着! いつも通りバックうp、しますお!」
 その声に彼らの隊長は頷くと、目の前に現れた男を見すえた。
――…………大ボス戦、攻略と行きましょうかね……っと!
 狙撃ポイントについた『阪須賀 槇(aa4862)』と『阪須賀 誄(aa4862hero001)』の二人は決起のタイミングを淡々と狙っていた。
 初めて先手をとれた今回の事件、敵を逃すつもりはない、槇の胸に今までの事件、その苦い記憶がよみがえる。
「こうやって誘き出した以上は、この場で仕留めておきたいね。」
 闇に潜む『九字原 昂(aa0919)』は獲物を構えてそう佇む。
 彼であれば一足のうちに接近し、首を刎ねられる位置だ。気を緩めるわけにはいかない。
――飛んで火に入るなんとやら…………と言いたいところだが、どう転んでも一筋縄じゃいかない相手だろうな。
 余裕を見せる『ベルフ(aa0919hero001)』がそう告げた。
「まぁ相手が何であるにせよ、僕のやるべきことは変わらないけどね」
 そして対話がはじまる。
「貴方が『A』さんだな? 罪なき魂を弄ぶ者よ、これ以上貴方達の好きにはさせない。ここで全て終わらせてもらおう……!」
 そう口火を切ったのは『無月(aa1531)』。
 その言葉をAbsorb・Dは嘲笑う。
「魂、罪、それはこの世を構成する要素の一つだな、それ以上の価値も以下の価値もない。何を大切にしている、お前たち」
 その言葉に眉をひそめたのは、暁隊長『煤原 燃衣(aa2271)』である。
――おい、クソ野郎。
 しかし口を開いたのは『ネイ=カースド(aa2271hero001)』である。
――余裕だな。俺達はお前のお友達を倒してる。お前も同じ末路になるとは思わないのか?
「なるだろうな、ならないかもしれない。どちらでもいい。目的への道は通じている」
 その言葉に今度こそ燃衣は口を開いた。
「貴方の様な人物を見ていると、親友を思い出すんです」
「ほう……」
「……黒日向って言うんです。知ってます?」
「商売敵であり、同業者だよ」
 拳を握りしめる燃衣。その身の内で何かが吠え猛る、頬を汗が伝った。
「ボクは、皆を守り、仇を殺せるだけの力があれば良い」
 燃衣は火がついたように叫び出す。
「でも、あなた方は。何処までも力が欲しい様に見える。何故……そこまで力を欲するんですか」

「そんな力を得て、何処へ行こうと?何者になろうと?」

「……他の誰かを傷付けてまで……己たるモノが消えてまで」
「この世界のすべては、価値が等価、だ何かが消えても、何かがあればそれでいい。さぁ、誘おうか。ようこそ、ここが虚無だ」
 次の瞬間放たれたのはブルームフレア。
 リンカーたちをまとめて吹き飛ばす算段だ。それを『藤咲 仁菜(aa3237)』が盾となって防いだ。
 その燃え盛る真っ赤な炎を眺めて、燃衣は己のうちに告げる。
(貴方がたも奪われた者ならば……)

「今だけ、言う事を聞いて下さい…………真の敵を倒す為にッ!」
 
 次いでリンカーたちは散開。
――……戦には正念場、というものがある。今がそれだ。覚悟は良いか。
 ネイの言葉に頷く一同。
「死者の再利用、無駄がなくて結構。けれど、そういった行動は得てして怒りを呼ぶものだよ。例えば、わたしのとかね?」
 『志賀谷 京子(aa0150)』によって放たれた矢はAの目の前で衝撃を吸収され地に落ちた。
――この地に謀はふさわしくない。二度とつまらぬことを企めぬように、叩き潰すといたしましょう。
『アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)』の言葉に頬を歪めるA。
「ふふふ」
「何がおかしいの?」
 京子の鋭い声を聴き、『ナラカ(aa0098hero001)』は少し驚いた。ここまで怒りをあらわにするのは珍しいからだ。
「再利用、さいりようか、そうだな。再利用、死体だけではなく、記憶も再利用させてもらおう」
「何を言ってるの?」
 最後に『ジェネッサ・ルディス(aa1531hero001)』が静かに告げた。
――ボク達の本気、見せてあげるよ!


第二章
 昂は戦闘が始まると真っ先に周囲を警戒した。
 Aが何の考えもなくここに現れるわけが無い。
 その考えは当たっていた。大地を割って出現するゴーレム。
 その一体へと躍りかかる。
 Aに対しては多数のリンカーが同時に攻撃を仕掛けている、問題はこの眷族が戦場を乱しかねないという事。
 昂はそのゴーレムを阻むために名乗りをあげた。
 昂はゴーレムの前に躍り出ると、その右ストレートをかわし、腕を足場に顔面を蹴りつける、体勢を崩したゴーレムに二撃加えて後退させ、距離を徐々にとらせていった。
(無理に倒す必要はありません、ようは時間を稼げれば)
 Aは未知数だ、その力は吸収であると情報があるが。CDのコピーと能力系統は酷似している。
 どの調べも胡散臭く、Aに対しての不信感を漂わせた。
 まるで情報全てが霧となって彼を隠しているかのような。
 その時ゴーレムが大地を砕くような一撃で昂の乗る地面を揺らした。 
 次いで放たれたゴーレムの蹴りを、昂は身を低くしてギリギリのところで回避する。
 情報によると、攻撃するのでさえ危ない。破片を自在に操るなら、攻撃しないことが最善手のように思えた。
 そんな隣で黄色い声が上がる。
「いちいちアルファベット1文字の名前ばっかりで面倒なのよ!」
――いや、突っ込むところはそこじゃないんじゃないの?
 『雪室 チルル(aa5177)』と『スネグラチカ(aa5177hero001)』である。彼女たちは追ってくるゴーレムから逃げるように立ち回っている。
「とにかく! アイツを先に進ませる訳にはいかないわ! 返り討ちよ!」
 そう言いつつも実際はゴーレムの注意を惹きつけながら逃げ回っているわけだが。役割としては成功している。 
 時にゴーレムの注意を引くべく攻撃し、時にその意識を引くために背中を見せた。
「しかし相手の手の内がわからないのが怖いところよね。案外増援等がやってくる可能性があるかも」
 チルルは動物的感によって最悪の結末を思い描く。
「相手を追い込んだら相手だけじゃなくって、側面などから増援がやってくる可能性も考慮しようね」
 直後、大気を震わすような鋼をぶつけ合う音が聞えた。
 『八朔 カゲリ(aa0098)』の振るう天剣。それを真っ向から迎え撃つのが天剣「十二暗」ともいうべき闇の武装。全てはAが作り上げた、まがい物の装備。
 しかし性能は格段にカゲリが振るうものよりも高い。
「おまえ、この剣の特性を理解しているのか?」
「離れてカゲリさん」
 Aの空いた左手から放たれようとする魔術に反応した京子はカゲリを蹴り飛ばして、低い姿勢から顔面に向かって矢を放つ。
 それを避けたA。
 京子はその行動に違和感を覚える。
「お前が! 全部の元凶か!」
 『彩咲 姫乃(aa0941)』が意識外から浮上する、その首を刈り取るために刃を伸ばした。
 それは神速と謳われる童女『朱璃(aa0941hero002)』の力を借りた一撃。
 その攻撃をAは振り返っただけで吸収した。
「やっぱり」
 京子は叫ぶ。姫乃が告げる。
「霊力の吸収や無効化は、いっちまえば『疲れる』んだろ?」
「端的に言えば、銃弾に銃弾をぶつけるような曲芸よりずっと難しいよ」
 京子が言っているのは。この奇跡の様な所業は、意識というリソースも体力というリソースも大幅に消費する荒業だという事。
――つまり相手が対応する余裕をどれだけ削れるかの勝負ですね。
 京子はいったん、体勢を崩したカゲリの首根っこをつかまえて離脱した。
 敵の注意をひきつけるのはいったん姫乃にまかせる。
 姫乃は体制を低くして下からAを睨みつける。
「格ゲーのジャスガ成功で発動くらいの制限はあると思うぞ」
――ご主人は相変わらず漫画やげぇむで例えますデスニャ。
 薄氷之太刀による斬撃、それをガードされたなら、その刃の背に向けて姫乃は回転蹴りを放つ、防壁を切り崩すために深く刃をいれようと思ったが刃がこぼれるだけだった。
「制限はあってしかるべきだろ。――でなきゃとっくにレガトゥス級すら超えててもおかしくない」
「御明察」
 Aはにやりと笑った。
――なるほどニャ。あんなもの……EDにゃが。それを作ってるからには力を集めて固める技術には精通してるでしょうしニャ。それであれ以上の化け物に成ってないっつーんなら制限があるという考えも間違ってないとは思いますデスニャ。
 霊力の風で姫乃を吹き飛ばす、A。
 だがその体にはハングドマンが絡められていて。姫乃の体重分引きずられるA、耐えるために足腰に力を入れた結果、追撃を避けられない。
 京子の近接射撃、それと反対方向からカゲリが斬撃を放つ。
 Aはその攻撃を吸収し、そして京子へと告げた。
「弓兵だと聞いていたが」
「遠くからうつだけが弓じゃないよ」
 すり抜けるようにカゲリサイドへ京子が移動すると、その背に足をかけて飛んだ。
 頭上をとって。銃へと装備を変更、上空から弾丸をばらまく。
「これも対応してくるか」
――奇跡的な吸収技術ですわ。
「感動してる場合じゃないぞ」
 そのカゲリの声に合わせて、カゲリは真正面からの切り上げ、京子は刃へと装備を変更しての切りおろし、姫乃は背後からの奇襲。
 それらすべてを見えない障壁でうけとめ、それだけではなく。
「シャッフル」
 ダメージは全てAを素通り、三人のリンカーとの接触面に返され、そして三人は吹き飛んだ。
「くううう、ここまでは想定内。問題は……」
 京子は四つん這いになって衝撃を殺す、地面に四本の筋が刻まれた。
――隠し玉があるかどうかですね。
「うん、こっちのコピーなんてのは、見た目が派手なだけで本質的に脅威になりうるものではないと思う。何か別のものを持ってるでしょ」
――こちらが生半可な相手ではないと教えて、奥の手を見せてもらうとしましょう。
 追撃のために京子に迫るA、だがその視界を遮ったのは仁菜。
 そのAの剣撃を盾ではじくと仁菜は距離をとる。
――なぁ一つ聞いていいか?
「短くお願い」
 『九重 依(aa3237hero002)』の言葉に仁菜は答える。
――なんで今回は俺……?
「Aをおびき出したっていうアドバンテージを有効に使うために、たまには攻めてみるのも悪くないかなって」
 そうAとにらみ合う。手は出さない。その代り手は出させない。そう言う意志がかんじられた。
「見せしめなんてさせると思う? 嵌められたのに随分余裕だね?」
 仁菜はそう問いかけるとAは憂いを含んだ視線を向ける。
「そうだな、その点は敗北を認めよう、だが、この程度の修羅場は何度も潜っているのでね」
 その言葉を発した瞬間背後に熱を感じる。
 燃衣だ。燃衣が殴り掛かってきた。
 Aはあわてて振り返ると、燃衣のブローを潜り抜ける。
 そのままスライドし、燃衣に肘鉄を当てようとしたが槇の偏差射撃によって肩を射抜かれた。
「よっし!」
 槇はガッツポーズをとる。やはり、意識外からの攻撃には弱いのだ。
 血を流すAをにやりと見つめて、燃衣は拳を突き出す。
 ボクサースタイルでフェイントを含め、軽やかなステップでワンツーと。
 それに対してAは武装を捨てて、仁菜の盾を召喚。全てを受け止める。
「守ることは本当に得意みたいですね」
 姫乃とカゲリが追い付いてきた、クロスするように斬撃を。
 ただそれも攻撃は吸収されてしまう。
「貫通ぅ…………ッ!」
 燃衣が声を上げる、それに身構えるAだったが、待てども拳は飛んでこない。
 そしてAが息を吐いたその直後、燃衣の拳が飛んだ。
 それは衝撃を吸収されることなく、Aの体にめり込んで、Aの体が吹き飛んだ。
「ぐああああああ」
 塔からまた引き離されてしまう。
 痛みで呻くA、それに対して、容赦なく、銃弾が浴びせられる。
「弟者! バレてるお!」
――OK兄者。バカ正直に撃つ訳ないだ……ろっと!
 その射撃で位置を特定したA、霊力の増大を腕に検知するが、威嚇射撃で体勢を崩す槇。
 それに対抗しようとAは銀晶弓を具現化する。
「御見通しだお」
 その腕は姫乃のハングドマンでがんじがらめにされ、そして槇によって打ち抜かれる。
 ポジションを変え次の狙撃に備える。
 弾丸は干渉によって威力を消されてしまったが、殺し切れなかったのか、弓が宙を舞う。
 それを逃す姫乃ではない。
「どうだ、敵にさらされ続ける気分はよ」
 そのまま潜伏。高速の動きで視界を振り切り、Aの死角に潜み続ける。
 その刃の音だけがAの耳に届いた。
 次の瞬間、がら空きになった背中、それも骨に守られない角度から、刃を擦りこもうと姫乃が動く。 
 だが次の瞬間、姫乃の足元が光り始めた。
「サンダーランスを地面から天井に向けて放ってみたくてね」
 Aは自らもろごと姫乃を迎撃する。
――人を守る剣を闇で染め上げるとは、考えたね。
 宙を舞う姫乃、それに構わずカゲリが突っ込んだ。
 二派目のサンダーランスをブレイブガープの光で遮って、Aの胸ぐらをつかみあげる。
「お前は何も言わないのだな」
 Aが問いかける。するとカゲリは告げた。
「仕事だからな、ただそれだけだ」
 その手の刃をAに押し当てて、最大の輝きをもって滑らせた。
 Aの肩口から鮮血が立ち上る。
 次いで浄化の炎がAの体を焼いた。

第三章

 Aからバックファイアー的に噴出される炎。それを眺めてリンカーたちは周囲を取り囲んで様子をながめる。
 やったのか。そう思った瞬間その炎を飲み込むように体に収めるA。
――いよいよ化物じみてきたね。
 ナラカが告げると、アリッサがその言葉に頷いた。
――そこが知れない相手ですわ。
「再戦といこう。だんだんわかってきたよ」
 そんな主のピンチにゴーレム達の動きが変わる。A救出に向けて突進し始めるが、それをからめ捕ったのは無月。
 燃衣に振り上げられた拳を無理やり割り込んで受け止めると、地面を削りながら無月はその拳に耐えた。
 次の瞬間には、一瞬のうちに転身、力の行き場をなくしたゴーレムは前のめりに倒れ込み。無月は大筒を構える。
「ジェネッサ、頼む!」
――了解。一発派手に決めるよ!
 ジュネッサにトリガーがゆだねられる、銃器の扱いになれた彼女は狙った場所へ的確にアンカーを叩き込んだ。
 発射されたアンカーで足をからめ捕られたゴーレムは地面を揺らして転がった。
――ははっ、君の身体も凄くいい感じだよ。流石に鍛錬を欠かさないだけはあるね。
 そうジュネッサが小気味よさそうに笑う。
 次いで襲い掛かる昂。
「さて、大漁大漁ってね」
 女郎蜘蛛の網からはそうそう逃れられないのだ。ピクリとも動けない、ゴーレム。
――あまり獲れても嬉しくない奴らだがな。
 ベルフがニヒルに笑った。
「みなさん、頑張ってください」
 昂が網を手繰り寄せひねり、Aから視線を逸らさないリンカー全員に告げる。
「つけ入る隙があれば、当然僕からも狙うので」
――防御に自信がある奴ほど、無意識に隙を作っているものだ。
 次いで地面を震わせる音が響く。
 無月がゴーレムの足を払い倒したのだ。
「こちらも余裕はなくなってきたがな」
 小さくつぶやく無月だったが、仲間たちに限界は感じさせない。
 その時だった、無月の足元に影が下りる、ゴーレムが腕を伸ばして無月を捕えようとしたのだ。
 無月はその動きに反応。即座に姿を風景に溶かす、ゴーレムの拳が地面をえぐった。
 そのままゴーレムの視界から背後にまわり。ゴーレムを蹴り倒す。
「そういやCDってのが横槍入れてくるかもって気にしてたな」
 Aとなぐり合う、燃衣やカゲリを眺めながら姫乃は声を潜めて告げた。
――ああこぴぃ野郎デスかニャ。すきるのこぴぃと武器の再現って似たような能力の幹部共なことデスニャ。
「ま、来たら来たでとっ捕まえるさ」
 ただ、阪須賀兄弟の報告によると、島周辺に見える敵影はないらしい。
「うーん、やっぱり何かおかしいお」
――やっぱり、予測されるのは『これ自体が陽動』
 阪須賀弟はふむと言葉を立った。
――…………臭いな。
「え!? 漏らしてないお!?」
――OK、黙らっしゃい。さて……俺が敵なら……。
 槇はスコープにAの背中を捕える。
――そろそろ仕掛ける頃だ。
 カゲリとネイはチルルにスイッチしていた。がんじがらめにされているゴーレムを一瞥して改めてAを一瞥する。仲間たちの消耗も激しいため、ここはチルルの踏ん張り時である。
 その闘志を湛えてAの前に立つチルル。
 それを無視できるAではない。
「だが、遅すぎたな」
 Aの戦術は確かに時間稼ぎに向くのかもしれない。そして時間稼ぎによって何かを狙っている可能性もあるだろう。
 だが何より、他者の力を吸収して強くなるという事は、戦いが長引き、収拾する力も増えるほどに。
 Aは強くなるという事でもある。
 Aが振り上げたその腕は、膨大な霊力を抱え肥大化していた。ブクブクと膨れ上がった黒い腕は三メートルにも及ぶ。
「手! 気おつけるお!」
――掴まれればワンチャンあるかもですぜ。
 直後、霊力の塊をAはチルルに叩きつけた。
 吹き荒れる暴力の嵐、衝撃で額を切るチルル。足が地面に埋まるが。それでもチルルは耐えた。
 だがその衝撃波はAの身にも返る。
 Aの頬にうっすら血がにじむ。
「さすがにこのダメージは吸収できないみたいだね!」
 チルルが盾でAの腕を押し上げる、直後四方向から襲うリンカーたち。
 それに便乗したチルル。肩を回しウルスラグナを抜いて。霊力を何重にも纏わせる。
 ライヴスリッパーである。
「ぐおっ。シャッフル……」
 同時に五方向からの攻撃これを捌き切れない、Aはチルルの一撃を胸にうけ。大きく吹き飛ぶことになった。
 塔の入り口付近めがけて。
「あああ! やっちゃった!」
 頭を抱えて、立ち上がるA。朦朧とする意識の中、地面に魔方陣を描く。 
 その魔方陣をかいくぐって放たれた槇のテレポートショットがこめかみに叩き込まれるが、Aはよろめくだけでそれに耐えた。
「くははははは、たどり着いたぞ。塔に」
 振り返るAしかし、そこには女性が仁王立ちしていた。
「うーん、技術には錬金術の体系が見て取れるけど」
――異世界の技術で間改造されているわね。
 沙耶、そして沙羅である。
 戦いが始まると同時にゲートキーパーとしてそこにいた。
「まだ片付いていない事はあるけど、とりあえずは大詰めねぇ」
――ここで組織を潰して、薬から未来ある若者を護らないと。行くわよ、沙耶!
「戦力に余裕を持たせるなんて、そんな余裕が、まさかね!」
 Aはその手の魔法陣から黒く染まったイカヅチを放つ。
 それを真っ向から受け止める、沙耶。
「あなたは、きっと私を攻撃したことを後悔するわぁ」
 肌が焼け、髪が焦げ、その中でも沙耶は笑みを絶やさない。
 自分が傷ついたとしても、それは奮起ののろしとなるから。
 沙耶は攻撃を受けながらも周囲に光を振りまく。
 Aの背後で何かひび割れる音が聞えた。
 次いで、ケアレインの輝きが全員の傷を癒す。
――あと、もうひと踏ん張りよ、頑張んなさい!
 次いで沙耶は盾を振り上げた。レイディアントシェルでのチャージはとっくに完了している。そしてシールドバッシュ。
「おおおお!」
 そのAを姫乃のその手で縫いとめた。
「俺がただの囮で神経すり減らすだけで終わると思ったか?」
――数秒でもいんデスよ。戦場(いくさば)で数秒あれば十分命に届くんデスから。
 その通りだ。 
 仁菜が二人に分身してのジェミニストライク。
 燃衣が疾風怒濤の連撃をかまし、カゲリと京子はコンビネーションで息つく間もない攻撃を。
「くそ! まだだ!」
 Aが攻撃に転じる、しかし仁菜は見ている、彼が攻撃に転じる際にいつも防御が甘くなること。
 仁菜は真横から躍り出てその眼前で猛爪を滑らせる。
 目を潰されたAはその場でもがき苦しんだ。
「おおおおおおお!」 
「これで。最後です」
 燃衣の霊力に何か濁ったものが混じる。
「隊長!」
 仁菜が声を上げるが、それに燃衣は笑みで返し、そしてその身の怨念の力。
 それを感じて無月は振り返る。昂と合わせゴーレムの動きをひきつけている彼女は、ゴーレムの拳を避けると、縫止でゴーレムを縛った。
 そして振り返る。感慨深げに頷いて、そして燃衣はそれらすべてを解放した。

――声が、聞こえる。

――敵を殺せ、虐殺せよと。

――ーー覚悟はーーいいか。

 頭の中で黒く染まっていくネイ。
「ありがとうございます。ネーさん」
 燃衣はそう感謝の気持ちを告げると、その炎を爆発させた。
「目が見えていなければ、どこから攻撃が来るかもわからないでしょう!」
 放たれた拳は瞬間に三度。悪党の魂ごと砕く。
「殺す…………殺す殺す殺すッッ! 血ヘドを吐いて! みっともなく死ねよッッ!」
 心臓をえぐりださん一撃は確かにAに届いた、その骨を、肉をひきちぎる感覚が確かに燃衣の手の中にあった。
 だが、積年の恨みはこの程度ではらされない。
「しゃんっと立ちなさい」
 京子がAの両肩を打ち抜く、するとAはまるで空中に磔にされたようにたった。
「終わらせる」
 カゲリが動いた、その刃を構えると天剣が答えるように炎を纏う。
 そして流れるような剣撃はあたりに血をまきちらし、そしてAの膝から、スッと力が抜けるように倒れ込むのだった。


エピローグ

 地面に転がったA、それに矢を向けたまま京子は歩み寄る。
 その瞬間、Aが身を起こした。
 完全なる不意打ち、京子は目を見張ったが沙耶が間に挟まり、奇襲を防ごうとする。ライヴスミラーを這った。
 だが、そのライヴスミラーは反応しない。
「私に取りついている愚神は、英知を司る悪魔でね。その性質は」
 Aは朗々と語る。かわりに聞こえる苦しそうなうめき声は、京子のもの。
 全員が振り返れば、京子は魔方陣の真ん中に磔にされていた。
「いや、ひやひやしたよ、誰も来ないかと思った。この塔と関わったリンカーがね。ただ、綿密に宣伝活動を行ったかいあって君が来た」
 カゲリが動く、その首に刃を当てて重たく声を響かせる。
「お前をこの場で殺してしまってもいいが」
「私を殺してもこの術式は止まらない、何せ、我が愚神の術式だからね」
 Aの影が揺らぐ、影がAではない姿をかたどって笑った。
「我がAの称号とCの称号は違う、似たようなことができる場合もあるが真骨頂は、英知の集積と再構築、そして記憶の抜出だ。見せてもらうぞ、この塔で何があったのか」
 しかし、その直後である。
 京子を縛っていた術式が破壊された。
「なに」
「ずっと、何かたくらんでいると警戒していました」
 仁菜が焦げた手を振ってAを睨みつける。
 Aの立ち回りに違和感を覚えた。リンカーたちはその動作を追っていた。
 そして発見したのだ。煌く宝石の魔術装置。
 それらが発動すると同時に、仁菜らは動き、そして破壊した。
「お前たち……」
「ふふふ、あたいったら天才だからね、もう奥の手も無いんじゃない?」
「奥の手、例えば……。ここにいるぜんいんと、心中。等かな!」
 次いで島を覆うほどに大きな魔方陣。それは地を歪め何かを発しようとしていた。
 だが、H.O.P.E.にも奥の手はある。
 島に撃ち込まれた楔。塔が反応した。まるで塔が力を吸収するように魔方陣から霊力を吸い上げ、そして異変は収まった。
 それを行ったのは突如島の中心に現れたリンカー。
 全身を鋼の鎧で覆うリンカーに、京子は目を見開くことになる。
「ラジェルドーラ……」
「姫乃、助けに来たよ」
 しかし、そのラジェルドーラのメットを外すと、可憐な少女が顔を見せる。
 彼女の名前は、ナイア・レイドレクス。Dやペインキャンセラーをめぐる事件で救出した少女である。
「紹介する、契約した私の英雄。ラジェルドーラ」
 天空から癒しの雨が降った。
 直後はじかれたように逃げ出すA。
 ただそれを追おうとした一行の目の前に男が立ちはだかる。新たな敵。
 戦いは電撃的に次の段階へシフトする。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 槇aa4862

重体一覧

参加者

  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
    人間|12才|女性|回避
  • 疾風迅雷
    朱璃aa0941hero002
    英雄|11才|?|シャド
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • 夜を切り裂く月光
    無月aa1531
    人間|22才|女性|回避
  • 反抗する音色
    ジェネッサ・ルディスaa1531hero001
    英雄|25才|女性|シャド
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 私はあなたの翼
    九重 依aa3237hero002
    英雄|17才|男性|シャド
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 槇aa4862
    獣人|21才|男性|命中
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 誄aa4862hero001
    英雄|19才|男性|ジャ
  • さいきょーガール
    雪室 チルルaa5177
    人間|12才|女性|攻撃
  • 冬になれ!
    スネグラチカaa5177hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
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