本部

要らないものは投げ捨てる

布川

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2018/01/04 21:35

掲示板

オープニング

●立てこもり犯1名
『いやだ! いやでありますー!』
「こら、シフタや。出てこんか!」
 とある年末の忙しい一日。
 アーヴィン(az0034)とシフタ(az0034hero001)は、扉を一枚隔てて膠着状態に陥っていた。
 アーヴィンが戸を叩くが、一向に部屋から出てこようとしない。こうしてもう1時間近くが過ぎ去っている。
 籠城の姿勢である。
 事の発端は、ほんのささいなこと。
 壊れたテレビのリモコンを、要らないから捨てようとしたところで、シフタが異を唱えたのだ。
『壊れた機械にだって心はあるでありますー!』
「なんに使うんじゃ、そんなもん」
『おじいちゃんもボクもおんぼろになったら捨てるんでしょう!』
「捨てんわ! わかった、わかったから出てこんか。その部屋の掃除機をかけたいんじゃ」
 結局アーヴィンが折れた。シフタが来てからというもの、なぜか捨てられないものが増えた。

●大掃除
『無料で廃品回収、承ります』
 H.O.P.E.からのチラシには、そんなことが書かれていた。
 エージェントたちは、思い思いに自分の居住となっている場所を見渡すだろう。
 ともかく、年末年始のこの時期は、ものを片付けるには良い機会だ。

 大掃除である。

解説

●目標
 大掃除をする。
 部屋を片付け、新たな年を迎えよう。

●解説
 年末年始に向けて、大掃除を行います。誰かと合同で行っても、1人で黙々と片付けるのも自由です。
 合同で行う場合は相互にプレイングをお願いします。

 また、H.O.P.E.では無料で大型の家電や家具などを回収しています。
 使えるものはリサイクルし、各種の施設に寄付されることになっています。
 人手を募集しているようなので、こちらでアルバイトをしても構いません。
 報酬はお餅で支払うとのことです。

・片付ける場所の状態、散らかり具合、どのように掃除するか
 などをご宣言ください。

リプレイ

リプレイ

●極寒の地
 ここは、血液まで凍りそうな極寒の大地。
 H.O.P.E.南極支部。
 氷鏡 六花(aa4969)とアルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001)は、支部近くのペンギンのコロニー内にかまくらを作り、その中で暮らしていた。
 任務あればワープゲートで東京支部へ出掛け、用事のない日は氷原を巡回したりペンギン達と遊んだり、氷海で魚を獲って生のまま食べたりする日々。
 目の前を横切るペンギンたちも、二人を仲間と思っているのか、警戒心はまるでなかった。
 一応は南極支部内にも部屋は貰っているが、暖房が効いているので暑さに弱い二人は滅多に使わない。ペンギンのワイルドブラッドである六花とアルヴィナだからこそ成り立つ生活だ。
 そんな毎日であるから、大掃除する程の家も部屋も家具も無い。
「……ん。ねぇアルヴィナ……廃品回収の、アルバイト、募集……だって」
 六花がアルヴィナを呼ぶと、羽衣一枚を纏ったアルヴィナが顔を覗かせる。
「報酬には、お餅が、もらえる、みたい……。どう……かな……?」
「ええ、面白そうね。良いんじゃないかしら。六花の白くてすべすべのお肌みたいなお餅、私も食べたいし」
「……ん。くすぐったい……」
 六花の肌は、透き通るような雪の白だ。

 二人とも車の免許を持っていないが、リンカーであればその身体だけで事足りる。
 細やかな雪の結晶の如きライヴスの粒子と化したアルヴィナが、六花の体に降り積もる。長く艶やかな髪は白雪色に、丸く大きな愛らしい瞳は極光の如き玉虫色に。纏う衣装は天女の羽衣。蒼色の薄衣は、オーロラのようにきらめいた。
「ペンギン印の廃品回収だよー」
 その天真爛漫さは、悲劇が起こる前のかつての六花を思い出させる。蒼の羽衣を靡かせて、まるで舞う様に軽やかに街中を駆け跳び回る。

 澄んだ寒空を突っ切るようにして、少女たちが往く。
 薄い羽衣一枚の、見る方が寒くなる様な格好。しかしどこか神々しく、構えると、緊張を溶かすような天真爛漫の声が響く。その細い腕に信じられないほど重い荷物を軽く持ち上げ、幻想蝶へしまうと、彼女らは颯爽と去っていく。

 ……H.O.P.E.に所属して間もない頃。
 南極支部に配属になる前は、六花は東京で孤児院の世話になっていた。
 リサイクルや寄付で役に立てるのならとても嬉しい。
(お餅も食べたいし!)

 近所の孤児院では、空を飛ぶ女神のうわさがまことしやかにささやかれたという。

●涼風邸のメイド姿、二人
『ええ~、あたしだったら今のこの家には住みたくないよ! だって動ける場所狭すぎて身体全然動かせないじゃん! 掃除しよう!』
「この量だと、結構思い切って断捨離しないといけませんね……」
 月鏡 由利菜(aa0873)とウィリディス(aa0873hero002)は、大掃除にあたり、涼風邸のメイド服を着こんでいた。
『……あれ、ユリナはお姫様の方なんだからメイド服でなくてもないんじゃない?』
「ここで掃除する以上、こちらの衣装の方が合うわ」
 そう言って淑やかに微笑む由利菜。使用人服をまとっても、人の上に立つものの気品は隠せるものではないが、驕ることのない微笑みがとてもよく似合っていた。

 まずはキッチン。
「料理は好きなのですが、使った食器を片付けるのが大変に思ってしまうことが時々ありますね……」
『今はメイドさんもいるし、家のキッチンに食洗機もあるから楽だよね~』
 どうする? とウィリディスが由利菜を見ると、由利菜は掃除用品一式を取り出した。
「キッチンを傷めないよう、中性洗剤を使って掃除します。コンロの固い汚れはヘラを使って……」
『換気扇の掃除に、フィルター張り替えはあたしにお任せ!』
「てきぱきと済ませるわね、リディス」
 様子を見ていたアーヴィンは、その手際の良さに感心していた。
『アーヴィンさん、キッチンの生ゴミも早めに片付けるからね!』

『できた!』
「きれいになりましたね」
 磨き上げられた食器。広い家ではあるが、ずいぶん手際よくやったおかげで、埃の一つもない。
「今年も色々ありましたね……」
『うん……でもあたしとユリナはこれからもずっと親友だよ!』
「ええ」
 親友。由利菜はウィリディスに死んだ親友の面影を感じている。
 ……契約の前、彼女が由利菜の本当の名前を知っていたのは、果たして、いったいどういう導きだったのか。
『ユリナ?』
「パーティーの準備をしましょうか」
『うん!』
 涼風邸では、これから新年のお祝いパーティーがある。

●あけましておめでとうへ向けて
「さて、年越し前に掃除をしとかないとね」
 皆月 若葉(aa0778)は腕まくりをする。
『面倒だが、新年を迎える前にしっかりとだな』
 ラドシアス(aa0778hero001)は頷いた。新年を迎える準備が必要だ。

 まずはラドの部屋だ。
 やや広い洋室、二段ベッドと机、本棚に玩具箱等。本人の雰囲気とはやや異なる可愛らしい印象を受けるのは、第二英雄の好みに合わせたものだからだろう。
 ラドの机の上は綺麗そのものだが、部屋を見渡すと玩具やぬいぐるみ、服などが色んなところに進出している。
『……何故ここに?』
 玩具箱から出てきた黒猫の書を手にため息をつく。かわいらしい装丁の魔法書は、第二英雄の友達を模している。……友人からの贈物で、ピピの宝物の1つだ。
 散らかってる物をあるべき場所へ戻していくと、ようやく床の上のものがなくなった。
 掃除機、水拭き、そして窓ふき。手抜きこそしていないものの、てきぱきとした手際の良さは面倒ごとをさっさと終わらせてしまいたいがゆえだ。
『……随分と増えたな』
 クマのぬいぐるみをそっと持ち上げ、丁寧に手洗いし干していく。コウモリや、ナマケモノや、ネコのぬいぐるみ。どれもこれも第二英雄の大切なものだ。
(後でピピに片づける癖をしっかりつけさせないとな……)
 ラドシアスは心に誓った。

(あっちはうまくやってるみたいだし、俺もやらないとな)
 皆月の部屋はそれなりに片付いている。ベッドに勉強机、本棚、テレビのある比較的シンプルな部屋だ。
 それなりに片付いているが、机の上や横には資料や書類等が整理しきれず山積みになっている。依頼関連のものもあれば、大学で使うものがある。
「……あぁ、これあの時の依頼のかぁ」
 目についた書類整理から開始するが、要不要確認のため目を通す内いつの間にか読みふけってしまう……。
 掃除ではよくあることである。
『……真面目にやれ』
「いてっ」
 いつの間にか背後にはラドがいて、皆月の頭をバシッと軽くはたいた。
「もう終わったの?」
『当たり前だ』
 とっくに自室の掃除が終了したラドも参戦すると、掃除ペースが格段にアップする。

「ちょ、首を振るなっ! 濡れるからーっ!!」
 押し合いへし合い、自分も洗ってくれと皆月を取り囲む飼い犬たち。皆月は浴室でびしょぬれになりながら洗う。
『……よし、いい子だ』
 ラドは大した苦労もせず、乾かしブラッシングしていく。できあがると、ふかふかがより一層増した。
「よっし! 綺麗になった、来年はお前らが主役だぞー」
 3匹は嬉しそうに飛び跳ねるのだった。

●憧れの服
「中学ジャージは部屋着にも掃除にも使えるから万能だな!」
『同じの着続けるのは引くから着替えてよねー』
 大掃除のために、ジャージを着こんだHeidi(aa0195)。Belicosity(aa0195hero001)はといえば、エプロン手袋マスクに三角巾、それにゴーグルという完全防備のいでたちだ。なお、エプロンや三角巾などは相方の手作りだ。ハイディの実家は手芸品店。自身も手工芸を趣味としている。

 大掃除とはいっても、ハイディの部屋は比較的綺麗だ。部屋には紙ゴミ、漫画雑誌などが無造作に散らばるが、整理すれば何とかなる。
 めんどくさいながらすぐに済むだろうと思っていたが、そうもいかない。
 ベリカが目ざとく手書きのノートを発見し、朗読し始めたのである。
『ええと、なになに。ブラッディ……』
 ハイディの身体は素早く動いた。中二病語録を取り上げてポイと放り投げる。
(こいつより先に闇の書を始末せねば……)
 今日から本気を出す構えのデキる引きこもり(自称)である。
(もう燃やしたほうが早い気がするケド、ハイジちゃん泣いちゃうしガマンしよ)
 携帯を確認したベリカは端正な顔でゲス顔を浮かべていた。ポエムは素早く写メって保存しておいた。良いからかいのタネになるだろう。

「こんなものかな」
 不必要なものは紐でくくり、しばらく使わないものは棚の奥にしまっておくことにした。ハイディが棚を開けると、奥から可愛いデザインの子供服が大量に出現する。
 それを見て愕然としたのはベリカである。
『何で女の子の服が!?』
「ボクを何だと思ってんの」
『女子力が干物通り越してカサカサのミイラになってる引きこもり』
「……」
 あまりによどみなく答えられてしまって、返す言葉がなかった。服の一枚を手に取る。それは昔、仕事が忙しくあまり帰ってこれない両親から贈られたもの。
 病弱だったハイディは元気な体になった時、それを着れる日を夢見ていたが……。
『ナルホド、アイアンパンクになった頃には中二病になっていたと』
「中二病とか言うな! カッコ良いだろう!」
 アイアンパンクになったハイディは、自由に動き回れるようになった。
『もういらないの?』
「スペースもあるし、別に邪魔になるものではないし……」
 ハイディは渋る。
 着れなくなっても大事……とは照れくさくて言えなかった。
 やっぱりしまっておこう。はずみで、ぬいぐるみがひとつ落ちそうになる。
「おっと」
『この子の服につくり変えちゃえば?』
 ベリカの提案に、ハイディは目を輝かせた。

 ハイディは服のリメイク、ベリカは掃除の続きと別れて作業を始める。夢中になって裁縫をするハイディの側をベリカが定期的に通り、布の切れ端や糸くずを片づける。
『掃除機かけていい?』
 仕上げの掃除機といくころには部屋はずいぶん片付いていた。返答がないと思って様子を見てみれば、机に突っ伏して寝ているようだ。
 疲れたのか図太いのか、目を覚まさないハイディの傍らには小さなサイズの衣装がある。
「ふふ……。似合っているよ、プリンセス・ブラッディ・ムーン…。特にそこの…ムニャ…」
『ブラッ……』
 また一つ良いからかいのネタができた。そう思いつつ、そっとぬいぐるみに服を着せた。
 恥ずかしくて可愛い服が着れない彼女だが、お気に入りのぬいぐるみが代わりにかつての憧れを身に纏ってくれるだろう。
『まあ確かに、似合ってるよね』

●片付いた部屋
「これで、今年も終わりですか。なかなか、長いようで短い一年でしたね」
「ロローー…」
 辺是 落児(aa0281)には年末という感慨はないようで、ただ依頼として現状を認識しているのみ。
 構築の魔女(aa0281hero001)は換気のためにそっと部屋の窓を開けた。
「さて、頑張っていきましょう」
 落児の部屋はと言えば、もともと私物はほぼ皆無だ。無機質な、ただ生きるための部屋。掃除をするまでもない。
『ロロ……』
「ふむ、見事なまでに何もありませんね…廃品回収に協力してきますか?
『ーーロ……』
 多分、分かったというような意味の言葉を返したのだろう。以前からの付き合いのある構築の魔女には、それが分かる。
「えぇ、では、お気をつけて。皆さんにもよろしくお願いしますね」

 構築の魔女の部屋は、片づけられた仕事部屋のような雰囲気だ。もとから私物などは少なめで掃除はされている。
「あぁ、テーマパークに行った時のものですか」
 パンフレットを手に取った。とても懐かしい。記念品はそっと奥にしまい、要らないものは思い切りよくざっくりと捨て去る。
「……ん? これはロシアで使ったものですね」
 古い防寒着は少し破れかけている。廃品回収に回すべきか。
「ふむ、幻想蝶があるとはいえ携行品は買いなおしを前提に整理ですね。ただ、アマゾンですぐ使いそうなものは残しておきましょう」
 応急セットは中身を整理し、補充するにとどめる。

 しばらく作業をすると、部屋はずいぶんときれいになった。
「綺麗にしているつもりでしたが、掃除も含めてなかなか時間がかかるものですね。とはいえ、これでよい気分で年越しができそうです」
 部屋をぐるりと見回す。いくつかはとってはおいたものの、随分思い切りよく捨てたものだ。
「しかし、私物がほぼなかったですね……これでは、落児のことを言えません」
 僅かに苦笑いしつつ、大掃除完了の余韻に浸る。
「まぁ、でも、リサイクルできそうなものはまとめましたし、H.O.P.E.に渡せば完了ですね」
 落児はうまくやっているだろう。

『ロー……ロ』
「力持ちじゃのう……」
 落児は重量のあるものを中心に運搬を実施している。アーヴィンは感嘆した。
 小さな子供を見かけると、怖がらせたくないのか、そっと場所を離れる。だが、子供はじっと落児を見ていた。軽々と荷物を持ち上げる様子が面白いらしい。
『……ロー』
 危なくないよう距離を取りつつ、見やすいように動いている。
『ー……ー……?』
「あ、これは後でまとめて回収するので、こちらに置いておいてください」
 職員の言葉に、落児は頷きを返す。


 しばらくすると、構築の魔女が回収所にやってきた。
『ロー…ー』
「えぇ、それじゃお疲れ様」
『ーロ……?』
 落児が差し出したのは餅だ。
「あぁ、お餅いただいたのですね? せっかくですし正月にでも頂いたらどうですか?」

 ちょうど荷物を運んできた六花と月鏡。荒木 拓海(aa1049)、と三ッ也 槻右(aa1163)、さらに皆月や御神 恭也(aa0127)らも出くわす。
「アーヴィンさん、お世話様です、お願いしますね」
「うむ、まかせておくれ」
 槻右は衣装ダンスと鏡台を置いた。
「皆さん今年もお疲れさまでした。よいお年を……」
 構築の魔女はきれいな姿勢で挨拶をした。
「あ、それで、このあとなんですけど……」
 拓海が構築の魔女を呼び止める。考えがあるようだ。

●二人でお引越し
「走りに合わせ組立てるのが良いんだ! 暇に成ったら色々!」
『幻想蝶に収納出来るわよね?』
 拓海の抗弁を、メリッサ インガルズ(aa1049hero001)はばっさりと切り捨てる。
 二人の前には、大量の車の部品。
「気分の乗った時にサッと組上げられないだろうっ」
『サッって1年置いとく事なの? 大体なんで室内……』
「だってさあ……」
 大掃除と荷物整理。とりあえず一番広い部屋に移動させてはみたものの、二人の荷物を全て入れるには手狭だ。
 次にメリッサは置いてある衣服を指さす。
『この辺りは要らないわよね?』
「……スリ切れ具合と肌触りが」
『着てるのを見た事が無いわよ』
「コレ位なら場所は取らないだろ」
『1着ならね……』
 着なくなった服は、衣装箱一杯に詰まっている。
「捨てないったら! ……いや、減らすよ」
『次はこれね』
 次にメリッサが目をつけたのは、本格筋トレマシーンだ。
「仕事で自然と鍛えられるから使わなかっただけで、使うから!」
『仕事でOKなら自宅では不要ね?』
 そう言われると、何も言い返せない。メリッサはすっかりカチカチになった筆を見つけた。
「そのうち描こうと……」
『絵の具は固まって……紙は黄ばんでない?』
「この部屋にこのまま置かせ……」
 隅っこでいいから、と頼んでは見たものの、メリッサにぴしゃりと言われてしまう。
『今日から私と千ちゃんの部屋よ』
 そう、槻右との入籍に向けて。

 二人のにぎやかなやりとりが聞こえて、槻右は微笑みを漏らした。にぎやかになりそうだ。かつての家族写真を見て、すこししんみりしていたところだった。
 2階建て小さな庭付きの一軒家。ここは、亡き両親と共に住んでいた家。昨年末に拓海達が越してきて、……今年、入籍の運びとなった。

(……部屋割りから考えないと)
 一緒に暮らす姿を想像すると、やはり照れるものがある。
 隠鬼 千(aa1163hero002)はぬいぐるみたちを前に悩んでいた。
(兎さんにキリンさん……カピバラさん……。大きい子、少し減らしましょうか)
 選んで手にとってはみたものの、どれも大切なものだ。つぶらな瞳でこちらを見つめてくれるぬいぐるみ。わいばーん、でぃあぶろ、大切なお友達。
(……でも……捨てるなんて)
 どうしようかと考えあぐねていると、考えがひらめいた。
(そうだ……近くの保育園に連れていきましょう、寂しくないはずです!)

 1階は常手を加えているが、問題は2階と物置だ。
 2階は、両親がいた時のままの部屋割り。物もそのままになっている。
 槻右は手にした手にした写真を戻す。
(いっぱいあるなぁ)
 しばらく辺りを見回していたが、決心がついた。
 新しい家族が、向き合う力をくれた。
(よしっ、とにかく捨てよう!)
 衣服は段ボールに纏めて後日リサイクルに出すことにした。ごみは分別。……写真は、大切にしまうことにする。
『主、これも処分ですか?』
 千が見つけたのは、きれいなアクセサリーだった。
「母さんのアクセサリーかぁ……ほしい?」
『はいっ!』
「そっか……残してもいいのか……。うん、使ってくれると嬉しいよ」
『ふふ、また大事が増えちゃいました』
 ものがなくなっても、思い出はなくならない。
(少し寂寥を感じるけど、清々しさも感じる)
 残しておこうと思えたものは、父の万年筆や、コート等の数点。狐皮の襟巻と手袋も千に渡した。手触りを楽しむように撫でている。
『どれも素敵です! 主、大事にしますね!』
「嫌じゃなかったらリサさんも欲しいの持ってって?」
『大切な品よね? ……気持ちと共に預からせて貰うわ』
(この潔さ、大違いね……)
 拓海はまだどれを捨てるか考えあぐねているらしい。

 頑固さと優柔不断に呆れたメリッサは、槻右に後を任せ千と夕飯の買出しへと行くことにした。
『レイアウトから変えたいわね♪』
 可愛く華やかに模様替えの相談に花が咲く。
「ベッド、くっつけてもいいですか?」
『素敵、寝ながら沢山お話しましょう』
 何を話そうか、今からでも楽しみだ。
『保育園? いい考えね。私も一緒したいな♪』
「はい! あ、途中で、すごくかわいい服を着た子がいて……」
 千は嬉しさを隠さず弾んだ返事を返す。
(リサ姉と買い物に料理に、部屋の飾りつけ! 凄く楽しいんです)

「おかえり」
 ただいま、とちょっと照れた様子の拓海。
「いろいろ知った顔と会ってね、それで」
 戻ってきた拓海は、あまりに少ない荷物に言葉に詰まった。
「え、これだけ?」
「うん」
(槻右がオレとは別次元に大切なモノを処分し、場を作ろうとしてた)
 ……言葉が出なくなる。
「残しておこう、処分ならオレのをする」
「うん、でも……」
 だが、晴れ晴れとした表情に押された。
「……判った、なら空いた場は二人の新しいモノで埋めて行こう。寂しいと感じる暇が無い日々にしよう」
 互いの荷物を二人で一緒に片付ける。
「冬用カーペット発見! ……あ、だめだ……放置したからなぁ」
「洗ったらなんとか……ならないか」
「拓海、この工具って使える?」
「まだ新品じゃない?」
 はしゃぐ拓海がなんだかおもしろい。
「結構空いた……けど、入りきらない? もう少し捨てようか」
「いや、ここをこう、押し込めばなんとか?」

 車の部品は、庭の倉庫を片付けて作業スペースも確保しておいておく。服と画材は処分する。
筋トレグッズは……二人の部屋へと置くことにした。

「何とか収まったね」
「? ……あれ? 動かない?」
 拓海は思わず笑いをこらえた。どうやら筋力不足で動かないようだ。

『すっきりしたわね~奮発して和牛にしちゃった』
 戻ってきた二人は可愛いカーテンとクローゼットを注文したそうで。
 年明け後も片付けすることになるのは確定だが、楽しそうだ。

●恒例行事
「……俺達がここ以外の掃除を終わらせている間にお前は何をしていたんだ?」
『え~っと……捨てる漫画の最終確認?』
 しばらく目をさまよわせた後、伊邪那美(aa0127hero001)は無邪気にそういった。
「ただ読みふけっていただけだろうが! これ以上滞る様なら全て棄てるからな!」
『わ~! 直ぐに仕分けるから全廃棄は待ってよ~』
 恭也の檄が飛ぶ。
 現状、家の大掃除は伊邪那美の部屋以外は完了している。

 恭也は伊邪那美の部屋を見回した。漫画や古い雑誌が散乱し服等が脱ぎ散らかっている。
「去年からまるで成長していないな……まぁ、食べ物の残り滓がないだけまだマシか」
『幾らズボラなボクでも食べ掛けのお菓子をそのままにはしないったら』
「夏服を脱ぎ散らかして、そのままにしている奴が言ってもな……」
 部屋の中には数か月前にぴったりの涼しげな服だ。
「ふむ……どうやらシミなんかはついて無いようだな。これなら洗濯機で洗えばどうにかなるか」
 取り敢えず、服は全てカゴに入れて洗濯に回す。伊邪那美は、要る物と要らない物の仕分けに専念させる。ちらほらと漫画雑誌のほうを気にしたが、そのたびに恭也が視線をやる。
 しばらくすると、部屋はだいぶすっきりと片付いて見えた。
 恭也は粗大ゴミ等をゴミ捨て場に持っていく。
「一応は言っておくが、俺が帰ってきたときに怠けている様なら……」
『わ、解ってるってそんなに念を押さないでよ~』
 なんとか目こぼしを貰った持ち物をかばいつつ、伊邪那美は掃除機と雑巾がけのバケツを手に取った。

 ゴミ捨て場にて、知った顔と出会った。どうやら、このあとはすき焼きパーティが行われるようだ。
「というわけだ」
『行く! 行く行く!』
「予定時間になっても終わらなかったら俺と雫だけでも参加するからな」
『絶対に終わらせて、ボクも参加するから!』
 その宣言通り、なんとか掃除は終わったようだ。一通り掃除を終えると、部屋はずいぶんきれいになった。伊邪那美はやり遂げた顔をしている。
『何を持っていくつもりなの?』
「新年の挨拶も兼ねているからな、本来は酒が良いんだろうが飲むかは分からんし追加分の肉にするつもりだ」
 肉にはずれはない。

●すき焼きパーティー
「すみません、拓海さん。私もすき焼きパーティーに参加したかったのですが、この後涼風邸で新年のお祝いパーティーがありまして……」
 月鏡は残念そうに誘いを断った。
「皆様、今年一年ありがとうございます。どうか良い新年をお迎え下さい」
『あたしからも、今年一年ありがとー! 来年もよろしくっ!』
「そうか。またな」
「残念だけど、またこんどね」
 メリッサが手を振る。

「鍋の後はやっぱアイスでしょ!」
『お前は……去年も同じ事を言っていたな?』
 去年も皆と鍋したなと懐かしみつつお宅訪問。ちょうど恭也がいた。
「そっちはお肉かー!」
『そっちは……例のアレだね!』
「アイスだろう……」
 伊邪那美は嬉しそうだ。

 手土産をもって、荒木邸に着々と人が集まる。
「リサさん、千ありがとう」
「アイスだ! 若葉、今年もありがと」
(……つめたいの……)
 六花はアイスが嬉しそうである。
「みんな、大掃除お疲れ様でした!」
『……毎年の恒例になりそうだな』
「……ん。お二人とも、ご結婚、された、そうで…おめでとう、ございます」
『おめでとう』
 六花とは【絶零】で共闘した仲だ。礼を言うタイミングがかぶって照れた。
『魔女様、ありがとうです!』
「魔女さん、次回はゆっくりしていってくれ」
「お邪魔しますね」
『氷鏡様、御神様、遠慮せず中へどうぞ!』
「六花ちゃん達と若葉達が来てくれたよ」
「恭也達もだ、オレ達の家にようこそ」
 オレ達の家ということになるのか、と改めて照れる。

 六花もアルヴィナも、熱いものは苦手だ。
 皿に取り分けた自分達の分を、アルヴィナは冬の女神の吐息で冷ます。
『何これ美味しい!』
「うわ、ほんとだ」
 伊邪那美の言葉に、皆月が同意した。

「なんか、いいな、こういうの」
「だね」
 さあ、新年の準備は万端だ。拓海と視線合わせ照笑い、皆に良い年が来ます様にと願う。
 全員が座れる様に席を詰め、今日の苦労と綺麗自慢を聞き笑い。
(捨てなくても良い思い出で、皆も一緒に今年を埋めよう)

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 魔法少女プリンセスはいじ
    Heidiaa0195
    機械|16才|女性|命中
  • 最終兵器お呼び出し
    Belicosityaa0195hero001
    英雄|14才|?|ソフィ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
    人間|20才|男性|命中
  • 温もりはそばに
    ラドシアス・ル・アヴィシニアaa0778hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 花の守護者
    ウィリディスaa0873hero002
    英雄|18才|女性|バト
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 拓海の嫁///
    三ッ也 槻右aa1163
    機械|22才|男性|回避
  • 分かち合う幸せ
    隠鬼 千aa1163hero002
    英雄|15才|女性|カオ
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969
    獣人|11才|女性|攻撃
  • シベリアの女神
    アルヴィナ・ヴェラスネーシュカaa4969hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
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