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猫正月
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【相談】お正月をにゃんこ達と
最終発言2017/12/28 21:00:11 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/12/28 20:58:17
オープニング
●一月一日営業してますにゃ〜
「正月って意外に暇よね」
タマ子は九条の研究室でぼやいた。
「まぁな」と、九条は高速でプログラミングを構築しながら相づちを打った。
「俺やおまえみたいなのは挨拶周りがあるわけじゃないからな」
「ってことは、結構、商売日和だと思うのよね〜」
「なんだ? 正月も猫カフェを開けるつもりか?」
「そう。私は結局猫たちのお世話をしにお店には行くわけだから、開けようと開けまいと同じことなのよ」
「でも、そうそう客なんて来ないと思うぞ? 暇を持て余していたとしても、家でゴロゴロとして過ごす、それが正月だろう?」
「だ・か・ら!」と、タマ子は言葉に力を込める。
「そのゴロゴロを猫カフェでやってもらえばいいじゃない♪」
「いや、だから、ゴロゴロするのにわざわざ外になんか出ないだろ……」
もっともな九条の言葉は聞かずに、タマ子は勢いよくフィリップを振り返った。
「というわけで、チラシ作りは任せたわよ!」
タマ子のためにお茶を淹れていたフィリップはピシッと手を額にあてて敬礼した。
「ラジャっ!」
解説
●目標
猫カフェ タマらんどに行く&自由に過ごす。
●状況
・部屋は正月仕様。
・こたつやクッションなどあり。
・書き初めの道具、すごろく、かるたなどあり。
・甘酒やおしるこあり。他、食べ物や飲み物持ち込み可。(未成年の飲酒厳禁)
・広めの調理場あり。使用可。
●タマ子からの注意点
・猫に危険な食べ物や飲み物は与えないでください。
・猫草やぬいぐるみは無闇に持ち込むと奪取される危険あり。
・猫たちが激走している時にはご注意ください。横になっていると容赦なく踏まれるため、思わぬ目つぶしや衝突事故に遭う危険性があります。
リプレイ
●うぇるかむ天国
駅前の商店街の一角、看板には『猫カフェ タマらんど』の文字。
「なんじゃ此処は? 天国ではなかろうか!」
セラ(aa0996hero001)がその目をきらきらと輝かせる。猫カフェなので猫がいることはもちろんのこと、この時期限定でこたつまで列をなして置いてある。
「気に入って貰えてよかったよ」
久しぶりにセラと一緒に外出した炉威(aa0996)は喜々としているセラの表情に胸を撫で下ろす。
「オリ、元気してたか? 何だか久々な気がするな」
タマらんど常連のオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)はさっそく挨拶に来たオリを抱き上げて、オリが鼻キスをねだるのに合わせて鼻先をくっつけた。すこし濡れてひやりとする。そんな冷たささえも愛しいのだ。
木霊・C・リュカ(aa0068)の足下にはやんちゃ三匹が挨拶に来て、その足に体をすりつける。目の不自由なリュカは踏まないように注意しながら膝をついて三匹を撫でた。
「相変わらず君たちは元気だね」
三匹につられたように他の猫が寄ってきた。頭から背中、腰、しっぽの先まで撫でてやると、馴染みのある猫なら判別ができる。成長とともに体型が代わってしまっても、しっぽの長さ、形、鍵しっぽの鍵の形など、しっぽの特徴は変化しないため、リュカにも猫の個体がわかりやすい。
短いしっぽによく丸まった鍵しっぽの猫を撫でて、リュカは「あれ?」と声を漏らす。
「この前まで子猫だったのに、もうこんなに大きくなったんだね」
子猫の成長を嬉しく思い、リュカは丁寧に撫でた。
「一匹一匹をよく覚えてるな」
「ヴィクター君も来てたんだ!」
リュカがその手を伸ばすと、ヴィクターはその手を取って立たせた。
「あけましておめでとうございます! ふふ、ぶっちー達もお元気そうでなによりです」
紫 征四郎(aa0076)はやんちゃ三匹と視線を合わせて挨拶をした。
「今日はプレゼントを持ってきましたよ!」と、征四郎が大きなクマのぬいぐるみを出すと、赤茶色の毛並みの猫が瞬時に飛んできた。
「さすが、ひーちゃんは反応が早いのです!」
しかし、大きなぬいぐるみは他の猫たちの目も引き、数匹の猫たちがぬいぐるみによじのぼる。
「これはみんなで仲良く使ってください」
「征四郎ちゃん、ありがとうね」
タマ子がお礼を言った。
「タマ子さん明けましておめでとうございます! 新年から変わらずお美しい!」
ガルー・A・A(aa0076hero001)がタマ子の手を握ろうとしたが、その手をオリヴィエが手刀でたたく。
「いっっっ……おま、なにす……」
オリヴィエに文句を言おうとしたガルーだったが、オリヴィエはすでにオリと一緒に遠くにいた。
「ひっさぁしぶ~りのーータ~マら~んどーー♪」
機嫌良く歌いながら店の扉を開けて入ってきたのはカール シェーンハイド(aa0632hero001)だ。
「……正月早々、浮かれててイイ具合だな……カール……」
レイ(aa0632)は呆れた様子でカールに続く。
「勿論! だって年明け早々、にゃんこまみれとか……っ」
へにゃりとカールの表情が崩れる。家でゆっくりする予定でいたレイは深いため息をひとつこぼした。
チラシを手にタマらんどへと足を踏み入れた荒木 拓海(aa1049)はヴィクターと沙羅を見つけると声をかけた。
「久しぶり! 実は……もっと早い時期に報告したかったんだが……」
照れてなかなか言葉の出てこない拓海にヴィクターは首を傾げる。
「……どうした?」
拓海はメリッサ インガルズ(aa1049hero001)をちらりと見て言う。
「年末に、結婚したんだ」
あまり感情が顔に出ないヴィクターではあったが、口元が緩やかに弧を描き、「おめでとう」と言った。ヴィクターの気持ちの分まで沙羅はテンションをあげて祝福する。
「久しぶりにお猫はんらと愛の逃避行どすな~!」
そうテンションをあげて入店したのは弥刀 一二三(aa1048)だ。
「……言っている意味が分からんな」と、キリル ブラックモア(aa1048hero001)は一二三に呆れた視線を送る。
ニウェウス・アーラ(aa1428)の目は猫たちを見たとたん、きらきらと輝き出す。
「ここが……噂の、タマらんど……」
「ヤダこの子、目が尋常ではないレベルで輝いてるぜ?」
そんな二ウェウスにストゥルトゥス(aa1428hero001)はすこし引き気味だ。
「ねこねこ……もふもふ、にくきゅー、ぷにぷに……」
二ウェウスは三毛猫を一匹抱き上げるとそのお腹に顔を埋めて深呼吸した。
「ねこ欠乏症、ここに極まれり……」
ストゥルトゥスは肩を竦める。
「お正月をにゃんこと一緒にぬくぬくできるなんてご褒美だよぅ~♪」
エクトル(aa4625hero001)はタマ子から紐状の猫じゃらしをもらい、ご機嫌にくるりと一回転した。当然、エクトルに合わせて猫じゃらしも揺れて、猫たちのテンションもあがる。
「クロももふもふあったかいの好きでしょ! 折角お仕事休みだからのんびりしよーね♪」
夜城 黒塚(aa4625)は向けられた満面の笑顔に「ったく」と、エクトルの頭をくしゃりと撫でた。
「ガキの癖に大人に気ィ遣うなんざ十年早ェんだよ」
アリス(aa1651)とAlice(aa1651hero001)は入店するなり、「こたつ……」と早々にこたつへ入ろうとしたが、こたつのなかにはすでに数匹の猫の先客がいた。しかし、そんなことはおかまいなしに、二人は猫たちの間に細い足を入れていく。
窓辺の日のよく当たる場所を陣取って、隠居した老人のようにゆったりとその場の空気を楽しんでいるのは御神 恭也(aa0127)だ。もの静かなその男を猫たちが好まぬわけがなく、あぐらをかく恭也の足の間には猫が二匹、絡まるように丸まって寝ている。恭也はそんな猫たちの背中を撫でてやりながら緑茶を飲む。
「……平和だな」
「……とてつもなく爺臭いですよ」
不破 雫(aa0127hero002)は事実をオブラートに包むこともなく指摘した。
「放って置け、分からんだろうが良いものだぞ」
穏やかなまなざしで猫たちを撫でる恭也に雫は悔しがる。
「動物から嫌われる私の体質を知ってるくせに嫌味なことを!」
悲しき体質に、雫の周りには一匹も猫は寄ってこない。
●振り回されよ! 猫信者共!
セラは寝ている猫の前にしゃがみこみ、じっくりと猫の寝顔を見つめる。
「こんなに猫を近くで見るのは初めてなのじゃ……のう、炉威。この者共は触っても良いじゃろうか……?」
「何気に猫を触るのは初めてなんじゃないか?」
炉威が猫の頭を優しく撫でて、お手本を見せる。
「そうじゃな。殆ど外に出かけんからのう!」
「はい。悪かったよ」
炉威は許しを請う代わりに子猫を選んで抱き上げるとセラの腕の中に抱かせる。
「ヴィクター、お汁粉作りたいんだけど、ちょっと手伝ってくれない?」
タマ子の言葉に、ヴィクターは「ああ」と頷いてこたつから出る。
「タマ子さん、俺がお汁粉作るの手伝いますよ」
ガルーの申し出にタマ子は喜ぶ。
「それじゃ、ヴィクターには買い出しをお願いするわ」
ヴィクターは頷き、沙羅と出かける。
「……」
調子のいいガルーの脛をオリヴィエは憮然として蹴る。
「いっっ……リーヴィ! おま、ホントそれやめ……」
そうオリヴィエに注意しようとしたが、またしてもオリヴィエはすでに遠くにいた。
「え? なに? オリヴィエさんはいつの間にテレポートを取得したの?」
「オリヴィエに魔法かけてるのはガルーちゃんだけどね〜」
リュカは小声で言って笑う。
部屋の隅っこ、なぜか恭也の背中に隠れて、オリヴィエはオリに恋の相談をする。
「……その、どうやら、な、本当に、好きみたいなんだ……」
ふむふむ、へーと聞いているオリではあったが、その表情は正直その手の相談は興味もなく面倒だしさっさと遊びたいと物語っている。しかし、いつもはオリの表情を読み取ることのできるオリヴィエはそれに気づかない。
「それでな……」
ぽつぽつと言葉を零すように相談を続けるオリヴィエを隠す恭也は自分は聞いてはいけない話であろうと察して念仏を唱え始める。
「まーかーはんにゃーはーらーみーたー」
そんな恭也に雫は引く。
「なんですか、それ……本当に怖いからやめてください……」
恭也から後ずさるように逃げる雫の袖を征四郎が引っ張った。
「雫もおこたどうですか? ぬくぬくなのですよ!」
雫は征四郎に誘われるままにこたつに入ってみると、こたつに入れた足にもふもふがあたる。
「意外とこう、気にしないくらいの方が、来てくれたりするものですよ」
征四郎のアドバイスを受けて、雫はこの足下のもふもふが離れてしまわないように『気にしない』方法を考えてみる。
「……まーかーはんにゃーはーらーみーたー」
結局、似た者同士なのだ。古来から伝わる素晴らしき精神統一方法念仏!
念仏唱える雫の隣では念仏をまったく気にしないアリス&Aliceがころころごろごろして、たまに近寄ってくる猫たちを撫でて、遊んでいる猫たちを見守る。
拓海は気の合いそうな白猫の気をエノコロワンドで引き、自分のそばまで誘導する。
「さぁ! オレの膝においでー」
エノコロワンドをあぐらをかいた膝の上で動かしてみると、猫は素直に膝の上に乗り、遊ぶ。
「おまえ、いい子だな」
しっぽの付け根をぽんぽんっと軽くたたいてやると、猫のしっぽは気持ち良さそうにあがる。顎や耳の付け根、背中など撫でてやると、こたつの温さもあって猫は拓海の膝の上で体を丸めた。
拓海はスケッチブックを開き、猫の重さに幸せを感じながら、その幸せを描き出していく。
「……キリル! この玩具、お猫はんらが気に入っとるようどすえ」
猫と自作のねこじゃらしで遊んでいた一二三が、猫が寄ってこないことを心で泣きながら猫のために作った自作のおやつをほおばり続けるキリルに差し出す。
「ふん。どうでも良いが……」と、クールに振る舞いつつもキリルは若干涙目だ。
「フミがそこまで言うなら……遊んでやらんこともない」
ねこじゃらしを受け取って振ってみたが、キリルにねこじゃらしが渡った途端に猫たちは蜘蛛の子を散らすように離れていった。
「……」
キリルはおやつの袋を逆さにして自分の口のなかに流し込む。
「キリル、早まったらあかーーーん! おやつは残しときー!」
一二三は急いで自作おもちゃ二号リモコン鼠リアルバージョンを走らせる。するとすぐに数匹の猫が食いついてきた。
「おおっと、ここで三毛猫君がぁ、第二コーナーで白猫君をブチ抜いて、リモコン鼠に一撃を……おしぃ〜! 外してしまった〜!」
リモコン鼠を追いかける猫たちの実況を始める二ウェウスとストゥルトゥス。
「おっと、鼠が方向転換をしてキリルさんのほうへ……あの早さの猫たちが突っ込んでは大事故のようにも思いますが……」
「でも、キリルさんの表情を見る限り、大歓迎ウェルカムっ! って感じですから、きっとなにか大事故を避ける秘策があるのではないでしょうか……」
秘策などない。ただ、大事故だったとしても大歓迎なだけだ。
「おっと、ここでまたしても白猫君が三毛猫君と並びました……さぁ、どっちが先に鼠を捕まえるのか……」
「はたまた、キリルさんがゴール地点なのか……?」
一二三の計算でいけばゴールはキリルの予定なのだが、ここで計算外の不幸が起こる。
「キリルさんのところまであと十センチというところで……」
「白猫君! 白猫君が見事に鼠をしとめましたー!」
「お! しかし、白猫君がしとめた鼠を三毛猫君がまさかの横取りかー!」
「いや、白猫君も負けじとくわえた鼠を放しません!」
そこで一二三が「あ!」と叫んだ。
「噛み砕いたらアカ~ン! 中から不味い液が出てまう~!」
なんともわざとらしい一二三の知らせに、涙をこらえて不細工になった顔を伏せていたキリルが顔を上げる。それとほぼ同じタイミングで白猫が鼠のおもちゃを噛み砕いてしまい、中から出てきた苦い汁に慌てる。
「それは体に害はないから大丈夫や……」
一二三は視界がぼやけるのを感じた。
(大丈、夫やけど……相、方ん為……や、けど……うち……は……!)
猫に対しての強い罪悪感から一二三は失神し、その場に倒れそうになったところをキリルが支えた。
「そんな危険なものを使うな! 愚か者!」
キリルはそれだけを一二三の耳元で叫ぶと、一二三を放り出して、白猫を捕獲して自作のお菓子を口のなかへ放り込む。
「こ、これで口直し出来たか?」
白猫はかりかりとお菓子を噛み、そしてその目をきゅるんっと輝かせてキリルを見上げた。にゃ〜っと可愛く鳴いて強請る猫にキリルは鼻血が出ないように片手で鼻を覆い、もう片手におやつをのせる。
「し、仕方あるまい! 相方の失態は私が補わねば……」
感涙を流しながらキリルは猫におやつをあげる。白猫の様子に三毛猫や他の猫たちも寄ってきてキリルの手からおやつを食べる。
「最後にこんな感動的な展開が待っているなんて……」
二ウェウスとストゥルトゥスは微笑ましくキリルと猫たちを見つめた。
レイは猫たちのドタバタぶりを見ながら、頭のなかで曲を作っていた。そんなレイの膝の上では子猫が二匹遊んでいたが、レイが作曲に集中し始めるとにゃーと可愛く鳴いてレイの気を引いた。
「……ああ、おまえたちのこともちゃんと曲に入れるから安心しろ」
レイが頭を撫でてやると、子猫たちは満足そうにまた遊びだした。
●元気はつらつ!
その頃、調理場ではガルーがお汁粉を作り終わったところだった。「次は……」と、ガルーは冷蔵庫を覗き込む。
「そこにはたいしたもの入ってないわよ」
沙羅の声に振り返ると、沙羅とヴィクターが買い物袋をぶら下げて帰ってきたところだった。
「いろいろと買ってきたから、おつまみとかもお願いできる?」
「任せてください! 沙羅さん!」
両手を広げたガルーに沙羅が囁く。
「また、脛を蹴られるわよ?」
ガルーがあわてて周囲を見渡したが、オリヴィエの姿はない。
リサが両手に荷物を抱えて調理室に入ってきた。
「沙羅ちゃん、オーブンって使える?」
「メリッサもなにか作るの?」
「猫たちのおやつを作ろうと思って。下ごしらえはしてきたから、あとは焼くだけなの」
「俺も調理場貸して」と、カールが入ってきた。その後にストゥルトゥスと恭也も加わり、調理場は賑やかになる。
「今年も美味しいものが食べれそうね♪ 私たちも猫たちも♪」
沙羅はスキップで猫たちの部屋へと戻っていく。
「書き初め、うまく書けたか?」
真剣な表情で筆を握りしめる征四郎にオリヴィエがそう聞くと、集中している征四郎はゆっくりと答えた。
「『精進』の『精』の字がなかなかうまく書けません……」
雫は真剣な表情で『招き猫』と書き上げた。
「これで猫が招ければいいのですが……」
それは猫を招くための言葉ではないが……。
「……その、何だ。元気だせ……?」
オリヴィエは巨体の猫、その名も『めたぼ』を雫の膝の上にのせてみた。めたぼなら動くのを面倒がってその場にそのままいてくれるだろうと思ってのことだったが、めたぼはその巨体をゆっくりと持ち上げて、雫の膝の上から降りると、こたつの中へと消えていった。
エクトルも真剣な表情で持ちなれない筆を握りしめ、大きな字を書く。エクトルの書いた『元気』の字はまさに跳ねるように元気いっぱいの字だった。
「いい字だな」
オリヴィエに褒められて、エクトルは満面の笑顔を返す。
「黒! できたよ!」
黒塚はこたつで猫を抱えて暖をとりながら、エクトルの墨のついた顔に苦笑する。
「皆が今年一年元気いっぱいでいられますよーに!」
「おまえらもな」と、黒塚は猫の喉を撫でた。
「ふっふっふ、よおし大人しく肉球をぽんするのだ虎之助!」
書き初めの様子をこたつでごろごろしながら聞いていたリュカが頭の横で寝ていた虎之助を抱き上げた。
「せーちゃん、お願い」
虎之助の肉球に墨をつけてもらい、リュカは自分の頬にその肉球をぺたりとつけた。
「オリヴィエ、どう? うまくついた?」
オリヴィエは「ああ」と頷き、自分の頬にはオリの肉球をつけた。征四郎と雫も虎之助の肉球をつけて顔を見合わせて笑う。
「またそんなことしてんのか?」
お汁粉を運んできたガルーの頬に、征四郎が虎之助の肉球をぺたりとつける。
「……」
そっとお汁粉だけおいてその場を離れようとしたヴィクターの気配を察したリュカはその足にしがみつくようにしてヴィクターを捕まえる。
「せーちゃん! ヴィクター君を捕獲したよ!」
「ヴィクター! お覚悟を!」
ヴィクターの頬にも無事に肉球がつく。
「ヴィクター君、暇になった? リアル猫集めしよ〜」
「悪いが、まだ手伝いがあるんだ」
「やだ~! ヴィッちゃん構ってくれなーい! ねぇ〜ぶっちー!」
リュカはぶっちーのお腹に顔埋めてこたつのなかでバタバタと足をばたつかせる。
征四郎はまだ書き初めに夢中になっているエクトルに声をかける。
「エクトル、お汁粉どうですか?」
「んゆ? おしるこあるの? 僕も食べる!」
勢いよく挙げられた手に、思わずヴィクターは微笑み、お汁粉をひとつエクトルに渡した。
征四郎は黒塚のところにもお汁粉を持っていく。
「黒塚さんもお汁粉、どうですか?」
「ありがとな」と、黒塚は征四郎の頭を撫でた。
「あったかーいあまーいおいしー♪」
「そうだ!」と、エクトルは黒塚のかばんの中から蜜柑とお煎餅を取り出す。
「良かったらお姉ちゃんとお兄ちゃん達もどうぞ!」
「ありがたくもらっていくぜ」とガルーはお煎餅を一枚口にくわえて、ヴィクターと一緒に調理場へと戻っていった。
沙羅が炉威とセラ、アリスとAliceにもお汁粉を配る。
お汁粉をひとくち口に入れて、アリスは納得したようにひとつ頷いた。それからAliceの様子を見て、微かに微笑んだのだが、微かすぎて周囲の者は気づかない。
「冬の空気は格別じゃな」
窓の外を見てそう呟いたセラの言葉に炉威が「久々の娑婆の空気って感じかね?」と聞く。
「うむ。殆ど外に出かけんからのう!」
「はい。悪かったよ。今外に居るんだから問題ないだろ?」
「問題はある。もうすこしくらいは外に出たいのう」
「……善処します」
「しかし」とセラは言葉を続ける。
「それだけでなく、冬の独特の静かな空気のなかでこうして温かいものを食すというのは、格別にいいものじゃ」
ガルーがまたお盆を持って猫部屋に戻ってきた。
「お汁粉、追加持ってきたぞ。食ってないやついるか? おかわりもあるからな」
そう周囲に声をかけながら、ガルーはオリとなにやら小声で話しているオリヴィエを見つけると、小食のオリヴィエのために少なめによそったお汁粉を持っていく。
「リーヴィ、お汁粉食うか?」
ガルーに気づいたオリヴィエはさっとオリを持ち上げてその影に隠れる。
「……」
オリヴィエの反応にガルーは少なからずショックを受けるが、どうにかポーカーフェイスを保つ。
「……お汁粉は、食べる。餅はひとつでいい」
「わかってるよ。これはおまえ用だ」
ガルーはお汁粉をその場に残してまた調理場へと戻っていった。
「オリ……俺、変じゃなかったよな?」
いや、変だっただろ? と、正直に伝えたいところだが、さすがにそれは言い難く、オリも「な!」と答える他ない。
●食べよ飲めよ
「にゃんこたちー! 君たちにもおやつだよ〜!」
メリッサが焼き上がった猫用おやつを持ってきた。しかし、その言葉に真っ先に反応したのは猫ではなくキリルだった。
「私にもくれ! おやつがなくなって、猫たちがまた離れていってしまった」
涙目のキリルにメリッサは気前よくおやつをあげるも、キリルとメリッサを見比べた猫たちはメリッサに群がる。
「みんなお腹空いてるのね……思った以上の反応の良さだわ」
メリッサはおやつをすこしだけ手元に残してあとは征四郎に渡した。
「みんなに配ってくれる?」
「了解なのです!」
「僕も猫たちにおやつあげます!」
お汁粉を食べ終わったエクトルも参加する。
「これがササミジャーキーで、こっちが卵ボーロ、それからこれが野菜クッキーね」
メリッサの説明に雫が感心する。
「いろいろあるんですね」
拓海はメリッサが作ったおやつを食べる猫たちの姿を手早く、しかし丁寧にスケッチしていく。
メリッサはビデオを構え、おやつをすこしずつ猫たちにあげる。
「美味しい?」
そう聞くと、黒猫が顔を上げて舌で口の周りをなめる。
「可愛い〜〜〜! あなたはお話わかるのかな? ゴロンってして見せて☆ ……伝わるかな?」
メリッサの言葉は伝わらなかったようだが、黒猫は「ん?」というように小首をかしげた。
「キャー! 可愛い!!」
家で待つ者への土産とするため、メリッサは猫たちの様々な仕草をビデオに収めていく。
「料理もできたよ〜!」
カールが手鞠寿司、ガルーはカナッペなどお酒のおつまみになりそうなものを、ストゥルトゥスはフライドポテトやアヒージョなどを運んできた。
「やっと正月らしい時間が来たわね〜」
跳ねる声で入ってきたのはタマ子だ。その手にはウーロン茶と日本酒。「ちゃんとジュースもあるわよ」と沙羅はオレンジジュースともう片手にはワイン。
「……仕事は、どうした?」
ヴィクターのツッコミに、タマ子は『店長』のバッチをヴィクターの胸につけた。
「まだまだ料理あるからな、先に始めんなよ?」
ガルーはそうリュカに注意したが、リュカは「はーーーい!」と返事しながら、すでにガルー持参のグロリアビールを開けている。
タマ子も早々に日本酒を開けて、ガルーの作った数の子といくらとチーズを合わせたカナッペを口の中に放り込んで、「うま!」と口元を緩める。
「猫たち、できたぞ」
恭也は合いびき肉を炒めて鰹節とご飯、野菜ペーストを混ぜて猫用ごはんを作った。冷めた物に水を加えて食べやすくする。
「以外に手の込んだものですね」
雫は運ぶのを手伝いながら言った。
「俺も詳しくはないが、水分が多い方が良いらしいから冷や飯と味噌汁の組み合わせは悪くはないんだろうが、塩分が多いものはまずいらしいぞ」
たくさん遊んでお腹を空かせた猫たちが集まってくる。こたつからもぞろぞろと猫たちがはい出してきた。
チキンフリッターとバーニャカウダも運んできたストゥルトゥスに二ウェウスが言う。
「む。ストゥル、料理のレパートリーが、増えてる?」
「それなりにねー」と答えながらストゥルトゥスは山盛りのエビフライを自分の前に置いた。
「それって……」
「ボク専用のエビフライです☆」
味を変えられるように数種類のディップソースも用意されている。
「よく、飽きないよね。ほんと……」
カールの作った華やかな手鞠寿司にガルーの御節料理をアレンジしたようなおつまみの数々に拓海は目移りする。
「やった! 旨そう~!」
「これがスモークサーモンと酢蓮根の手鞠寿司、こっちは煎り卵と煎り胡麻で彩った鯛の手鞠寿司、それからこれは……」
カールが説明をしてくれ、拓海は食べるべき一口めの料理を選ぶ。
●生きよ、酔えよ、そして蹂躙されよ!
その頃、部屋の隅に転がされていた失神一二三が目を覚ます。目を覚ました瞬間、猫に苦い汁仕込みの鼠を噛ませてしまった罪悪感から首を吊ろうとしたところをレイが止める
「死なせておくれやす!」
叫ぶ一二三を「やめておけ……」とレイが押さえる。その隙にキリルが首を吊ろうとする。
「キリル!? なんであんたはんが死ぬんや!?」
「……んて」
「……なんだ?」
レイが聞き返す。
「……猫に嫌われる、こんな自分なんて……消えてしまえーーー!」
号泣のキリルを一二三は抱きしめる。
「強く生きなあかん! あかんでーーー!」
二人のテンションについていけないレイに代わって、リュカが二人に声をかける。
「とりあえず、飲んじゃおっか〜?」
「〜〜〜っリュカはーーーん!」
リュカは抱きついてきた一二三を笑顔で受け止め、その背をトントンッとあやすように叩いた。
「……あいつら、なにしてんの?」
最後の料理を運んできたらリュカと一二三が抱き合っていて、ガルーは戸惑う。オリヴィエも呆然とリュカたちを見ていたため、ガルーから逃げるのが遅れた。「……さぁ?」と返してから、慌ててうたた寝していたオリをガルーとの間においた。
「オリ、ガルーが、撫でてもいいかって」
いやいや、そんなことこいつは言ってないと思いつつも、オリは仕方なく「な」と返事を返す。
「ガルー、オリが撫でてもいいって……」
「ああ……」
ガルーはそっとオリを撫でる。
「……俺、リュカたちに取り皿と箸をおいてくる」
一二三やキリルと一緒に別のこたつに座ったリュカのところにオリヴィエは取り皿などを持っていった。
「リーヴィに避けられている気がするんだが……」
ガルーは小声でオリに相談する。お前もか……と、オリはため息をひとつついた。
「あいつ、最近綺麗になっただろ。お前もそう思うよな」
それにははっきりと賛同を示して、オリは「なぁ〜」と鳴いた。
「まぁ、楽しんでるならそれでいいんだけどな……」
でも、やはりすこしばかり寂しいというのが本音だ。
「本当になにが駄目なんでしょうか? 香水なんかはつけてませんし、一定距離まで近付くと一目散に逃げ出すんですよね……」
「……」
「そうですね。猫はもともと人好きなわけじゃないので、自分からいかないで辛抱強く待ってみるのがいいのかもしれませんね……」
雫の相談にオレンジジュースで雰囲気酔いし始めた征四郎が答える。
「……」
そして、そんな少女たちに挟まれて困っている黒塚。
「あ、黒塚さん、にゃんこ来ました」
挟まれているだけで微妙なのに、雰囲気酔いしている征四郎はなぜかそばを通りかかる猫たちを捕まえては黒塚の膝に乗せてくる。
「……ダメだよ、これは」
Aliceの取り皿から料理をくすねようとした猫からアリスはお皿を取り上げる。
「デザートもあるから食べてね」
カールがアリスとAliceの前に柚子と甘酒の寒天デザートをおく。
「どうも」とAliceが小さな声を出し、「ありがとう」とアリスはカールに視線を向ける。
「どういたしまして」とカールは微笑みを返す。
「なんかうちのチビがお世話になったみたいだな」
ガルーは征四郎に絡まれている黒塚に挨拶をして、「ビール飲む?」と、グロリアビールを注いだ。
食べて飲んで駄弁って飲んで猫に絡んで嫌がられて飲んで食べて、そんな感じで時間が過ぎていき、飲んべえたちがすっかり酔った頃……リュカは素面の恭也の頭にうとうとする子猫たちを積み上げていく。
「……子猫たちが嫌がるんじゃないか?」
恭也は子猫たちの心配をしたが、子猫たちは眠気に勝てず、リュカに抵抗する気力はない。
「ふふ……子猫タワー、新記録!」
ヴィクターとレイの頭にも子猫たちを乗せて満足したリュカは、矛先を酔いつぶれて寝ている拓海、ガルー、黒塚、カールに変える。
四人を床に倒して寝かせ、万歳をさせると、やんちゃ三匹をつれてきた。
「よおし、やんちゃな獣たち! この大地を蹂躙するんだ!」
リュカは勢いよく号令を出したが、やんちゃ三匹はリュカの足下で丸まった。
「ん? 今日はたくさん遊んだから疲れちゃったか〜?」
リュカも三匹の間に身を横たえる。
「俺も眠くなっちゃった〜」
眠りに誘われていくなか、リュカは遠くでなにかが走る音を聞いたような気がした。それがどんどん近づいてくる……しかし、お酒に導かれる眠りからは逃れられなくて、目を開けることができない。
そんなリュカの目は、次の瞬間、強制的に開かされた。突然、お腹へ強力な圧力がかかり、その戸惑いが消える前に圧力第二弾が胸を襲う。
「っ……!!!?」
なにが起こったのか理解するのに数秒を要した。
足の速いロケットが部屋中を激走していた。そのロケットにつられて、走り出す猫が増えていく。
横になっている者たちは容赦なく猫たちに踏まれ、こたつに伏して寝ている者もタックルをくらう。
「これぞ、正に蹂躙!!!」
人がいることなど全く気にせずに激走する猫たちにリュカは興奮して、酔いも覚める。
酷く理不尽に蹂躙されているにも関わらず、猫たちに踏まれても蹴られても、みんな幸せそうだから不思議だ。
猫たちの蹂躙は十分ほどで終息した。
酔いの覚めた人々はまた飲み始め、飲まない者たちは改めて猫のいる空間を満喫する。
踏まれる心配がなくなり、リュカは再びこたつに入ってごろりと倒れ込んだ。グウを胸の上にのせて、優しく撫でる。
「お腹いっぱい食べて寝るって天国だよねぇ〜♪」
征四郎もリュカの横に来てころんっと横になる。
「すばらしき猫始めになったのです……」
二ウェウスは三毛猫と額を合わせて満面の笑顔を浮かべる。
「ネコ成分、充填完了! 明日から、また頑張れる、よ」
「見事なまでにつやっつやですね、スゲェ」
ストゥルトゥスも笑う。
帰り支度をしようとした拓海は足が痺れて四つん這いになった。
「あれ、足が……リサ、ちょっと手を貸して……」
「お土産話が増えたわね♪」とメリッサはビデオのスイッチを押す。
「外は満喫できたかね?」
そう炉威がセラに聞くと、セラは首を横に振る。
「まだまだ序の口じゃ。何せ、殆ど……」
「はい。悪かったよ!」と、炉威はセラの言葉を遮った。
「……ああ、そうだった」と、Aliceは言い忘れていた言葉をアリスに告げた。
「あけましておめでとう」
「今年も……まぁ、よろしく」
そうアリスは微かに微笑んだ。
結果
シナリオ成功度 | 大成功 |
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