本部

イベント前の憂鬱は

橘樹玲

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2017/12/12 19:46

掲示板

オープニング

■二人の心情
 行き交う人々。華やかな音楽。そして、赤や金に彩られる木々。
 クリスマスが近づき、町がお祭りムードになる中、一人の女性が眉間にしわを寄せながら、あれじゃない、これじゃないと男物の洋服を手に取り、悶々としていた。
「う~ん……どうしたものでしょうか」
 男物はわかりませんねと小さく呟く。
「ここはやはり……いや……でも、また頼るのは」
 携帯端末を手に取り、数分の間、画面と睨めっこをした後、意を決したように携帯に何かを打ち込むのであった。

 一方その頃、とあるマンションの一室にて、ここにも悶々とする男性が一人。
「……あれだ。うん。こういうのは、慣れている奴に聞いた方がいいというか……」
 頼れるべき仲間には頼るべきだよなと何やら自分自身に言い聞かせるように呟いている。
 そして、しばらくして彼もまた携帯に何かを打ち込むのであった。

■2通のメール
 同じ日、同じタイミングで2通のメールが届いた。内容は、遊びのお誘いと遊んだ際にクリスマスプレゼントを一緒に選んでほしいというものだった。
 見知った者や世話好きなら、きっと二人のメールにすぐ返しただろう。しかし、このメールの遊びの予定日はどちらもかぶっている者だった。
 このメールを受け取ったものは、どちらの誘いに乗るのだろうか。

解説

●目的
・友人(知人)である、真と命と休日を楽しむ。
・二人の相談のプレゼント選びにアドバイスをする。

●二人について
・つい最近付き合い始めたカップル。
その際にプレゼントを送ってしまったので、クリスマスにちょっと違ったプレゼントを贈りたいということらしい。
・先日送ったプレゼント
命は香水とペアの腕時計。真はネックレスをそれぞれ贈った。
・お互いに、知人と遊ぶのは慣れていないため、初めての遊びメインのお誘いには緊張しているのではないだろうか。

リプレイ

■「初めまして」と「久しぶり」 命side
 駅前の時計台。そこでそわそわして待っていた少女が一人。時計を見ては周りをきょろきょろ。待ち合わせでもしているのだろう。
 不安気に何度も何度も時計を見ているのである。
 待ち合わせの時間より10分早いが、来る人は来る時間だろう。予定の時間が近づくにつれ不安が募っていく。
『あー! いたいた!』
 皆、こっちだったよーと、遠くで少女の声がする。
『フローラさん!』
 声の主は、フローラ メルクリィ(aa0118hero001)。その後ろから、ぞろぞろと五人の女性も一緒に歩いてきた。
「待ち合わせ場所って、時計台……ですよね?」
 「恐らくこっちじゃなくて、あっちのもうちょっと立派な方かと……」と指さしながら月鏡 由利菜(aa0873)が苦笑いを浮かべる。
『……は! す、すみません……』
 待ち合わせ場所を間違えてしまっただろう彼女、常世 命(az0093hero001)は申し訳なさそうな顔をする。
「ふふ……そんなに気にしなくても。ほら、時間も過ぎてないですから」
 ふんわりとフォローを入れてくれるのは、御童 紗希(aa0339)であった。
 三人は以前からの知り合いということもあり、ホッとする表情を浮かべた。他の三人を見てすぐにピシッとした表情を浮かべる。緊張しているんだろう。
『え……と、ははじめまして!』
 噛み噛みになりながらも、三人に自己紹介する。その様子にクスっと笑いが聞こえてくる。
『命さん、そんなに緊張しないで……えっと、直接話すのは初めてよね。わたしの名前はメリッサ。よろしくね』
 命の手を取りにっこり笑う。それにつられ、命も笑みを浮かべる。少し緊張が解れた様だ。
「初めまして、花邑 咲といいます。よろしくお願いしますね。命さん、とお呼びしてもかまいませんか?」
 それに続き、花邑 咲(aa2346)が自己紹介をしてくれる。
『は、はい! ……わ、わたしも咲さんって呼びたいな……』
 えへへと照れたように笑う。そういえば、知り合い以外を率先して名前で呼ぶことはなかった気がする。これも徐々に交流に慣れてきた証拠なのだろうか。
 こほんと小さく咳払いが聞こえてくる。
『常世様、サーフィも自己紹介をさせて頂きます。名前はサーフィ アズリエルと申します。よろしくお願いします』
 淡々とサーフィ アズリエル(aa2518hero002)が自己紹介をする。外見から思うに命よりも若そうなのだが……。
『さ、様!? そ、そんな……様なんてつけなくても』
 「えっと」と口ごもる彼女を見て、『では常世さんとお呼びしますね』と呼び方を変えてくれる。
『う、うん。それでお願いします……?』
 漫画だと周りに汗が飛び散ってそうな彼女。ワタワタしつつもなんとか自己紹介を終える。
『さーて! どこから行くのかな?』
「プレゼント選びもしたいんだよね……」
 うーんと考え込む、フローラと紗季。
「まずは、雑貨屋さんとかを見ていくようですかね?」
「ショッピングしながらも良いですしねー」
『それなら最初は……商店街ですかね。それともショッピングモールでしょうか』
 ショッピングだけでも一日遊べるには遊べるが、折角だから他の事もしたい。
『そうだ! 博物館でいま色々やってるみたいなの。興味あるなら行ってみない?』
 リサがスマホの画面をみんなに見せる。
『おおお、いいね! 楽しそうだよ!』
 彼女の提案に皆賛成する。命もワクワクとした表情を浮かべる。
「博物館ってことは、公園通りの方ならお店がいっぱいあるかな」
『そこで、プレゼントを選んで博物館? それとも博物館行ってからプレゼント選び?』
『……目的地までここから少しかかりますし、その間に決めるのもありかと。バスで移動するかと思いますし待ってる間にでも考えましょうか』
 皆バス停への方へ歩みを進める。歩きつつも今日の予定を考える。
「うふふ……そうねぇ、博物館は閉館時間の関係もあるから先の方がいいんじゃない?」
 おお、確かに。それぞれ、うんうんと頷く。
『そしたら、何を見るかってのを決めたほうがいいのかな? 今は……恐竜展、古代文明展、日本の美展とか色々開催中みたいよ。観たいのってある?』
 うーんと皆考え込む。が、命以外の考えは同じなのか、彼女の発言を待っている。
 視線が集中し、少しオロオロとしてしまう。しばらくして、「うん」と心に決めたように、皆の方を向く。
『わ、わたし……こ、古代文明が見たいです!』
 皆にっこり笑う。中には意外に思う者も、他のが見たいと思ったのもいたかもしれない。でも今回は、遊び慣れない彼女に合わせてくれるようだ。
 そうこう会話をしているうちに、バスが遠くからこちらに走ってきているのが見えた。
 まだ、緊張が隠せない命も徐々に笑顔が増えていく。友人たちとの休日への不安と期待を胸に目的地へと向かうのであった。

■「初めまして」と「久しぶり」 真side
 駅前の小さい広場のようなところに男女六人が集まっていた。
「遅いな……」
 そう発言するのは、今回集まることを提案した幽世 真(az0093)である。
 待ち合わせの予定時間きっちりだが一人来ていないのだ。
『まだ予定の時間ぴったりだろう』
 ベンチにどかっと腰を下ろしカイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001)が言う。
「そうそう。それに、ひりょはたまーに遅刻するんだ」
 方向音痴なのかなとボソッと呟いたのは荒木 拓海(aa1049)である。
「ふむ……しっかりものに見えるが意外だね」
 拓海と一緒で前からの知り合いなのか、海神 藍(aa2518)も驚いたような発言をする。
「任務だとかそう言ったのは滅多に遅刻しないんだけどね」
 相方の英雄さんがいない時は結構あるんだと拓海が言う。
「……命も同じようなものか」
 思い出したかのようにふっと笑みをこぼす。
『えー? なになに? ミコトも遅刻するときあるの?』
 真の呟きにウィリディス(aa0873hero002)が反応する。
「そうだな……方向音痴なのかおっちょこちょいなのか。任務の時に別々で現地で行くと決まって遅刻する。そこが可愛いんだが……」
 リディスがその発言に笑みを浮かべる。それを見るなり彼は咳払いをした。
「なになに。惚気話かな?」
 二人の会話を聞いていたのか、拓海はニコニコと笑っている。
「カイさんとリディスさんは二人の知り合い何だよね」
『わしらはお初じゃからな。馴れ初めとかを聞いてみたいものではあるがのぅ』
 サルヴァドール・ルナフィリア(aa2346hero002)も会話に参加してくる。面白そうに二人の話を聞いてきた。
「そ、それはだな……」
 相談に乗ってもらってる手前、答えたほうが良いのかと真は眉を顰める。
 彼のそんな真面目な一面にもくすっと笑いが漏れる。
 そうこう話をしているうちに遠くから「おーい」と声が聞こえた。声の主は黄昏ひりょ(aa0118)だった。
「ご……ごめん! 迷子……じゃなくて、その、ちょっと遅れた!」
 ぜぃぜぃと息を切らす。相当急いできたらしい。
「た……助かった」
「な、なにがですか? ……ハァハァ」
 会話を聞いていないかったひりょは、何の話かと首をかしげる。
『いーや、なんでもないぞ。強いて言うならば――』
「な、なんでもない! えっと、遅れていたから心配したぞ」
 自分の話を遮る真にドールは楽しそうに笑った。
「えぇ、気になるんだけど……あ、すみません! ちょっと電車が遅れちゃって」
 会話の続きが気になるも、先に遅れてきたことへの謝罪をする。
『五分ぐらい、なんてことないって』
 『さーて、どこに行くんだ?』とカイが立ち上がる。
 その言葉を聞いて、ひりょがはっとした表情をする。
「あはは……まだ決めてなかったんだよね」
 苦笑いを浮かべるひりょに対し、「すまない」と真が申し訳なさそうな顔をする。
『とりあえずプレゼント選びもかねてじゃろう?』
「繁華街に行ってお店を見てもいいかもしれないね」
「商店街にいろいろお店あるもんね」
 それぞれが提案する。
「それなら、ボーリングに行くのはどうかな? 商店街にも近いし、プレゼント選んだあとにすぐ行けると思うんだけど」
 真はただその会話を聞いているだけだった。だが、どこか楽し気に。
『ったく、ほら。真が誘ったんだ』
 『当人が話に混ざらんでどうする』とカイが彼の背中をバシッと叩く。
「……っ、そうだな。その方向でいいと思う」
 真の態度はまだどこかぎこちない。
『ボーリング! あたし、身体を動かすのは得意だよ!』
 リディスはやる気満々である。
 大体の今日の予定の目途がたったところで、7人は商店街の方へ向かって歩き始める。
「プレゼント選びか……良いものだよね」
 藍は何かを考えるように言う。彼も誰かに送ろうとでも思っているのだろうか。その疑問を真はそのまま彼――いや、その場にいる皆にぶつける。
「俺は今日、こうやって君たちを誘ってプレゼントを贈ろうとしているんだが……何か、その、あげたい相手や用意だったりしているのか?」
 真の言葉に皆が彼に視線を向ける。
「もし、用意してなかったり用意するつもりなかったりするんだったら、今日一緒に選ばないか?」
 彼はにやりと笑って続ける。「道連れだ」と。悪戯をするような、そんな表情を見せるのは初めてじゃないだろうか。
 彼の意外な一面を見つつ、7人は話しながら目的地へと歩いて行くのであった。

■文明の神秘!
 展覧会に着き、チケットを買い中に入る。そして、ケースの中に飾られている展示品を見るなり興奮するものが一名。
『すごい……こ、これが文明の神秘!』
 命は目をキラキラ輝かして周りを見渡している。先ほどまでおどおどしていた者とは思えない。
『ねね、あっちも凄いみたいだよっ! いこっ!』
 二人はどんどん先に行こうとする。それをやんわりと由利菜と咲が制止をかける。
「ほらほら……走るのは駄目よ」
「展覧会だから、話すのも最小限。それか小さい声で……」
 その姿を見て、他の者は苦笑いを浮かべる。
「意外と子供っぽいんだね」
 紗希にそう言われ、彼女はしゅんとする。それをあわてて訂正しようとする。
「あ、その、悪い意味じゃなくて――」
『素を見せてもらって、皆嬉しいんですよ。ね?』
 どう言おうかと言葉を詰まらせる彼女に変わり、サーフィがフォローを入れる。
「そ、そうなんですかね……そう思っていただいてるなら嬉しいです」
 こそこそっと声を抑え会話をしながら、展覧会を見て回る。
 土器や彫刻、文明の写真、模型など、様々なものが飾られている。音楽は流れておらず、こつんこつんという足音が響く。
「これ……」
 ふと目に入った不思議な彫刻の写真があった。口では何とも表現しづらいソレに、命は取り込まれる。
「どうかしたの?」
 何かを感じているのか、ただ静かにソレを眺める。
『ひょっとして私達とも関りがあったかもね?』
 リサは彼女に笑いかける。
 確かに惹かれるものがある、ただそれが何なのかはわからない。彼女も命同様、胸にある答えを求める様にソレを眺めた。

 展覧会を見て終わり、外に出る。中の静けさとは反対に人々の声街の様々な音が彼女たちを包む。
 展覧会の少々堅苦しい雰囲気から解放され、「ん~」と体を伸ばす。
「そうだ! ショッピングの前にお茶をしてかない?」
 その提案により、彼女たちは一時の休憩をはさむことにする。その場を後にし、次の目的地へと歩みを進めた。

■プレゼント選び 真side
 商店街のキャラクターグッズ店にて、似合わなそうな男たち――いや、意外と数名は似合うだろうか。その店の雰囲気にぴったりのリディスを含め七人が可愛い小物を手に取っていた。
「ん~……こういうのはどうだろうか?」
 うんうんと唸りつつ、手に持つものを皆にどうかと聞く真。悩んでいるその姿は前にもどこかで見たことがする。
『うーん……既にプレゼントらしいプレゼントは送ったんだよな。それならクリスマスは何がいいかなー……』
 眉間にしわを寄せながらカイが呟く。
『形に残るものもいいけど……プレゼントだけじゃなくてもいいと思うけどなー』
 ほらと話を続ける。
『あっちこっち一緒にいろんな所を巡るんだよ一人で見るより違った景色に見えんじゃないかな?』
「なるほど……ちょうどクリスマスに遊園地でも誘おうかと思ってるんだが、そういうのでもいいのか?」
「なんだぁ……考えてるじゃないですか! それだけでもプレゼントだと思いますよ!」
 ひりょはパアッと笑顔になる。
「もちろん、プレゼントを贈るのもありだと思うけどな……その人のことを思いながら、何が良いかと考えを巡らせる。その時間はとても幸せな物だと思う」
 藍も選びながら答える。
『あたしもこないだ、ユリナの誕生日があってね。あたし、きぼうさ人形を贈ったんだよ。それもユリナのお姫様ドレスを着るように特注したやつ。オーダーメイド品は完成まで時間がかかるけど、一品ものとして効果は絶大だと思う……ちょっとは参考になるかな?』
 近くにある人形を手に取り「命の服を着た人形か……」と小さく呟く。
「それって、どこでできるんだ?」
 意外にもリディスの話に興味津々のようだ。ニコニコしながらリディスが説明してくれる。
『んー……贈り物はそれに決定なんかのう?』
 ドールが首を傾げ尋ねる。
「ん……それは俺がほしい」
 このお店でオーダーができると聞き、笑みを浮かべレジに向かう。
『か、可愛いものが好きなんじゃな……』
 『てっきり送るもんじゃと』と苦笑いを浮かべる。
『……確かに前も可愛いものをよく手に取っていたかもな』
 クールに見える彼は意外にも可愛いものが好きなのかもしれない。

■プレゼント選び 命side
 丁度いいタイミング。小腹もすいたということで公園通りにある喫茶店に立ち寄る。
 女7人女子会だ。それぞれ好きなものを注文する。
「この後はプレゼント選びですよねー……命さんは何が渡したいんです?」
 席に着くなり話題は次の予定についてだ。咲がプレゼントが明確に決まっているのかどうか再確認する。恐らくメール的には決まっていないのだろうけど。
『残念ながら……どれも良いとは思うんですけどね』
 命は苦笑いを浮かべる。
「形の残るものもいいですけど思い出になって残るものっていうのもいいと思うんですよね」
 紗希の案に、命は笑顔になる。
『わたしも! えっと……思い出がほしいなと思って、遊園地のチケット手に入ったから誘おうかなと思っていて』
 彼女は照れた顔を見せる。
『いいじゃん! 命がこうしたいってのをやるのが一番だと思うのよね』
 いつの間にかフローラが命の事を名前で呼ぶようになっていた。笑顔で彼女の話を聞いている。
『プレゼントを選ぶのも良し、みんなが言うように料理を振舞うのも良いよね』
 『クリスマスケーキを作ったりも思い出になると思うなー』とメリッサが言う。
「命さんに直接教えられれば一番なのですが……私も現状なかなか時間が取れません。スマートフォンで簡単なレシピを教えたり、作成手順の動画を送ったりは」
 料理を作るなら多少のお手伝いならと由利菜がいろいろ提案をしてくれる。
『料理……』
 命の言葉はそこで止まる。料理はどうやら苦手らしい。
『しかし正直に申し上げると、なんでも良いと思うのです。いえ、これでは語弊がありますね』
 サーフィが優しい笑顔を命に向ける。
『大切な人が、自分のことを思って用意してくれたプレゼント。それはどんなものでも嬉しいものではないですか?』
 『そうだといいな……』とサーフィの言葉に命は小さく笑った。

「お待たせしましたー」
 ウェイトレスさんがそれぞれ頼んだものを運んできてくれる。
 『なに頼んだのー?』なんて会話をしながら、頼んだものを口に運ぶ。皆好きなものを口に運んで笑顔になる。
 会話して、飲んで、食べて――また笑う。
 その笑顔はきっと食べ物が美味しくてという理由だけじゃないだろう。命も彼女たちとの会話に心からの笑顔を浮かべるのであった。

■レッツ ボーリング
「こ、こんなはずでは……がくっ」
 ひりょはガクッと膝をつく。それもそのはず、気合を入れてボーリングに挑むも。ガーターを連発してしまったからだ。
「っふ……俺は次こそ……」
 そんな姿を見て真は小さく笑う。そして、彼の放つボールは、ゴンっと音を奏で隣のレーンへ。
『……クククッ……いくらなんでも3回目だろ?』
 そんな二人を見て、カイは堪えられずに笑いを漏らす。
 二人ともその姿に悔しそうに、そして楽しそうに一緒に笑う。
 「よし!」と拓海もボールを転がす。時折「イタタ……」と声を漏らした。
「あれー?」
 彼の結果もガーター。とほほといった様子で彼は次の番を待つ。皆口々に「どんまい」などと励ましの言葉を送る。
『わしにも出来るかのぅ……』
 『よいしょ』と立ち上がり、3戦目まで見ていたドールも参戦する。初めて挑戦ということもあり、ピンは一本しか倒れない。
「おお! 倒れたね!」
 藍の言葉に『一本だけじゃが』と小さく呟く。
『一本でも倒れりゃいいって……他の三人は……クククッ』
 カイは実に楽しそうだ。
『見てられないなー! あたしがお手本を見せてあげるよ!』
 リディスは張り切って球を転がす。

 ゴロゴロゴロ……カコーン!

 彼女の転がす球は見事中心を捕らえ、すべてのピンが綺麗に倒れる。
『やったー!!』
 どんなもんだいと胸を張る彼女に。賛辞の言葉が飛び交う。
「これは……」
「俺たちも負けてられないね……」
 ひりょと拓海の言葉に真は静かに頷く。
 七人は終わりが来るまでで、ボーリングを楽しむことになる。

 1ゲームの結果はガーターを連発した三人が同点で再開。初めて参加したドールが四位。残りの三人が首位を争い、それぞれ、リディスが一位、藍が二位、カイが三位と数点差で順位をつけることになった。

■「またね」 命side
『すっごく楽しかったね♪ 皆でまた来たいな』
 茜に染まる帰り道を皆で帰る。
「次行くとしたらどこ行こうかな?」
 皆満足した顔つきで。
「今日みたいに女の子だけで集まるなら、リディスも連れていきたいです」
 ここにはいない相方を思い。
『大人数で出かけるなら、ねえさまもお誘いしたいです……』
 大切な人を頭に浮かべ笑みを漏らす。
「次は遊園地とか、ショッピングを思いっきり楽しむのもいいかもね」
 次に会う時を想像する。
『女の子だけじゃなくてもいいんじゃないかな』
 女子会も楽しいけれど。
「そうですね……」
 男女で遊ぶのも一味違っていいかもしれない。
『また遊んでくださいね!』
 楽しかったと言う彼女たち。皆笑みを浮かべている。
 鞄には彼女たちの「アドバイス」を入れて。
 今日は全員を名前で呼べなかったけど、次はきっと――
 密かな思いを胸にそれぞれ「家族」が待つ場所へと帰っていくのであった。

■「じゃあね」 真side
『さーて、帰ったら何すっかなー』
 外はいつの間にか薄暗くなり。
『もう夕飯時だよね! 今日のご飯は何かなー♪』
 体を動かし、お腹が空いたと彼女は言う。
「点数取れなかったけど、これもこれで楽しかったね」
 明日は筋肉痛かと苦笑いを浮かべた。
『初めてじゃったが、なかなかできたのう』
 初挑戦の結果に満足し。
「戦いの傷がちょっと痛いな……でも、これもまた――」
 先日の傷の痛みも良いものに感じる。
「あ、そうだ……これ、みんなによかったら。今日の記念に」
 鞄から取り出した袋を皆に手渡す。中には小さなぬいぐるみが二つ。キーホルダーとしても使える「きぼうさ」の友情をモチーフにした小さなマスコット。
 コロンと手の中で転がるのだった。
「幽世さん、いや、真さん。また皆でわいわいやりましょう。悩みがあれば俺達仲間が駆け付けますしね」
 彼の言葉に他の皆もにっこり笑う。
「……ありがとう」
 良き友を持ったと密かに思う。まだむず痒く感じるこの関係に少し慣れないところもある。だが、それもまた――
 結局、彼女に送るものを買うことはできなかった。しかし、この日友人と過ごした時間を思い浮かべ、彼は満足そうな笑みを浮かべる。
 大切な友人たちに「じゃあ」と別れを告げ、彼女の待つ場所へ帰るのであった。

 こうして、エージェントたちの休日は終わった。何の気ないただの休日。それも、彼らにとっては大切な一日の一つなのだろう。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • ほつれた愛と絆の結び手
    黄昏ひりょaa0118

重体一覧

参加者

  • ほつれた愛と絆の結び手
    黄昏ひりょaa0118
    人間|18才|男性|回避
  • 闇に光の道標を
    フローラ メルクリィaa0118hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
    人間|16才|女性|命中
  • アサルト
    カイ アルブレヒツベルガーaa0339hero001
    英雄|35才|男性|ドレ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 花の守護者
    ウィリディスaa0873hero002
    英雄|18才|女性|バト
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 幽霊花の想いを託され
    花邑 咲aa2346
    人間|20才|女性|命中
  • 想いは世界を超えても
    サルヴァドール・ルナフィリアaa2346hero002
    英雄|13才|?|ソフィ
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 難局を覆す者
    サーフィ アズリエルaa2518hero002
    英雄|18才|女性|ドレ
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