本部

目覚めたらすべて消える。

鳴海

形態
ショートEX
難易度
難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
13人 / 4~15人
英雄
13人 / 0~15人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2017/10/01 16:51

掲示板

オープニング

● まどろみ

 白い闇に包まれた十並町。
 その町を眺められる小高い丘にリンカーたちは集結している。
「みんな、集まってくれてありがとう」
 春香は告げると全員を見渡した。急きょだというのに集まってくれた仲間たち。
 その顔を眺めて春香は告げる。
「私も一度……まどろみと会ってる。その時彼は私に優しい夢を見せてくれた」
 それはルネと日常生活を送る夢、もういない誰かと会える夢。
「今立ち直れたのはみんなのおかげだけど、きっと彼のおかげでもあるから、その夢が悪用されるのは許せない」
 奪われようとしていた、きっとそれは彼が切実に願った明日。
 夢のような、何事もない日常を作り出すような力。
 だって、仕方ないだろう。死んだ人間ともう一度会うなんて。
 夢以外では決してありえないんだから。
「作戦会議をしよう。ここでルネを倒す」


● 独奏者、終止端。
「本来であれば、このような無理やりなな形ではなく、自然な形でお主に三人の愚神、そしてこの場にたまった霊力を吸収させるはずじゃった」
 ホログラフで霧の中に投影されたのは玉座に腰掛けるガデンツァの姿。
「四つの霊力ラインに、まどろみ、おぬし、メタモ、そしてアネットを配置。この土地ごとトリブヌス級へと再構成しようとしたのじゃが」
「再構成ですか」
「夢の力を取り込んだ。歌姫の完成じゃな。我がユニゾン相手とはふさわしい」
 ユニゾン。声を重ねさらにここに酔い音色を生み出す技術。ガデンツァは共に謳う相手を欲しているのだ。だが共に謳う相手は同じ程度のレベルを持つ者でなくてはいけない。
 他の混沌の十三騎に歌を司るものはいないはずだ。だから作ろうと思った。
「夢と破壊の旋律はさぞかし心地よく世界に響くじゃろう」
「しかし、結局敵は言ったのは夢の力だけです、それも」
 御しきれない。
 ルネは嵐の中心で苦悶の表情を浮かべる、そして地面に足をついた。
 ルネの中で力が暴れているのだ。
 その結果ルネを中心にドロップゾーンが暴れている。ルネの属性である水がルネの属性である水に引っ張られて幻覚伴う現実が構成されようとしている。
「いつの間にか、霊力量では私を上回っていたようで……」
 数々の夢をみせ、操り。膨大なリンカーの霊力を奪い取ったまどろみが……最後の抵抗を試みている。
「エージェントたちが立ち直り次第お主を狩りにくるだろうよ。今の奴らであればケントゥリオ級なぞひとたまりもない」
「手助けは……」
「もちろんある、まぁ我はその人間のおもちゃで遊ぶが有意義故、お主には別の援軍を送ろう」
 そうガデンツァが告げた瞬間上空から雲を切り裂いて何かがドロップゾーンに撃ち込まれた。
 それは学校を粉砕して停止する。それは水晶の塊だった。
「ルネの濃縮体じゃ、水さえあれば20体のルネになる」
「上位個体なんでしょうね?」
 不安げなルネの声に、ガデンツァは笑いながら答える。
「もちろん」
 その言葉にルネは安堵のため息をつく、そして。
「手ごまならもう一体」
「歌の力を持つ、少女ですね」
「権限はお主に委譲しよう、好きに使うがいい」
 そう告げるとガデンツァは姿を消す。

●・ルネ・クイーンについて
 ルネは隙をみてこの一帯から逃げ出そうとしています。力の安定が必要ですが、まどろみが暴れているので動けないのです。
 鎮圧するために多大な時間を使用しますが、その鎮圧している間にゾーンブレイカーがドロップゾーンを破壊するので凶悪な効果はすべて消えてルネのみがむき出しになります
 そうです、この強力すぎるドロップゾーンに、遙華はゾーンブレイカーの協力を要請、皆さんは別働隊としてルネ、およびその配下を抑えつつ、ゾーンブレイカーがドロップゾーンを破壊するまで待つ必要があります。
 そちらのメンバーは遙華とクルシェ、クルシェは第二英雄のシャドウルーカーで挑み隠密に特化しているので皆さんが出向く必要はありません。
 基本的にゾーンブレイカーの能力を発動するタイミングは皆さんが選べます。処理が終わるまでに数ラウンドかかります、タイミングを指定してください。
 またルネは霧に包まれている限りあなた達の言葉を聞き、受け答えすることができます、うかつなことを言うとお仕置きを受けるので注意です。

● 悲鳴

「私は、愚神……」
 小夜子は思う、確かに、自分がいつ生じたのかわからない。
 自分がこの姿まで成長する過程が思い出せない。
 思い出せるのは町が暗闇に飲まれたこと、体がなくなる感覚。
 そして瑠音にアイドルをしようと誘われたこと、梓との出会い。
 断片的な記憶。
「アネット……」
 小夜子はさめざめと涙を流す。こんな結末になってしまったことが悲しかった。
「あなたはただ、私の望みをかなえようとしてくれただけよね」
 理不尽に奪われる命、なにが夢か幻かと聞かれたら。ずっと続いていくだろうと思えた日常が一瞬のうちにかき消されてしまったこと。
「その不条理を正すためにずっと、ずっとそこにいてくれたのよね。まどろみ」
 たとえまやかしだとしても、あの日の延長戦を共に。また明日の約束を守るためにまどろみという存在は足掻いたのだ。
「ありがとう、でももう、もういいの。苦しかったでしょう? 休みましょう一緒に」
 まどろんでいるのはもう終わり、だってもう私達が目覚めることはないのだから。
「あなたにも手ごまになってもらいますよ」
 突如背後から聞こえた声。霧は形を成してルネとして小夜子の前に立ちはだかる。
「愚神はもともと、上位個体の指令には逆らえない。そして愚神は基本的に人類を害するようにプログラムされている」
 霧は腕となりアネットの髪を引っ張って地面に引き倒した。そしてその膝と腕関節に杭を打ち込まれる。
 その繊細な喉がひび割れたような悲鳴を漏らす。
「では人格プログラムを消去しましょう、トロイの木馬御苦労様、アネット」
「消えていく」
 小夜子はつぶやいた。自分の中の自分が消えていく。
 悪いものが心を満たしていく。
 いや、違うか。
「生前の人格をある程度保持するようにとね」
 元に戻るだけだ。胸の中にわき上がる歌も、人々を癒したいと願う夢も。
「ただ、まどろみは霊力をため込むごとに性格が壊れていったようですが」
 全て作り出すべしとプログラムされた偽物。
「あ、そうそう、最後に言い忘れていたのですが。まどろみが求めていた小夜子はあなたではないのですよ、あなたは偽物です。」
「それでも私は本物になろうとしたこと、後悔はしてないわ、だって」
 だって楽しかったもの。そう小夜子はそう告げた。
「アネットが私の元に来てくれたこと。嬉しかったもの、それに報いろうとしたこと、後悔はしてないわ。この抱いた感情と見た夢は紛れもなく私の思い出、歌った歌も、その事実も私の……」
 その時小夜子の意識は途絶えた。



解説

目標 ルネ・クイーンの撃破
● 現状説明。

 現在皆さんはドロップゾーンの目の前にいます。
 このゾーンの中心。神社に存在するルネを撃破することで事態の収拾をつけることができますが、当然簡単にはさせてくれません。ネックとなるのは下記。
・自己再生能力持ちのルネ
・霧の存在
・邪英アネット(小夜子)の存在。

 先ず今回のルネですが、いつかの大規模作戦で使用されたルネと同じく水分がある限り自己再生を続けます。
 また、ガデンツァのスキル、ドローエンブルームを使用し近接アタッカーを寄せ付けません。
 彼女らがまず二十体。

 次に霧ですが。まどろみの夢の属性と、水の属性を合わせることにより、実態を持った幻覚が生成されています。
 霧は巨大な手足となって皆さんを攻撃するでしょう。
 さらに幻覚をみせるでしょう、それは今回参加したリンカーの形をとって仲間割れを狙うという事です。
 疑心暗鬼を募らせて皆さんを殺し合わせようとします。
 夢の力も相まって、聞きたくないセリフを言ってほしくない人の口から言わせたりします。
 精神攻撃は基本なので注意です。
 また邪英アネットですが、すでにルネがわに取り込まれているようです。
 小夜子の攻撃手段は歌による、ステータス低下、ダメージは発生しませんが全てのステータスが三割削れるので注意。
 ルネはアネットから人間らしさを消し去ることによって仲間に引き入れようとしているようです。
 彼女の人間としての想いはまだ死んでいません。アプローチによっては最後の力を振り絞って。小夜子に人間らしさ。願いや思い出、いのり、歌と言った彼女らしさを思い出させてあげてください。
 すると、このドロップゾーンや今回の戦闘で課題となる点。攻略の難しい点を無効化してくれるので彼女になんでも言ってください。

リプレイ

プロローグ

 ここは町が観測できるキャンプ地点、前回の戦闘からルネの登場によって不利に追い込まれたリンカーたち。その体制を立て直すためにここで戦闘準備を整えていた。
「邪英化から救い出す。そしてあのムカつく氷像野郎はぶっ倒す……!」
 そう物騒な心を息を掲げ闘志を燃やしているのは『東海林聖(aa0203)』その横で佇む少女はブロック栄養食をもそもそ口に運ぶ『Le..(aa0203hero001)』はこれが何本目のバランス栄養食だか確認することも諦めて、ちゃんとしたご飯が食べたいなぁとため息をつく。
「あと、逃がさねェ。気に入らねェのは気合とテメェの筋で罷り通る!」
 しかしと聖は思う、切り倒さなければならない相手だけではないらしいということ。
「『邪英化』か、やっぱ見てて落ち着くモンじゃねェな……! 相手は相手だしな……一応用心しながら全力でブッ飛ばすぜ、行くぜ! ルゥ!」
「……ヒジリー、前科者だもんね……。」
「誰が前科者だよっ!?」
 そこから少し離れた場所でぎりっと奥歯を噛みしめる音が響く。
「ルネにまどろみにガデンツァ……はっ、大っ嫌いなオールスターの勢揃いって訳か……良いぜ。あたしの気分はさいってーのさいっこうだ!!」
 そう拳を撃ちつけるのは『楪 アルト(aa4349)』穏やかではない表情で霊力を高めている。当然『‐FORTISSIMODE-(aa4349hero001)』と共鳴済みで戦意は高い。
 そんな殺意増し増しの空間に苦笑いを浮かべる『赤城 龍哉(aa0090)』彼は町の地図を広げると『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』へと向き直る。
「…………何やらややこしい事になってるな」
「事情を把握するには時間もない事ですし、要点を絞って対処した方が良さそうですわ」
 この事件は根が深く絡んでいて全体を見通せない。ただわかるのはここでルネに好き勝手させるとガデンツァ側としては大きなアドバンテージを得ることになるということ。
「万が一にも失敗は許されませんね」
 そうヴァルトラウテは机を囲うリンカーたちと共に作戦の最終確認を始める。
「俺は初期の目的であるドロップゾーンの破壊を優先目標として行動する」
 そう全員の役職を確認した。他のメンバーもそれぞれやらなければならないことがある、それはチームとしての役回りだったり、己が心情を貫き通すためだったりと様々だが、見ている方向は一緒である。
「各々、目標がうまく達成できるように祈ってるぜ」
 そう龍哉が告げると解散、作戦開始時刻まで装備の最終確認兼待機となる。
「一歩手前まで進めておいて最後の仕上げはタイミングを見たりできるのか? お嬢」 そんな中龍哉はタブレット越しに別働隊として動いている遙華へ連絡を取る。
「もし可能なら戦局の進み方と照らし合わせてベストタイミングを計れるのですけれど」
 そうヴァルトラウテが画面を覗き込んだ。
「そちらとの通信は常に繋いでいるし、霧による妨害もないことを確認しているわ。そちらのタイミングに合わせられる、任せて、ばっちりやって見せるわ。これ以上裏はかかせない」
 そう遙華が告げると、その言葉を聞いてか金糸の姉妹がふと声を上げる。
「まどろみとガデンツァの関連は疑っていたのにねぇ。横槍を許すとは油断が過ぎたかな」
「ん、とりあえず今は……」
「ああ、目の前の問題を片付けるとしようか」
 そんな『イリス・レイバルド(aa0124)』と『アイリス(aa0124hero001)』の会話を聞いて少し肩を落とす『卸 蘿蔔(aa0405)』
「…………目の前であんなことが起こったのに、止められなかった」
 その蘿蔔の肩を叩いて『レオンハルト(aa0405hero001)』は慰めるように言葉をかける。
「諦めるのはまだ早いよ…………必ず救おう。二人とも」
 その言葉に蘿蔔は改めて視線をあげる。
「うん。今度こそクイーンを止めます。小夜子は…………お願いしますね。どうか守ってください」
 優先はルネ・クイーンの撃破。
 小夜子も歌を力にしている以上クイーンを倒したら代わりにされる可能性は十分にある。
 だがその対処は信頼できる仲間にまかせた。
「征四郎さん、お願いします、彼女を」
 そう告げた蘿蔔、その言葉に『紫 征四郎(aa0076)』は振り返り、笑みを向ける。
「任せてください、ずっと眠ってるみんなを起こしてきます」
「それでも、俺様たちは。目を覚まさなければいけない」
 『ガルー・A・A(aa0076hero001)』が告げると征四郎は拳を握りしめた。
「はい。それでも、ここでおわりになんて、させるものですか!」
 そんな彼女らの準備が整ったことを確認すると『辺是 落児(aa0281)』の隣に『構築の魔女(aa0281hero001)』が立った。
「さて、聞かれたことには答えにいきましょうか」
 共鳴しメルカバの強化装甲を装着、そして一行は霧の町に向かった。


第一章 蜃気楼と

 霧に覆われた町に足を一歩、踏み入れても即座に敵が対応してくることはなかった、不気味なまでの静けさ。
 ここから先にはいったい何が待ち受けているのだろうか。
「このドロップゾーンはまた一段と、なんだか、気が、濃いね」
『餅 望月(aa0843)』がそうあたりを見渡しながら告げる。指先しか見えないような白い闇の中、敵の奇襲に備える。
 そんな望月に『百薬(aa0843hero001)』が言葉をかける。
――名も無き武侠から、一気に大侠になるチャンスだよ。
「どういうこと?」
――悪役が溜めた力をラッキースケベ的に横取りして強くなるのが武侠のお約束なのよ。
「たぶんそうなんだろうけど言葉の選択がおかしくないかな」
 そう苦笑いを浮かべる望月。
「お約束ついでに、悪に染まりかけているヒロインの正義の心で一気に逆転しようか」
 囚われのヒロイン、この場合は小夜子の事をさしているのか、それともまどろみか。
「私はまどろみしか知らないけれど、随分と大掛かりになってきたわね」
『橘 由香里(aa1855)』がリンカーの一段を流し見て告げる。
――ルネなんちゃらとは戦ったような気がするのじゃが、はて、余りに量産されとるから印象が薄いのう。
 そう『飯綱比売命(aa1855hero001)』はカカッと笑いながら告げた。
「それにしても……」
 由香里は思う。この霧の中にいると何かを思い出す。それこそまどろみの夢で体験した記憶、それが何度もフラッシュバックして、ここがやはりまどろみの勢力圏なんだと理解する。
 ただ。
「由香里さん」
 そう告げて現れた由香里の大切な人。
 その幻影に、夢に惑わされるほど由香里はもう子供ではない。
「先に行ってしまうんですか? そうなると僕はあなたを殺さなければなりません」
「騙す気があるのかってくらい似てないわね」
 そう由香里は失笑をうかべその霧を拳で払った。
「敵がこちらの動きを察知したみたいよ」
 由香里が告げるとその言葉に望月が頷く。
「だったら、もうあれやっちゃおうか」
 そう望月が取り出したのは鶏鳴の鈴。金属質な高い音色が霧の向こうへと響き渡る。
 直後、霧の向こうで水色の蠢く影を複数発見した。
「あ、見つかった」
――そりゃそうだよ。
 望月の言葉に飽きれ果てる百薬、一同は臨戦態勢を敷く。
「理性を欠いた夢ほど惨めなものはない。これでは現実の方が遥かに極楽だな」
 そう『黛 香月(aa0790)』は霧の向こうに呼びかけながら獲物を抜いた。『アウグストゥス(aa0790hero001)』とは共鳴済み、敵の攻撃に対してすぐに反撃できるように構える。
「数はざっと十。囲まれていますね、当初の報告より少ないようですが」
 構築の魔女が後方から全員にそう通達した。
「遙華さん、心配だけど」
『斉加 理夢琉(aa0783)』は祈るように組んだ指を解いて、真正面のルネを見据える。
 見れば見るほど、あの日のルネにそっくりだ。
――今は他人の心配をしている場合ではないな。
『アリュー(aa0783hero001)』が冷静に告げた。
 わかってる、そう告げると。
 理夢琉が開幕最初の一撃を担う。
 霧を打ち払うような魔術的な爆発。それは大気を揺らして、ルネを吹き飛ばした。
「この先に神社があります。たぶんそこに!」
 蘿蔔が先を示しながら銃口を前に。
 最短ルートで突っ走るため障害となる者は全てうち飛ばして、どいてもらうつもりだ。
――行くぞ。
「うん、一緒に戦おう、アリュー」
 飛び交う爆炎、襲いかかるルネ達。
 魔術の風が周囲を駆け抜ける。自身を中心とした風の音色。ドローエン・ブルーム。それに阻まれリンカーたちは思うように先に進めない。
「活路を開く、ついてこい」
 業を煮やした龍哉が告げると単身的中央に突っ込んでいく。
 先陣を切るのは常に自分の役目。そう背中で語る彼は、一足のうちにルネの集団に切り込んだ。
「おら!」
 ルネが密集していたその一体で刃を閃かせる。
 切り付け切り上げ、切り下す。遠心力を刃に乗せバットでも振るようにルネに刃を当て弾き飛ばす。
 背中に風圧。
 鉄の塊を叩きつけられたような衝撃を全身を襲うが龍哉は倒れない。
「まだだ!」
 龍哉は単騎にて敵を翻弄し続ける。
 それをバックアップするのが構築の魔女と蘿蔔の援護射撃。残りの集団はルネを退けながらじりじりと先へ進む。
「戦闘能力はさほどでもない……か」
『海神 藍(aa2518)』はそうため息をついて黒鱗を振るう、ルネの頭を吹き飛ばしても即座に再生、襲いかかってきた。
「水があれば増える……ふえるルネ、か」
 藍は風に飛ばされながら武装を変更、魔本に霊力を注ぎ込む。
――……ワカメみたいに言わないでください。ふざけてる場合じゃないですよ兄さん。
 そう冷静に告げるのは『禮(aa2518hero001)』彼女の言葉を聞きながら藍は考える。
(だが無限の再生などあり得るものか……核でもあるのか?)
 直後放たれたブルームフレアがルネ達を襲う。
「だったら燃やしてみるか?」
 そう龍哉は愛刀を地面に突き刺すとその手にイグニスを構えて周囲に火を放つ。
 ルネの体の断片すら焼き、蒸発させようという目論見だが。
 霧を払うことはできない。
「これだけ水まみれだと効果が薄いか」
 そう、空気中の霧がそのまま寄り集まってルネを修繕してしまうのだ。
 再び武装を神斬に持ち替えた龍哉は怒涛乱舞にて敵を吹き飛ばす。
「水蒸気排除の手段があれば、もっと楽なのに」
『木霊・C・リュカ(aa0068)』が放つ黒猫がニャーっとルネに襲いかかる。
 その猫の身に纏う熱量がルネを焼きはするのだが、再生を止めるには至らない。
 炎はルネという存在に対して効果が薄いのかもしれない。
 その隙をついて浮上するように迫る征四郎。だがその刃を受け止めるのも征四郎。
「言ってても仕方ありませんよ、リュカ」
 本物の征四郎はリュカの背を守る征四郎、その肩が当たると背中を預けるに足る温もりが感じられた。
――ですが、それも検討しなければ。ジリ貧ですよ。
『凛道(aa0068hero002)』がやや焦った調子で告げる。
 なぜならこのままではルネは愚か、まどろみにも、小夜子にもたどり着けない。
――これが泡沫の夢であれ、土足で踏み荒らしてくるような無粋な連中にはお引き取り願いましょう。
 そこで凛道は力の一端を解放。死の鎌は誰にも逃れられない。そうポルードニツァ・シックルから斬撃を放つ。それは空中で分裂し、進行方向のルネを粉々に砕いた。
――まだです、僕の刃は形なき者でも捕えます
 次の瞬間だった、信じられない出来事が起こる。
 そもそもリュカが放った斬撃は、ルネもそうだが、周囲に満ちた霊力、霧。それらすべてをルネと仮定しそれをターゲットに含めて放った一撃だった。
 その結果どうなったか。
 流血した。赤くはなかったが、ルネが体内に抱えた霊力が勢いよく噴出し、あたり一帯の霧を払う。
「今です!」
 征四郎が殿を務め、全員が一方方向に走る。

「させません!」

 その時初めてルネの声が切り全体に響き渡った、痛みに呻くように声を絞り発せられた殺気は払った霧を呼び戻すとともに新たな幻影を作り出す。
 先ほどとは比較にならない濃い霧が、両脇から閉じるようにリンカーたちを襲った。
 その霧の向こうでイリスと聖は霧の向こうで殺気を感じ刃を振るう。それが空中で激突して火花を散らした。
「君はだれ、僕の邪魔をするなら、倒していくまでだけど」
 イリスがそう笑い刃を地面に突き立て徒手空拳に切り替えた。すると聖は声高に告げる。
「オレは本物だぞ!?」
 聖は素直なお子さんである、この非常時に無駄なことをぐりぐりと考えてはいられないのだ。だから反射的にそう答えた。
――偽物は、自分が偽物ですとは言わないだろうね。
「だあ! めんどくせぇ! とりあえず見逃してやるから幻なら消えりゃいいし、本物なら好きにしろ!」
 その瞬間聖は背後を振り帰り刃を向ける。その霧の向こうには親しい人達の姿。
 ただ、どれも様子がおかしい、白目をむいていて、皮膚がとけ堕ちている。
 ゾンビ……というわけだろうか。
 一瞬ひるんだ聖、その背にイリスは背を合わせて翼を大きく広げた。
「やるぞ、あいつらを」
「承知しました」
 聖は飛んだ。目の前のおぞましい光景を全て切り払うため。
「俺の恋人も、戦狼もな、そう簡単にやられるやつらじゃねぇんだよ! 消えろ!」
 目の前に現れた、裁きの権化、どこまでも正しさを追求する彼に対して刃を当てる。
「なってねぇな、あいつはもっと強いからな!」
 その幻影を見て構築の魔女は思う。
――ロローー。
「以前の方が心に響きましたし……何より動きがぎこちないですね」
――--…………。
「表面的にしか私達を理解できていないならまどろみもまだあがらっているのでしょう」
 その聖の脇を殿としてかけてきた征四郎が横切る、いつの間にか最後尾になっていたようだ。
「お前らは先に行け! 俺がなんとかする」
 それが全員を、そして『邪英化』した者達を救う手だと信じて、霧と、無限に再生する化物達に挑もうとする聖。
 愛剣紅榴を翻し構える。敵に挑む。
「……作戦で持久戦ってワケだ……真っ先にヘバる訳には行かねェな!」
 その剣技は神速の行き。ルネなどに対応できるはずもなく、風を放とうとする腕を切り落とし、返す刃で腰あたりを一文字に切り付けた。
――……同感……攻撃は極力避けるよ、ヒジリー
「そのつもりだッ!」
「そこ! どきやがれ!」
 その時聖と同じ熱量を内包した声が響く。
 あわててバックステップ、すると聖の眼前に暴虐の嵐が吹き荒れた。
「てめぇらぁ! あたしの歌を聴けぇ!! あたしは……あたしはここにいる!!
 ミサイル等々、重火器による焦土作戦。たまらずルネは追跡の足を止めざるおえない。
「霧も、幻も! もう食いあきてんだよ!」
 死んでしまった戦狼たち。そんな悪趣味な幻想事まとめてアルトは焼き滅ぼす。
「いいか、あたしの幻覚が見えるってんならあたしを呼べ! ……てめぇらの見えているあたしを潰すのは……あたしの仕事だからな!」
――見えた、神社の階段。
 アリューが声を上げる。同時に理夢琉が何かに気が付いて足を止めた。
「これは、歌です」
 理夢琉は歌が好きだ。そしてこの歌声は幾度となく聞いたことがある歌声。
「あっちから、あっちから聞こえます!」
 理夢琉はとある方向をゆびさすと同時に意を決して告げる。
「ここからは別行動にしましょう」
 その言葉には全員賛成だ、そして元から想定していることでもある。
「全て消えるわけじゃない、私達の心に残るものがある。絆をつないだその事実が想いになる、強さになる、だから……きっと」
 そう理夢琉は誰にでもなくつぶやき自分の道を歩き出した。
 藍もブルームフレアで敵を打ち払い神社の階段に足をかける。
 その階段の上には死んだはずの姉が立っていて。
 だけど藍はその幻影にはわき目もふらず階段を上り始めた。
「相変わらず無粋な奴だ。やるよ、禮」
――行きましょう。この冠に懸けて。
 目覚めたらすべてが消えるのだとしても。それが無価値などということはない。そう伝えるために。
――……えいえんを、あなたに。


第二章 蝶の見る夢よ

 歌が聞える、それは子守唄、けだるげで、儚げで。
 それは夢に呼び込む。誘いの歌。
 それが霧の奥に行くにつれてどんどん、どんどん濃くなっていく。
 イリスはそんな霧の向こうに視線を逸らした。
 けれどそんなことをしても、肝心の小夜子の姿は見えない。だから。
「小夜子、いるんだろ。歌ってるってことはまだそこにいるんだろ!」
 これでは絶対見つからない、ルネが全力で小夜子を隠しているのだ。征四郎やリュカの表情に焦りが浮かぶ。
 そんな時、だ、アルトが動いた。
 全身の火薬庫を解放。
 力で無理やりこじ開ける。それがアルトのやり方である。
「何かあいつの思いにぶち当たれる歌を……。だったら。あたしは、あたしの歌を」
 胸に響くこの歌を。あとは喉から外に解き放ってあげるだけなら。
(あいつはどことなくあたしに似ている気がする……だからあたしの歌をぶつけてやらなきゃあならねぇ気がするんだ)
 スッと、霧の中に響く硬質な声、力強い声。叩きつけるようないつものパワーはなく繊細さと澄み渡るように伸びる高音が耳に心地いい。
 曲名はなんというのだろうか、分からない、アルト本人にも分からない。
 なぜならここで生まれた曲だから、誰かにとどけたい言葉を届けるための曲だから。
「おい、聞聴こえてるか!? あたしの歌が……あたしはてめぇに謝んなきゃなんねぇ。あんたはなんも悪くねぇ、悪くねぇのに強く当たっちまった……悪かった!」
 アルトは叫んだ。
「だけどよ! 聞こえてるか!? あたしの歌が! あんたはなんでもかんでも自分のせいだとしょいこんでんじゃねーのか? まるで昔のあたしみたいにな」
 小夜子の歌が歪んだ。まるでしゃくりあげるように音がつまり、次第に霧が薄まっていく。
「けどよ、そんなこったぁどうでもいいんだよ! 良いとか悪いとか関係ねぇ! てめぇがしょいこまねーといけねぇことはそんなつまんねーもんじゃねーだろ!」
「本当にそう思う?」
 見つけた。アルトはそう思った、白い闇に手をのばす。
「そういえばサマーフェスドタキャンしてたよね」
 イリスも声を投げるように遠くへ響かせる。
――そういえば残念だったね。
「なら、盛り上げていかなきゃだよね」
――さぁ、遠慮も競争も要らない。純粋に音楽を楽しもうじゃないか。
 次いで響く伴奏、羽を震わせたイリスの歌も空に溶ける。
「小夜子ちゃん、そこにいますか?」
 望月が囁くようにそう告げた。
「楽しい思い出を大事に、そこで留まるのもいいかもしれません。
 でもここで終わらないで、もっと自由に生きる世界があるはずです。
 アネットも、一緒に歌いましょう。」
 響くバラバラの曲たちはやがて望月の口ずさむ曲に交わっていく。
 蘿蔔も凛道も理夢琉も言葉を重ねて、メロディーを重ねて望月の声と重ねる。
 それは望月がサマーフェスで覚えてきた幻想歌劇団ディスペアの曲。それは小夜子にとって青春とも呼べる曲のはずだ。
「なんだか恥ずかしいな。そういえば、ワタシ、歌だけは、かなりアレですが。
 楽しい気持ちに、嘘はありませんから。
 幻想歌劇団のトップの帰還も、待っていますよ」
 そんな望月に対して蘿蔔が告げる。
「餅さん、ディスペアの曲にはこんな物もあるんですよ」
 そう蘿蔔が口ずさむのは彼女の代表曲トップスタンダード。奏でられる歌に思いにアルトは言葉を乗せる。
「回りは偽物だぁ? 
 全部嘘偽りだぁ?
 関係ねぇ!
 お前はお前だ!
 たとえどんな過去だろうと悪いこっだろーとなぁ、本気でやったんなら……貫き通すんなら偽りなんかじゃねぇ! 
 もし少しでも心に引っ掛かりがあるんならぁ……てめぇの本気ーうたーあたしに全部ぶつけやがれぇえ!!」
「私だって歌いたい! でも私!」
「でもだろ! お前がどうしたいかってことだよ! フォルテしもぉぉおおあああぁぁぁああ!!!! 」
 次の瞬間、少女の熱が白い闇を晴れさせて、そして闇の向こうに蹲る少女が見えた。
 そんな少女に望月が手を差し伸べる。
「私は明日が欲しかった。あの楽しい日々がずっと続くんだと思ってた! なのに」
 白い靄が晴れると、全員は目を疑った。いたいけな少女その体に禍々しい装飾が施されていたからだ。
 いや、装飾というのは違うだろう。だってそれは脈を打ち血をしたたらせているから。
「そんな、ひどい……」
 征四郎は拳を握り締めた。
 彼女は巨大な柱に括り付けられていた。その背中から異形の翼が生え、それもズタズタに引き裂かれている。
 その翼にもまた杭が打ちつけられていて、そのせいで動きが封じられているのだ。
 よく見るとその杭はスピーカーで、彼女の嘆きを再生し続けている。
 征四郎はあわてて彼女のそばに駆け寄った。ただ、それでも膝を折って彼女の隣に座りこむしかできなかった。どうすれば彼女を苦しみから解放されるか分からない。
 だから征四郎はとりあえずクリーンエアを、一時的に霧の脅威を遠ざける。
「小夜子……」
 リュカが拳を握りしめる音がギュッと。響いた。
「私は彼女の怒りを買った。当然ね、彼女の意に反して動いてあなた達を有利にしてしまった」
 震える瞼を持ち上げて小夜子は告げる。
「最初から、私達は望むべきじゃなかったのよ夢は夢、幻想は幻想、歌は歌。そこに本当なんてありはしない、作り物、作り物じゃ何も救えない」
「そんなことはありません、ありませんよ」
――小夜子でもないとしても。お前はアネットが残した、小夜子の残滓。
 それこそ歌のようなものなんだろう。
 それは確かに、俺の心には届いたのだから。お前は1人じゃないはずだ。
 ガルーが告げ、征四郎が小夜子の手を取った、冷たかった。
「どんなことをしても無駄よ! 全部無駄! 夢にも歌にも何の力もないの。私たちは消え去るだけなのよ」
 小夜子の歌が響く、先ほどより強く。
 そんな小夜子の前に理夢琉が立った。
「私、ディスペアのファンなんです」
「え?」
 小夜子が驚いて顔を上げる。この状況で何をいいんだすんだ。そんな顔をしていた。
――まだ希望が残っているだろうか。
 アリューがそう、暗い声で囁いた。
「伝えたい言葉があるから……結果がどうなろうと足掻いてみる」
 だが理夢琉は決意に満ち足りた顔をしている。
「アネットさんは本当は小夜子さんというんですね」
 理夢琉は言葉を続ける、その隣にそっと蘿蔔が寄り添った。
「あなたが、あなた達が歌った場所私が居た事実は変わらない。いつか私は同じ場所に立って歌いたいと思ってます」
 何度もステージを見た、凛として歌い踊る姿にあこがれた。
 そんな人が今地べたに這いつくばって泣いている、そんなこと、許せるはずがあるだろうか。
「感動しファンになり憧れて……目指そうとする夢のきっかけをもらった。なのに、泣いちゃいやです。どうしたら泣きやんでくれますか?」
 理夢琉は問いかける。目標とすべき人物のその一人に。
「わ、わたしは」
 その時、蘿蔔がボイスレコーダーのスイッチを入れた。
 その向こうから聞こえたのは、ディスペア所属アネットの、応援の声。
 次いで理夢琉は大きく息を吸い込んだ。そして声高らかに想いを歌い上げる。
「みんなの声、聞こえるでしょう? 想い、受け止めて欲しいよ。
 絆の糸引き合って、奏でるのシンフォニー、絆の音色高く響かせよう、応えて!」
 その歌に、小夜子は驚きの表情を見せた。
「憧れと、一緒に謳いたいって思いを込めて見ました」
「そうね、シンフォニーの部分でハモリが欲しいわね。あと半音はじかせるように語尾を謳うといい感じよ」
 そんな風にアドバイスを返す小夜子の瞳は先ほどと違って、現実を見ていた。
「けれど、現実は何も変わってないわ、攻略困難であることには何も」
 次いで口を開いたのは征四郎。 
「負けないでください! だって小夜子は、まだ、ここにいるじゃないですか…………!」
 やっと燃えたった希望の炎を消すまいと、征四郎が詰め寄った。
「え? でも私は偽物の人格で」
 リュカが言葉を繋ぐ。
「お兄さんにとって、小夜子の思い出はあの夏の町で一緒に遊んだことだけだけどさ」
 リュカは頬をかきながら小夜子を照れ臭そうに見た。そしてあの時口にできなかった思いをはっきりと口にする。
「連れ出してくれて嬉しかったんだ」
 リュカは思い出す、自分の手を引いて走る彼女の後姿、髪が風になびいてとても綺麗だった。
「多分小さい俺は小夜子が好きだったんだね、男子が女の子に意地悪言う理由なんてそんなもんだし」
「あ、す、すきって」
 顔を真っ赤にして俯く小夜子。
「あ、あり、ありが……」
「こんな霧だらけの場所じゃ花火も何もできないし」
「……」
 なんだか恨めしそうにリュカの顔を眺める小夜子、しかしリュカにその思いは届かない。
「外に行こう、小夜子。真っ白もやしになっちゃう前にさっ」
 そうリュカは笑って手を差し伸べた。
「俺が会って話した小夜子はお前だ。お前は、確かにここにいるよ」
 そうガルーが共鳴を解いて小夜子の前に立った。
「舎弟を置いて先に行くなよ、悲しくなるだろ」
 一緒に遊んだ。笑っていた。眩しかった、そんな思い出がよみがえる。
 ガルーは手を差し伸べた。その手を取るために小夜子は両手を広げて、指をかける。
「例え見せられた夢でも」
「そこで感じた想いは本物なはずだ」
 ガルーとリュカのその言葉に小夜子は一つ涙を流してたちあがろうとする。
 力の入らない足腰、その代りにリュカとガルーが力を貸して立たせる。
「もう、こんなに大きくなって」
 響きあう歌、音、小夜子の羽から漏れる歌はいつの間にかもの哀しい雰囲気はなくなって、まるであの時笑い合った午後の空気のように穏やかになっていた。
 ガルーはその歌に音を合わせる。キーは下げて。またハーモニーを楽しむように
「希望を、どうか捨てないで。だってあなたは」
 一人じゃないんだから。
 そう征四郎が告げた瞬間、小夜子の背中の翼がはじけ飛んで羽毛となって空に舞った。
「ありがとう」
 小夜子は泣きながら笑った。
「私の欲しかったもの、全部みんながくれてた、ありがとう、私はまだ戦える」
 そして小夜子は顔をあげた。
「まどろみを、いや、アネットを助けにいこう」
 その言葉に力強く頷いて。リュカは霧の向こうへと叫んだ。
「ねぇ、まどろみ。小夜子が泣いてるよ
 そこに夢か現実かは、関係ないでしょ?
 これ以上頑張れとは言わないから、もうちょっと踏ん張って
 微睡みからの目覚めを、虚無感で終わらせないと約束するよ!
 それに習って望月も叫ぶ。
「小夜子さんのやりたかったこと、アネットの本当にやりたいこと、思い出しましょう。
 誰かの操るままに、人を傷つけるなんて、したくないでしょう?
 少なくとも、ワタシは嫌です」
 そして小夜子は望月の手を取った。
「あなたとも遊んでみたかったな」
 そして最後に、小夜子は蘿蔔を見た。
「卸さん、レオンハルト。お願いがあるの、あなたのお友達のみんなに、伝えてほしい。意地悪してごめんなさいって。あと。虫のいい話だけど、あの子たちをお願いって。私と瑠音が抜けたディスペアはきっと、過酷な運命をたどる」
――自分で、言いに行くんだよ。そうだろう?
 レオンハルトが戸惑いの声を上げる。だが小夜子はそれに、晴れやかな笑みを返すだけだった。



第三章 消えてしまう前に

 一方、ルネ・クイーンへ向かうチームは、いまだにルネの妨害を受けていた。
 階段を駆け上がる一同。
 敵は三重でルネを配置していたらしく前後からの挟み撃ちを食らう。
(やっぱ、こいつら、ぶん殴った手応えが"妙"かッ)
 そんなルネに刃を当てると、毎回ゼリーを包丁で切っているような感覚を受ける聖。
――……面倒……。
 Leが短く告げた。
「やるだけやってみるかッ!」
 そう高らかに告げると剣を振り上げる。
 その刃が霊力を纏い、そして。
「千照流・絶翔……紅ッ!」
 ダズルソードから放たれた衝撃波は周囲に広がり、ルネを引き裂く。ルネはその体の構成上、斬るよりも、衝撃を与える方が対処しやすいのかもしれない。
「よし! これなら」
 階段を駆け上がってくる聖を構築の魔女がカバーする。
「水に不純物を混ぜれればよいのですが」
 銃でルネを的確に打ち落としながら自分も徐々に階段を上がった。
「打砕く……! 千照流――鳳瓦ッ!」
 ルネが吹きとぶ。なかなかに勾配が急なためにそのまま真っ逆様である。
「しゃらくせえええええ!」
 殿は聖が担当するとして、行く手を切り開いているのは香月、そして龍哉である。
「私は。嘘に塗れた甘い夢など欲しくはないのでな」
 一撃切り込み階段を上がる、二撃切り上げ階段を上がる。
 それを繰り返して徐々に徐々にリンカーたちは進軍していた。
「そこを、どけ、お前たちでは私が欲する者を与えられない」
 香月が欲するのは自分自身の手で愚神を倒すという事実だけだ。
 自分が自分であるために、それだけのために戦う。
 たとえもがき苦しんででも、現実世界で勝利を奪い取るのが全てだ。
 アタッカーが進路上から切り放ったルネは構築の魔女が打ち体の損傷に対して修復が追い付かないように努める。
「霧も水分ですか、再生以上に削れるならよし……駄目でも足がなければ動けませんよね」
 こうしていれば上っている間は妨害されないだろう。
「にしても、ずいぶん的確に再生しますね。何度も再生させていれば不具合でも起きるかと思っていたのですが」
 そう部隊の先端が神社の境内に到達したところで構築の魔女は足を止める。
 聖が到着するのを待ち構築の魔女も境内に侵入した。
 そこは今や神の社となっている、水晶の柱がいくつも立ち、それがこの霧を制御しているようだ、中心には呻くルネ。
「ずいぶん、早かったのですね。もう少しのんびりしていてもよかったのですよ」
 次の瞬間霧が拳の形をかたどった。依然としてルネは辛そうだ、思ったよりもまどろみの抵抗が激しいのかもしれない、ならば。
「お嬢。いまだ」
 龍哉が告げると、直後、周囲を覆っていたドロップゾーンに亀裂が入る。
「まさか!」
「すでにゾーンブレイカーが潜伏している」
 香月が告げると、ルネは香月に霧の拳を叩きつけた。
 それを刃でいなすことはできないため、スライディングのように地面すれすれに体をこすって回避。そのまま立ち上がりルネへと駆けた。
 そのまま刃を叩きつけようとするのだが、ルネは霧をドリルのように束ねそれを叩きつけることで香月と距離をとる。
 直後またドロップゾーンにひびが入った。
 ルネが呻く。それを見て、構築の魔女がルネに歩み寄った。
「聞こえていますか?」
 それは敵に向けるものとは思えないほどに穏やかな声音。
「あなたの質問に答えに来ました」
「なにを!」
 戸惑いの声をルネは上げる。しかし、香月に聖、龍哉まで加わってしまえば構築の魔女の行動を止める余力など無い。
「なぜ、落児が夢に身を委ねなかったのか……でしたよね」
――…………ロローー。
「えぇ、それは後で伝えておくわ」
 落児が何事かを口にする、それに対して構築の魔女は目を瞑って聞いて、そしてまた目を見開いて、口を開く。
「まどろみ、あなたは間違っている」
 その時ルネの体が揺れたような気がした。
「うぐっ」
「私達の大切なものは失われ……残された傷が悲劇が後悔こそが残された絆なのです」

「だからこそ、この苦しみも痛みも罪もすべて誇りと共に誰にも奪わせはしません」

「貴方は『それ』を誰かに奪われても構わないのですか?」

 その時ルネの体がぶれた。新たに象るのはローブを着た魔術師の姿。
「や、やめて。私の細胞は変身には適していな……」
――……前より感情があるように見えますね。まどろみの影響でしょうか?
 そう禮がルネを見下ろしてそう告げた。
「ははは、これが感情。であれば私にはきわめて不要ですね」
「そこにたくさんいるルネと、おまえは何が違うのかな?」
 そんなルネに蘭が言葉を浴びせた。
「私は特別製です」
「同じ偽物だ、その名も姿もあり方も。芯がない」
「あたりまえでしょう、私達は目的のために生み出されその遂行のために存在している」
「それはとても悲しいな、お前たちはプログラミングされたものなのだろう? コピーは何体いるんだい?」
「うるさい! 私を愚弄するな、まっとうな役割も持たない欠陥品どもが!!」
 歯をむき出しにして叫ぶルネ。霧が嵐のように吹き荒れる、内包された水が針のように硬質で。深々とリンカーたちの体に突き刺さった。
 だが、その嵐に目をつむり、もう一度あけてみると、そこに蹲っているのはまどろみで、苦しんでいるわけではなく、彼は泣いていた。
 そんなまどろみの肩に由香里は手をかける。
「もう、いいのよ。貴方が起きても、夢から覚めても、小夜子も、町も、消えない」
 まどろみが視線をあげた。初めてその瞳を由香里は見ることになる、銀色の意思が強そうな瞳だった。
「本当に消えるということは、死ではないわ。皆の記憶から消え去ってしまうということ。
 十波町も小夜子も。
 みんなが覚えてる。少なくとも、私達が覚えている。決して貴方達の事を忘れない」
「だがそれではだめなんだ、私はまだ小夜子に明日をあげられてない」

「それは違うよ」

 声がした。藍は、禮はそれが誰だかすぐに気が付く。
 そう、小夜子だ。 
 あの黒髪を振り乱して、息を荒くついて、あの時の姿のままにそこにいた。
 彼女は真っ直ぐにまどろみを見ていた。
「小夜子。小夜子。私は」
「ありがとう、まどろみ」
 小夜子は告げる。振り返って、友達を全員、一人一人見て。
「小夜子……」
 リュカが心細げに言葉をかける。そんなリュカに小夜子は、行ってきますと、告げた。
「私はあなたのおかげで、明日を得たよ。新しい友達もできたよ」
 由香里の隣に小夜子は腰を下ろす。
 頷く小夜子、由香里は言葉を継ぐ。
「だから、小夜子も、町も消えない。夢から覚めても消えないの。
 貴方が怖がって、そうやって起きないと、貴方の顔が見えないでしょう?
 だから起きて。もう一度、その靄の掛かった顔をはっきりと見せて」
 まどろみは涙をぬぐって顔をあげた。フードをとる。その瞳を由香里ははっきりと胸に刻みつけた。
「ちゃんと顔を見せてくれないと、貴方の事を覚えられないもの。
 自分の弱さを受け入れるのは怖い事じゃない。私も、同じだったから、信じて……」
「やらせません! やらせませんよ、私は歌の力を得て、トリブヌス級に!」
「それはこちらのセリフだ! ルネ」
――まどろみ、あなたに力をあげます。
 次いで藍がありったけの霊力をその身に纏う。
「まどろみよ……”お前の望んだ夢を見ろ”」
 それは支配者の言葉、到底ケントュリオ級には聞くはずもないものだったが、今のまどろみは違う、それを喜んで受け入れる。
「忘れるな、思い出せ。それがまどろみの、小夜子の願いだろう?」
――あなたが護るべきは、護りたかったものはルネじゃないでしょう!?
「まどろみ」
 風が吹いた。あの時の夏のような風。構築の魔女のドレスが揺れる。たおやかな髪が揺れる。
 泣きはらした目のまどろみに構築の魔女は告げた。
「それと伝言を『貴方の作る世界で幽玄であれ約束を果たせたことに感謝を』だそうです」

「では、改めて問いましょうか。貴方はこのままでも構わないのですか?」
 
 次の瞬間、ルネの体がひび割れて、まどろみがそのひびの向こうから転がり出てきた。
 空に水晶の欠片が舞う。
 砕けたルネの残骸は霧を集めて形となって。もう一度人間の形をとろうとるがうまく行かないようだ。
「やってくれましたね! 殺す! 皆殺しだ!」
 直後ルネに浴びせかけられたのはウレタン。
「何を!」
 イリスが空っぽになったそれを捨てるとアイリスが小気味よく告げる。
――わざわざ霧となる水分を集めてくれたんだね、ありがとう。
「くそ! 水ならあります! 地下水脈に!」
 ルネが手をあげると、地面がわれて大量の水が噴出した。
 それが切りとなって再び全員を覆う。
 そんな霧の向こうからリュカの前に征四郎が現れた。
 もう。リュカにはこの手の幻覚は通用しない。そうほくそ笑んでリュカは目の前の征四郎に告げる。
「せーちゃんならここでリュカ大好きですって言ってくれるはずだから」
 その真剣なまなざしに、征四郎の顔は一瞬で茹で上がる。
「なななな! 何を!」
「えー。せーちゃんが大好きって言ってくれないと哀しいな」
「哀しいかどうかでは無くて、ここは敵かどうかの場面でしょう!!」
 そんな問答の影で動く者がいた。
「アルトさん!」
「よっしゃこい!」
 次いで大地を揺らすような轟音と爆炎が上がる、その衝撃にてただでさえ不安定だったドロップゾーンは消え去り、霧は水となって全員がびしょ濡れになってしまう。
「あー」
「風邪ひいちゃうね」
 そう微笑むリュカと、逆に頭の冷えた征四郎。
 見れば蘿蔔とアルトが背中合わせに立っており、フリーガーの乱射で状況を打開したようだ。
 そしてエリア中央にはありったけのルネ
「あなたをここで逃すわけにはいきません。ここで!」
 征四郎が刃を構えると最終戦闘が始まる。
「おれだってうたえらあ!」
 そう征四郎が駆けだそうとした矢先、上から聖が堕ちてきた。その手にはギターをたずさえている。
「疑心暗鬼とか面倒くせェ! んなもん気合と熱量だ!! 剣でも歌でも意志と魂の熱唱だろうがッ!!それを偽モンと本物で見間違うかよッ!!」
――……それも千照流……?
「いや、違……考え方は近いか!!」
 その音波でルネ達は押しとどめられる、その隙をついて、由香里はルネへと接近した。
「貴女は水があれば強い。逆を言えば水を絶てば弱体化できる。前回ライヴスから生成した水を混ぜる策は威力不足だったから今度は趣向を変えてみるわ」
 由香里はウレタンの詰まった容器を投げる。ウレタンとは大量に水を吸収する性質を持つ。
 由香里の体は風圧で吹き飛ばされるもそのウレタンの容器は風によって紙のように歪んで、当たりにウレタンを噴出する。
「今です!」
 構築の魔女、蘿蔔が動いた。ルネを胴体を吹き飛ばすとその部分にウレタンが付着。
 水晶質の体は修復される際にいったん水に戻らなければならない。
 では水に戻れなかった場合どうなるか。それは修復が不可能であることを指し示す。
「そんな! ルネ達が」
 ルネ・クイーンの焦燥が声になって漏れる。
 そんなルネ・クイーンにウレタンがさらに吹きかけられた。
 視界を潰されるだけではない息苦しさ。水分が奪われていくのがわかった。
 由香里はルネ・クイーンの頭を跳ねた。
「酷く散文的な最後で申し訳ないけれど。これで……とどめ!」
 そして腰をひねって由香里が体を引き絞る、解き放たれた威力は盾に乗って真っ直ぐにルネに突き立てられた。
 ガラスが割れる音がして、ルネの首が吹き飛ぶ。
「クイーンは力を制御できていない様子でしょうか」
 蘿蔔はそう分析する、まどろみにむしろ力を奪われてしまっているのかもしれない。
 いつもより弱々しかった。
 だからと言って手加減をするつもりはない。
 蘿蔔は逃走を図ろうと地べたを這いずるルネ・クイーンに銃弾の雨をお見舞いした。
 四方八方から飛び交う弾丸にルネの体は巻き上げられた徐々に砕かれていく。
「あ、こんな。まさか。私が」
 体が砕かれれば声も小さくなる。
「…………絶対に逃がしません。あなたはここで終わらせます」
 舞い上がるルネの胴体破片、それが振動し、そこから音が響くなら完膚なきまでに叩き潰してやろう。
 そうイリスが舞いあがった。
「煌翼刃・螺旋槍!!」
 一際派手な音を鳴らしてルネ・クイーンが砕け散った。

エピローグ
 
 晴れ渡るような青い空が崩れ落ちたドロップゾーンの向こうに見える。
 夏でもないのに蝉が鳴いているのは。きっとこの日のための奇跡。
 そんな夏を錯覚させる神社の境内に。すすり泣く声が聞える。
 征四郎が、しきりに自分の幻想蝶をまどろみと、小夜子に押し当てていた。
 二人は眠ったように動かず、目を覚まさない。
「本当は、あんな終わり方だって許せない。
本当は、もっと楽しいこと、一緒にしたいのです。
小夜子と、小夜子へのアネットの想い。こんな形で利用されるなんて、あんまりです!」
「もう、うるさいなぁ」
 そう小夜子が目を開く、まるで昼寝から起きた時のような甘い声で囁くように言葉を紡ぐ。
「私たちはもう。消えるの、夢はここで終り」
「事情はどうあれ、小夜子としての心は他の誰でもない、あんたが培った、あんただけの物だろう!」
 そう龍哉が小夜子の肩を揺さぶった。
「なら抗うべきだ。最後の最後まで、それを奪おうとする相手に」
「それとも、捨ててしまっても構わない。その程度の物だったと?」
 ヴァルトラウテが訴える、その言葉に小夜子は小さな笑みを返して、まどろみの頭をなでた。
 その手に蘿蔔も手を重ねる。
「アネットさん、よく頑張りましたね…………私たちがここまでこれたのはあなたのおかげです、ありがとう。後は任せて、見ていてください…………大丈夫、これは夢じゃないですから。あなたも、私たちもここにいますよ」
 その手をまどろみがとった。あまりに弱々しい握力、心なしか透けている気がした。 お別れがすぐそこまで迫っていた。
「小夜子、私は君に、何かあげられただろうか」
 まどろみが泣きじゃくりながら告げる。
「私に優しくしてくれた、あなたを守れなかった私は、あなたに何かを返せただろうか」
 その時、まどろみのイメージがあたりに投影された。護れなかった人達、悲劇。
 最後の彼の力だろう。儚い白昼夢は昼の日差しに溶けて消える。
「ずっと、ずっと気がかりだった。あなたの未来を奪ってしまったこと」
「あなたに奪われたなんて思ってないよ」
 小夜子は体を横たえながらまどろみに告げた。
「あなたは私に明日をくれようとしたんでしょ? もういいの、私あなたのおかげで明日をもらえてた」
 夕暮れ時の最後の最後、みんなで遊んだあの日の思い出。
 まどろみと呼ばれるアネットに、会いたくて。最初はそれだけが目的で紛れ込んだのだけど。
 いつの間にか夢中になっていた。まどろみの夢の中で、小夜子は確かにそこに息づいていて。
「みんながね、あの日の出来事を本物だって。
 ずっと覚えてくれるって。言ってくれたよ。だから私は悲しくないんだ。
 アネット。おいで。もうあなたが苦しむのも、あなたの力を悪く使われるのも嫌だよ。一緒にいこう。夢の終わりまで」
 透けていく、二人の体がとけていく、元からそこには何もなかったかのように。
「みんな、ありがとう」
 まどろみが告げる。
「偽物だった私だけど、あなた達には本当をあげたいの。神社の境内のその下、私の宝物があるから、よかったら受け取って」
 小夜子の姿がとけて消え。光の粒が空へと向かう。それは銀色と金色の光、まるで二人が笑いながら駆けていくようだった。
 それをリンカーたちは見送った。
「みんな、ありがとう、大好きだったよ。また明日ね」

「「そして、夜にはきっと良い夢を」」

 二人の声が重なり響きそして、境内は蝉の鳴き声に包まれた。
「小夜子。君は間違いなく小夜子だったよ。……でなければ、夢を終わらせようとなんてするものか」
 藍は空を見あげながらそうつぶやいた。
 たとえ、その存在が偽物だとしても彼女は偽物の本物だった。
 偽物だったかもしれないが、その想いは本物だった。
 そう誰もが信じている。
「少し歌ってきます」
「あぁ、付き合うよ」
 禮は人魚の竪琴を手に歌を謳う。藍はヴァイオリンで伴奏を。
 死せる戦士に鎮魂歌を。
 せめて、無明の海を迷いなく逝けるように。
「小夜子は、まどろみは救われたんだろうか……?」
 藍は言う。
「きっと救われましたよ」
 だって二人は泣いていたけど、笑顔のままに行けたんだから。
「あの夢のこと、忘れません。……また、夢の中で遊びましょう」


    *   *

 その光景を監視専用のルネで見守っていたガデンツァ。
 彼女は計画書に大幅な変更を書き加えなければならないと苛立っていた。
「もともとリスクが大きい作戦じゃったが、やっと育んだクイーンがこのようにあっさり破壊されてしまえばのう。なかなかに痛手じゃ」
 ルネ・クイーンはガデンツァのようにイミタンド・ミラーリングが使えるわけではない、あれだけ細かく破壊されてしまえば再生も不可能だろう。
「ふふふふ、しかし計画にもう一体の歌姫は必要。であれば」
 ガデンツァは考える、場に出ている札で歌姫だいたい可能な者は誰かと。
「エリザ。かの?」
 そう不敵に微笑むと、ガデンツァは監視用ルネを塵へと返した。
「これだけの力ある者達を誘導したのは、ガデンツァだよね」
 不穏な空気を感じ、望月は振り返る。
「目的はわからないけど、たぶん、そのためにより上位の力を狙っていると思うよ」
 百薬が首をひねりながら告げた。
「レガトゥス級、さらに神話にすら出てこない上位?
 そのついででトリブヌス級の量産とかされたらたまらないね」
「それを防ぐためにワタシ達がいるのよ」
「え、あたしもその仲間なの?」
 そう冗談っぽく笑いながら望月は視線を境内裏手に戻す。
 小夜子が示した位置を掘り返してみるとそこには小さな缶箱が埋まっていた。中にはガラクタばかり。
 アイスのあたり某とか、秘密基地作成で余ったパーツとか、そんなのばかり。
 ただ、古びた便箋が中に入っていて風を切るとメッセージカードが入ってた。
 内容はこんな感じ。

 秘密基地団員、絆の証、私がいなくなったらあけるように。
 
 その時強く風が吹く、まるで彼女が笑っているようなそんな幻聴を聞いた。
 長い長い白昼夢、それが終わって見上げる空はどこまでも広がる青で染まっていた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 断罪者
    凛道aa0068hero002
    英雄|23才|男性|カオ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • 絶望へ運ぶ一撃
    黛 香月aa0790
    機械|25才|女性|攻撃
  • 偽りの救済を阻む者
    アウグストゥスaa0790hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • 狐は見守る、その行く先を
    飯綱比売命aa1855hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • 残照と安らぎの鎮魂歌
    楪 アルトaa4349
    機械|18才|女性|命中
  • 反抗する音色
    ‐FORTISSIMODE-aa4349hero001
    英雄|99才|?|カオ
前に戻る
ページトップへ戻る