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大自然の中で
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遊びの相談場
最終発言2017/07/18 08:43:04 -
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最終発言2017/07/17 12:43:28
オープニング
夏といえばアウトドアの季節。
草木は生い茂り、昆虫や鳥等の生物達も活発に活動するこの時期、慌ただしいコンクリートジャングルから抜け出し、たまには大自然の中でのんびりとした時間を過ごすのも良いだろう。
都内にあるキャンプ場、ここでH.O.P.E.主催のレクリエーションが催されていた。
一泊二日のアウトドアを通じて大自然の素晴らしさを体験するというものだ。
近くには川魚含む様々な生物が生息する清流や、ハイキング気分で気軽に登れる山もある。
家族、友人、恋人と、もちろん一人でも参加可能、必要な器具は全てレンタル出来るので手ぶらで来ても充分楽しめるだろう。
なお炊事場や調理用の窯等もあるので食材を持ち込む、あるいは調達すれば料理することも可能だ。
夜になれば都会では見られないような綺麗な星空が眺めることが出来る。
一般利用者の中にはそれが目当てでこの施設を利用する者も少なくない。
仕事に勉強、そして争い、ここにいる間はそれら全てを忘れ、大自然との触れ合いを全力で楽しんでみてはいかがだろうか。
解説
【目的】
大自然の中、アウトドア形式で一泊二日を過ごす。
【施設詳細】
・キャンプ場
宿泊の際はレンタルのテントとバンガローを選べる。
調理用の窯や炊事場もあり希望者はバーベキュー用の機材もレンタル可能。
夜は天体観測用の望遠鏡の貸出も行っている。
・山
頂上までは普通に歩いて片道一時間程度。
道は整備されており初心者でも簡単に登ることが出来る。
山頂からは大自然の景色を楽しむことが出来る。
・川
キャンプ場のすぐ近くにある川。
川魚が生息しておりキャンプ場で竿をレンタルすれば釣りも可能。
水深は浅く流れはそれ程強くない。
泳ぐには適さないが水遊び程度なら可能。
リプレイ
●山×トレーニング
本日の天気は快晴、絶好のアウトドア日和だ。
「山に森に川! すなわち大・自・然! と来ればやることはもう山籠るしかないッスよ先生!」
レクリエーション参加者である大平 つるぎ(aa0751)は英雄のフランシス(aa0751hero001)と共に登山道の入り口に来ていた。
「ふはははははは! その意気や良しだつるぎ君!」
山の中は涼しいとはいえ季節は夏、見ているだけで暑くなりそうな鎧に身を包みながらも全く気にする様子はないフランシス。
「熱き血潮に志、この山で存分に発揮してやろうではないか!」
二人は能力者と英雄でありながら師弟のような関係を築いていた。
「それじゃ早速行くッス!」
待ちきれないと言わんばかりに山道へと駆け出すつるぎ、フランシスもその後をガシャガシャと音を立てながらついて行った。
ジラーフ(aa5085)と英雄のカオピー(aa5085hero002)は山道を外れ森の中へと入っていた。
「空気が美味しいですね」
カオピーは深呼吸して肺一杯に大自然の空気を取り込む……すると不思議と心が穏やかになる。
「これは食べられる植物ですよ」
ジラーフが見つけたのは渓流に自生していた山ワサビ、その他にもタマゴタケ等食べられそうな物を見つけると取りすぎない程度に採取していく。
「入れ物を持ってくれば良かったですね」
「これだけあれば充分ですよ」
両手一杯に食材を持って呟くカオピーにジラーフは笑顔で答えたのだった。
一方その頃、麻生 遊夜(aa0452)と英雄のユフォアリーヤ(aa0452hero001)は一旦キャンプ場に荷物を置いてから山道を目指して歩いていた。
「やはり自然は良いな、落ち着く気がする」
自然の空気を味わいながら歩く二人、リーヤも機嫌が良いらしくその証拠に尻尾が元気よく揺れていた。
山道の入り口に着くとリーヤは遊夜の方を振り返り一言。
「……ユーヤ、競争……する?」
「それじゃ頂上がゴールってことで……」
そう応えながら準備運動をする遊夜、一方リーヤは余裕そうに微笑んでいた。
「……ん、負けない……よ?」
その言葉を合図に駆け出すリーヤと遊夜、道は舗装されており鍛えられた能力者と英雄の二人であれば平地とそう変わらぬ速度で駆け抜けることが出来た。
途中、道が分岐している所で先頭を走っていたリーヤは上級者向けの難易度の高い道を選択。
遊夜も負けじと後を追うが、先程までと違い足場の悪い道ではリーヤとの差は徐々に開いていった。
先に山頂に着いたのはリーヤ、遊夜はさすがに疲れが見えてぐったりとしていた。
「ぬぅ、流石に勝てんか……」
「……ん、頑張った」
山頂にあったベンチでしばしの休憩、リーヤは遊夜を膝枕しながらその頭を優しく撫でた。
山頂からの眺めは素晴らしく、二人はしばし時を忘れてその景色を楽しんだのだった。
●川×食材調達
キャンプ場に隣接するように流れる川には川魚が生息しており道具があれば釣りを楽しむことが出来た。
魂置 薙(aa1688)と英雄のエル・ル・アヴィシニア(aa1688hero001)も持参した道具で釣りを楽しんでいた。
「普通の釣り竿は使わんのか?」
「これ楽しそうだから、やってみたかった」
そう言う薙が使っているロッドは普通のと違い銃のような形をしておりルアーを打ち出すことが出来る代物だ。
一見オモチャのように見えるがリールが着いているのでちゃんと魚を釣ることが出来る。
「あ、何かかかった」
引き上げようとリールを巻くが中々の大物らしく魚も必死で抵抗する。
「どれ、手伝おうか」
「大丈夫」
薙は焦って引き上げず魚を疲れさせることにした。
糸が弛まぬように巻きつつ、魚が強く引く時は糸が切れぬように緩め、そんな駆け引きが少し続くとさすがに魚も疲れたのか徐々に引く力が弱まってゆく。
「ほう、なかなか大きいじゃないか」
釣り上げた魚を誇らしげに掲げる薙を見てアヴィシニアは微笑んでいた。
そこから少し下流では藍那 明斗(aa4534)と英雄のクロセル(aa4534hero001)も魚釣りを楽しんでいた。
「自然に囲まれると、心も体も解放的になるっつーか……」
「野生に還る?」
「ああ、獣の血が目覚め……ねぇよ!?」
明斗は釣りの本を読んで予習してきたもののロッドを振るその姿は完全に初心者のそれである。
投げた釣り針が狙った場所へ落ちるはずもなく、明斗が最初に釣り上げたのは魚ではなくクロセルだった。
「わわ……! いい加減にっ!」
鞭のようにしなるクロセルの尾が明斗の背中に直撃し、明斗は悶絶しながら水中へと落下していった。
特訓の為に山に入っていたつるぎとフランシス、野を駆け森を駆けそして今は川を駆けていた。
つるぎは予め服の下に水着を着ていたらしく躊躇なく水の中に飛び込んで行く。
「冷たいッス! 気持ちいいッス!」
さすがのフランシスも鎧で飛び込むことは出来なかったが足元まで水に入り棒を剣の代わりにつるぎの剣術修行に付き合っていた。
その頃、山から降りてきた遊夜とリーヤは一旦キャンプ場に戻ってから水着に着替え川へ向かっていた。
「肉は荒木さんらが担当するらしいし……」
「……ん、あとは……お魚?」
釣りポイントを探し歩く二人の前に川の中で特訓を続けるつるぎとフランシスの姿が。
遊夜とリーヤはつるぎが川の中を駆け回る度に川魚が追い立てられ飛び跳ねる姿を見て何かを思いついた。
「そのまま魚を上流に追い立ててくれないか?」
「お安い御用ッス!」
遊夜に言われるがまま今までより激しい動きで魚を追い立てるつるぎ、そんなつるぎから逃げようと流れに逆らい魚が跳ねた所をめがけ遊夜は持っていたナイフを放った。
「……ここだ! 唸れ、俺の命中!!」
狙いは寸分違わず放たれたナイフは見事魚に命中、胴体を貫通しナイフは勢いそのままに対岸の木へと突き刺さった。
「……ん、よくできました」
「凄いッス! ぱねえッス! もっと捕るッス!」
「このまま一人二匹は確保したいところだな」
突き刺さったナイフと魚を回収した遊夜は再び狙いを定める。
「よし! やるぞつるぎ君!」
今度はフランシスも加わりつるぎと二人がかりで魚を追い立て始めた。
川へと落下し全身ずぶ濡れの明斗は服を乾かしながら褌姿で釣りを続けていた。
先程のやり取りのせいかそこにクロセルの姿はなく、一人釣り針に餌を付け糸を垂らし待つものの魚が喰いつく様子はない
「うー……寒い」
もしや魚はいないのか、そう思い明斗が水面を覗き込むと水深の深い所に他の魚より明らかに巨大な大物が悠然と泳いでいた。
近くに餌を投げ込んでもその大物はピクリとも反応しない。
警戒心が強いのか、だからこそ今まで釣り人に釣られることもなくあそこまで大きくなったのであろう。
明斗は自分の中の野生の血がメラメラと燃え上がるのを感じていた。
次の瞬間その体は宙へ飛び上がり獲物めがけて勢い良く飛びかかりそして……。
「さっきはやり過ぎちゃったかな」
先程は勢い余って明斗を川へ突き落としてしまったクロセルは、離れて釣りをしている間に本来の落ち着きを取り戻していた。
少しの後悔、少しの心配、様子を見に行こうと立ち上がり明斗の居る方へと歩きだした。
「……ミント君?」
釣り竿は地面に置かれていたが周囲に明斗の姿はない。
クロセルの胸中に芽生えかけた焦りは獣の唸り声のようなものにかき消された。
「GRRR……」
そこでクロセルが見たのは捉えた大物の魚を口に咥え四足で川から上がってくる明斗の姿。
「……見なかった事にしよう」
思わず漏れるため息一つ、荷物を纏めクロセルは早足でキャンプ場へと向かった。
●熊×チョコ×BBQ
荒木 拓海(aa1049)と英雄のメリッサ インガルズ(aa1049hero001)、雨宮 葵(aa4783)と英雄の燐(aa4783hero001)は地元の猟友会にクマの狩猟許可を求めたが残念ながら許可は降りなかった。
有害駆除目的でもないとここではそう簡単に駆除の許可は降りないらしい。
「せっかく山に来たのになあ。熊狩りたかったな熊」
「まあ許可が出ないんじゃ仕方ない。でもほらこんなに熊肉貰えたよ」
拓海は熊肉のたくさん入ったクーラーボックスを抱えていた。
「地産地消は、良い事……」
そう呟く燐の言葉も今の葵には届いていない。
「はぁ……」
四人がキャンプ場に向かっている頃、弥刀 一二三(aa1048)と英雄のキリル ブラックモア(aa1048hero001)の二人はなぜか洋菓子店に向かっていた。
「うむ、外なら普段出来んチョコレートファウンテンが良いだろう」
「……は?いや普通キャンプならマシュマロ焼くとかちゃいます?」
必要な機材はレンタルも可能らしく、一二三とキリルはチョコと大量の菓子、それと果物をいくつか購入してキャンプ場へと向かった。
キャンプ場に着いた一二三達は早速チョコファウンテンの準備に取り掛かった。
電源は持参したバッテリーを使用しチョコを付ける菓子や果物を一口大に手際良く切り分けてゆく。
後からキャンプ場に着いた拓海達四人を見てキリルはたくさんの菓子を抱えメリッサの方へ駆け出して行く。
「メリッサ殿! どうだ! これなら皆も楽しめ……?!」
運悪く足元にあった石に躓いてしまうキリル。
体勢を崩し手に持っていた菓子が宙を舞うのを皆がまるでスローモーションのように見つめている間メリッサだけは身を乗り出しいくつかの菓子をギリギリでキャッチしていた。
けれど残りの菓子とキリル自身はそのまま川へと落下してしまう。
その様子を見て笑いを堪える一二三にキリルは無言で近づいて行きそして……。
「な、何しおるんや、こんボケ!」
「煩い! 貴様が持てばこんな事にならずに済んだであろう!」
八つ当たりとばかりに一二三を川へと投げ込んでしまった。
「勝手に持ち出したん、あんさんやろが!」
一二三の怒りはごもっとも、やがて二人の喧嘩は徐々にエスカレートし落ちていた棒を拾いチャンバラが始まった。
「何やってんだよ……ガキか」
その一言がきっかけで一二三の怒りの矛先が拓海に向いてしまう……とんだとばっちりである。
一二三はテント用のロープを手に取ると投げ縄のように拓海の脚に引っ掛け転ばせ、お返しとばかりに拓海は一二三に向かって飛びかかる。
しかし勢い良く振り下ろされた拳は防御した一二三の金属製の腕で防がれてしまう。
「痛っ! 機械ボディに勝てるか!」
「二人とも子供よね……21と27歳の」
メリッサのその言葉で喧嘩は収まったものの互いに睨み合い険悪なムード。
散らばった菓子の後片付けが終わる頃、食料調達に行っていた他の者達も合流した。
拓海達が持ってきた熊肉を捌くのは薙と拓海が担当することになった。
拓海は薙に捌き方の手ほどきを受けながらさりげなく薙に近況を尋ねてみた。
「エージェント業は慣れたか?」
「エージェント業は……慣れてきたと思う。けど、気持ちが先走って動いて、エルルに助けられることも、たくさん」
俯く猛虎帽子が少ししょんぼりしているようにも見える。
「それだけ気持ちが入ってるんだよ。それにアヴィシニアさんだって薙に助けられてるんじゃないかな」
能力者と英雄は互いに支え合うもの、年上の拓海にはそれが良く分かっていた。
遊夜や明斗達が捕まえた魚を捌くのに葵達も協力を申し出た。
「料理は人並みに出来るんだよ」
その言葉通り葵も燐も手際良く魚を捌いていく。
数匹は串を刺して串焼きに、大物は切り身にして天ぷらに、さらに遊夜が持参した自家製野菜と魚、ジラーフとカオピーが取ってきた茸も使って美味しそうな鍋料理も出来上がった。
「夏、自然、キャンプといえば何だ、クロセ」
「虫除け日焼け防止、えーと……」
「そう、カレーです!!」
明斗とクロセルは飯盒で米を炊く担当だが、それだけではなくキャンプの定番、カレーを作るという。
それを聞いた遊夜は自家製の野菜を提供した。
「良かったら使ってくれ、上手く出来たんだ」
明斗が米を研いでいる間、クロセルは遊夜から提供された自家製野菜を調理することにした。
「ジラーフとカオピーも手伝いますよ」
野菜料理が得意と言うだけあって二人は見事な手捌きで野菜を一口大に刻んでいく。
一方クロセルは自前のエプロンを着用し、カレー用の人参を星型や花形に飾り切りしていく。
味だけでなく見た目にも拘るその姿勢はクロセルの料理の腕前を物語っている。
「飯ごうは蓋をしてそのまま上下に振るだけで米が研げるんだぜ」
作業一つ一つにいちいちうんちくを披露する明斗、しかしクロセルは特に気にする様子もなくカレーのルーに隠し味のチョコレートを入れ味見をする。
「ん、美味しい」
肉や一部の野菜は先に炭火で火を通してから鍋に入れるという小技も披露する。
「皆流石だな」
楽しそうに調理する皆の様子を遊夜は持参したカメラに収めていく。
しばらくすると辺り一帯にカレーの良い匂いが広がっていた。
遊夜達と別れた後もストイックに特訓を続けていたつるぎとフランシスは持参したおにぎりで晩飯を済ませようとしていた……けれど風に乗って流れてくる良い匂いはつるぎの嗅覚を刺激して止まない。
「カレー……チョコレート……」
「どうしたのかねつるぎ君」
「じ、自分にはおにぎりが……けど、しかし……!」
つるぎの胸中を察したフランシスは行ってこいと言わんばかりに強く背中を押した。
「ああっ!!」
背中を押されたつるぎは勢いそのままに匂いの元へと駆け出していた。
「そろそろいいかな」
明斗が飯盒の蓋を開けると見事に炊けた白米が姿を表した。
「美味しそうッス!」
「ーお……ツヤツヤ」
美味しそうな匂いに釣られて来たつるぎ、そしてリーヤも嬉しそうに尻尾を振っている。
「こっちも準備出来たぞ」
キリルが用意したチョコファウンテンに電源が入れるとチョコが噴水のように湧き上がる。
キャンプとは思えない程豪盛な料理の数々が出揃い、朝から何も食べていないこともあって皆はすぐ食事を始めた。
「たんとお食べー」
お皿を持って並ぶつるぎとリーヤにカレーを取り分けるまるでお母さんのようなクロセル。
「……ん、カレー……美味しい」
幸せそうな顔でカレーを食べるリーヤを見つつ遊夜も鍋に舌鼓をうつ。
「やっぱ外で食う飯は上手いよなぁ……」
「いっぱい食べるのだぞつるぎ君!」
「はいッス! 先生!」
勢い良くカレーを頬張るつるぎを見て満足げなフランシスは、川で取った魚の串焼きを鎧の頭部を少し持ち上げた隙間から差し込むようにして食べていた。
捌いた熊肉でメリッサとアヴィシニアはローストビーフならぬローストベアーを作っていた。
さらにもう一品、トマトとワインで臭みを消し作った洋風鍋、こちらも絶品であった。
アヴィシニアに勧められたこともあり薙は自分達が捌いた熊肉を真っ先に食べ始めた。
「どうだ薙、私とメリッサ殿で作った料理の味は」
「ん、美味しいです」
薙の言葉に満足そうなアヴィシニア。
「どれどれ……」
熊肉の味が気になっていた一二三も一口食べてみる。
その味の素晴らしいこと、瞬く間に一二三の目は見開かれ思わず空を見上げ感涙してしまう程に。
一二三の様子に先程まで喧嘩をしていたはずの拓海も心配になり思わず声をかけてしまう。
「一年……食うや食わずだったのか?」
「これ食うてみい! めちゃくちゃ旨いで!」
一二三に言われるがまま拓海を熊鍋を一口食べてみる。
「ホントだ、旨いやっ!」
先程の喧嘩はどこへやら、険悪なムードは吹き飛び二人共楽しそうに食事を続けた。
「喧嘩してたんじゃないの?」
二人の様子を見ていたメリッサの言葉に思わずはっと我に返る拓海と一二三。
どちらともなくお互い吹き出し、些細な事から始まった二人の喧嘩は笑顔での終幕とあいなった。
食後は皆お待ちかねのデザート、チョコファウンテンの登場。
「うわー甘くて美味しいー!」
「ん。甘いものは、幸せ。ここに天国が、ある……」
葵と燐は早速マシュマロにたっぷりのチョコを付けて味わっている。
「とっても美味しいです」
「カオピーも甘いものは好きです」
ジラーフとカオピーの二人は草食なので果物にチョコを付け味わう。
甘い物と甘い物が合わないはずもなくあれだけたくさんの料理を食べた後にも関わらずたくさんの菓子は瞬く間になくなっていく。
「豪華ね~今日の一番人気なんじゃない?」
「皆喜んでくれたようだな」
デザートを楽しむメリッサの横でキリルはとても誇らしげだ。
「……ん、幸せ」
リーヤの耳が楽しそうに揺れる。
「甘いもんは好きだがさすがに大量には食えん……」
その横で遊夜は少し控えめにチョコを味わう。
やはり甘い物は男性より女性の方が得意なのかもしれない。
「チョコのタワー! パねえっす!」
目を輝かせるつるぎ、両手に菓子を差した串を持ち次々と口の中へ頬張っていく姿はまるでリスのよう。
そうこうしている内に日は落ち、あたりはすっかり暗くなっていた。
●夜×星空
食事の後片付けを終える頃には空には星々が輝いている。
明斗とクロセルはレンタルの望遠鏡を抱え山道を山頂へ向かって歩いていた。
「空に夢中で転ばないようにね」
「はは、そんなドジを……! うぉぉぉぉ!」
言いかけた所で案の定足を取られる明斗。
宙を舞う望遠鏡はクロセルがキャッチしたのでなんとか無事だったものの明斗本人は転がりながらはるか後方へ。
「あらら、みーくん大丈夫?」
「はは、なんとか……」
後から着ていた葵と燐の差し出した手を取り起き上がった明斗は服に着いた土を払うと気まずそうに頭を掻いてみせた。
「ん。文系は丈夫……帰りも転がって降りる?」
「確かに文系だけども!?」
そんなやり取りをしながら四人は目的の場所へ。
「クロセルさん、どれが織姫と彦星?」
「んーと……あれ、こと座のベガとわし座のアルタイルだよ」
指差すクロセル肩越しに覗き込む葵と燐、その間に明斗は望遠鏡を設置していた。
「天気が良いからよく見えるな」
「あ……流れ星」
燐の指差す方向、キラリと煌めきそして儚く消えていく一つの星が。
「あの星はミント君かも……」
「死んでないからな!?」
その頃、拓海と一二三は二人で星空を眺めていた。
「1日馬鹿やった……1年経ってもお互い変わらんな」
「ホンマ1年では何も変わらんな……せやけど、拓海は前よか目付きがしっかりしとるしすっかり頼もしゅうなっとるな!」
付き合いの長い二人は互いに互いのことを認めあっていた。
「そうか?としたら戦いとの向き合い方かな。何かを守る為に引く線がある……同情や理屈だけではどうしようも無い線。それは自分が強く成る事で位置が変わるんだよ」
(うちは、何がしたいんやろ……)
自分の目指すものはなんなのか、一二三には分からなくなっていた。そんな一二三の胸中を察したのか拓海は力強くその背中を押した。
「これからは一緒だな。そうすればお互いにもっと強く成れる」
「……せやな、お前と共闘して……守りたいもん守れるよう強ならな、やな! けど、攻撃は絶対抜いたるからな!」
「負けず嫌いめ」
ジラーフとカオピーもまた夜の星を観察していた。
サバンナと違いここはあたりを警戒する必要はない。
何も起きないことが二人にとってはそれだけで幸せなのだ。
「こんなじっくり星を眺めるなんて初めてです」
「そうですね……」
こくり、こくりとジラーフの首が傾くのをカオピーは微笑みながら見ていた。
今日はたくさん遊んで騒いで疲れたのだろう、ジラーフは癖で立ったまま寝るらしい。
「さ、そろそろテントに戻りましょう」
ここではサバンナと違い外で寝る必要もないのだから。
つるぎとフランシスは一足早くテントで就寝していた。
「良く動き、良く食べ、良く眠る……健全に欲求を発散させることは、良き成長に欠かせぬものだ」
師であり親のようでもあるフランシス、その横で無邪気な笑顔で眠るつるぎ。
きっと楽しい夢でも見ているのだろう。
「……おっとつるぎ君、お腹を出して寝てはいけないぞっと」
寝相の悪いつるぎの服を直すとフランシスも横になりゆっくりと目を閉じた。
翌朝、帰り支度をする拓海のもとに薙とアヴィシニアがやって来た。
「そういえば呼び名だがの、エルさんで良いぞ。ふと、いつまでもアヴィシニアさんでは少々堅苦しいと感じたのでな」
「ありがとう。ア……エルさん、嬉しいです」
拓海の言葉に嬉しそうなアヴィシニア、照れくさいのか足早に去る彼女に聞こえないような小さい声で薙が囁いた。
「エルルね、もうとっくに、名前呼びでいいと思ってた。でも最初にアヴィシニアさんって呼ばせちゃったから、なかなか言えなかったみたい」
拓海はふっと微笑んでから薙へぐっと親指を立てた
「あ、これ言ったの、エルルには内緒、ね」
薙もそれに応じるとアヴィシニアのもとへと駆け寄り。
「来て、よかった」
「私もだ」
こうして一泊二日のサバイバルキャンプは幕を閉じた。
結果
シナリオ成功度 | 大成功 |
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