本部

夢に落ちることなかれ

鳴海

形態
ショートEX
難易度
難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
12人 / 4~12人
英雄
11人 / 0~12人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/05/13 21:17

掲示板

オープニング

● 微睡
 また、ドロップゾーンが展開された。
 今度は今までにないほどの、大規模で。
 その霊力の質から、まどろみであると。
 H.O.P.E.では判断された。
 しかし、H.O.P.E.は手をこまねいた。なぜなら今まで何度もまどろみ討伐のために部隊を派遣したが一度たりとも倒すことはできなかった、つまり。
 無策に今回また突っ込んでも、再び返り討ちにされるだろうことは想像に難しくない。
 そこで、H.O.P.E.はまず微睡の情報をまとめることにした。
 今まで持ち替えられた情報からまどろみの性質を分析し、対策を立てた。
 意見役として呼ばれた遙華は語る。
「今までまどろみとの戦闘がそもそもそ成立しなかったのは眠気のせい」
 夢に引きずり込むというドロップゾーンの性質が強力すぎたための惨劇だった。
「よって、私達はペインキャンセラーの機能を参考に。体内で眠気を司る化学物質を分解する装置を作ったの」 
 それで一時間程度は、夢から逃れられるはずだと。遙華は告げた。
「あと、まどろみがたびたび舞台にする、十波町の調査はもう少し待ってね。もうすぐ絞り込みが完了するから」
 そう言葉を切って遙華は、作戦説明に移る。

● 作戦説明。
 ケントュリオ級愚神。まどろみ。
 彼の戦闘能力は未知数である。今回は十二人の編成だが、正直一度の戦いで倒せるかは怪しい、そこで今回は次回のために情報を持ち帰ることも視野に入れてほしい。
 
 調査の要点としては三つ
1 スキル情報
 まどろみが使うスキルの詳細情報。最初はそのスキル自体無敵に見えるが穴はないか。発動条件は、打ち破る方法は。など。

2 ドロップゾーン情報
 夢に特化したゾーンとはいえ、ケントュリオ級の創るゾーンが戦闘能力皆無なわけはない。その性質を調べ、このゾーン内では何が起こるのかを調べてほしい。

3 まどろみ本体の戦闘能力
 どのステータスに秀でていて、得意な戦法はあるか、それを打ち破る方法は等々。

・情報妨害について。
 さらに今回。AGWの機能によって睡眠は抑えられているが、この装置が破壊されたり、もしくは一定のスキルによって夢に落されたりして、記憶が改ざんされる可能性がある。
 対策を考えてほしい。
 ちなみに、この睡眠抑制装置。大きさは大サイズのスマートフォン程度、それ以下の大きさにならないが、形状は変えられる。
 首に巻く。ポケットに入れる。靴に仕込む等、カモフラージュすることが可能。
 さらに一人三つまで配布できる。まどろみはすぐに睡眠を妨害している装置の存在に気が付くため、これを守りながらの戦いにもなる。

・従魔について。
 まどろみは二種類の従魔を生成することがわかっている。その従魔の特性についてはわかっているので下記に記す。

デクリオ級従魔。ジャヴァウォック 一体
 二本の角が雄々しい。三メートル程度の大きさの従魔。図体の割に動きが早く。移動力が高めのオールラウンダー。
 大きな拳による叩きつけや、口から吐く火球。
 さらに、あらかじめ来るとわかっている攻撃に対しては障壁をはり、ダメージを軽減します。


デクリオ級従魔。シャドウ・シャドウ ×2

 姿を借りる従魔。回避力がとにかく高く。不定形の魔法攻撃が強み。
 多数への対応に向いておらず。姿が変わっても戦法やステータスは変わらない。
 ただし、模した姿によってボーナスが加えられる。
 姿を模す可能性があるのは下記三パターン

1過去まどろみ関連参加者のトラウマから作られた従魔。
 この場合。その記憶の持ち主への与えるダメージが1.5倍から3倍になる。

2 参加者が任務に参加させなかった英雄。
 この場合、その英雄と契約している能力者へ、ダメージを分けることができる。 
 自分が受けるダメージを2割削り、削った分のダメージを返す。 

3 参加者が希望する姿。
 この姿は少々特殊で、シャドウと接触したリンカーが強い念を送ることにより強制的にその姿に変更させられる。 
 希望するステータス一つが極端に低下し、対象者には攻撃ができなくなる。
 ただし、一定のダメージで変身はとける。

● 分析方法一例。

 まどろみに対する戦略を構築するうえで、まどろみを分析する必要があると思います。
 これは彼の情報を明確化していくところから始めるといいでしょう。
 ステップとしては。
1 確実に合っていると言えるまどろみの情報とは?
2 その情報から導き出されるまどろみの性質とは?
3 ではそこから予想されるまどろみの出方とは?

 明確化が済めばそこから予測を立てる段階に入ります。

4 予想した、まどろみの性質を確認する方法とは?
5 もしそれが合っていた場合どうなると予測されるか。外れた場合どうなると予測されるか。
6 その予測に対して予備策を打つ必要はあるか。

 この1から6の積み重ねがまどろみを攻略していく鍵になると思います。
 ただ、これは分析方法の一例なので他にやりやすい方法はいくらでもあると思います。
 さらに今回、調査要項の1と3については、ヒントが出されているのですが。
 2についてはノーヒントです。この依頼の中でおこる幸運や、直感、あてずっぽうに頼ることになると思いますが。
 2については絶対必須という情報ではなく。
 わかるとまどろみなら恐れるに足らなくなるような重要情報なので、今回でわかったら超ラッキーくらいに思っておいてください。

 正直、今回のみでのクリアは想定しておりません。
 できたら本当にすごいです。(できないわけじゃありません)
 なので最初はまどろみと戦う上で絶対欠かせない。
 戦闘スキルやパターン、弱点の割り出しなどメインに行うとよいかと思います。
 ちなみに今回のまどろみ、思い入れとかバックグラウンドのお話。
 そう言ったものは前回から持ち越されますが。
 前回までのまどろみ依頼には、まどろみの戦闘データに繋がる情報はありません。
 趣味趣向くらいですかね? あったとしても。
 挑発に弱そうとか、そういう性格的なものだけだと思います。
 それでは長くなってしまいましたがよろしくお願いします。

 最後に、まどろみは邪英を作成した実績があるという噂が流れています。
 根拠はありません、噂です。
 とりあえず気を付けてください。 

解説

大成功 まどろみの撃破
成功  全員の生還
失敗  帰れなかった者がいる場合



**************下記PL情報*************

 まどろみの攻撃手段について簡単に説明します。詳細については、戦ってみて、アプローチしてみて能力を割り出してみてください。
 
・幻惑の霧
 周囲一体に催眠作用のある毒ガスを発生させる。虹色に煌いており、これに包まれると様々なステータスが低下する上に、BSまで付加される。
 何がどうなるかは食らってみないとわからない

・原光蟲
 まどろみの直接攻撃手段。
 光弾を放つが、蟲のように蠢き、意思を持っているように飛ぶので被弾するまでは消えない。避け続けているといつの間にか周囲が蟲で埋め尽くされているなんてことも考えられる。

・オーバーライド
 ドロップゾーンを展開し、周辺の空間を上書きする。視覚情報しか上書きできないが。そこにいない人を召喚する、同士討ちさせるなど可能。
 
・シックスセンス
 実際の第六感とは意味合いが異なる。何らかの種を用いて相手の動きを予測する能力。
 これが発動していると相手の攻撃を回避することはもちろん、ひどい時には相手の策を前もってつぶしたりする。
 種が明らかになれば対処のしようもあるのだが……

・ドローイングブレインズ
 相手の脳内から直接、ノウハウを引出し、自分にダウンロードする。一時的に武器の扱いがうまくなったりと能力が向上するようだ。

● 弱体化について。
 一定の条件を満たすとまどろみの従魔や、スキルは使用不可、もしくは弱体化するようです。

****************上記PL情報************

リプレイ


第一章 救い

『御門 鈴音(aa0175)』は高い山岳の八合目あたりからそれを観察していた。
「大きい」
『朔夜(aa0175hero002)』はその言葉に頷きを返す。
 山一つすっぽりと覆ってしまえるドロップゾーン。それは中心に向けて渦巻いており、風がまるで、招こうとしているように中心へと少女たちの背を押した。
 その誘惑に抗って『水瀬 雨月(aa0801)』は髪の毛を抑える。
「にしても、今回はまるで私たちをおびき出そうとしているみたいなタイミング、シチュエーションよね」
 そうふらつく肩を『アムブロシア(aa0801hero001)』が抑える。
 雨月を筆頭としたリンカー部隊はいわゆる偵察部隊。と言っても半透明の雲のようなもので覆われているゾーン内部はやはり外側からでは何もわからず。雨月は溜息を洩らした。
「実はドロップゾーンそのものが本体でしたとかだったら侵入そのものが茶番だろうけど……無いと思いたいわ」
「そもそも。こんな舞台を用意する相手がわざわざ演者として中で待ち構える必要があるのかしら。考えれば考えるほど作為的ね、どうなっているのかしら」
「それは……」
 その言葉にぼそりと答えたのは『黒金 蛍丸(aa2951)』
 彼はハイライトの消えた瞳で意思をひたすらに積みながら雨月の言葉に答えた。
「呼んでいるんだと思います」
「誰を?」
「由香里さんを……」
 雨月は一瞬目を見開くと、その視線がどんよりと重たい物に変わる。
「まどろみは前回の事件で由香里さんを取り込もうとしたようです、そして今回はたぶん」
 彼女を迎えに来たがための、この舞台だというのか。
「豪勢ね、ずいぶんと」
 雨月はばたつく髪を左手で抑えるとそのゾーン内、中央に鎮座しているであろう管理者を思い睨みを利かせる。
「まどろみ……遙華をいじめた愚神だったかしら。私情は今は抑えておくけど」
 そう告げて雨月は蛍丸に視線を下ろす、崩れつつ積み上げられていた石の塔を見て、なんだかイラッとした雨月はそれを足でけった。
「あーーー!」
 詩乃が叫んだ。
「いつまで悩んでいるの? その調子だと今度こそお姫様を持って行かれないわよ」
「だ、大丈夫です、蛍丸様、私がまた同じものを積み上げますから」
『詩乃(aa2951hero001)』はそう慌てふためく反面蛍丸は大人しかった。
「一人じゃ自身が無いなら私達で手伝うから、ね。まずは立って」
 そう告げると雨月は蛍丸に手を差し出した。
「ありがとうございます、やれるだけやってみます」
 そう蛍丸は雨月の手を取る。

   *   *

(怖い、恐い、こわい。戦うのが、眠ればそのままなのが。帰れなく、なるの……が……?)
 まどろみドロップゾーン外。数キロメートル先H.O.P.E.キャンプ。
 そこでは装備の整った者から中央に集まっていた。
(違う、負けることで、誰かが、何かを失うのが――)
 その中心で震えている少女が一人、武器を支えにただひたすらその時を待っていた。
「それが怖い、のね」
『雁屋 和(aa0035)』は顔を上げる。戦う決心はある、だが護りきれる自信があるかと問われれば、正直自信はなかった。 
 相手は何度も接触していても、その素性を掴ませなかった愚神である。 
 このままつっこめば何かしらの罠にかかるのはわかりきったこと。
 だがその血の気の失せた手を取って少女が微笑む。
『紫 征四郎(aa0076)』である。
「約束です。帰りましょうね、必ず!」
 見渡せば仲間がいた。
『木霊・C・リュカ(aa0068)』はいつもの穏やかな笑みを湛えて佇んでいるし『ガルー・A・A(aa0076hero001)』と『オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)』は装備の事でずっともめている。
 まるでこれから決戦に赴くとは思えない一同の様子に和は思わず噴き出して笑った。
「なぜ、みんなはそんなに気楽でいられるの?」
 和は問いかけるすると征四郎は答える。
「仲間を信じているからです」
「それにまどろみはそんなに危険じゃない気がするんだよね」
 そうリュカが告げる、するとオリヴィエは深いため息をついた。
「ずっとこうなんだ」
 リュカは考えていた。夕焼けのあの町へ置いて行ってしまった小夜子。彼女は今
どうしているのだろうか。
 それ以前に彼女とはなんなのだろうか。まどろみにとって彼女はいったい。
「危機感の欠如が過ぎる」
 オリヴィエが力任せにLSR-M110のダミーカートリッジをはじくとマガジンを装填。歪みがないか確認するためスコープを覗いて言った。
「わかってるよ、第一に考えるのは、全員が無事で帰還すること」
「行きましょ。無事に一人残らず帰れるように」
 リュカの言葉に和が答えると全員が頷く。そしてその言葉と同時にガルーが差し出したのが睡眠抑制装置、今回の作戦の要である。
「和! これ、背中につけてください」
 そう征四郎が背中を和に向けてぴょんぴょんと飛ぶ。和は落ち着くように告げてから肩に手を当てて装置を固定、その上に征四郎は装備を装着していく。
「本当に大丈夫なんだろうな?」
 ガルーが問いかける、すると征四郎は神妙な面持で噛みしめるように告げた。
「大丈夫、背を向けることはありませんから」
 それを見習って各自、睡眠抑制装置を装備していく。
 征四郎の残りは 剣を持つ右腕。そして最後の一つは
「リュカが持っていてください」
 そうリュカの手に握らせる。
「いいの?」
「はい」
「じゃあ、予備として管理させてもらうね」
「木霊さんはどこに装備したの?」
 和が問いかけると、リュカは穏やかな口調で背中とお腹と答えた。見ればリュカは腹巻をしている。
「リュカ、おじさんなのです」
「え、かっこ悪い?」
「私もお貸ししますよ、前衛より被弾は少ないでしょうし」
 そう名乗り出たのは『構築の魔女(aa0281hero001)』である。
 彼女もまどろみとは根が深い関係だ。
 いや、どちらかというと根が深いのは『辺是 落児(aa0281)』だろうか。
 普段とは違う光を目に宿して彼はじっと何かを考え込んでいる。
 物思いにふけるのは彼だけではない。
 幻想蝶を弄んだまま装備の確認もしないでいるのは『橘 由香里(aa1855)』そんな彼女が座りこむと隣に『飯綱比売命(aa1855hero001)』が立った。
「ふむ……邪英化か。この中じゃと一番近いのは我らかのう」
 飯綱比売命はそう由香里に問いかける。しかし少女はその言葉に反応を返さない。
 視線はあてどなく泳いでいるふりをして、ずっと彼を探している。
 彼はどこにいったのだろうか、また私を置いて別の女のところに行ったのだろうか。
 その由香里の姿を見て飯綱比売命は、重傷じゃ~とつぶやいた。
(以前、九尾狐相手にどこで道を違えたかと問うたものじゃが、以外と紙一重なのかもしれぬ)
「私は……何故ここに……」
「お主が求めたのじゃ。楽になれる道をな。さて、どこに通じておるやら」
 あれからずっと蛍丸とは気まずかった。彼の顔をまともに見れない、そのせいか彼から笑顔が消えたと知ったのは、人づてに彼の話を聞いてからだった。
「あのまどろみが相手です、心を強く持って行きましょう」
『禮(aa2518hero001)』が二人に歩み寄って告げる。
「うむ、お気遣い感謝なんじゃ」
「お二人の事助けたいと思う人はたくさんいます、絶対帰ってきましょうね」
 そう二人の後ろ姿を見送る禮。
「……大丈夫でしょうか」
 そう心細そうにつぶやく妹の肩に『海神 藍(aa2518)』は手を乗せた。
「……気がかりだね」
 報告書で事情は察している。まどろみから直接アプローチを受けた、そして今回も
やつの腹の中、不安で仕方がない。
「自分を許すのは……難しいからね」
 そう告げ藍は禮の手を取った、禮は勲章宝冠を撫でつけると共鳴。
 広場に集まった全員の顔を見渡す。
「…………まどろみ、か…………あたしもだいぶ前にいいもん見せさて貰ったな……」
 そう拳を握りしめるのは『楪 アルト(aa4349)』
 今日も誰も『‐FORTISSIMODE-(aa4349hero001)』の姿を見たものはいなかった。
「あの日からだいぶあたしは変わった……大切な人が、守りたいもんが出来た。だから……まどろんでなんかいたら、守りてぇもんは守れねぇ……!」
 その言葉に頷いて一行はドロップゾーンに進撃した。

第二章 夢の中へ

 ゾーン内部は何もない。
 展開されると元の地形も無視して真っ平にしてしまうらしい。
 その中央でまどろみは夢を見るように船をこいでいた。
 うつら、うつら。頭が揺れる。水から浮上し、また溺れるように夢と現実の境を行ったりきたりする。
 そのとき唐突にまどろみはつぶやいた。
「現実も夢も己が脳の中にしかないのであれば、本当の世界はどこにあるのだろうな。
 幸福な夢の中に埋没していてもそれが真実であると認識できるのであれば、それでよいではないか。なぁ。
 少女よ」
 直後『イリス・レイバルド(aa0124)』が襲来した。
 その重たい一撃は地面を割って埃を巻き上げて、飛び散った破片はまどろみの頬を切った。伝う赤い血は人間と同じように見えた。
「やっと会えたな! まどろみ!!」
「ふん、イリス・レイバルドか……お前」
 まどろみは驚くことにイリスの攻撃を半身をひねって回避。最小限の動きのため体制も崩さない。ただ表情は驚きに見開かれていた。
「なぜ、眠っていない?」
 その問いかけには答えず、代わりに『アイリス(aa0124hero001)』がまどろみに話しかけた。
――いや、私達の接近に気がついても動かないものだから、偽物かとも思ったよ。
 直後はじかれたように距離を取る二人。だがまどろみは遠距離攻撃系。緑色の球体を放つが、あまりに遅すぎてイリスはそれを難なく回避した。
「てっきり眠りに落ちるものだと思ってな」
 連続して放たれる光源、それをイリスはすり抜けるように回避。一発目を半身ずらして。二発目を回避すると同時に加速。三発目を盾でそらして剣を振り上げ踏み込む。
 その直後まどろみは奇妙な動きを見せた。
 剣の柄に手をあてて、落とし。体制が崩れて前のめりになったイリスをショルダータックルで吹き飛ばしたのだ。
「え?」
 直後、背後へ飛び去ったはずの緑色の球体が方向を変え、イリスの背後から迫る。
 直後爆発、イリスは魔法弾の直撃を受けた。
「そして、次の手も読めているぞ」
 その爆炎を裂いて飛んだ二発の弾丸。それをまどろみは背をそらしてかわした。
「な?」
「読まれていたです?」
 驚きの声を上げる構築の魔女、そして『卸 蘿蔔(aa0405)』。
――……誘導と残留の特性か。残して貯めると厄介だ。可能なだけ叩き落しながら進め。
 アイリスが爆炎の向こうから告げる。その指示に従って、源光蟲を叩き落としにかかる二人。
「不眠剤か何かかな? 長くはもつまい」
 そうつぶやくまどろみ、敵を分析するのはリンカーだけではない、まどろみ側もリンカーの対抗策を見破る必要がある。
「まぁいい、一人夢に捉えればすべてわかるだろう」
 直後ドロップゾーンが捻じれると、周囲の景色が一変した。
 極彩色、色とりどりの花が咲いた森、ただその花は大きく、人の身長ほどの高さがあった。 
 次いで地面をたたき割って現れたのはの化け物。二本の角が鋭く雄々しい、牛のような人のような筋骨隆々の化け者『ジャヴァウォック』
 さらにはまどろみの左右に、陰が寄り集まって形をなす『シャドウ・シャドウ』
「さぁ、せっかくの客人だ。丁重に迎えよう、何せ、眠りの城に落ちることなくここまで来られた人間は久しぶりなのだから」
「直接戦闘は初めて、だとしてもこの夢からは逃さない」
 イリスは体制を立て直すために一歩下がる。代わりに歩みを進めたのは由香里。
 彼女は熱に浮かされるように、荒い息を突きながら一歩、また一歩とまどろみに向けて歩みを向ける。
「待って、私は違う」
 その行動に誰もが混乱し、一瞬動きが遅れた、その中で動けたのは蛍丸だけ
「だめです! 由香里さん」
 そう駆け寄ろうとするとその肩を誰かが叩いた。
 それは影、振り返ってみると底なしの闇がそこに広がっていた、だが、その闇はやがて形を持ち、そして色を持つ。
 あっという間に少女の姿に変わった、遙華である。
 蛍丸はその姿を見て、動きを止めてしまった。
――それでよい、少し見ておれ、お主はお主の問題に、こやつはこやつの問題に。
 飯綱比売命は暗に告げる。お互いに成長した先でまた会おう。
「私は……」
 直後由香里が声を上げた。声が届く範囲に入ったと思ったのだろう。
 やっと我に返ったリンカーたちが歩み寄ろうとしたが、従魔に阻まれてたどり着けそうにない。
「私は、あなたに逢いたかった」
 その証拠に由香里は眠気に対する対策はとっていない。
 それは様子を見れば一目でわかる。回避行動はおろか防御行動もとれないだろう。そう思わせるくらいに四肢に力が入っていないのだ。
「全部をくれるんでしょ?」
 由香里は叫ぶ。
「私の想いを叶えてくれるんでしょ?」
「よろしい、では堕ちなさい、優しい夢の世界へ」
 そうまどろみが由香里の頬を撫でると同時に、世界が塗り替わった。直後地面からせり上がる壁。リンカーたちは混乱のままに分断される。
「由香里さん!」
 だがその言葉に答えたのは遙華。
「だめよ、あなたはあの子ではなく、私を選んだんでしょ? 待っていたわよ蛍丸。さあ行きましょう? あの子では叶えられなかったあなたの夢。かなえてあげるわ」
「構えろ」
 直後響く銃声。弾丸を避けるためにシャドウはその身をくねらせて蛍丸から離れた。
 蛍丸は荒く息を突きながら見上げる、その視線の先にはリュカがいた。と言っても実際にトリガを引いたのはオリヴィエだが。
「それは。影だぞ?」
「わかっています。けど……」
 蛍丸は振り返る、少女は笑っていた。 
 あの日夕陽の中で見た少女と同じ笑顔、そんな彼女を切れるわけがない。
 藍は葛藤する少年を一瞥しつぶやく。
「今度はそう言う趣向なんだね。まどろみ」
 そう悲しげな視線を揺らして、今は壁の向こうにいるまどろみを思う。
 そんなまどろみの前に立っていたのは
 イリス、鈴音、蘿蔔、雨月。
「早く助けださないとまずいですよ!」
 蘿蔔は苦々しく言葉を吐いてトリガーを絞る。まるで幻影に攻撃しているかのように攻撃が当たらない。当たっても効いている気配がない。
「厳しい戦いになりそうですね」
 直後地面が揺れた、思わず体制を崩した蘿蔔は地面を掴む。
 震源を思って視線を向ける、確かその方角にはアルトと構築の魔女がいたはずだ。
「なんだ、あのバカ力」
 アルトは悪態をつきつつ、従魔を中心に回るような距離の取り方をしていた。
 直後ジャヴァウォックの跳躍、から振り下ろすような攻撃。それをアルトは難なく回避しすれ違いざまに弾丸のプレゼント。
「へぇ……これくらいなら余裕ってか」
 直後その横っ面に構築の魔女が放つ弾丸が命中。脳が揺れるが、体はしっかりと支えられている。
「なら……これでどーだぁ!!」
 直後アルトは霊力を解放。その手のガトリングを複製。そのシリンダーが一斉に回り熱を帯びると。
 直後、耳をふさぎたくなるような轟音が轟いて弾幕を展開した。
 煌く弾丸の奔流がジャヴァウォックに食らいつき、その流れを受けて地面に倒れ込むジャヴァウォック。
「夢の世界のまどろみと。現実世界のまどろみどちらが本物なのでしょうか……」
 そう告げると構築の魔女はメルカバを構える。その派手な威力を分散できるように構えてそして放つ。
 放った弾丸は紫色の霊力を帯びてその場から消えた。
 霊力とは空間を超越する力である。その結果弾丸はジャヴァウォックの体内に届きそして。

 グオオオオオオオオオオオオオオオオ
 
 四方にはじけ飛んだ。
「おお!」
 アルトが驚きの声を上げる。
「まずは、相手の余裕を剥ぎ取ることが優先ですね」
 そう構築の魔女が告げるも従魔は虫の息である
 単に力が強いだけの魔獣程度では二人の相手は荷が重かった。
「こんなちんけな夢よりもあたしの子守唄-ララバイ-の方が良く眠れるぞ」
 そうアルトは息もたえだな従魔へブレインジングソウルの銃口を向ける。
 直後。
「…………、グッナイ」
 響く銃声にかき消された声。従魔は永遠の眠りについた。

第三章 微睡 

 まどろみを担当している班は苦戦していた。追いすがり切り付けて何度も弾丸をぶち込んだ。けれどまどろみはぴんぴんしているし、攻撃の手が緩まることはない。
 無数の源光蟲が常に蠢き、飛来し。まともに攻撃に転じられないこの状況。
「真っ向から光の相手をするのは得策じゃないわね」
 雨月は思う。打開したいのだが、打開策は一向に見つからない。
「何かおきます、気を付けてください!」
 観察を続けていた蘿蔔が叫ぶ、すると景色がまた捻じれて歪み。雨月の魔法弾をオーロラのように輝く壁が防ぐ。その光はゾーンを包み世界は極彩色へと変貌した。
「場所が変わった!? 皆さん大丈夫ですか」
 驚いて攻撃の手が止まる蘿蔔。その瞬間にどうやってかわからないがまどろみは蘿蔔の背後につく。
「そんな……」
 直後その五指を蘿蔔の頭に叩きつけた。
「ふぎゃ」
 つぶれたハムスターのような声をだして仰向けに転ぶ蘿蔔。直後ふっとまどろみの姿は掻き消えて。
 起き上がった時にはイリスや鈴音と刃を合わせている。
――なんだ、この動きは。
 アイリスはいぶかしむ。そもそもその手に握られた大剣がいつの間にあったのかも覚えていなければ、この動きは隣で大剣を振るう少女に酷似しているし、わけがわからなかった。
「ソフィスビショップですかね」
――いいから、援護射撃。そして何かされたと思うけど、蘿蔔、異変はないか?
「今のところは!!」
 直後蘿蔔は銃を持ったまま足を開いて頭を低く、頭上を走り抜ける源光蟲を見送ってはじかれたように反転。
 後ろに列をなしていた源光蟲たちに拾った石ころを投げてみる。直後爆風が吹き荒れて。
 蘿蔔はまたもや仰向けに吹き飛ばされた。 
「あの光は、何かに衝突しさえすれば消えるようです!」 
 蘿蔔はあらん限りの声でそう叫ぶ。だがしかし。
 その声を上書くように謎の声が聞こえた。
「あの光はまどろみの本体です。捕まえてください」
 同時に響いたその声。あまりに聞き覚えのある口調、声色だったために『レオンハルト(aa0405hero001)』は驚きの声を上げた。
――な? 蘿蔔の声にすごく似てる。
「え! あんなに舌っ足らずな声してませんよ」
――いや、してるよ。イントネーションも。声のトーンもまるで同じだって。
 声真似だ、お互いをよく知らないものならそれで騙されていたかもしれない。
 実際、声というものは、喋り方だけ真似ても本人の声にかなり近づくものだ。さらにまどろみは中世的な声をしている。
 だが。
「さすがにそれは無いわね」
 雨月は鼻で笑う。
――そんなもので騙される私達ではない。
 アイリスも告げた。
 二人は何度も何度も蘿蔔と共に出撃している。いまさら声音を似せただけでは間違わない。他の人間では危なかったかもしれないが。
「いや、今のはちょっとしたデモンストレーションだ」
 そう告げたまどろみが姿を変える、体格、身長さえもとけるように変わっていき。そして金色の光に包まれ。そこに生まれたのが金色の妖精。
「お前は姉と呼ぶ、この妖精とよく手合わせをしているようだな」
「面白いことをするのね」
 雨月はその手の魔導書を最大展開。放たれた弾幕はまさに飽和攻撃。だったのだが。
 それ全てを円の動きでさばいてしまうまどろみ。
 当然だろう。その姿はアイリスと酷似しており、さらにアイリスの技術を丸々盗んでいるのだから。
「さらに」
 まどろみはイリスに接近。イリスの握る剣を盾で落とす。
「この!」
 カバーのために前にイリスは盾を前に押し出した。弾き飛ばすつもりだったのだろう。だがまどろみは両手に盾を装備している。
 剣を封じている逆の盾でイリスの盾を押しとどめ、直後口を振らいたまどろみはその口から原光蟲を放ってみせた。
 その攻撃はイリスに直撃する。
「イリスちゃんを離してください」
 蘿蔔からの攻撃が飛ばないように射線をイリスで遮るまどろみ。だが三次元的な動きをすればそんな小細工意味がない。
 蘿蔔は飛び上がり、斜めの上の角度から狙撃、雨月は背後に回って魔術弾を展開、それを連射する。
 だが。その攻撃を全て、まどろみは避ける。弾丸を首をひねって回避。
 魔法弾はイリスを弾き飛ばして宙返りして回避。
 その行動を驚くべきことに。
「今こちらを見ないでよけましたよ……」
 蘿蔔がそう言葉を噛みしめる。
――回避だけは慣れているように見えるね?
 レオンハルトはそう分析した。
「どういうことですか?」
――何か変だな。
――私たちは防御主体だ。
 その時だった。イリスが起き上がるとアイリスが告げる。
「そしてあの動きは確実にお姉ちゃんの動きでした」
――だが、あれが私であれば、少しおかしいことがある。
 アイリスは離れた場所でこちらを見つめるまどろみを見据えながら告げる。
――私たちの動きは基本的に、相手の攻撃を潰して動きを崩して追撃する。攻防一体の盾技術だ。
「もしあれが本当にお姉ちゃんなら、回避という選択肢を取ること自体変です」
――全くしないわけではないが、その方が隙が出にくいしね。
「そもそも僕らの装備ではあんなアクロバティックな動き無理です」
――以前使っていた高機動型なら話は別だが。
「であればあれは僕たちの技術を学んだまどろみ、ってことになります」
――技術の略奪か……厄介だな。
「防御技術は奪えても、防御能力は低いんじゃない?」
 雨月が告げる。
「つまりは、張りぼてだ!」
 そう言葉を吐いて、剣を取り直すイリス。改めてまどろみの攻撃を盾で捌いた。
 だがこの時点でアイリスの防御技術と、鈴音の攻撃技術をラーニングしていることになる。
 その時点である意味化物である。二人ともトップリンカーなのだから。
――このまま全員の技術を奪わせるわけにはいかないね。
 ついでに言うと蘿蔔も技術を奪われている。あの声真似がそうだ、だとしたら。
「能力を奪うには、直接手で触れるというプロセスが必要?」
 その直後である。突如蘿蔔の視界に映り込む景色にノイズが混じった気がした。
 突然崩れ落ちるまどろみ。
「なにが……」
「この機会を逃す手はないわ」
 そう雨月はアル・アジフを最大展開、見るもおぞましき異形の群を召喚して、あたり一帯ごと薙ぎ払う。
 その攻撃を受けてまどろみの体が跳ねあがった。
「当った?」
 雨月は首をかしげる。
「よくわからないけど。今だ、お姉ちゃん!」
――妖精の歌を聞かせてあげよう。
 アイリスが告げると、イリスの翼が大きく広がる。その翼からしみ出す音色が、アイリスが響かせる荘厳なる歌が。
 周囲の幻惑を砕いていく。
「く…………。小夜子」
 歪む世界、砕けこぼれるオーロラ。それだけではなく、姿を模していたまどろみも本来の姿に戻っていく。銀色のローブをまとった男。その手には本と杖。
 あまり強そうには見えない青年の姿。
「殴り足りなかったから一石二鳥だ」
 その姿を見下ろして、イリスはまず。盾で横っ面を弾き飛ばした。
 まどろみは倒れる、まどろみはイリスを見あげる。 

  *  *

「遙華さん。お久しぶりですね」
 戦闘は苛烈さを増しているようだ、このゾーン内のあちこちで破壊音が聞こえてくる。 
 そんな中、蛍丸は傷ついた体を一人で支えて遙華に話しかけていた。
 その周囲には無数の苦無が刺さっていて、蛍丸が集中的に攻撃されていたことを示している。
 直後苦無を手に襲いかかる遙華。その刃をはじいたのは征四郎で。
「遙華などここにはいません」
 そう短くぴしゃりと告げた。
 その少女が動きを止めたところで和が切りかかるも難なく回避される。
「動きが早い」
「俺なら関係ない」
 そんなオリヴィエのささやきが征四郎の耳をくすぐる。次の瞬間、針の穴を通すような正確さで、遙華の額に弾丸がめり込む。
 直後暴れ出すその体を蛍丸が躍り出て組み抑えた。悲鳴を吐きながら闇を口から放出するその少女を遙華だとは到底思えなくて。
「今ならよけられません! 早く!」
「いいのか? 当りそうだけど」
 和が渋るも蛍丸は頷いた。
「じゃあ、遠慮なく」
 そのやり取りに危機感を覚えたのだろう。シャドウシャドウは姿を和に変える。自分自身なら殴りにくいだろう、そういう本能的なものが働いたのだろう。
 だがそれは間違いだった。
「私だろうと、殴る。遮るならぶん殴って引き倒して進む。決めたの」
 直後はなたれる斬撃は、蛍丸ごとシャドウを吹き飛ばす。
――和ちゃんが物理で頼もしい。
 そうリュカが嬉しそうに告げると、和はオリヴィエとリュカに手を振った。
「僕は、護るって誓ったのに。誰も守れませんでした」
 傷つきぼろぼろになり果てた蛍丸。だがシャドウもそれは同じようで、同タイミングで二人は立ち上がると。
 シャドウは蛍丸の姿を取る。
「オマエガ、ヨワイ。セイデ」
 従魔は囁く。蛍丸の心を砕こうと。
「オマエガヨワイカラ、彼女が、傷ついたんです」
「わかってます!!」
 蛍丸は叫んだ。そして両の拳を握りしめると、武器を捨てて従魔に拳を叩き込んでいた。
 その光景を眺める和。征四郎、オリヴィエ。
「僕はもう、弱い自分でいたくない!」
 その身の武術すべてを使い従魔に挑むが、従魔も蛍丸と全く同じ技を使う。
 まるで自分との闘い、弱かった自分を殺すための戦いだ。
「超えていきます、僕自身を!」
 何度転がっても向かっていく蛍丸。自身の傷を癒すことも忘れて。そしてそれに付き合う従魔も物好きだと。
 ガルーは思った。
 もし化けた人間の能力を模倣できるなら、この場に蛍丸と相性のいい戦法を持つ人間はいくらでもいるはずだ。
 なのになぜ従魔は蛍丸につきあうのだろうか。
 まるでそうしなければならないとでも言うような意地が、見え隠れしている。
 意地っ張りで、しつこくて、最後まで付き合ってくれようとするが忘れっぽくて。
 その従魔に。ガルーは何かを見た気がした。
 それはリュカもなのだろう。
 気が付けば声をかけていた。
――お前もそこにいるのか。
 ガルーが問いかける。そしてリュカが噛みしめるようにその名を読んだ。
――小夜子……
 直後、蛍丸のインパクトがシャドウの心臓をえぐる。
 動きを止めた従魔。その首が徐々に回りふたりを見る。
 直後ひび割れた音がしてシャドウの姿が変わった。
 黒髪が風になびく。
 時を同じくして、もう一体のシャドウとも決着がつこうとしていた。
 ひしゃげた女性の姿を模したシャドウ。彼女は人間離れした動きで藍を追い詰める。
――……行けますね、兄さん。
「ああ、嘗められたものだね」
 その攻撃を二三、槍で捌くと黒燐をくるりと回して正しく構える。突き立てる動作は一瞬で回避する暇もなくその心臓を穿った。
「元の姿に戻ろう、ね。姉さん」
 そう告げた矢先、黒鱗から響いたのは潮騒の音。その音に浄化されるように。
 女性の姿は綺麗に整った。姉の姿に変わっていた。
「ひしゃげたのよりその方が良い。……そのうち三途の向こうでね」
「待っているわ。あなたが望むまで生きなさい」
 藍は思わずその姿を抱きしめた。その直後。二人の姿をブルームフレアが焼き払う。 
 その眩い光の中で禮は藍に言葉をかけた。
――よかったんですか?
「ああ、もう夢は見飽きた……」
――それにしてもこの従魔……あの時の故郷の夢みたいに、想いでも姿が変わるみたいですね。
「……なるほど。そうか。ならこれは?」
 直後シャドウは謳うように藍のそばを離れる。そして蛍丸と組みあっていシャドウも霧のように形を変えて蛍丸をすり抜け。
 闇は混ざり合い、夜空のように広がった。
 なびく髪は美しく。
 その視線は物憂げで。かつて茜色に染まる夢で出会った少女がそこにいた。
 名前は『円町 小夜子』
 その小夜子へ、征四郎は歩み寄り、告げる。
「かつて英雄だったあなたが、ありありと見せてくれた小夜子」
 その言葉に小夜子は微笑んだ。またあえて嬉しい。そう姿は見えないガルーを感じとったように微笑みを向ける。
「彼女こそが、あなたのリンカーだったのではないですか?」
 その言葉に答えるように小夜子はゆっくりと回って見せた、その姿が徐々に成長していく、髪の毛はより長く美しく、肌は透き通るような白へ。
 現実離れした美しさ。まるでファンタジー世界に出てきそうな女性へと変わっていく。
 全員が理解した。これが彼女の共鳴姿なのだ。
 自分の理想の姿となる、共鳴。
 そしてその姿はどこかで見たことがある気がした。
 たとえばテレビの向こう側。喝采の中のとある女性。
 直後。
 小夜子の姿がぶれる。
 小夜子は告げた。
「もう限界みたい」
 直後、陰ははじけ飛び二体の従魔になる。あっけにとられていたリンカーたちはその行動に対処が遅れた。
 だが。
 降り注ぐ弾丸が、その動きを止める。
 足を腕を吹き飛ばされたシャドウは地面に転がって、あわててその姿を変えた。
 それは例えば恋人、それは例えば、再会できた姉妹。
 口々に少女たちはアルトに問いかける。私たちを殺すのかと。
「…………うるさいうるさいうるさい!! あたしに偽物の温かさなんていらねぇんだよ!!」
 唸りを上げるガトリング。その弾丸が少女たちをかみ砕いていく。
「こんなもん……あたしの目の前にならべんじゃねぇええええ!!」
 最後にカチューシャによる消毒を加えて。そしてアルトは咆哮するように涙を流す。
「本当のあったけぇとこに、帰るんだぁあああ!!」
 その肩を構築の魔女が支えた。
 そして静まり返ったこの戦場に、構築の魔女が言葉を投げる。
「さぁ、先へ、意外と苦戦しているみたいです、行きましょう」
 後ろ髪をひかれる思いのまま、一同はまどろみを目指して走った。

第四章 飢餓

 まどろみは悲鳴のような声を全身から響かせ続けている。まるでそこに地獄を内包しているような苦悶の表情。
「何が起こったんです?」
 あまりの異変にどう対応すべきか迷ったリンカーたち。
 その直後である、その直後。
 まるでうちわで埃を払うように、まどろみから、輝きを放つ粉が散布される、それは巻き上がり霧のように視界を覆い。
 そして病のように肉体に沈殿する。
「これはなに?」
 雨月が膝をつく。手が震えた。まともに本を持っていられない。
――神経性のガスのようだね。 
 アイリスがつぶやく、その首元に刃を突きつけたのはまどろみ。
「これはなんですか?」
「意識と肉体を乖離させる粉だ。吸い込めば肉体がうまく動かなくなる」
 そう告げて、まどろみは大剣を振りかぶる、息を荒くつきながらその刃を振り下ろそうとしたその瞬間。
 イリスが強く刃を握り直した。
 突如吹き荒れたのは正常なる風、祈り。
 その風の噴出先には征四郎が立っていた。傷も毒も癒えていく。その一瞬のうちに雨月は魔導を叩き込み。イリスは駆け抜けざまに剣を当てた。
 深々と肉を捉える感触が柄から伝わり、そして。その横顔を鮮血が彩る。
「あがあああああああああああ!」 
「間に合ってよかった!」
 追撃の魔弾を顔面に受けまどろみは後ずさる。構築の魔女の弾丸である。
 その勢いに合わせて和は刃を振るう。はじかれたように後退するまどろみ。
 その背をとんとはじくように逆サイドに押して。蛍丸はその槍をぬきさった。
 背中をざっくり切り裂かれるまどろみ。しかしその姿は幻影となって消える。
「由香里さんを返してください」
「お前も同じ夢の中へ行くか?」
 虚空に声が響く。
「はい! 今度は絶対に連れて帰ります」
 直後蛍丸は装備していた装置を投げ捨てて、そして。
 大きく開かれた夢の世界へのゲートを通る。
「あとは、頼みます、勝手でごめんなさい!」
「行ってくると言い」
 藍は彼を笑顔で見送った。そしてトリアイナをまどろみに向ける。
「戦闘能力は低いと聞いていたが……強敵だね」
 藍がつげる。その言葉に蘿蔔が答えを返した。
「成長してるんだと思います」
「僕には変質しているように見えるよ」
 イリスが言葉を継ぐ。
「お前らの想いはたんと食させてもらった。トリブヌス級まであと少し」
――ドロップゾーンのせいではなかったみたいですね。
「いや、その影響もあるだろう」
 藍は分析する。従魔を生成したことや、スキルで戦いをごまかしていることからやはり戦闘は得意ではないのだろう。
 だから小細工に頼るが。
「……そう言えば」
 藍は思い立つ。彼が展開するドロップゾーンはいつも夢だった。自分たちの夢。自分たちが登場する夢。
「胡蝶の夢だね」
――どうしたんですか? 兄さん。
「私達ではなく、蝶が見ている夢がまどろみのドロップゾーンだったなら。それは……誰の夢だ?」
 直後まどろみが動いた。
 和を刃で弾き飛ばし、藍の元へ。
 その攻撃を妨害しようと、魔術、弾丸を彼に殺到させる。だが。
 やはり雲をつかむようにその姿を捉えることはできない。直後銀の魔弾を放とうとした藍の右腕を上に押し上げて、後ずさろうとした藍に体を密着させる。
 次いでうち放たれた弾丸を観ずに回避して藍を地面に叩きつけた。
「もしかして……」
 藍はその様子を見て思った。
――兄さんもそう思います?
 藍は一つの可能性を考慮して禮に身体の制御を任せ起き上がる。
 藍は偏差射撃を考えながら、禮は偏差無しで攻撃。対応を見るため距離を取った。
――……思考を読んでませんか?
「思考だけではなく、私達の経験も読んでくるわ」
 雨月が源光蟲を叩き落としながら叫ぶ。それに構築の魔女も加勢した。
「一応、全ての情報は私の中で集約されています」
 構築の魔女は考える、敵のスキル構成。特徴、弱点。
 おそらくより強い干渉を行うには肉体的接触が必要。となるとまどろみの体の中に取り込まれたあの二人が気になった。
「あの空間はなんなんでしょう。ドロップゾーンが二つ? そんなことがはたして可能なのでしょうか」
 さらにはドローイングブレインズの正体も気になる。 
「実際の経験と……経験の記憶は等価である……でしたか?」
 それははたして他人の記憶、経験を読み取るだけのものだろうか。ダウンロードができるなら。
 インストールもできるのではないか。
 そう構築の魔女は蘿蔔を一瞥、すぐにまどろみに視線を戻して弾丸を放つ。
 その弾丸は、まどろみの腹部を食い破った。
 驚きの表情を浮かべるまどろみ。
「蜃気楼と同じ原理ですね」
 その言葉に苦々しげな表情を返すまどろみ、直後、売る得る声で叫ぶと、股周囲に霧を発生させた。
「また、ガスが来ます!」
 それと地面から突き立つ石の柱、それがリンカーたちの回避を妨害して。
「下がれ!」
 そう声を張ったのはオリヴィエ。空中に放られたのは円筒状の何か。それは光を放ち、当たりを真っ白に染め上げた。
 まどろみからいったん離れ距離を取る面々。そんな中。リュカは物陰から声をかけた。
――小夜子は大丈夫? 寂しがってない?
「なに?」
――連れ出してくれたのに、お礼も言えなかったから。
「あれは、お前たちをかどわかすために作った幻だ」
――本当にそうかな?
 いや、といったん否定してリュカは思い直す。あれは本当に幻だったのかもしれない。
 だとしても。そこにはわずかでも真実があるはずだ。あの愚神の想いがあるはずだ。
 そう思案するリュカの隣で和は思考を巡らせていた。
(考えなさい。まどろみは眠らせ、『夢に引き込む』夢はなんのために見るの?)
 夢には様々な効果があると言われている。記憶の整理、思考の純粋化。現実逃避 。過去からの離別……。であれば
「まどろみは自分が死んだ、と言う事を認めたくない……?」
「もしくは……」
 オリヴィエはその先の言葉をかみ殺す、リュカへの配慮だろう。
「でも、それは本当に? 私は違うと思う。だったら人を夢に引き込み広げる必要もない。広げる必要は、夢見る人の増加? 誰かを探してるの?」
 その言葉にオリヴィエは和を見つめる、まじまじと彼女を見据えた。
「もしくは夢でなら、嘘が現実になる。夢を現実に。誰かを夢に描くか……蘇生?」
――蘇生を願うんだとしたら、相手はもしかして。
 小夜子。そのキーワードで繋がるリュカとレオンハルト。
 レオンハルトは蘿蔔に言葉を投げる。
――小夜子をあれだけはっきりと記憶しているんだから、彼とって大事な人なんだろうな。
「ええ、あの時のまどろみからは敵意を感じませんでした」
――今までの夢を追って見ると徐々に侵される彼の心を表しているようにも見えるよ…………この悪夢から解放してあげたいが。 
「それは無理でしょう、私にはわかります、現実がこんなにつらいなら、夢で生きたい。そう言う気持ち」
 蘿蔔が寂しげな視線をまどろみの背に向けた。
 彼は孤独だった、もう何年、彼は孤独であり続けているのだろう。
――俺が見た君が書いた物語は別れが多かったから、本当は迎えに来て欲しかったのは君自身なのかなって。
 そのリュカの言葉に、一瞬、戦場を満たす殺気が消えた、同時に聞こえたのはか細い。まどろみの声。すべてを諦めたような。か細い声。

「小夜子は死んだよ、知っているだろ? 死んだんだ」

 直後、周囲の石の柱が砕けてすべてが少女に変わった。見渡す限りに小夜子。
 その小夜子の影から躍り出て蘿蔔は声高に叫んだ。
「初めて会った時、あなたは悲しくも優しい夢を見せてくれましたね。よかったらあなたの本当の名前を教えていただけませんか?」
「私は、英雄だった時の名前をアネットという」
「え?」
 蘿蔔は首をかしげる、その直後である。
 まどろみを中心としてさらにガスが発せられた。それは今までの霧とは拡散速度が違い、一気にあたりを覆い尽くす。
「まずいです……」
 イリスは懸命に足に力を籠めようとするがうまく動かない。
 だが動けないのはまどろみも同じようだった、脂汗をうかべて地面に腕をついている。
「なぜ夢を拒む」
 そう自分の内側に問い続けている。

第五章 かつて死んでしまった人たちへ。

 そこは昔自分が住んでいた家だった。幼き日の自分。
 他人に嫌われることを恐れていた自分。
 由香里は今幼き日の自分に帰っている。
「……そうね。私は弱くて、臆病で、他人から愛される事だけを求めていた子供だわ」
 そう壁に背を預ける飯綱比売命へ由香里は語りかけた。
「私の時間はずっと前から、周囲が私自身ではなく。私の幻影しか見てくれなくなったあの日々からずっと止まっていた」
 神職の家系。家にいる間は狂ったように教育の日々だった。
 戦いになった時のため、英雄が現れた時のため。そんな未来の時間のために幼い日の自分の時間は使い潰された。
 だが、そんな日々も終わりを告げたのだ。
「その時計の針を動かしてくれて、手を差し伸べてくれた人がいて、その手を取った筈だったのに、私は怖かった」
 そんな自分でも最初は隣にいていいと思ったのだ。けれど。
 彼の背中は、彼を知るたびに遠のいて。
 いつしかあの迷宮の奥に消えていた。
「心の底でその人を……いいえ、その人に相応しい存在ではない自分を恐れて、傷つけた。最低ね」
 そう自嘲気味に笑う由香里、その手元にはナイフが置かれている。
 死ねということだろうか。
 由香里は飯綱比売命を見あげる、けれど彼女は何も、何も言わない。
 自分で選べ、そう彼女の視線が語っている。
「できるわけがないじゃない」
 由香里は涙を流した。自分の命すら自由にならなかった幼少期を通過して、今ここで自分が何をどうすべきかなんてわからない。 
「じゃが」
 ここで飯綱比売命が口を開いた。
「お主はずっと誰かの通ったけもの道を走っておった。じゃがな。自分の意思で決めて貫き通そうと思ったことがあったではないか」
 由香里は釈然としない表情で飯綱比売命を見あげる、その時だ。声が聞こえた。遥か向こうから、自分の名前を呼ぶ声が。
 その声にはじかれたように由香里は立ち上がった。
 もう子供の姿ではなかった。
「奴を好いたのは、誰に命じられたわけでなく、自分から望んだことじゃろう?」
「うん」
 由香里は虚空に腕を伸ばした、その手を、空間を撃ち砕いて、傷だらけの手が握る。
 彼の背後ではおびただしい闇が蠢いていた。彼は傷だらけだ。
 こんな中を自分目指して走ってきてくれたのか。そう思って由香里は少し涙した。
「もう二度と置いていきません」
 そう蛍丸は指輪を模した睡眠抑制装置を取り出す。
 だがすべてを察した由香里はその手を取って蛍丸の動きを止めた。
「それをしたらあなたが戻れない」
「いいんです僕は、みんながまどろみを倒してくれれば僕も帰れますだから」
 違うのだ。由香里は首を振る。
 もうおいていったり、おいていかれたり、それが嫌なのだ。
 死が二人を別つまで共に、そうなるかは分からない。
 だが。今は共に一緒に歩みたい、そう思った。
「でも、最低なのを認めないと……弱く臆病な自分を認めないと私は先へは進めない。その機会を与えてくれた事には感謝するわ」
 そう声高らかに宣言した由香里。
 彼女は話を聞いているであろうまどろみに言葉を突きつける。
「そして、改めて答える。返答はNOよ!」
「良く言うた!」
 そう膝を叩いて体を起こす飯綱比売命。
「これまで見守って来た甲斐があったというもの! さあ、ここからは我らのたーんじゃ!」
 蛍丸、そして由香里は頷くとポケットの中の意思に手をかける。
 そして合言葉を唱えた。
 リンク・バースト。
 直後、まどろみの胸を裂いて光がほとばしる。
「二人ね……」
 雨月は微笑んで、そして体を起こす。二人が頑張っているのだ、負けてはいられない。
「なぜだ! なぜ夢を拒む」
――お前も今迄見てきただろ。
 ガルーは告げた。
――誰も夢のままでいることを良しとしなかった。
 小夜子だって、本当はそろそろ目ぇ覚ましたいんじゃねぇの?
 直後、アルトの弾幕がまどろみに負担をかけるべく襲う。その弾丸の雨の中まどろみの胸を引き裂いてあらわれたのが由香里と蛍丸。
 二人は疲弊しきっていたが、反転し。槍をつきだし。由香里はコールブラントを叩きつけた。
「おかえりなさい」
 そう雨月は柔らかく告げて二人を気遣うように隣に立つ、飛来する源光蟲をライブスミラーで反射。まどろみへとぶち当てた。
「状況は!」
 今二人は一つの隅忍抑制装置を、二人で握ることによってまどろみの睡眠誘導を避けている。早急に勝負を決める必要があった。
「厄介なのは読心術です」
 イリスは告げ、征四郎と共にまどろみをさらに弾き吹き飛ばす。
――攻撃を見る前から決め打ったような動き。どうしたっておかしい。
「行動が誘導されているってことは?」
 征四郎がその言葉に質問を返した。
「それはあります」
 その問いに答えたのは構築の魔女。
「脳内の情報を読み取るのであれば、ダミー情報に引っかからないはずがありません」
 脳内を考えで埋め尽くし、相手をご誘導するそれを試しているの構築の魔女だけではない、
――私達もだ。
 アイリスが頷いた。
――情報量でパンクさせる……さて、読心相手なら常道手段だが、効果はなかった。
 そもそもこれほどまでの多人数を相手に脳内の情報を読み取り続け戦闘するなどできるのだろうか。
「際限なく読めるわけがありません、であればより負担が軽いのは誘導」
 征四郎の言葉に頷くアイリス。
――なるほど。サブリミナルでこちらの行動を誘導も考えられるか。
「ただ、まどろみはこちらの技術を読み取る場合、こちらに触れる必要がありました。他の条件があると思います」
 そう蘿蔔は告げて弾丸をばらまいた。
「だったら。私にまかせてください!」
 征四郎が突貫する、たった一人でまどろみの前に立った。
 頭を押さえて立ち上がるまどろみ。
 その目の前でわかりやすく、征四郎はまどろみを挑発した。
「あなたに剣技では負ける気がしません」
「試してみるか?」
 直後伸ばされた指先を、征四郎はライブスミラーでの干渉を試みる。
「ぐああああああああ」
 はじかれたように悲鳴を上げるまどろみ。同時に征四郎の中に記憶が、光景が流れ込んでくる。
「そんな……」
――せーちゃん!
「お前……」
――リーヴィ、今ならフードいける!
 意識を失い倒れ込む征四郎、その体を抱きかかえつつオリヴィエはガルーの指示に従ってそのフードをはぎ取ろうと手を伸ばす。
 だが。
「見るな!!」
 フードの奥から噴出したのは霧、それをまともに受けたオリヴィエは倒れ込む。
(夢……か。ひとつ賭けてみよう)
 そのまどろみへ追い打ちとばかりに、藍が『言葉』を差し向けた
「”目を覚ませ”」
 直後。ひび割れるドロップゾーン。
 それと同時にまどろみの体は煙を上げ始めた。
「くそ、お前たち、私の夢を」
「夢の中でしか、生きられねぇか」
 アルトは煙を上げるガトリングをその場に突き立て、そして笑った。
「哀れだな」
 その時、アルトの視界に倒れ込む由香里と蛍丸の姿が映った。
「な……」
 二人を抱きかかえるのは雨月。
「パーティーは半壊だな」
「あたしはまだ戦える……」
「そうだな、そうかもしれない、だが私はギブアップだ」
 直後。視界がとけるように塗り替わる。
 アルトは思い出していた、優しい夢で見た光景。あの町、あの森。
 その光景はやがてとけるように消えていき。そして夢が冷めるころにはもう、まどろみはいなかった。
「これ以上の戦闘は危なかった」
 そうアルトの肩に手をかけるアイリス。
 戦いは終わったのだ。そう思った瞬間、アルトも眠りへと落ちた。

エピローグ

 今回の一件で睡眠抑制装置は、効果が切れた後に一気に眠気が襲ってくることが分かった。
 その件について遙華は平謝りをしていたが、実質被害はなかったので良しという話になった。
 そして気になる由香里と蛍丸だったが、ごっそり霊力が抜き取られていた意外に体へ異変はなかったので。
 その後、全員で集まって会議をしたのだが、驚くべきことに全員の記憶が食い違っていた。ひたすらお花畑で花を摘んでいたと言い出す者もいたのだが。
 機械を介した。
 つまり、ボイスレコーダー、ビデオカメラにはありありと戦闘の状況が残っていたのでそれは全て間違った情報だということが分かったのだ。
 さらに驚くべきことに、動画内では、せりたつ壁も、大量の小夜子も確認できず。幻惑であることが判明したのだ。
「今まで対峙して来たまどろみAの他にまどろみBがいる可能性はないだろうか」
 アイリスは告げる
「え?」
 全員が首をかしげた。
「今までのDZ十波町を術者の心象風景の具現化と考えると……
 戦闘が発生したときのDZが術にとらわれた者の心象風景を具現化しているように感じるんだ」
「更にまどろみのDZは共鳴の阻止も含まれていました」
 イリスが言葉を継ぐ。
「だが対策のある今回以外でも戦闘が発生している。なので似て非なるDZ使いが協力関係にあるのではないかという見方だね」
「たしかに」
 そうベットの上で考え込むのは蛍丸。
「どちらかというと、まどろみの体内にあるドロップゾーンは、今までのまどろみのドロップゾーンと似ていたと思います」
「それは私も思うわ」
 由香里も頷いた。ではまどろみを強化していたドロップゾーンはなんなのか。
 まどろみの成長で片付けていいのだろうか。
「故に十波町はまどろみAがまどろみBのDZの効果で作り上げた物ではないかと考えている」
 その仮説にイリスは難色を示した。
「……考えすぎじゃない?」
「可能性が低いものを追うというのも楽しいものだよ」
「そう言えば」
 遙華が話しに割って入り、地図を広げる。
 その地図は何枚かあったのだが、これらすべてが十波町のモデルになった可能性の高い町だそうだ。
「この中からしらみつぶしに探さないといけないのがネックで」
 その時征四郎が無言で立ち上がり、地図の端を指さした。
「ここで、まちがいありません」 
 そう征四郎は断言する。後に調べて分かったが、征四郎の情報に間違いはなかった。
 敵の本拠地が判明したのである。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855

重体一覧

  • 終極に挑む・
    橘 由香里aa1855
  • 愛しながら・
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951

参加者

  • 【晶砕樹】
    雁屋 和aa0035
    人間|21才|女性|攻撃



  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 遊興の一時
    御門 鈴音aa0175
    人間|15才|女性|生命
  • 残酷な微笑み
    朔夜aa0175hero002
    英雄|9才|女性|バト
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
    人間|18才|女性|生命
  • 難局を覆す者
    アムブロシアaa0801hero001
    英雄|34才|?|ソフィ
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • 狐は見守る、その行く先を
    飯綱比売命aa1855hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • 愛しながら
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
    人間|17才|男性|命中
  • 愛されながら
    詩乃aa2951hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • 残照と安らぎの鎮魂歌
    楪 アルトaa4349
    機械|18才|女性|命中
  • 反抗する音色
    ‐FORTISSIMODE-aa4349hero001
    英雄|99才|?|カオ
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