本部

広告塔の少女~ミュージカルをしよう~

鳴海

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
寸志
相談期間
4日
完成日
2017/02/22 14:52

掲示板

オープニング

● ディスペア再び
 『リリア・フォーン』は遙華の言葉に額を抑えた。
「ミュージカルで勝負? 何を、どうするの」
 ここはリリアの所属する劇団の応接室。彼女は前回H.O.P.E.の助力を得て、愚神に狙われつつも劇を完遂したということも評価され劇団でも力のある女優として地位を築きつつあった。
「それをあなたと相談するために来たんじゃない」
 遙華は言葉を続ける。
 先日行われたディスペアとのアイドル勝負。それは歌唱と戦闘だったが、それだけではアイドルの格は図れない。
 そう言うことで延長戦を持ちかけられたのだ。
 これを遙華は、番組の企画としてギブもテイクもナシなら受ける。
 発生するのはギャラだけ。
 という条件で受けた。
 よって今回は、『踊り』『歌』『演技』をテーマにバトルを行う。
「そもそも、芸術に勝敗の基準を設けるなんて……」
 リリアは戸惑いの表情を浮かべた。
「難しい? 審査員はあなた達劇団員でいいわ。あと視聴者投稿かな」
「演目は何をやるつもりなの?」
「オリジナルを、と言っても即興劇風にやるつもりだからストーリーラインはとても簡単よ」
「素人に即興劇をやらせるの?」
「一応その手の練習は積んでいる子たちを連れてくる予定だけど」
 リリアは額を抑えた。
「難しいわよ?」
「ちょっとくらい不格好でも、頑張っているところが見えるのが一番大事よ」
 そう告げて遙華は詳しい打ち合わせに入ることにした。


● ミュージカルについて。

 全員に一つのシーンを歌で演じてもらう。
 シチュエーションは下記から自由に選んでほしい。
 基本的にチームを組んでもらうことになる。
 ディスペアのメンバーとチームを組むかどうかは任せるが、二人人セットとして扱ってほしい。
 曲はシチュエーションに合う物を自分たちでチョイスしてもらいたい。 
 また、シチュエーションは最低限の物しか決められていないので、自分でさらに肉付けするのは問題ない。
 メンバーと話し合ってもらいたい。
 また小道具については、危険物以外は貸出可能である、あらかじめ遙華と相談してほしい。

1恋愛もの
 登場人物二人。
 別れの場面を演出する。
 舞台設定は板越しに二つの部屋がある設定、二人は電話で別れ話をしている。
 片方が別に好きな人ができてしまい。
 もう片方が別れたくないと縋る。
 その思いの掛け合い自体を歌にする。
 振られてしまった後の想いを歌にするなど。


2 戦闘もの
  敵と味方に解れ戦いながら決着を目指す。 
  適正人数としては、ヒーロー一人、敵が複数。三名から四名か
  敵側を完全な悪とするのか、譲れないもののために戦うのか。
  キャラクター設定がそのまま歌に影響を与えてくるだろう。

3 日常もの
  楽しく、可愛い日常の一こまを描いたもの。
  二人から四人程度がベストだろうか。
  曲調よりはコミカルな演技、大げさな演技が必要なため。
  演技力が問われるか。
 
4 自由枠
 シチュエーションからして定めがない、もしできれば程度に儲けられている枠である。


● 評価基準
 評価の際に見られるのは『歌』『演技』『動き』の三つ
 歌は、歌唱表現がシチュエーションに合っていたかを見る。声の使い方曲の種類、等々が見られる。
 演技については、セリフ、表情、動き、等が見られる
 動き、これはダンスや殺陣などがみられる。激しい動き、キレのある動きが評価されやすい。
 この総合評価で状に二組のチームが表彰される。

解説

目標 上位二組のチームに選出される。

 つまり目標からして失敗は無い依頼ですね。

●『幻想歌劇団ディスペア』
 さまざまな分野に秀でた少女たちが集まり一つのグループを作り上げた。
 バラバラにもまとまってでも活動できるのが強み。
 代表曲は。ヒットチャート五週連続トップ3入りしている『少年A』
 デビュー曲の『トップスタンダード』
 車のCMで使われた『苛烈』などがある。

 今回は二人がエントリー

『止処 梓』
 かつて空に囚われた少女。これといった才能はなかったように思われたが最近演劇の才能に目覚めた。
 黒髪短髪の少女で純日本人の顔立ち。歳は17才
 常に一生懸命で何事にも前向きに取り組む姿勢の持ち主、意外とファン人気が高いのはライブでは積極的に場を盛り上げようとする姿勢からだろう。

『海崎 小雪』
 一番の新人さん18才、演劇の学校に通っておりその才能はずば抜けていると評判。歌唱では梓とタッグを組むことが多い。代表曲は『取り残された蒼き日々を』
 雪のように白い髪とブルーの瞳はメンバーの中でも特に異質。

● ミュージカルについて。
 今回のシナリオがうまくいけば、リンカーアイドルの活動の場に、舞台が追加されます。
 今後そちら方面の仕事も増えてくると思いますので、気合を入れて頑張りましょう。
 と、遙華が言ってました。

リプレイ

プロローグ

劇場、リリアの所属する劇団がもっているそこそこ大きな箱であったが本日はグロリア社名義で貸切である。
 そんな大荷物を運搬する観点から幅広く作られた通路を『シエロ レミプリク(aa0575)』は闊歩していた。
 とある人物を探して。
「あ! 梓ちゃん!!」
 そう駆け寄ろうとするシエロだったがその前に少女が一人割り込んだ。
「え! ちょ!」
 タイミングとしてはたまたまだったのだが、突然の出来事だったのでシエロは勢いを殺し切れず、滑って廊下を転がっていった。
 そんなシエロに驚きの表情を浮かべる『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』であったが、すぐに梓、そして小雪に向き直る。
「ご無沙汰しております。ご活躍は耳にしております」
 そして『蔵李・澄香(aa0010)』も頭を下げる。
「あら。本日はお二人だけなのですね。次回は瑠音様たちとも是非、またご一緒したいですわ」
 クラリスが告げると顔をしかめる梓。
「ちょっと感じ悪いね、あなた達。私たちは仲良くやろうって話じゃなかっけ?」
 小雪が申し訳なさそうに告げると梓はあからさまに罰の悪そうな顔をした。
「仕方ないよ、梓ちゃん。リーダーが思いっきり、喧嘩腰…………」
「う、それについてはごめんなさい」
 澄香はその反応が縁起かどうかを謀っていた。
 そんな風に二三やり取りを続けるクラリスをよそに、転がって目を回しているシエロに歩み寄る『ナト アマタ(aa0575hero001)』
 ナトはふみゅーと謎の声をあげるシエロの袖を拭く。
「お菓子…………くれた」
 遙華を指さすナトである。すると遙華が歩み寄ってきた。
「ほら、メイクするわよ、シエロ」
 なんでもなかったかのように体制を立て直すシエロは、遙華に連れられ楽屋へ向かう。
「慣れないから緊張するな」
 楽屋に入ると、程よい緊張感が場を包んでいた。
「遙華。いつもおつかれさまです」
 『卸 蘿蔔(aa0405)』と『レオンハルト(aa0405hero001)』遙華に声を駆けた。
「カノンねーさまのお歌……皆様にもきっと、何かを残しますわ」
『リリィ(aa4924)』は『カノン(aa4924hero001)』の髪を梳かしながら告げる。
「そう、だと良いわね。心に残る何か、を……」
「……うう、緊張……するよ。アルヴィナぁ」
『氷鏡 六花(aa4969)』は緊張で震えながら言い放った。
「そんなに情けない声は出さないでください、それにいっぱい練習したじゃないですか。大丈夫ですよ、六花は可愛いですし」
『アルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001)』の言葉に顔を赤らめる六花。
 引っ込み思案で自身が無い六花、しかし彼女は舞台でやれるレベルだとアルヴィナは思っていた、だから強引に思えたが、心を鬼にしてこの回に参加を希望したのだ。
「ルナ、今日は頑張ってね!」
 その隣では『世良 杏奈(aa3447)』はそうルナの髪の毛を結い上げる。『ルナ(aa3447hero001)』はもう慣れっこで笑顔を輝かせた。
「もちろん! 必ず成功させるわ」
 そんなルナの肩に手を置く『楪 アルト(aa4349)』
「ミュージカルね……と言ってもあたしは裏方だからそんな気負わなくっても」
「はいアルト、よろしく」
 遙華はそうアルトにつげて、台本を手渡した。
「……え? あたし出んの? しかも……嘘だよね? この配役……」
 伴奏ということで、ひそかに舞台練習には付き合っていたアルトである。なのでどの展開でどのセリフか、大体覚えてはいたのだが……。
 思わず言葉を失うアルトである。
 そんな二人の背後で台本の読み合わせをしている二人がいた。
「…………貴方がこういうのに興味あるなんて、ね」
『ラウラ ブラックモア(aa4912hero001)』は『柳生 沙貴(aa4912)』
「んー、面白ければなんでも?」
 そう告げて流された視線。それは『アル(aa1730)』に向けられていて。
 彼女は真剣に役と向き合っていることが分かった。集中し役を下ろすアル。それを『白江(aa1730hero002)』がじっと見つめていた。
「大丈夫? アル?」
「ここはボクの畑だ。大丈夫」
 そう告げるとまた目を閉じるアル。
 アルは役者業が本業のようなもの。媒体は違えど侮ることはしなかった。
『メルト(aa0941hero001)』に興味津々のリリアだったが、鏡に視線を向けると『彩咲 姫乃(aa0941)』に告げた。
「今日はどんな感じにする?」
「じゃ、じゃあ」
 リンクして髪を長くする姫乃。
「まさかアイドル志望だと思わなかったわ」
「いや、そう言うわけじゃないんだが、結構興味はあって、その…………友達もアイドル好きだし」
「可愛いよ、姫菜ちゃん」
「……今日は別の名前を用意してあるんだ、じつは」

第一幕 私たちの日常

《とあるリンカーアイドル達の一日》
 澄香の言葉と共にファンファーレが鳴り響く、盛大な音楽と共に開いた幕の割に背景は日常的。そうどこにでもある住宅街のような背景がそこに逢ったのだ。
 そして壇上で踊るのは学生服に身を包んだ少女三人である。
「いいお天気だね」
 太陽よりも晴れやかにアルが告げる。
「き、昨日の夜更かしのせいで頭が痛いです」
 三つ編みをいじくりながら。蘿蔔は告げた。
「今日もいい一日になりそうね」
 普段より髪を長く、仕草にも女性らしさをを出した姫菜。
 いや女優名、姫香が告げる。
《そう両脇から覗き込むのは蘿蔔とアル。三人は仲良しリンカー仲間》
《しかし三人は。今この時は、怒涛の一日となることを、知る由もないのでした》
 クラリスとの掛け合いのようなナレーションが入る。
 それと同時にアルが拳を突き上げた。
「さあ! ボクらの時間を始めようよ」
 流れ始めるBGM、二人の背後の背景が変わり学校に。
 机が三つ用意されていてそれにそれぞれ座る三人。
 最初に響いたのはアルの声。
「あーーーーーー」
《テスト中は静かに、ですよ、アルさん》
「ごめんなさーい。でも!」
 机を押し付けるように離し、アルは謳う。
――別々の時間に家を出る兄妹。二つの蛇口がある特殊なお風呂。奇妙なお話ばかりずーっと並んでて、頭の中がグルグルグル。
 アルは頭を回すと机に突っ伏してしまう。
「あーもう大変だよ」
「同感です」
 蘿蔔が歌を継いだ。おどおどと周囲を見渡しながら立ち上がり謳う。
――鞄の中のクッキーを、探してほしいというだけなに、英語でつらつら指示が書かれてます。本場の人はこんな回りくどく話をするんですか? 
 スカートをわざとふわりと回せるようなゆったりとした動きで姫乃の周りを回って見せる。
――そこに入ってると言えばいいだけなんじゃないですか?
「It!」
「そこはThereだよ」
 筆記用具で机を叩きながら音をきざんでいた姫乃も立ちあがり三人の列に加わって体を揺らす。
――みんな。一週間前にいわれてたじゃない、中間試験受けられなかった教科をやるって、言われていたじゃない。
 姫乃が告げると澄香が少し微笑んでナレーションを挟む。
《テストに挑む3人。様子がおかしい二人に対して、余裕そうなのは姫香さん》
――私はちゃんと、勉強したからね。国語、数学、理科と社会に。学生の本分は勉強、勉強だからちゃんと二人とも……
《テスト中は私語厳禁ですよー》
 クラリスが告げると。
「はーい」
 声を合わせて着席する三人
「でも……できなかったらどうしましょう」
 蘿蔔が観客に語りかける。
「ダメです、絶対追試。あれ…………もしかして。これが追試!?」
《あ、蘿蔔さんの額に変な汗が》
「死すべき点P!!」
 突如机を叩くアル直後響いたのは姫乃の悲鳴。飛び上がる蘿蔔とアル。
―― あっちにいたりこっちにいったり、居場所が計算しないとわからないってどういうこと? 落ち着きがないよね、点P君、まるで誰か、私みたいだ!
 その衝撃で転がった姫乃の消しゴム、折れるシャー芯。
「で、でも答案用紙は埋まってるし」
《しかし、答案が一個ずれていることに気が付く姫香さん》
「キャー――――」
 小さく控えめな絶叫を発した姫乃。
――シャーペンの芯が折れた。消しゴム落とした。予備がない。
「大丈夫?」
「大丈夫です?」
――でも、私語を問いただされた後で、友達に筆記用具を借りれば、カンニング扱いになるかもしれない。
「あー、戻ってきて私の消しゴム。もとに戻ってシャープペンシル」
《学業に苦悩する三人娘の負のオーラが教室に溜まっていきます》
「これは。迅速丁寧にカンニングだと思われないように拾うしかない!」
《三人は必死です、これを乗り切らないと、貴重な休みに追試の罰ゲームが!!》
 その直後幕が下りる、再び背景は下校中の小道。

「うるさいってさ」
「怒られちゃったね」
「怒られちゃいましたね」
《そう顔を見合わせる三人娘、女三人寄れば姦しい、それを地で行くアイドル三人娘》
 そのクラリスのナレーションの直後である。
「ほら見て」
《アルさんが見せた画面には。画面を見せるとこの付近で妖精さんが逃げ出したという情報が》
「ぐぎゃ―」
 舞台袖から響く声。
「行きましょう」
 蘿蔔の瞳が輝いた。曲がかかる、勇ましい戦闘曲と言った調子の物。
――私、アイドルより。こちらが向いている気がします。戦うことは怖いけど、怯える人たちのためになるなら。変身して、戦うことも平気です。
「繋いだこの手は温かいのです」
――蘿蔔ちゃんはすごいと思う、僕らも手伝う。だから一人で頑張らないで。
「ボクはあっち、二人はあっちをお願い」
「あ!」
《姫香さんが指を刺す先にはなんとアルスマギカの妖精が》
 突撃してくる妖精さんを華麗に避けて三人は体制を立て直す。
 しかし飛びすぎた姫乃がずさぁーっと転び、無言で立ち上がり、ぱんぱんと埃を払い。
「な、なんて厳しい任務なんだー!」
「完全にバカにされてるね」
 アルが告げると蘿蔔が前に出る。
――私に、任せてください!
 蘿蔔の手に握られていたのはらぶずっきゅん。
「えー! 間違ってる気がするよ!」
 ハート型の光線が要請に向けて発射される。
「ぐぎゃ―」
――すずちゃんみぎ!
――はい!
――左!
――はい!
 アルの指示で右に左にターンを決めつつ妖精と踊る蘿蔔。
 その動きを見切った姫乃がハングドマンを解き放つ。妖精の前に蜘蛛の巣のように展開してそして
――捕まえた!
《す巻きの妖精さん、絶体絶命のピンチ!》
くるくるっと巻きつけて釣りのようにぽーんと引っ張りあげる
「妖精さんゲーット!」
 しかしアルの携帯電話が震える。
「一難去ってまた一難だよぉぉぉ」
 その言葉に首をかしげる二人、直後暗転。
 音の一切が消え、静寂に包まれた。
 そして、会場に響くのは三人娘の声だけ。
「なぜ今なのでしょう。なぜ私たちなのでしょう」
 蘿蔔は告げる。
「大丈夫だよ」
 アルは告げる。
――ああ。鼓動が早い。喉カラカラ顔も真っ赤。
「大丈夫ですか?」
――ボクだって緊張するんだからね?
――だったら逃げてしまいましょう
 蘿蔔は謳う。
――心の準備もできてません、与える元気も、ありません。もう疲れてしまいました。
「でも…………」
――逃げ出してしまいたいのに上がりたいステージ。ゾクゾク指先が痺れるほど全身を駆け巡る衝動
――いいね、こういうの大好きだよ!
――私も、やるからには全力で
 姫乃が告げると蘿蔔も観念したように謳う。
――はい、参院一緒なら。
――さ、行こう!ボクらの戦場へ。
 直後舞い散る紙吹雪、散乱するレーザー光。舞台の中心には三人娘。
《急きょ頼み込まれたライブに参戦する三人娘》
 そうアルは姫乃と蘿蔔の手を取って、そして三人は再び壇上に躍り出た。
 つながる音、響く旋律、会場はアルが配ったサイリウムで埋め尽くされている。
《疲労困憊の3人ですが、きっと彼女達なら大丈夫。大丈夫なのでしょうか!?》
 三人は改めて『ユートピア』を謳った。
 サビではもちろんミニスミカ、ミニクラリスも登場、華やかにステージを駆ける三人は、観客の心を虜にする。
《かくして怒涛の1日は終わりました》
《3人とも、お疲れ様でした》
《《めでたし、めでたし》》

「意外となんとかなるものですね。辛くても乗り切れたのは皆一緒だったから、一人では無理でした。ありがとう」
 そう蘿蔔は二人の手を取って微笑みを向けた。

第二幕 トライアングル

「ななななな! 私はやらないって言ったはずよ!」
 遙華がドレスに身を包み、舞台袖で震えていた。
「仕方ないのよ、ディスペアは別のチームだし、手が足りないの、ラウラさんたちの出番を無しにするわけにもいかないでしょう?」
「さまざまな意味で、割と、ルール違反じゃない?」
「ラインつま先ちょっと超えてるくらいなら、あなたの優しさでカバーしてあげなさい」
「大丈夫、不格好でも頑張ってればいいんですよ」
 沙貴は告げる。
「そう言う問題じゃ!」
「へらへらと受け売りしない」
 ラウラにたしなめられると同時に部隊の幕が上がった。

 城のテラス。月明かりに照らされて少女は悲しみと共に膝をついた。
「ああ! 沙貴。あなたが戦場から戻らぬまま、月が一巡しました。なぜ、どうしてあなたは帰ってきてくれないのでしょう。あなたがいないままに回る世界は私を置き去りにして、私の知らないところで私をからめ捕る。
 ああ、沙貴。私はあなた以外の人間と結ばされようとしています。
 忌まわしい敵国の騎士と…………」
 沙貴のナレーションが入る。
《ああ、悲しきかな、時代は混迷した戦乱の世。戦い破れた者から、国から、勝者はあらゆるものを奪うことができる。名誉も、金も。恋心でさえ》
「明日の舞踏会で正式に発表される。ああ、どうか沙貴。今すぐ私のもとに舞い戻り、私を攫って」
《運命の時は、姫を嘲笑うように、足早に訪れる》
 舞踏会その中心に生贄のように姫は置かれていた。
 その手をラウラが取る。
「姫、行きましょう」
《その時だった。雷鳴のように戸を響かせて》
 直後壇上に現れたのは沙貴。
「待たせたね、姫」
 DARKNESS AND STARLIGHTという曲。さらにそれをロックアレンジしたものに、オリジナルの歌詞を載せていく。
「姫は僕が頂くぞ!」
「貴様に姫は渡さない!」
 はじかれるように駆けた二人、剣を交錯させはじける金属音がリズムを刻む。
「剣よ!」
「踊れ!」
 刃を低く構え再度にらみ合う二人。
 
「「今夜の勝利を彼女に捧ぐ!♪」」

 打ち合っている沙貴の額を冷や汗が伝う。
(ラウラ、ちょっと本気過ぎない? 殺す気?)
 その思いを汲みとったのかラウラは微笑みで返す。
(日頃の行いよ。…………不思議ね。自分でも怖いぐらい、剣が冴えるわ)
 直後ラウラは剣を振り上げる。
「上よ!」
 そう叫んだ遙華の声に反応し沙貴は動いた。
 ぬけざまにラウラの胴を切り裂き、そして。姫をその腕に抱き留めた。
「あなたが生きていてくれたことが何よりうれしい」
 そして二人のシルエットは重なる。


第三幕 戦場


 聞こえる、大地の嘆きが。蹂躙する音が。
 シエロはそのメタリックは両足で踏みしだいて壇上に現れた。
「みぎゅあー」
 そう発砲スチロール製の電柱だとか、柔らかい壁だとかを粉砕し一つ吠える。
 悲鳴が上がった、そして逃げろーっという声も。
――逃がさない! うちが満足するまで、壊して壊して壊して、あ・げ・るわぁ
 ポケラルコォと口から火を噴いて見せるシエロ、観客席から歓声が上がった。
「うちは人間たちのこういう、まとまって生活しているところがあれだ! きらいだ! 絆ってなんだ! 美味しいのか」
 怪獣シエロ、その力の限り人間を蹂躙する存在である。人々は怪獣に太刀打ちできない、このままでは平和が壊されてしまう。
 だがそんな人々の安寧を守るため一人の少女が立ちあがった。
「そこまでよ」
 そう壇上に躍り出たのは幼い少女。彼女を光が包んだかと思うとフリフリの魔法少女衣装へと変わっていく。
「魔法少女ルナティックローズよ、もう好きにはさせないんだから怪獣シエロ」
 シエロはほくそ笑むと告げる。
「今日が、お前の命日だ。ルナティックローズ!」
 ギギギとシエロは鳴くと舞台上を飛び跳ね始めた。
「あ! ちょっとこら!」
 ルナはそれに合わせて壇上を動き回る。
 場合寄っては天井の梁すら利用して動くシエロに翻弄されるルナ。
 そんな中シエロはにやりと笑い告げる。
「パンツ見えてるよん!」
「きゃ!」
 そう頬を赤らめてスカートを抑えるルナ。動きが止まった。
 そのすきにシエロは四つん這いになってルナの足に手をかける。
 足を引っ張るシエロ。バタンと倒れたルナの背後に回るとゆらゆらと怪しく踊って見せた。
「うう、どこ行ったの?」 
 立ちあがってルナはシエロを探し始めるルナ。
「そんな、消えた」
 違う、背後にいるのである。そのルナのあまりの気が付かなさが面白いのか、シエロは両手で口を押えながら。
 次の瞬間鋭い爪でお尻を刺した。
「きゃー」!
「ギゲゲゲゲ」
 涙目で振り返るルナ。その愛らしさが観客だけでなくシエロの胸もうった。
 その結果反応が遅れた
「乙女の敵! もう怒ったわ!」
 直後召喚された本から放たれた閃光。
「ぐげえええええええ!」
 悲鳴を上げてシエロはその場に倒れた、黒焦げなのは演出なのか、それとも。
「まだ、まだ、幼女なんかにまけられ……ぐぼ!」
 直後、シエロの背中が爆発した。別にアイアンパンク部分が壊れたわけでは無い。
 攻撃である。
 曲調が一気に変わる。ヴァイオリン、ピアノ、格調高い音が並ぶが、その低音は不協和音を含み、聞くものを不安にさせる。
――……てめーが最近聞く魔法少女ってやつか?
 シエロの脇を通り少女がルナに歩みよる。
――……綺麗事ばっかりほざいて、綺麗なつらしやがって……のぼせあがんなぁ!
 そう登場したのはアルトである。魔法少女に対抗する魔法少女アルト。
 熱戦が始まる予感である。
――戦いの邪魔をして、良いわ相手してあげる。
 そう告げ二人は飛んだ。
 交錯する二人を巻き込み輝くライトエフェクト。苛烈な魔法が生の風を衝撃を観客たちに与える。
――はっ、てめーの言う正義なんて綺麗事なんだよ偽善者っ!
――偽善でも構わない! それで救われる人がいるのなら!
――それが偽善って言ってんだよ!
 アルトは距離を取って銃を取り出した。その銃でルナを引きはがす。
――だったらなんで、あたしを助けてくれなかった。
――あなた……
 息をのむルナ、しかしその背後でムクリと起き上がる姿。
――うちを無視すんな!!
 そうはじかれるように立ちあがったのはシエロ、次いで二人へと炎を吐いた。
 二人は唐突な出来事にバランスを崩す。
 アルトは致命的なまでに体が傾いた。それを狙って。シエロは爪を突き立てようと接近する。
「危ない!」
 しかし、舞い散った鮮血はアルトの物ではなかった。
 見ればルナがアルトに覆いかぶさっている。
「……てめぇ、なんであたしを助けんだよ!? あたしはお前を傷付けた、あたしは敵なんだぞ!!」
「わかっちゃった、アルトがほんとは辛いこと、こんなことしたくないこと。ねぇアルトちゃん、友達になってくれる?」
「バカじゃねーの」
「ポケラルコォ」
「でも、あいつを倒した後なら考えてやるよ」
 そう奇妙な雄たけびを上げるシエロに向き直る二人。
 二人はお互いの体を支えるように背中合わせになり、そして両手をかざした。
――これが私たちの。
――全力全開。
 そして放たれた魔力弾。直後大爆発。 
 シエロという悪は壇上から消え去った。
 そして二人は向き直り握手を交わす。こうして二人はライバルとして切磋琢磨することを誓ったのだ。 

第四章 雪のひとひら

 雪の降る冷たい夜に、二人を繋ぐか細い糸。それが永遠に立たれることなど。
 梓は思いもしなかっただろう。
「カノン、あのね」
 そう楽しげに語る梓から、カノンは必死さを感じていた。
 この話が終わればきっと、また二人は離ればなれ、広がる空は同じかもしれないが、その体温はかわされることなど無いのだと。
「梓、もう終わりにしよう」
「え…………」
 鍵盤を撫でるように、ひそやかなピアノの音が響いた。戦慄を確かめるように和音が響く。そして。カノンは口を開く。
――今は秘めたるこの想い。今は静かなこの願い。
「ごめん」
――雪のように儚く散っていくけれど。きっといつか。きっといつか。
「おいていかないで」
――優しく溶けて何かが見付かる。そんな予感を信じて。そんな想いを信じて。
 外では雪が舞っている、窓の隙間から入り込む雪のように小雪と六花が梓に歩み寄って手を取った。
 空に溶けて消えるような透き通る声。鏡合わせのように梓とカノンは背中を合わせ、梓は高音をカノンの声に乗せていく。
――今日も雪の下此の侭の想いをそっと胸に。
 蒼い光を上から月光のように当てる、二人はわかれて闇の中へ消えていく。
 白い紙吹雪が舞い降りる。 
――上を向いて歩く。歩いて行く。
「別れたくない」
「ごめん、だけど、忘れて、君は生きていって」
 電話が切れる音がむなしく壇上に響く。梓が窓から空を見あげれば雪が降っている。
 窓の隙間から入り込む雪のように六花と小雪が梓に歩み寄り、その方に手を置いた。そして時に優しく粉雪のように。時に激しく吹雪のように二人は息合せ舞う。
 そして二人が声を合わせて歌うのはアルヴィナ作詞の『白雪の華』だ。


――舞う雪のひとひら。そっと掌で受け止めて。心安らぐわたしの居場所。いつまでも。
――あなたの温もり感じていたいのに。いつしか雪の花は。溶けて。雫となって零れ落ちるの。
――降りしきる白雪。そっと思い出を抱き締めて。心高鳴るあなたの言葉。
――いつまでも。わたしの胸で響き続けてるのに。いつしか積もる雪は。白く。全て覆い隠してしまうの。
 二人は呼びかけあうように声を響かせる。
 その交互に響いていた音が、触れるように戸惑うように、僅かずつ重なってそして、今一つ大きな音になる。
――舞う雪のひとひら。笑顔も涙も。
――わたしには温か過ぎるから。
――そっとあなたの肩に降りるの。
――溶けて消える間際。最後に一言だけ。

「あ・り・が・と・う」


エピローグ

「結果発表!!」
 リリアはマイクを振るあげてテンション高めに告げた。

「一位は澄香さんたちの『日常』ペア」
 読み上げられた時、アルと澄香から姫乃は抱き着かれて顔を赤くしていた。
「……が近いです」
「二位はルナさんたちの『戦闘』ペア」
 となった。
 その壇上で六花は梓の手を取り告げる
「とても楽しかったです。また、一緒に歌ってくれますか……?」
 そんなディスペアの一行を見守っていた澄香は共鳴を解いた。
「どうでした?」
 蘿蔔が問いかけた。澄香は首を振る。
「なにもなかった」 
 澄香はマナチェイサーを発動していた、彼女たちが何か尻尾を出すかと思っていたが、そんなことはなかった。
「英雄さん達はいないからなぁ」
「あっちも勘付いているようですね」
 クラリスは告げる。
「だったら、私、行ってきます」
 告げて蘿蔔は席を飛び降りた、壇上を下りていったん楽屋まで戻ろうとした二人を追いかける。
 そしてその背中に声をかける。
「梓さんにお久しぶりです」
 振り返る二人。
「ええ、蘿蔔さん。この前のアイドル勝負の時以来よね」
「そうじゃないんです。私達」

「梓ちゃん」
 
 そう蘿蔔の背後から声がした、そしてその声に梓の肩が震えたのを覚えている。
「あっずっさっちゃぁぁぁん!!」
 そう光の速さでシエロは梓に抱き着いて、そしてその頭をめちゃくちゃに撫でまくる。
 ちなみにナトはシエロの邪魔にならない位置で手をそよそよと振っていた。
「あ、あ、あなた誰? 私、全然」
 明らかに先ほどとは様子が違う、冷や汗をかき、同行は開き、瞳は細かく動いている。
「梓ちゃん?」
 小雪は唖然としている。
「体は大丈夫? 元気にしてた?」
 そしてすべてを察した蘿蔔は、意を決したように告げる。
「実は私達、アイドルになる以前の梓さんに逢ったことがあるんです」
 レオンハルトが言葉を続ける。
「やぁ久しぶり。HOPEで手伝いをしているとは聞きたけど、リンカーに、しかもアイドルになっているとは驚きだね」
「梓さんはどんな理由でアイドルを始めたのです? スカウト? 私は友達におど…………誘われてです」
「わ。わた、私は。なんで。アイドルに?」
「梓ちゃん?」
 シエロはその顔を覗き込んだ、震える手をにぎって、問いかける。
 すると、梓の震えが徐々に収まって言って。
「あたたかい、手?」
「梓ちゃん、うち、梓ちゃんが楽しそうに演技してるの見て安心した」 
 そう微笑みシエロは手を離す。
「でも、何かあったら頼っていいんだよ」
「あの時みたいで楽しかったです。またお話してくださいね…………あ、よかったら連絡先交換しません?」
 蘿蔔はそう告げた。
「連絡先、確か、もらってたはず? でもいつ」
 梓は荒い息をつきながらも言葉を返す。これ以上はまずい、そう直感的に感じた蘿蔔は
「私もです。もしもこの先、困ったことがあって、誰を頼ったらいいか分からない時に…………今はディスペアの皆さんがいるでしょうし、ないかもですけど。でも、でももしもあったら、よかったら私を頼ってくれませんか?」
 その後、崩れ落ちるように座り込んでしまった
 三人は彼女の世話を小雪にまかせて会場に戻る。
「心配だね」
 レオンハルトは告げた。
「ええ、だからこそ見極めないと。目の前で誰かがいなくなるのも、何もできないのはもう嫌です」
 蘿蔔はそう言って、瞳を閉じる。
「あなたは戻らなくていいんですか?」
 そんな静まり返った廊下に言葉を放つ小雪。
 すると、真っ白い童子が姿を現した。
「あると一緒に貴方の舞台を観にいきました。あそこのお客はからくて有名だと。ほめてました」
「ありがとう、そう言ってもらえると嬉しいよ?」
「意味とは後からついてくるもの。古いものは排除する。……この考え方をどう考えますか?」
「え?」
 小雪は首をひねる。
「時間がかかりますか? 宿題にします? 二人個人の意見として訊きたいな」
「この子はなんというか、わからない」
 そう穏やかに小雪は告げる。
「けど、私個人の答えでいいなら。古い物を排除するって考え方には嫌悪しかありません私たちは古きの上に立っていると思うから」
 そう告げると小雪は梓に手を貸して楽屋に戻って行った。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • LinkBrave
    シエロ レミプリクaa0575
    機械|17才|女性|生命
  • きみをえらぶ
    ナト アマタaa0575hero001
    英雄|8才|?|ジャ
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
    人間|12才|女性|回避
  • 胃袋は宇宙
    メルトaa0941hero001
    英雄|8才|?|ドレ
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • 見つめ続ける童子
    白江aa1730hero002
    英雄|8才|?|ブレ
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命
  • 魔法少女L・ローズ
    ルナaa3447hero001
    英雄|7才|女性|ソフィ
  • 残照と安らぎの鎮魂歌
    楪 アルトaa4349
    機械|18才|女性|命中



  • 戦い始めた者たちへ
    柳生 沙貴aa4912
    獣人|18才|男性|攻撃
  • エージェント
    ラウラ ブラックモアaa4912hero001
    英雄|18才|女性|シャド
  • Lily
    リリィaa4924
    獣人|11才|女性|攻撃
  • Rose
    カノンaa4924hero001
    英雄|21才|女性|カオ
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969
    獣人|11才|女性|攻撃
  • シベリアの女神
    アルヴィナ・ヴェラスネーシュカaa4969hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
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