本部

【卓戯】連動シナリオ

【卓戯】まいにちがハロウィン?

高庭ぺん銀

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/10/11 20:04

掲示板

オープニング

●あやしいうわさ
ねえ知ってる? うちの学校の七不思議。
あ、知ってるんだ。流石○○だね。え? △△は興味ないの? めずらしー。
じゃあさ、これはしってる? さいしんのニュースなんだよ。
夜の校舎を誰かが歩き回ってるうわさ。
ウソじゃないって、大人がみたんだから。けいびいんさんとせんせーたちが話してるのきいちゃったんだー。
ちょうさ、してみようかな。夜の学校にしのびこむのって楽しそうだし。
え? だめ? なんでそんな止めるの? ヘンなやつー。
あ、そろそろじゅくの時間だ。じゃあね。またあした!

●おばけ役への説明書~ハンドアウト1~
・あなたは『おばけ』です。(妖怪、幽霊、妖精、付喪神など、すべておばけと呼ぶことにします)
・一般人には見えません。
・また、『この世』の人や物に触ることはできません。
・あなたたちは、もし一般人が見たら驚くような不思議な姿をしています。
・悪いおばけを倒すことができるのは『おばけ』だけです。どのくらい強いかというと、共鳴したリンカーくらい強いのです。

●ニンゲン役への説明書~ハンドアウト2~
・あなたは『ニンゲン』です。普通の人間ですが、おばけが見えるという特技があります。
・あなたにはパートナーの『おばけ』がいます。刑事さんみたいに『バディ』と呼ぶことにしましょう。あなたたちはこっそり町で起こる不思議な事件を解決しているのです。
・あなたは同じ小学校の『バディ』たちと、正義を守るための『チーム』を結成しています。『チーム名』を決めるのも楽しいかもしれません。
・あなたたちの中に大人はいません。小学1年生~6年生のうちどれなのかは、自分で選ぶことができます。
・ニンゲンはパートナー以外の『あの世』のものに触れません。戦闘においてはまったくの無力です。知恵が唯一の武器といえます。逃げることや隠れることを臆病と恥じてはいけません。

解説

ミッションタイプ:【エリア探索】【敵撃破】
――――――――――
・ハンドアウト1、2を能力者と英雄で分担してください。どちらが『おばけ』でも構いません。
・子供たちは全員同じ小学校に通っていることとします。つまり、参加プレイヤー全員が『チーム』の仲間です。
・見た目と言動は子供orおばけになりますが、知力は本人のものとなります。
・見た目の変化が大きいため名前だけは本人のままとします。ただし『おばけ』は苗字か名前を省略したり漢字をカタカナにしたりするといった変更も可です。
・おばけの強さ=共鳴時のステータスです。ニンゲンは敵にダメージを与えられません。
・おばけの武器や攻撃方法は自由に演出可能。
・学校の地図は全員、頭に入っています。

【目的】
校舎内の探索、悪いおばけの討伐

【学校】
 1階→理科室、保健室、職員室、校長室、体育館、グラウンド、プール(外)
 2階→教室(1年生、2年生、3年生)、音楽室、図書室、コンピュータ室
 3階→教室(4年生、5年生、6年生)、視聴覚室、図工室、調理室

※ここから下、すべてプレイヤー情報(子供たちとおばけたちは勿論、エージェントとしてのあなたも知らない情報です)
【校内に居るモノ】
骨格標本×1
不気味。アッパーで短気な性格。骨の投擲(ブーメラン)による遠距離型の敵だが、接近戦も可能。活動的。

人体模型×1
グロい。ダウナーで粘着質な性格。接近型の敵。人にベタベタくっつきたがる。飛び道具も無くはない。インドア派で運動嫌い。

花子さん×1
『引きこもり』で『寂しがり』の女の子。ある意味有名人。詳細不明。

ザコおばけ×?
宣言だけで倒せるおばけ。情報を持っていたり、いなかったり。可愛いマスコット系から浮遊霊まで。

・人体模型も骨格標本も理科室にいるとは限らない。どちらも強いが『おばけ』が3~4人集まれば負ける可能性は低い。
・学校の敷地内は時空が歪んでいる(=クリアまで脱出不可能)。

リプレイ

●よるのがっこう
 濃紺色の空でお星さまがまたたく頃。ニンゲンの子供たちは「おやすみ」を言ってベッドに潜り込みます。けれど今日は重大な任務があるのです。パジャマから着替えてこっそり窓から「行ってきます」。大人には内緒の冒険の始まりです。
「ボク達、学校パトロール隊だねー。みんなで学校を守るんだ!」
 小学1年生の荒木 拓海(aa1049)が張り切って言います。
「最後までやり通せるかしら?」
 彼の後ろで微笑むのは白装束のお姉さん。拓海を小さいころから見守る、背後霊のリサことメリッサ インガルズ(aa1049hero001)です。
「さあ張り切っていきますよクロウ!」
「……眠い」
 背の大きな6年生、真壁 久朗(aa0032)はあくび交じりに立っています。。
「そのようにやる気が無くてどうするのですか! 夜はまだまだこれからです!」
 このパトロールにはアトリア(aa0032hero002)に誘われてきたみたいだけれど、お兄さんらしく皆を心配する気持ちもあるみたいです。
「でてこい、マコ!」
【クク…?もういるけど??】
 神住 アキト(aa0573hero002)の背後から声をかけたのは魔女の帽子を被ったかぼちゃおばけ。名前はマコ(今宮 真琴(aa0573))。
「……ちょっとやってみたかっただけ」
【ククク、そうなのね。子供っぽい】
「子供だもん」
 マコは愉快そうに、お菓子がはみ出るほど詰まった空洞の口で笑いました。
【それよりチーム分けは? わーお、ちょうどいいところにロシアンシュークリームが】
「やりません」
 赤ピーマンとハバネロとマグロの3種類で作ったピンク色のシュークリーム、チーム分けは食べてのお楽しみ。アタリなど有りません。もし食べていたら大変なことになっていましたね。グーチョキパーで分かれて、いよいよ夜の校舎へ。
「何かあったらスマホで連絡ね。すぐ助けに行くから」
「助けに行くのは俺だろう。まぁ、異論はないが」
 小学3年生の女の子、ルー・マクシー(aa3681hero001)のパートナーは大きな黒い犬で、名前はテジュ・シングレット(aa3681)。水色の目が3つあるのがいかにもおばけっぽい子です。
「ほら、3階チーム早くいくわよ!」
 小学4年生の月鏡 由利菜(aa0873)はわがままなところもあるけれど、行動力のある女の子。
「ラミア、側で私を守りなさい!」
 相棒のウィリディス(aa0873hero002)はラミアという下半身が蛇になった女の人です。彼女らと同じチームになったのは、おませなアキトと元気印のキトラ=ルズ=ヴァーミリオン(aa4386)。デコボコチームはうまくいくのでしょうか。ルルト=マクスウェル(aa4386hero001)は少し心配げにキトラを見ていました。とはいっても、のっぺらぼうの彼に表情はないのですが。
「おばけは夜小学生は昼。時間帯で棲み分け出来ているんだしわざわざ退治する必要あるとは思えないねぇ」
 アリソン・ブラックフォード(aa4347)は皆もよく知っているような真っ白なおばけ。
「そっか。じゃあ帰る?」
 ホワイト・ジョーカー(aa4347hero001)はちょっぴり皮肉屋さんみたい。
「私たちは強い! いける! 怖いものなんかない! よし、いくよリオン!」
(わーいつも通り凄い自己暗示で頑張ってるー……)
 小人のリオン クロフォード(aa3237hero001)は藤咲 仁菜(aa3237)の強がりに心の中であきれますが、元気に答えてあげることにしました。
「了解ニーナ! どんな敵もピコハンでぺっちゃんこだよ♪」
「怖かったら私にくっついてもいいからねっ。お姉さんは強いから!」
 ジョーカーはそっけなく返します。
「ボクはいいや。あの子となら需要と供給がマッチするよ」
「こ、怖くあらへんし! や、オバケとか居らんし!」
 5年生の鈴宮 夕燈(aa1480)は怖がりさん。おばけなら周りにたくさんいるのですけれどね。
「って感じで捜索さん頑張るし……ところであぐやん、どこ行ったんかなぁ……」
 それよりも相棒のAgra・Gilgit(aa1480hero001)が見当たらないのが心配です。仁菜やジョーカーたちと向かう2階で見つかれば良いですね。

●とじこめられた
「……ボク、一番上」
 きりりと眉尻を上げて九龍 蓮(aa3949)が言いました。
「いや、一番上だが、無理すんなよォ。怒られるのは俺様なんだからなァ」
 聖陽(aa3949hero002)はニンゲンとよく似た姿をしていますが、手が銃になっています。だって銃の付喪神なのですから。
「主(しゅ)たるもの、矢面に立つべき」
「はいはい」
 蓮は最高学年として先頭に立ちます。
「ボクがルーねぇちゃんを守るよー」
 拓海は年の近いルーともう仲良しになったみたい。
 さて、1階の校舎を探検する前に外を調べてみましょう。まずは広いグラウンド。以津真天のアトリの出番です。大人でもぞっとするような怖いエピソードを持つ怪鳥といわれていますが、アトリは可憐な声を持つ女の子です。
「……何も見えませんね」
「やっぱり鳥目なのか」
 久朗が無表情にいうとアトリの声が鋭く尖りました。
「あなた今、こいつ役立たずだなと思ったでしょう!」
「思ってない」
 蓮はおばけに会いたいみたいで、ちょっと不満そう。
「……おばけ」
「まァ、そうそう出てくることはねェなァ」
「いくじなし?」
「そうとは限らねェだろうがなァ」
 テンポよく会話しているうちにプールへ到着。拓海が目を輝かせて駆け寄り、覗き込みます。
「風邪ひいちゃうから泳ぐのは駄目よ」
「え~」
 そのときです。拓海の体が急に沈んだのは。
「拓海!」
 リサが水に飛び込むと、白く透けた手が拓海の腕や足を掴んでいました。
(この子に手を出したら許さない!)
 リサの髪が長く長く伸びて白い手に巻き付きました。自由自在に動く髪で白い手を振り払いながら、リサは拓海を抱いて泳ぎました。
 プールの中から突然現れた無数の手は外の子供たちを狙います。蓮は皆の前に立ちはだかりました。
「ドーン、テメェさんの攻撃は効かねェんだから、少し下がってなァ。巻き込まれても知らねェぞ」
 ヤンが彼をたしなめます。
「何もできない、もどかしい」
「できないこたァねェだろ。そこらのチビちゃんらを巻き込まねェようにはできるだろゥ?」
「是」
 ルーの足首を掴んだ手をテジュが噛みちぎります。久朗と蓮に手を引かれ、ルーは校舎へと逃げ込みました。
「銃なのに斬れるってェ? そいつァ、不思議だねェ。弾じゃなくて刃だったりねィ」
 ヤンの攻撃は的確に白い手をとらえていますが、アトリは苦戦しているみたい。暗い場所ではよく見えない『鳥目』というやつです。しかし相手の気を引くには十分。
「やれやれ、遠距離はきついねェ。でも、俺様が銃だってこと、忘れんなよォ」
 この隙に拓海とリサは脱出を完了したようです。拓海は保健室で着替えることにしました。リサが着替えを持っていたみたい。
「着替えは一着しかないからね、お漏らししちゃだめよ」
「し、しないよぉ……」
 拓海は眼をそらして言いました。
「廊下は異常なかったぞ」
 ヤン、テジュ、アトリが戻ってきました。皆、怪我がないことを確認して廊下を歩きだします。なぜか明かりのつかない廊下を月明りだけが照らしています。静かで、足音や声がいちいち反響するのはなんだか不安をあおるものです。
 ヤンが煙草を片手に窓を開けようとして「おかしいぞ」と言いました。鍵がびくともしなかったのです。
――寂しい……。帰らないで。
 おまけにどこからともなく聞こえたのは、か細い子供の声。
「……う゛ぅ゛ぅ゛……ごわいよぉ」
「拓海くん…怖くないよ? 一緒行こ?」
 どうやら今すぐ脱出するのは無理みたいです。でも、それはこっちだって望むところ。今の声がおばけ騒ぎの原因かもしれませんから調査が必要です。
「仕方ない、行くか。探索しているうちに外へ出る手掛かりも見つかるかもしれない」
「そうだね! 皆には連絡しておくよ」
 ルーはまだまだ元気です。だってお目当ての心霊写真をまだ撮っていないのですから。蓮はきょろきょろして落ち着かないようすだけれど、彼の表情はなんだか楽しそうでした。
「理科室! 保健室! 職員室! 校長室!」
 廊下に下がったプレートをライトで照らして読んでは中をキョロキョロ。
「学校、新鮮。憧れ」
 おうちの事情で、蓮にとっては『学校』はテレビの中の世界でした。
「そういや、ドンは学校行ってなかったんだな」
「是、必要ない、言われたから」
 だからこの学校に転入し、皆と友達になれたことを蓮は心から喜んでいました。
「理科室、秘密いっぱい。調べる」
「あ、やくひん。かっこいいね! 博士みたい!」
 薬品棚に手を出した拓海にリサの雷が落ちました。
「いい加減にしなさいっ!!」
 リサがハリセンを振り下ろすと、鼓膜が破れてしまうのではないかと思うほど激しい『ラップ音』が鳴るのです。
「わぁぁーんっごめんなさいーー」
 気を取り直して、次は職員室です。
「ニンゲンだ!」
「え、おばけが見えるの?」
 ふわふわと飛び上がったのは、ピンクのポーチと古いキャラクターものの鉛筆でした。
「かわいいっ!! テジュ、僕あれ欲しいっ!」
 カメラを構え、ふらふらとルーが近づきます。でもそれって危険ですよね。
「ルーっ?! 危ないっ!」
 テジュはルーの服の裾を噛んで止めました。
「むー、悪い子たちじゃないと思うけど」
 ルーは口をとがらせると、少し遠い位置から言いました。
「きみたちってどこから来たの?」
「私はトシコちゃんのポーチよ。はぐれちゃったから、お迎えを待ってるの」
 子供たちは顔を見合わせました。そんな生徒の名前は聞いたことがありません。
「俺はタダシが音楽室に置き忘れて……職員室で使われているうちになくなっちまった。今は鉛筆のおばけさ」
 ルーが写真を撮っていいか聞くと、彼らは珍しそうにスマホを眺めて「早く撮って」とせがみます。しかし画面には何も写りません。
「ダメかぁ。テジュも何回撮っても写らないの」
 おばけたちがいい子たちだとわかったので久朗は尋ねてみました。
「この辺りに危ない雰囲気のやつはいなかったか?
「いつも廊下を走ってる奴らのこと?」
 さらに詳しく聞いてみますが。
「わかんない。俺たちには興味がないみたいでここには来ないから。ニンゲンに用があるんだって」
 久朗は考えます。先生や警備員さんが見たというのはそれのことなのでしょうか。
「謝謝。悪霊探す」
「さよなら! トシコちゃんに会ったら私のことを伝えて置いて!」
 その言葉は希望に満ちていて、だからこそちょっぴり悲しくなりました。現実世界の忘れ物たちはきっと形をなくして、もう二度とトシコちゃんやタダシくんには会えないのです。
「ヤン、肩車!」
 次は校長室。蓮が何代目かの校長先生に中華風のチョビ髭を描くと、思わず久朗も噴き出してしまいました。表情はなんとか真顔を保っていたのですが、ふっと息を漏らしたせいで鳥目のアトリもそれに気づきました。
「もしかして、貴方も落書きしたいのでは?」
「別に……」
 久朗がアトリの声に応えたときです。
「こらー! 悪ガキどもめー!」
 犬顔の校長に犬耳を付けていたルーと、つるつる頭の校長に髪の毛を植えてあげていた拓海は飛び上がりました。ひとり喜ぶ蓮の手を引き、久朗は部屋から脱出しました。
「何で逃げる? 組の頭、もっと殺気、凄い」
「反射的に逃げてしまったが……昔の教師と言うのは今と随分違うんだな」
 現代っ子にとっては新鮮な遭遇だったかもしれません。
「体育館だよ! ちょっとだけ遊んでいこうよ」
「いいね、体育倉庫とかおばけがいそう!」
 年少組はもう立ち直ったみたい。
「いけませんよ、私たちにはやらねばならないことが……アギャアアアアアア」
 突然、アトリのくちばしが上下にはずれそうなくらい大きく開かれました。
「アトリ……声大きいって」
 だって仕方ありません。
「ああ~にんげぇん。うふふふ~」
 うつろな目、粘着質な声、そして何より――露出した内臓。倉庫から現れたのは。
「人体模型! ヤン、学校の怪談!!」
「そうだねェ、映画もアニメも見たねェ。おかげで俺様くたくただけどなァ」
 それは完全に『ナマモノ』でした。
「グロい? もっと、グロい世界を、ボク、見てきたから、それほどでもない」
「まァ、あっちのほうがグロいわなァ」
 蓮に関しては「※特殊な訓練を受けています」と言っておきましょう。
「新鮮な内臓、頂戴よ。血管でもいいよぅ」
 むき出しの心臓がビクビクと動くのが不気味です。
「はっ、ワタシとした事が……さ、さあ倒しますよ!」
 アトリが再び大きな怪鳥に変身しました。戦闘モードです。
「うふふ、今日は可愛い女の子もいるんだねえ」
 前に進み出たテジュはグルルと歯茎を剥きだします。
「ルー、下がってろ!」
 拓海を抱き締めるルーをリサが包み込むようにして守ります。アトリは赤い翼をはためかせて人体模型の周りを飛び回り、翻弄します。鋭いかぎづめから逃れようと、人体模型が身を伏せました。チャンスだ、とテジュは思いました。
「痛い痛い!」
 そして2匹に分身したテジュが、剣のように鋭い二又のしっぽを次々と突き刺します。分身しているから、4振りもの剣に襲われているような感覚です。
「痛いってばぁ!」
 怒りに任せて振り回した手。テジュが後退します。人体模型は自分の『体』を飛び道具にしようとおなかを探ります。
――わんっ! わんっ!
 しかしテジュの攻撃がそれを止めました。『咆哮』が衝撃波となって人体模型を振っ飛ばします。倒れたおばけにかぎづめと弾丸が容赦なく突き刺さりました。
「ごめんなさぁい! だって人間になりたかったから。……人間っていいよねぇ~!」
「ギャア! こっちに来ないでください!」
 大号泣で謝罪しつつも、隙あらばにじり寄ってくる彼に子供たちは困ってしまいました。そんなとき耳に届いたのはスマホの着信音でした。
「行こう。縛ったから、平気」
 蓮とヤンが何を縄代わりに使ったのかたずねる者はいませんでした。

●どたばたばとる
「夜の学校はなんというか……不気味です」
 こちらは3階。静まり返った廊下を由利菜を先頭にして歩きます。
【ククク、アキトの怖がり】
「べ、別に怖がっているわけではないです」
【クク、ならいいけどね】
「マコは意地悪です」
 アキトがほっぺたを膨らませると、リディスの魔眼が光り、あたりを照らしました。
「わらわの瞳の前に、見通せぬ闇など無い」
 アキトは廊下の真ん中をふらふらする大きな影に気づきました。光のあたらない絶妙の位置にいて不気味です。
「あれは……なんだ……?」
【クク、同類よ】
 アキトは表情をキリリと引き締めます。
「いくよマコ、先手必勝!」
【ククク、任された】
「マコ! たらいケーキ!! ……今更だけどもっと格好良い技とかがよかったな」
 いてっと野太い声が響きました。
「アレ?」
 血糊のついたボロイ衣服にぼろマントを着たAguraが頭頂部をさすっていました。
「ご、ごめん。ちょっとマコ!」
「バディの言うことを聞いただけよ」
「いつもは全然聞かないじゃない!?」
 Agraはチッと舌打ちします。
「チビどもを脅かして遊ぼうと思ったんだがな。お前らが相手じゃこうもなるか」
 Agraのいかめしい顔が余計に厳しく顰められたかと思うと、彼は踵を返します。
「2階で何かあったようだ。俺は戻ることにする」
 広い視聴覚室では何も見つけられることができずキトラも由利菜もつまらなさそうです。
「次はこっちよ、図工室にも確か怖いうわさがあったはずだわ」
 由利菜が言いました。
「わらわが開けよう。汝らは下がっておれ」
「ふん、なかなか良い心がけじゃない」
 リディアがドアを開けると。
「曲者!」
 死角から美術室の彫像が体当たりしてきました。首だけの男の人は怖い顔をしています。
「こっち!」
 アキトが由利菜を庇います。
【クク、壁ドン】
「言ってる場合!?」
 リディスの持つ長柄の一閃に怯んだ彫像。しかし敵はまだいたようです。作品には人の念がこもるもの。
【クク、アキトそこね】
「どうしたの!?」
 シュルンと回転しながら飛来した何かを避けたアキトは顔の横に刺さったものをみて背筋がぞっとしました。
【ククク、危ないから避けて】
「!? もっと早く言ってよ!」
 自画像の入った額です。何気なく見ていた展示物でしたが、小学生の描く絵と言うのは骨格がぐねぐねだったり目つきがおかしかったりと結構不気味です。
「逃げよう!」
 アキトは由利菜とキトラの手を引きます。
「待ってよ! 下手に暗い場所に逃げたら危ないでしょ」
「……怯えるでない。輝く魔眼、汝にも分けた」
 由利菜の手元には魔眼が光を灯していました。
「怯えてなんかいない! ……あなたたち、行くわよ!」
「あっちは調理室だったナ! あ、つまみ食いできるかも!」
 数珠つなぎになった3人が今度はキトラに引っ張られます。ドアを開けた途端先頭のキトラは何かに引っかかって転びました。料理用のタコ糸が入口に張られていたようです。
「痛い!」
「何やってるのよ!」
 他の2人も道連れです。
――かかれー!
 次の瞬間、子供たちの頭の上から、スプーンや箸などの食器が降り注ぎました。
「キトラ!」
「うわ、あぶなっ! サンキュー、るるにぃ!」
 ルルトの放った蒼い人魂が食器たちを弾き飛ばします。彼だけは子供たちを追ってきていたみたい。『妹』を守るのは『兄』として当然の役目ですもんね。
「俺の可愛い妹を怖がらせた罪、償ってもらおうか」
「別に怖がってはいないけどナ」
 眼帯越しの視線――眼はありませんが――が弱いおばけを威圧します。ルルトは食器たちを引き出しに閉じ込めると、図工室の戦いが終わるのを待機することにしました。
「くくく……汝には聞きたいことがあるからのう。逃がさぬぞ」
 リディスが口笛を吹くと蜘蛛糸の結界が発生し、彫像にまとわりつきました。
「くっ……異形が。我はアポロンぞ」
「貴様こそ石膏の造り物であろう。わらわは海神ポセイドンの子……この姿でも神性を失ってはおらぬわ!」
 強烈な鉄砲水の一撃で、アポロンは沈黙しました。
【クク……でろでろでーん】
 マコがホウキから飛び降り、そのホウキをブンとふると巨大な鉄拳が無数に飛んできます。額縁たちは一網打尽です。
【ほーうーきーあたーっく!!】
 アキトにはいつも「箒関係ないよね?」とツッコまれています。【クク……これが浪漫ね】などと減らず口を返すのですが。
 彫像を抱えたリディスとマコが調理室に合流すると由利菜が怒り心頭の様子で仁王立ちしていました。
「私に攻撃するなんて言い度胸ね。反省して、知っていることを全部吐きなさい」
「わ、我らは人体模型と骨格標本を倒そうと……」
――そうだそうだー!
 戸棚の中からも声が聞こえます。
「我らは無力だ。年端も行かぬ幼子が蹂躙されるのをただ見ているしかなかった。……せめて黄金の弓矢がこの手にあれば!」
「なんか、悪い奴らじゃなさそうだナ」
 子供たちは1階と2階の仲間に連絡して情報交換をすることにしました。サイキンノコドモにとって、ホウレンソウは基本中の基本なのです。

●こわがりさんぽ
 2階に足を踏み入れると、もの悲しいピアノの音色が聞こえてきました。
「は、入りたくないな。でも行かなきゃ」
 怖がりな反面、責任感が強い仁菜は自分を奮い立たせます。リオンはそれをわかっているので先頭を歩いてあげます。
「あ、開けるよぉ? ほんまのほんまに、開けるよぉ?」
 ドアに手をかけたままためらっているのは仁菜なのに、怯えてパニック状態の夕燈はそんな風に実況します。自分よりも怯えている人がいるとちょっと冷静になれますね。仁菜もそうだったようで、えいっとひと思いに戸を開けてみました。
「あれ……止まっちゃった?」
「やっぱり誰も居ないか。お約束ってやつ?」
 グランドピアノを覗き込んだジョーカーが冷めた声で言い、アリソンは部屋を探り始めました。
「あ、みてみて、ジョーカー君。運動会のダンスのCDがあるよ! つけて!」
「勝手につけたら近所迷惑だよ、アリソン。しかも、ボク振付覚えてないし」
「え、私は覚えたのにー」
「ボクの代わりに出てくれよ」
 少し楽しい気分になってきた仁菜はベートーヴェンの肖像画を何気なく見上げました。
「ひっ……」
「ど、どどどないしたん」
 目が赤く光った、なんてきっと気のせいだと思いたい。皆に話して笑い飛ばしてほしいのに仁菜は口がうまく動かせません。
「え、なになになに……」
 そして恐怖とは伝染するもの。
「目が……ひ、光……」
「いやあああああ」
 仁菜と夕燈が飛び出し、それをリオンが追いかけるのをジョーカーはぼんやりと見送りました。
「最初からあんなテンションで疲れないのかなあ。……あ、大丈夫か」
 アリソンをちらりと見ます。何年生きているのだか知りませんが、アリソンは四六時中こんなテンションなのですから。
「あははは、見てみて! 音楽家の人たち、みーんな赤目になってる! 写真撮るの失敗したみたい!」
 図書室の探索は何事もなく終わりました。アリソンが自分そっくりのおばけの絵本を見つけて大はしゃぎしたくらいです。
「トイレって定番だし、調べたいけど……」
 歯切れの悪い仁菜。確かに学校の夜のトイレなんて不気味すぎます。緊急事態だからしょうがない、とジョーカーとリオンの陰に隠れる形でトイレに侵入します。手前から1、2番目の個室は異常なし。次に3番目の個室を開けると、壁に文字。べっとりとした水で書かれたような、それは。
「血文字?」
 リオンが何気なくいうと、甲高い二人分の悲鳴が答えます。
「絵の具だね。『オレたちの陣地。花子は侵入禁止』」
 ジョーカーが読みあげますが、意味を理解できるものはいませんでした。
 次はコンピュータ室。アリソンは某有名おばけを思い出し、画面から這い出るモノマネを披露します。
「じゃーん」
「ぶふっ君おっもしろいねー!」
「ま、髪さえあれば完璧だった」
 言ってからジョーカーは思いました。
「誰だ今の」
 左肩に重み、そして右側に気配。よし右だ、と首を回したジョーカーは思いました。――なぜガイコツに肩を組まれてるんだろうか、と。
「しけた面してんなよ、ブラザー」
「せめて肉と皮つけてから言ってよ」
 どちらにせよ、致命的にノリが合わないけれど。
「きゃぁあああああ! 出たぁーーー! リオン早く倒して! 倒してぇー!」
 仁菜が叫びます。
「あーうん。抱きつかれてると倒せないから離して欲しいなー」
「ちょ、あぐやん! どこ!! あぐやーーーん!」
 夕燈の声は届かなかったけれど、そのとき3階にいたAgraは何かピンとくるものがあったみたい。バディって不思議です。
「……さて、遊びもそろそろ仕舞いにするか……」
 リオンがぴこっと可愛らしい音を鳴らして、骨格標本の肩を叩きます。
「え~い!」
「げええええ! なにすんのっ!?」
 まさかの、木っ端みじん。効果音と威力が合ってなさすぎます。出会ったのが人体模型の方でなくて本当によかったですね。
「ねぇねぇ、ジョーカー君。すごく元気な骨!」
「鬱陶しい奴だね。足の骨でも撃ち抜いてやりなさい」
 手品のように空中からナイフを取り出し、投げつけるアリソン。足さえ砕けば逃げることもできません。
 一方、闇雲に遠くへ走る夕燈。途中で繋いでいた仁菜の手を放してしまいました。ついでに右手もどこかへ。
「大事なモン落とすんじゃねぇよ」
 それはAgraの声でした。
「あぐやん!! いけず!! 顔怖い!! どこ行ってたん!!」
「あーはいはい、悪かった悪かった……煙草吸ってたんだよ……」
 夕燈は両手でAgraの胸板を叩きましたが、今はそんな場合じゃないと気づきました。
「あぐやんぱんちー!」
「……それで効くモンかね……」
 投げつけられた骨を腕で払い、鋭いキックで軽い体を吹っ飛ばします。
「……さて、話でもしようか……」
 Agraはポキポキと指の骨を鳴らすと骨格標本の顔に『アイアンクロー』を食らわせました。ミシミシという音と悲痛な悲鳴のコラボレーション。何かのトラウマを揺り起こされた夕燈はガタガタと震えていました。
「ごめんなさーい! もうあのガキのことはいじめないからー!」
「『がき』? 夜の校舎をお散歩さんして先生さんたちをおどかしたこととちゃうん?」
 こういうのを『藪蛇』と言います。良い子の皆は覚えておきましょうね。
「余罪があるみたいだな。ゆっくりお話しするか、兄ちゃん」
 骨格標本は歯、どころか全身をカチャカチャ鳴らしながら、とてもよくお話してくれました。
「私の夢は毎日ハロウィンにすることなの!」
「ふふ、楽しそう」
「業が深いね……お菓子が世界中からなくなってしまいそうだよ」
 仁菜はジョーカーとアリソンのマイペースな会話に付き合っていたため、後ろで行われるえげつないトークショーには気づきませんでした。

●はなことあそぼ
 3階で子供たちは集合しました。傷を負っているおばけにはリオンとリディアが自作の回復アイテムを差し出しました。――毒々しい色の林檎と真っ赤な血というひどい選択肢でしたが、おばけたちは気にせず頂くことにしました。
「トイレの花子さん、ね。子供っぽいったらないわ。私はもっと他に探したいものが……」
 不満そうな由利菜をなだめて花子さんを呼びます。とんとんとん。ドアを3回叩いて、皆で声を合わせます。
――はーなこさん、あっそびましょー。
 返ってきたのは小さな小さな声。
「はぁい……」
 赤い吊りスカートにおかっぱの女の子が、そっとドアを開けました。――いいえ、まだドアを半開きにしてこちらを伺っているようです。
「どうしたの? もう寂しくないよ? みんなと一緒に遊ぼうよ?」
 拓海は勇気を振り絞って手を差し出しました。リサは反対側の拓海の手を握って応援します。
「ほ、本当に花子なんかと遊んでくれるのぉ……?」
 弱弱しい声にアリソンが思わず笑います。
「すごくネガティブなおばけ!」
「君のポジティブを分けてあげなさい」
 花子さんは自信なさげに呟きながら、ゆっくりと個室から出てきました。
「……ニンゲンの子供は、花子の名前を聞いただけで怖がるのに」
 キトラは花子さんの背を叩きます。
「ぜんぜんこわくないゾ! まずは広いところに行くカ! えーと……」
「体育館でいいだろ。フフフ、引っ込み思案系の妹キャラか」
 仁菜が優しくたずねました。
「花子ちゃんは何して遊びたい?」
「えっと、花子、こんなにたくさんのお友達と遊んだことないから……おにごっこ、してみたい」
 花子さんはルーやアキトと同じくらいの歳に見えました。おばけや年上の子たちは少しだけゆっくり走って花子さんに捕まってあげたり、氷鬼や高鬼を提案したりして、楽しく遊びました。
「みんな、ありがとう。それから、ごめんなさい」
「やっぱり、私たちをここに閉じ込めたのはあなたね」
 由利菜が言うと花子さんは身を縮めました。
「良いよ。寂しかったんだよね。僕たちはバディもチームの仲間もいるけど、花子さんは一人だったんだもん」
 アキトが言いました。
【ククク、アキトは女の子には優しいのな】
「男性に優しくしてどうするんですか」
【クク、いいね。その考え好きよ】
 まだ泣きそうな顔の花子さんに久朗は言いました。
「人体模型と骨格標本は俺たちが懲らしめて置いた。花子が引きこもった理由はあいつらだろう?」
「うん。ニンゲンにそっくりで生意気だって。僕らだってニンゲンになりたいのにって。……もう、花子のこと、いじめないかな?」
「ああ、もう悪さはしないと思う。怖がらずに外に出てきて良いんだ」
 ルーはにっこり笑います。
「校舎の中には良いおばけも可愛いおばけもいるんだよ! お友達になってくれるんじゃないかな」
 キトラが頷きました。
「あたしたちだってもう友達だからナ。また遊びに来るヨ!」
――ありがとう。
 花子さんの声が頭の中で大きく、大きく響きました。一瞬だけくらりとして眼を閉じた皆は、眼を開くと校庭の真ん中に揃って立っていました。

●おやすみなさい
 時計を見ると、不思議なことに、探険に出発した時間から1分たりとも進んでいませんでした。
「ま、よくあることだけどね」
 アキトが落ち着いた様子で言います。皆も同じ意見みたい。
【クク……なんか疲れた】
「……そうだねぇ……さっきのたらいケーキは食べられないの?」
【ククク、硬いから歯が欠ける】
「それケーキじゃなくてもいいよね?」
 ルーは仁菜の手を握って、言います。
「うう……ちょっとだけ、だけど……怖かった……かも…」
 遅れて恐怖がやってきたみたい。仁菜は片手でルーの手を握ったまま頭を撫でてあげました。
 拓海はリサに尋ねます。
「何であんなにおばけが居たの? みんな行く所がなかったの?」
「そうね、少しだけ、遊びたかったのかな?」
 リサは隣でふわふわ漂いながら微笑みました。今度は花子さん以外のみんなと遊ぶのも楽しいかもしれません。
 今夜の冒険はこれでおしまい。家へと帰る皆の背中を、屋上から花子さんが見守っていました。
 しばらくして、夜の学校をうろつく誰かの噂はなくなってしまいました。それが小さなヒーローたちのお手柄だと、誰が気づくでしょうか! ――さぁ、新しい冒険はすぐそこ。彼らのハロウィンパーティーはまだまだ続くのです。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
  • 絆を胸に
    テジュ・シングレットaa3681

重体一覧

参加者

  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
    機械|24才|男性|防御
  • 傍らに依り添う"羽"
    アトリアaa0032hero002
    英雄|18才|女性|ブレ
  • 撃ち貫くは二槍
    今宮 真琴aa0573
    人間|15才|女性|回避
  • エージェント
    神住 アキトaa0573hero002
    英雄|8才|男性|シャド
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 花の守護者
    ウィリディスaa0873hero002
    英雄|18才|女性|バト
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • ~トワイライトツヴァイ~
    鈴宮 夕燈aa1480
    機械|18才|女性|生命
  • 陰に日向に 
    Agra・Gilgitaa1480hero001
    英雄|53才|男性|バト
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 守護する“盾”
    リオン クロフォードaa3237hero001
    英雄|14才|男性|バト
  • 絆を胸に
    テジュ・シングレットaa3681
    獣人|27才|男性|回避
  • 絆を胸に
    ルー・マクシーaa3681hero001
    英雄|17才|女性|シャド
  • 任侠の流儀
    九龍 蓮aa3949
    獣人|12才|?|防御
  • 首領の片銃
    聖陽aa3949hero002
    英雄|35才|男性|カオ
  • 迷探偵アリソン
    アリソン・ブラックフォードaa4347
    機械|17才|女性|防御
  • ハロウィンの奇術師
    ホワイト・ジョーカーaa4347hero001
    英雄|25才|男性|カオ
  • 四人のベシェールング
    キトラ=ルズ=ヴァーミリオンaa4386
    人間|15才|女性|攻撃
  • エージェント
    ルルト=マクスウェルaa4386hero001
    英雄|20才|男性|カオ
前に戻る
ページトップへ戻る