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ジャックオーランタンと宴
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最終発言2016/10/21 23:40:25 -
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最終発言2016/10/21 21:40:54
オープニング
●再びやってきました、この季節
とある雑貨店が管理する倉庫。そこで鼻歌を奏でながら、店主が装飾をしていた。所々ある焼け焦げた部分を上手く隠しながら、装飾をしていく。ただ、焼け焦げた跡はここで火事があったわけではない。
昨年の同じ時期にこの倉庫に保管していたハロウィン用のカボチャたちが従魔化したのだ。それを討伐してもらう際、カボチャたちの攻撃によって残ってしまった傷跡というわけだ。その時、彼らに作ってもらったハロウィンカボチャたちは再びあんなことにならないように店主の目が届く範囲に置いてある。
「あ、去年は、H.O.P.Eの方にお世話になったし、招待しよう!」
うん、それがいいとぽんと手を打った店主は装飾もほどほどにH.O.P.Eで働く姪っ子にその旨を伝えた。
そして、満足するとまた装飾作業を再開させるのだった。
●あっちもカボチャ、こっちもカボチャ
ハロウィンの日。店主が準備していた倉庫には君達H.O.P.Eのエージェントは勿論、雑貨店の常連である一般人も参加していた。倉庫いっぱいに広げられたテーブルの上にはカボチャ、カボチャ、カボチャのカボチャ尽くし。料理も勿論そうなのだが、お皿にカボチャを使用してたり、皿の柄がカボチャだったりとこちらもカボチャ尽くし。更に言ってしまえば、装飾も見事にカボチャだらけである。その装飾の中には店の看板娘のジャックオーランちゃんと看板息子のジャックオーランくんの姿もあった。
「おい、ティアラ、美味しそうだぞ」
『あら、そう? なら、幻想蝶の中に入れてちょうだい』
そこには英雄であるティアラ・プリンシパル(az0002hero001)の引きこもりを直そうとパーティに参加した椿康広(az0002)。しかし、ティアラは康広の魂胆を知っているので、幻想蝶から出ることなく、中から声を発する。それには康広は大きな溜息を落とすしかない。
「お、うまそーだな!」
「みっともないから、あんまりがっつかないでよね」
今にも食いつきそうな虎――メメント・モリ(az0008)の襟首を掴み、彼の英雄アンジェロ・ダッダーリオ(az0008hero001)は静止を掛ける。
「食べてくれって出してんだから、いいだろ」
食わせろー! とぐわっと言ったところでメメントは尻尾に違和感を覚え、そちらをみた。すると、そこには小さな男の子がメメントの尻尾を嬉しそうインにぎにぎしている。
「トラしゃん!」
にぱっと笑った男の子に一瞬、きょとんとするもののすぐに豪快な笑みを浮かべた。
「おう、トラさんだぜ! がおーってな」
そういって、男の子に襲い掛かるポーズをとれば、きゃあと嬉しそうな声をあげて逃げる。そうなるともう意識は男の子の方に向かっており、先程までの食べさせろ攻撃が止む。
「モリくん、ケガさせないようにね」
「わーってるって」
一人が楽しそうに遊んでもらっているとその声につられて他の子供もメメントへ群がっていった。
●やっぱり、こうなるの!?
和やかに時間が進んでいく中、突然ぼふんと火の玉が上がった。それに全員が固まる。
「……演出なんかじゃないよ?」
青い顔をして、ぎゅっとジャックオーランちゃんとジャックオーランくんを抱きしめる店主。それに本当に演出などではないと感じ取った人々は悲鳴を上げ始めた。それにエージェント達は素早く共鳴を果たす。
「ったく、こんな時に従魔かよ!」
「みたいだな。おい、お前」
「んだよ」
「俺様に協力しやがれ」
『モリくん、人にモノを頼む態度じゃないよ、それ』
共鳴したこともあって、メメントの中からアンジェロのツッコミが飛んでくるが、黙殺。目の前の康広の答えを待った。
「いいぜ、協力してやるぜ」
「っし、それでこそ男だぜ」
バンとその背を叩けば、その衝撃で前に一歩でる康広。そんな康広を見て、「もうちっと鍛えた方がいいぜ」などとアドバイスをするメメント。そんな二人の間を火の玉が通過していった。若干、触れてしまったのだろうジリジリと焼けた前髪に二人して沈黙。そして、静かに康広はソルディアを、メメントはカルペ・ディエムを構えた。
飛んできた火の玉を斬り落としたその時、戦いの火ぶたがまさに斬り落とされた。
「じゃ、ジャックオーランちゃんとジャックオーランくんはぼ、ぼぼ僕が守る! ……嘘です、ごめんなさい、助けてくださいぃいい」
グッと拳を握った店主はそう言いきるも顔面すれすれを飛んできた火の玉に戦意は喪失。すぐさま近くにいた君たちエージェントの許へと駆け寄るのだった。
解説
一般人を守りつつ、カボチャ型従魔を討伐せよ
●パーティ会場
雑貨店が保有する倉庫。間口10スクエア×奥行20スクエア。一室がバッと広がるだけの倉庫。見通しはかなりいいといえる。建物の構造としては一度火事に見舞われたこともあり、石積みにした上に倉庫強度を上げるため鉄で補強してあるため、簡単には倒壊しないはず。
●従魔
・ハロウィンカボチャ×20
小型、中型のカボチャ。ミーレス級。
攻撃は跳ねる、体当たり、噛み付くだが、火を噴くこともプラスされた。噛み付くに至ってはカボチャであるのでそれほど攻撃力はない。ただし、魔法に対しては耐久が多少ある。
・お化けカボチャ×20
大型のカボチャ。ミーレス級。
攻撃はハロウィンとほとんど変わらないがプラスで火の玉を吐き出す。ただし、火の玉を出すとライヴスを消費するためか近くにいるハロウィンを喰らう。また、お化け同士で食べ合い肥大化もする。多少、攻撃力はある。防御はちょっと頑丈になった。
●NPC
・康広&ティアラ
今回、ティアラは姿を見せません。メメントと協力して、敵をぶっとばしに先行。何かあればプレイングに。
・メメント&アンジェロ
メメントが食べ物に釣られての参加。康広と協力して敵をぶっとばしに先行。何かあればプレイングに。
・店主
ジャックオーランタンの宴に登場。二代目ジャックオーランちゃんと前作でエージェント達と作ったジャックオーランくんをぎゅっと抱きしめて、エージェントたちの後ろで縮こまっている。
●その他
リプレイはオープニングのパーティ風景から開始いたします。
一般人も参加していますので、戦闘中は一般人に怪我がないよう注意してください。
なお、戦闘後は片付けに移るもよし、改めて再開するのでもよし。
リプレイ
●カボチャ尽くしでハッピーハロウィン
「「「ハッピーハロウィン!!」」」
その掛け声がカボチャ尽くしの会場に響き渡る。楽しく一般人と共に食事を開始するとあちらこちらで楽しそうな声が上がる。一方で、椿康広(az0002)は相方であるティアラ・プリンシパル(az0002hero001)を幻想蝶から出そうと美味かったものをティアラに勧めるも反応は冷たい。
「えっティアラさんいねぇの……!? なーんだよ折角お美しいハロウィン仮装姿見れると思ったのにぃ」
「ガルーみたいなのがシタゴコロ丸出しだから出てこれないのかもですよ」
必死にティアラを出そうとする康広の姿にガルー・A・A(aa0076hero001)はガクッと肩を落とす。それを可愛らしい魔女っ子の格好をした紫 征四郎(aa0076)はじとっと見つめる。
「お、紫も来てたんだな。ただ、ティアラに関してはわりぃ」
「よいのです。ガルーにはいい薬です」
「それはねぇんじゃねぇの」
子供による小さな人だかりができているところではメメント・モリ(az0008)が子供たちと食べ物そっちのけで遊んでいた。その近くではアンジェロ・ダッダーリオ(az0008hero001)が子供に怪我させないか気がかりでジッとそれを見つめる。ただ、その目つきが怖いのか、アンジェロの周りから、すすすっと離れていた。
「アーンジェロちゃん、顔怖いぜ」
「……ん、あぁ、虎噛くんか」
「もう、名前で気軽に呼んでくれていいんだぜ」
そんなアンジェロに明るく話しかけてきたのは虎噛 千颯(aa0123)。それにアンジェロは一瞬、キョトンとなったがそれが誰なのかわかったのだろうフッと頬を緩めた。
「それはまぁ、後々だね。ところで、君も食事目当てかい?」
「ノンノン、俺ちゃんはあそこで遊んでる白虎ちゃんを宣伝しに、な」
そういって千颯が指さしたところにはメメントとは違い、所詮いたずらっ子と呼ばれる子供たちと遊んでいる白虎丸(aa0123hero001)の姿。
「ねえねえ、これ本物?」
「本物でござる。だから、引っ張るな! ……でござる」
「ござる!! ござる~」
「いい加減にしないと俺も怒るでござるよ!」
ガァッと牙を見せ吠えるも、子供たちには遊びとしか捉えないようで楽しそうにきゃっきゃっとはしゃいでいる。
「あ、ちーちゃん、いたいた」
「お、リュカちゃん、なになに?」
「はぁい、どーぞ」
「……はい、アンジェロちゃんにやるよ。とってもおいしそうだぜ! さて、俺ちゃんはそろそろ白虎ちゃん、助けに行こうかな」
木霊・C・リュカ(aa0068)に声をかけられ、手渡されたものを見た千颯は瞬時にそれをアンジェロに押し付けた。そして、さっさと白虎丸の方へ「はーい、白虎ちゃんと遊ぶのはここまでー」と言いながら、走っていった。残されたのはリュカとリュカを補助するために近くにいたオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)。それから、千颯に手渡され、硬直するアンジェロだった。
「アンジェロちゃん、さ、がぶっといっちゃって」
にこにこと屈託ない笑顔で言うリュカ。それにアンジェロはちらりとオリヴィエに目をやるも、彼の目から伝わったのは「諦めろ」の一言。
「……ありがたくいただくよ」
「うわっ! あっちもこっちもカボチャだらけだよ!?」
「そういえば、エージェントになって初めての戦闘依頼もここのカボチャ退治だったような?」
すごいすごいとはしゃぐピピ・ストレッロ(aa0778hero002)の傍で皆月 若葉(aa0778)は一年前にあった出来事を思い返していた。
「あれ? 君もしかして」
「あ、どうも」
「やっぱり、あの時の子だよね。あの時は本当にありがとね。今日は目一杯楽しんでいってよ」
あちらこちらへと挨拶に走り回っていた店主の目に丁度若葉の姿が入ったのか、恐る恐る若葉に尋ねてきた。それに若葉が会釈を返せば、パッと笑みを浮かべる。
「あの後は、特に変わりなくですか?」
「うん、問題なかったよ。正直、今日ももしかして、とかって思ったけど、何ともないようで」
よかったよかったとにこにこする店主に若葉はあれ? と思うものの口に出してはダメな気がして口を噤んだ。
「ねえ、これも食べれるの?」
「あぁ、それは食べ物じゃなくて飾りだよ。とっても可愛いでしょ」
ピピが持ってきたものはカボチャのランタン。それに店主は笑みを浮かべて、説明する。そして、その代わりこっちは食べられるよとカボチャの形をしたクッキーを差し出した。
「君もどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「是非とも、楽しんでいってね」
クッキーをピピと若葉に渡すと店主は他にも用事があったのだろう少し速足で去っていった。
「カボチャ料理だ! いっぱいあるよ、クロエ!」
「ああ、どれも美味しそうだ」
ピピと同じようにテーブルの並ぶカボチャのお菓子に声を上げるリッソ(aa3264)。その隣で彼の言葉に同意をする鴉衣(aa3264hero001)。
「あ、カボチャの種も使ってあるよ」
「ここの店主はよほど、カボチャが好きなようだな」
「うん、そうかも。あ、あっちには人形があるよ」
「あぁ、ジャックオーランタンというものだな」
近くで見てみようとリッソは鴉衣の手を引き、看板娘と息子を見に近づく。
『『ハッピーハロウィーン!!』』
「「!!」」
突然、喋ったそれに二人は驚く。しかし、すぐに頭の中にレコーダーが入っていることに気づき、これのせいかと納得した。
「いろんな声が聞こえたよ」
「こちらは女性の声だけだったが、こちらはそうではないみたいだ」
ジャックオーラン君の方を見て、鴉衣は興味深そうにしげしげと見つめる。
「あ、すみませーん」
「あら、何かしら」
近くのテーブルで追加でお菓子を置いていた女性にリッソは声をかけた。女性――店主の姪は二人の許にどうかしましたかと近づく。
「これってーー」
「あぁ、これね。実はーー」
リッソの質問に姪はうふふと笑みを浮かべて一年前にあった出来事を語る。それをリッソと鴉衣は静かに耳を澄ませた。
「どこ見てもカボチャがいっぱいだ! これがハロウィンなんだな!」
「ハロウィンといえばこういうカボチャだからね。美味しい料理もあるし、楽しもうか♪」
初めて触れ合うハロウィンに目を輝かせるのはエリック(aa3803hero002)だ。その隣で世良 霧人(aa3803)がニコニコと笑みを浮かべる。
「あ、そういえば、アニキ、トリック・オア・トリートってどういう意味なんだ?」
「簡単に言えば、お菓子をくれないとイタズラするぞって言葉だよ」
「へー、なんか、面白そうだな」
近くの子供たちがしきりに大人たちに「とりっく・おあ・とりーと」と拙く声をかけていたのを見ていたエリックはパイを頬張りながら、霧人に尋ねる。それにああと頷くと、説明する。答えを聞いたエリックは食べていたパイを飲み込むとニッと笑みを浮かべた。
「あ、そこの人、トリック・オア・トリート! イタズラしちゃうぞー♪」
何か思いついたのかエリックはスケッチブックを持って、近くを通りかかった人たちに声をかける。生憎持ち合わせがという人に「じゃ、イタズラだな」とニッと笑い、その人の顔にハロウィンらしくカボチャの絵などを描いていく。その中で、リュカにも声をかけたのだが、「アニキー! 口の中がすげー辛い」と言って、雑貨店の常連さんと談笑していた霧人のところに転がり込むのだった。
「美味そうだし、可愛いし、何コレ! ってレイ聞いてる?」
「ハロウィンならでは……ってヤツだな」
ハロウィンが初めてなのは彼もだったようで、エリックと同じように目を輝かせるのはカール シェーンハイド(aa0632hero001)。ただ、彼の相方――レイ(aa0632)はクールにそれらを見つめる。
「ま、本来の姿とは今の時世じゃ、かなり歪んでいる気もするが……」
「また小難しいコト言ってる」
「……いや、ハロウィン知らずに此処に居るお前に謂われたくないし」
「いやいやいや楽しんだ者勝ちっしょ」
ということでレイも楽しんじゃおうぜと笑うカールにレイは静かに息を吐く。そして、周りを見回した時、レイの目にあるものが止まった。
「あれ? レイ、あれってアンプじゃん」
「……主催者の、いや、らしくないな」
真空管のアンプヘッドを持つ、スタックアンプに二人は近づく。
「あ、ごめんごめん、コレ、預かりものだから、触らないでもらえるかな」
イタズラでもすると思ったのか店主が慌てて、二人の前に走り込んできた。
「店主の知り合いのものか」
「うーん、ちょっと違うかな。えっとね、あぁ、あそこの子のだよ」
「あれって確か、同じH.O.P.Eからの参加者じゃん」
「そうそう。あとで、ちょっとだけ演奏させてくれって言うからさ」
面白そうだなって思って、えへっと笑った店主にふーんと言いながらレイは「なるほどな」と若葉と話をしている康広に目を向けていた。
「いやー、子供は可愛いねェ」
「……帰りたい」
テーブルからは少し離れてるところでハロウィンの仮装をして楽しんでいる子供たちを眺める四童子 鳴海(aa4620)。そんな隣では緑青(aa4620hero001)はきゃあきゃあと聞こえる子供たちの声や盛り上がる大人たちの声に煩わしそうに呟く。
「あら、そんなこと言ってないで、あんたも楽しんだら?」
「興味ないし、騒々しいのも嫌いなの知ってるでしょ。ま、ご存じない様だからいうけど」
ふーっと溜息を吐きながら、そういう緑青。しかし、そんなことは知ったことかと「結構、美味しいぜ、ほら、あーん」とケーキ乗ったフォークを鳴海は彼女に差し出す。
「うっとうしい奴も嫌い」
食べるわけないでしょと首を彼女が背けた瞬間、どこかでぼふんと火の玉が打ちあがった。
「……演出なんかじゃないよ」
●アンハッピーハロウィンパーティ??
突然の珍客に倉庫内はてんやわんやの大騒ぎ。子供たちは恐怖からか泣き叫び、大人たちもどうしたらいいのか、呆然と立ち尽くすもの、逃げようと出口に走るものと混乱をしていた。
「皆さんはこちらに固まってください! ここは、私達が守ります!」
『ダメだな。混乱しすぎて、俺様たちの声が聞こえちゃいねぇ』
共鳴をしたエージェント達が声を上げるものの一般人たちに届かない。それに征四郎の中にいるガルーが舌打ちをする。なんか、一瞬でも意識を向けさせることができればというが、いい案が思いつかない。
「レイ、俺のギターは持ってきてたな」
『勿論じゃん』
「なら、この手しかないだろ」
幻想蝶から愛用のギターを取り出し、「ちっと借りるぜ」と近くにあった康広にアンプに繋ぐとボリュームを最大にギターを掻き鳴らした。突然、響き渡たギターの音に一般人もエージェントも一瞬止まる。しかし、エージェントたちはすぐにそれがどういうことなのか理解できたのだろう、自分たちがH.O.P.Eのエージェントであると叫び、一か所に集まるように指示をする。
「じゃ、ジャックオーランちゃんとジャックオーランくんはぼ、ぼぼ僕が守る! ……嘘です、ごめんなさい、助けてくださいぃいい」
「もう! 店主さんも、しゃんとするのです。大丈夫、ですから」
逃げ帰ってきた店主に征四郎は大丈夫だと声をかけ安心させる。その一方で、オリヴィエが集まった大人たちに指示を出していた。
「できるだけ、机を避けてくれ」
『そうだね。折角の料理を台無しにされちゃたまらないからね』
ぐちゃぐちゃになった料理は見たくないからなとリュカの言葉を言い直して、伝え、珍客――ハロウィンカボチャたちに目を移す。
「パーティーを邪魔する悪いカボチャは退治してしまおう」
そう言いながら、孤月を振るうのはリッソ。周りをしっかりと頭に入れ、どこに誰がいるのか把握をする。その上で、一般人を襲おうとするカボチャに刀を突き立てる。
「さあおいで。可笑しなジャックオランタン達。私達と遊ぶのに退屈はさせないさ」
お前たちの敵はここだと宣言するように両手を広げて見せる。それに飛び込んでくるカボチャたち。
「イタズラカボチャには早々に退場願いましょうか。……烏羽」
黒い光が羽のようなものを散らし、若葉の手から《白鷺》/《烏羽》が光の鳥となって舞う。それは火の玉を充填し、一般人を狙っていたお化けカボチャの口に綺麗に突き刺さる。
「……怖いよぉ」
「…………」
仲間たちが必死で戦っていても、子供たちに植え付けられた最初の恐怖は消え去らないようで、泣きじゃくる子供たち。彼らの前に守るように立つ千颯はグッとグングニルを握りしめた。それから、どこかのヒーローショーのように大袈裟に立ち回る。それが本当にヒーローショーのように思えてきたのか子供たちの顔からは徐々に恐怖心が薄れていく。
「みんなが応援してくれると俺ちゃん達の力になるんだぜ!! 応援よろしくな!」
飛んできた火の玉をガードし、そう言い切った千颯。それに子供たちは涙をぬぐって「頑張ってー!」と声を張り上げる。それに千颯はニッと唇を吊り上げた。
『……エリック、何でこんな変な武器ばっかり持ってきてんの?』
「え? 面白そうだから」
『……そうか』
傘に自撮り棒、グローブと一見というよりも全く武器に見えないそれら。ただ、使えないものではない。一般人に降りかかる火の玉の前にエリックはスカーレットレインを広げ、防御する。そして、今度はこっちからとばかりに傘に仕込まれた銃を発砲。
「ブロック! アンド、ファイア!! イエーイ! ネタ武器サイコー♪」
(……楽しそうだなぁ)
生き生きと戦闘するエリックに霧人は感想を零す。ただ、彼が【SW】青春のグローブを構えた瞬間は『いや、無理でしょ』と突っ込んだ。しかし、霧人の予想をいい意味で裏切り、グローブの中に火の玉が収まった。
「お、捕まえられた」
それと同時にどこからか「バックホーム!」と聞こえ、火の玉を吐き出したお化けの方へと投げた。しかし、そもそもそれほどのものではなかったようで、お化けに到達する前に火の玉は消えてしまった。
「すげー、返せたぜ!!」
『ただの偶然じゃないかな』
目を輝かせるエリックに霧人は嘘でしょと思い、そう告げる。だが、エリックはもう一発と受け止める構えをするかそれ以降は本当に偶然だったのか、受け止められなかった。
「ちぇー」
「一般客、邪魔」
『そんなこと言ったらダメよ』
「あんたには言ってない」
妖刀「雨師」を持ち、緑青は一般人とカボチャの間に立つ。
『あぁ、そうそう。折角の可愛い会場なんだからやり過ぎないようにね』
「……いちいち、面倒くさい」
そう言いつつも、テーブル、一般人たちの位置を把握し、範囲内にカボチャたちを納めると複数の刀召喚し、刃の嵐を発生させる。そんな気配りに鳴海は『他人はどうでもいいとか言ってちゃんと気にしてるじゃないのさ』と口にする。それに緑青は文句の方が面倒だと告げ、妖刀をカボチャに突き刺す。
「メメント! どっちがいっぱい倒せるか勝負です!」
征四郎の前でカルペ・ディエムを振るい、戦うメメントに触発されてか、魔剣「カラミティエンド」を強く握りしめ、そう口にする。それにメメントは「面白れぇ」と笑みを浮かべ、傍で戦っている康広にも声をかける。
「メーちゃん暴れすぎて倉庫壊さない様にな~」
「壊れたら、軟な建物が悪いんだろ!」
『いや、壊すモリくんが悪いから』
後ろからかかった声援にぐわっと返せば、静かな声がメメントの頭の中に響いた。それに思わず、渋い顔をすれば、近くで覗いていた征四郎に「どうかしたのですか」と質問される始末。
「あー、もう、壊さなきゃいいんだろ、壊さなきゃよぉ」
やってやらぁとがぁと吠えるメメントに康広は何があったやらと苦笑いを浮かべる。
「ったく、お前らを招待した覚えは無いぜ? そこで踊ってな」
一般人のところに忍び寄ろうとするカボチャにレイは九陽神弓を構え、放つ。そんなレイの攻撃を掻い潜ったハロウィンが火の玉を一般人に吐きつける。
バシィと火の玉は刀によって斬られ、消滅。
「獣は火を恐れると思ったかな。彼等を守るならどうという事はないよ」
さぁ、いくらでもかかってくるがいいさとリッソはカボチャたちを睨みつけた。それを見たお化けたちはごそごそと集まると近くの仲間を食べ始めた。
「ふむ、どうやら共食いをして大きくなる事が出来るようだね」
その様を冷静に見つめる中、リッソの隣から矢と銃弾がすり抜けていく。
「tempestosoに行こうか」
「一か所に集まってくれて、ご苦労だな」
そして、仲間の奮闘により、残すは一匹となった。最後に残されたカボチャは飛び上がり、口を開く。
「喰らえ! 必殺! 猛虎雷咆撃!!」
トラさん、頑張れーという声を背に千颯はグングニルを思いっきりと振り、投げつけた。グングニルは白金の光を纏い真っ直ぐとカボチャを貫く。
『何でござるか? あれは……』
「ん? なんかそれっぽいだろ? 子供も見てるしな」
『……よくわからんでござる』
綺麗にとどめを刺したということもあり、千颯の後ろではすごいすごいと子供たちの歓声が上がっていた。
●改めて、ハッピーハロウィン
戦いの後は片付けかなと店主が思う中、エージェントたちは会場を整えた。
「康広ちゃん!ちょっちこっち手伝って!」
「手を貸して欲しいでござる」
「お、りょーかいです」
一か所に寄せた料理を盛り付け直したり、テーブルを直していく。
「去年もこんな感じだったの? そりゃあ災難だねぇ店主さん」
「今度はカボチャじゃなくて柿にしたらどうだ、最近の流行らしい」
呆然とエージェント達を見つめる店主の隣にリュカとオリヴィエは立つと声をかける。ただ、一応、言葉は理解ているのか返事を返す店主。
「一回、この倉庫、見てもらった方がいいかもしれないですね」
ほら、二度あることは三度あるって言うし、と近くを通りかかった若葉が言うとそれが聞こえたのか康広は苦い顔をした。
そうして、エージェントたちが頑張ったおかげでパーティ会場は最初と遜色ないくらいに戻り、エージェントたちの音頭でパーティは再開した。
「ティアラも一緒に食べようよー」
『あら、ごめんなさいね。今、大事なところなの』
「椿、大事なところって」
「多分、ゲームのことです」
ティアラも外に出て、美味しいお菓子をとピピが誘うものの幻想蝶から聞こえたのはお断り。そのお断りの言葉に若葉が首を傾げれば、康広は苦笑いを零す。
「へぇ、ティアラさん、ゲームやるんだ」
「つい最近ですけどねぇ。オレが貸したら、ハマっちまったみたいで」
結果、こんな風に悪化してと溜息を落とす康広に若葉はどんまいと声をかけるしかなかった。
「…………」
「興味があるなら、話しかけてみれば」
「……いい」
オリヴィエがジーと見つめていた先にはぴくぴくと動く耳とゆらゆらご機嫌そうに揺れる尻尾。それに気づいたリュカが声をかけるもオリヴィエは首を振った。
「オリヴィエ、あそこにパンプキンアイスがあるのです。一緒に食べましょう」
征四郎に誘われ、オリヴィエはメメントの近くにあるパンプキンアイスに少し嬉しげに取りに行く。そして、自分の手にふわりとしたものが触れた時、先程まで目で追っていた尻尾が近くにあることに気づいた。
「……」
むんずと尻尾を握れば、ぴくっと動く震える尻尾。
「なんだ、今度はオリヴィエか」
ま、好きに触っていいぜ。俺様はここにある料理を食べつくしてるから気にしねぇぜと言いながら料理に食らいつき始めれば、彼の前でアンジェロは大きな溜息を落としていた。
「お、そういえば、リーヴィは仮装しないの? にゃんこする?」
征四郎に付き合って傍にいたガルーは他の小さな子は仮装してるぜと言いながら、猫耳カチューシャを持って、オリヴィエに近づく。
「なんで、そんなもの持ってるんだ」
「え、面白そうだから?」
「簡単にしか描けなかったけど、こんなのどう?」
「これ、おいら?」
「おう、そうだぜ」
どうかな、似てる? と尋ねるエリックにリッソはコクリと頷けば、エリックは記念にと彼に手渡す。その一方で、若葉と分かれたレイとカールに呼び止められていた。
「勝手に悪かったな」
「別にいいですよ。緊急事態だったし」
アンプの件の謝罪を受け、康広は役に立ったなら逆に良かったですしと笑みを浮かべた。それから、ギター談議になったかと思うと一緒に演奏をしようということになり、即興のライブを始める。
盛り上がる人達のBGMとばかりに流れる音楽。ただ、途中まで聞いていたカールは料理が食べたいとライブを離脱。
料理に舌鼓を打つもの、一日限りのライブに耳を傾けるもの、H.O.P.E非公認のゆるキャラとして紹介されて子供たちに改めてもみくちゃにされるものなど会場には色々な人が同じ時間を過ごした。
「ほーら、あそこのお姉ちゃんに遊んでもらいな」
「ちょ!? 鳴海! ガキのお守なんて御免だから」
お菓子あげるからあっちに行ってなと手に持っていたお菓子をあげれば、あのお姉ちゃんのところに行けばお菓子がもらえるとちょこちょこと子供たちが集まることとなった。
「ちょっと、鳴海、笑ってないで助けなさい!」
結果
シナリオ成功度 | 大成功 |
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