本部

息抜き、お料理教室! ゼリー&アイス編

時鳥

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2016/08/10 20:05

掲示板

オープニング

●お料理レッスンのお誘い
 パティシエのお料理レッスン。
 真夏に涼し気な冷菓を作りましょう!大人から子どもまで楽しめる味わいを目指します。

 ゼリーとアイスクリームのハーモニーを奏で、今年こそは一味違った夏を演出!
 たとえ料理が上手くなくても大丈夫、本場のパティシエが手取り足取り教えしします。
 真夏の涼を満喫しましょう!

●ショコラールの簡単★コーヒーゼリー、バニラアイス乗せ
 前回行ったフルーツタルト作り。出来たフルーツタルトを職員に配ったとこ好評で、またやってほしい、という意見が届いていた。
 その為、パティシエ、ショコラール・クロワッサンを呼び、料理教室第二段が開かれることとなったのだ。
 依頼としてはH.O.P.E職員から美味しい冷菓を作って差し入れてほしい、というものになる。
「ムッシュ、マダム、今日はワタシのお料理教室にようこそん! 今日はゼリーとアイスクリームの合作! デスヨ! 一工夫加えた味を一緒に作っていきまショウ!」
 ショコラールが集まった人たちへ挨拶がてらに投げキッスを送る。
「ワタシがお手本で作るのはコーヒーゼリーとバニラアイスですが、ゼリーはミナさん好きな味を作ってみてくだサーイネ!」
 広く清潔感が溢れ、幾つも並ぶ長テーブルにコンロとオーブンが付いた部屋。前方には大きなボードがあり、そこにはショコラールの簡単★コーヒーゼリー、バニラアイス乗せと可愛らしい丸文字が書かれている。その他の料理器具や設備もばっちりだ。
 チョコラールは前回同様、手を二度石鹸で洗うことやアルコール消毒をしっかりすることなどの説明を行う。
「まずはアイスクリームの作り方デス。アイスクリームは……」
 と、アイスクリームの作り方の説明を行うショコラール。
「アイスクリームはゼリーよりも冷却に時間がかかるので、その間にゼリーを作りマスヨ!」
 アイスクリームの原液を冷蔵庫にしまい、今度はゼリーの材料を説明し、
「ゼリーはゼラチンとお好みの飲み物を混ぜて作りマスヨ。ここをこうしてこう、デス! これを冷やすわけですが……ここに、できあがったコーヒーゼリーとバニラアイスクリームが!」
 簡単な説明のあとに冷蔵庫から、できているコーヒーゼリーを取り出し、スプーンで一口サイズに切り抜き、透明なグラスへ移す。そして、もう一つ冷凍庫から、アイスを取り出すと、アイスクリームディッシャーを高々とかかげるショコラール。シャっという冷たく気持ちのいい音がなり、周りに雪のような白い空気が舞う。
 彼の手元にはゼリーの上に綺麗に盛り付けられたアイス。完成品ができあがっていた。
「こんな感じですが、盛り付けはミナさんのセンス! にお任せシマース!」
 そしてウィンク一つ。
 さあ、いよいよ実践が始まる! 美味しいバニラアイスクリームと好きな味のゼリーを完成させよ!

解説

●目的
 ゼリーにアイスを乗せて楽しく食べましょう!

●制作準備
1.手の消毒。(二度の石鹸洗いとアルコール消毒)
2.ゼリーに入れる飲み物を選ぶ
3.アイスクリームとゼリーを作る

●アイスクリーム作りの手順
1.ボウルに卵黄と砂糖を入れ、泡だて器で白っぽくなるまで混ぜ合わせる。
2.鍋に生クリームと牛乳を入れ、火にかける。 鍋のまわりがふつふつと沸いてきたら、先ほどのボウルの中に、少しずつ加えていく。
3.容器に入れて冷却!
4.冷却時間がゼリーよりも長いのでこの間にゼリー作りを行う。
5.容器のまわりが固まってくるので、スプーンを使って全体をかき混ぜまる。 再度冷却し、30分後に、同じようにかき混ぜてなめらかになったら完成!

●ゼリー作りの手順
1.ゼラチンに湯を少しずつ加えて溶かす。
2.飲み物(手本はアイスコーヒー)を小鍋に入れて中火にかけ、温まったらグラニュー糖を加え、木べらで混ぜて溶かす。
3.火を止めて溶かしたゼラチンを加え、全体が均一になるように、さらに混ぜ合わせる。
4.容器に入れて冷却!

●用意されている飲み物
コーヒー、紅茶、オレンジジュース、アップルジュース、グレープジュース、グレープフルーツジュース、いちごみるく、他(希望のものがあればプレイングに記載をお願いします。)

●盛り付け用のトッピング
各種フルーツ、色々な味のソース、コーンフレーク、クッキークランチ、チョコチップ、チョコスライス、チョコフレーク、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、他(希望のものがあればプレイングに記載をお願いします。)

リプレイ


 縦横四列の長テーブルが並ぶ調理室。ボードの前、真ん中横二列とその後ろ二列は講師ショコラールが実践を行う為と必要な器具、材料などが置かれているので参加者の配置はない。
 コルクボードから見て左側、一列目がアンジェリカ・カノーヴァ(aa0121)とマルコ・マカーリオ(aa0121hero001)。その後ろが柏崎 灰司(aa0255)とティア・ドロップ(aa0255hero001)。
 右側は天宮 愁治(aa4355)とヘンリカ・アネリーゼ(aa4355hero001)。その後ろに桜小路 國光(aa4046)とメテオバイザー(aa4046hero001)。
 そして三列目、コルクボードから見て一番左側は空席。その隣に中城 凱(aa0406)と礼野 智美(aa0406hero001)、離戸 薫(aa0416)と美森 あやか(aa0416hero001)の四人が一つのテーブルに本人たちの希望で配置されている。ただし1テーブルにしては人数が多いため、隣の一番左側の空席はその四人で荷物や不要なものを置いても構わない、と事前にショコラールから説明があった。そして天海 雨月(aa1738)と巳瑚姫(aa1738hero001)が四人の右隣に。ナガル・クロッソニア(aa3796)と千冬(aa3796hero001)が右端へと配置されていた。雨月とナガルのグループは友人同士の為、隣配置なのだ。
 使う食材の紹介、そして料理の手順、実戦を終えると講師は参加者に向き直った。
「必要な手順はその時にもう一度説明シマスから、安心してくだサーイ。まずは手洗いと、エプロンや三角巾がしっかりつけられてるか確認しまショウネ!」
 ショコラールは前回と同様そう言って、隣人と確認し合うことを伝え自分も確認に回る。
「何故俺は此処にいるんだ? 俺は甘い物は得意ではないんだが」
 とブツブツ呟いているのはマルコ。
「もちろんボクを手伝うためだよ!」
 すかさずアンジェリカが当たり前じゃない、って顔をして言い切った。彼女は始まる前にきちんとショコラールや参加者に挨拶をしているえらい子だ。
「お菓子作りは大好きだから今日は楽しまないとね♪」
 まだブツブツ言ってるマルコのお尻を蹴飛ばしアンジェリカは手の消毒へ向かう。
「ゼリーとアイス! 夏にはもってこいだよねっ!」
「浮かれるのは結構ですが、先ずは手洗いからですよ」
 わくわくと楽し気に弾んだ声ではしゃぐナガルに千冬が冷静に最初の手順を促す。
(結構前からソワソワしてると思ったら……)
 と、ご機嫌過ぎてずっと落ち着いていなかった自身の英雄メテオバイザーを見遣りながら心の中で呟きを零すのは國光。彼らは二回目の参加だ。
「お料理教室……しかもデザート! スイーツ! まるで僕の為にある依頼じゃないか、腕が鳴るよ。あ、そこの駄メイドは大人しく隅っこで大根でもおろしてて。つーか何で来た」
「不思議なことをおっしゃいますね、ご主じ……失礼、変態様。主の行くところメイドあり。宇宙開闢以来の常識です。ですがご主人様がおっしゃるのであれば、ご随意に……あら、これはご主人様の御手でしたか。失礼しました」
 愁治は隣のヘンリカを糸目で見遣りながら言うと、ヘンリカもすらすらと言い返す。普段から二人はこんな感じのようだ。
 全員が丁寧に手洗いを終え、エプロンや三角巾の着用を終えた。これから早速アイスとゼリーを作っていく。
「これならマルコさんも食べられるでしょ?」
 ジャジャーンとアンジェリカはゼリーに使う飲み物を取り出した。それはマルコの秘蔵赤ワイン。ふふんと無い胸を張り得意げなアンジェリカ。
「もう好きにしろ」
 と、マルコは諦めの表情で答えた。それを見てアンジェリカは絶対美味いと言わせてやると闘志を燃やす。
「ん? アイスクリームはティアだけで作ってみたいってか?」
「アイスクリームを作るのはティアに任せるのさ!」
 灰司がアイスクリームの準備を始めようとするとティアが彼の袖を引っ張り自分がやる! と元気に主張した。
「まぁ、いいけどよ。んじゃ、俺はゼリーの方を作ってみるか」
 そう言ってアイスクリームの作業をティアに任せ灰司はゼリーの下準備に向かう。
「……甘いの嫌だ」
「……と言われてもなぁ……今回基本っぽいからいきなり甘くないフローズンヨーグルトアイス……って訳にもいかないし」
 一方、凱はレシピを見ながら呟いた。甘いものが苦手な彼のことを思い智美は考える。
「今回のメインがゼリーのアイスクリーム乗せ、だから……コーヒーゼリーの方に砂糖を入れず、アイスの砂糖も心持少なめ、で作れば食べられるか?」
「……たぶん。でも薫とあやかの分どうしようか?」
 同じテーブルの薫とあやかに視線を向け智美に問いかける凱。彼はお菓子を作る、ということをしてきたわけではないのでどうすればよいか、いい案は全く浮かばない。
「砂糖混ぜてクリーム泡立てたのトッピングすれば大丈夫だと思うぞ……あやか、薫、どうかな?」
 智美が薫とあやかに問いかける。彼も料理出来るのだが、得意なのは野外でのバーベキューや燻製、炊き出しのカレー、若しくは家庭料理系だった。こういうのはあやかの方が得意だから確認する為の声掛けだ。
 二人が頷いたので智美と凱は二人で作業を開始する。
「ねぇあやかさん、アイスクリームって、味付れられるかな?」
「……やったことはないけど……かき混ぜる時にあのソース混ぜ込めば、マーブル模様にならないかしら?」
 薫とあやかも自分たちが作るアイスとゼリーの相談を始めた。
「じゃあ上の妹が苺好きだからアイスに苺ソース混ぜ込んでみて……下の2人は桃のジュース好きだからそれでゼリー作って。あと合わせるならオレンジゼリーも作ったらきっと綺麗だよね」
 三人の妹の顔を思い浮かべながら彼女達が好きなものを作ろう、と考える薫。
「で、凱甘いの駄目だし。コーヒーゼリーは凱と智美さんが作ってるから」
「紅茶のゼリーならどうかし……って、薫さん」
 あやかも考えていたがその横で薫が持参したシークヮ―サードリンク、スダチドリンク、ゆず果汁ドリンク、文旦ドリンクの四つを取り出した。これはどれもさっぱりとした味で甘さを感じにくい。
「……あぁ、凱さんそれ全部飲んでたわよね」
「うん、お中元で送ったのもこれのうちどれかって母さん言ってたし。多分普通には販売してないと思うから持ってきたんだ」
 あやかの言葉にこくん、と頷く薫。これで二人が作るものは決まったようだ。
 そして彼らの隣のテーブル。
「のう雨月、そう言えばおぬし、料理は出来るのかえ?」
 雨月に問いかけているのは巳瑚姫。ちなみに雨月は白いシンプルなエプロンをつけているが、巳瑚姫は白い割烹着を着用し二人並ぶと和洋折衷の印象を受ける。
「え?」
「え?」
 顔を不思議そうに見合わせる二人。
「……まぁ、みこよりは」
「喧嘩売っておるのか……!」
「お互い美味しいのが作れるといいですね、天海さんっ!」
 さらっと返す雨月に巳瑚姫が食って掛かる勢いのところへナガルが雨月に声を掛けた。ナガルは実家でお菓子作りをしたことはあるが教室は初めてで緊張気味だった。しかし、隣が友達の雨月だった為、その緊張も少し緩和されたようだ。
「しかし……さあ、楽しいスイーツ作り……だってのに、なんで野郎がこんなに多いんだよフザけんな! 野郎がスイーツ作ろうが食べようが嬉しくねえよ!」
 見回していた愁治がテーブルを強く叩きながら何やら叫んで荒れている。自分がその野郎の一人であることは棚に上げての発言だ。
「ノン! 老若男女、誰でもスイーツを愛し、楽しく作る姿はスバラシイものデスヨ! もちろん貴方もデス♪」
 そこへショコラールがにこやかに言葉を返す。
「さあ、メイドとしてやれることを愚主に見せなければ」
 愁治の横でヘンリカがやる気を見せているのをショコラールは暖かく見守った。


「ちゃんとやってよ!」
 手順に従い砂糖と卵黄が入ったボウルをマルコに手渡すアンジェリカ。
「解った解った」
 と、頷き、マルコは混ぜながら泡立たせる。その合間にアンジェリカは鍋を準備し始めた。
 その後ろのテーブルでティアも泡だて器を握りかき混ぜている。
「うぁぁ、思ってた以上に大変なのさー」
 中々うまく泡立たずつい弱音を口にする。
「でも美味しいアイスクリームを作りたいからがんばるのさ、負けないのさ!」
 しかしすぐに自分を奮い立たせ集中、集中、集中、と手を懸命に動かしていく。
「混ぜるのも慎重に、慎重に……」
「どうしたティア……! お前、顔が無になってんぞ……!」
 ものすごい集中力でアイスクリームの基と向き合っていたティアを見て灰司が驚きの声を掛けた。
「ん、え??? いつの間にハイジってばそこにいたのさ。へ…? 顔が無になってた???」
 本当に灰司の存在に気が付かずきょとん、とするティア。ちなみに灰司は持ってきた抹茶を使い、抹茶ゼリーを作り終え冷やしてきたところだった。流石は和菓子職人見習い。例え洋菓子とはいえきちんと手順を踏み順調に工程を終えていた。
「……わぁー、真面目にやってたから全然気づかなかったのさ」
「お、おう……真面目にやってたらそんな顔になっちまっただけか。結構泡だてたり混ぜたりするのって大変だろう? ちょっと代われ、手伝う手伝う」
「手伝ってくれてありがとなのさ、ハイジ」
 灰司がティアの手から泡だて器を受け取る。
 ティアはお菓子作りはいつも店の手伝いの合間に灰司や店のおやっさんのを見ていたし、時々大福包むのをお手伝いしてたので大変なことは何となく理解していた。そして今日、実際に自分で作って大変さが身に染みた。これからも、お手伝いを頑張るのさ! と決意を新たにするティア。
 一方、逆側のテーブル。愁治は慣れた手つきでアイスクリームを作っていく。料理に一切手を抜く気はない。女性全員にゼリーとデコレーションを変えそれぞれ違うものを作ろうとしている為、アイスクリームにあまり時間を取られるわけにはいかなかった。
 そこへ自分の主人の作業を邪魔しようと泡だて器を手にするヘンリカ。愁治に向かい泡だて器を投げるが運悪く避けられてしまい、中央の器具置き場にヒット。ガッシャーン! という物凄い音がして、参加者達の間を見回っていたショコラールが飛んできた。
 やんわりと講師に怒られ頭を下げるヘンリカ。これから他の方を手伝います、と調理器具を手にしたが、ここで生来の不器用スキルが発動。器具を盛大にひっくり返し再度大きな音が辺りに響いた。それを見たショコラールが少し考え、ヘンリカの能力者、愁治の様子を伺ってから彼女の肩を優しく叩いた。
「他の方は自分達の力でやって頂きマース。お料理教室、デスからネ!」
 そう言われると座り込んで床にのの字を書くヘンリカ。ショコラールは優しい口調で話を続けた。
「ですので、ヘンリカさんは持ち帰る瓶詰めゼリーを作りまショウ! 愁治さんは作っている暇がなさそうデスからネ!」
 ショコラールが促すようにお洒落な瓶を取り出しヘンリカに見せる。他の参加者にもその瓶は説明して渡して回っていた。床についた手を洗いなおすところから始め、不器用なヘンリカにショコラールは優しく丁寧にゼリーの作り方を一つ一つ教えながら一緒に瓶に詰めるゼリーを作る。
 大きな音にその様子を伺っていたのは隣のテーブルいた國光だ。メテオバイザーと共にエプロンと三角巾そしてお袖止めをつけている。
 メテオバイザーは最近この世界の生活にもだいぶ慣れ、道具の取り扱いも分かってきている為、始終、彼女を國光が見ていなくても大丈夫だった。
「サクラコ、アイス見てきてなのです」
「え?」
 隣を見ていた國光にメテオバイザーが声を掛ける。視線を彼女に戻し國光が一瞬戸惑ったような様子を見せた。
「メテオはこっちに忙しいのです。お願いします」
 アイスの余った材料からムースを作りながら再度畳みかけるように頼むメテオバイザー。國光は一つ頷きを返すと冷蔵庫に足を向ける。
 メテオバイザーはコーヒーをゼラチンに混ぜコーヒーゼリーを作り一度固め、その上にムースを乗せ固め、と繰り返しカップの横から見て楽しめる様に三層にしよう、と考えていた。コーヒーの風味がほろにがく、ムースが柔らかい甘みをもたらしてくれるだろう。
 アイスの経過を見てきた國光にメテオバイザーはコーヒーゼリーを一度冷蔵庫に持っていくように頼む。こんな風にこき使われているが、離れた冷蔵庫から國光は温かい視線でメテオバイザーを見ていた。悪い気はしていない。彼女の笑顔を目的にきているのだから。
 そのメテオバイザー達の後ろ三列目の右側グループ。ナガルが手にしている飲み物はメロンソーダ。
「このしゅわっしゅわがアイスと絶対合うと思うんだー!」
 と、楽しそうに言うナガル。本当はもう少しカラフルにしたい、と考えていたがお料理教室には残念ながら制限時間がある。間に合わないから今度で、と判断しメロンソーダに絞った。
 泡だて器を手にし、この時間も楽しい♪ とくるくるかき混ぜるナガルだったがふと自身の英雄に視線を向けた。
(……そういえば、ちーちゃんってこういうの作った事あるのかな。手先は器用だし、一緒にやれたら楽しいよね!)
 そう思ってナガルは千冬に泡だて器とボウルを差し出して
「折角だし、交代ずつでやろ! ね!」
 と、笑顔で言う。基本は後ろで見ているだけのつもりだった千冬だが、ナガルに言われれば参加するに決まっている。
「……ええ。マスターは次の準備を宜しくお願いします」
 交代、と言ってもナガルが手持無沙汰になるのはよろしくない、と思ったのか千冬が次の作業へと彼女を促す。そして千冬は講師の言った通り、そしてその手つきを模倣し丁寧に作業を進める。
(食べ物を作る……というのは確かに初めてですが。……成る程、これは)
 初めて行う作業に千冬は何かを思う。
 一方、そんな二人の調理を手本にしつつ友達の雨月達も作業を進めていた。
 巳瑚姫が泡だて器で懸命にボウルに入った素材を混ぜ合わせている。雨月がその間に他の物をやる予定だったが、今にもボウルをひっくり返しそうな巳瑚姫の手つきが危なっかしく片手を彼女に差し出して。
「……貸して」
 ボウルを受け取り交代して雨月はアイスクリームの基を泡立てていく。ゼリーはどうしようか、とぼんやりと僅かに悩んだ末、牛乳をチョイス。アイスを冷蔵庫に入れたらゼリー作りだ。
 そこでようやくアイスもゼリーも白いと気づく。
「白いのう」
「白いなー……んー、まぁ、いっか」
 と、巳瑚姫が混ぜ合わせを再チャレンジ。今度は雑にならない様丁寧にを心掛けて真剣に取り組んだ。
 さて、四人で一つのテーブルを囲んでいる凱達はというと。
「ゼラチンはふやかしておく、これは分量どうりに、寒天と違って適量護らないと固まらないからな」
 智美が主導でさくさくと作業を進めていた。
「お前、菓子はあやかの方が得意って言ってなかったか?」
「んー、なんかこういう一度に大量に作る簡単な菓子ならなんとか……多分あやか手伝っていたんだと思うぞ?」
 凱がその手つきに不思議そうに問いかける。智美が懸命にぼやけている記憶を探りながら答えると、凱は彼とあやかを交互に見遣った。
(本当に智美とあやかって、他の英雄に比べて現代社会に適応しまくってるよなぁ……何か此奴らの世界って、文明LVほぼ同一以上に世界が近かったんだろうなぁ……)
「凱、智美さん。手伝ってくれるかな」
 考え込んでいる凱に薫が横から声を掛ける。作るゼリーの量が多いのでコーヒーゼリーのみの凱達に救援要請を出したのだ。4人でコーヒーゼリーを入れて計7種類、となると結構な作業量だろう。
 そして、アンジェリカ。彼女はマルコが泡立てたボウルの中身をチェックし、きちんと出来ていることを確認してから豆腐を取り出した。
「細かくすり潰してね」
「こんな物どうするんだ?」
 豆腐をアンジェリカから渡されたマルコは不思議そうに尋ねた。すると「お楽しみだよ」と微笑み、生クリーム、牛乳、ボウルの中身、と順に温めていく。
 アイスを冷却させるため、冷蔵庫に入れてから次はゼリーの準備に取り掛かった。
 赤ワインは子供用にアルコールを完全に飛ばしたのと、大人用にある程度残したのと分けて温め始める。グラニュー糖を加え、火を止めゼラチンを混ぜ合わせたら、大人用と子供用解るように形の違う容器に入れた。後は冷やすのみ。
 こうして皆、段々と作業が進んで行く。
 アイスが冷却されたのを確認したアンジェリカはスプーンで混ぜる際、すり潰した豆腐も混ぜてもらうようマルコに頼む。
「混ぜるの大変だしこの為に連れてきたんだからしっかり働いてよ!」
 そう、冷却されたアイスを混ぜ合わせるのは結構な力がいるのだ。マルコは言われた通りに作業をこなしていった。


 アイスもゼリーも程よく冷却され、デコレーション作業も着々と終わりに向かっている頃、メテオバイザーが國光に頼み手の空いている人で試食の準備をしよう、という提案を各々にしてもらった。そしてその後は皆で楽しく食べよう、と。
 ショコラールも同意し真ん中のテーブルを皆が食べやすいように空ける。職員用に分けたものは冷蔵庫の奥に仕舞い、その手前に持ち帰り用の瓶入りゼリー。一番手前に試食用、と取りやすいように整理した。
 愁治がやはり作っている量が量だったので全員より少し遅れている。
 彼の作業が終わりそうなところを見計らい、全員の作ったアイス乗せゼリーがテーブルに並べられた。
 アンジェリカとマルコのアイス乗せゼリーはワインゼリーに、あっさり塩味のグリーンオリーブの塩漬けを甘い物に軽い塩味がアクセントになるようトッピングした上、アイスは潰した豆腐の食感がいいアクセントに。ビターなチョコソースで味のコントラストが追加されている。
 灰司とティアのは、抹茶ゼリーあんこ添え。初めてトライした抹茶ゼリーの味は如何ほどか、灰司自身楽しみで仕方がない。あんこも灰司の手作りだ。
 凱と智美はトッピング作業が苦手なので薫とあやかにやってもらった。作ったのはコーヒーゼリーのアイスクリーム乗せ甘味超抑え目、だ。凱の分以外は生クリームが添えてある。
 薫とあやかはオレンジ、桃を基礎にシークヮ―サー、スダチ、ゆず、文旦のいずれかを器に3等分に持って上にアイスクリームを乗せた3種のゼリーアイス乗せだ。ミントの葉をお洒落に飾り、舌が冷えすぎないようにウェハースも添えている。凱の分だけはシークヮ―サー、スダチ、ゆず、文旦の4種類を混ぜてその上に少量のアイスを乗せたものを作った。
「うちの妹達に作れるように、って観点で作っちゃったから、多分アイスが凱には甘すぎると思うから」
 と、気を遣ったのだ。
 雨月と巳瑚姫の真っ白いほわいとみるくゼリーにはクコの実が一つ乗っている。思いつかなかったのでナガル達と相談した結果だった。ついでに巳瑚姫がブルーベリーソースをかけたものが完成品だ。
 ナガルと千冬のお皿には可愛らしい猫が乗っていた。アイスクリームにチョコチップで目を作り、しゅわしゅわメロンソーダゼリーを三角に切って耳に。そしてチョコレートソースで口が描かれている。
「クロッソニアのとこの……派手、じゃのう……」
 と、巳瑚姫が驚くくらいの出来だ。
 國光、メテオバイザーが作ったのはコーヒーゼリーの間にムースが挟まれているお洒落なムースゼリー。上には絞られたクリームが乗っており、アイスは別添えでフルーツとソースで飾り付けがしてある。ナガルに習ってソースで可愛らしくハートを描いてみた。
 ずらっと並んだ皆の作品を見て灰司は「来て良かったな」と思う。どのゼリーもアイスも美味しそうだしトッピングも個性豊かで見ていて楽しい。ティアと一緒に作るのも中々楽しめた。
 そこへ最後、愁治が6種類を完成させる。女性のイメージに合わせて作ったものだ。タイトルも決めてある。メテオバイザーにはマシュマロ乗せフワフワ雪のお城アイスクリーム。ナガルにはコテコテデコレーション七味虹色ゼリー。巳瑚姫には日本の伝統あんこときなこの文明開化アイスクリーム。あやかにはキウイとみかんのフルーツデコアイスクリーム。ティアには食べる場所によって味が違うマジックゼリー。アンジェリカにはチェリーの下にはちょっと大人なビターティコアイスクリーム。と。
 そのスイーツを持って女性を口説きに行く。が、あやかは多少内気な傾向があり知らない異性には近寄りたくないので凱達3人の後ろに隠れてしまう。特に智美が守るように愁治を牽制した。メテオバイザーのところへ行けば國光から無言の圧力がかかり、その様子を見ていたマルコからは保護者としてアンジェリカの間に入られた。見兼ねたショコラールから試食を開始するので1か所に留まるよう促される。愁治のデザートは本人の希望できちんと女性達それぞれの前に並べられた。
 わいわい、と賑やかに試食が開始される。
「さぁマルコさん、食べてみてよ!」
 と、アンジェリカ。マルコのは大人用だ。大人のほろ酔いワインゼリーは塩味と豆腐の食感もあり甘いものが苦手なマルコでも美味しく食べることが出来た。美味い、と零せばしてやったり、とアンジェリカは満足げな顔をする。
「……これ。そういえば職員さん達にも差し入れするんだよねさっぱり美味しいけど凱達が作ったのは、甘さが苦手な人達用かなぁ」
 薫は試食をしながらふと職員用が仕舞われた冷蔵庫に目をやる。甘いのが苦手な職員にも配ることが出来るのはいいことだろう。
「おお……料理なぞわらわのするものではないと思っておったが、なんじゃ、中々面白いものじゃな」
 初めて作ったデザートに嬉しそうに完成品を掲げているのは巳瑚姫だ。
「ん、食う?」
 その隣で雨月はナガルと分けっこを始める。特に何も考えず自らのスプーンで掬って差し出した。ナガルははむっ、と差し出されたスプーンから雨月達が作ったホワイトミルクゼリーを食べる。
「じゃあこっちのも! 是非食べてみてくださいっ!」
 そして同じようにスプーンで掬って雨月へと差し出した。しゅわしゅわとメロンソーダから生み出される不思議な食感が雨月の口の中に広がる。もちろんそのまま千冬も巻き込まれる。自分から口にする予定はなかったが方々から勧められて大人しくゼリーを食べた。
 何かを食べる、ということをあまりしたことがなかった千冬はその行為自体に新鮮味を感じる。
「口の中で弾けますね。……これもマスターの採択があってこそ、でしょうか」
 ゼリーの不思議な炭酸が残る食感に千冬が感想を述べるとナガルは嬉しそうに笑顔を浮かべた。彼女の楽しそうな顔を見て千冬も顔が綻ぶような気がする。ほんの僅か、微笑が彼の顔にも現れた。
 さてナンパを咎められた愁治だったが、女性たちが彼のデザートを試食し美味しそうな表情を浮かべているだけで実は満足だった。残念な事に彼には『甘い物を食べる女性を見て興奮する』という特殊な性癖がある。つまり、今この状態が天国、と言っても過言ではないかもしれない。これだからヘンリカに変態と言われてしまうのだろう。
 美味しいものを食べれば打ち解けるのも早い。女性同士や仲の良い者同士は交換して食べ合ったりしている。その中、メテオバイザーが國光の手を引き輪から少し外れるように移動した。
「サクラコ……ありがとう」
 そう言って試食より少し綺麗なミントの葉とチョコが飾ってあるゼリーを國光に差し出す。
「いつも、メテオを気にかけてくれて……。本当は、戦いが嫌なこと、メテオにはわかります。メテオも同じです。でも、貴方は決して下がらなかった。戦いの先でしか見つけられないものがあるのなら、メテオは喜んで、これからも貴方の剣になります。だからこれは、今日までのお礼です。ありがとう」
 ゆっくりと一言一言大切に國光に伝えるメテオバイザー。
「……俺からも、ありがとう。今日からまた、よろしく」
 差し出された皿を受け取り國光も優しく言葉を返した。その時の彼の表情をメテオバイザーだけが知っている。
 そこでショコラールは手を叩いた。楽しい時間の終了のお知らせだ。
「名残惜しいデスガ、お時間が来てしまいマシタ! 本日はとても楽しい時間をありがとうございマース! またお会いできることを楽しみにしてマスネ!」
 にこっと笑って、恒例の挨拶をし、お土産用に全員に瓶詰ゼリーを持たせた。
 こうしてお料理教室第二回は無事終了したのだった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 希望を胸に
    アンジェリカ・カノーヴァaa0121
    人間|11才|女性|命中
  • コンメディア・デラルテ
    マルコ・マカーリオaa0121hero001
    英雄|38才|男性|ドレ
  • 薔薇崩し
    柏崎 灰司aa0255
    人間|25才|男性|攻撃
  • うーまーいーぞー!!
    ティア・ドロップaa0255hero001
    英雄|17才|女性|バト
  • エージェント
    中城 凱aa0406
    人間|14才|男性|命中
  • エージェント
    礼野 智美aa0406hero001
    英雄|14才|男性|ドレ
  • 癒やし系男子
    離戸 薫aa0416
    人間|13才|男性|防御
  • 保母さん
    美森 あやかaa0416hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • 綿菓子系男子
    天海 雨月aa1738
    人間|23才|男性|生命
  • 能面と舞う
    巳瑚姫aa1738hero001
    英雄|23才|女性|ソフィ
  • 跳び猫
    ナガル・クロッソニアaa3796
    獣人|17才|女性|回避
  • エージェント
    千冬aa3796hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • きっと同じものを見て
    桜小路 國光aa4046
    人間|25才|男性|防御
  • サクラコの剣
    メテオバイザーaa4046hero001
    英雄|18才|女性|ブレ
  • エージェント
    天宮 愁治aa4355
    獣人|25才|男性|命中
  • エージェント
    ヘンリカ・アネリーゼaa4355hero001
    英雄|29才|女性|カオ
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