本部

招かれざる隣人

雪虫

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
12人 / 4~12人
英雄
12人 / 0~12人
報酬
無し
相談期間
4日
完成日
2016/06/19 23:39

掲示板

オープニング

●代償
 HOPE職員、佐東はベッドの上で項垂れる一人の青年に視線を落とした。凶暴な獣のようにギラついていた瞳は光を失くして虚ろに開かれ、その傍らには慣れない車椅子に顔をしかめて座っている彼の英雄の姿がある。佐東は重く息を吐き、彼らにとっては死刑宣告にも等しい事実を口にする。
「結論から言おう。詳しく調べた結果君の背中と花陣君の両脚にマガツヒのシンボルマークがあり、どうやら君達のリンカーとしての能力に制限を掛けているようだ。言わば呪いのようなものだ。花陣君の両脚が動かないのも呪いの影響と思われる。恐らく、その呪いを掛けた愚神、パンドラを倒さない限り解ける事はないだろう」
 佐東の言葉に李永平(az0057)は顔を一層蒼白にした。そんな姿は見せたくないのに、両の拳が震えるのが止まらない。
「念のために言わせてもらうが、HOPEのエージェント達が到着した後パンドラは君に一切接触はしてないそうだ。気を悪くしないで欲しいんだが、その……」
「分かってるよ……これは俺が招いた事だ。兄貴にいい所見せようと粋がって、一人で飛び出して馬鹿やった……誰も責めるつもりはねえ。これは全部俺のせいだ。
 けど……」
 永平は、包帯の巻かれた右腕を自分の左肩へと伸ばした。血が滲む程食い込ませても、しかし忌まわしい敵のシンボルに爪が掠る事さえない。
「こんなものを背負わされて、俺達は古龍幇に、兄貴の所に、帰れなくなっちまったじゃねえか……!」
 肌に爪を喰い込ませたまま、永平は大きく叫んだ。恥も外聞もなく、狂った獣のように吠える事しか出来なかった。

●依頼
「お願いでござる!」
 ガイル・アードレッド(az0011)はエージェント達に向かって深々と頭を下げた。その隣に立つキャシーも、192cmの長身からエージェント達に視線を向ける。何故永平の退院日に二人がいるのか、その理由をガイルがサングラスの下から語り出した。
「永平殿が敵のトラップのせいでクーロンパンに帰れなくなったと聞いたでござる。それで行く所もないと聞いたので、ミー達の住むナニカアリ荘におサソイしたのでござる!」
「それでせっかくだから歓迎会でも開こうと思ったんだけど、そういう雰囲気じゃないっぽいでしょう? でも何もしないのも寂しいし、かえって大騒ぎした方が気が紛れるんじゃないかと思ったのよね~ん」
「それで、ミナサマにパーティーに来て頂きたいのでござる! 今日パーティーをやるスケジュールで、永平殿と花陣殿もごイッショにと……」
「エージェントの皆様ちゃんに無理を頼むようで申し訳ないけど、あたし達だけじゃ力不足だと思うのよねん……別に永平ちゃんと花陣ちゃんを無理に励ます必要はないわん。ただパーティーに参加して思いっきり楽しんでくれればそれでいいのよん」
「永平殿とはイロイロあったでござるが、拙者、これをチャンスに永平殿とナカナオリがしたいでござる!」
「時間は今日の夜7時、かぐやひめんよ~ん。貸し切りだから18歳未満のみんなも大歓迎よん。もちろんそれ以上のアダルトちゃんもねん」
「それでは、よろしくお願いでござる!」

解説

●かぐやひめん
 キャシーの経営するオネェバー。貸し切りのため他の客はおらずスタッフもキャシーのみ
 今回入れるのは1階:ホール、ステージ、キッチン、お手洗い。2階:ベランダ(1階奥の階段から行ける。キャシーが気付いて人払いしてくれるので内緒話にどうぞ)
 
●飲食物
 酒、ジュース、お茶類、お菓子、フルーツ、おつまみ等が各種取り揃えてある。本格的な食事は要望があればキャシーが用意

●NPC情報
 李永平
 劉士文に心酔する19歳の青年。パンドラと決着をつけるまで古龍幇に帰らないつもりでいる
(PL情報)
 負い目で士文に自分から連絡を取れず、花陣と顔を合わせられない。肩や背中に触れようとすると拒否反応を示す
 協定は「香港を愚神の手に渡さないため」と認識、HOPEに留まるのはパンドラと決着をつけるため。HOPEに反感を持たれるのは当然と考えており、歓迎される方に戸惑いを覚える。呪いはリンカーとしての能力と花陣の脚にのみ作用し永平個人の身体能力に影響なし
 
 花陣
 永平の英雄。永平と同じく士文に心酔している
(PL情報)
 呪いについては「パンドラを倒しさっさとケリをつけるだけ」という認識。HOPEへの拘りは特になく、どのような対応もそのまま受け入れるつもり
 
 ガイル・アードレッド
 永平とこれを機に歩み寄りたいと思う反面、ちょっとビクビクしている
 
 デランジェ・シンドラー
 ガイルの英雄
 
 キャシー
 オネェさん殿

●その他
・士文には「HOPEの回線を使い」「永平に関する事限定で」連絡を取る事が可能
・未成年の飲酒・喫煙NG
・過度なお色気はマスタリング対象
・人目につく所での暴力行為はお控え下さい
・NPCは特に要望がなければ描写は最小限orなし
・キッチンに入りたい方は要望あれば可
・女装希望のある方は衣装貸し出し有

リプレイ


 倉内 瑠璃(aa0110)はフリフリドレス姿で絶句した。確かにオネェバー「かぐやひめん」に絶句した事もあったが、今回は理由が違う。
「フィリス?」
「何ですかラピスラズリ様?」
「かぐやひめんのキャシーさんからの依頼と言ったよな?」
「ええ、確かにキャシーさんからの依頼、とは言いましたね」
「なのに女装である必要がないって、騙したな!?」
 瑠璃はノクスフィリス(aa0110hero001)に怒鳴りつつビッと周囲を指差した。先ではGーYA(aa2289)が世良 霧人(aa3803)に
「初めまして。奥様にはお世話になっています」
と初顔合わせの挨拶をし、御代 つくし(aa0657)とメグル(aa0657hero001)が呉 琳(aa3404) と濤(aa3404hero001)に
「リンくん、タオさん、こんにちわー!」
「どうも。今日はよろしくお願いします」
と親しげに話し掛けていた。その光景がオネェバーに合っているか否かはともかく女装の必要がないというのはよく分かる。
「騙したとは失敬な。確かにキャシーさんとかぐやひめんの名前は出しましたが、女装が必要とまでは言いませんでしたよ?」
「うぐ……!?」
 性悪魔族メイド服の反論にラピスは一瞬で撃沈した。そんなラピスに金髪ゴリ、もとい大柄オネェが近付きラピスの肩をガッと掴む。
「ラピスちゃん今日も可愛いわ~ん。来てくれてどうもありがとね~ん! 皆様ちゃんも今日は楽しんでいってね~ん」
 かぐやひめんの主キャシーの言葉に集まったエージェント達は店の中へ入っていった。シルミルテ(aa0340hero001)はキャシーに近付きシルクハットを片手で押さえ、もう片方でスカートの裾を軽く摘みちょこんと腰を低くする。
「お世話にナリまス」
「あらキュート。こちらこそ今日はよろしくね~ん」
「キャシーちゃん、ちょっとお願いあるんだけど~」
 キャシーが振り返ると虎噛 千颯(aa0123)と白虎丸(aa0123hero001)、琳と濤が大量の袋を手に立っていた。琳が腕を上げ大量の花火をキャシーの視界へと映す。
「なぁキャシー、これ隠しておいてくれるか? 最後に皆で使いたいんだ!」
「花火出来そうな場所ってある? パーティー終わったら花火大会したくてさ~」
「近くの河原なんてどう? ちょっと歩くけど折角だから広い方がいいわよねん?」
 キャシーの提案に四人は頷き、キャシーのたくましい腕に花火の袋を預けていった。そして店に入ろう、とした所で白虎丸が千颯にぼそりと告げる。
「これの代金は千颯、お前の貯金から差し引いておくでござるよ」
「そんな白虎丸ちゃん! がおぅ堂から持ってきたんだしいいじゃない!」
「ダメでござる。明朗会計でござる」
 白虎丸はきっぱり言いのけスタスタと歩いていった。千颯はさよなら3万、とがっくり項垂れ、そんな千颯に琳がこっそり話し掛ける。
「ちはや……人間は好きな食べ物食べると幸せだっていうよな……? 永平さんも人間だからそうだよな?」
「そうだぜ! 美味しいものを食べると幸せになるんだぜ! 永平ちゃんも同じだ! さぁ琳ちゃん突撃だぜー!」
 千颯は琳と肩を組むと、先に入った仲間を追いかぐやひめんの扉をくぐった。


「とーりーまっ! 今回は俺に任せときな相棒」
 稍乃 チカ(aa0046hero001)は通常運転の快活さで邦衛 八宏(aa0046)に宣言した。八宏は相棒とは対極の無表情でボソボソ返す。
「お願いします……こういうのには、不慣れ……ですし、それに……」
 八宏は愛用のスマホを握る手に力を込めた。「あの愚神」からの接触が必ずあるとは言えないが、バレれば永平を刺激する。それを危惧し他のエージェントやHOPEにも秘匿にしている程だ、不要な真似はしたくない。
 それに永平達を歓迎しようという心に偽りないが、八宏は先に述べたように言葉を掛けるのは苦手だ。
「僕は……料理に専念しようと、思いますんで……その前に……」
 
『御代様のご迷惑でなければ、劉様に李様たちのお好きな……出来れば、菓子類の類いを、お伺い出来ますでしょうか』
 八宏の書き込みを確認しつくしはスマホを一時仕舞った。ここに来る前に士文と連絡を取りたい旨を職員へ伝えたが、それが叶うかは今はまだ分からない。
「知ってる人がいっぱいだねー! たくさん飲んで食べて楽しもうね!」
「そうですね」
 目的が果たされなかったとしても、メグルはその言葉を飲み込んだ。少し離れた所で木陰 黎夜(aa0061)が小さく懸念を滲ませる。
「歓迎会なら、楽しくやれた方が、いい、よな……?」
「そうね。暗い雰囲気よりはずっと、ね」
「多少は縁のある身だ、力になれるのであれば悪くなかろう」
「……ん、ごっざる、ごっざる♪」
 アーテル・V・ノクス(aa0061hero001)に麻生 遊夜(aa0452)が言葉を続け、ユフォアリーヤ(aa0452hero001)はガイルへと尻尾をふりふり突撃した。そのままガイルが押し倒されすごい音がした気がしたが、切実にまったりしたい遊夜は見なかった事にした。
「俺は暫く一人を満喫しつつ菓子摘まんでお茶タイムだな。騒ぎに来てまったりするってのも変な話ではあるが。
 そういや、花陣さんにゃ直接の面識ねぇし、ちと話をしておくかね」

「く、女装の有無を確認しなかったのは確かに俺の不手際だけど……」
 瑠璃は有り余る悔しさに強く拳を握り締めた。毎度同じような手に掛かっている、と考えるのは止めておく。
「ま、折角用意したんだ、このまま女装姿で給仕係でもやってやるか……それに、ラピスちゃん可愛いもんねっ♪ ……こほん。お前もやれよ、フィリス?」
 瑠璃は咳払いで誤魔化しつつメイド服魔族に視線を向けた。普段であれば瑠璃を揶揄う台詞が入るが
「ふふ、誰に言っているのですか?」
(これは多分今日は俺が苦労しないタイプだな)
 瑠璃は直感し今日の犠牲者に同情した。同情するだけで助けになんて入らないが。
「ま、フィリスの気が変わらない内に……ん?」
 用意されたつまみを持ちテーブルに向かおうとした所で、見知らぬ男が壁際に立っているのに気が付いた。李永平、今回のパーティーの主役だが歓迎ムードに戸惑っている。瑠璃は一先ず皿を置き、ドリンク片手に永平に声を掛けに行く。
「はーいお兄さん? そんな所に居ないでみんなの輪の中に入ったら?」
 瑠璃の言葉に永平はびくりと顔を上げた。最初はラピス口調にしてみたが、瑠璃は今度は「男」として永平に言葉を投げてみる。
「ま、俺はあんたに対してどうこう言う資格はないけど、折角歓迎してくれてるんだ。それを断るのも野暮ってもんだと思うぞ?」
「……分かったよ、気ィ遣わせて悪いな、レディ」
 永平はそう言うや壁から離れ歩いていった。男だと見抜かれようが見ぬかれまいがちょっと位揶揄うつもりでいたのだが、全く気付いていないようだ。ニブい。
 と、瑠璃に思われているなど露知らず永平は端の席に腰を下ろした。それに気付いた千颯が率先して絡みに行く。
「永平ちゃんお久~、ってあれ? どうしたの? 今日は借りてきた猫ちゃんみたいだぜ~?」
「うむ、この間の猛獣の様な覇気が感じられないでござるな」
「どうでもいいだろ」
「さてはて、明るい酒が飲みたかったが、あれじゃそうもいかんか」
 様子を見たクレア・マクミラン(aa1631)がグラスに伸ばした手を止めた。それをリリアン・レッドフォード(aa1631hero001)が微笑みながら覗き込む。
「心配?」
「さぁな。だが折角の酒を邪魔されるのは癪だ」
 クレアは言うや一人で永平へと歩いていった。邪険にされても気にせず突撃絡み酒を目論んでいた千颯だったが、クレアの真剣な空気を感じ頷いてその場を譲る。
「クレアと申します。傷の具合を見せてもらっていいですか? 衛生兵として、先日関わった者として気になりますので」
 クレアの言葉に永平は「背中は見るな」と釘を刺した。クレアは見える範囲の傷と右腕の具合を確認し再び永平へ視線を戻す。
「個人的に伝えておきたい注意点があるので来て頂いてよろしいですか」
 立ち上がったクレアに永平も憮然と立ち上がった。ベランダに密かに誘導し、到着した所で煙草を咥え永平にも箱を向ける。
「喫うならどうぞ」
「気分じゃねえ」
「で、劉大人にはなんと?」
 つまらない駆け引き一切なしの、ストレートな切り出しに永平は声を詰まらせた。クレアは紫煙を吐きつつ永平に鋭い視線を向ける。
「連絡していないな」
「関係ねえだろ」
「甘えるのも大概にしろ負け犬。劉大人への尊敬の念など口だけか、義と筋ぐらいは通したらどうだ」
 クレアの言葉に永平は強くクレアを睨み付けた。殴り合いに発展したらロイヤルアーミーの技術を御覧に入れよう、それ程の気概でクレアは更に挑発を重ねる。
「劉大人もお前のパートナーもそんなに器が小さいのか」
「んな訳ねえだろ! でも、ただ、申し訳ねえ……」
「そうだ、それがお前の考えだ。負い目も何も、口に出さねば誰にも伝わらない。
 そして、お前が口にしたように劉大人もお前のパートナーも狭量ではない。回線は用意する、伝えろ。嘘偽りなく、考えを、心を。いつ死ぬか分からん世界だ、つまらん悔いを残すな」
 永平は一度黙ったが「分かったよ」と呟いた。頼りない返答にクレアは容赦なく追撃する。
「言った事を覆すなよ。……さて、カウンセリングは終了です。私は飲み直しますが、どうしますか?」


「うぇーい! 楽しんでる~? こういう場所は楽しまないと損よ~?」
 千颯は琳と肩を組みすでに何杯目か知れないジョッキを高く持ち上げた。酔ってはいないが、酔いはなくてもテンションアゲアゲで騒げるのが千颯である。
「花陣様は永平様とはお考えが違うように見えます。どうお思いですか、今の状況?」
 リリアンは車椅子での参加となった花陣へと近寄った。あまり表情に出してない花陣が少し気になった。花陣はリリアンを認めると生意気そうに言葉を返す。
「パンドラぶっ倒して帰るだけだろ? それ以外になんかあんの? お姉ちゃん」
 本心か強がりか量りかねる表情だった。そこにチカが参戦し車椅子に手を掛ける。
「ま、なんだ、また近いうち彼奴の懐に飛び込まなきゃならねぇ時が来るだろうけどよ? それまでに精々俺らの事を品定めしときな。存外、お前らが考えてるよか気楽な連中ばっかだし。
 俺ぁンなガラじゃぁねーがな、永平がとっ捕まったって聞いて血相変えてた奴らの顔はちゃぁんと見てんだぜ? それが何よりもの答えだぜ、きっとな。このドンチャン騒ぎもだよ、彼奴らマジで歓迎ムードなんだぜ?」
「コレ美味しイヤツ! はイドーぞ!」
 突然シルミルテが花陣の足下から顔を出し気に入りの菓子と飲み物を差し出した。花陣は目を丸くした後「サンキュー」とそれらを受け取り、ジッと見つめる桃色の瞳に感想を求められていると察し、菓子を口に放り込みニッと笑みを浮かべてみせる。
「うまいわ」
「脚治スお手伝イ、さセテネ」
 シルミルテの一言に花陣は顔をきょとんとさせた。それからやれやれと首を振り三人へと視線を向ける。
「ま、なんだ、よろしく頼むわ。どうもお節介はたくさんいるみてえだし」
「仲良くシテネ!」
「はいはい、よろしくな、うさ耳」
 シルミルテは自分と似た色の瞳を覗き込みにこり笑みを浮かべると、「もっトお菓子持ッテクる」とテーブルへと歩いていった。「デランジェチャン。あレ取っテー」と今度は同じく桃瞳仲間のデランジェにぴょこぴょこするシルミルテを見送った後、今度は遊夜が花陣達へと歩いてきた。
「よぅ、楽しんでるか?」
「ちょっとお節介な位だぜ」
「はは。所で、折角共同戦線張るんだ、情報のすり合わせと行こうぜ。お互いパンドラ潰すのには異論ない訳だし、問題が起こってそれが滞るよりは良いだろ。ま、俺としてはただ仲良くやれりゃそれでいいんだがね。
 そういや何か食いたいもんあるか?」
 首を傾げた花陣に、遊夜は傷の走った目を細め腕を軽く叩いてみせる。
「作れるもんなら作ってやるぜ? 孤児院オリジナルになっちまうが、これでも腕には自信ありってな、ガキ共にも評判なんだぜ?」
「お任せで何か頼むわ。俺は結構うるさいぜ?」
 花陣は生意気にニヤリと笑った。その態度に大丈夫そうだと判断したリリアンは、パーティーを楽しもうとワイングラスへ指を伸ばした。


「永平さんと花陣さんの歓迎会か。でも僕達は殆ど関わり無いんだよね。何をすればいいんだろう?」
「関わりが無くとも、楽しんで貰う事は出来ると思いますよ?」
 クロード(aa3803hero001)は霧人へ返し黒猫の顎に手を添えた。少し考え「良い考えが浮かびました!」と青い瞳を主へ向ける。
「えっ本当?」
「はい! 私にお任せください!」
「その前に料理をお願いしようか。なんかお腹が空いちゃって」
 霧人はドリンクを置くとクロードを伴いキッチンへ赴いた。キャシーの姿が見えたので横に移動し声を掛ける。
「キャシーさん、何か料理って出来ますか? サンドイッチとか簡単な物でいいんですけど」
「キャシー様、お手伝い致します」
「じゃあ冷蔵庫から好きな具をお願いね~ん」
 キャシーの言に従い二人は冷蔵庫の扉を開けた。少し離れた所で八宏が時折険しい顔でスマホを握り締めながら、淡々とボールの中身を泡立て器でかき混ぜる。
「キャシーお姉さん、ちょっと相談が……」
 キャシーは黎夜に話し掛けられ廊下へと移動した。黎夜は声を潜めキャシーだけに声を伝える。
「キャシーお姉さんは、恋、したこと、ある……? うち、初めて、怖い以外に、強い感情、持ったんだ……。恋じゃ、ねーんだけど……たぶん、似た感じ……そいつのこと、ずっと考えてる……。この感情を、どうしたらいいか、わからなくて……」
「まずは『この人が気になる』っていう自分の気持ちに素直になる事。小さな事だけどそうして初めて見えてくるものもきっとあるわん。それでまた分からなくなったらお姉さんに相談しなさい」
 そう言ってキャシーはバチコーンとウインクした。とても些細な言葉だったが、相談していいと言ってくれたから黎夜は一度頷いた。
「分かった……それじゃ調理手伝う……今日は、いっぱい食べるヤツ、来てるから……おつまみとかだけだと、きっと足りない……」
「ええ、よろしく頼むわ~ん」
 黎夜はキッチンへと戻り菜箸を手に取った。黎夜はまだ中学生だが、普段からアーテルと調理を行い5段階評価中4の料理レベルを持っている。
「さて、私も給仕係を致しますわ。主にルゥさんへの食事の供給となりそうですが。良く食べる子は育つと言いますものね? キャシーさん、限界量を聞いてもよろしいですか?」
 その上で供給し続けますけど、と性悪魔族はくすりと笑った。しかしキャシーはその企みに豪快に己の腿を叩く。
「足りなくなったら買ってくるから大丈夫よ~ん。米俵10俵でも追加してあげるわ~ん」
「キャシーさん、お願いが」
 今にも米を買いに行きそうなキャシーに霧人とクロードが声を掛けた。キャシーは二人の計画を聞くと「もちろんOKよ~ん」と了承した。


「やっぱコイツの胃袋はレガトゥス級じゃねェのか……!?」
 東海林聖(aa0203)はLe..(aa0203hero001)の食べっぷりにしばし言葉を失った。綺麗に盛り合わされたデザートを前に「くっ崩したくない」と葛藤を繰り広げるまほらま(aa2289hero001)とは対照的に「……なに?」という顔で料理を口内へ消していく。だが慄いてばかりもいられない。今回の目的には永平と絡む事以外にも「飯も食う!」も入っている。
「ルゥが色々食い尽くす前に食べる……! 食う事に掛けてもアタッカーの姿勢で行くぜッ!」
 とは言ってもそれなりにちゃんと味わうが。と、永平がクレアと共に戻ってきたのが視界に映った。聖はさっそく皿を手に永平の近くに腰を下ろす。
「よう、食ってるか。ちゃんと食わねーといざって時戦えねーだろ! あと肩の調子は大丈夫かよ? あぁ、外しちまったからな。ワリィ!」
 訝しげな永平に聖は軽く右手を上げた。永平は「ああ」と返事をし再び正面に顔を戻す。
「……ヒジリーうるさい……食事中は静かにしなよ……」
 と、Le..が口をもぐもぐさせつつ二人の元に現れた。なお速度は聖の三倍。目的は沢山食べる事。あと永平の心境は少し気になる……と沈む男に視線を向ける。
 と、突然室内が暗くなり、ステージに強く光が灯った。壇上にはシルクハットと燕尾服の男が立っており、かなりノリノリな様子で大きく声を張り上げる。
「レディース&ジェントルメン! これより、ささやかではありますがマジックショーを開演いたします!」
 誰おまえ。正体を知らぬ者達の頭を共通の疑問が過ぎった。謎の燕尾服、もとい共鳴して人間の姿となったクロードが、手始めにトランプをシルクハットに入れ噴水のように湧き上がらせた。拍手が起こった所で一度お辞儀し客席へ視線を向ける。
「永平様と花陣様、ステージにお願いします」
 戸惑う永平を聖が小突き、花陣はチカに車椅子を押され壇上へと上がっていった。クロードがシルクハットから花束を二つ取り出し、驚く二人に色の違う花束をそれぞれ向ける。
「それでは、永平様と花陣様にこのお花をプレゼント致します!」
 花束がクラッカーのごとく破裂し、二人の頭上から花びらが舞い降りた。目を輝かせる花陣にクロードがぺこり頭を下げる。
「これにてマジックショー閉演です。ご覧頂きありがとうございました!!」
「マジックなんて初めて見たぜ。なあ永平」
「……」
 永平は一瞬黙したがクロードに小さく「ありがとう」と呟いた。永平はそのまま別の所に行こうとしたが、それをつくし、黎夜、琳、そして聖が捕まえる。
「永平さん、何か好きなお菓子ある? 邦衛さんがお菓子作ってくれるって!」
「好きなもの、食べられないもの、あれば……どんな時も……おいしく食べられることは、大事なこと、だから……可能であれば要望には応えたいし、好きなものを出したい……」
「永平さんの好きな食べ物ってなんだ? 元気が出ない時は好きな食べ物を食べると良いぜ!」
「戦うためだぜ、ほら!」
 年下四人に囲まれた永平は眉を寄せ、諦めたように小さな声で呟いた。
「べちゃべちゃした炒飯……菓子はあんま分からねえ」
「待っててな! キャシー達に頼んですぐ作ってもらうからな!」
 聞くや琳と黎夜はキッチンへと走っていき、沈黙する永平につくしがクッキーの皿を出す。
「試しに、これとかどうかな?」
 少々不格好なクッキーの下には「同じ釜の飯を食う仲に、なれればと思いましたので」という八宏のメモが挟んであった。永平は試しに一つ取り口の中に放り込む。
「うまい」


「……ん、ござる、元気だった?」
 ユフォアリーヤはガイルの頭を抱きかかえ機嫌良さげによしよしした。ガイルは顔を真っ赤にしながらちらり永平に視線を向ける。
「……ん、何か、心配事?」
 ユフォアリーヤの言葉にガイルは大きく肩を揺らした。ちらちら永平を見るガイルをユフォアリーヤがじっと見る。
「……ん、ヨンピョーと、仲良くしたいんだね」
「どうして分かったでござる!?」
「ガイルさん。あの時は念のために変装をしましたけど、今日は彼とお話しできそうですか?」
 一段落ついたアーテルが二人に声を掛けてきた。俯くガイルを励ますようにアーテルは言葉を紡ぐ。
「俺に出来る事は貴方の背中を押すくらいです。仲直りしたいと思っているならそれを伝えてしまえばいいんですよ。堂々と、ね?」
「貴方が仲良くなりたいという意思、その思いの丈をぶつけては如何ですか?」
 ノクスフィリスも参戦しガイルの手にドリンクと軽いスナックを握らせた。その時ユフォアリーヤの頭を
(……ん、ほんの少しだけお酒飲ませてからの方が良い?)
と不穏な考えが過ぎっていた。 

「お葬式じゃないんだからもっとテンション上げてこー! どうよ永平ちゃん炒飯は」
 千颯の言葉に永平は顔を上げた。浮かない顔は変わらないがスプーンが止まる事もない。
「悪くない」
「よしよし。みんな楽しんでる~? ほらガイルちゃんも一緒においで~!!」
「……ん、それじゃ行こう?」
 ユフォアリーヤが何故か号泣しているガイルの手を引きつつ現れ、ガイルが「永平殿!」と泣きながら永平へと突撃した。「何すんだ離せ」と騒ぐ永平をユフォアリーヤが覗き込む。
「……ん、ヨンピョーも、悩み事? ……ん、顔を合わせづらい?」
 千颯になんとかガイルを剥がしてもらった永平は、ユフォアリーヤの言葉に表情を曇らせた。ユフォアリーヤはするりと近付き永平の頬に手を添える。
「……ん、大丈夫、相方を信じなさい。詳しくは知らないし、こんなことくらいしかできないけれど、理屈こねるよりはぶつかっていった方がらしいと思う、お互いに」
 見透かしたような言葉に永平は小さく頷いた。「……ん、仲良くしよう、ね?」と笑いながら手を伸ばされ永平は慌てて顔を上げる。
「っ、何す」
「……ん、怖い……ぐすん」
「……つ、次はやるな……」
 ユフォアリーヤは満足気に永平の頭をなでなでした。千颯がわずかに笑みを見せ店内に声を張り上げる。
「そんじゃあ花火大会に、みんなで河原へ大移動だ!」


 GーYAは少々苦い顔で夜の道を歩いていた。酒の流れで女装させられ「やめろよ! ツインテじゃないと妙な恥ずかしさが……っ」と抵抗したにも関わらずまほらまにスマホで撮影された。なおツインテとは共鳴時の姿であり、その姿にはGーYAの過去が籠められているが……
「とりあえず花火は楽しまないとな」
「いつきちゃん、花火だって!」
 後ろではつくしが樹の隣ではしゃいだ声を上げていた。目的はまだ果たされていないがみんなと、一番の友達と楽しむ事は忘れない。
「大勢で花火なんて初めてですね」
「ね! でもやっぱりみんなでが楽しいね!」
「えぇ。火の用心だけはしっかりしておきましょうか」
「到! 着! そんじゃみんな始めるぜ~!」
 メグルの注意に千颯の開催宣言が続き花火大会は始まった。奮発した分も合わせ、千颯は率先して花火を配り場の雰囲気を上げていく。
「んじゃ! 次行きますかー!」
「これが花火ですか。とても綺麗な物ですね!」
「綺麗だろ? これが日本の夏の風物詩さ!」
 まだ梅雨明けてないけど、とは霧人はクロードに言わなかった。と、クロードが近くにいたガイルへと視線を向ける。
「ところで、ガイル様はニンジャなのですか?」
「そうでござる!」
「おお、そうなのですか! それでは……ドーモ、ガイル=サン。クロードです。これは、ニンジャが必ずするというアイサツです。古事記にもそう書いてあるのです」
「そうでござるか!」
「……」
 そっとしておこう。二人のやり取りに霧人は思った。

 チカは花陣の車椅子を押し強引に皆の輪の中へと滑り込ませた。そして花火を一本持たせ周囲に声を張り上げる。
「チキチキ線香花火デスマッチやろーぜー! 最初に落としたやつふわふわ姫ゴスロリ着る事! 拒否権無し!」
「おい永平、やって負けろ」
「……」
「色々これから大変だけど、今はそんなの忘れて楽しんじゃいなよ!」
「辛い時こそ笑え! でござるよ。怖がらないでいいでござるよ」
 千颯と白虎丸に花火を渡され永平は視線を落とした。どう使えばいいか分からず首を捻る永平に、濤が昔の琳と重ね優し気な表情で視線を向ける。
「花火に関しては俺は素直にやるぞ。フィリスはチャッカマンを配ったり……ってルゥに食後のデザートをやるのはやめろ!」
「永平……お願いが、ある……」
 瑠璃がノクスフィリスにツッコミを入れた頃、黎夜は永平に声を掛けた。完全に近寄らないまでも真っ直ぐ永平の事を見つめる。
「パンドラを見つけた時、情報を得た時……できればうちらを呼んでほしい……別の任務があって、手が離せないとか、大怪我して動けないとか……そういうのがない限り、行きたいって思う……
 うちに正義なんて、ない……間違ってるって言う、権利もない……ただ、あいつの行いを、うち自身が認めたくないだけ……
 貴方のことは、正直、怖い……でも……過ちから、何かを学び取ろうとする姿は、嫌いじゃねー……」
「……突然、生身で飛び出したりすんじゃねえぞ」
 永平は小さく呟いた。そこに琳も突撃しギザ歯を開き訴える。
「俺は永平さんも花陣さんのことも好きだな……良い人だから!」
「良い人じゃねえ、俺は」
「俺が知ってる悪い人間はもっとこう……違う気がするから!」
 迷いのない素直な言葉に永平は押し黙り、眩しいものにそうするように斜めへと顔を背けた。

「花火か! 楽しそうだな! 行くぜ、即興・千照流……八双閃華! 振りまわ」
「……ヒジリー、反省しようか……」
 Le..は八本の花火を両手にした聖を(良く解らない原理と動作で)上空へとぶん投げた。題して人間打ち投げ花火。顔馴染みの戦友達とこうして過ごすのも珍しい、とテンションが上がったとしても良い子は真似しちゃ(以下省略)。

 つくしは懐の振動に気付き通信機を取り出した。耳に当てると用事を頼んだ職員の声が響いてくる。
「ようやく連絡が取れた。今替わる」
「劉士文だ。永平の件と聞いたのだが」
 聞こえてきた男の声につくしは表情を引き締めた。息を吐き、真剣な面持ちで士文へと問い掛ける。
「永平さんの、背中のマガツヒのシンボルについてご存じですか?」
「知っている」
「永平さんに何も言わないんですか」
「……」
「私の勝手な感情ですけど」
 つくしは一度言葉を切った。届くよう、伝わるよう、希望章を握り締め感情の全てを込める。
「せめて、どうなっても部下には変わりないとか、そういう言葉くらい欲しいんじゃないかなって、思うんです。成して帰って来いとか、戻って来いとか……そんな未来くらい、あってもいいんじゃないですか……っ?
 『古龍幇が未来を語れるような組織だと、君達「HOPE」は思うのか』……あの時、返事をしそびれてしまったから……
 私達は『HOPE』です。希望です。あなたが未来を語れないと言うなら、私が語ります。古龍幇とHOPEが力を合わせれば、未来だって語れるって。仲間が結んだ協定は、その為にあるんじゃないかって、私は思ってるんです。
 まだひよっこのエージェントですけど! でも思うくらいはいいですか……っ! 願って努力するぐらいは……!」
「心強い言葉だ。だが」
「御代さん、ちょっと貸して。すいません、ジーヤです。俺の事覚えていますか」
 その名前に士文は「ああ」と声を返した。未来を見届ける為赴いた、あの時と同じ心境で士文へと言葉を述べる。
「俺は永平さんと関わり薄いし、救出依頼にも関わってないからあれこれ言える立場じゃないけど、幇として有益だと公認されなきゃ自分の気持ちや思いを伝えられないって、組織の長って大変ですね」
「……」
「オブラートに包まれた言葉は絶望を知った人間には届かないですよ。自分の言葉でちゃんと答えてあげてよ。生きる希望を与えられるのは彼の『世界』である貴方なんだ。
 エゴだか何だか知らないけど、中途半端な対応する位なら切り捨ててやれよ!」
「ごめんなさいねぇ、ジーヤの英雄まほらまよ。ジーヤは余命宣告受けた病人だったから、誰よりも絶望を知っているわ。かけられた言葉の裏もね。彼の言葉、軽く考えないでほしいわ」
 まほらまが替わりGーYAの言葉を後押しした。本音を言えば直に永平に逢って言葉をかけて欲しいが……
「永平はいるのか」
 その言葉に、つくしとGーYAは永平の元へ赴いた。士文と聞き迷いを見せる永平に千颯とクレアが喝を入れる。
「連絡とってないみたいだけど、士文ちゃんは1度の失敗で見捨てる位ケツの穴の小さい男なのか? 違うってんならちゃんと連絡しろ。今、永平ちゃんを一番心配してるのは誰だと思ってる? 士文ちゃんだろ? 子を心配しない親が何処にいる。つまらない意地張ってないで元気な声聞かせてやれよ」
「伝えろ、心を」
 永平は通信機を受け取ると離れた場所へ歩いていった。そしてしばらくして戻り、つくしへ通信機を押し付ける。
「情けねえ、あんな事言わせるなんて……ケリつけて帰る、絶対だ!」
 何を言われたのかは分からないがとりあえず一歩進んだらしい。千颯は笑みを浮かべて永平の頭を撫でる。
「全く手のかかる大きな子供だ!」
「ガキ扱いすんじゃねえ……」
「劉さん、永平さんの写真を後で送れたら送ります。いいですか?」
 通信機からのつくしの言葉に士文は「頼む」と一言返した。目的を果たしたつくしは顔を上げ、頭を擦っている聖へと声を掛ける。
「しょーじくん、私にも花火ちょうだいー!」

 濤は「キャシーさん、花火後始末用にバケツをお借りできますか?」と千颯と共に借りたバケツに水を汲み地面に置いた。なおキャシーに対しては「強そ……レディーとして接する(絶対逆らわない)」と認識が出来ている。
 顔を上げると視線の先に「かける言葉が見つからない時は、まずは一緒に何かすれば良いんだぜ! 俺の友達が教えてくれたんだ!」とガイルを永平の近くへ引っ張っていく琳の元気な姿が見えた。
「一応挨拶しておくか」
 濤はそっと永平に近付き「すいません」と声を掛けた。振り向いた永平に濤は軽く頭を下げる。
「琳は記憶喪失なんですよ。今回ここに来たのも色んな人と楽しみたいだけ……申し訳ありませんが少しばかり、あのバカ者に付き合ってやって下さい」
 本来は琳も察しているが、あえて知らない体で子供がはしゃいでいるだけと思わせたい、そう思っての言葉だった。永平は息を吐き困ったように頭を掻く。
「分かったよ」
「ちょっと、いいかな」
 そこに佐倉 樹(aa0340)が顔を出し、濤は手を上げて二人の元から去って行った。樹は永平に遠慮ない視線を向ける。
「そういえば……名前、ちゃんと名乗って無かったね。私は『さくら いつき』」
 そのまま黙って名乗られるのを待つ樹に、「李永平だ」と言葉が返った。樹は腰を深く曲げ頭を下げて礼を言う。
「あの時は通してくれてありがとう。君がどう考えたにせよあの時通してくれたから、結果的に小泉大人の名誉も汚れず、私達も、私も目的が為せた。そして協定にまで至れた。
 だから、君が目的を為すために手助けが必要な時にはいつでも駆けつけるし、いつでも助けよう。……今の君の望みは?」
 顔を上げ、じっと見つめる樹に永平は「奴を倒す」と短く答えた。それが何のためかは分からないが、樹はニッと微笑んでみる。
「うん、わかった。君が全力を尽くすなら、私もそれを全力で手伝おう。
 だから『前』を見てごらん」
 そして樹は白時計を永平に渡した。訝しむ永平に樹はその意味を伝える。
「最大級の歓迎と友好の意思の証。色々あったけど、その中でも君はとても信頼たりえる……って思ってる。それからこれも、私なりの友好の印」
 樹はさらに桜の花びらを手渡し、同じものをガイルにも渡しに歩いていった。入れ替わりに聖とLe..が永平へ歩み寄る。
「パンドラぶっ倒そうぜ。奪われたんなら取り戻す! そんで更に磨きを掛ける! 今ある『力』を上手に使え。腐ってる暇なんてねーよな! あと思い出したらあの野郎もっと殴っとけばよかった! って思う。それから同じドレッドノートとして、何れ一身二対一身二で戦いてェもんだ」
「……ヒジリーみたいなバカになれ、なんて言わないけど……復讐心も……活力にはなるけど、それだけで武器を握ると……『剣気』は鈍るから……程々にね……」
 二人の言葉に、永平は「ああ」と言葉を返した。

 GーYAは落ちる前の線香花火の火球を握った。感傷的な契約者にまほらまは言葉を述べる。
「さぁ、これからどうするのかしら?」
「愚神が嫌がらせだけで印を残したとは思えないんだ。嫌な予感がするよ、まほらま」

 八宏は険しい表情でスマホを握る手に力を込めた。奴の葬儀の準備に向かえるように、二度と彼らを傷付けさせないために。
 駆ける覚悟は出来ている。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 常夜より徒人を希う
    邦衛 八宏aa0046
    人間|28才|男性|命中
  • 不夜の旅路の同伴者
    稍乃 チカaa0046hero001
    英雄|17才|男性|シャド
  • 薄明を共に歩いて
    木陰 黎夜aa0061
    人間|16才|?|回避
  • 薄明を共に歩いて
    アーテル・V・ノクスaa0061hero001
    英雄|23才|男性|ソフィ
  • クラインの魔女
    倉内 瑠璃aa0110
    人間|18才|?|攻撃
  • エージェント
    ノクスフィリスaa0110hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 深淵を見る者
    佐倉 樹aa0340
    人間|19才|女性|命中
  • 深淵を識る者
    シルミルテaa0340hero001
    英雄|9才|?|ソフィ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 花咲く想い
    御代 つくしaa0657
    人間|18才|女性|防御
  • 共に在る『誓い』を抱いて
    メグルaa0657hero001
    英雄|24才|?|ソフィ
  • 死を殺す者
    クレア・マクミランaa1631
    人間|28才|女性|生命
  • ドクターノーブル
    リリアン・レッドフォードaa1631hero001
    英雄|29才|女性|バト
  • ハートを君に
    GーYAaa2289
    機械|18才|男性|攻撃
  • ハートを貴方に
    まほらまaa2289hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • やるときはやる。
    呉 琳aa3404
    獣人|17才|男性|生命
  • 堂々たるシャイボーイ
    aa3404hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • 心優しき教師
    世良 霧人aa3803
    人間|30才|男性|防御
  • 献身のテンペランス
    クロードaa3803hero001
    英雄|6才|男性|ブレ
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