本部

うさ耳ぴょん、イースターエッグから巨大兎

時鳥

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/04/04 20:00

掲示板

オープニング

●今日は楽しいお祭りだ!
 ヨーロッパのどこかの小さな町。ここでは毎年、イースターにちなんでうさ耳を頭に乗せ町全体で騒ぎ祝う風習がある。
 可愛らしい少女も、お母さんも、爽やかな成人したばかりの青年も、頭が寂しい中年男性だってみんなみんな頭にうさぎの耳を乗っけなくてはいけない日。どこを見たって耳がぴょんぴょん動いてる。
 もし、あなたが何もつけずに町に入ってしまったら、あっという間に囲まれてうさ耳の5つぐらいがあなたの頭の上に乗るだろう。それだけみんな楽しんでる。
 そんな日にそんな町へやってきたあなた達、お祭りを知っていて楽しみにきたのか、知らずに迷い込んだのか、誰かに連れてこられたのか、はたまた罰ゲームか何かか、諸所の事情は置いておいて、昼過ぎまで祭は平和に楽しく続いた。

●イースターエッグ飛来
 ところでこの町は、森の中にポツンと密集した住宅が立ち並んでいる。裏路地に入れば狭い道路が迷路のように入り組んでいるものの、町の四方の入り口から教会広場までの道は広く綺麗に舗装され見通しもいい。町の中心に教会があり、町の入り口からは教会の屋根が軽く見える。
 そんな小さな町の上空、教会の屋根を見つめていたり、晴れたとてもいい天気の空を見上げていたりすれば気が付くかもしれない。空から3つの丸い玉のようなものが落ちてくるのを。それは赤、青、緑のイースターエッグ。白い線で入った模様はとても綺麗で可愛らしい。
 青いイースターエッグは南の狭い路地の中に吸い込まれ、井戸にホールイワン。緑のイースターエッグは東の広い通りに植えられた植木の上に引っかかる。
 最後の一つ、赤いイースターエッグが教会広場へと落ちてきた。教会広場のど真ん中、そこにはこの祭りのマスコットキャラクター、かわいらしい兎の姿をした大きいバルーンが設置されている。その上にぽよん、と一度跳ねた後、イースターエッグはぶるっと震える。
 次の瞬間、表面に亀裂が入り、割れた。
 殻の内側から白い煙が立ち上り広場を一瞬にして埋め尽くす。その煙の中から現れたのは巨大な兎。全体を白く覆った毛と大きな耳、赤い瞳、むっくりとした下半身。その大きな両足の下には割れて潰れたマスコットキャラクターのバルーン。
 そんな巨大な兎の出現に楽しさで賑わっていた祭の中心教会広場は人々の悲鳴で埋め尽くされた。
 このまま放っておいては町は巨大兎に破壊され、一般人にも被害が出てしまう。偶然居合わせたエージェント諸君が頑張るしか道はない!

解説

●目的
・好きなうさ耳を付けること
・巨大兎型のミーレス級従魔3体の討伐もしくは、巨大兎型のミーレス級従魔1体の討伐とイースターエッグ2つの捜索
・一般人の教会広場からの避難

●敵情報
・兎の大きさは大体5メートル前後
・鋭く尖った爪で攻撃してきます。
・兎なので跳ねます。

●イースターエッグについて
 青と緑のイースターエッグはまだ孵化していませんが、ターンがある程度経過すると割れて赤のイースターエッグと同じく巨大兎が産まれてきます。
 卵を観察していれば分かることですが、一定時間が経つと色が変わっていきます。
 青、青緑、緑、黄緑、黄色、橙色、赤の順です。赤色に変化すると巨大兎が産まれるので、巨大兎が産まれるまでの目安になります。
 普通の衝撃ではヒビも入りませんが、ライヴスを介した攻撃を加えると粉砕し巨大兎が産まれるのを阻止することが出来ます。
 イースターエッグを探す際は目撃者を捜すと良いかもしれません。
 卵の大きさは鶏の卵ぐらい。

●一般人について
 教会広場の中央にはマスコットキャラクターバルーンがあった為、幸運にもまだ被害者は出ていません。
 従魔の出現に教会広場から四方の広い道へ逃げ出した人が大半ですが、あまりのことに動けずに広場に残ってしまっている一般人が10人前後います。

●その他
 うさ耳の種類はカチューシャやヘアピンの付け方や、カラー、素材(例:安くて薄く針金が中に入っている。風船で空気が入っている)等をプレイングに入れてもらえれば対応します。
 服装なども普段と違うものの場合は明記ください。
 また、町のどの当たりで楽しんでいたか、というプレイングもお願いします。教会広場での騒ぎの地点でのスタート場所、となりますが、なければランダムになります。

リプレイ


「リュカはうさ耳似合ってるのです! ガルーももう少し見習うべきなのです」
 祭で賑わう町の一角で紫 征四郎(aa0076)は自身の英雄、ガルー・A・A(aa0076hero001)と木霊・C・リュカ(aa0068)、彼の英雄のオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)の4人で顔を合わせていた。征四郎に賞賛されているリュカは真っ白でぴんとたった兎耳のついたシルクハットと白杖、そして日傘を持ちスーツを見事に着こなしている。一方、比較対象のガルーは普段の服装に黒いうさ耳を乗せている30歳男性。まぁ、つまり似合っていない。
「ん、ん? 何を見習えって……? つか、オリヴィエちゃん仏頂面ー。うさ耳似合ってんだからもう少し笑えよほらほら」
 しかし、本人はどこ吹く風。オリヴィエの頬を摘まんで口端を引き上げようとするが、オリヴィエから向う脛に容赦のない高速キックの反撃を食らう。
「……、……そっちのがすごく、似合ってるぞ?」
 オリヴィエは若干小さめの黒と茶色が混じったうさ耳がぴったりとくっついているキャスケットの縁を抑え明らかに棒読みで痛がるガルーを睨みながら言い放った。
「どうですせーちゃん、お兄さんと一緒にお茶でもします?」
「征四郎でよければお茶、ご一緒しますよ。ステキなうさぎさん! それと、征四郎の耳はこういうのです」
 そんな英雄2人の横、征四郎はリュカに手を伸ばして誘導の為を兼ね、彼と手を繋ぐ。そして目の見えないリュカの為、自分のつけた白いふわふわしているうさ耳に触れさせた。
「せーちゃんの耳ふわもこだねー、ねぇねぇガルーちゃん写真! 写真とっといてね!」
「おう、ついでにオリヴィエちゃんのも撮って――っ」
 はしゃぐリュカの言葉に痛みから立ち直ったガルーが写真を撮ろうとするも再度オリヴィエの強烈なキック! 今度は飛び跳ねたドロップキックだ。
 そんな楽しそうな彼らの近くにテジュ・シングレット(aa3681)とその英雄、ルー・マクシー(aa3681hero001)はいた。祭りの情報を入手したルーがテジュを説得し連れて来たのだ。2人はお揃い色違いのうさ耳を付けている。一瞬見ただけでは本物と区別がつかないほどの完成度だ。テジュは黒、ルーは白である。ちなみにこのうさ耳、カチューシャタイプだがその素材はライヴス通信機「雫」。
「ほんとに……これを付けるのか?」
「拒否は却下です~♪」
 うさ耳をつけるときそんなやり取りを交わしていた二人。今はカメラを持って記念撮影に勤しんでいる。
 そして、大通りから裏路地へと足を踏み込んだ先、都築 幸道(aa2350)とリリィドール(aa2350hero001)は地元の子供達と楽しく遊んでいた。アリスをイメージした青いゴシックドレスのリリィ―ドルは頭の上に乗せたカチューシャタイプのロップイヤーを揺らしながら駆け回る。
「さあ行きましょうアリス達。忙しそうなウサギさんを捕まえるのよ!」
「多対1とは聞いてなかったなぁ……まあ皆楽しそうだからいいけどさ」
 ネザーランドドワーフの短い耳のカチューシャに黒いタキシードを着た幸道はさながらアリスの白兎か、ノリノリのリリィドールに困惑し苦笑しつつも付き合う幸道。だがしかし、本気で逃げる。町の子供達も思い思いのうさ耳を乗せているので追いかけっこをしている彼らはぴょこぴょこと大変微笑ましい。
 そして、また違った場所。大通りより一本奥、一人でいた守矢 亮太(aa1530)に通りすがりの女性が可愛らしい白いうさ耳カチューシャをつけて去っていった。祭の洗礼である。
 何も知らされず、李 静蕾(aa1530hero001)に連れてこられ李本人は幻影蝶でお着換え中。訳が分からず呆然とする亮太。そこへ李が幻影蝶から姿を現す。普段はお団子にしている髪を下ろし、黒い網タイツのバニーガールという出で立ちで。
「早速リョタも兎つけてもらタネ! ここそういうお祭りヨ」
「聞いてないよ静蕾! ていうかなんでそんな格好してるの!?」
「兎言タラこの格好アルよ! ドネ! 似合うアルカ?」
「それよりも恥ずかしくないの?!」
「恥ズカシは思わないアルけど……まだチョト肌寒いネ……」
 そんな掛け合いを繰り広げ、李は結局ジャケットを羽織り祭に繰り出すのだった。
 もちろん祭の洗礼を受けるのは亮太のような少年だけではない。ザフル・アル・ルゥルゥ(aa3506hero001)に引っ張られて連れてこられた鵜鬱鷹 武之(aa3506)は町の人に声を掛けられる。
「あ?俺のはホーランドロップのうさ耳だよ。狸じゃないよ」
 その度に一言返すのは正直面倒だ、と武之は思う。しかし、これで5回目だ。まぁ、パッと見どう見ても狸の耳、にしか見えないので仕方ない。
「ほら武之! うさぎさんが沢山だよ! 楽しいね!」
 そんな相棒とは反対にルゥルゥは大はしゃぎ。彼女の頭にも町の人たちと同じようにうさ耳が乗せられている。普段の服装から可愛らしい姫のようなドレスを着ている彼女がはしゃいでうさ耳を揺らす姿は童話から出てきたみたい。彼女のおかげで武之に声をかけた人はすぐに納得して去って行ってくれてるのかもしれない。
「食べ物もいっぱいあって楽しいね! 武之も楽しんでる?」
「いや……楽しむも何ももう帰りたいわ……帰って家で寝たい」
「見てみて! 武之! ニンジャさんだよ!! ニンジャさんもうさ耳つけてるよ!」
「マジで忍者……? ござるぴょんってどういう事だよ……? え? 今の忍者って忍ばないの?」
 2人、というか主にルゥルゥが教会広場で楽しんでいると、広場に近い屋台に如何にも忍者です、と言わんばかりの服装をした男性が堂々と食事をしていた。それを見つけたルゥルゥが武之を引っ張ってそこまで走っていく。
「うさ耳、つまりは……ござるぴょん?」
「お願いやめて」
 忍者こと小鉄(aa0213)は頭に3つのバルーン型のうさ耳を乗せたまま思いついた、という表情で呟く。すかさず彼の英雄、稲穂(aa0213hero001)がツッコミをいれた。彼女にも同じタイプのうさ耳が乗っているがこちらは1つ、である。
「ニンジャさん! ニンジャさんも楽しんでるの!?」
 屋台のテラス席で食事をとっていた2人にルゥルゥが元気に声をかける。丁度、その時だった。巨大な兎が教会広場に現れたのは。


 巨大兎が広場に現れる少し前、少し離れた場所。白いうさ耳パーカーとホットパンツに兎の丸い尻尾をつけて、もふもふなソックスを履き完全たる兎姿を満喫する今宮 真琴(aa0573)とイースターにちなんだカラフルな服装を纏った奈良 ハル(aa0573hero001)はイースター祭特製のお菓子の数々を買いまくっていた。
 ハルはうさ耳はつけていないものの、連れの真琴と自身の服装から狐耳がドワーフホトのうさ耳だと思われているようで町の人からは珍しいね、等と声をかけられたりしている。
「いーすたーっ! お菓子いっぱいだねー。経費でスイーツ旅行とか最高ですっ」
「なんでわざわざ来たかと思えばこれが目的じゃったわけか」
「こんなに良い天気なんだから食べなきゃもったいないよ」
「まぁ確かに良い天気じゃなぁ…………ん?」
 美味しいお菓子を満喫する二人。ハルがふと空を見上げるとその上空から丸いものが3つ降ってくるのを見とめる。スナイパーである彼女の眼はとてもいい。
「どしたの?」
「なんじゃあれ……ボールか?」
「え、どこ?」
 真琴がハルの目線の先を追った、その直後、大きな兎の姿が真琴の目に飛び込んできた。
「……ウサギ?」
「でかいなー5m位かの」
「……じゃなくって従魔! あぁもう! まだコレ食べきっていないのに! いくよハルちゃん! 憑霊……紅狐!!」
 突然の兎の出現、しかしすぐにその異常な大きさから従魔であることに気が付く。手にしていた兎形のアイスが乗った食べかけクレープを急いで食べつくし、真琴は片手をあげ叫んだ。すると彼女たちの体を紙吹雪包み一瞬にしてその姿が一人の人間へと変わる。ひらひらと紙吹雪が舞い落ちる中、その体を屋根の上へと跳躍させた。ここなら、狙いをつけやすい。弓を構え、大きく弦を引く。
 ライヴスの籠められた矢は空気を切り裂き、怒涛の速さで大きな標的に向かっていく。真琴は矢を放った直後、当たったかどうかを確認する間なく、教会広場へと屋根を伝い走り出した。
 真琴が巨大兎を目撃した、その時、教会広場、テジュとルーがお菓子を買っている最中だったが、彼らのすぐ近くに巨大兎は現れた。マスコットキャラクターのバルーンが割れる音に2人はそちらを振り返る。
「なんだ?!」
「テジュっまずいよっ! 守らなきゃ!」
 事態を即座に把握した2人は共鳴し、重なり合って一つの姿となる。黒いテジュのつけていたうさ耳が反動で頭の上で揺れる。犬耳とこれで獣耳は四つ、しかし、その姿に言及をしている時間はない。被害を最小に抑えるべくライヴスの針で縫止を試みた。
 一方、屋台で武之達と顔を合わせていた小鉄達は兎の到来に食事を切り上げ席を立つ。
「……乗り気になって楽しんでいた時に限って従魔が来るのでござる。すまんな、話は後だ」
「え、乗り気になってたの!? 見た目凄いアレよ……?」
 声を掛けてきたルゥルゥを一瞥、すぐに兎に視線を戻し残念そうにする小鉄。稲穂がついついツッコミをいれた。そしてすぐその場で共鳴を行う。彼らの姿は一つになり、見た目は忍者、頭の上にはバルーン型のうさ耳が 4 つ。
「ニンジャさん、リンカーだったの!? 武之、ルゥ達も共鳴!」
「お主達もリンカーか? ならば一般人の避難を頼む。拙者はあやつに食べ物の恨みは恐ろしいという事を……教授せねばなるまいて」
(兎肉……従魔は流石に食べる気にはなれないけどね)
 武之の袖を引っ張るルゥルゥの言葉に同士であることを悟ると、小鉄は避難誘導を彼らに任せ、自身は兎を抑える役目を選択する。食べかけのご当地料理をチラ見しながら。
「あやつを倒す……いざ、推して参る!」
 小鉄はすぐに店を走り出て兎へと向かう。巨大な兎は動くだけで脅威、その動きを制すため、ノーブルレイで絡め捉えようという作戦だ。その小鉄の体は頭の上でばいんばいんと揺れるバルーンうさ耳の効果か少しいつもより跳ねている、ような気がする。気がするだけ。
 そんな小鉄の一撃手前、真琴が放った矢が兎の顔側面の直撃する。大きく揺らぐ巨体。その所為か、小鉄の放った銀のワイヤーは兎の毛に覆われた肌を浅く切り裂くだけに終わる。だが、テジュの糸が兎の体を拘束し地面へと縫いつけた。
 戦闘開始直後、広場に居たのはその6人だけではない。リュカと征四郎は既に共鳴をし、兎の出現に逃げ惑う人々の避難誘導を開始していた。征四郎はもしもを考え盾を構え、混乱しパニックを引き起こしている人々を纏め、兎の行動を監視しながら誘導する。その頭に乗っているうさ耳は征四郎とガルーのものが混じったのだろう、左右の耳が白と黒だ。オリヴィエも広場で動けなくなった子供を抱き上げて広場から連れ出す。
 そこへ裏路地から共鳴をした幸道が駆けだしてきた。広場のすぐそこまで追いかけっこをしてきてしまっていた。子供達には共鳴した姿を見せて避難を促し、自身は兎を止めるべく下がピンとしたネザーランドドワーフ、上の方が垂れているロップイヤー、と2つが上下で混じった少し不思議なうさ耳を揺らしながら広場へと走ってきたのだ。
「全く……なんて無粋な乱入者……いや、乱入ウサギかしら?」
 幸道は射程距離内に標的を捉えると、銃を構え力を込めて銃弾を放つ。絡まる糸をじたばたと暴れ解いた巨大兎の片目をその銃弾が抉る。獣の哮りが上空まで突き抜けた。
「慌てないでな~HOPEのエージェントが守ってくれるぜ~」
(武之もえーじぇんとだよ!!)
 誘導の際、兎の攻撃を考慮して共鳴をした武之だったがやる気のない声で逃げ惑う人々に声を掛ける。ルゥルゥが内なる声でツッコミを入れるしかなかった。その頭にはルゥルゥがつけていたうさ耳がちょこん、と鎮座している。外すのも武之は面倒になっていた。
 そこへ亮太が広場へと到着する。広場に来る手前、逃げ惑う人々の中、親とはぐれていた子供を誘導したりしていて遅くなってしまった。頭上の白いうさ耳がぴょこんと揺れる。
 そんな4人のリンカーの的確な誘導により、被害者は今のところゼロ。広場には巨大兎とリンカー達のみ。となれば、後は従魔を倒すだけ。
「武之! このモフモフ気持ちいいよ!」
「なぁ……ルゥルゥ……勝手に意識持ってくのやめてな? おっさんがモフモフって視覚的暴力半端ないからな?」
 誘導が終わった直後、すぐ近くにあった巨大兎のふさふさもふもふの尻尾にルゥルゥは我慢できず意識を乗っ取り飛びついていた。その光景はうさ耳をつけた成人男性が……いや、やめておこう。
 兎が尻尾の感覚に武之の方を振り返る。咄嗟に剣を構え、ライヴスで自身の分身を作り出す。うさ耳を乗せた成人男性が二人に増えた。しかも髪型はオールバック。
 一気に切りかかり従魔の太腿を切り裂く。
(出し惜しみは無しよ!)
「分かっているでござる!」
 武之の攻撃でバランスを崩しかけた従魔に小鉄が追い打ちを掛けた。傷ついた太腿にワイヤーを絡め、引く。巨体は一気に横倒しに転倒し地面に叩きつけられた音と、従魔の咆吼が一体に広がった。が、その気を逃さず小鉄はノーブルレイを伸ばした。兎の首にワイヤーが絡まり喉が締る。そして、呼吸を止められた兎は僅かな痙攣を残し動かなくなった。ちなみに始終小鉄の動きにバルーン型のうさ耳はお互いぶつかり合ってバインバイン賑やかだった。
「終わったでござるか?」
「小鉄さーん!」
 一息ついている小鉄の元に真琴が駆けつけてきた。そんな真琴のことを知っている征四郎とリュカもそこへ寄ってくる。そうなると自然とリンカー達は一か所へと集まった。その頭の上には個性豊かなうさ耳が乗っている。滅多に見られない光景だ。
「つまり、まだ出るってことか」
「避難誘導をしている時も、卵から兎が、と言っている人もいました」
 ハルの目撃した卵の話をし終えた後、オリヴィエが腕を組んで考え込む。征四郎が避難誘導をしていた時に聞いた話を持ち出した。すると亮太が一つ頷いて先程真琴がボールの一つが落ちた、と指した方角と似た方角を指さす。
「サキ助けた子が青い卵がアチヘ飛んデタ。言てたアル」
「では、東に緑の卵、南に青の卵がそれぞれ落ちていった、ということですね。町の子供達が教会からの方角でそれぞれ通りに名前がついている、と言っていましたから落ちた方角は間違いないと思います」
 幸道が思い出しながら発言する。そうやってそれぞれが既に得ていた情報を出し合い、まだ卵の正確な位置が特定出来ない為、全員で連絡をとれるように通信機を設定することにした。が、しかし、そこでテジュがあることに気が付く。そう自分の通信機はこの頭についているうさ耳だったということに。
「……なんとか……ならんか?」
(僕が……頑張って作ったのに壊すの?)
「……いや……このまま使おう」
 心の中でルーに問いかけている間に彼に全員の視線が集まる。一人だけ通信機を出さなかったからだ。仕方なく事情を説明するテジュ。一部からはすごい! と絶賛の嵐、そしてごく一部からは同情的な視線があったような気が、する。
 まだ町の人の中には事態を知らない人やひと段落ついたと思っている人もいてうさ耳を外していると余計な時間を消費する可能性を考慮して結局誰も頭の上のものを外さなかった。とにかく全員ばらけながら通信機で連絡を取り合い、卵の目撃情報を聞き込むこととした。ちなみに武之は面倒だなぁ、と思ってた。


 緑の卵が落ちたと思われる東側。リュカ、真琴、小鉄、テジュが東寄りの道を探索、聞き込みしている。もし、従魔が現れた際、すぐに駆けつけることが出来るリンカーが最低四人は居た方がいい、という話になり、半々で東寄りと南寄りに分かれたのだ。
 真琴は屋根の上を走りながら卵を探す。そのついでに既にお祭りの雰囲気に戻りつつある町の人々に向かってリンカーである事、教会への避難を大きな声で伝えていた。
「ふふ、何だか本当のイースターみたいだね!」
(見つけても、中からでてくるのは菓子じゃないけどな)
「ねえねえ、さっき落ちてきたっていう卵と同じ様な物、どこかで見た!ってお話とか知らない?」
 一方、リュカは道を行く人々に声を掛けて情報を集めていた。時たま女性が相手の時は美味しいお菓子は? などとナンパ紛いの話に逸れて行くのでオリヴィエが交代をして真面目に情報を集めていく。途中、卵は色が変わるらしい、という話を受けて全員に無線で知らせる。
 テジュはライヴスゴーグルを使い卵からライヴスの流れから卵の場所を割り出せないか試していた。
(さてエッグハントと洒落込みましょうか)
「えっぐ……うむ、良く分からぬが従魔は片づけるのみでござるよ」
 そして小鉄。聞き込みをしながら辺りを見回していると、なんと、偶然にも木の上に橙色の卵を発見。すぐに苦無を木の上の卵に向かい投げつける。しかし、丁度同じタイミングでテジュもライヴスの流れから卵を発見していた。更に、既に銃を放った後。これは何万分の一の確率だろうか、テジュが打った銃弾と小鉄の苦無が互いにぶつかり合い両方とも卵から軌道が逸れてしまった。しかも、2つがぶつかり合う音に驚いたのか野良猫が飛び出てきて卵が木の内側に落ちてしまう。
 木の葉の隙間から現れた卵は橙色から赤に変わりそして――ヒビが入った。

 東の方から悲鳴と建物が崩れるような音が聞こえてくる。振り向いた先には巨大な兎の耳が家々の屋根より高くはみ出して見える。征四郎と亮太は顔を見合わせた。
 武之が二点、幸道が一点、有力と思われる情報を無線で伝えてきた。その結果、導き出された地点に一番近い征四郎と亮太が合流したのだ。
 やる気の殆どなかった武之が適当に聞いて回ってこれだけ情報を引き出してきたのは運がいい、としか言いようがない。一方そんな武之とは対照的に幸道はきちんと可愛らしい耳を揺らしながら自分の足を使い情報を集めた。
 そんな南側を探索している四人に通信が入る。相手はオリヴィエだ。
「悪い、こっちは間に合わなかった! 卵の色が変わるのはさっき伝えたな? 最後は橙色から赤だったらしい。そっちはそっちで探してくれ! こっちは四人でなんとかする!」
 早口に捲し立て通信は切れる。比較的、東側に近かった幸道は見えた兎にそちらへ向かいかけたがその無線で足を止める。もし、こちら側も産まれたら位置的に自分は南の兎討伐に向かった方が戦闘力的にもいいだろう。そう判断して征四郎と亮太の元へ走り出した。
 そして征四郎と亮太。大体の場所は導き出したものの見える範囲に卵らしきものは見当たらない。
(リョタ、私ノ秘策アルよ! チョト変わるヨロシ)
「え、うん」
 2人が困った様子を見せていると亮太と入れ替わった李が気合い一つダウジングロッドを取り出す。そして両手で握り範囲内をゆっくり歩く。その間うさ耳が何かを探るようにぴくぴくしているように見える。
「ムム……コッチあるか………!? ここネ!!!!」
 そして井戸に差し掛かるとロッドは外側に開いた。何かに反応したのか。井戸の中を覗いてみるが随分と深く暗い。卵があるのか、そもそも水があるのかさえよく分からない。なので、征四郎はライトアイを使う。すると二人の目に井戸の底に揺らめく水と橙色の卵が見えた。橙色から赤になればすぐに産まれてしまう。しかし、今の二人に遠距離の狙撃方法は、ない。顔を見合わせる二人。そこへ幸道が二人の元へたどり着いた。先ほどの戦闘で幸道が銃を握っていたのを思い出した李が彼の手を引き井戸へとすぐ連れてくる。
「ここにアルネ!」
 しかし、暗くて幸道には卵を見ることは出来ない。そこへ征四郎はもう一度ライトアイを掛けた。すると幸道の目にも橙色の卵がくっきりと見える。
「急いでくれますか? 赤になったら産まれてしまうそうです」
 征四郎に促され幸道は銃を構える。ライヴスを込めて、その引き金を引いた。

 兎の巨体が道に接する家のベランダを打ち崩す東の大通り。兎が現れた瞬間、まず動いたのは真琴、屋根の上から魔法書を手にし魔力によって作り出した閃光弾を発射、大量の光に目が眩みふら付く兎。
 そこへ小鉄が銀のワイヤーを駆使し太腿、腹、顔と兎の体をぴょんぴょん跳ねあがり三回連続で切り傷をつけていく。その度に4つのバルーンうさ耳が元気よく揺れ、その様はかなーり目立っていた。町の人達の注目の的、後日町の人達は彼をぴょんぴょんマスター、と語り継ぐとかなんとか。
 テジュは銃を構えライブスによる毒を込めて兎の目を狙い放つ。毒に侵された従魔は苦しそうな唸り声をあげ、その瞳に一人通りに残っていた一般人の女性を抱え避難させているリュカを捉える。そして大きな体を突進させた。だが、元々兎を注意深く意識していたオリヴィエは無駄なく女性を抱き上げたまま攻撃を避ける。シルクハットに白いうさ耳のスーツであるが故になんかすごくかっこいい。
 そして真琴が武器を弓に持ち替えて屋根から兎の頭に飛び乗り、更に真上に跳ねて頭上から弓矢を放つ。それと同時に小鉄も腹部へと追撃を入れ、テジュはライヴスで作り出した分身を一般人を抱えるリュカと兎の間に割り込ませ前方と側面から同時に銃を打ち込んだ。毒の進行と連携の取れた連続の攻撃の重さに巨体は地へと沈む。
 大きな音ともに倒れこんだ従魔だがうまい具合に大通りの真ん中へと倒れたため、建物の倒壊は防げた。
 そこへ通信が入る。南の卵は割った、と。


 東の大通り、2匹目の兎が倒れている場所にリンカーと英雄16人は集まっていた。この巨大兎の後処理はH.O.P.E.が請け負ってくれるらしい。
「●人分のシチュー」
「……。……う、兎の?」
 共鳴が解け目は見えないものの兎の方を向いて呟くリュカの言葉に困惑するオリヴィエ。そして視線を向けた先で兎の耳を齧る真琴を発見してしまい更に困惑。
「何してんの!?」
「いやさっき食べたマシュマロに質感にててつい」
「つい、じゃないわっ!?」
「……美味しくないね」
「当たり前じゃよ!」
 真琴に容赦のないツッコミをいれるのはもちろん彼女の英雄ハルだ。
「うさぎの尻尾って幸運の証だっけ?」
「武之はいつも酷い事ばっか言うんだよ!」
 兎の耳とは逆側、尻尾付近では武之が指をはさみのようにチョキチョキしてもふもふした尻尾を弄っていた。その意図を察してルゥルゥが叫ぶ。
 そして兎の腹の横、征四郎が倒れている従魔を一瞥後、すぐにガルーに視線を向けた。
「……大きいうさぎさんって、あまりかわいくないなって」
「何で俺様を見てるんだよお前さんは」
 一方、兎の足の辺りで小鉄が稲穂に真剣な顔を作り。
「……拙者、戦う時結構跳ねてたでござるな」
「そうね、跳ねてたわね」
「……うさ耳付けたままでござるぴょん?」
「そうね、そしてそれはやめて」
「ミンナさんお疲れ様アルね!」
 各々兎に思いを馳せていると李が元気に全員に労いの言葉を掛けた。彼女の言葉の後にテジュは自分の英雄に視線を向ける。
「祭りは……その残念だったな」
「ううん、大事にならなくて良かった。それに記念写真は無事だよ」
「それは……破棄して欲しいが」
「却下」
「まぁまぁ、とんだ邪魔が入ったけれど……お祭りでしょう?」
 テジュとルーのやり取りにリリィドールがそっと口を挟む。そして全員をぐるっと見回ってからにこっと微笑む。
「そしてまだ一日は終わっていません。ならば……続きを、楽しみませんか?」
 リリィ―ドルのこの提案でH.O.P.E.が兎の死体を回収した後の夕方、祭りの再開と、平和を取り戻した祝杯が町全体で行われた。こうして、後日、うさ耳ぴょんぴょん事件として語り継がれる、かもしれない騒動は幕を閉じたのだった。うさ耳を付けたまま頑張ったリンカー達の姿を町の人は忘れないだろう。ちなみにその後、真琴は小鉄と共にレイブンへのお土産のお菓子をたくさん買い込んで帰って行った。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 忍ばないNINJA
    小鉄aa0213

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 忍ばないNINJA
    小鉄aa0213
    機械|24才|男性|回避
  • サポートお姉さん
    稲穂aa0213hero001
    英雄|14才|女性|ドレ
  • 撃ち貫くは二槍
    今宮 真琴aa0573
    人間|15才|女性|回避
  • あなたを守る一矢に
    奈良 ハルaa0573hero001
    英雄|23才|女性|ジャ
  • エージェント
    守矢 亮太aa1530
    機械|8才|男性|防御
  • エージェント
    李 静蕾aa1530hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 温かな希望
    都築 幸道aa2350
    機械|14才|男性|攻撃
  • 黒タイツロリ
    リリィドールaa2350hero001
    英雄|9才|女性|ドレ
  • 駄菓子
    鵜鬱鷹 武之aa3506
    獣人|36才|男性|回避
  • 名を持つ者
    ザフル・アル・ルゥルゥaa3506hero001
    英雄|12才|女性|シャド
  • 絆を胸に
    テジュ・シングレットaa3681
    獣人|27才|男性|回避
  • 絆を胸に
    ルー・マクシーaa3681hero001
    英雄|17才|女性|シャド
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