本部

欲深な祈り

藤たくみ

形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/03/24 18:58

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掲示板

オープニング

●経緯
 昨年の暮れ、H.O.P.E.宛に招待状を寄越した子供好きの愚神、アル。
 八人のエージェントがその魔手から子供達を解放するのを尻目に、当事者はまんまと逃げ果せた。
 とは言え状況柄、愚神打破にまで至らなかったのは想定内。
 重要なのは更なる犠牲を出さない事。
 かくして今年に入ってからもH.O.P.E.お抱えのプリセンサー(予知能力者)は愚神の動向――捨て置けばやがてもたらされるであろう未来図の捕捉を試み続け、そしてそれは成功した。

 ロシア連邦シベリア地方イルクーツク州州都イルクーツク。
 三月を迎えてなお雪深く厳冬に包まれたバイカル湖――その畔に建つ教会に、アルは現れる。

 以下はプリセンサーが垣間見た情景の一部である。


●全てを失い
 雪影がちらつくステンドグラスの色が落ちた礼拝堂では、修道女の弾くオルガンに二十名ほどの子供らが集い、聖歌を練習していた。
 祈りを捧げに来たのか、暖を取る為か、はたまた単なる時間潰しか――十名に満たない身なりも年恰好もばらばらの大人達が思い思いの席に座り、それをぼんやりと聴いている。
 やがて、入り口の扉が開け放たれた。
 帽子もコートもまっくろけ、髪はグレーで肌は白――上から下までモノトーンの老婆が、まみれた雪を払いもせず、季節外れの花籠片手に中へ足を踏み入れる。
 寒気が吹き込むのを幾人かが迷惑そうに振り向き、見かねた司祭が扉を閉じると共に、彼女へ挨拶した。
「神の家へようこそ、ご婦人。本日はどうされました? 何かお悩み事でも」
「“種蒔き”さ」
「なるほど、種を蒔けば自ずと刈り取る事になるでしょう」
 こうした暗喩的な物言いの訪問者に慣れているのか、司祭は老婆の用件に如才なく応える。
 老婆は左手で帽子のつばを下げ、「ふん」と小馬鹿にしたような息を吐く。
「なんでもおたくらの教えじゃ、自分の為に種を蒔いた者には破滅が、けど神様の為なら永遠の命が実るんだって?」
「よくご存知で」
「じゃあ――『両方の種を同時に蒔いたら、一体何が起こる』んだい?」
「お戯れを、そのような事は無……――っ!?」
 彼の否定は叶わなかった。
 なぜなら籠の中から一輪、鋼鉄の花がにゅっと突き出て、自分へ向けられたから。
「キャアアー!!」
 近くに居た女性が金切り声を上げ――籠が床に落ちて、色褪せた花が散り。
 銃身と化した老婆の右腕が顕わとなって、誰もが瞬時に事態を把握した。
 静謐な倦怠感に包まれていた礼拝堂を、俄かに恐慌が支配する。
 ――と、今度は小刻みな銃声とガラスの割れる音が矢継ぎ早に鳴り響き、ざわめく子羊達へ静粛を強要した。
「全員動くんじゃない」
 薬莢を撒きながら左腕を振り回していた老婆が、その袖口から上る硝煙をふっと散らす。
 右手の大口径は司祭に向けたままだ。
「……おっと、シストラ(修道女)と子供達は別だよ。唄うんだ、もう一度最初から」
「神よ……!」
「ここに居るじゃないか。神は神でも――愚神だけどね」
 老婆ことアルに現実を突きつけられ、修道女は嘆かわしげに天を仰いでから伴奏を弾き始めた。
 愚神は右の銃口を司祭の胸元へ押し当て、子供達の歌声――というよりは涙声が聞こえ始めると、世間話でもするような調子で、今一度問う。
「さっきの質問に答えとくれ、神(私)の為にさ。曲が終わるまで待っといてやるから」
 アルはそう言うと、怯えて震える司祭に人の好い笑顔を浮かべた。

 わたしは――

「…………っ」
 他の子達がシストラの背中にすがるような目で見て唄っているけれど、わたしはそれどころじゃない。
 ただ、お婆さんの顔を、何度も、何度も確かめた。

 ……どうしてここに。どうしてここに!

 せっかく逃げたのに。
 せっかくマロースおじさんに助けて貰ったのに。
 まさかあの子も一緒に来たのだろうか。
 どこかで見ているのだろうか。
 置き去りにしたわたしの事を恨みがましい目で睨みつけているのだろうか。
「ゆるして……」
 神様、どうか。


●全てを欲し
「プリセンサーによるとこの後、司祭はアルの質問に答え――彼と修道女を除いた――大人全員が解放されるとの事です」
 ブリーフィングルームにて一連の事情を語るのは、その制服からオペレーターと判別できる、けれど見慣れない長身の女性だった。
 新人だろうか、それにしては妙に落ち着き払っている。
 幾人かのそうした視線を意にも介さず、彼女は説明を続けた。
「……ですが、その後すぐに教会の敷地内をドロップゾーンと化します」
 つまり、子供ら二十名と二人の聖職者はゾーンルールの虜囚となる。
「更に良くない事に、かつてアルによって“ノーリ”と名づけられた少年と瓜二つの子供が――偶然か、必然か――今回の現場となる教会付属孤児院に保護されている、との事で」
 オペレーターは「詳しくはこちらに」と資料を差し出し、何かに呆れたような溜め息を吐く。
「……アルがその子に気づいた時、虐殺が始まるという予知が出ているんです。一方で、我々が直ちに駆けつけたなら、司祭とアルの会話が始まる頃には到着する――とも」
 猶予こそないが、行動の起点には融通が利きそうだ。
「もちろん、なりふり構わずターゲットを討てば解決というわけではありません。一人の犠牲も出さずに愚神アルを倒す――これが今回の任務となります」
 一般人が入り乱れる最中、なまじ早く動いて愚神を刺激した挙句、予知された内容よりも悪い方に転ばないとも限らない。
「状況を踏まえた作戦、変化に応じた行動が肝要となるでしょうね」


●ゆえ、今一度
 ここでオペレーターは「改めて言う事もないのかも知れませんが」と一同を見回した。
「ご承知のように、我がH.O.P.E.は世界で最も門戸の広い組織のひとつです。登録される方の年齢性別は元より、経歴、主義、思想、信条など、その一切を否定しません。しかしながら、当組織のエージェントとして任務をお引き受けいただく以上は、常に最大限の達成努力を期待します。そして――」
 そして。
「――そしてこの言葉によって皆さんの個性が損なわれる事はないと――H.O.P.E.の多様性は大いなる“力”たり得るのだと――私は、信じていますよ」
 徐々に声のトーンを落とし、伏目がちに、まるで祈るように。
 ――と思えば一転「そうそう」と両手を合わせ、やや穏やかな面持ちとなる。
「私も同行します。……と言っても、要請がない限り口も手も出すつもりはありません。ただ……着任して最初の案件です。何もする事がなくても、せめて見届けさせてくださいな」
 上品に微笑んで、オペレーターは居住まいを正す。
「申し遅れました。本日付でロシア地区の担当となりました、鬼丸鞘花と申します。他のオペレーター同様、欧州や東日本など複数のエリアと兼任ですので、今後お目にかかる機会も増えていくものと存じます。よしなにどうぞ」
 鞘花は楚々とした礼を以って、結んだ。

解説

【はじめに】
 こちらはシナリオ『無色の庭にて』より派生した事実上の続編となりますが、過去の参加・既読は問いません。
 仮に前回とお顔ぶれが違っていても、どうかお客様同士恨みっこなしでお願いします。

【目的】
 愚神アルの撃破、ただし犠牲者ゼロ厳守の事。

【舞台】
 イルクーツク市内の教会付属孤児院、主に礼拝堂。
 時間帯は昼過ぎ。外の天気は雪。

【アル】
 ケントゥリオ級愚神。
 人の好さそうな老婆の姿。パーソナリティはOPなど参照。
 体中に様々な銃火器を文字通り仕込んでいる模様。
 以下、判明している能力。
・拳銃:右の肘から先。通常攻撃。貫通。
・自動小銃:左腕の袖口。扇形の範囲攻撃。
・大砲:右腕変形。直線貫通攻撃。高威力。衝撃付与。
・おしおき:目を合わせた対象に大ダメージの幻覚。狼狽付与。
・ドロップゾーン:
 子供達を自分の忠実な孫とするルールを布く。
 孫は老婆の為だけに生き、有事には身を尽くすように。
 また、ゾーン内は彩度が損なわれ色褪せた景観となる。

【民間人】
・司祭:制限時間を科せられ質問の答えを必死に考え中。
・修道女:上記制限時間に相当するオルガン曲を恐々演奏。
・子供:二十名ほど。全員孤児。オルガンの周囲に集い怯えながら合唱。
・大人:十名ほど。

【ノーリ?】
 女の子。名前はアルビナ。九歳。
 双子の弟共々行方不明となっていたが後に彼女のみ発見、保護される。
 現時点では他の子供同様怯えているだけ。

【ノーリ】
 前回アルに囚われていた少年。
 別の愚神(雪娘を自称)に憑依されたまま姿を消す。

【鬼丸鞘花】
 要請がなければ外で待機。
(※装備以外のデータはマイページと異なるものを使用)

 以上H.O.P.E.による資料。以下PL情報。

【その他】
・重体・邪英化判定の可能性あり。
・ノーリや雪娘は現場付近に居ない。

リプレイ

●神の座の
「神の家へようこそ、ご婦人」
 司祭とアルの会話が始まる頃――確か、そう予知されていた。
 防人 正護(aa2336)が扉を開けた時、始めに目にしたのはまさにその光景。
 司祭は更なる来訪者へひとまず目礼と思しき一瞥のみ送り、目の前の老婆へ問う。
 老婆がこちらを気にする様子は、今のところない。
(よし)
 怪しまれていない事を確かめ、正護は二人からそう離れていない適当な席に腰を下ろす。

 一方、屋外では。
『色褪せた世界ってのが気に入らないな』
 ジェフ 立川(aa3694hero001)が窓越しに見える件の老婆とその身形に、年始の報告書と予知とを思い出し眉根を寄せる。
 が、聞いているのかいないのか、隣の五十嵐 七海(aa3694)は少し視線を落として「ここまで来ておいてなんだけど」と白い息を吐いた。
「不釣合いな依頼に入った気がするよ」
『まだ気にしてたのか。どんな経験も無駄にはならないだろう』
「……意味のある結果、残せるかな」
『きっとな』
「傍に居てね……ジェフ」
『ああ、二人で切り抜けて行こう』
 色は自分で付けて行くもの。
 奪われた人が居るなら、奪い返す為に――それもまた七海が自らへ施す色に他ならぬのだ。
 二人は再度、色窓の向こうを覗き込む。

「本日はどうされました? 何かお悩み事でも」
「“種蒔き”さ」
「なるほど、種を蒔けば自ずと刈り取る事になるでしょう」
 すぐ隣の、卑屈が板についたような目鼻立ちの婦人が注ぐ怪訝な眼差しをやり過ごし、僅か身を屈め、相棒のアイリス・サキモリ(aa2336hero001)が窺っているであろう方の窓へハンドサインを示す。
 ステンドグラスゆえこちらからは窺えないが、張り付いて覗き込んでいるなら外からは判るだろう。
 あとは――
「なんでもおたくらの教えじゃ、自分の為に種を蒔いた者には破滅が、けど神様の為なら永遠の命が実るんだって?」
「よくご存知で」
「じゃあ――『両方の種を同時に蒔いたら、一体何が起こる』んだい?」
「お戯れを、そのような事は無……――っ!?」
「キャアアー!!」
 司祭の絶句から数秒の後、隣の婦人が金切り声を上げた。
 どよめきが発生しかけた直後、老婆は左腕を上方から壁にかけて振るい、調度や石壁、ステンドグラスの砕ける音が響き渡る。
「全員動くんじゃない。……おっと、シストラと子供達は別だよ。唄うんだ、もう一度最初から」
 銃撃が止んだのを見計らい、正護は席を立った。
「神よ……!」
「ここに居るじゃないか。神は神でも――愚神だけどね」
 人づてに聞いたものとは言え、実際に目の前で一言一句予知と同じ遣り取りが繰り広げられてみると、妙な感覚に囚われるものだ。
 既知感とも異なる何かを持て余しながら、正護は最奥に備え付けられたオルガンの前で修道女が天を仰ぐのを視界の隅に認め、ゆっくりと歩く。
 張り詰めた沈黙に乾いた足音だけが鳴り、そしてそれが止んだ頃。
「……なんだい、あんたは」
 老婆――愚神アルはやっと正護を知覚し、じろりと振り向いた。
「俺か? 俺は通りすがりのバイク乗りさ、別に覚えておかなくていい」
「そうかい」
「そんな事よりあんたこそなぜこんな――」
「――動くなって言ったろう」
 とぼけるバイク乗りが何か問おうとした時、アルはにこやかに右手を司祭からそちらへ翻し――

 一際大きな銃声が木霊した。

 屋根の上でふくらんでいた鶫達が、一斉に飛び立つ。
『――?』
 外で待機中だったアイリスは、何が起こったのか、すぐには理解できなかった。
 色窓の向こうで、誰かが――もしかしてジーチャンが――撃たれた?
『あっ――あ? う、そ。そん、な……そんなっ、ジーチャ、』
「落ち着いて」
『……っ!?』
 恐慌をきたしかけたアイリスの肩を鞘花がぐっと掴む。
 そして隣の窓枠に張り付いていた大宮 朝霞(aa0476)とニクノイーサ(aa0476hero001)へ、同様に建物を囲んでいるであろう総員へ、インカム越しに「お願いします」と小声ながら厳かに言った。
「朝霞さん達も、急いで」
「……はい! 変身よニック! ポーズは省略!」
『当然だ』

 降りしきる雪の只中で、礼拝堂を、一同の共鳴による色とりどりの光蝶が取り巻き、交錯する。
 それはステンドグラス越しに色付いた光と、よく似ていた。


●色窓褪せて散りぬれば
「な――? かっ――……はっ」
 硝煙と血煙と阿鼻叫喚に打ちのめされ、自身の胸から、背中から、止め処なく溢れ出て為した血の海に、正護は倒れ伏した。
 次いで、今度は無事だったステンドグラスまでが一斉に突き破ると共に外から投石の如く飛び込んで来たのは、礼拝堂の外周で待機していたエージェント達だ。
 矢継ぎ早の出来事に数多の悲鳴――『ジーチャン!!!』と泣き叫ぶ声――が入り乱れる中――
「……来たのかい、晦の」
 ふと、うそ寒く煌く蝶の群れが、粉雪が落ちるよりは早く舞い、ひらひらと自らを知らしめるように愚神を取り巻いた。
 かつて己の異能を封じ込めた妖の蝶を、しかし今は平然と受け流し、アルは扉を振り向く。
「ご無沙汰だったね、お婆さん」
 晦のジェドマロース――マックス ボネット(aa1161)は吹雪を背に、片手をポケットにつっこんだ姿勢で、ゆっくりと中へ踏み込んだ。
「お陰さんで雪娘は無事旅立って行ったよ。夏には消えてなくなっちまうのかも知れんがね」
「そりゃあH.O.P.E.(あんた達)の仕事だよ」
「参ったねこりゃ、人使いの荒さは相変わらずだ」
 その刹那、おどけるマックスに次いで窓際から差し込まれた声と共にアルの肩がばさっと爆ぜ、
「――厄介払いして、それでうまく行ったつもり?」
 灰色の羽毛らしきものが、血の海にばら蒔かれた。
「H.O.P.E.(わたし達)はしつこいんだよ」
 時空を跨いだライヴスの弾丸――その向こう、壁際で長銃とも光剣ともつかぬ得物を構える志賀谷 京子(aa0150)に、その悪戯っぽい瞳に、アルは冷たい視線を向ける。

(……京子、焦ってはいけませんよ)
 京子を通して射抜くような眼差しを感じ、アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)は内側から注意喚起する。
(わかってる)
 あの時は誰も助けられなかったから、今度こそは。
(頼りにしてるよ)
(いつになく殊勝ですね)

「……。鶫(つぐみ)が迷い込んだみたいだね。それも見た顔の」
「覚えててくれたんだ、ご機嫌いかが?」
 老婆の右手が火を噴く――間際、
「――っ!」
 オルガンに集う子供達の向こうの出入り口から、矢が放たれた。
 風さえ纏う矢と交差した銃弾は調度と壁を砕いたのみ。
「……お陰様で生憎さ」
「そお?」
 京子は視線を動かさぬまま射線の向こうで長大な弓を、その光の弦の如く張り詰めた面持ちの七海を、今のがその威嚇射撃である事を認め、自身は涼しげに敵を見続ける。
「でも……もういいよね、あなたに再起の機会は―ー」

 ――あげないよ。

「――聖霊紫帝闘士ウラワンダー! 参上ーっ!!」
 鶫の宣告を体現するかのように、七海の傍の窓からオルガンを横切って突撃するのは朝霞。
 少しでも注意を引かんと殊更に大声で、マントをはためかせ身ごと剣の切っ先で穿ちに行く。
「やれやれ、招いてもないのに次から次へと――」
 アルは右の銃身を絡め気味に切っ先を受け止め、面倒臭そうな眼差しを朝霞に向けながら、二歩後退し、結果、司祭と正護から離れた。
「今よ!」
「早く外へ! 逃げて下さい!」
 朝霞が視線を外しがてら小気味良い声を周囲へ向ければ、更に玖渚 湊(aa3000)が愚神の視界を遮るように回り込んで大声で呼び掛ける。
 やっと我に返った――あるいは凶悪な老婆の動きが封じられたと見た――礼拝客達は、司祭や修道女、子供らに目もくれず我先にと外へ逃げ出す。
 湊は腰を抜かしていた婦人を半ば強引におぶって、この隙に子供達の方へ向かった七海の赤い瞳と視線を交わし、頷き合うと後に続いた。
 朝霞は老婆の注意が避難する者達へ向かわぬようにと、更に前のめりに剣を押し付ける。

(いきなり踏み込みすぎだ、朝霞)
「いいのよ、私が全部受け止める!」
(無茶を言うな!)
「無茶でもやるのよ! もう誰も……傷つけさせないっ!」
 後ろには子供達が、そして正護が居る。
 虐殺の予知――それだけは絶対に防がなくては。
 朝霞は確たる覚悟を以って、朝霞は立つ。

『ジーチャン! ジーチャぁン、しっかりしてぇ……っ!』
 そんな中、人波に逆らって朝霞の背後に倒れる正護の元へアイリスが駆け寄る。
「…………あ、アイリス……か?」
 跪いて大粒の涙を零すと、どうやらまだ息がある“ジーチャン”はぎこちなく血濡れの口を上下させた。
「へ、ん、し――……を――」
 瀕死の声に泣き濡れた瞼を拭い、その手を彼の幻想蝶に触れ、やっと共鳴を果たす。
 だが横たわったまま“ライダーサキモリ”へと変じたその胸には、戦わずして深々とえぐれた痕がひび割れを伴って刻まれていた。
 そこへ水鏡の如き瞳の騎士が進み出て手をかざし、温かな治癒の光を注ぐ。
「無理、しないで。あとは――」
 騎士――榛名 縁(aa1575)はその鏡に確固たる意思を宿し、この世界の敵を――脳裏にあの無色の庭を――映し出し、穂先を向けた。

 あんな世界、もう二度と見たくない。許してはならない。
(ユカリ)
(うん)
 想いを支えるように、内側からウィンクルム(aa1575hero001)が主を呼ぶ。
 それが今は酷く頼もしい。

「――僕らがやる!」

 一方、外では。
「――ふん」
 逃げ惑う大人の流れを掻き分ける置き石の如く、ダグラス=R=ハワード(aa0757)がただ立ち、澄ました面持ちに似つかわしくない獰猛な眼で、中の様子を眺めていた。
「行かないのですか?」
 誘導するまでもなく早々に市街地へ散ってしまった一般人達――湊に託された婦人さえも――を目で数えがてら見送りつつ、鞘花が歩み寄る。
「そうだな」
 幾許かの既知感を覚えるも、直ちにそれを放棄して。
 オペレーターに一瞥もくれず一瞬にして伴っていた紅焔寺 静希(aa0757hero001)との共鳴を果たし、その白いスーツを漆黒たらしめ。
「喰らい損ねた食い残しを喰らい尽くす、か」
 それは愚神へ、そして自らへ向けた言葉か。
 美しくもどこか禍々しい蝶の残滓を切るように、狂紳士は悠然と歩き出した。
「……お気をつけて、眠らぬお方」
 鞘花は肘を抱えて伏目がちに男の背を――その向こうの子供達に向かう湊と七海とを――じっと見据えた。


●疚し祈りも
 アルの顔見知り達がその注意を引き付けている間に、七海と、戻ってきた湊が二人の聖職者らと身を屈める子供達を隠すように立つ。

「大丈夫かな、みんな」
 愚神と、その因縁と切り結ぶ仲間達を慮り、湊はそちらを見遣る。
(んー……)
 一命は取り留めたようだが、正護はなお戦場に倒れ伏し、復帰も退避もままならぬ状況だ。
 それでも――ノイル(aa3000hero001)は内より不安を諭す。
(戦場で信じられるのは武器と、仲間だけだよ)
「ノイル……」
(信じなきゃ、自分も動けないでしょ? でも急がずにね。急いては事を仕損汁とかっていうじゃん? 落ち着こーよ)
「そんな汁はないと思うけど……――うん。今、俺にできる事をしよう」
 危急時にあってなお普段と同じ冗談交じりのノイルにすっかり不安を払拭され、湊はこの任務に就いた理由を、意気込みを思い出す。
 エージェントになってから、やはり人が死ぬ場面に居合わせた事はある。
 だが、できる事ならそんなものを記録するのは御免被りたい。
 ならばただ書き残すだけではなく、よき記録となるよう自ら導かなくては。
 いざとなれば身を呈してでも。

 七海とて同じ気持ちだろう。
「あ、あ、あ、あ……ゆる、ゆる、しっ、てっ……」
 吹き込む風雪にではない、恐怖と、恐らく罪の意識に慄くあまりがちがちと震えてひきつけすら起こしている少女を、七海はポンチョコートで頭からすっぽり包み込む。
 突入前、マックスを始めとした仲間達の記憶照合、それに鞘花への要請で確認した写真の少女、アルビナに間違いない。
「大丈夫、大丈夫だから」
 少しでも安心させようとぎゅっと抱き締めると「ごめんなさい、ごめんなさい」と嗚咽にも似た温かい息が、途切れ途切れに伝わってきた。
 愚神が怖い気持ちは、七海とて同じ。
 だからこそ分かち合えるし、その負担を少しでも減らしてあげたいと思った。
「子供達はこれで全員ですか?」
 湊の問いに修道女がなんとか頷く。
 子供達の点前、なんとか場を持ち堪えているのだろう。
「わかりました。じゃあみんな、そこの出口から逃げるんだ!」
「慌てないで、順番に。シスターさん達も一緒に。――鞘花さん」
≪既に最寄のポイントで待機しています≫
「よろしくお願いします」
「頼みます!」
 七海へインカム越しに応えたオペレーターに湊も再度声をかけ、子供達が床に手を着いたり、身を屈めたまま小走りに出て行く様を認める。
 ――直後。
「まずい――」
「――っ!」
 本来重みを帯びた機関が軽快に、続け様に駆動する音が――そして数多の血飛沫と、無数の薬莢と、順番待ちの子供達の悲鳴が、たちまち礼拝堂を満たした。
 湊は子供達の壁となり、七海はアルビナを庇うように抱き締め。
 二人の脇腹で、背中で、アルを取り巻く者達からも、血が爆ぜる。
 その様を目の当たりに足がすくむ子供達へ、湊は「大丈夫だから、早く」とやせ我慢に笑いかける。
(無理も禁物だよ)
(わかってる! けどこうでもしないと人が……子供達が死んじゃうんだ)
「……っ、怪我はありませんか? アルビナ」
「う、うん……。わたしを知ってるの……?」
「わけはあとで。――さあ、私達も行きましょう」
 七海は絶えず穏やかに、少女を抱いたまま子供達の後に続いた。

「目障りだねえ、ちょろちょろと飛び回って」
 アルの前方に居たエージェント達の被弾を、更に真正面で剣を以って辛うじて受け止めた朝霞と、その後ろ――いつの間にか司祭達との間に立ち、痛みに耐えながらなお悪戯じみた笑みを絶やさぬ京子を認め、溜め息を吐く。
「悪かったね。……わたし欲張りだからさ、全部守り抜きたいの」
 その気持ちがなければ自分の事が嫌いになってしまうから――だから京子はここに居る。
「呆れた子だね、双頭の悪魔じゃあるまいし。婆がせっかく蒔いた種を、両方ついばもうってのかい? この鶫は」
「愚問じゃない?」
「愚神だからね」
「―ー駄神の間違いだろう」
 背後で椅子が鳴る――ダグラスが高く跳躍し腕を振るうと、駄神の右腕へ短刀が穿たれた。
「また“おいた”かい坊や」
 アルが痛がる様子もなく、振り向き様に不遜な紳士を凝視しようとする――
「この前はもてなしてくれてありがとう、僕からのお礼は――これ」
「!」
「……だよ」
 ――が、真ん前に縁が割り込んで、躊躇なく老婆の顔に槍を振り下ろした。
「……――!? ぐああああああああ!」
 ライヴスのメスを宿した穂先は滑らかな線を眉間に描き、そこから絶叫に呼応するように色褪せた羽が溢れ、躍り出る。
「気に入ってくれた、かな?」
「おおおおぉぉ……よ、く、も……!」
 縁は予てアルがそうしていたように屈託のない笑みを見せ、左手で顔面を押さえる老婆の顔を、指の隙間から睨めつける眼を、あえて真っ向から受け止めた。
「…………っ、こんなの効かない、よ」
 ぞろぞろと目を通じて心へ忍び込む不穏にして不快な、苦痛すら伴う気配を、どうにか堪える。
「取り込み中のとこすまないが」
 憎憎しげに歯噛みする愚神へ、少し離れたところからマックスが飄々と語りかけた。
「今度は俺達から問わせて貰おうか」
 そうしてゆらりと手を掲げ、折りしも雪混じりの突風が正面口から吹き込んだ、刹那。
 張り詰めながらも澄んでいた筈の雪風に乗った不浄の力は、気流を歪ませて。
「暖かいかね?」
 朔と紛れし春精の異能、その一切が老婆の全身に遍く注がれ。
 纏う黒衣も、地肌も、恐らく内面すらも無防備となり果て。
「……っ、」
 かくて神ならぬ神は、この世の全てに対し「寒い」と応ずる他なくなった。


●聖なるかな
 戦いは続く。
 否、最早成敗か。
 幾度目かになる機関銃の口さがない囀りに、蒔かれし火薬の種を被れば、多くを縁と朝霞が受け持ち。
 鎧と白き聖衣がへこみ、ほつれ、突き破られて染まれども。
「ケアレイン!」
 朝霞が天へかざした手より放たれた光が拡散し、仲間達へと降り注ぐ。
 司祭と修道女が清かなる光の雨に祈りを捧げ、去れば湊がツインバレルの銃弾で、愚神の脚部を狙い撃つ。
「うがっ!」
 腿の砕けた老婆は挫け、さすれば陰よりマックスが天意とばかり召雷を、無慈悲に落として――また椅子の陰へ。
(……オヂ様)
「ん?」
(なんかものすごく男らしくないというか……さっきまでの勢いはどこに)
「…………まあ」
 遮蔽物に身を置くのは銃撃戦の基本、では一応あるのだが。
 味方の誰もが果敢にアルと対峙する中にあって、まして最前までは我こそマロースとばかり芝居がかった演出で巧みに搦め手を仕掛けていたものだから、ヴェスナ・クラスナことユリア シルバースタイン(aa1161hero001)としては、殊更残念に思えた。
 それはともかく。
 さほどの威力こそなかったものの、マックスの狙い通り、書を以って喚んだ雷に僅か震えたアルの左側面より、ダグラスが踏み込み――しかし振るわれた大鎌の刃は背と腹に風穴を穿つ。
「がフっ――」
「ほう? やはり鳥か。雛ではなさそうだが」
 背と腹と口より夥しい毛羽を噴き出す滑稽な様に狂紳士は侮蔑の笑みを禁じえない。
「――またこいつをくれてやろうかッ」
「神でも人でもないモノが何かを与える道理もあるまい――」
(朝霞!)
「わかってる!」
 右手の銃口がぐにゃりと膨らむのを見てとったダグラスが退き、入れ替わりにウラワンダー――朝霞が大上段より剣の面を叩き落す。
「やけに大きいんだね。けど、種は――」
 更に京子が右から光弾を割れた顔面すれすれに撃ち、微かに気勢のそがれた老婆の大筒は朝霞の殴打により逸らされ、ぶれた右手が向かうは――
「――うん。潰そう」
 縁の盾。

 銅鑼の如き轟音が礼拝堂に反響し、椅子を、硝子を、血だまりを、音波の弾みに震わせて。

 鳴り止む頃。
「――――――――……あ、かっ、は、」
 水鏡の騎士が放った一の突き、その穂先がアルの喉笛を、貫いていた。
 うつ伏せに倒れゆく老婆の身なりが、四肢が、ざわざわと灰の毛羽へと帰し、辺りへ振り撒いては自身をも覆い尽くして。
 そこには無色の小山が、うずたかく積み上がった。

「やれやれ……さすがはロシア、丈夫な婆さんだ」
 それでも果てたらしい事にほうっと胸を撫で下ろしたマックスだったが、ふと、入り口より差し込む光に影が伸びたのを視界の隅に認め、振り向く。
「……!」
 そこには七海にしがみ付きながら、しかし目を見開いてアルの最期を凝視するノーリ――ではない、アルビナの姿があった。
「お疲れさん。その子は……」
「どうしても、ってきかなくて。危ないから止めたんですけど」
「なあ、お嬢さん――」
 少し困ったような声の七海に肩をすくめてみせ、マックスが娘に話しかけようとした瞬間、小山がばさっと跳ね上がった。
「こんなところに居たのかいノーリ!」
「っ、まずいぞ!」
「下がって!」
「なんて生き汚いの!」
(急げ朝霞!)
「間に合って!」
 血走った眼に狂気を孕んだ面持ちの怖い怖いお婆さんの大筒が火を噴く――ほぼ同時にマックスが魔除けの弾丸を放ち、七海が強弓の弦を弾いて、京子と湊までも相次いで引き金を引き。
 五つの弾が交錯する空間を、更に鋭く煌く物体が弧を描いて飛んだ。
 やがて静まり返った時。
 刀身で砲弾を真正面から受け止め歯を食いしばる朝霞が、その真向かいには坊忘我したように入り口を――怯えた顔の“ノーリ”を見続けるアルが、立ち尽くしていた。
「そう、か。あ、い、つ、が仕組ん……だ。マ、ロー……――」
「……なんだと?」
 不穏な遺言をマックスが質そうとしても、答えはなく。
 前屈して倒れたアルの背中には、這ったままの正護が投げつけたブーメランが突き刺さっていた。
「ふん」
 おもむろに歩み寄ったダグラスが愚神の頚椎を踏みしだくと、その身は全て羽となり――さっと床に広がった。


●無色の案内に集るはなんぞ
 子供達と司祭、修道女、正護にアイリスも、H.O.P.E.ゆかりの医療施設へ搬送され、エージェント達はこれに付き添う事となった。
 一般人は負傷こそないものの、特に子供達はある種の極限状況を経た結果心身の衰弱が著しく、容態を見る為にも一晩宿泊する運びとなった。
「鞘花さん、子供達の様子は?」
「お疲れ様です、湊さん。お陰様で大事ありませんよ。正護さんも、命に別状はありません」
「良かった……」
「ですが、……皆かなり憔悴しています」
「……ショックだったろうな。目の前であんな事があったんじゃ」
「ええ……。アフターケアはこちらへお任せください」
「頼みます」
 廊下で鞘花に頭を下げて、湊は病室のドアをノックした。

 中に入ると、子供向けの為か院内にしては彩りのある調度の病室では、ダグラスと静希を除く全員がベッドの周辺で、少女を囲むようにしていた。
「おじさんにね、“寒いか?”って聞かれたの」
 ベッドの上で、アルビナは語る。
 双子の弟――名はミロン――と自分が、ジェド・マロースに誘拐された時の事を。
「寒い夜だったから、わたしは“寒い”と。でもミロンは“暖かい”って答えた」
 そうして不思議な問答の後、しばしアルビナの記憶には空白が生ずる。
 ふと気がつくと、マロースと共にこのイルクーツク市を歩いていたのだそうだ。
「彼は言ったわ、“お前は悪い子だ。悪い子はあの家では生きていけない”って。……はじめは、なんの事かわからなかった。でも、」
 次いで“家”とは何か、そこに住む老婆が何者か、子供達に、ミロンに待ち受ける運命を聞かされ、幼い少女にもおおよその事態は飲み込めた。
「別れ際にこの写真を渡されて……」
 アルビナがポケットから抜き出したのは、いつぞやサンクトペテルブルグ支部に届いた写真と同じものだった。

 ――この写真の誰かと出会った時、お前は凍え死ぬだろう。

 そう言い残して、ジェド・マロースは姿を消した。
 深い、雪の日の事だったという。
「ずっと、ミロンの事考えないようにしてた。だって、あの子も写真に写ってるから。……だけど、お婆さんの顔を見てから――目をつむっても浮かんでっ……――きっと恨んでる、わたしの事今もどこかでっ――…………っ」
 概ね事情を話し終えるか否かの折り目で、アルビナはさめざめと泣いた。
 ゆるして、ゆるして、と。
「赦し、か……」
 縁は、ふと神妙な面持ちのウィンクルムを見遣った。
(僕に、亡くした存在を重ねて尽くしてくれているけれど)
 そうする事で、罪の意識を、己への赦しを、求めているのだろうか。
 だが、想いを声にする事はなく、代わりにアルビナへ語りかけた。
「自分を赦せるのは神様や他人じゃなく、自分自身だけだって……僕は思う」
 ゆえ、罪の意識――自分自身から目を背けてはならない。
「でもね、アルビナ。その為の道を探す手伝いなら、僕にもできるかも知れないから。きみが望むなら……その時は、力になりたい」
「ノーリ――ううん、ミロンの事もね」
「!? 生きてるの……? どこに――」
 京子が挟んだ言葉に、アルビナは泣き濡れた顔で振り向く。
「まだわからない。だけど、わたし達がやり残した事なの。必ず助け出さなきゃ」
「ふ――ふぇええええええええ」
 思いがけぬ事だったのか、嬉しいのか、あるいは――先ほどとはどこか異なる色の大きな声で、アルビナは泣いた。
 七海が慌てて抱き締め、頭を撫でる。
「大丈夫、きっと助け出すから! ……アルビナの事も、これからも皆で守るから、ね。だから――」

 心の花に、綺麗な色を付けてあげて。

 七海が優しく囁くと、アルビナは一際大声で泣いた。
 これを以って、この日の湊の記録は救われる形で結ばれる事となったという。

 だが。
「……」
『オヂ様?』
「……+」
 ユリアがマックスの訝しむ顔を不思議そうに問うても、彼は黙り込んだままだった。
(なんだ、これは)
 アルもアルビナもマロースの名を口に出す。
 その意味を、考えずにはいられなくて。
 だが、わかったのは、パズルを解く為のピースが全く足りていない事だけだった。

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結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

  • グロリア社名誉社員・
    防人 正護aa2336

参加者

  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
    人間|22才|女性|防御
  • 聖霊紫帝闘士
    ニクノイーサaa0476hero001
    英雄|26才|男性|バト
  • 我王
    ダグラス=R=ハワードaa0757
    人間|28才|男性|攻撃
  • 雪の闇と戦った者
    紅焔寺 静希aa0757hero001
    英雄|19才|女性|バト
  • 晦のジェドマロース
    マックス ボネットaa1161
    人間|35才|男性|命中
  • 朔のヴェスナクラスナ
    ユリア シルバースタインaa1161hero001
    英雄|19才|女性|ソフィ
  • 水鏡
    榛名 縁aa1575
    人間|20才|男性|生命
  • エージェント
    ウィンクルムaa1575hero001
    英雄|28才|男性|バト
  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336
    人間|20才|男性|回避
  • 家を護る狐
    古賀 菖蒲(旧姓:サキモリaa2336hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 市井のジャーナリスト
    玖渚 湊aa3000
    人間|18才|男性|命中
  • ウマい、ウマすぎる……ッ
    ノイルaa3000hero001
    英雄|26才|男性|ジャ
  • 絆を胸に
    五十嵐 七海aa3694
    獣人|18才|女性|命中
  • 絆を胸に
    ジェフ 立川aa3694hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
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