本部

【甘想】連動シナリオ

【甘想】交流会という名の処分パーティ

東川 善通

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
5人 / 4~10人
英雄
5人 / 0~10人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2016/02/28 11:55

掲示板

オープニング

●もうお腹いっぱい
 風 寿神(az0036)はある種の病気持ちだとパートナーを務めるソロ デラクルス(az0036hero001)は考えている。
「俺はいつも助けてもらってばかりじゃ。こうやって生活できるんも、あの人の財産をもらったからにすぎん。せやけど、本当にこのままでええんじゃろうか」
 そう言いながら寿神は生クリームを掻き交ぜている。その周りには既に作られたクッキーなどが並べられていた。そんな中で寿神は一人ぶつぶつと零しながらも、手を動かし、次々とお菓子を作っていく。今回はお菓子だが、前回は料理だった。何かをやりながら、心に溜めているものを吐き出す寿神。一種のストレス発散であり、病気だとソロは思う。そんなソロは時折、相槌を打つも基本は黙って聞きながら、お菓子をつまむ。そして、寿神は暫くすると発酵している間にと、次のお菓子へと取り掛かっていた。ブツブツと言いつつも、材料の分量などはしっかり量っているのだから、何とも言えない。しかし、とソロは所狭しと並べられた菓子の数々を一瞥するとスー、と名を呼んだ。
「……なんじゃ?」
「えっとね、流石にこれはボクらじゃ、食べきれないよ?」
「あ」
 作業している後ろに並べられたお菓子の数々。それを見て、寿神はしくったと片手で顔を覆った。
「すまん、フーリ」
「うーん、まぁ、この量になるまで止めなかったボクもボクだし」
 さて、どうしたものかと二人揃って首を傾げた。

●お届け物でーす
 翌日のお昼前、寿神とソロは箱詰めしたお菓子を袋に入れれるだけ入れて、H.O.P.E東京海上支部に来ていた。
「あ、おねーさん!」
「あら、ソロちゃんじゃない、今日は何かあった?」
 よくお世話になるオペレーターの女性道師(みちのし)にソロが呼びかければ、それに気づいた彼女は寿神に一礼し、ソロに近づいた。ソロの目線に合わせれば、ソロはにへらと笑みを浮かべ、持っている箱を道師に差し出す。
「これ、あげます!」
「なぁに、これ?」
「スーが作ったお菓子」
 本当? という顔で寿神を見上げれば、寿神は申し訳なさそうに眉を下げていた。
「中、見てもいい?」
「どうぞ」
 箱を開けると、そこにはお菓子が綺麗に入れられていた。ただ、どれもこれもチョコをふんだんに使ったチョコ菓子というもので……。
「風ちゃんは誰かにチョコをあげるつもりだったの?」
「……? いや、特にはないのぅ。ただ、チョコが安かったというだけで。何か、チョコが関係する行事でもあるんけ?」
 首を傾げた寿神に道師は、あらまぁと驚く。ソロもわかっていないらしく寿神同様に首を傾げていた。
「先日、バレンタインだったのよ。だから、それの余りものかなって」
「ううん、違いますよ。ただのスーのストレス発散です」
「悲しいことじゃが、フーリの言う通りでのぅ。愚痴りながら作っておったら、作り過ぎたんじゃ」
 流石にこれだけの量を二人では食べられないと判断して、と持っていた袋を持ちあげて見せれば、確かにそうかもと道師は頷いた。そして、道師は、これだけ一人で食べると流石にダイレクトに来るわよねとブツブツ言ったかと思うと、いいこと思いついたとパンと手を叩く。
「皆に振る舞いましょう」
「「??」」
 そのつもりで持ってきたんだがと二人が首を捻るも、道師は気にする様子もない。
「チョコ菓子処分会もとい、交流会! 風ちゃんの人慣れのためにもいいでしょ」
「俺、別に慣れとらんとかそう言うんじゃなくて、多少苦手なだけで」
「だから、その苦手克服にって」
 そうと決まれば、食堂を間借りできないか聞いてくるわねと何故か張り切りだした道師は呆然とする寿神とソロを置いて、さっさとどこかに行っていまった。残された二人は顔を見合わせ、道師が去った方向をもう一度見つめる。
「何がどうなったんじゃ」
「うーん、僕にもわかんない。でも、お菓子がなくなるのだけはわかったかな?」
「……まぁ、なくなればええか」
 とりあえず、今日のところは持って帰ろうと踵を返そうとしたところに道師がバタバタと足音を立てて、戻ってきた。
「風ちゃん、ソロちゃん、お菓子はこっちで預かっておくわね」
「いや、別に平気じゃが」
「箱のまま出すわけにはいかないでしょ。それなら、こっちで盛り付けしておくから、ね」
 任せて頂戴と言われ、二人は顔を見合わせる。そして、ソロは寿神から袋を受け取ると、それを道師に差し出した。
「じゃあ、お願いしまーす」
 そう言えば、道師は笑顔で受け取り、おやつ時くらいに食堂にねと言い残し、再び戻っていった。寿神とソロは手ぶらになったということもあり、空いた時間を潰すため、仲良く手を繋いで支部を一度出た。
 一方では、うーん、失敗したお菓子混ぜちゃってもいいわよね。見た目はいいし、わかんないわかんない、寿神たちから受け取ったお菓子に自分の失敗作をこっそりと混ぜ込む道師の姿が目撃されたとか。
 暫くした後、偶々依頼の確認などで支部を訪れていたエージェントたちに道師が声をかけていった。
「美味しいお菓子を片手に食堂でお話でもいかがですか?」

解説

 寿神の作り過ぎたお菓子を食べよう!
 ついでにいろんな人と楽しんじゃおう。

●会場
 H.O.P.E東京海上支部の食堂。名目はエージェントたちの新たなる交流と親睦を深めるため。
 机やお菓子の入った器などは全て借りものなので、それらを壊さないようご注意。

●お菓子
 チョコ菓子がメイン。日持ちのするクッキーから頑張って作ったらしいケーキまで。ちなみに味は普通に美味しい。ただ、稀に形が崩れたものも混入しているようだ。
 なお、数個ほど道師が作った失敗作が混入している模様。見た目は普通のと変わらないのだが、味が……。
 ちなみに持ち込みも可。渡せなかったもの、ちょっと作り過ぎちゃったものでも可。

●飲み物
 お茶からジュースまでご用意。ジュースを片手にお菓子をつまむなり、なんなりと。
 飲酒禁止ですので、お酒の持ち込みは不可。

●風 寿神&ソロ デラクルス
 強制参加のNPC。ソロは比較的、お話に混ざりに行く。ただ、寿神は隙を見て、部屋の隅っこで座りこむよう。
 ちなみに無言でソロの尻尾やお耳をモフモフしちゃうと叫んで逃げるので要注意。

●その他
 リプレイはパーティ開始後からとなります。馴染みのない方に声をかけてみるもよし、お菓子の感想をシェアしてもよし、皆で楽しめるゲームなどをしてもいいかもしれません。まだまだ成りたてのエージェントさんは自己紹介から始めるもいいでしょう。尚、雑談の内容は他人を不快にさせるよなことがないように。また、ゲームは一つほどが限度とさせていただきます。大体三時間ちょっとの交流会なのであれもこれもと欲張ると一つ一つの内容が薄くなってしまいますのでご注意ください。
 また、交友がある方とだけ接することはできません。

リプレイ

●パーティ開始
 道師が声をかけまくったおかげで、食堂にはエージェントたちが集まった。そして、短い時間だったにも拘らず、テーブルの上には大小様々な皿が並べられ、その上には寿神が箱詰めしていたお菓子が綺麗に盛り付けられている。また、お菓子ばかりでは味気ないと思ったのか、花も一緒に飾られており、華やかなものとなっていた。その光景に散々食べていたというのにごくりとソロ デラクルス(az0036hero001)が喉を鳴らすほど。そして、作り手である風 寿神(az0036)は「俺が作ったものなのか」とほぅと感嘆の声を上げた。
 さらにそこにエージェントたちが持ってきたお菓子が追加され、チョコパーティが始まる。道師は始まってそうそう、「風ちゃんに任せるわね」と離脱していった。
「征四郎だって、作れるんです。さすがにガルーにはおとるかもしれませんが」
 自分の作ったケーキやマカロンの隣に置かれてあるウィスキーボンボンを見つめ、紫 征四郎(aa0076)は溜息を落とす。それに苦笑いを浮かべつつ、「初めてでこのくらい作れりゃ、いいだろ」とフォローを入れるガルー・A・A(aa0076hero001)。
「スシェン、この間ぶり」
 ソロにお菓子を取り分けていた寿神に元気のいい声がかかる。振り向けば、そこには以前の依頼で世話になったギシャ(aa3141)。それに寿神は「この間ぶりじゃな」と笑みを浮かべた。
「怪我などはもう大丈夫か?」
「スーもボクも全然大丈夫です」
 葉巻を咥えながら、そう尋ねたどらごん(aa3141hero001)にソロは元気よく答える。それにどらごんは「この仕事は体が資本だからな」と注意を促した。
「おいらはリッソ! こっちはトモダチのクロエだよ。よっろしくー!」
 大きな声で元気よくリッソ(aa3264)は自分と友人の鴉衣(aa3264hero001)を紹介をする。それに近くにいた木霊・C・リュカ(aa0068)が「リュカお兄さんだよ、よろしく」と彼に声をかけた。そして、リュカの隣でリュカが食べやすいようにチョコを取り分けていたオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)の紹介も行う。
「……よろしく」
 ぽつりと呟くように言ったオリヴィエの視線はパッと笑顔を浮かべたリッソの顔ではなく、嬉しそうにパタパタと振られている尻尾に向かっていた。
「もう、今日は本当にいい日よね。毎日あってもいいくらいだわ」
 くるみが混ぜられたパウンドケーキを頬張り、うっとりとする天間美果(aa0906)。それに「喉に詰まらせないようにね」と注意しつつ、自身もスコーンをベルゼール(aa0906hero001)は食べていた。

●小さな話に花を咲かせる
「あ、そうだ、これ忘れてた」
 てへっと言いながら幻想蝶から【限定】甘い魔法のクリスマスブーツを取り出すリュカ。それに「お前がやっても可愛くねぇんだよ」と野次を飛ばすガルー。一方で、クリスマスブーツを見て、ソロは目を輝かせる。
「スー、スー、あれ」
 以前にもお目にかかったこともあったこともあり、興奮気味のソロはスーの手を握って、リュカに近づき、彼が持っているそれを眺める。
「食べるか?」
「いいんですか!?」
 食べたそうにしているソロにオリヴィエが声をかければ、パァッと笑顔を咲かせるソロ。リュカはその弾んだ声を聞いて、クスクスと笑った。
「あの、なんじゃ、フーリがすまん」
「大丈夫だよ。こんなに喜んでもらえるなら、取っておいてよかったよ」
「ただ、二か月くらい前のだけどな、それ」
 申し訳なさそうに謝る寿神にリュカは気にすることないと言った。そんなリュカからクリスマスブーツを受け取り、ソロはごそごそと開封するとそこに詰まっているお菓子を見て、くふんと鼻を鳴らす。嬉しそうにしているところ悪いがとオリヴィエが「大丈夫か」と寿神に確認をすると「大丈夫みたいじゃぞ」と尻尾をパタパタと嬉しそうに振り、お菓子を頬張るソロを指さした。
「あー、それ、ギシャも食べたい」
 ソロの食べているものを見て、同じ獣人ということもあってリッソと話に花を咲かせていたギシャはリッソも連れて、集まってきた。
「ギシャ君も食べる?」
「食べたい! あ、リッソも食べよう」
「うん」
 これが美味しい、それはどうなどと話をしながら、ワイワイとする子供たちにリュカはそっと傍に居たオリヴィエの背を押した。
「オリヴィエも混ざっておいで」
「だが」
「大丈夫だよ。ほら、ガルーちゃんだっているし」
 そう話している間にもソロたちの輪に征四郎も加わる。征四郎が加わるとギシャが思い出したように声を上げた。
「あ、征四郎に聞きたいことあったんだ」
「はい、なんでしょう」
「えっとね、どうやったら征四郎たちみたいに活躍できるかな?」
「えっと、それはですね――」
 うーんと考えながら、征四郎は自分の考えを語る。それを尋ねたギシャは勿論、リッソやソロもふんふんと頷きながら聞いた。そこにリュカに送り出されたオリヴィエが合流したのだが、どうやって混ざればいいのか考えあぐねていた。
 一方で寿神はソロが征四郎たちと仲良く話をしている光景を見て、癒されるなと思いつつ、隅っこに移動しようとした。しかし、移動しようとした矢先、リュカに「お菓子、とっても美味しいね! 今日は呼んでくれてありがとう」と言われ、「いや、これは、道師サンが……」と照れなどからもごもごと口ごもる。
「でも、作ったのはお前なんだろ。だったら、堂々としてりゃいいんだよ」
 そう言って、ガルーが二人の話に混ざる。ただ、ガルーの言葉に「お兄さんのセリフ、奪われた~」とリュカは文句をたれた。そういう状況に全くといいほど慣れていない寿神は目をぱちくりと瞬き、どうしたらいいのか硬直する。
「あ、風、ちょっといい?」
「なんじゃ?」
 己の周りにあったお菓子を平らげた美果が寿神を呼ぶ。それに寿神は素早く反応を返し、ガルーとリュカの脇を擦り抜け、美果の方に向かった。それに「あ、もう少し話ししたかったのに」とリュカが零し、ガルーは頭をぼりぼり掻くと、リュカに「なにか飲み物いるか? ついでだから持って来やるよ」と言えば、「じゃあ、甘いものにピッタリなもので」と注文する。ガルーは「へいへい」と返事をすると、調理場に顔を覗かせ、少し使わせてもらえるように頼んだ。「飲み物を作るだけだから」と言えば、「まぁ、そのぐらいなら」と一部を貸してもらえることになった。そこで、リュカに紅茶を入れ、自分用にブラックを入れる。そして、きゃあきゃあはしゃいでいる征四郎たちを見て、彼女たちのために少し甘さを控えたココアを入れた。他にも寿神や美果などの女性陣にもコーヒーと紅茶を入れる。
「これってもうちょっとないのかしら?」
「うむ、どうじゃろう。盛り付けたのは道師サンがやってくれたからのぅ」
「それと同じものなら、確か向こうのテーブルにもあったぞ」
「あら、本当? ありがとね、鴉衣」
 一方で、美果のところにいった寿神はお菓子の在庫を尋ねられていた。しかし、盛り付けしたのは最初に離脱した道師であるだろうしと唸っていると近くにいた鴉衣が答え、美果は早速それを取りに向かっていった。それに寿神は鴉衣に一礼をし、スススッと隅っこに向かい、ふぅと息を吐いて、座り込む。
 同時刻、ソロたち、子供たちはあの依頼はこうで、前の依頼はあぁだったななど自分たちが戦った記録を話し、短時間ながら、親しくなっていた。
「ところで、ソロの尻尾は触ってもいいですか」
 先程から気になってましてという征四郎にソロはキョトンとするものもいいよと手で尻尾を前に持ってくる。それにおずおずと征四郎が手を伸ばした。ふわっとした毛は見た目通り柔らかく征四郎の手を包み込む。それに感動する征四郎の隣でオリヴィエが何度も口を開いては閉じてを繰り返していた。
「オリヴィエもどうぞ」
「! いいのか?」
「うん、いいよ」
 空いている尻尾を差し出せば、少し嬉しそうに頬を緩ませる。そして、触れれば、本当に小さな声で「ふわふわ」と感想を零した。ソロの尻尾に触った征四郎は次にとギシャやリッソにも触らせてほしいとお願いをする。それにリッソは「し、しっぽは優しくさわらなきゃダメなんだぞ? 切れたら生えてこないってとーちゃんも先生も言ってたもん!」そう言って、おずおずと尻尾を差し出した。しかし、ソロのを触っているところを見ていたから、恐怖はあったもののそれほど緊張はしなかった。
「ほら、喋ってばっかだと喉乾いただろ」
 一息吐いたところを見計らい、そう声をかけ、征四郎の頭の上にマグカップを乗せるガルー。それに征四郎は「ありがとうございます」と礼を言って受け取った。それから、リッソ達にもとお盆に乗せて運んできたココアを渡してやる。
「ガルーのお兄ちゃん、ありがとう」
「おう」
「あ、そうだ、ガルーのお兄ちゃんにもこれ、あげる」
 リッソはそう言って、ガルーの持っているお盆にティッシュを敷き、そこにアーモンドを出した。彼が一生懸命作業している間に近くにいた征四郎たちを見れば、手にティッシュを持ち、その上にスライスされたアーモンドが乗っているのが確認できる。ガルーはさて、これをどう使おうかと巡らせる。そして、目についたのは生チョコタルト。――サクサクのクッキー生地に生チョコを乗せ固め、その上からココアパウダーを振りかけただけというとってもシンプルなタルト。それにアクセントとして、アーモンドをトッピングするのもいいかもしれない。もしくは、シフォン生地のロールケーキにトッピングするのもありだな。
「ありがとな」
 そう言って、リッソに礼を言いつつも、頭の中ではアーモンドの使用方法を只管考えていた。そして、いくつか試して食べ、いいのがあれば征四郎たちにそれを伝える。
「あなたは食べないの? こんなにも美味しいのに」
 葉巻に火を付けることなく、ただただ咥え、ギシャたちを微笑まし気に眺めているどらごんに美果はチョコサンドを差し出しながら尋ねれば、どらごんはそれをやんわり断る。
「生憎、甘い菓子は苦手でな」
「あら、じゃあ、なんでまたパーティに?」
「休息と娯楽は心を豊かにする。特にギシャのようなまだまだ若い者たちには、な。まぁ、早い話がギシャが楽しむ姿が見たいというだけだ」
 フッと笑みを零すどらごんに美果は「それもいいわね」と差し出していたチョコサンドを己の口へと運んだ。そこにガルーによって、紅茶やコーヒーを届けられる。それに舌鼓を打ちつつ、美果はどらごんと話を咲かせた。
「……」
「クロエ、どうしたの?」
「いや、なんか、この菓子、不思議な味がする」
 そう言って首を傾げる鴉衣に話を聞いていたガルーが興味を持った。
「不思議な味がするってやつってどれだ?」
「これだが」
 鴉衣が指差したのはチョコベリームース。チョコのムースの上にラズベリーのムースを重ね、最後にラズベリーピューレを流し込んだ色も鮮やかなお菓子。見た目は綺麗で、とても不思議な味がするとは思えない。それをガルーは手に取るとスプーンで一口。
「不味い」
 そして、その一言。動向を気にしていた征四郎も一口もらい、「なんというか、その、独特な味ですね」と恐らく作ったであろう寿神を気遣いそう零した。しかし、そのデザートを見た、ソロは首をこてんと傾げる。
「これ、スーが作ったのじゃないよ?」
「じゃあ、誰の? おいらたちのは征四郎たちの分だけだし、おいらは持ってるし、リュカのお兄ちゃんは後から出してたし」
 ソロの言葉に同じようにリッソが首を傾げた。そして、もしかしたら道師が? となるも本人は居らず確認はできなかった。
 その後、不味い不味いというそれを美果も口にし、感慨深く頷くと「これだけ綺麗なのに勿体ないわね」と呟き、口直しとばかりに近くにあったクッキーを頬張った。
「よ、食ってるか」
 ココアを飲むオリヴィエの隣にそう言ってガルーは腰を下ろす。オリヴィエは彼を一瞥し、もう一口とココアを口に流し込んだ。
「毎度思うけどよ、少食のオリヴィエはこういうの大変だろ」
 そう言いながら、ついでに持ってきたケーキやクッキーなどを小さく小分けにして、オリヴィエの口へと運ぶ。オリヴィエはそれに小さく口を開け、食べる。
「……ん、美味しい」
 次々と運ばれるお菓子を食べてはココアを味わう。以前よりも食べるようになったその姿にガルーはフッと笑みを浮かべた。
「……前より沢山食べれるようにはなってるんだな、良いことだ」
 頬に付いたクッキークズを取ってやるガルー。その姿を征四郎は寿神のこれほどまでに作ってしまった理由を聞きながら、見ていた。
「まるで、親子のようじゃな」
 姿かたちは似てはいないが、心配する様がそう思うと寿神が零せば、征四郎はふふふと笑いながら頷く。それに定位置ともいえる寿神の膝に座るソロはぽつりと爆弾を落とした。
「ガルー君はママなの?」
 その呟きは思った以上に大きいものだったようで、ガルーはオリヴィエの頭を撫でている状態で固まり、オリヴィエは驚いたのかぴたりと硬直した。ただ、征四郎とは反対に座っていたリュカはツボに入ったのか体を震わせ、机に突っ伏す。
「おい、リュカ、テメェ笑ってんのわかってるからな!」
「そん、なに、怒鳴らなく、ても、聞こえてる、から」
 ガルーママと笑いで途切れ途切れになりながらもそう答えるリュカ。それにクソッと呟いたかと思うとどうしてみんなが笑っているかわからないソロに「普通、そこは母親じゃなくて父親だろ!」と言う。
「え、ボク、間違えた?」
「ソロ、ママとは女の人のことを言って、男の人はパパですよ」
「でも、前にアニメで男の人に向かって『お前は俺のおかんか』って言ってるのがあったよ? おかんってママのことでしょ?」
「それは例えというものだな」
 ソロの間違った知識に征四郎がそれを正そうとするものの変な方向から知識が入ったようで、ソロの後ろで寿神は「すまん」と零していた。それを見かねてなのか、鴉衣がソロに訂正を入れる。
「――ということだ」
 わかったか? と言われ、ソロは首を傾げながら「たぶん」とだけ答えた。
「……これは直すのに根気がいりそうだな」
「あー、本当に申し訳ない。ガルーサンもすまん」
 思わず呟いた鴉衣に苦笑いを浮かべる寿神。そして、ソロに代わってとガルーに詫びる。怒る気が失せたと隣を見れば、スッと顔をそらすオリヴィエ。
「お前」
「……俺は関係ない」
「やだー、俺様の手からお菓子食べてたのに、オリヴィエちゃん、そんなこというのー」
「……そんなことをするからママと呼ばれるんだ」
 そう言ったオリヴィエに「他人事だと思いやがって」とオリヴィエを構い倒しに入るガルー。そんな一方で、ギシャはどらごんから親子とは何ぞや、母とは、父とは、という授業を受けていた。
 また、そのママ騒動が終わった後にはベルゼールを筆頭に自分の相方がいかにいいかを語り始めていた。
「わたくしの主はやはりご飯を食べているときが一番いいですね」
 今の食べている姿も素晴らしくいいじゃないですかと続けたベルゼールに「あれはいくら何でも食べ過ぎと言うレベルでは」と思うが、それはもう微笑ましそうにそれを眺めているのを見ると口に出すことができない。
「ところで、どらごんさんの所のギシャさんはどうなんですか?」
「俺が言うべきことではないが、ギシャが楽しそうにしていればそれでいい」
「わたくしだって、そう言うものですよ。むしろ、大体そう言うものじゃないでしょうか」
 稀に嫌っている者同士もありうるかもしれませんが、好きで傍に居る方のほうが多いでしょうしと続ければ、ソロが「ボクはスーが大好きだよ」と大きな声で宣言する。遠くでは寿神が全くと溜息を吐いているが、リッソが何か彼女に言葉をかけていた。
「皆でお話中、ごめんなさいね」
 そう言って話に割って入ったのは先程まで約一名の話題になっていた美果だった。その美果の手にはたっぷりとお菓子が積まれた皿がある。
「ベルゼール、あなた、あまり食べてないわよね。これ、あたしのおススメよ」
「あら、美果、ありがとう」
「いいのよ。気にしないで。とりあえず、あと少しで全種類コンプだわ」
 そう言って、再びお菓子をつまみに行く美果。そして、残されたお菓子の山はベルゼールにいとも容易く平らげられた。
「うーん、これは類友?」
「そうだな」
 首を傾げたソロに鴉衣は頷き、嬉しそうに寿神にかけていったその姿を見つめ、自分のパートナーであるリッソへと目を向けた。

●宴もたけなわ
「ほんと、美味しかったわ。風、また、作った時は呼んで頂戴」
「あ、もう二つほどクリスマスブーツあるけど」
「うーん、流石のあたしもおなか一杯だわ」
 テーブルに乗せられていた料理の数々は殆どが美果のお腹の中に収められた。それに思い出したようにリュカがクリスマスブーツの存在を上げれば、「もう満足」とばかりに大きくなったお腹を叩く美果。
「じゃあ、また別の機会だね」
「クリスマスブーツの中のお菓子、とってもおいしかったです。ありがとうございます」
「こちらこそ、美味しいお菓子をありがとう」
 残念と呟き、クリスマスブーツを幻想蝶の中へと戻す。そんなリュカににこにことソロがお礼を告げた。
「今日は一杯、教えてくれて、ありがとう」
「征四郎ので、役に立てたでしょうか?」
「うん、とっても。あ、良かったらお友達になってください」
「勿論、征四郎からもお願いします」
 ギシャと征四郎の会話を眺め、どらごんは「いい休息になったようだな」と頷く。また一方では「ナッツ美味しいから」とナッツをお勧めするリッソにそれを「わかってる」と頷くオリヴィエ。
「あ、そうだ、これ道師ってやつに渡しといてくれ」
「なんじゃ、これ」
「渡せばわかるって」
 封を閉じられた紙袋を渡され、首を傾げるものの寿神はガルーから受け取り、解散した後にそれを道師に渡した。わかると言っていたがどういうことなのかと首を傾げ、後日聞いたが笑顔でなんでもないと返されることとなった。

「そう言えば、あの不思議な味のムースをガルーがどこかに片付けていたな」
 後片付けをするときに綺麗に余ったそのムースをあの彼はどうしたのだろうかと鴉衣は考えたが、「クロエ」とリッソに呼ばれ、鴉衣はその考えを脳内より追い出した。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 肉への熱き執念
    天間美果aa0906
    人間|30才|女性|攻撃
  • エージェント
    ベルゼールaa0906hero001
    英雄|24才|女性|ソフィ
  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141
    獣人|10才|女性|命中
  • えんだーグリーン
    どらごんaa3141hero001
    英雄|40才|?|シャド
  • エージェント
    リッソaa3264
    獣人|10才|男性|攻撃
  • 味覚音痴?
    鴉衣aa3264hero001
    英雄|20才|女性|シャド
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