本部

アイテムトーク 大学の一室にて

星くもゆき

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~12人
英雄
8人 / 0~12人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2016/01/30 19:04

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-

掲示板

オープニング

 筑波に位置する広大な学府、紫峰翁大學の一室、日当たりの良い広い教室にH.O.P.E.からの研究協力という形で何人かのエージェントが集められていた。大学の研究生から今回の研究に関する説明を受けているが、専門用語が次々に出てきてもはや理解が及ばない。
 幾つか並べられた長机の上には、使い込まれた武器や防具が積まれており何やら物々しい光景となっている。
 紫峰翁大學に対する協力の内容は、幻想蝶の一時的な貸し出しだ。研究を進めるにあたってどうしても幻想蝶が必要らしく、作業は3時間程度で終わるらしい。その間は幻想蝶内部に収納している物は外に出しておいて欲しいということで、広い教室を割り当てられたのだ。
 ライヴス技術の発展のため自発的に、あるいはH.O.P.E.から依願(の名を借りた強制命令)を受けて参集したエージェントたちは幻想蝶から次々と収納物を取り出していく。

「それではお預かり致します」

 全員の幻想蝶を回収して研究生が出ていく。あとは作業が終わるのを待つだけだ。所持品が全部広げられているおかげで随分と散らかった教室で。

 数々の戦いをくぐり抜けてきた相棒とも呼べるアイテム。
 何に使えば良いのかわからないアイテム。
 普通に装備してたけどよく考えたら見た目やばいな……というアイテム。

 目の前には、多種多様なアイテムの山が積み上げられていた。

解説

お持ちになっているアイテムに関してトークするシナリオです。
自慢とか、あれ欲しいとか、何か議論も楽しいかもしれません。
面白アイテムを取り出して遊ぶのも良さそうです。
普段の戦闘依頼ではとても使えないようなものを皆さんお持ちでしょう。
お手持ちの名品、珍品、駄品を装備してお越し下さい。
装備していないと、こちらで所持品の有無を確認できないので描写ができなくなります。

限定アイテムでも構いませんが他シナリオの参照はしないのでアイテム説明やプレイング文章から読み取れる以上に詳細な描写はできません。

戦闘シナリオではないので装備コストのことは考えなくて良いです。
ビジュアル面で遊ぶことを考慮して、英雄装備と能力者装備の区別は行いません。
ちなみに幻想蝶が手元にないため共鳴はできません。

自分の所持品を誰かに貸与して装備させてみるというものも受け付けます。(今シナリオ内に限った描写です。実際のアイテム移譲はありません)
なおサイズの違いでぶかぶかだったりパツパツだったりします。

故意にアイテムを失うようなプレイングがなければ、特にアイテム喪失はありません。

お腹が空いたら食堂に向かうのも良いでしょう。
ですが広すぎて慣れている者ですら迷うので、迷子になること請け合いです。


※紫峰翁大學とは
筑波にある日本で2番目に広大な敷地を持つ大学。森や林もありとっても広い。
敷地内の移動はもっぱらバスや乗用車、自転車で行われる。
ライヴス技術や愚神・英雄に関する研究を行う学科がある。(普通の学科もたくさんあります)
居住区はおろか商業施設まで内包しており『紫峰翁学園都市』という呼称まである。
一般客にも開放されている学生食堂(カフェテリア)が敷地内に散在。
学生は馬鹿騒ぎが好きな者と内向的な者が目立つ。有数の難関大学でもある。

リプレイ

●遅刻

 廊下。優雅なメイド服を着る女性が、少女が乗る車椅子を押している。
「愚神と戦うばかりかと思っていましたが……こんな依頼もあるんですね」
「……はい、依頼内容は研究への協力、主に幻想蝶の貸し出しのようです」
 珍しい依頼を受けた感想を述べている車椅子の少女は言峰 六華(aa3035)である。そして彼女に対し淡々と説明を述べ、車椅子を押しているのは彼女の英雄Eлизавета(aa3035hero001)だ。
「……私達は始めての依頼ですし、少し……緊張しますね」
 座ったまま後ろを向き、六華はエリザヴェータに弱い笑みを見せる。
「でも、レーラちゃんも一緒みたいだし安心かな……」
 顔を赤らめる六華。エリザヴェータは何も言わない。
 やがて集合を告げられた教室の前に到着する。エージェントとしての初めての仕事、六華は1度深呼吸をして。
「……ごめんなさい。ちこく、しちゃいました」
 入室。少し恥ずかしそうに、顔を下げて。エリザヴェータは教室内のエージェントと会釈を交わしていく。
「……あれ? 六華ちゃん……エージェントになったのね」
 かけられる声。懐かしいその声を聞き、六華はハッと振り向く。
 その先にいたのは言峰 estrela(aa0526)だ。六華と同じ姓を名乗る、彼女の従姉妹である。
「うん、ワタシも……来ちゃった……」
 赤面しながらも嬉しそうな表情の六華に対し、エストレーラは複雑な心境でいた。
「今回は戦闘ないけれど……大丈夫?」
 ちらりと六華の車椅子を見て、エストレーラが確認する。
「……戦うのは、やっぱり怖いけど……大丈夫。レーラちゃんがいるから」
 エストレーラの手を両手で包み、微笑む六華。顔の赤みはどんどん増していく。
「そ、そう? ……あ、来たのなら幻想蝶を研究員さんに渡さないとね? すぐそこの部屋にいるみたいよ、お話はまたあとでしましょ!?」
 六華にあてられてエストレーラも妙に恥ずかしくなってきたので、六華に幻想蝶を渡してくるよう促して会話を切り上げる。幻想蝶は能力者と英雄にとって大切な物であるため、何かあった時にエージェントらがすぐ駆けつけられるよう作業は近くの部屋で行われている。
「う、うん」
 エリザヴェータに合図をして、六華は幻想蝶を提供しに向かった。

●恥

 メイナード(aa0655)は机に肘をつき、顔を覆っていた。理由は、持ち物検査よろしく所持品を長机の上にぶちまけられたことである。
 彼の隣では、Alice:IDEA(aa0655hero001)もまた見られてはいけないアイテムを必死に隠していた。主に薬品の類である。
 持ち物を必死に隠そうとするのは彼らだけではない。麻生 遊夜(aa0452)も長机の上に、隠さなければいけない物を見つけてしまった。
「……しまった!?」
 慌てて、遊夜はそのブツをアイテムの山の中に突っ込む。
「……ん?」
 相棒のユフォアリーヤ(aa0452hero001)が反応しそちらを見る。じーっと遊夜を見る。
「……何でもない。ああ、そうだこんなのあったぞ」
 チョコレートをリーヤに差し出す遊夜。
「……ん!」
 リーヤは尻尾を振りながらチョコを堪能する。
「……ふぅ、見つかったらやばい所であった」
 遊夜がリーヤに隠したもの、それは睡眠薬だった。こんな危ない薬の存在を知ったら、リーヤがどんな攻勢に出てくるか。
「バレたら……喰われる!」
 その末路を想像し、遊夜は警戒レベルを引き上げるのだった。
 危ないアイテム類で戦々恐々とする者もいれば、面白アイテムで気分が上がる者もいる。
「これぞ昭和の日本男子だぜー!」
 これまで得たアイテムで扮装して、虎噛 千颯(aa0123)は堂々とその姿を披露した。上着は上等なレザージャケット、物騒な手甲に、業界人の宝具グラサン、更には漢の褌を身につけている。
「殺せ……でござる……」
 千颯の隣で、わなわなとその身を震わせているのは白虎丸だった。
 彼は男らしい肉体にビキニ型の鎧を装備し、その手は可愛い猫の手、頭部にはダイヤモンドをあしらったティアラ、真紅のマントを羽織り、おまけに蝶を模したマスクで目元を隠している。
 これが武士の姿でしょうか、どう見ても不審者です。
「リュカちゃん、どうよ? 俺ちゃんの格好! 超イカさない?」
「……オリヴィエ殿、出来ればこれは見なかった事にしていただきたいで……でござる」
 扮装のまま木霊・C・リュカ(aa0068)に近づき、感想を求める千颯。白虎丸は涙を流しながら、オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)に己の姿の忘却を請う。
「わからないけど、ちーちゃんならきっとイカしてるね!」
「……」
 リュカは爽やかに親指を立て、オリヴィエは何を言っても仕方ないと思ったので黙ることにした。
「おいおいすげーな。高レベルの変態じゃねーか」
「俺様でもその装備は無理だな」
 金獅(aa0086hero001)は白虎丸の格好に大笑いし、ガルー・A・A(aa0076hero001)はもはや尊敬の眼差しを送っている。白虎丸は拳を固く握り締め、ただこの恥に耐えるのみ。
「笑ってはいけないのです。人には……色々あるのですよ」
 紫 征四郎(aa0076)が悲しい表情でガルーを制する。白虎丸には優しさがつらい。
「ビキニアーマーは立派な装備ですよ。現におじさんもつい最近まで愛用していましたから」
 イデア、ぶっこむ。おじさん、ゆっくりと顔を上げる。恥ずかしくて死にそうな白虎丸を擁護したつもりのイデアだが、おじさんは完全に生贄です。
「さぁおじさん。おじさんもビキニアーマーの素晴らしさを皆に語ってあげて下さい」
「ま、待ってくれ皆。そんな顔で見ないでくれ。違うよ? いや着ていたは着ていたが……そういうのじゃないんだ! 信じてくれ!」
 トラストミー。それは禁句。疑いを増長させる魔法の言葉。皆のおじさんを見る目が、変わった。
「人には……色々あるのですよ」
 征四郎の繰り返す言葉が、おじさんの叫びが、教室内に悲しく響いた。

「みなさん、お茶を淹れましたのでよろしければ」
 宇津木 明珠(aa0086)が全員分の紅茶を配り始めた。そして軽く会釈をして、明珠は部屋の一角に座る。
「しっかし色々懐かしい物が出てきたよなぁ。お、これ」
 明珠の隣にどかっと座り込んだ金獅は、目の前の長机に置かれていたオーバーニーソックスを摘み上げる。そのソックスは以前のクリスマスツリーのオーナメントが従魔になるという依頼で重宝した。変化する前にオーナメントをこのソックスに詰めて回収し、入れたまま気に振り当てて破壊するという使い方で貢献してくれたのだ。
「これ飛び散らないしいいよな。破片で怪我しねーもん」
 くるくるとソックスを指にかけて回転させる金獅。明珠の私物であるソックスを無断拝借して怒られたことは忘れてしまっているかのよう。
「使い道はそれに留まりませんよ……是非貸して下さい」
 目ざとく面白アイテムに食いついたイデアが金獅から借り受け、ソックスを装着。このニーハイ姿でおじさんに絶対領域の素晴らしさを伝えるのだ!
 だが、明珠の物であるためイデアが履くには少々長すぎて、絶対領域が現れない。
「そんな……」
 跪き、敗北感に打ちひしがれるイデア。メイナードの知らぬ間に、イデアの1つの攻撃は終わった。
「これもクリスマスの時だよな」
 金獅がもう1つ長机からアイテムをピックアップ。それはトナカイの角を模したカチューシャ、だった物を金獅が魔改造したためにカモシカの角に摩り替わっているカチューシャだ。
「角が柔らかかったからそれっぽいのから獲ってきたんだよな。あいつら足早くてさ。鬼ごっこっていうんだろ? 楽しかったな」
 これも明珠に事後に怒られたエピソード付きなのだが、やはり忘れているかのよう。


「せーちゃん! これ、これ着てみよう!」
 征四郎にリュカがねこみみパーカーを勧める。
「可愛いのです! リュカ、似合いますか?」
 サイズが違いすぎてパーカーでなくワンピースのようになってしまっているが、征四郎はくるりと回って嬉しそうにポーズを取る。
「だぼだぼで可愛い!」
 見えなくても、征四郎の愛らしい姿がリュカの脳内にはありありと。キュンキュンしてしまうリュカ。彼はこの日、萌えという世界の扉を開いた。
「んじゃ、オリヴィエにはこれな」
 お返しとばかりに、オリヴィエの背後にこっそり近づいていたガルーが自前のねこみみカチューシャを彼の頭に装着する。だがオリヴィエは眉ひとつ動かさない。
「いやぁなんだろ。折角だから似合いそうな人に? ……くくっ」
 言い訳しつつも、ねこみみ仏頂面のオリヴィエにガルーはつい笑ってしまう。
「……!」
 怒涛の腹パンをガルーにお見舞いするオリヴィエ。ガルーが土下座するまでその攻撃は続いたという。

「新型スク水、何で入ってるのです?」
 覚えのないアイテムを発見し、征四郎はガルーに視線を向ける。彼が着るつもりだったのであろうか。
「それは新型スク水ではないですか。おじさんは旧スクを持っていますよ。確かこの辺に……」
 ごそごそと長机の上を漁るイデア。自分の所有物のように言われて紅茶を吹き出すおじさん。まごうことなき旧式スクール水着が皆にさらされる。
「どうです! 自慢の逸品ですよ」
 イデアによるおじさんの公開処刑。皆が見ている。何とも形容しがたい表情でおじさんを見ている。これはイデアの私物なんだと説明しても、おじさん変態説の流布は止められませんでした。ビキニアーマー愛用者であることが発覚した上にこれでは致し方ないことと言えよう。

 おじさんが社会的に葬られてしまっても、アイテム談義は続く。
「ぱっどがた、こうせいえねるぎーしゃしゅちゅそーち」
 胸パッド型ミサイルを発見した征四郎。やはりこれも見覚えがない。
「しゃしゅちゅそーち」
「ちょ、ちょっと間違えただけなのです!」
 ガルーのツッコミに征四郎は顔を赤くして弁明する。
「それな、いつかの飲み会でなんかの余興に使えるかなって」
「これを使って何をするつもりだったんですか!!!」
 ゆっさゆっさ。征四郎はガルーの体を全力で揺さぶる。
「わかんねぇぞ、いつか戦闘で使うかもしれねぇだろ!」
 頭を前後に大きく揺らされながら、ガルーは所持の正当性を訴える。
「征四郎は使いませんよ!」
 一応AGWであるおっぱいミサイルは、共鳴しなければ使えない。故に断固拒否である。
「これは、武器なのか?」
 2人が問答する傍らで、オリヴィエが興味深そうにおっぱいミサイルを調べ始めた。
「両手を塞がずに攻撃できる便利な暗器兵装だよ」
 正しいが、誤った情報をガルーは素知らぬ顔でオリヴィエに吹き込む。
「信じてはだめなのですよオリヴィエ! これは決してそういう物ではないのです! リュカも笑ってないで止めるのですよ!」
 何気なくおっぱいミサイルを体にあてがうオリヴィエを必死に止めようとする征四郎。リュカはそのやりとりの隣で大笑いしていた。
「ほら、それにピッタリの道具もあるぜ」
 続けてガルーが持ち出してきたのはイメージプロジェクター。服装を自由に設定して外面を誤魔化せるというアイテムであり、勿論女装もいける。ガルーはセクシーな女性物の服に設定して、オリヴィエからおっぱいミサイルを譲り受け。
「これならきっと違和感ゼロ☆」
「やめてください!!!」
 女装しておっぱいミサイルをつけたガルーがセクシーポーズを取る。征四郎はそんな相棒の恐ろしい姿を目の当たりにし、両手を頬に当てて断末魔のような悲鳴を上げる。
 男が使ってはいけないね、という結論が出るとても有意義な時間を彼らは過ごした。

「しかし、結構貯めこんでるモンだなぁ……」
 積まれた所持品を眺め、遊夜は感慨に浸っていた。
「……ん、いっぱい、だねぇ」
 リーヤはくすくすと笑っている。
「……いときわ異彩を放つのがこれだよな」
 山の中から遊夜が抜き取ったのは、マグロ。1匹のマグロ。
「……ん、食べるの忘れてた?」
「何で腐ってないんだろうか?」
 2人は同時に首を傾げる。
「どうしてH.O.P.E.はマグロ1本を支給してくるんだろうね」
「俺は幻想蝶の中なら腐らないという原理が気になる……」
 遊夜が持つマグロに反応してリュカとオリヴィエが気になっていた疑問を口に出した。
「まぁ……考えたほうが負けだな」
「……ん」
「あ、そういえばお兄さんもマグロあったんだった。どうせだし、捌いて皆で食べようか!」
 ポンと手を叩いて、善は急げとリュカはマグロを調理する為に、自分のアイテムがある長机を漁り始めた。オリヴィエも無言で戻っていく。
 それを見送った2人。その2人の間にひらりと落ちる紙切れ。
「あ」
 同時に声を発する。それは婚姻届。恐ろしき書類。
「懐かしい物が出てきたな……」
 と言いながらスッと目を逸らす遊夜。リーヤはすかさず拾い上げる。
「……ん」
 遊夜に紙を突きつける。書類にはすでにリーヤの名前が書かれている。男はそれを丁寧に受け取り、懐に仕舞う。
「ほれ、こっち来い」
 椅子に座り、笑顔でリーヤを手招き。膝をポンポン叩き、おいでおいで。
「……ん!」
 迷わず膝にダイブするリーヤ。遊夜に頭を撫でられ、尻尾ブンブンご満悦。
(忘れるまで撫で倒してみせよう……!)
 相棒を撫でながら、遊夜はふとスナイパーライフルに目を留める。
「そういや、コイツとも長い付き合いだな……」
「……ん、ずっと一緒」
 片手でライフルを触りながら、遊夜は周囲を見渡す。
「そろそろ新型が出そうではあるんだよな、二丁拳銃とか……どうすっかねぇ?
「……ん、お守り?」
「それも悪くなさそうだ、まぁ使わないってこともないと思うが……っと、良い装備だな」
 遊夜が興味を示したのは漆黒のパレオ。前々から欲しいとは思っていた。
「すまん、ちと借りても良いかね?」
「お~、いいぜ~」
 千颯がパレオを投げてよこす。
「……リーヤ、着てみるか?」
 リーヤは首を縦に振り、いそいそと試着をする。
「……ん、似合う?」
 パレオを上手く体に巻きつけられずぶかぶかだが、腕を上げてお色気ポーズ!
「おぅ、似合ってるぞ……やはり性能的に欲しいな」
 遊夜は財布を覗き込み、唸る。
「……むー、こっち見なさい!」
 カシャリ。リーヤは所持品の中にあった鎖付き首輪で、遊夜の首を捕らえ、ぐいっと顔を近づける。
「悪かった、悪かったから! 外そう、痛いから!」
 首輪を外そうともがきながら、許しを請う遊夜。
「……つけてくれたら、いいよ?」
 もう1つあった首輪をリーヤはフリフリと見せる。
「グッ……分かった」
 首輪を受け取り、遊夜はリーヤの首にカシャリ。
「……ん、お揃い」
 嬉しそうに顔を綻ばせて、リーヤは遊夜の腕を抱き寄せ、体をすりつける。
「周りの視線がいてぇ……」
 やれやれと首を横に振る遊夜。鎖を付けた首輪を互いにつけ、寄り添う男女。好奇の視線がグサグサと突き刺さってくる。
「これが『とーさくしたあい』なのですか……」
「おめでとうございます」
 征四郎が興味津々に呟き、イデアはリーヤにサムズアップ。彼女らの言葉が遊夜の涙を誘うのだった。

●積もる話

 談義が続く中、特に話すことのない六華は眠気に襲われついウトウトしてしまう。
「眠くなってきちゃった……」
 このままでは眠ってしまうと思った六華はエストレーラの袖を引き、ぺろっと舌を出して恥ずかしそうな表情を見せる。
「あら。しょうがないわね? ちょっと気分転換にお散歩でもしましょ?」
 対して姉のような振る舞いを見せるエストレーラ。
「ごめんなさい? ワタシ達ちょっと席を外すわね?」
「エリザ、お願い?」
 皆に離席の旨を伝えて扉まで歩いていくエストレーラを追って、六華もエリザヴェータを伴って退室していく。
 教室を出たはいいものの、学内のことなどわからず、彼女らはあてもなくプラプラするだけだった。
「こうして二人きりになるのって……何年ぶりかな」
 話を切り出したのは六華。幼少期には幾度か交流があった2人だが、エストレーラの事情から何年も会えない状態だった。
「三人だけどね?」
 六華の背後にいるエリザヴェータに目を向けて、エストレーラが茶化す。
「私の事はお気になさらず……」
「もちろん、忘れていませんよ?」
 あくまで淡々と車椅子を押すエリザヴェータに六華はくすくすと笑ってしまう。
「みんないろいろと思い入れがあるのねー」
 先程まで教室で続いていた馬鹿騒ぎを思い出し、エストレーラが呟く。
「……そうだね。そういえばレーラちゃんは何かあるの?」
「ワタシ? うーん、あるにはあるんだけど……」
 と言ってエストレーラが取り出したのは立派な伊勢海老。
「あんまり深く考えてなかったから、こんなものしか」
「ぷふっ……あははっ……」
 ピチピチと跳ねている伊勢海老を持って苦笑いするエストレーラに、六華は吹き出した。
「ほんとおかしいわよね? キュベレーは勝手にいなくなっちゃうし!」
 自分を置いてどこかに姿を消してしまった相棒のキュベレー(aa0526hero001)に対して彼女はぷりぷりとご立腹。
「……レーラちゃん、変わったよね」
 さっきまでお腹を抱えて笑っていた六華が、急に真顔に戻る。神妙な空気を感じてエストレーラの顔からも笑みが消える。
「え? そう? ……ワタシ、昔の事はあんまり覚えてないのよね」
「うん、変わったよ。……ちょっとだけ寂しかったんだよ?」
 六華はすっ、と両手を出しゆっくりとエストレーラの腕を抱き寄せる。
「寂しかったけど……また一緒だから。心配しないで?」
 これまでにない程に赤面しながら、六華がこれでもかと顔を近づけてきた。
「……う、うん。わかったわ……ちょっと顔近くない?」
 困惑するエストレーラ。
 まだまだ寒さの厳しい季節だが、2人には一足早く春がやってきた。のだろうか。

●マグロ!

「さ、マグロを捌こう!」
 リュカはゴールドシールドをまな板にして、マグロを置く。
「征四郎もお手伝いするのです」
 コックコートを着た征四郎。やる気は満々。
「ありがとう、せーちゃん。そうだこれを貸してあげる」
「こ、これはバトルランセットなのです!」
 征四郎組が喉から手が出る程欲しがっている品、取り回しの利くメスはマグロを捌くにもってこいだろう。
「こいつに触れられる日が来るとはな。テンションも上がるぜ!」
「いつかは征四郎達も手に入れるのです……」
 一時的に使えるだけとはいえ、歓喜するガルー達。リュカはうんうん頷きながらほろりした涙を拭くのだった。
「準備万端なのです! さぁ捌きますよ!」
「乗り気だね! それじゃ頼むよ2人共!」
 マグロを捌こうと言い出したリュカは調理はオリヴィエと征四郎に丸投げし、わくわくしながら傍で待つ。
「……少し納得がいきませんが、とにかくやるのです」
「……わかった」
 征四郎はメスを、オリヴィエはシャープエッジを包丁代わりにして大きなマグロを切り出していく。トロや赤身の刺身が続々と盾の上に。コンロでもあれば炙りや、照り焼き、ワイン煮等にして賞味できるのだが、残念ながら使える火がない。
「シールドをまな板代わりか。あれはボードの代わりにもなるし便利だな」
 盾の汎用性に感心するのは金獅だ。彼はスケボー等のスポーツにはまっており、高価な道具の代用品としてアイアンシールドを使っていた。
「これでビルの屋上から降りると気持ちいいんだぜ」
 そのせいでビルの近所でちょっと有名になって明珠が困っていることなど、気にも留めていないようだ。
「食堂に行って調味料を貸してもらおうかな」
「お、なら俺ちゃん行くよ? 外見てみたいしな~」
 リュカが腰を上げようとした所で、千颯がお使いを買って出る。
「じゃあ頼めるかな」
「おっけ~」
 食堂を求めて千颯は教室の外へ。

 ……。
 ……。

「ちーちゃん戻ってこないね」
「多分迷ったのでござるな。子供ではないでござる。そのうち戻ってくるでござろう」
 食堂の調味料は諦め、リュカが何かで賄えないかと考えていると。
「とりあえず、これで味付けしてみたらどうだ」
 オリヴィエは何かの液体が乗った小皿を3つ持ってきた。彼が言うには中身はイデアが持っていた薬らしい。後ろではイデアがにんまり。
「オリヴィエのそういう投槍な所、お兄さん大好きよ」
 リュカのゴーサインの下、オリヴィエが薬による味付けを施す。あんな薬やこんな薬で。
「ビールもあるのですよ。征四郎は飲めませんが、皆に振る舞うのです」
 大量のマグロの刺身、そしてビール。これは楽しい時が過ごせそうだ。
「ごめんな~、迷って食堂まで行けなくってさ。許してな~」
 丁度良いタイミングで千颯が帰ってきた。手を合わせて軽く謝罪。
「まったく、迷子とは情けないでござる」
「広すぎてさ~ココ。でも俺ちゃんは転んでもタダじゃ起きない漢! しっかり白虎ちゃんのゆるキャラチラシ配ってPRしてきたぜ!」
「何をしてくれているのでござる!」
 馬鹿騒ぎをしつつ皿や箸の準備をするメンバー。金獅は胸元のペンダント越しにその賑やかな様子を眺めていた。
「幻想蝶早く帰ってくるといいな」
 金獅のペンダントは、明珠の幻想蝶のペンダントと色違いのお揃い。普段決して外さない2人の絆。明珠は胸元に手を置き、それが帰ってくるのを待つ。

●ダメ、薬

 エストレーラ達が戻ってくると、教室の前で何も言わず立っている明珠&金獅とイデアの姿が見えた。明珠は無表情、金獅は頭を掻きながらやるせない様子、イデアはしおらしく涙なんて流しちゃって。
「あの……どうしたんですか?」
 六華が恐る恐るイデアに尋ねる。イデアは悲しそうな目を返す。
「みんなが……みんなが……」
「みんながどうしたの?」
 今度はエストレーラが尋ねる。六華は何やら不吉な予感を感じ、エストレーラの腕をきゅっと掴む。
「みんなが……」
 言いよどむイデア。
 とにかく状況確認が最優先、とエストレーラはその部屋の扉を開けてしまう。

 魔境の扉を、開けてしまう。

「変態、おっぱい、パッド、エロス。この4つの頭文字を取ってH.O.P.E.という組織名がつけられたんだよ! どれも人類の希望と言っていいからね。いいかい、せーちゃん、ここはテストに出るからね!」
「おぉ、はつみみなのですよ! へんたい、おっぱい、パッド……せんせー、えろすとはなんなのです!」
 何故かアヤしい塾講師然となったリュカの姿が、そしてその授業を熱心にノートにメモる征四郎の姿が。

「千颯……お前結構可愛いな」
「え、俺ちゃん!? ……でも、俺ちゃんには愛する妻子が……」
 何故か壁ドンでBLフィールドを展開しているガルーと千颯の姿が。

「……ニャー」
「白虎丸だっシー!!」
 ねこみみのニット帽、カチューシャ、パーカーをフル装備したオリヴィエが、そしていやに甲高い声のビキニアーマーのゆるキャラが床で高速ゴロゴロしている姿が。

「……ん、今ならいける……」
「zzz……」
 誰かにぶつけられたのか、顔面にクリスマスケーキがかぶさって完全に昏睡状態にある遊夜の手を使って、婚姻届に拇印を押そうとしているリーヤの姿が!


 ……パタン。エストレーラは魔境の扉をそっと閉じた。
「何てことなの……こんな地獄がこの世にあるなんて」
「薬が変に作用してしまいまして。経験上、全盛りは危ないとわかってたので(心の中で)忠告はしたのですが……無事だったのはマグロを食べなかった明珠さんと金獅さんだけで……」
 扉を強く閉めたまま、頭を横に振るエストレーラ。六華は不安げに彼女を見守る。
「あら、そういえば」
 エストレーラはあることに気づく。イデアの大好きなおじさんが部屋の中にいなかったことに。
「あぁ、おじさんですか? おじさんはグラサンに漆黒のパレオだけ着て『I'll be bacK』とか言ってお外に散歩しに出かけていきましたよ。どうなることやら……それもこれもH.O.P.E.が惚れ薬とか睡眠薬をホイホイ支給するせいですね、担当者の顔が見てみたいものです」
 以上が発案者のイデア氏の談。
 エストレーラはくるっと六華に向き直って。
「幻想蝶を回収して帰りましょう、六華ちゃん」
 一片の曇りもない、満面の笑みだ。
「え、でも……いいのかな」
「六華ちゃん」
 がしっ、と六華の両肩に手が置かれる。
「ここは戦場よ。六華ちゃんにはまだ早いわ。さ、帰りましょう」
「う、うん……」
 エリザヴェータは何も言わず、車椅子を押していく。エストレーラも、明珠と金獅も無言でその場を離れていく。
 そしてイデアは、スマホカメラを起動してそっと魔境へと消えていった。


 その後、部屋の中の彼らはちゃんと正気を取り戻したようです。

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結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • Analyst
    宇津木 明珠aa0086
    機械|20才|女性|防御
  • ワイルドファイター
    金獅aa0086hero001
    英雄|19才|男性|ドレ
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • エージェント
    言峰 estrelaaa0526
    人間|14才|女性|回避
  • 契約者
    キュベレーaa0526hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 危険人物
    メイナードaa0655
    機械|46才|男性|防御
  • 筋肉好きだヨ!
    Alice:IDEAaa0655hero001
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