本部
女神よミロスへ還れ ~美術館で躍れ~
- 形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,300
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/07/10 07:30
- 完成予定
- 2018/07/19 07:30
掲示板
-
相談卓
最終発言2018/07/10 01:14:56 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/07/09 12:37:22
オープニング
●閑散とした美術館
女は気にした風もなく、美術品を眺めている。本当に立場を分かっているのかと疑いたくなるほど無邪気な様子だ。リンカーたちが施してくれた化粧も素晴らしい出来で、腕がないのも義手と厚着でうまくごまかしている。
ミロのヴィーナス像に憑りついた従魔がヴィーナスの腕の在処について当てがあるということで行動を共にしているキターブだが、今はギリシアのイオアニアという田舎町にある小さな美術館にいた。
ヴィーナスの腕など見つかれば考古学的・美術的な価値は法外なものになる。必ずやそれを手に入れるべく候補地を巡る予定だったが、その前にどうしてもここに寄っておきたかった。
『これは何です? キターブ』
「日本で見つかった青銅鏡のレプリカ。それはジブラルタルにあったタルテッソス文明の青銅器……のレプリカ」
『レプリカばかりですね』
「片田舎の個人美術館だからな。本物はないよ」
『これもですか』
女神が透徹した顔つきで女神像を眺めている。彼女が見ているのはクニドスのアフロディーテ。古代ギリシア彫刻の最高峰だが、この美術館にあるのはあくまでレプリカだ。
しかしそれを言えば、ミロのヴィーナスもまたレプリカと言える。クニドスのアフロディーテはミロのヴィーナスより二百年ほど古い作品で、ミロのヴィーナスはこのアフロディーテから着想を得たものとも言われている。
彼女がミロのヴィーナスであり、従魔としての本能を抑え込むほどの影響を受けているのならば、こうしたものに反応するはずだ。
「何か思い出すことは? 腕の在処とか」
ぷるぷると首を横に振る女神像。その様はあくまで素っ気ない。他にも道すがらギリシア神話を読み聞かせたりと、ヴィーナスとしてアイデンティティに訴えるようなやり方で情報を得ようとしたが、かの女神から如何せん返るものがない。
やはり縁の強い土地――ミロス島へ行かねば何も起きないのか。
「いい美術館ですね。揃えてる品はともかく、場所がいい」
設えの良いスーツを着つけた男がさりげなく話しかけてくる。キターブもまるで旧知の友人にでも会ったかのように気安く応じる。
「静かな森の奥ですからね。おかげで客足はあまり伸びません。平日の昼間だと誰もいない」
そうして話していた二人は申し合わせたように背中合わせでベンチに腰掛けた。
「それにしても……よく来てくれた。ヴィランの方」
「こんなに堂々としているとは思わなかった」
「俺もだ。だがどうしても彼女に見せておきたくてね。クニドスのアフロディーテを」
「レプリカだろ。ローマ時代のものの、さらに写しだな」
「悪く言うなよ。これでも一応美術館の目玉なんだ」
「それで、見返りはあったかな」
キターブは首を振る。ここまで腕に関する情報は女神像から何一つ得られていない。
「手を引け。H.O.P.E.と敵対するのは本意ではない」
実に魅力的な提案だ。キターブは喉の奥で頷いた。彼のように手練れのヴィランがこれまで仕事をしてこれたのは、H.O.P.E.と積極的に敵対してこなかったためだ。無論そのように立ち回っていたのだろう。H.O.P.E.側としてもそんな厄介なものを今さら敵に回す必要はない。
「我々としてもヴィランには改心して、協力を仰ぎたい。そういう意味では同じだ」
「俺を指名手配しなかったのはそのためだろ」
身分の割り出しから指名手配まですぐに行えるところを、キターブはあえてその作業を怠っていた。
ヴィランの男としてはリンカーたちと大っぴらに戦闘してしまった時点で詰みだった。しかし自分を捕まえに来るH.O.P.E.のエージェントが来ない以上、彼も依頼人からの仕事を完遂せねばならない。
「俺からの心付けとでも思って受け取ってくれ。とはいえそれは一面に過ぎない。むしろミロス島へ行く前に確かめたいことがあった。君を呼んだのはそのためだ」
「招待状を貰った覚えはないな」
「公共機関を使ったんだ。追ってきてもらわないと張り合いすらない」
『その人を食った態度、気に入らないわ』
背中に妙な感触を感じる。男の背中からゆるりとした女の影が現れる。
『あんたみたいな輩の処し方は昔から決まっているわ。そのよく回る口を問答無用で引き千切ってやればいいのよ』
「……そりゃ俺に限らんだろ」
疲れたように溜息をつくキターブ。ヴァニタスを見ることすらせず膝に置いた肘で頬杖をついている。そして目の前で女神像を眺めている従魔を顎で指し示す。
「あれは本当にミロのヴィーナスなのか。ルーヴル側が事を公にしない理由は何だ。女神像に従魔が憑りついたのは偶然なのか」
キターブの立て続けの質問にヴァニタスは意味ありげに微笑み、アレグはただ向かいの絵を見つめていた。取り合う気すらないらしい。
「答えないなら交渉決裂だ。君たちを拘束する」
『あなたが? 面白い冗談ね』
「そうだろ。俺もそう思ってんだよ」
さりげなく取り出したスマホにフリック入力すると、ピロンと軽やかな電子音が鳴る。途端、美術館の気配が一変した。
抽象的なものではない。いたる箇所から濃密なライヴスの気配が立ちのぼり、膨れ上がっていく。
「……ここでやるってのか。美術館の中だぞ、どうかしてる」
「別に。どう扱おうが家主の勝手だろ」
「家主って……」
「ここは俺の個人美術館だ。まあ、名義は借り物だし、いくつか会社を挟んじゃいるがな」
立ち上がったアレグが顔をしかめる。何か嫌悪すべきものを咄嗟に見つけたように露骨な態度だった。
「美術品の資金洗浄用だな。H.O.P.E.のくせにふざけた野郎だ」
「おいおい、滅多なこと言うなよ」
立ち上がったキターブが人差指を口に立てる。そうしてさりげなく女神像のほうへと近づいていく。
「さあ。洗いざらい吐くか、打ちのめされるか。どっちかだぜ、アレグくん」
H.O.P.E.に対して一般的に抱かれているイメージを覆して余りある笑顔を見て、アレグとヴァニタスは共鳴を果たす。
バックヤードに隠れていたリンカーたちも次々と飛び出る。衝撃で石膏像や彫刻が割れ砕け、美術館は早速戦場らしい様相を呈し始めていた。
解説
・目的
ヴィランの捕獲あるいは情報の取得。
・敵
ヴィラン:金髪の長身の男。英雄からはアレグと呼ばれていた。サバットの使い手で、金属製の靴から強力な蹴り技を放つ。
英雄:頭蓋骨と砂時計、マンドリン携えた女。ヴァニタス・ヴァニタトゥムと名乗る。敵を妨害する魔術を用いる。
・場所
ギリシアはイオアニアの山奥にある美術館。
・状況
リンカーは既に美術館のバックヤードに待機しており、美術館内は民間人はおらず、美術品もレプリカしかないので被害を考慮する必要はない。
マスターより
ミロのヴィーナスから腕の所在に関する情報を引き出そうとしながら、ヴィランを誘き寄せて何かを聞き出そうともしていたキターブ。
彼の所有だという美術館に置いてあるものはどれもレプリカで、目的を達成するに辺り遠慮することはありません。ヴィランに一泡吹かせるためにも派手にぶち壊して構いません。
リプレイ公開中 納品日時 2018/07/17 20:26
参加者
掲示板
-
相談卓
最終発言2018/07/10 01:14:56 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/07/09 12:37:22