本部
女神よミロスへ還れ ~寓意画の女~
- 形態
- シリーズ(新規)
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,300
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/06/13 12:00
- 完成予定
- 2018/06/22 12:00
掲示板
-
保護・救出戦
最終発言2018/06/13 08:17:55 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/06/09 23:32:39
オープニング
●盗まれたヴィーナス
ある夜、キターブは自宅で電話を受け取ると、最近知り合った男が挨拶してきた。
「これはこれは。ご無沙汰しています。レイネス教授」
以前、不審なミイラの鑑定を依頼してきたエジプト考古学の権威であるレイネス教授は、その後何かとキターブに目をかけてくれている。
「その節は世話になったね。ところでルーヴル美術館で盗難があったというニュース、知っているか」
「いいえ、全く。またモナリザですか?」
「……ミロのヴィーナス」
思わず椅子を蹴って立ち上がる。
「まさか。どうやって……」
「それがな、ある夜、警備員が園内を歩くヴィーナス像を目撃し、それを境に無くなったらしい」
「はあ? 馬鹿馬鹿し……まさか!?」
受話器の向こうで頷く気配がする。
「従魔による憑依現象。まずそれが思いつく」
「しかしそんなニュースは出ていませんよ。H.O.P.E.にも報告は来ていない」
「正直に申し出るはずもあるまい。本物が盗まれたとあっては尚更な」
ならば今展示されているのは――。ぞわりと、怖気がキターブの背を一撫でしていく。
「そういうものがあるとは聞いていましたが、本当に贋作も収蔵しているのですね」
「収蔵……収蔵ね。まあ、そういうことにしておこう。本題はここからだ。ミロのヴィーナスを回収してほしい。無論、無傷でだ」
やはりそういう話になるかとキターブは納得した。ルーヴル美術館がその事実をひた隠しにしている以上、表立った活動はできない。そのために教授は個人的にキターブを頼ってきたのだ。
問題は、教授が誰の意図を受けているのかだ。
「報酬の方は?」
「問題ない。私のスポンサーには十分な額を用意してもらっている」
スポンサー。教授もあくまで仲介ということか。恐らくアテネ国立考古学博物館辺りだろうか。あそこにもヴィーナス像のレプリカが展示されている。
美術品や発掘品は原産国での収蔵・展示が基本である。しかし大英博物館がエジプトからロゼッタストーンの返還を再三受けても一向に返さないように、守られることの少ない建前ではある。
同じように、ギリシャ側もこれを奇貨としてミロのヴィーナス像を取り戻したいのだろう。
「分かりました。依頼を策定してみます。あくまで無傷での回収ということで」
「ああ、頼む。だが、戦闘の備えは怠らないでくれ」
「勿論です。相手は従魔ですので」
「いや、それがな、どうも噂ではヴィランが暗躍しているというのがあってね」
「ヴィランですか? まさか窃盗団か何かですかね」
「多分その類いだろう。そんな奴らに奪われるわけにはいかん」
「好都合ですよ。それこそH.O.P.E.の領分ですので」
●女神とヴィラン
この幸運をどう解釈するべきか、キターブは随分悩まされた。
目の前で蹲る大理石の塊は、なるほど女神と呼んで差し支えない様相をしていた。女性にしては大柄な、二メートル近い体を地面に埋めるように丸まっている。
直接ルーヴル美術館のあるパリではなくスイスに降りたのは手掛かりを探すためだった。従魔に憑依された女神像が人間社会をうろつけば、嫌でもその痕跡は残る。SNSや噂を頼りに探してみれば、一日もかからず特定に至った。
人気のない夜半、人間のように服を着込み、変装していた彼女を見つけたキターブが追いつめたのはベルン郊外の自然公園だった。従魔を追うなどという蛮行を行なうことになったのは既に要請した応援に正確な場所を伝えるためだが、それ以上に相手の行動が気になったのだ。
人が追いかけるなり必死に逃げ出す従魔など聞いたことがない。ライヴスが向こうからやってきたと舌なめずりしそうなものだが――
「従魔のくせに人も殺さず逃げるばかり。しかも人に紛れる。一体何が目的だか」
「目的、ですか。人間」
キターブが身構える。まさか返答があるとは思わなかった。従魔の多くは自我を持たない。知性らしきものを備えている場合もあると話には聞いていたが、実際に遭遇するのは初めてだった。
「取引をしましょう。人間」
「……取引ときたか。従魔が」
そのうえ交渉を持ち出す。キターブの興味はこのとき最大に高ぶっていた。
「腕、腕を。私の腕を、探してください」
「取引の意味を取り違えとりゃあせんかね」
「見たくはないのですか。私の腕を」
ぞくりと大きな怖気がキターブの背を過ぎる。なるほど、そうきたか。
発見以来、人々を魅了し続けてきたミロのヴィーナス。これまで何人もの人間が腕の在処を探し求めてきたが、未だ発見には至っていない。
「……どこにあるのか分かるのか」
「おぼろげには。ですが近づけば――」
「正確に感じ取れる、と」
昂っていた興味がベクトルを持つ。功名心か、いや違う。見たい、ただ純粋に。
キターブはおもむろに上着を脱ぎ、女神にかけてやる。
「取引は成立だ。女神さま。あんたの腕を見せてみろ」
「必ず」
従魔はライヴスを狙って人を襲うが、稀にそれ以上の目的意識を見せる個体がいるのも事実だ。しかし油断は出来ない。こちらを罠にはめるつもりではないと、誰にも保証できない。
だがそれはこちらも同じだ。搦め手で来るなら利用してやればいい。
「いかんなあ。異世界の化け物なんかと取引しちゃあ」
突如割り込んだ声のほうへキターブが銃を向ける。銃口を向けられていることなど気にも留めず、長い金髪を生やした男がこちらへ歩いてくる。
長躯だが線の細い印象である。しかしキターブが注目したのはそこではない。幽霊のようにたゆたい、男に付き従う様子の女がいる。
十中八九、この男についた英雄だろう。頭蓋骨に砂時計、マンドリンを携えた美女は、自然な目つきでキターブを見下す。
「従魔や愚神を殺すのがH.O.P.E.じゃないのかね」
「その通り。お前のようなヴィランをな」
キターブは遠慮なく引き金を絞る。ある意味、相手がヴィランでよかった。人間なら銃で殺せる可能性がある。
『――メメント・モリ』
女が呟くと、銃弾がその途上で蒸発した。物理現象ではない。魔術、それもライヴスを介したもの。
ヴィランと英雄。それもとびきりの上物だ。
「……まるで寓意画だな」
『ヴァニタス・ヴァニタトゥムよ。よろしく』
「虚無の虚無だと? ふざけた名前を」
「そのふざけた女に殺されるのはどんな気分?」
ヴァニタスと名乗った英雄は頭蓋骨に頬ずりし、艶めかしい手つきでマンドリンを奏でる。
「甚だ御免被るね」
もはやキターブに闘う意思はなかった。英雄と契約した者に拳銃で立ち向かうなど蛮勇では済まされない。
ともかく逃げ回り、時間を稼ぐ。要請した応援が到着するまで。
解説
・目的
キターブの救助。美術品の保護。
・敵
ヴィラン:金髪の長身の男。
英雄:ヴァニタス・ヴァニタトゥム。頭蓋骨と砂時計、マンドリンを携えた女。
・場所
スイス首都ベルンの郊外にある公園。真夜中であるため人気はない。
・状況
キターブは美術品『ミロのヴィーナス』を保護しており、彼と彼の保護する美術品の安全確保が最優先となる。
マスターより
レイネス教授から従魔が宿った美術品の確保を依頼されたキターブでしたが、運よく美術品を見つけた直後、運悪くヴィランに見つかってしまいました。
キターブと彼が確保した美術品、両方の安全を確保してください。
関連NPC
リプレイ公開中 納品日時 2018/06/20 20:25
参加者
掲示板
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保護・救出戦
最終発言2018/06/13 08:17:55 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/06/09 23:32:39