本部
ネフシュタンの欠片 ~完全なる青銅~
- 形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,300
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/01/20 09:00
- 完成予定
- 2018/01/29 09:00
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/01/18 00:23:31 -
岩蛇討伐作戦
最終発言2018/01/20 08:31:34
オープニング
●約束の地までの幾ばく
H.O.P.E.アレキサンドリア支部近くの病院は故郷に近いものの、キターブは未だ里帰りできずにいた。先の任務で受けた負傷のため、入院が必要なためだ。従魔と至近で対峙したのだから、死ななかっただけでも儲けものである。
この期に蔵書を片付けようと、魔導書やら研究書をたっぷりと持ち込んだキターブが悠々と読書に勤しんでいると、傍らの机でスマホが着信を訴える。ちらりと横目に番号を確認したキターブは胡乱げに取り上げた。
「はい。こちらキターブ」
「死にかけたそうだな。どうだ、幽体離脱くらいは会得したか?」
「まさか。わたくし、魔導の実技はからきしでして」
「そうだったな。文弱の徒」
「そんな嫌味を言いに連絡を?」
「私もそれほど暇ではない。メールの件に関連しそうなことが起きてな」
ほう、それはそれは。言いながら急いでメモ紙を引っ張り出し、話を促す。
「どうも盗掘団らしき奴らがうろついてな。美術品に混じってオーパーツも狙っている」
「場所はどちらで?」
「ジェヴェル・ハールーン。君が追っているオーパーツの根源地にも近いだろう」
「ペトラ遺跡ですか。あなたがたが追わせている、でしょう」
「見解の相違だな。いずれにしろ、我々の庭を荒らされるのは面白くない。君たちに任せよう」
「いつも獲物を譲っていただいて申し訳ない」
「見返りは……分かっているな」
「どうぞ結果をお楽しみに」
精一杯の諧謔味を含ませて通話を切ると、病衣を投げるように脱ぎ捨てて着替える。
本や荷物はそのままにしておく。退院手続きも事後でいい。今は従魔の気配がする場所へと向かうことが最優先だ。
●現れる青銅の蛇
同僚のオペレーターたちの制止に聞く耳を持たず、垂直離陸機をチャーターしたキターブがペトラ遺跡に降り立つ。紅い砂と岩の世界でえずくと、細かな砂が喉の奥まで入り込む。
キターブは走る。目指すはジェヴェル・ハールーン。盗掘団はどうやらそこの宝を狙っているらしい。
場所が分かれば特定するのは容易い。人目に付かず、まだ発掘する余地のある場所は存外少ない。ジェヴェル・ハールーンがあるホル山の麓の洞は、観光客も寄り付かない奥まった場所にある。そこに当たりを付けて向かう。
岩陰に隠れて覗き見れば、三人ほどの男が洞の中で何やら作業している。しかしキターブの視線はさらに奥へと注がれていた。
長い長い青銅の杖。刻まれた怪獣達の図像。そこに絡みつく蛇。間違いない、あの青銅器だ。
そのうえ――キターブが歓喜とも畏怖とも知れない震えを背に感じる。初めて見る、完全な状態の青銅器。あれが本来の姿。杖の先に付いた金具らしきもの。古い旗竿の痕跡か。
これまでの青銅器は悉く破壊されていた。それでいてあれほどの力を発揮するのなら、十全な状態ではどうなるのか。
考えたくもない。そしてそれを盗まれでもしたら――
「動くな!」
拳銃を差し向けて身分証を晒す。男たちが驚いている間に大声で名乗りを上げる。
「こちらはH.O.P.E.だ。貴様らは盗掘の現行犯として現地警察に引き渡す。大人しくしていろ」
「いえ、あの、我々はヨルダン大学の研究チームでして」
男の足元に銃弾を一発くれてやる。跳弾がキターブの耳元を過ぎって外に跳んでいく。
「……芝居が寒い。そんなに寒いのが好みなら、頭の風通しを良くしてやるぞ」
踊り出しそうな足腰を、頬肉を裏から噛み潰して何とか耐える。長旅の直後に盗掘団を押さえるのは、病み上がりの体には重責だ。せめて気取られないよう虚勢を張るが、銃を向けられた盗掘団たちはまだ降伏を示していない。
「随分具合が悪そうだな。H.O.P.E.って言やあ、リンカーなんだろ。英雄だかの力を使うんだろうが、そいつは出さねえのか」
野卑な煽りに痛々しく目を瞑る。寒い芝居をかましてしまったのはどうやらこちらのようだ。全てばれている。となれば畢竟、行きつくところまで行かねばならないか。
いや、あるいは――頭の片隅に過ぎる陰惨な思い付きを隠すように、キターブは俯く。
片頬をひきつらせ、彼らには見えないように笑う。
「……貴様ら、それが何か分かっているのか」
洞の奥、立てかけられた青銅の杖に目を向けると、男たちがその視線を追う。
「さあな。H.O.P.E.が出張るってことは、ただの骨董品じゃなさそうだ」
男が杖に手を伸ばそうとするのを叫んで止める。
「そのオーパーツに触るなッ!」
キターブの怒号を聞き、男がいやらしく笑う。
「へえ、こいつ、オーパーツだったのか! そうか、そりゃあいい。セラエノだっけか。奴らに吹っかけりゃあ金に――」
「やめろッ!」
言いながら、キターブは地を蹴って低く飛んだ。目の端に捉えたのは、膨れ上がる青銅に押し潰される男たちの姿だった。
岩の道を転げ落ちながら、盗掘団がいた場所からの断末魔は途切れていた。代わりに現れる見慣れた姿。長く巨大な体。青緑の皮膚。大蛇、それ以外の何ものでもない。
全身が青緑の錆色に染まった岩蛇。いや、まさに青銅の蛇と呼ぶべきだろう。奴は最低でも三人の人間のライヴスを食らった。少なく見積もってもデクリオ級――この世界遺産のど真ん中で。
「はっ……ははっ、ははははっ!」
思わず笑けてくる。我ながらどうしようもない外道だ。盗掘団に奪われるくらいならと彼らを生贄にし、観光客や研究者が入り浸る世界遺産の地に従魔を呼び出す。しかし脳髄の冷えた部分は現在の状況を客観的に分析していた。
彼らはオーパーツと知らずに青銅器を扱おうとしていた。遅かれ早かれこのような事態は起きただろう。そんな連中の手に渡る危険性を鑑みれば、まだデクリオ級の召喚で済んだとさえ言える。そしてその現場に事情を知るオペレーター。迅速な対応が可能だ。
既にH.O.P.E.の名を出してヨルダン観光局から頭越しにペトラ遺跡の警備や周辺警察に避難指示を要請してもらっている。岩蛇は谷から顔を出すほどの巨体を這わせながら、ほぼ西へと向かっている。
ああ、とキターブは感嘆した。悲しいほどに予想の通りだ。
目の前のライヴスよりも強固な目的意識。従魔自体の性質か、あの青銅器にかけられた魔術の効果か。
あれは約束の地を目指している。乳と蜜の流れる土地。地中海と死海に挟まれた肥沃の地。
従魔によるエクソダスなど、許すわけにはいかない。
解説
・目的
岩蛇の討伐。
・敵
岩蛇。完全なる青銅器が三人分のライヴスを吸収したもの。少なくともデクリオ級と思われる。
深い谷から顔を出すほどの巨体であり、全身が青銅で出来ている。
・場所
ペトラ遺跡最奥部のジェヴェル・ハールーン。そこから西へ向かっている。
・状況
谷深く、起伏の多い土地柄であるため、移動に支障がある。
現場は世界遺産であるため、被害は最小限であることが望ましい。
岩蛇は青銅器そのものから現れたため、青銅器の回収は困難と思われる。
マスターより
完全なる青銅器から現れた岩蛇が、さっそく人間のライヴスを食らって強化されてしまいました。これまでのものよりさらに巨大な体を持っています。
約束の地へ向かっているようですが、これ以上好き放題させるわけにはいきません。ペトラ遺跡の中で仕留めましょう。
関連NPC
リプレイ公開中 納品日時 2018/01/27 18:51
参加者
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最終発言2018/01/18 00:23:31 -
岩蛇討伐作戦
最終発言2018/01/20 08:31:34