本部
ネフシュタンの欠片 ~鍾乳の白蛇~
- 形態
- シリーズ(新規)
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,300
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/12/13 19:00
- 完成予定
- 2017/12/22 19:00
掲示板
-
岩蛇討伐戦(相談)
最終発言2017/12/13 18:01:14 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/12/12 01:54:31
オープニング
●ジブラルタルの洞窟
日本での一件が終わってまもなく、キターブはジブラルタルへと向かった。
フランスの端にあるイギリスの飛び地、ジブラルタル。地中海と大西洋を繋ぐ要所として古代から人が行き交っていた。
「H.O.P.E.の職員さんですか。はあ、研究で……」
「オーパーツの査定なども僕らのような下っ端の仕事でして」
「査定ですか。確かに古いものだけど、オーパーツってほどのもでは……」
遺跡を発見した地元の考古学者を伴い、キターブは傾斜のきつい岩山の西斜面を登っていく。
ジブラルタルを象徴する岩山『ザ・ロック』にはいくつもの鍾乳洞が広がっている。今回はその西斜面にある一つから潜っていく。観光用に整えられているような場所ではなく、入口から這いずるように降りていくのがやっとだった。
「どうやら元々あった鍾乳洞を掘削して作ったようです。恐らくは祭祀に用いたのでしょう」
その意見にキターブは賛成する。洞窟を祭祀に用いるのは珍しいことではない。フランスのサントボームには洞窟自体が教会になっている遺跡があり、日本にも長く狭い洞窟を通って参拝する胎内神社というものがある。
やがて辿り着いた洞窟の最奥は、剥き出しの電球で照らし出されていた。なるべく出土した状態を保っているのだろう。にじみ出た鍾乳石に埋もれるようにして据えられている青銅の錆び色がまず目に入る。
「これは、青銅の杖……」
「恐らくタルテッソスの青銅器と思われますが、アンダルシア地方で見つかっていたものとは異なっていますね」
近づいてじっくりと観察する。青緑の錆び色。青銅に相違ない。一説には古代タルテッソス帝国は金属資源が豊富であり、特に錫の貿易で栄えたという。実際、タルテッソスの時代と思われる紀元前八世紀頃の青銅器は、ジブラルタルから北にあるアンダルシア地方を中心に出土している。
一本の杖と、それに絡まる二匹の蛇の姿が確かに見て取れる。ところどころ砕けてはいるが保存状態は良好だ。
「蛇、いや、杖だな、これは……」
「恐らく両方かと。我々の研究チームではクノッソス神殿の『蛇の女神像』のようなものではないかと考えています」
クノッソス。エーゲ海にあるその島はミネア文明の最盛地と言われている。そこからは両の手に蛇を握った女神の像が出土している。
そのモチーフが地中海を介して渡ってきたと考えるのは、無理のある推理ではない。だがキターブには判じかねた。何よりこれは蛇のモチーフがありつつ杖の部分がある。だが『蛇の女神像』は杖ではなく、生きた蛇自体を握りしめる躍動感を有している。
そして何より杖の部分に彫り込まれている図像が、先ごろ日本の青銅鏡に見られたものと同じ古オリエント的モチーフだった。僅かに見える部分だけだが、蛇の杖に刻まれた絡み合う蛇。躍動する無翼のグリフォン。四足の龍。その他の怪獣たちが彫られていることが分かる。
スケッチブックに書き写すためさらに近づいたとき、キターブは気づいた。僅かに透ける鍾乳石の奥に、単なる模様とは違う記号のようなものが見える。
「………これは、ヘブライ文字?」
現在、イスラエルの公用語となっているヘブライ語は現代の言語として復活しつつあるため、キターブにも見覚えがあった。だが鍾乳石に埋もれており、文章や意味を読み取るまでにはいかない。より詳しく調べるため学者に許可を取り、ハンマーとタガネで少しずつ鍾乳石を削っていく。
「あっ」
思わずキターブは声を上げる。少し力を入れすぎたのか、大きめのひびが杖の部分まで入ってしまう。
慌てて確認すると、うまく杖から鍾乳石が剥離していたので安堵した。しかしそれも束の間のことで、キターブはハンマーとタガネを取り落としてしまった。
ひびは徐々に大きくなっていく。それだけではない。杖を中心に振動が広がっている。
「あ、あの、キターブさん。これは………」
学者の男が尋ねると、キターブは彼の首根っこを引っ掴んで走り出した。
割れた隙間から吹き出ていた臭気が、彼の本能を刺激した。感じ取れなくとも分かる。問答無用で退避を選択させるほど濃密なライヴスの気配。
キターブがそれを確認に変えたのは、背を押しつぶすように響く轟音を聞いたときだった。洞窟全体をぐちゃぐちゃに撹拌するような衝撃から逃げるように、彼らは洞窟から飛び出していった。
●岩蛇、再び
鍾乳洞を砕いて現れたのは、白く長い体をそびやかす巨大な蛇だった。恐らく内部の鍾乳石を吸収したのだろう。ぬめりを宿したその体は生きた蛇の質感に近い。
恐怖と疲労でぼんやりと見上げるキターブ。起き上がっている部分だけでも三十メートル近い。それが明らかに街を目指して降りていく。岩山の西斜面を下れば、すぐにジブラルタルの街が見えてくる。そのライヴスの匂いに誘われているのだろう。
機械的な手つきでスマホを操作し、H.O.P.E.を呼び出す。
「……こちらはキターブ・アルセルフ。ジブラルタルにエージェントを送ってくれ。至急で頼む」
喘鳴の中でキターブはなんとかエージェントの要請を終えると、今度はすぐ地元の警察へ連絡し、住民への避難勧告を行なうよう命令した。異世界関連において絶対的な信頼を獲得しているH.O.P.E.の権限に改めて感心する。
その間にも白亜の岩蛇が斜面を下っていく。燦々と降り注ぐ陽の光を一身に浴びながら、天空に向けて咆哮を放った。
「イイイイイアアアアアアアッッ!」
それは声というより音。地を揺すって耳を劈いて、腹の底からの恐怖を呼び起こす大蛇の嘶きだった。
「あれ、杖、飲み込んでますね……」
学者が呆然と呟く。叫ぶ岩蛇の口中には、あの青銅の杖が確認できる。恐らく従魔はあれに憑りついたのだろう。
「回収……いや、破壊、してもよろしいですよね」
キターブの言葉を、学者は虚ろな様子で了承した。
解説
・目的
ジブラルタルの洞窟から出てきた岩蛇の討伐。
・敵
岩蛇。全身が鍾乳石で出来ている。全長三十メートル超。青銅器に取りついたと思われる。
・場所
ジブラルタルの岩山中腹にある洞窟。岩山のため傾斜が厳しい。
・状況
岩山を下るとすぐにジブラルタルの街があり、避難している最中であるため、その前に撃破することが望ましい。
マスターより
今度はいきなり場所が飛んでジブラルタルです。蛇を模した青銅の杖。謎の文字。新たな謎が出てきたのに、解明する間もなく従魔が襲ってきてしまいました。
殆ど街の中にあるようなジブラルタルの岩山で従魔が暴れては大変なので、迅速に討伐してください。
関連NPC
リプレイ公開中 納品日時 2017/12/17 19:46
参加者
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岩蛇討伐戦(相談)
最終発言2017/12/13 18:01:14 -
依頼前の挨拶スレッド
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