本部
ネフシュタンの欠片 ~のたうつ岩蛇~
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/11/30 12:00
- 完成予定
- 2017/12/09 12:00
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/11/27 15:27:43 -
【相談】青銅鏡回収任務
最終発言2017/11/28 19:13:53
オープニング
●青銅鏡の蛇
ワープゲートが開発されて以来、H.O.P.E.職員は洋の東西を問わず奔走させられている。オペレーターであるキターブもその一人だった。
富山県魚津市、僧ヶ岳の麓でスマホを頼りに歩く数時間。キターブは目的の場所に辿り着いた。
規則的に掘られた四角い穴だらけのそこは、遺跡の発掘現場である。
「ようこそお越しくださいました。H.O.P.E.の方ですね」
キターブの存在に気づいた壮年の男が早速話しかけてきた。彼はこの発掘現場を仕切っている大学教授だという。
「H.O.P.E.から派遣されましたキターブです。教授、早速例のものを」
挨拶もそこそこにキターブは催促した。ほどなく通されたテントには、白い小さな机に青銅の鏡だったと思われる破片が散らばっていた。
「今回発掘されたものです。非常に珍しいもののため、H.O.P.E.に連絡を――」
生返事を返しながら、キターブは鏡の破片を繋げ、スケッチブックに書き写す。欠けた部分を補っておおよその形が見えてくると、彼は低くうなった。
素朴な手法で描かれた蛇や竜にグリフォン。体は横で顔や翼だけ正面を向いていたりと、視観がごっちゃになっているため下手にすら見える。
このように正面観と側面観を一つの画面に組み込む手法は原始的な絵画に見られる特徴である。例えば古代メソポタミアの都市ウルクで出土した紀元前三十五世紀ごろの円筒印章に描かれた獣たちがこのような特徴を有している。
正面に嘴を垂らし、体を横に向ける翼のないグリフォン。首を絡ませる番の蛇。横に歩く四足の龍に乗る神は正面を向いている。
確かに日本的ではない。ヨーロッパやアフリカの支部で活動しているキターブが呼ばれたのもこれが理由だろう。
「図像だけで言えば、古代メソポタミア、ウルクやスーサから出土したものに酷似していますね。エジプトでもこれに近い手法で描かれた化粧板がありますが、こことは地域も時代もあまりにかけ離れている」
「それほど古いものですか」
「モチーフや手法だけを見れば、という話です。炭素年代測定で調べれば詳しい年代が分かりますが、恐らく他の銅鏡と同じで降っても紀元前三世紀もいかないのでは?」
「確かに弥生時代のものである可能性が濃厚です。偶々類似したと考えるのが妥当ですな」
「いや、そうとも言い切れません。例えば室町時代のものである『八幡菩薩縁起絵巻』に描かれた牛が、ギリシャ神話のおうし座と酷似していることなどは以前から指摘されてました。星座の資料が海を越えて日本に渡り、敢えて真似て書いたと考えられています。手法とモチーフが時代を超えて再現される例もないとは言い切れません」
教授が感心したふうに額を叩くと、ゆっくり頭を下げた。
「H.O.P.E.からのオブザーバーとのことでしたが、この手のことにお詳しいようで安心しました。それでどうでしょう。オーパーツとやらに入りますかね」
オーパーツ。いわゆるライヴスと親和性が高かったり、不可思議な現象を引き起こす物品を指している。ものによってはH.O.P.E.の管理下に置かれてしまう場合があり、学者にとってはせっかくの発見を攫われる形となる。神経質になるのは否めない。キターブの仕事はその審査でもある。
「考古学的には重要な発見ですが、不可思議な現象が起きてるでもないですし、恐らく大丈夫でしょう」
一応はライヴスとの親和性などを調査しなければだが、それほどの大事にする案件でもない。その旨を伝えると教授は頻りに礼を述べた。これで誰にも邪魔されず発掘に専念できると喜んでいる。
あとは二、三の確認事項だけで教授との話を済ますと、キターブは予約していた旅館にチェックインすることにした。
部屋に入るなり、発掘現場の資料を座卓いっぱいに広げる。彼の頭の中は、あの銅鏡で占められていた。
古オリエント的意匠の見られる銅鏡。恐ろしいほどに情報の通りだ。これが依頼の品であることは間違いない。何としても手に入れねば。
H.O.P.E.への引き渡し義務も、根拠となる調査レポートはオブザーバー次第なので問題ない。それにあの銅鏡、確かに珍しいが年代測定自体は弥生時代の範囲となるだろう。そうなればあれは単なる銅鏡でしかない。発掘現場から一つ消えたところで、あの日本人の教授が少し騒ぐだけのことだ。
発掘現場へ盗みに入る算段を立てている間に、もう夜は更けていた。
そのとき、部屋全体を揺する轟音が一度、大きく鳴り響いた。何事かと窓を開けると、山向こうから地響きが続いている。正に発掘現場の方向だ。
必要なものだけ身につけて旅館を飛び出す。息を切らして小高い山に登ると、発掘現場のある谷が一望できた。
「……くそがっ」
既に頭を過ぎっていた悪い予感が的中する。それも最悪の形で。
ずずん、ずずんと谷の間に響くのは、いかめしい巨体を引きずる音。眼下を這いずる化け物――大きな岩が長く連なった姿は、蛇以外の形容を許さない。
「愚神、いや従魔か。よりによってこんなときに。それにしても――」
一体何に憑りついたというのか。双眼鏡で岩蛇の頭部辺りを凝視する。そこには昆虫の単眼のように、あの銅鏡が配されていた。
いらつきのあまり、寄り掛かっていた枝を折ってしまう。これで計画は変更を余儀なくされる。
いずれにしろ自分だけでは事態を収拾できない。キターブはスマホを取り出し、最寄りのH.O.P.E.支部へ連絡を入れた。
●岩蛇を見守り
「敵は従魔の集合体だと思われる。岩が連なって蛇の姿を為している。動きは早くはないが図体があるし、何より固い。ひとまず誘導し、足止めに専念してくれ」
こちらへ向かっているリンカーたちへスマホでブリーフィングを行なう。オペレーターが現場にいるのなら、そのまま詳細な情報を伝達できるとの判断だ。
「現場は地元の大学が発掘を行なっている。考古学的に重要な発見もあるから荒らさないようにしてくれ。あとは……蛇か。青銅の鏡から現れるとは。蛇は古来より生命力の化身として崇められてきた。せいぜい念入りに砕いてやるしかあるまい」
言っている間に岩蛇が移動を始める。もはやキターブとしては気が気でない。まともに思考が働かないでいる。
「敵の体についている青銅鏡は貴重な発掘品だ。出来れば無傷で回収してほしい。頼んだぞ、リンカーたち」
最低限の情報は渡した。あとは彼らに託すしかない。
解説
・目的
青銅鏡に憑りつき、巨大な岩蛇と化した従魔の討伐。
・敵
岩蛇
巨大な岩が連なった蛇のような姿をしている。動きは遅い。
憑依元と思われる青銅鏡は単眼のように先頭の岩に埋め込まれている。
・場所
僧ヶ岳山中。山林に囲まれた谷間にある発掘現場。
・状況
真夜中の山であるため光源が乏しく、注意が必要。
マスターより
せっかく発掘した青銅鏡に従魔が憑りついてしまいました。このままでは発掘現場がめちゃくちゃになり、人里に降りられれば多大な被害が出てしまいます。そうなる前に足止めし、討伐してください。
今回はシリーズシナリオの最初となります。青銅器に刻まれた不思議な図像を巡る旅がこれから始まりますので、キターブともどもよろしくお願いします。
関連NPC
リプレイ公開中 納品日時 2017/12/04 19:54
参加者
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最終発言2017/11/27 15:27:43 -
【相談】青銅鏡回収任務
最終発言2017/11/28 19:13:53