本部
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 7人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/02/18 07:30
- 完成予定
- 2017/02/27 07:30
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/02/15 22:44:36 -
【相談卓】連鎖を止める
最終発言2017/02/17 21:24:17
オープニング
●絶望の侵蝕
もしも明日死ぬとしたら、何をする?
最近はそんなことを考えながら、目覚めるようになった。
起きて肺いっぱいに、空気を吸い込む。
この空気にも、きっと毒が混じっている。
少しずつ吸い込んだ毒が体中に回り、命を侵蝕してゆく。
私達は死ぬ。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬみんな死ぬ。
なのに今日も、いつもと変わらないような顔をして世界は動いてゆく。
ああ、なんて……気味が悪いんだろう。
●重くのしかかる声
主婦の万梨絵は一人きりで目覚めた。生憎、夫は四国外に出張中で、この家には万梨絵ひとりきりだ。
パートの仕事が始まるまでの時間、午前の澄んだ空の下を歩いてみても、気分は晴れない。
『あなた達はこのままだとみんなみーんな、ミチのビョーキにかかってゾンビになって死んじゃうわけ』
偶然、テレビのニュース番組を見て聞いた言葉が、耳に残って離れない。
ひとりで黙っていると、もうとっくに誰もが死んでしまっていて、亡霊として漂っているだけなのではないかという妄想に襲われる。
誰かと話したい。
あなたは亡霊ではないと、ちゃんと生きているよと、誰かに言って欲しい。
「――あ」
住宅街の細い路地のなかに、見知った顔を見つける。
いつか料理教室で一緒になった、若い主婦だ。
「……しおりん?」
かろうじて、そのとき呼ばれていた愛称だけは思い出した。
ほっそりとした姿が振り返る。万梨絵の姿を認めたその顔に、笑顔が浮かぶ。
(ああよかった、この人は私を知っている。私もこの人を知っている)
そう万梨絵は安堵する。
「最近見かけなかったけど、元気?」
「ええ、私は元気よ。けど主人が入院しててね、今日も見舞いに行かなければならないの」
「まあ、悪いの?」
「命に別状はないのよ。心配ないわ」
他愛ない世間話にも、不吉の香りがする。
この人の夫は、何の仕事をしているんだっけ?
宿舎に住んでいた気がする。公務員?
「ここで会えてよかったわ。私はもう行かなきゃならないけど」
立ち話を切り上げようとする相手に、じゃあ私も行くわと手を振ろうとして、カッと熱いものを感じる。
手首からぬるい血液が噴き出して、それが痛みだと分かるのに、数秒かかった。
「……え……っ……?」
状況を判断するのに、更にしばらくかかる。
目の前のほっそりとした主婦の手には、血で真っ赤に染まった果物ナイフが握られていた。
彼女はほがらかに笑う。
「私は、元気よ。なにも変わらない」
雲が冬の陽射しを遮るように、その顔が見る間に様相を変えて行く。
普通だった彼女の皮膚が変色して剥がれ落ち、肉が削げ、眼球までもが露出した死人の顔へと変化する。
「だからね、貴女もきっと変わらないわ。安心して?」
その声はもう、地の底から響くように重かった。
まるでホラー映画館に突然迷い込んだような驚愕の光景に、立っていられなくなり、思わずその場に膝をつく。
死人の顔をした女が軽やかな足取りで去ったあとも、万梨絵は動けなかった。
偶然通りかかった人が救急車をよんでくれ、そこで万梨絵は様々なことを知る。
万梨絵を切りつけた相手の名は飯塚詩織。ある事件に関わった感染者として指名手配中。
切りつけられたのは万梨絵だけではなく、何名もいること。
そして翌日には、万梨絵の新型感染症への感染が、病院で確認された。
●刃の連鎖
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬみんな死ぬ……ッ!」
感染の宣告を受けて、万梨絵はまず絶望に打ちひしがれた。
この四国では、正体不明の新型感染症で多くの人が無惨に亡くなった。
治療薬が出来たなんて嘘だ。だって治った人なんて、見たことがないのだから。
だが一方で、妙な心の軽さも感じていた。
(これで、いつ死ぬかを心配する必要はなくなった。だって私はもうじき死ぬのだから!)
口元からは自然と笑みが零れる。
「ふふ……ふ……ふふふふふふふ……っ……」
もうこれ以上、いつ死ぬか分からない不安に苛まれることはない。
すぐに、この絶望からも解放される。この肉体の死をもって。
「ねえ、明日死ぬなら何がしたい? 私は人の役に立つことがしたいわ!」
病室は大部屋だった。
同じ部屋に、同じように飯塚詩織に襲われて発症した女性たちが集められている。彼女たちに、万梨絵は話しかける。
「私ね、嘘みたいに心が軽くなったの。いつ死ぬか分からないから不安なのよ。いつ死ぬか分かってしまえば、もう悩む必要はない!」
ベッドに横たわる女性たちは物憂げに顔を背ける者もいるが、幾人かは耳を傾けてくれた。
必要なのは、外出着。そして刃物。小振りなものでいい。
どちらもすぐに手に入った。
「すぐに行きましょう。私達に残された時間は少ない」
腕に繋がれたチューブを引き抜いて、万梨絵とそれに続く数人は、久方ぶりの明るい気分で病院を後にする。
絶望に心を閉ざされた人々に、救いを。
ポケットに入れたカッターナイフを取り出す。それには既に万梨絵の血がべっとりと塗りつけられている。
「ふふ……ふふふ……あははははははっ!」
ずっと心を覆っていた重苦しい霧が晴れたような感覚に、万梨絵は哄笑した。
解説
●依頼内容
切り裂き魔と化した5名の感染症患者を確保し、彼女達を絶望の淵から救い出すこと。
●確保対象
万梨絵、ユカ、チアキ、カヨ、マキ、以上5名。全員が20代~30代女性。身体能力は普通。顔写真は配布済み。
新型感染症の初期患者だが、同時にテレビ電波を通じて芽衣沙の洗脳を受け、『四国の住民は遅かれ早かれ皆死ぬ』という観念に支配されている。これは元々本人達が持つ絶望や疑念の変化したものであり、BS解除系のスキルは無効。また同じく洗脳を受けた人間には絶望が伝播する危険性がある。
この洗脳は、強い説得によって心を動かすことができれば解除される。
各人がカッターナイフを所持している。これは普通の文房具であり能力者を傷つけることはできないが、一般人が切りつけられれば高い確率で感染する。
●周辺状況
徳島県A市にある新型感染症収容施設からの患者脱走が発覚したのは午後1時。
同室の患者たちによれば万梨絵達が病室をあとにしたのは正午ごろ。
即時に警察は病院の1時間徒歩圏内5kmを交通規制し、自家用車及び公共交通機関、タクシー等には検問を行っている。捜索は警察に任せてよい。
ただし感染者の拘束にはAGWが必要であり、発見次第、誰かが現場に向かうことになる。拘束具(手錠)は必要なだけ用意されている。
交通規制中の為、パトカーに同乗して移動する。
元凶となった飯塚詩織については、依然捜索中。
また、感染者があまりに容易に脱走したので、誰かが手引きした可能性が示唆されている。
●PL情報
5名の感染者は順に発見される。包囲網の外に脱出した者はいない。一人ずつ、あるいはまとめてなど、説得方法は自由。
芽衣沙の洗脳は放送を視聴していた人々に見えない形で広がっている。警察も例外ではない。
不安を掻き立てる事件(切り裂き魔)によって次のパニックが広がる可能性がある。
マスターより
今回の敵は……『絶望』です!(えー)
汚染電波により、芽衣沙からの洗脳は四国住民に浅く広く浸透しています。
彼らは、ちょっとしたきっかけで坂道を転がり落ちるように絶望の中に落ちてしまいます。
また、こうなったら何をしでかすか分かりません。
今回、警察などの手も借りていますが、彼らの中にも絶望を胸に抱いた人達がいるかもしれません。勿論、その他の通行人の中にも。どこにでも。
H.O.P.E.を名乗るエージェントとして、これらに立ち向かってください。
『絶望』を胸に抱いた人々は、本来はあなたがたからの励ましを待っているのです。
リプレイ公開中 納品日時 2017/03/02 23:04
参加者
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/02/15 22:44:36 -
【相談卓】連鎖を止める
最終発言2017/02/17 21:24:17