本部
狂幸の騎士道
- 形態
- ショートEX
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
- 1,500
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 6~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/03/15 15:00
- 完成予定
- 2016/03/24 15:00
掲示板
-
真の幸福とは?
最終発言2016/03/15 09:38:52 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/03/12 18:23:43
オープニング
●
強烈な吹雪が襲うロシア西部。普段なら柔らかな雪が市民を包み込んでいたが、今日は一変して大きく荒れ模様を見せていた。田舎町で暮らす人々は家の中に籠り、貯蓄された食材だけを使って今日を生き延びる。
そのために外を出歩く黒ずくめの集団に気づく者はさほど多くなかった。フードを被り、白い布で口元を隠したその集団はある一定の方向に向かって進んでいる。その先には山があった。
「おいあんた」
集団の最先端を歩く、団長という肩書を背負う女性グリッシュが、すぐ真後ろに続く男にそう呼びかけた。
「期待通りしっかりと仕事をしてくれるんだろうね」
「ああうん、うん勿論。勿論さ」
男はそう答えて、不気味な笑い声の後に言葉をつづけた。
「僕にしっかりと金を用意する事。それと、殺害対象の研究材料を僕にきちんと譲る事。それさえ守ってくれれば僕はしっかりと頑張るよ」
山間部に向かうと吹雪はより一層荘厳さを増し、黒集団が近づく事を自然が許さないと言っているようだった。それに構わず進んでいく。曲線的な獣道を通って、十九メートルの登山道を上った地点に辿りつく。そこは山だというのに平面だった。
変わらずに歩き続ける一行だったが、突然グリッシュが手を挙げて動きを止めた。すると、背中に背負っていた太刀を地面に突き刺す。
「ここだ」
彼女は白い布を取り、淡い吐息を天へと昇らせた。その吐息に言葉を描く。吹雪に邪魔されずに、天にまで届くだろうか、その言葉は。
●
地下闘技場の事件で存在が明らかになり、罪を重ねた男、カナピルの行方を必死になって探していたオペレーターは、目撃情報が出た地域に調査員を派遣して、手の抜かない追跡を行っていた。
ここ数日間の間、痕跡は残ったものの既に別の町に旅立っていたという事態が重なっていた。そんな中、早い発見情報が舞い込んでくるのである。
ロシア西部にてH.O.P.E職員がカナピルと思わしき人物を発見していた。特徴はほとんど一致しており、オペレーターはすぐにエージェントを呼んだ。
「重罪人、カナピルがロシア西部、L町にて発見されました。至急、調査及び確保に――」
電子音が彼女の言葉を遮った。
「すみません、少し失礼します」
急いで行動に移さなければならないというのに。彼女は電子音を厄介に思いながら、通話が開始された。
「はい、はい。分かりました、すぐにエージェントを向かわせます。いいですか、決して立ち向かおうとしないこと」
何度かの応酬が終わると、オペレーターはあなた達エージェントに再び顔を向ける。
「L町オブルグ研究施設という所から通報がありました。研究所にテロリストのような集団が押し寄せているとのことです。早急に救出に向かってください。……カナピルが関わっている可能性もゼロではありません。彼は人を容赦なく殺める人物です。どうか気を付けて、任務を達成してきてください」
以前、オペレーターは自分の不手際で一人の命が失われてしまった事を悔いていた。カナピルは、彼女にとってトラウマの種の一つとなりかけている。
――早い解決を。任務に向かうエージェント達の背中に、手を合わせた。
●
私たちは動物。人間や、犬や、虫といった区別はあるけれど、どれも動物。動く物と書くのだから、同じようなもの。
博士はこういっていた。人間には感情という未知なるエネルギーがあるから、真の幸福について調べる事はできないのだと。だから感情のない私に幸福というプログラムを覚えさせたのだ。
私は犬だ。造られた犬で、ふつうの犬と違って話す事もできるし……ロボットなのだ。
博士は私を使って、真の幸福を探求しようとしていた。本当の幸福に出会えた時、私は寿命を迎えるらしい。何らかの切っ掛けが私を幸福にした時、電気量が倍増してショートを起こすのだという。その瞬間を、博士は待ち続けているのだ。
しかし、造られてもう何十年経つだろう。博士は老い、もう寝たきりになってしまった。私はいつになったら役目を終える事ができるのだろう。
この世界に、動物による真の幸福というものは、そもそも存在するのだろうか。
幸福の探求というのは――。
目の前で扉が開いて、私は客人を出迎えた。悪い黒ずくめの集団を退治しにきたエージェント達だ。私は案内役を頼まれている。
優秀な助手、マクランという二十五歳の男が私にそう言ったのだ。彼ら客人を案内してほしいと。
「待っていた。私はスチャースだ。君たちエージェントのお助けロボット、と考えてほしい」
私は思考を許されていない。ただ幸福を追求するだけ。次から次へと溢れ出てくる言葉は、おそらく過去に私が聞いた言葉。
博士が寝たきりになってしまった今、私は幸福とは何なのかについて尋ねる人がいない。マクランという人間も、私は十回その問いを投げた事があるが、分からないとしか言わない。
時間が許せば、私はこの人達に幸福について尋ねてみようと思う。
●
既に共鳴状態となっているグリッシュは、太刀を助手ののど元に向けた。
「研究資料を全て差し出せ」
「そ、そんな事は、できません……! 大切な資料なんです」
「ならば、オブルグの命を刈り取る。お前の命もだ」
太刀を持ちながら、彼女は寝たきりの老人を睨んだ。――狂人め。
助手のマクランはエージェントが早くこないかと祈る事しかできなかった。早く、早く、一刻も早く。スチャースに案内されて、早くここまできてくれ!
解説
●目的
集団の討伐・捕獲。施設関係者の救出。
●集団について
科学を敵とする宗教団体。一神教であるが、彼らが崇拝しているのは神という概念だけであり、その神に明確な名前はない。
今回研究所を襲ったのは、幸福という概念を科学的に証明しようとする博士に怒りを示すためである。神から与えられるもので、弱小な人間が幸福を司るのは悪だとしたのだ。
教祖、また団長であるグリッシュは二十五歳のロシア人女性で、教祖としては三代目である。二代目の父から受け継いだ。
リンカーと一般人が混在しており、十五人中、十人がリンカー、五人が一般人である。
●研究施設
山の地面の中にある研究所で、地下三階まで続いている。
階層の形は同じで、正四角形が重なっている構造だ。地下にいくほど面積が小さくなっているのが特徴的。
玄関は天井についており、梯子を上り蓋を開けると外に出る事ができる。
一階はパーソナルスペースで、研究する場所はなく、一般家庭を思わせる階層。ワンルームで、廊下というものがなく、玄関を下ったらすぐに四角形の部屋が見える。壁は耐性力を持つ加工大理石でできている。
一階中央の階段を下に下り、二階から研究施設になる。二階は三つの部屋が連なっている。
三階は二つの部屋があり、片方の部屋が病室に、片方の部屋が助手の個人室となっている。
集団は狭い病室内で博士と助手の命を狙う。
●博士について
寝たきりの老人となってしまった博士。マクランという研究熱心でけなげな助手に介護をしてもらいながら生き延びている。
幸福や人間の感情といったものを研究していた。
●カナピルについて
地下闘技場で選手として活躍していて、闘技場制圧任務の際エージェントやH.O.P.Eの手を撒いて逃げた罪人。
中世ヨーロッパ武術の心得がある剣闘士だが、騎士道のプライドはあまりない。勝利のためなら卑怯な手も使う。
シナリオ『暗がりの騎士道』に登場。
マスターより
エージェントの皆様方、いつも任務お疲れさまです。
シナリオのテーマでもあります、真の幸福とは。
動物全体から見てそんなものがあるのかどうか。犬型ロボットはそう尋ねてくるでしょう。その時にどう答えるのか――皆様方の過去を振り返って、幸福を得た時の共通点を探してみれば、もしかすれば分かるかもしれません。
この問に答えはありません事を、ここに述べます。
それでは任務の方、よろしくお願いします。
リプレイ公開中 納品日時 2016/03/20 19:21
参加者
掲示板
-
真の幸福とは?
最終発言2016/03/15 09:38:52 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/03/12 18:23:43