本部

【愚神共宴】連動シナリオ

【共宴】アイアム邪悪

ガンマ

形態
ショートEX
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
多め
相談期間
4日
完成日
2018/04/11 16:19

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-

掲示板

オープニング

●愚信凶魘01

 惨劇である。

 朝っぱら、通勤ラッシュ、人間過密のプラットホーム、足の踏み場もないほど死体、生々しい赤がA型B型O型AB型入り乱れて流れている。それをうずくまって呆然と眺めるしかないのは未だ数多の生き残りだった。足には大なり小なりの負傷。地面を奔った風が、彼等の足をことごとく切り裂いたのだ。
「これが愚神」
 死体の海の真ん中で、一体の愚神を傍らに一人の人間はそう言った。そいつは機械の顔をしていた。
「これが悪役」
 器用に生首リフティング。死体を辱しめながら、“悪役”はAGWなもなんでもないただの拳銃を無秩序に撃った。それは数多の人間の中の運が悪い奴の胴に当たり、呻き声と悲鳴が響く。
「悪役と正義の味方が仲良しこよしでハッピーエンドだなんて、絶対絶対みとめナ~イ」
 狂乱と恐慌。でも逃げられない。なぜなら炎の壁が一切の退路を塞いでいるからだ。炎の中には愚神がもう一体――炎を突っ切ろうとした人間を長い手で捕まえて、火炎の中に引きずり込む。悲鳴はなかった。頭から人間が補食されたからだ。
「愚神と分かり合おうなんて、皆きっと騙されてるんです。私が目を覚まさせてあげます。愚神とは悪です。人間の敵です。燦然と立ち向かわねばならないのです。ご理解いただきたいのです。分かってくれるまでそれはもう衝動的に突発的に悪事を働いちゃうのです。おいそこのピューリッツァー希望者」
 なんでもない拳銃を線路にポイと捨て、悪役はコッソリとスマホで撮影をしていた人間を指でさす。撮影者はゾッと凍りついた。殺される、恐怖が意識を遠退かせた。
 だが。
「引き続きかっこよく撮りなさい。PEACE(平和)!」
 そいつは嬉しそうな口ぶりで、ピースサインをしてみせた。


●共演
 ヴィランズ『マガツヒ』上位構成員エネミー、愚神十三騎シャングリラ、愚神パライソ、出現。
 無差別的に一般人を殺傷している。
 以下、被害者と思われる一般人のSNSに投稿された動画。エネミーによるメッセージ。

『愚神と分かり合おうとしたからですよ。皆様は愚神に惑わされているんですよね。いえ、分かりますよ。善性愚神達は実に上手くH.O.P.E.と古龍幇に取り入ったと思います。あれはNOって言えない状況ですよね。分かりますよ。うん、愚神のことですからロクでもないことをするのは目に見えていますよ。でもね、そういう策略だろうとね、愚神ってか悪役と仲良くなろうと思う正義の味方が出るのはね、良くないですよやっぱり。だから教えて差し上げるんですよ、愚神は敵だと、悪なのだと。さあ早くおいでなすって下さいね。さもないと益々、突発的に無差別的に連続的に殺人しちゃいますからねッ!
 ああ、そうそう。善性愚神を連れて来たらマジで真っ先に罪なき市民を皆殺しにすっからエージェントの皆様だけで来て下さいね? ……あはは! イイコト思いついた! 善性愚神の新鮮な生首もってきたらすぐ撤退してあげるぴょ~ん!』

 ――事態を重く見たアルター社は、罪なき市民を守るべくH.O.P.E.に全面協力を申し出る。
 周辺封鎖協力、救出された一般人の為の医療支援、作戦用の技術提供、etc……
 その他、要請があれば可能な限りそれに応えてくれるだろう。

 また、エネミーの声明から、善性愚神の直接的支援は人命に直結する危険性がある為、望めない。
 出撃するエージェントの任務は、敵性戦力の撃退。
 一人でも多くを救うため、一秒でも早く倒さねばならない。


●愚信凶魘02
「大丈夫、もうすぐ正義の味方が助けに来てくれますから」
 燃える炎の壁を見ながら、エネミーは彼方を見やった。
「きっと分かってくれますよね、皆様なら、正義の味方なら。いや、でも分かり合いたくない。否定が欲しい。侮蔑が欲しい。分かり合えないからこそ正義と悪は闘争すべきなんですから。ああジレンマもどかしい。でも皆様に悪は悪だってご理解いただけるためなら、私、私、なんだってシちゃうんですから」
 そう例えば今日みたいな無差別大量殺人とかいうおよそ許されるべきではない即死刑的凶悪犯罪。
 ……独白の間にも悲鳴が絶え間なく聞こえる。腹をすかせたパライソは、炎の中から手を伸ばしては、人間を掴んで捕食してゆく。
「こんなにいっぱいのご飯ひっさびさー」
 背後のシャングリラも、血と共に流れ出る“命”を啜り幸せそうだ。
「ねえエネミー」
「はいなシャングリラ」
「ずっと気になってたんだけどさあ、エネミーってオスなの? メスなの?」
「そういうのは切除しましたからどっちでもないですね」
「ほええ」
「顔とか性別とかは極力消しておかないとね。お情けで正義の刃が揺らぐことはあってはなりませんから。愛と顔の良さの前には罪も許されるとか、そういうことは正義にあるまじきですよ、正義とは徹底して美しく為されるべきなんです」
「エネミーにも顔があった時代があるのかー」
「空前絶後の顔の良さしてましたよ私」
「ウッソだぁ」
「ウッソぴょーん」
 ひとしきりゲラゲラ笑った後、愚神とヴィランは今一度炎を見やった。
 気配がする。間もなくだろう。
 やってくる彼らに、悪役はいつものようにこう告げる。

「――さぁ、レッツ世界平和!」
 

解説

●目標
 敵戦力の撃退

●登場
マガツヒ上位構成員『エネミー』
 アイアンパンク(生命適正)、機械化部位は顔面。性別不詳。使用AGWはマチェット。
 憑依しているのは愚神『シャングリラ』。
・裏表のない奴
 常時発動。背面よりライヴスでできた愚神の上半身が突き出ている。
 向けられる「不意打ち」の効果減少、一ラウンド二回攻撃の効果などなど。

愚神『シャングリラ』
 機械仕掛けの人型めいた外見。チェーンソーめいた武装を持つ。
 能力はバランス型。ブレイブナイトめいた何か。
・血の宴
 範囲不明周囲の「出血している非リンカー」からライヴスをじわじわ吸収しており、能力強化・生命のリジェネレートを行っている。この効果はエネミーとも共有している。
・死角?特にありません、無敵です
 常時発動。エネミーと知覚を共有している。「不意打ち」の効果減少。命中回避上昇。
・なすりつけ
 被ったバッドステータスを「非リンカー」に移し替える。エネミーと共有。

愚神『パライソ』
 自然現象や斥力などを操作する能力に長ける。
 リプレイ開始時、プラットホームの階段にいる。一定のダメージを与えれば戦場の炎の壁を解除できる。
 “リプレイ開始時『は』”炎にライヴスは通っていない。
・森羅の忌児
「火や水などの自然現象系エフェクトをフレーバーテキストに持つAGW」「同上のスキル」
 これらに対する防御力が高められている。常時発動。
・嘲笑せし者
 対象単体。1シナリオ1回のみ使用。イニシアチブフェーズに宣言し、即座に行動終了になる。
 対象に攻撃が命中したものとしてクリンナップフェーズにダメージ算出を行う。
・見えざる手
 クイック。支援妨害……?
・etc…

AGW『フェニックスブレイズ』
 アルター社製。使い捨て。全員に支給される。
 バッジ型で、使用すると一時的に使用者のライヴスを超活性化。
 任意一つのアクティブスキル使用制限を1回復。

リプレイ

●殺劇01

 思い付く悪辣の限り。
 それを現したような惨状。
 いっそフィクションめいて見える。

「わぁ~屍山血河だねぇ~すごいねぇ~、みんな死んでるねぇ~」
 菜葱(aa5545hero001)と共鳴を果たした畳 木枯丸(aa5545)は、頭に木の葉がちょんと乗っていることを除けば外見に変化はない。そして内面も、あまりに赤い光景に乱されることはなく。
「――そう。戦う力がない人を」
『そうか。――許されることじゃないな』
 共鳴の姿、雁屋 和(aa0035)は黒い外骨格鎧で武装した拳を握り締めた。彼女の憤りを、ライヴス内のヴァン=デラー(aa0035hero001)も肯定する。
 燃える炎、揺らめく陽炎の向こうの惨劇。であるからこそと東江 刀護(aa3503)は凪の心で前を見澄ます。
(愚神は敵だと、悪なのだと教えて差し上げます、だと?)
 それに加えて、善性愚神の生首を持って来れば撤退する、などと戯言まで。
「ふざけた要求をする馬鹿には手加減無用」
「一般人が多数いることをお忘れなく」
 隣で答えたのは双樹 辰美(aa3503hero001)だ。刀護は英雄に頷きを返すと、共鳴を果たす。

 エージェント達は四手に分かれて突入する作戦であった。

 線路側から炎を突っ切る者が先ほどの三人。
 渡線橋や階段上から突入する者が木霊・C・リュカ(aa0068)と九重 陸(aa0422)。
 アルター社に要請した軽トラックで突入する者が紫 征四郎(aa0076)と東海林聖(aa0203)。
 H.O.P.E.経由で借用した電車を使い現場に乗りつける者が構築の魔女(aa0281hero001)、荒木 拓海(aa1049)、バルタサール・デル・レイ(aa4199)。

『あいつの主旨は嫌いではないが、同時に、切除を前提とした毒だ。ここで殺す』
 共鳴状態、ライヴス内のガルー・A・A(aa0076hero001)が征四郎に言う。共鳴によって青年の姿となっている征四郎は、少女の時よりも大きくなった手で車両のハンドルを握り直した。
「助けなければなりません。こんな終わりは、あってはならない!」

 突撃までのカウントダウン開始――

『エネミーって、ほんとブレないよねえ……』
 ゴオオオオ、と耳元を通り過ぎていく強風の最中、バルタサールのライヴス内で感嘆の声を漏らしたのは紫苑(aa4199hero001)だ。
「自分の欲望に正直で、ある意味ウソがないとも言える。“善性”愚神について質問してみたら、いい情報が掴めるかもしれんな」
『じゃ、あとでお話できたら聞いてみよっか。せっかくだしね』
 小声ならば風が掻き消すのをいいことに、バルタサールと紫苑はそんな会話をした。
 バルタサール、そして拓海がいるのは電車の上だった。運転席にいるのは辺是 落児(aa0281)と共鳴中の構築の魔女。彼女の手によって電車は既にブレーキをかけられ減速しつつあった。制動距離を利用してホームに横付けする心算である。どのタイミングでブレーキをかければいいのかは既に計算済みだ。
 さて。出来得る限りの準備はした。車内の座席や網棚には、止血剤などの医療道具や水入りの容器が積んである。これからどう動くかを脳内で再確認しつつ、構築の魔女は運転席の窓を開けて身を乗り出した。強い風に魔女の赤い髪が翻る。向かい風に目を細めた。
(いや、変わりないようで……)
 徐々に見えてくる光景、そこにいるのだろう“悪役”に想いを馳せつつ。37mmアンチ・グライヴァー・カノン「メルカバ」を幻想蝶より取り出すと、その手に装着した。
「ブレーキ音が隠せない分は別の手段で補いましょう。先手を取られる訳にはいきませんからね。……では」

 カウントゼロ、作戦開始。

 伏せたバルタサールの狙撃銃SSVD-13Us「ドラグノフ・アゾフ」の銃声、そして魔女のメルカバによるファストショットが先駆けとなった。
 炎を越えて惨劇へ。

 赤――

「来ましたね!」
 銃弾に防御姿勢をとったエネミーが身構えた。
「ああ――来てやったぜッ!」
 鮮やかな緑の残光を引いて。Le..(aa0203hero001)と共鳴状態の聖が、エネミーの視線の先に。トラックから飛び出した勢いそのままに、聖は両刃大剣ヴァルキュリアを力の限り振り下ろした。エネミーはそれをマチェットで受け止める。激しい火花が散った。
「あの日から、テメェだけは絶対に倒す。そう決めて居る――今日こそテメェに引導を渡してやるぜ……ッ!」
『……牛丼はココにはないから……今日は容赦しない』
 鍔迫り合い、因縁を胸に、英雄と共に睨め付ける眼光。首を伸ばせば口付けすらも能う距離で、エネミーは少年へ嬉しそうにこう言った。
「お見事! あとちょっと聖さんが遅かったら、線路に誰か投げ込んでましたよ」
 そんなエネミーの背後では、
「闘いに来たよぉ、斬りあお~」
 小さな小さな木枯丸が、自らの体躯よりも大きな黒漆太刀を構え、シャングリラへ切りかかる。愚神の武装と刃がぶつかった。
「強いの倒せば、ボクも強くなるんだぁ~。今回はねぇ~がちだよぉ~」
 ぽわぽわとした物言い、そして血こそ狸であるが、眼光は爛々とケダモノ。ニィと口角を吊った。
「豪華絢爛、斬った張ったの大活劇~!」
『やんややんや♪』
 剣戟の幕が上がる。

『初志貫徹徹頭徹尾悪役でいてくれる。所業は吐きそうなほど大嫌いだけど……君達のその在り方は好きだよ!』
 また地雷とかでないといいけど。リュカは凛道(aa0068hero002)のライヴス内でそう呟き、そして英雄の力によって得た視力で渡線橋よりの光景を見渡していた。
 血の色。それは凛道にとって見慣れた色ではある。だが。英雄は心の奥から込み上げてくるものを深呼吸でねじ伏せ、火焔の中に立つ歪な愚神パライソにこう告げた。
「外見も今までの罪状も関係なく、そこに意思があると言うのならば今は信じます。なので貴方がたも贖罪や降伏をするならお早めに……でないと先に首を刎ねてしまいます」
 断罪人のその言葉に。
 生理的な嫌悪感を催すような、細長い歪な人型のソレは、蓬髪の奥から彼を一瞥――することもせず。伸ばした手で一般人を掴み取った。
「い、いやだッ! 助けて助けて助け――」
 泣き叫ぶ声、もがく体が、炎の中に、引きずり込まれんと。
「させるかぁあああッ!!」
 そこへ、ジャングルランナーを用いてパライソへ一気に詰め寄ったのは、メリッサ インガルズ(aa1049hero001)と共鳴した拓海だ。遮二無二、我武者羅に飛盾「陰陽玉」をパライソへと叩き付ける。加速の一撃に愚神が大きく、階段の奥へ押しやられた。掴まれた人間は解放され、地面に落下してうずくまる。
「頭を庇い体を小さく伏せて! できたら隅へ!」
 炎の中より拓海は声を張った。ライヴスの通っていない炎であれば、共鳴状態の体を焼くことはない。けれど何より、今は心が熱かった。悔しさ、怒りが、拓海の心で黒い炎となって渦を巻く。たった今、一人は救えた。でも、救えなかった命があんまりにも多すぎる。
「……貴様らの許可は必要ない、個人の犠牲も必要ないっ……地獄絵図だ」
『気に入らないと殺してたら、いつか自分をも殺すことに成るのに』
 その言葉に、パライソはやはり何も答えない。ただ、関心を静かに、目の前にいる拓海へと向けた。ニンマリと笑う。豪勢な料理を振舞われた美食家のように。

「もう少ししたら仲間が助けに来ますから、それまで、もう少しご辛抱を」
 (HN)井合 アイ(aa0422hero002)と共鳴した陸も、人々へそう声をかける。反応は様々だ。少しでも安堵を見せる者、助けてくれと喚く者、怯えきってうずくまっているもの、状況を理解できずに凍り付いている者。少なくともこれだけの人数を冷静にさせる、というのは途方もない難易度なのだろう。

 善性愚神がいなければこんなことは起きなかった――
 H.O.P.E.が善性愚神を匿ったからこんなことが――
 愚神のせいで――!

『陸』
「分かってる」
 アイの声に被せるように陸は答えた。守るべき人々を害した時点で、エネミーの『主義主張“独り言”』に耳を貸す気は毛頭ない。
「お前……俺のお客様達に何をした? 醜いもの、悪しきものはすべて、俺の音楽の餌だ。お前たちも……」
 五芒星を宿した青い瞳で、愚神共を睨み付ける。エージェントを見やるパライソへ、油断なく盾を構えた。
「お前にはとっておきの二階席を用意してある……案内するぜ」

 その言葉が終わると共に、ホーム横に電車が止まる。扉が開く。

「救助にきました! 動けるならば中に……!」
 運転席の扉を開け放ち、共鳴の膂力で電車の屋根へ飛び移った構築の魔女が人々へ大きく声を張った。
 声を聴いた人々は足に傷を負っていた。それでも辛うじて立ち歩ける者が――我先にそこへ雪崩れ込まんと狂乱し始める。極限状態に晒され続けた人々はパニックに陥り、冷静さを完全に失っていたのだ。中には他者に踏まれる負傷者もいるほどで、それが更に恐慌を呼ぶ。
『まずい……!』
 エージェントは人々の狂乱を見落としていたかもしれない。征四郎の中でガルーが顔をしかめる。
「いけないっ……! 落ち着いて下さい! どうか、希望を捨てないでほしい……!」
 征四郎は遠方から九陽神弓でエネミーを狙っていたが、人々が波のように動いて斜線をランダムに塞いでは誤射の危険から矢を放てない。それどころか背中を一般人に押し退けられるほどだ。
「――! ――っ!! ――!!!」
 征四郎は声を張る。助けたいから振り絞る。だがそれは戦闘の音と、人々の叫びと、炎の音に、虚しいほどに消えていく。

「ははは! あーはははははははは!!!」

 エネミーは笑っていた。血の宴で回復できること、バッドステータスは他者になすりつけることができるのをいいことに、攻撃をかわすのではなく受け止める姿勢を崩さないまま。
「それでも、なお、救わんとする、皆様の何と美しいこと! 聖なるかな! 聖なるかな!」
「しゃらくせえッ!!」
 言葉を遮るように、和が炎刃『御骨頂戴≪おほねちょうだい≫』を振るった。殴り付けるような喧嘩乱打だ。エネミーの白いスーツに赤色が滲む。ちなみにこれで疾風怒濤は二回目、なれど。
「これでなんと九回殴れるのよ」
『――なんてことだ、これ欲しい』
 和の胸には不死鳥を模したバッジ、アルター社から支給されたAGW『フェニックスブレイズ』が煌いて。炎のようなエフェクトと共に、彼女のライヴスは急速活性化される。
「何度でも……ぶった切ってやる!」
 乙女は刃を構える。が――刹那に、妙な空白感。いつもなら『やっちまえ』と力を貸してくれる英雄が遠のいたような気がして。
「……ヴァン?」
『あ ――あ ああ。やっちまえノドカ。殴れば倒せる』
 寸の間の違和感。和は警戒を緩めず、正面のエネミーに問う。
「ところで結局、あんたの目的はなんなの、エネミーさん。貴方はたぶん、一貫して賢い、これくらいでは揺らがないと理解している、はず。亀裂だけ?」
「情動は時に、理解や納得を超えるのですよ」
 言葉終わりにはエネミーが刃を突き出した。和の肩口を切り裂く、直後に敵は身を翻し、続けざまに背面のシャングリラが武装を振るう。周囲のエージェント達を暴力のままに圧し飛ばす。
(重い……!)
 刀護は大剣ドラゴンスレイヤーでなんとか直撃は免れたものの、その一撃の圧力に手首まで痺れては眉根を寄せた。体にも傷ができている。
『お手並み拝見、小手調べ……どころではないですね』
 ライヴス内で辰美が言う。エネミーの背面からシャングリラが突き出したその様はまさに二面四臂の阿修羅のよう、辰美の想定通りに同時攻撃と、なかなかトリッキーな動きをしてくる。だが「死角を突いてくる」というよりは、「真正面から勝負してくる」タイプであるらしい。しかしそれは武人の持つ清らかな堂々さなどではない。悪役として、真っ向から正義にぶつかりたいだけの、ただひたすらに悪意である。
(こういう手合いは……構えば構うほど調子に乗るが)
 かといって放置はできない。周囲には守るべき人々がいる。踏みしめた地面に水気があるのは、誰かの血だまりを踏んだからだ。敵から目を逸らすことはできないが、きっと男の足は跳ねた血で汚れ切ってることだろう。
 そう、これは、誰かの血。誰かにとっては大切な、ささやかな日常に命を謳歌する、そんな誰かの命なのだ。
「これ以上、被害を拡大させるわけにはいかん」
 心に守るべき誓いを。一意専心、仲間を信じ、今は目の前の敵を討つべく、男は剣を振りかぶる。
 剣戟に重なるのは銃声だ。バルタサールが、電車の屋根上より仲間の攻撃に合わせて銃を撃つ。弱点看破――エネミーの弱点は人間と同じ、脳味噌と心臓だ。あんなアレだが構造はちゃんと人間と同じらしい。シャングリラについては、特にそういったものはないらしい。
「――、」
 バルタサールは電車の屋根上を移動する。時には伏せ、気配を殺し、位置を悟られぬように。本音を言うとホームに降りて死肉を踏みつつ戦うことに躊躇はないのだが、それを撮影されて後からあれこれ言われるのも面倒だ。視界の端に見えるのは、救いを求めて電車に乗ろうと押しかける人の群れ。「なんで発車しないんだ!」という怒号も聞こえた。死にたくないのは誰もが同じらしい。
『すごいねえ』
 男の中で鬼が笑った。
「全くだ」
 珍しく、男は同意を示した。

「足場に不安はありますが……」
 構築の魔女も、バルタサール同様に電車屋根の上から砲撃を行っている。七対二ではあるが、戦況は膠着状態か、拮抗の只中である。人々の恐慌にてついては――未だ彼らはパニックの渦中にあるが、そのことでエージェントが劇的に不利になったこともない。征四郎についても、すぐさま近接攻撃に切り替えたことで射線問題を解決し、エージェント側の手数が削がれることを回避した。
 一方で、戦場を囲む炎は未だ赤々と。構築の魔女はライヴスゴーグルで戦場を常に確認している。炎にライヴスが込められた様子はない。また、炎を隠れ蓑に何か妙なことをしている様子もなさそうだ。
 さて、次弾装填済み。細腕で軽々と、大火砲の砲口を向ける。
「避けられない状況を作って見せましょう」
 言下に放った砲撃は――ありえぬ軌道を“描く”どころか“瞬間転移”し、シャングリラに命中する。
「グエー!」
 愚神はわざとらしい悲鳴を上げた。本来ならばその弾丸は相手の意表を突き、狼狽させる。だがその様子がないのは、手近な人間になすりつけたからだろう。どうやら常時展開系の技能らしい。
「エネミー、アレどーしよっか」
 シャングリラがエネミーに問う。電車を破壊したいらしい。が、
「ダメです。なぜなら、電車の上から狙撃ってメチャクチャかっこいいからです」
「グエー」
 ポリシーの前には戦略は二の次らしい。ほとほとブレない存在だ。構築の魔女は肩を竦めつつ、こっちを見たエネミーに疑問を投げかける。
「善性愚神の首を差し出したら嬉しかったですか?」
 エネミーのことだ、もし本当に持ってきたら本当に撤退しただろうが――それとは別に、正義として救いに対価を用いるのはOKなのか、ということだ。
「うーん、複雑な気持ちになってたかもですね。でもそんなことしないって信じてましたから」
 そう言って、エネミーは足元の死体をまるで平然と踏みつぶしてグリグリと踏みにじった。
「ほら、早く悪者を倒さないと。どんどん人々の命が削れていきますよ」



●殺劇02
 ホームから階段を上り、改札口へ続く簡易な通路――ありふれた観光案内のポスターに、拓海の血がパッと散った。
「ッ――」
 鋭く切り裂かれた傷がパックリと赤い口を開いていた。ライヴスを込められた風だ。血が伝う腕で雷斧ウコンバサラを握り直す彼の視線の先には、おぞましい愚神がいる。事前に伝えられた自然能力を用いる能力に偽りはないようだ。高機動型PAEスーツに防具も入れ替え、万全の姿勢で愚神に意識を注ぐ。視界の端から見える窓の景色、炎の壁は消えていない。
 あれがいつ狭められて、人々をことごとく焼くか分からない。幸い、他の懸念――エネミーが事前に駅に爆弾などを仕掛けているのではないか、という予想は杞憂に終わったが。奴等が何か思いもつかぬ悪意を成すことは大いにあり得る。
 拓海は彼方の――ちょうどパライソを挟撃するような立ち位置の陸とリュカに視線を送った。二人とも無傷ではない。パライソの攻撃は、一撃一撃が重く凶悪……というモノではないが、範囲が広く無差別的だ。そして特化した能力は見受けられ名が、それは逆に攻めるべき大きな弱点がないことでもある。もう一つ、愚神は未だ“様子見”の印象があった。攻めるというよりは守りを優先し、エージェントを観察していたのだ――まるで品定めするかのように。
 気に食わない。陸は柳眉を寄せる。愚神のあの、人間を餌としか見ない眼差しが嫌いだ。
「九重 陸のスペシャルコンサートだ、死ぬほど感動していってくれよな」
 AGWヴァイオリンRoland G1を構える。
「組曲『八苦』第四曲、『死苦』」
 奏でる音色はライヴスが込められ、美しくもどこか狂気の神秘を感じる旋律となり、愚神を討つ叫びとなる。
 それに合わせて拓海もパライソへ踏み込み、凛道もまたポルードニツァ・シックルを三本、愚神の周囲に展開する。
 音色が先駆けとなった一撃は、拓海の疾風怒濤の三連撃、そして舞い狂う鎌の乱舞と、刹那の間に愚神を次々と切り裂き打ち据えた。愚神が土の壁や氷、斥力で防御しようと、それすら押し潰すように、だ。
(不気味だね……)
 凛道の目で、リュカは愚神を見据えている。事前準備動作などがないか、とつぶさに観察しているが、まるで佇んだ幽鬼のように目立った動作はない。愚神が喋ったり情動を見せたりすることはない。まさに外見もあいまって怪物然としている。同じ愚神なれど、ヴァルヴァラとはまるで違っていた。
 されど――激しく稲妻を放ったパライソが、ここにきて変動を見せた。エージェント達が攻撃を仕掛けたのは先ほどが初めてではない。幾度か彼らの攻撃を受けて、その愚神はこう思ったようだ。

 殺そう。

 と。
「! 火が――」
 窓の外の景色に、拓海が声を発した。戦場を取り巻く炎の壁が、消えた。それはパライソが一定のダメージを受けた証拠であり、そして……“本気で目の前の敵を殺す”ことを決めた証拠でもあった。
 炎。
 炎が、パライソと三人のいる戦場に、一瞬で満ちた。ただの炎ではない。ライヴスのこもった炎だ。
「ぐ、ッ……!」
 灼熱が瞬く間に誰も彼もを焼いていく。陸は顔をしかめた。体勢を立て直す為にも賢者の欠片を口に放り、愚神からは目をそらさず。陽炎に揺らめく向こう側、パライソが長い腕を伸ばすのが見えた。守るべき誓いを発動していた陸を狙っていた。ライヴスシールドは――すでにフェニックスブレイズの分まで使い切っている。異形の手が少年を掴んだ。人外の膂力で無理矢理引き寄せる。
「ッ、仲間を離せ!」
 炎を吸い込むことも厭わず、拓海は焼け付く喉で叫んだ。フェニックスブレイズを起動する。アルター社のモノだ、不安がないと言えば嘘になる。企業が利益抜きで協力など。なれど背に腹は代えられない。ライヴスを活性化させ、飛びかかる動作の中でバッジは投げ捨てた。使い捨てとはいえ技術者が汗水垂らして作り上げたモノを廃棄するのは少々申し訳ないが――今は。
「はァッ!!」
 振り抜く斧。パライソの姿勢が崩れる。だがさっきとは違い、陸を離さない。不気味な歯列が並ぶ口を、愚神が大きく開いた。
「やめろ、」
 拓海は手を伸ばした。陸は至近距離から反撃した。凛道も、炎の痛みを忘れて鎌を振るう。
 ごきっ、と嫌な音がした。陸の横半身が、愚神のアギトに喰らわれている。

 愚神は人間を食う。
 愚神は人間を餌としか思っていない。

 今、一同は、そのことを改めて、思い出す。

「がアッ! ああああ゛あ!!」
 異形の歯が少年の皮膚を破く。少年の肉を破く。血管を圧し潰し骨を砕く。化け物に理不尽に捕食されるという原始的・本能的恐怖。壮絶な痛みが絶叫を生み、溢れた血は炎にぐつぐつと煮えてゆく。それはスキルでもなんでもない、ただただ、捕食だった。
『陸ッ! 諦めるなッ!』
「わがッでる゛ッ!!!」
 血を吐きながら、英雄の声に答えた陸はパライソの顔面を殴りつけつつ凛道の方を見た。
「――……っ!!」
 言葉を発すれば狂乱してしまいそうで。沈黙によって心を律する凛道の手には浦島のつりざおがある。陸の救出を試みる。だがパライソが陸に噛みついたまま離そうとしない。あまり引っ張ると陸の体が千切れかねない。
(どうしたらいい、どうしたらッ……!)
 仲間の悲鳴が悪夢のように響き続ける。千切れかけた仲間の腕から骨が見えた。拓海は正気が擦り切れそうな心地がしながら、必死に愚神へ攻撃し続ける。メリッサがライヴスの中で懸命に声をかけてくれなければ、とうに恐慌していたかもしれない。
 人間が愚神に食われる。リュカはその“話”をこれまで何度も聴いてきた。きっと、きっと、数多の人が、こんな風に、バケモノに食われて、悲鳴を上げて、血を噴き上げて、手足をあらぬ方向に曲げて、内臓を崩されながら、死んでいったのだろう。凛道も裁いたことがある。人を食らって罪人となった者のことを。きっとあのように、おぞましいほどに、悲鳴に顔一つ変えず、他者の命を食い千切っていたのだろう。
「『させるものか……!!』」
 リュカと凛道の声が重なった。

 愚神パライソは決して、雑魚ではなかった。確かにシャングリラより凶悪性は低いけれども。それでも愚神だ――そう、愚神だったのだ。
 三人は強かった。強いがゆえに、愚神は必殺の意志を抱いた。精鋭とはいえ、本気になった凶悪な愚神相手――苦戦は必須。
 なれど、炎の壁は消え、市民の命は救われるだろう。脱出も容易になった筈だ。

 だが――この三人は?



●殺劇03

 炎は消えた。
 戦いは終わらない。

 ホームではまたひとつ、剣戟の音が響く。
 荒々しいほどに振るわれるシャングリラの刃が、木枯丸の小さな体を吹き飛ばした。
「んぎゃっ」
 血の弧を描いて、木枯丸は足を負傷して動けない人々の渦の中にぶち当たる。肉のクッション。ぎゃ、と人間の悲鳴。
「あーごめんごめん……」
 ず、と鼻血を啜りつつ、木枯丸は跳ね起きるや韋駄天か天狗のような身軽さで敵へと飛びかかって行った。
『おや、いつにも増して今日は楽しそうじゃの?』
 ライヴス内、菜葱は彼の弾むような剣筋にくつくつと笑う。
「うん~ボクの限界、超えるよ~♪」
 自分の限界を超える為に来た。限界を超えて強くなって、友達と斬り合うために。『ほう』と英雄は愉快気だ。
『なら、どれどれ……ワシが少し知恵と力を与えようかの』
 白兵乱戦、ここで無差別範囲攻撃を使えば、仲間だけでなく市民すらも巻き込んでしまう。流石に市民を殺傷する訳にもいかず、木枯丸は範囲攻撃スキルを自重する。その代わり一点集中の攻撃を叩き込めばいい、木枯丸は武器として一振りの刃として、全体重をかけ――共鳴したその姿は、小さな見かけに反して四〇〇キロもの重量を誇る――ひたすらに斬りかかる。
 同刻、同様、和がエネミーへと大剣を振るっていた。
「すべての力をぉ! アンタに叩き込んでやる!」
 持てる剣技、全てを行使。電車へは一般人が殺到しているゆえ、電車に敵を叩き込まぬ方が――むしろ引き離す方が良いだろう。あれやこれや、作戦や思惑は銘々にあるようだが、和にしてみれば“ひとまず己は敵を殴ればいい”に尽きる。
「人間は顔を殴ると怯むと思うのよね。それと視界は奪わないと」
 そう言って叩き落した刃は、エネミーの額にめり込む。だが敵役ときたら、割れた装甲から血を流しつつもへらへらしているではないか。
「部位狙いで簡単に敵が落ちちゃだめでしょ」
 自動回復によるごり押しだ。治るからその身を平然と犠牲にできる。それがエネミーの戦法だった。顔の右半分に半ば刃が埋もれたまま、バキバキと機械化部分を壊しつつ、敵は和の顔を掴む。その腹に、マチェットをぞぶりと突き刺した。
「ッが、」
 捻って引き抜かれた切っ先から、派手に血が散った。
「野郎ッ!!」
 その血が落ち切る前に、聖がエネミーへ突貫する。Wアクス・ハンドガンによって牽制の射撃をしつつ、本命の斬撃。
「一芸だけじゃねェぜッ!」
 鮮やかなガンカタアクションだ。奴等の武器を狙うが、武器破壊は難しそうだが――シャングリラの武装も、見かけこそチェーンソーだが、ヴォジャッグのバイクのように機構がそのまま地球人が開発したそれというわけではないようだ。ライヴスが込められ、愚神の為にカスタマイズされたそれは、「チェーンソーの見た目をした何か」と呼ぶべき存在なのだろう。
 そしてエネミーもまた、負傷に呻いたり怯んだりする様子がまるでない。被弾は確かにしている、痛覚もあるのだろう、決して無傷ではない、ダメージはあるのにも関わらず、だ。
「あっはっは」
 人間の普通の顔であれば右半分が大惨事な状態、伊達な白いスーツにもあちらこちらに汚れや傷。今だって聖の、そして刀護の刃に傷を刻まれ血を流しているが、愉快そうに敵達は武装を振るった。暴力のままに。
「ッ、」
 ぱっくりと裂けた刀護の額から赤い血が流れる。悔しいことだが、血の宴やなすりつけは常時展開型だ。庇うことや、ライヴスシールドでは防げない。護りたいという彼の意志をあざ笑うかのように、敵は刻まれた傷をじわじわと……人々の血を命を糧に修復していく。
「これ以上、犠牲者を増やすな!」
 込み上げるのは冷徹なまでの怒りだ。血が流れ込む赤い視界で敵を見据え、刀護はシャングリラへ斬りかかる。突き出した刃――愚神はそれを、ガチンと口で咥えて受け止めた。だが勢いまでは殺し切れず、頬が裂け頭部も半ば壊れてしまう。破損した口でバケモノは笑った。
 ひゅっ、と空を切る音。シャングリラの振るう凶器は刀護の胴をズタズタに引き裂き、彼だけでなく周囲のエージェントへも斬撃を及ぼす。
 途端、電車の屋根上から立て続けに飛んでくるのは弾丸と砲弾だ。バルタサールと構築の魔女である。二発のテレポートショット。
「「いてっ」」
 間抜けな悲鳴だが、これでもちゃんと弾丸は頭部に当たっているし額から大流血させているのだ。
『さすが悪役……暴虐の限りだね。酷いものだよ。最低だね』
 身を伏せつつ、硝煙を立ち上らせた銃を手に、紫苑がエネミーへ呼びかけた。実際は感心しているのだがそれは言葉にせず、続ける。
『“正義”の味方は今後とも“悪”を許すことはないから』
 否定と侮蔑。それはエネミーに限っては挑発ではなく愛の言葉になると理解の上だ。
「どうもありがとうございます!」
『どういたしまして。で、実際のところはさ。王とか新たな次元とかヘイシズのこと、どう思ってるの? ヘイシズとか本気なわけ? アルター社とかさ。客観的に見てどう?』
「ですってシャングリラ、そこんとこどうなんです?」
「んあー、質問が多いー」
「だそうです。一個ずつ聞いてみますね。じゃあ王のことはどう思ってる?」
「王は僕らのボスだよー、すごいよー、会ったことないけどここにいるよー」
「新たな次元って?」
「なにそれ」
「ヘイシズのことはどう思ってるんです? 彼の善性愚神論ってマジだと思います?」
「まあー、ヘイシズもー、いろいろ考えてるんじゃなーい? しらないけどー」
「アルター社について一言!」
「なにそれ」
 だそうです。エネミーは紫苑の方を見やってそう言った。「あ、ついでに」と付け加える。
「私個人としては、愚神のアレコレはマジで知りません。だってマガツヒですし。アルター社ですか? あれロクでもねーですから多分裏切りますよ、カンですけど」
 以上。
『……思いの他、一つ一つ丁寧に答えてくれたね?』
 紫苑がバルタサールに密やかに言う。男は肩を竦めて返事をした。英雄のことも、やたら律儀に返答した敵のことも、男にはほとほと理解ができなかった。

 さて。癒し手である征四郎はその間隙を見逃してはいなかった。降らせるのは治癒の雨、ケアレイン。薬屋としての英雄の権能。
「っ……」
 そう、癒し手であるからこそ、仲間の負傷の大きさに奥歯を噛み締める。一般人を意図的に狙った攻撃がないことだけが幸いか。それだけ、エージェントが尽力して敵に挑んでいるからこその成果である。傷付いた仲間を護るよう、魔剣「カラミティエンド」を構えて征四郎は敵を睨む。
「人間である貴方が悪となったように、悪が善へ転じることもあるかもしれない。その逆が有り得ないと、愚神は悪だなんて、あなたはどうして言い切れますか」
「ふふっ。シンプルにお答えしましょうか? ゴメンで済むなら死刑は要らないんですよ」
 その言葉に、征四郎は寸の間、首にチリつくような感覚を覚えた。ライヴスの中、ガルーは舌打ちをする。『親切に耳を貸す必要なんざねぇ』と吐き捨てた。
「――」
 征四郎は深呼吸をする。剣を握り直した。その柄には、深く鮮やかな紫に染まったリボンが結ばれている。
「私は信じる。信じることが、未来を変えることだってある!」
『お前がそれを選んだなら』
「『この足は止めない』!」
 だから振り返らず、前へ、前へ、前へ──……突き出す一撃。仲間を、そして人々を巻き込まぬよう、敵だけを狙って、魔剣の切っ先から奔ったライヴスは蜂の一刺し。栄光の毒。
「は! 効いた! その一撃、その言葉、その心っ! 素晴らしいッ!」
 シャングリラ諸共斬撃を食らったエネミーがたたらを踏む。
 と、そこへ、電車側とは反対の線路へ、新たな軽トラックが到着する。運転しているのはアルター社の非リンカーだ。聖が要請していたものである。
「こちらで救助を行います!」
 指示通り、運転手の者が人々に呼びかける。聖はエネミーの反応を見極めるべく視線をやった。だが敵は意識の端に留めただけのようだ。意図が分からないが、まあ救助しようというつもりなのだろう、と解釈しており、それをあえて邪魔するように動く気配はない――軽トラックのような小さな車両で、この膨大な数を救助など、スプーンでバスタブの水を空にするようなもの。数人の救助を妨害する、すなわち“救助させたくない”という行動は優先度が低いらしい。まあ数人ならいいか。ぐらいの考えなのだろう。ほとほと人命を軽視している。
 さすがに大量車両の電車にここにいる市民の九割を詰め込んで逃走……などであれば追ってきただろうが、生憎、電車の運転手はおらず、あれが動くことはない。
『……もしかしたら、だけど』
 ルゥがライヴス内で呟く。
『……エネミーの移動、走る必要がない……車が要らないようなもの、なのかも』
 例えば飛翔。例えば転移。例えば隠密。例えば透過。エネミーは車に対してまるで興味を示さなかった。そもそもこれまでの事件でも、包囲していた場所から離脱しているではないか。
「だったら……! 逃がさなきゃいいだけだ……!」
『……正論。……めずらしく』
「一言余計なんだよッ!」
 言いながら、切り込んでいく。振るう武器に重さを乗せて、敵を討つべく。
 和も、血だらけの体に鞭を打って剣を握り直す。おそらく長くはもたない。ボタボタと血が垂れる。戦場は最初から血生臭くて、自分の血の臭いは気にはならなかった。
「まだまだァッ……!!」
 鬼の如く、吼える。



●殺劇04
「誰も死なないでくれ……生きろ、生きろっ」
 愚神も敵も討ち倒し、拓海は幼い子供を励ましながら、救急車を待っていた。
 犠牲者は非常に少なかった。良かった。これで人々はエージェントに感謝を告げる。きっと未来は明るい。
(ああ、いや、違う)

 今のは夢だ。束の間の白昼夢だ。

 現実の拓海は燃え盛る炎の中、倒れ伏していた。動かせない体が、炎に巻かれて燃えていく。拓海の体から、命が少しずつなくなっていく。
 失血と火傷に歪んだ視界、投げ出された自分の腕と、落ちている自分のAGW。それに手を伸ばそうとして……英雄が自分の名前を呼んだような気がして。そこで、目の前は真っ暗になる。

 死ぬ……?
 こんなところで……?
 待っている人がいるのに……?
 まだやりたいこともあるのに……?

「アイさん」
『……どうした?』
 陸は千切れた自分の腕を、もう片方の手で持っていた。掠れた声で英雄を呼び、少年は言葉を続ける。
「俺は、誰も見捨てないっす。アイさんがそう望んだように」
『あ、ああ……そっか。そんなことを誓わせたんだっけ、俺。……そうだな。俺たちは見捨てない。たとえ見知らぬ誰かだろうと、助けてみせよう』
 その言葉に。千切れた腕を断面同士押し付けて、少年は強く頷いた。
「――はい!」

 死ぬわけには、こんなところで終わるわけにはいかない。

 食い破られた腹から中身が引きずり出され、喰らわれる。リンカーであろうと致死的な損傷。凛道は血を吐いた。死を強く感じた。
「ま……だ……、」
 歪めた顔。握り締めた鎌。断罪人はまだ諦めてはいない。フェニックスブレイズでライヴスを急活性化させつつ、その手にライヴスソウルを握り締めた。
「いいえ、まだです……まだ、終わってない、……まだ、刎ねていない!!!」

 そして、陸と凛道のライヴスソウルが音を立てて砕け――光が全てに満ちた。



●殺劇05
 結論から述べよう。
 圧し切り足りない――突破力が届かない。作戦についても、認識のズレが重なれば、一同の力を120%出し切ることもできない。
 少しずつエネミーとシャングリラを削ってはいる。だが血の宴によって奴らの持久力がそれにしがみついている。
 エージェント側も回復道具やスキルによって戦線を保つも、ジリ貧を既に超えていた。
 そして、ついに、エージェントの視界の端で、弱っていた人間がライヴスを吸われ尽くしてドサリと倒れる。……死んでいた。気付けば、戦いが始まった時よりも周囲のうるささが減ってはいないか。見よ、命を吸われた人々の青い顔を。倒れたまま、指先一つすら動かせぬほど弱り切ったその無力さを。

「――あなた、このまま皆殺しするつもりですか!?」
 征四郎の言葉は、悲痛な叫びだった。彼女が背に護るのは、血の中に沈み倒れ、指先をピクリとも動かさない和。チェーンソーに切り裂かれた傷からは今も血が流れていて――早く医療処置せねば命に関わりかねない。
 更に、戦場からはもう一人いなくなっていた。木枯丸だ。重体の身となる前に、「うわぁ~ん、へんなお面マンにいぢめられたぁ~助けてぇ~」……と、両手を上げてスタコラッと撤退したのである。だがそれは決して臆病心や無責任などではない、むしろ逆だ。共に出撃したのはいずれも名の知れたエージェント。であるからこそ誰よりも落ち着いて事に当たらねばならぬ。倒れて人質に取られる、護らせるように立ち回らせてしまう、そうして戦力を結果的に削いでしまうのならば、先んじて撤退する方が合理的だ。そう判断してのことである。
「貴方が切腹したら撤退しますよ」
 エネミーは平然と征四郎へそう言った。本気か冗句かも分からない声音だった。一瞬、征四郎は息を呑む。が、その肩をポンと叩く掌があった。聖である。
「――…… よ」
 俯いている顔。顎先から血が一滴、落ちる。
「いい加減にしやがれよ……ッ!!」
 エネミーへ上げたかんばせの眼差しには怒り。痛みも疲労もブッ飛んでいた。武装を雷光斧アステリオスに持ち替えて、重い一撃を振り下ろす。エネミーが真っ向から刃でそれを受け止める。火花。
「そう言えば、テメーはオレ等が“正義の味方”だとか言ってたな……二年前、どうでも良かったが、今ならハッキリ言えるぜ……ッ」
「ほう、どのような答えですか!」
「オレに取っての正義ってのは――」
 聖の幻想蝶が煌く。中空に浮かんだのはライヴス結晶だ。
「テメェがコレ以上、誰かを殺さねェように」
 聖とルゥのライヴスの結晶は、鮮やかな翡翠色にいっそう煌いて。
「ぶっ倒す事がオレの正義だ!」
 砕ける音。破片は一つ一つが膨大な光となって、聖を包んだ。
 ――リンクバースト起動。

「潰えやがれッ!!」

 翠光と黒が爆ぜる雷光の斧を、全ての力を込めて振り上げた。轟々と世界を震わせる光に、誰もが直視すら能わない。
「イイ――素晴らしいッ! 本当に、聖さんっ! 貴方って人は、ヒーローだぁ!!」
 エネミーは歓喜に打ち震えた。聖の渾身の殺意に絶頂めいた快楽を覚えた。

 ――噎せ返るほどの血の臭いとライヴスの中。
 正義と悪は筆舌に尽くしがたいほど殺し合った。
 決着はどちらかの死でしか決まらない。
 幾度かの剣戟の後。
 交差する互いの刃が、互いの喉元に触れた。

 かくして。
 その時である。

 ――叫びにも似た声が、ぐわんと一同の頭を揺さぶった。
 本能を恐怖させる音に、思わず誰もが戦いの手すら止めて振り返る。
 そこには崩壊音があった。……パライソとエージェント三人が戦っていた通路が、炎と共に崩れ落ちる。
 真っ先に状況を把握したのはバルタサールだ。狙撃銃のスコープより見えた光景に、普段は全く動かない表情筋が驚きを形作る。
「……!」
 土煙の奥。見えたのは二つの人影。
 陸と、凛道……?
 だが、異様だ。異様すぎる。
 その顔に正気はなく、ライヴスは禍々しく。
 無残なまでにバラバラにした愚神パライソの肉片を踏みしだき――殺気に溢れたその姿は、邪英であった。

「Aaaahhhhhhhh――――」

 目の中の五芒星を爛々と輝かせつつ、陸が叫んだ。先ほどの声だ。それは人の頭を蝕む狂気の歌。人々が耳を抑えて悲鳴を上げた。リンカーですら、吐き気を催すほどの頭痛に膝をつく。
「罰を……罰を……ッ!!」
 片手に断頭したパライソの首を持ち、凛道は鎌を掲げる。狂える断罪人は目に映る一切合切を断罪対象としていた。そう、ただの人間までも。
「そんな――リンドウ!!」
 征四郎が友人の前に立ちはだかった。振り下ろされる鎌を、剣で受け止める。――重い。それになんと、禍々しいことか。
 一方で構築の魔女は、陸の歌に眉根を寄せつつもバルタサールへ視線をやった。
「バルタサールさん、……お二人の足止めを行いましょう」
「……了解」
「東江さんは拓海さんの救助を!」
「ああ!」
 魔女に指示され、刀護は燻る瓦礫の中に倒れている拓海へと走った。拓海は酷い火傷と外傷を負っているが、息をしている。
「しっかりしろ……!」
「う……、ふたり、は……」
「ッ、一体、何が」
 拓海を担いで下がりつつ、刀護は奥歯を噛み締める。すると、拓海がかすれ声で話し始めた――曰く。二人はリンクバーストを敢行したのだと。だが様子がおかしかった。二人は邪英化したのだ。狂える存在と化した二人は、瞬く間にパライソを蹂躙し、八つ裂きにしたと。

(妙ですね……)
 砲撃で邪英二人の足止めをしつつ、構築の魔女は思考する。確かにリンクバーストの代償によって邪英化は起こりうることだ。だが、二人も同時に? いや、確率論的にはありえぬことではないが、それにしても、だ。
(まさか、)
 誰かが仕組んだ?
(では誰が?)
 エネミー達の仕業? いや、そんな気配見当たらなかった。奴の性格的に、“正義の味方”を邪英化させるなども考えにくい。
(どうやって――)
 聖は邪英化していない。彼と彼らの違いは……?

「は、」
 片膝を突いた姿勢から立ち上がりつつ、エネミーは肩を揺らして笑った。
「……ッ……!」
 聖も肩で息をしつつ、敵へ斧を構えている。
「死んじゃいましたね、パライソ。ああ、呆気ない。でも、ありゃ敵いませんね」
「テメェもおんなじ所に送ってやるよ……!」
「ああ、そう殺気立たないで。リュカさん達に陸さん達、いずれも優れたエージェントです。邪英化して、いなくなってしまうのは実に惜しい」
 言いつつ、敵はピョンと飛び下がった。
「逃がすか――」
 咄嗟に聖は追い縋ろうとするが。
「待った。疲弊した皆様が、荒れ狂う邪英二人から人々を護れると?」
「ッ!」
「聖さん、貴方が必要なんです。リンクバーストしても邪に堕ちなかった、貴方の圧倒的な力が。貴方なら彼らを止められる、皆を救える」
 聖は歯列を剥いた。震えるほど斧を握り込んだ。
『……ヒジリー』
「う、うぅうううううう……!!」
『行こう』
「ッ――くそ、くそッ、クソッ!!!」
 聖にだって分かっていた。仲間を見捨てて敵を殺すか、敵を見逃して仲間を救うか、どちらを選ぶべきなのかを。
 踵を返した少年に、敵は敬意の拍手を送った。シャングリラが歪な翼を顕現する。
「さあ、レッツ世界平和!」



●悪夢続行
『疲れた』
 電車の屋根の上に座り込んだバルタサールに、ライヴス内で紫苑がボヤいた。男は返事をするのも億劫だった。
 ホームでは、共鳴を解いた征四郎がうずくまって泣いている。
 その目の前で倒れているのはリュカと陸だ。生きてはいる。五体も満足だ。……二人の邪英化は一時的なもので、あれからほどなくして二人の邪英化は解けたのだ。
 エージェントの尽力によって、あるいは邪英となっても心のカケラが残っていたか、二人が市民を殺めることはなかった。最悪にまみれた最中、奇跡のような状況だ。
 だとしても。邪英化した二人を足止めせねばならなかったとはいえ、ほんのわずかな時間だったとはいえ、仲間に刃を向けねばならなかったことは、心が軋むような出来事である。
「……」
 拓海は仰向けの状態で、霞む視界で空を見ていた。
(生きてる……)
 実感はあるが、現実感がない。痛みを堪えて顔を横向け、仲間を探した。……死人はいない。聖も、疲労困憊とライヴス枯渇と満身創痍の果てに倒れているが、生きていた。

 ――被害は少ない、とは決して言えない、だがパライソを討ち倒せたのは快挙だ。
 二人が完全な邪英化にまで至らなかったのは奇跡だろう。もし、完全なる邪英化をしていれば――新たな被害が起きていたやもしれぬ。死人が出てもおかしくはなかった。エージェントであれ、市民であれ。

 ……遠く聞こえるサイレンを聴きながら、木枯丸は刀の手入れをしていた。
 医療とか、事後処理とか、ここからはもうエージェントの管轄外だ。任務は終わった。作戦は成功した、という形で。
 確かに任務の管轄外――であるが、刀護はじっとしてはいられなかった。共鳴を解き、肩を貸し、あるいは背負い、辰美と共に一般人の搬送手伝いをしていた。

 さて、フェニックスブレイズであるが。
 そのまま持ち帰ろうとしていた者がいたが、「まだ商品化していないものなので」「RGWの一件がありましたから、技術のセキュリティを強化しているのです、ご了承ください」とアルター社の者に回収されてしまった。廃棄したものについても、おそらく彼らが回収してしまったことだろう。
「緊急時に不慣れなAGWを扱う自信がありませんので」――と、そもそも支給を断った構築の魔女は、その様子を遠巻きに眺めていた。
 ――今回のフェニックスブレイズを用いたエージェントから、ほんのわずかであるがライヴスの不調を感じたと報告されたのは後ほどのことである。

「奴の狙い、何だったんだろうな」
 病院にて。意識を取り戻した陸に、アイが呟く。
「愚神を殺させたいのなら、もっと上手いやり方があるはず……もっとも、『自分自身を殺させたい』のなら、話は別だが」
「そんな自殺行為、何のメリットが……」
「……生贄、とか? ……いや、何となくそう思っただけだが。十三の愚神を生贄に捧げ、強大な何かを降臨させる……みたいなさ」
「愚神、狂信者説?」
「そんなところだ」
 確証はないが、と付け加え。それから、「お大事に」とアイは締め括った。


 今回の件については、H.O.P.E.には非がないこととヘイシズが声明発表。憎むべきはH.O.P.E.ではなく悪性愚神、そしてヴィランだ。かくしてエージェント達が非難されることはなく、むしろ称賛が待っていた。
 だが一同は覚えている。救いを求めながら目の前で死んでいった者の眼差しを。洗い流されたホームの上が、どれほどの血で染まったのかを。一時的とはいえ仲間同士で刃を向け合わなければならなかったことの苦痛を。

 さあ、邪悪は誰だ。



『了』

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結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
  • 無名の脚本家
    九重 陸aa0422

重体一覧

  • 【晶砕樹】・
    雁屋 和aa0035
  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で・
    木霊・C・リュカaa0068
  • Run&斬・
    東海林聖aa0203
  • 無名の脚本家・
    九重 陸aa0422
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ・
    荒木 拓海aa1049

参加者

  • 【晶砕樹】
    雁屋 和aa0035
    人間|21才|女性|攻撃
  • お天道様が見守って
    ヴァン=デラーaa0035hero001
    英雄|47才|男性|ドレ
  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 断罪者
    凛道aa0068hero002
    英雄|23才|男性|カオ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 無名の脚本家
    九重 陸aa0422
    機械|15才|男性|回避
  • 叛旗の先駆
    (HN)井合 アイaa0422hero002
    英雄|27才|男性|ブレ
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • その背に【暁】を刻みて
    東江 刀護aa3503
    機械|29才|男性|攻撃
  • 優しい剣士
    双樹 辰美aa3503hero001
    英雄|17才|女性|ブレ
  • Trifolium
    バルタサール・デル・レイaa4199
    人間|48才|男性|攻撃
  • Aster
    紫苑aa4199hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • 闇を暴く
    畳 木枯丸aa5545
    獣人|6才|男性|攻撃
  • 狐の騙りを見届けて
    菜葱aa5545hero001
    英雄|13才|女性|カオ
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