本部

【神月】連動シナリオ

【神月】逃亡者の決意

落花生

形態
イベント
難易度
普通
オプション
  • duplication
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
22人 / 1~25人
英雄
21人 / 0~25人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2016/06/25 14:41

掲示板

オープニング


 このシナリオはグランドシナリオです。
 他のシナリオと重複してご参加頂けますが、グランドシナリオ同士の重複参加はご遠慮ください。


●遺跡の罠
 遺跡のなかは、乾いていた。
 人が住む地域から遠く離れた遺跡では、携帯の電波が届かない。あらゆる通信機器が、この場所ではダメになった。地元の人間がいうに、ここでは昔からあらゆる電子機器がおかしくなってしまうらしい。不吉な場所、と地元では噂される場所であった。
「これは、確かにシーカの文字です……」
 遺跡を撫でながら、エステルは呟く。
 砂漠で発見された遺跡のなかに、どんな言語でもない文字が発見された。その文字がエステルが持つ『書』に書かれたものと似通った文字であったために、解読役としてエステルが呼び出されたのであった。祭壇のある遺跡の壁に書かれた文字を、エステルは慎重に読み解いていく。
「解読には少し時間がかかりますので」
 HOPEに遺跡で発見された文字の解読を頼まれたとき、エステルは引き受けるかどうかを迷った。危険があるとは事前に説明は受けてし、断っても良いとも言われていた。それでもエステルは、行くと言った。HOPEに世話になっている身の上であるし、今まで守られてばかりだった。少しでも、役に立ちたい。
 エステルの周囲には、彼女の護衛役のリンカーたちもいた。それも彼女の背中を押した、要素の一つであった。
「エステル、共鳴するぞ」
 エステルの言葉を、アルメイヤは遮る。
 エステルが顔をあげたとき、HOPEのリンカーたちの全員が緊張していた。アルメイヤも緊張している。
「くっ……」
 アルメイヤが何故か、眉をひそめた。
 エステルは、はっとする。
「もしかして、ここでは共鳴できないのですか?」
 それは、この場にある祭壇のせいなのか。
 それとも、別の要因があるのか。
「エステルは下がっていろ……私が引き寄せる」
「アルメイヤ……」
 エステルは咄嗟に彼女の書に書かれていた文字の事を伝えたが、アルメイヤの後を追うことは出来なかった。

●エステルの決意
 遺跡には、文字のほかに不可解なものがもう一つあった。金属製の天秤である。金色に鈍く輝くそれは、重りもないのに片方にギシギシとかしいでいた。それは遺跡のいたるところにあり、エステルたちはそれを飾りであると決めつけていた。だが、改めて見てみるとそれらは左に右にと傾いで飾りとは思えぬ動きを見せていた。エステルが解読した遺跡の文字のなかにも天秤の文字があったが、あれはコレの出現を知らせようとしていたようだ。
「トラップ?」
 なぜ、気づかなかったのだろうかとエステルは後悔する。
 これはこの遺跡に仕掛けられたオーパーツでありであり、土地に仕掛けられたトラップである。
 まだ、リンカーたちは共鳴できないことが天秤が原因であることに気がついていない。
 敵の大部分をアルメイヤたち引き受けたが、一名の愚神がエステルたちの元に残った。その愚神は、細い女の姿をしていた。褐色の肌に露出度が高い衣服。手に持った鞭が、ばしりと乾いた地面をたたく。
「きゃぁ!」
 エステルの足もとが、ぼこりと膨らんだ。出てきたのは、モグラのような従魔である。鋭い爪で引っ掛かれば人間の脆い皮膚など、ひとたまりもない。現にエステルは深い傷を負った。エステルは、その痛みにわずかにふるえる。今まで戦闘は恐ろしいと感じていたが、痛みを感じた事はなかった。
 アルメイヤに守られていたからだ。
 けれども、ここにはアルメイヤはいない。
 エステルの安全のために、敵を引き連れていってしまった。
 傷口を押さえながら、エステルは戦えない恐怖を知った。ここで従魔がエステルを嬲り殺そうとしても、エステルにはどうすることもできない。フランツの手下に屋敷で殺されそうになったときのように、とどめを刺されるのを待つしかない。
 エステルは、傷口を押さえる力を強める。
 今ここで、死ぬわけにはいかない。
 だって、アルメイヤはたぶん自分を待っている。
「皆さん! 英雄と共鳴ができないこの状況は、たぶん……天秤が原因です」
 エステルは、自分の持っていた王冠の短剣を振りあげた。
「それと、この短剣を祭壇に! 私が敵を引きつけます……。長くは持ちませんが」
 エステルは、祭壇の壁に書かれていた文字の内容をリンカーたちに告げる。
「ああ、あなたが持っていたのね。子供にこんなものを持たせるなんて、リンカーも落ちたものね」
 愚神の鞭が、ぱちんと地面を叩いた。
 エステルは傷を押さえる手を離して、逃げだした。

解説

・エステルを守りつつ、従魔および愚神を討伐してください。
このシナリオでは、条件を満たさない限り英雄と共鳴できません。

・愚神……ケントゥリオ級愚神。鞭の音で、モグラを操る。エステルの持つ『王冠の短剣』を狙っており、リプレイの最初ではまずモグラにエステルを狙わせる。祭壇に突き刺さるまでは『王冠の短剣』を持っている人物を中心に狙う。なお、自信が戦うときは銃を使用するが、自分たちが不利になるまでは動くことはない。リンカーが共鳴できない事を知っており、慢心している。リンカー側に共鳴する人間が現れない限りはその場から動くことはない。

・モグラ型従魔……複数出現。愚神の鞭の音で操られ、土のなかから素早く出現し、土のなかに隠れるを繰り返す。愚神側の指示がない場合は、足音などの音で敵を見分けて襲ってくる。祭壇に行こうとする人間に集中して攻撃をしてくる。武器は鋭い爪であり、毒性などはないが動きが素早くとらえることが困難。

天秤型のオーパーツ……複数配置されている。その天秤をリンカーと英雄で同時に攻撃すると徐々にではあるが、共鳴することができる。二回程度の共鳴で、完全に共鳴でき、共鳴後は天秤は壊れる。

・祭壇……遺跡の一番奥にある。愚神や従魔に短剣がわたると、短剣を突きたてようとする。

・遺跡……砂漠のなかにある巨大な遺跡。丈夫であるが、夜間であるために寒さが厳しい。なお、調査目的のために持ちこまれた光源は十分にある。

・エステル……足を怪我をしており、満足に動くことはできない。『王冠の短剣』を所持しており、剣を所持しているかぎりは愚神に優先的に狙われてしまう。短剣を手放しても、アルメイヤを探そうと移動しようとするため従魔に狙われてしまう。

・AGWの使用について……非共鳴中はAGWは十分な攻撃力を発揮しません。そのため、非共鳴状態でダメージを与えることはできません。

リプレイ

 冷たい空気につつまれた、神殿。
 その上に浮かび上がる冷たい輝きの月が――徐々にその形を失って行く。
 皆既月食が、始まろうとしていた。
 だが、神殿のなかにいるリンカーたちは誰もがそれに気がつく事もなく、王冠の短剣をめぐる闘争は始まろうとしていた。王冠の短剣が、ひそやかにライヴスを高めていくことも知らないで。

●王冠の短剣を守るものたち
「それと、この短剣を祭壇に! 私が敵を引きつけます……。長くは持ちませんが」
 エステルは短剣を掲げ、怪我をした足を引きずりながらも走り出そうとした。その捨て身の行動にChris McLain(aa3881)とシャロ(aa3881hero001)は叫び声をあげる。
「自分の命を大事にしろ、エステル!」
「怪我してるですぅ!!」
 今のエステルの行動は勇気ではなく、愚かさであった。子供が一人で愚神の注意を何秒も引き寄せられるはずもない。だが、それでもエステルは自分を守るアルメイヤやHOPEのリンカーたちを助けるために行動した。
 Arcard Flawless(aa1024)は、そんなエステルの側へと走った。そして、誰よりも早くエステルに駆け寄ったArcard は、エステルに自分の足を引っ掛けた。
「えっ……」
 エステルは茫然としたまま転んで、Arcard は素早く彼女を拾い上げて逃げだした。それを見ていた愚神は、鞭で地面をぱしりと叩く。モグラの形をした従魔たちは、Arcardの兄元に現れようとしていた。エステルを抱きかかえたままでは、Arcardはこれ以上は早く動くことができない。だが、彼女達を庇った仲間がいた。
 朱殷(aa3877hero001)と椋実(aa3877)であった。
 巨体をずっしりとかまえた朱殷は、敵の前に立ちふさがりArcardたちを逃がすことに成功する。そんな彼の足もとにひょっこりと顔を出したのは椋実であった。彼女は武器をかまえて攻撃してみるものの、敵がダメージを負った形跡はまったくない。
「共鳴できないとか……めんどいねー」
【まったくダメージ通った感じしねーな!!】
 ちらりと、椋実はエステルの持った短剣を見た。『王冠の短剣』と仰々しい名前で呼ばれるそれをどうやら愚神は狙っているらしい。
「その短剣狙っているのねー」
【はっ! ワリーがいかせねえよ!!】
 ここは死守する。
 共鳴できない二人は、それぞれ武器を改めてかまえた。
 その光景を見て、決意を固めた者がいた。早瀬 鈴音(aa0885)である。敵がいるが共鳴できないという状況に彼女はわずかに混乱した。何をするべきかわからなくなってしまっていた鈴音だったが、エステルを守ろうとする仲間たちを見てようやく自分の得意なことを思い出したのだ。そして、彼女の視界の端には天秤を自らの英雄と攻撃する仲間の姿が見えた。自分たちもあのように行動すれば共鳴することができる――と手本を見つけた鈴音は急いだ。
『急いで! 鈴音』
 N・K(aa0885hero001)に剣を片方投げ渡し、自分も剣を握る。天秤の形をした置物なんかに恨みはないが、この場はなんとしても切りぬけなければならない。
『壊せば良いの、鈴音?』
「解んないけど、他に何かある!?」
 ほとんど叩きつけたと変わらない、乱暴な攻撃。あまりに乱暴で単純な攻撃をもう一度天秤に叩きつけると、頑丈そうであった天秤に罅がはいって粉々に砕けた。次の瞬間に、鈴音が慣れた感覚に包まれる。
 彼女は、共鳴できていた。
 鈴音は急いで、ライヴィスフィールドを展開させる。これで、生身で敵に立ち向かっていた椋実たちも少しは楽になるはずだ。
「やべぇ、非共鳴とか超きついわ」
『でも、意地があるんでしょ?』
「おう、男の子だかんな!」
 鹿島 和馬(aa3414)はArcardから譲り受けたエステルを抱えながら、走っていた。従魔の攻撃を避けるために俺氏(aa3414hero001)に周囲を警戒してもらい、Arcardが手早くエステルの応急処置をほどこしていく。すでに鈴音がエステルの側に向かおうとはしていたが、出血だけは早く止めた方が良いとArcardは判断したのである。エステルの小さな体で、血を流し過ぎるのは危険だからだ。
「ボクのソレは、素人のよりかは幾分マシに働く。アイリ! 応急治療だ、急げ!」
『にゃー!』
 Iria Hunter(aa1024hero001)に助手を頼みながら、Arcardは手早くエステルの手当てを終わらせる。それを横目で見ていた和真は「走りながらなのに、すげぇ」と内心舌を巻いていた。共鳴できない自分にできることを考えた和真は、エステルを抱いて逃げ続けることを決断した。幼いエステルでも羽のように軽いわけではない。骨と血が通った人間の重さがあり、共鳴していない今は特にそれをずしりと感じる。それでも、譲れない。
「……男にゃあ、守らねぇといけねぇもんが二つあるよな」
『和馬氏?』
 自棄になったのか、と俺氏は和真の顔を見る。だが、心配は杞憂であった。和真の顔は、今までにないほどに真剣なものである。
「惚れた女と――ガキの笑顔だっ!」
 エステルを抱え直し、再び和真は走り出す。
「ちょっと。しゅあん、盾ー 」
【ちょ!? あぶねーよ!! ひでーな!?】
 和真達を逃がす為に戦っていた椋実が、さっと朱殷の後ろに隠れた。敵の攻撃を間一髪のところで避けた朱殷であったが、ふとそこで仲間のほとんどが共鳴を終わらせていたことに気がつく。エステルの側にもすでに共鳴した鈴音がおり、これ以上自分たちが危険な橋を渡る必要はなさそうだ。
「エステル……短剣をこっちに」
 いつのまにかエステルの側に近づいていた人影が居た。彼女と同じ名前を持つ、エステル バルヴィノヴァ(aa1165)であった。彼女はエステルから短剣を秘密裏に受け取ると、離れた場所にいるギシャ(aa3141)に目配せした。ギシャは、全力で共鳴するために戦っている。エステルも戦わなければならない。なによりこれは、自分と同じ名前をもった幼子が作ってくれたチャンスであるのだから。
「泥眼!」
 エステルは自分の英雄の名前を呼び、幼いエステルから受け取った短剣を彼女に渡したかのように見せかけた。実際のところ泥眼(aa1165hero001)の持っているのは扇であるが、服で隠れているために愚神には分かるまい。二人はバラバラに逃げながら、HOPEまんを齧って従魔たちの攻撃を耐え忍ぶ。ギシャとどらごん(aa3141hero001)はすでに天秤の一つに狙いをつけ『傾いているから、水平になるようにすればいいのではないか?』 「面倒だから壊そっかー」と言っている。自分たちの様子を、エステルに伝えてきてくれている。もう少しだ。もう少しで、愚神や従魔の攻撃から逃げ切れる。
 そう、もう少し。
 短剣を握るエステルは、わずかに顔をしかめた。握った短剣に違和感を感じたような気がしたのである。見た目より重いとか軽いとか、そういう短絡的な違和感ではない。これは――短剣のライヴスが高まっている?
 そう確信したときエステルとギシャの視線が噛みあい、ギシャが頷く。
「王冠を抱くエステルが、覚悟を見せたんだ。友としてかっこいいところ見せるよ」
 ギシャの声が、エステルにわずかに聞こえた。
 ギシャはエステルから短剣を受け取り、素早く行動を開始した。それを見とどけたエステルはHOPEまんの最後の一口を頬ばって、泥眼と天秤を壊しにいく。まずは自分たちのダメージの回復、そして仲間たちの回復も考えなければならなかった。
『俺が護ってやるから、お前は敵の動きに集中しろ』
マルコ・マカーリオ(aa0121hero001)は斧をかまえながら、小さなアンジェリカ・カノーヴァ(aa0121)の前に立つ。アンジェリカはいつものように自信を失うことなく「頼りにしてるからね」とマルコに返した。だが、その胸にはわずかだが不安が残る。マルコも自分も、まだ共鳴できていない。共鳴できなければ、従魔にも愚神にもダメージは与えることはできない。同じような不安に駆られていた者がもう一人いた。
「……共鳴できないと、ボク、ただの役立たずではないか」
 天狼(aa3499hero001)である。
 土御門 晴明(aa3499)は、そんな天狼を背中にくっつけつつも
「お前はしっかり俺に捕まっとけよ」
 と言う。
「うん」
「そんで、敵を見ろ。それを俺に教えろ」
「任せて!」
 だが、いくら晴明が普段から体を鍛えているとしても、従魔や愚神の一撃を防ぎきるのは難しいであろう。
「輝夜……」
 御門 鈴音(aa0175)も怯えたような視線で、輝夜(aa0175hero001)を見る。
「案ずるな。共鳴さえすえば、わらわ達の敵ではない」
「愚神の方は、短剣最優先みたいだね 」
 落ちつく為に、皆月 若葉(aa0778)は深呼吸を一つする。彼はすでにラドシアス(aa0778hero001)と天秤を破壊し、共鳴をすませていた。それでも緊張が拭えないのは、仲間たちのなかにまだ共鳴できていないものがいたからだ。自分たちは不利な状況下にいるということが、若葉にわずかに失敗の記憶を呼び起させる。
『さっさと共鳴して援護に当たるのが良さそうか』
「だね、こんな時こそ冷静に……今、俺にできる最善を! マルコさんと晴明さんは、俺たちが時間を稼ぐので今のうちに共鳴をしてください!!」
 過去の記憶に引きずられてなどいられない。
 今ここにいる仲間のために、自分ができることを探す。
「エステルの話じゃ、天秤が原因らしいけど……本当だな。天秤を壊した奴から、共鳴していってる」
 すでに語り屋(aa4173hero001)と共鳴していた佐藤 鷹輔(aa4173)は、その感覚を確かめる。特に不具合は感じず、いつも通りの共鳴であった。
「ひとまずは、まだ戦場になっていない祭壇の方に向かうか。ギシャが短剣を持って走り出したな」
『ギシャ殿の援護をしながら進むか?』
 語り部の言葉に、鷹輔は首を振る。
「いや、それよりは全力で祭壇に走って、敵の標的を分散させる。回避と移動に専念して、祭壇周りの敵を叩く」
「それで、祭壇の確保が出来たら……運搬と突き立ての奴らを援護だな」
 腕が鳴るぜ、と晴明はにやりと笑った。
『ハルちゃん、かっこいいぞ』
「はいはい、そーかよ」
 まだ始まってもいないのにはしゃぐ天狼をなだめつつ、晴明は若葉の言葉を聞いた。
「目標を分散させるなら、俺に策がある」
 若葉は、フェイクシーカを取りだした。生命の樹の短剣を模して作られた短剣は、遠目から見ればエステルの王冠の短剣の見分けがつかないはずである。
「おとりになるんだな?」
 マルコが確認すると、若葉は頷く。
 若葉は、すでに武器を盾に持ちかえていた。
 こちらが本物であるとアピールすれば、きっと愚神の注意は若葉に向く。そうしれば本物の短剣を持つギシャは随分とやりやすくなるはずだ。
「やっべえ共鳴できなきゃ、俺らクソザコナメクジやん」
 ヴィヴィアン=R=ブラックモア(aa3936)は愚神の攻撃を避けながらも、ハルディン(aa3936hero001)と共に天秤の元へと急ぐ。彼らの狙いも神殿であったが故に、早く共鳴して晴明たちと合流したいところであった。
『ま、ちゃっちゃと天秤に向かうンゴ』 
「わかってるで!」
 だが、一撃でも食らえば大怪我は免れない。
 急いでも慎重に行きたいところである。
「おっほwww。怖いンゴwww。面白いアトラクションの感じあるンゴwww」
 千葉とか大阪のテーマパークにありそう、とハルディンは言うが、こんな安全対策のないアトラクションなどあってたまるかとヴィヴィアンは吐き捨てる。お子様どころか大人も泣いてしまうだろう。
「そんな感じはねえよ、クソミイラ!」
 二人で同時に天秤に攻撃を叩きつけ、ハルディンはようやく共鳴をなす。今まで逃げるだけだった従魔に攻撃を食らわせながら、おとり作戦と祭壇を守りの策戦を実行し始めた仲間のもとに走った。
「モグラ叩きは、まどろっこしいから好かんのだ」
 神斬でヴィヴィアンは、地面をえぐった。
 砂礫と共に地上に救いあげられたモグラに、流れるような動作で一撃を加える。
「あまり動かず素直に死ぬが良い、そのほうが楽なのだ、私にとって」

●愚神に挑むものたち
 灰川 斗輝(aa0016)は、ひそかに携帯に触れていた。
 英雄と共鳴できない事はすでに、仲間たちの様子をみて分かっている。この場にあるオーパーツが原因とのことだが、それを壊すにもモグラの従魔が邪魔であった。攻撃力はあまりないようであるが、鋭い爪でやられれば間違いなく怪我をする。共鳴していない事も考えるとそれが致命傷にいたる可能性も十分にあった。だからこそ、斗輝は慎重に行動をする必要があると考えた。
 電話が通じないことは分かりきっていたが、彼にはもう一つ携帯で試してみたいことがあった。それは目覚ましの機能である。携帯から音がでると確認した斗輝は、それを地面に放り投げる。
 モグラの従魔は、どうやら音に反応しているらしい。携帯のアラーム音におびき寄せられるように、近くに集まってきている。流石に全部を引き寄せることはできなかったが、これで随分と仲間は共鳴しやすくなったはずだ。
「私も共鳴をしないと攻撃できないか……」
 体力を温存しながらも斗輝は、愚神達の攻撃を観察する。いざというときの切り札にするために。だが、彼のように音を使った作戦をたてた者達がいた。
『共鳴できないって、やばくない!?』
 白瑛(aa3754)とで倭奏(aa3754hero001)ある。倭奏は共鳴しようとするが、いつもと勝手が違って白瑛と一つになることができない。何度も試すも、状況は好転などしなかった。焦る倭奏であるが、その地なりで白瑛は涼しい顔をしている。
「お前と共鳴せずにいられるなら、僕はかえってうれしい」
『そんなさみしいこと言わないで!』
 冗談なのか本気なのかわからない白瑛の言葉を律儀に返しながらも、倭奏は従魔のことを見ていた。モグラというのは目が見えない、とどこかで聞いたことがあった。従魔にもその特性が引き継がれているかは知らないが、少なくとも愚神の鞭の音や自分たちの足音に反応している節があった。今は白瑛たちは派手に動いていないから、従魔たちもこちらは襲ってこない。
『あの鞭。やっかいだな』
「武器って訳じゃなさそうだな。あいつ余裕ぶっててむかつく」
 そうじゃない、と白瑛の言葉に倭奏は首を振る。言葉もなく、従魔に指令をだす道具として鞭がやっかいなのである。
 だが、音で従魔を使役していると言うのならば撃つ手がないわけでもない。こちらが、より大きな音を出せば相手を惑わすことができるはずだ。そうすれで、やっかいな従魔に対する時間稼ぎも可能であろう。
『親父がこの場にいたら、ぶっ飛ばされてるな』
 二胡弓刀残月を楽器としてかまえた倭奏は、それを乱暴にならす。二胡の音が神殿内にこだまするが、それは音楽を奏でるための音ではない。従魔を混乱させるためだけの音は、引き手も聞き手も満足させてはくれない。それでもこの無茶苦茶な音は、モグラたちの動きを少しは妨害するはずである。
「従魔が混乱している? ……どうしたのですか老師。今のうちに共鳴しなければ」
 倭奏の音で混乱している従魔をみた新座 ミサト(aa3710)は、嵐山(aa3710hero001)の方を見た。だが、老人は髭を撫でて周囲を観察するばかりである。
『ふむ。どうやらココでは共鳴はできないようじゃの』
「え!?それではどうやって従魔に対抗したら……」
『まぁ落ち着くのじゃ、ミサトちゃん。周囲のエージェントをみてみい。なにやら気が付いた者もいるようじゃぞ?』
 すでに共鳴した者は、みな天秤を壊している。間違いなくアレが、共鳴を妨害しているものであるのだろう。
『このモグラは、音で敵の居場所を捕らえているようじゃな』
「それでは、走り回るのはかえってまずいのでは?」
『だが、今なら……』
 今ならば、足音は倭奏の楽器の音で消える。
 それを理解したミサトは急いで、天秤を壊しに行く。
「ふふふ。共鳴してしまえばこちらのものよ。従魔共、覚悟なさい!」
 共鳴さえしてしまえば、こんな従魔は敵ではないのだ。
 ミサトたちが戦う中で、姚 哭凰(aa3136)は十七夜(aa3136hero001)と共に天秤を集めていた。愚神の死角になる場所を捜し出し、少しでも仲間たちが共鳴しやすくするようにしたかったのだ。愚神にはまだ動きがなく、その様子から哭凰を見下している様子がわかった。見下されていることは悔しいが、それさえも自分たちの利点に変えなければ勝利など掴む取ることができない。
「今のわたしにできることをやらなきゃ」
 共鳴できない状態では哭凰は、圧倒的に不利だ。小さな掌では守れないものたちは、きっと次々とこぼれ落ちてゆくことであろう。哭凰は、そのこぼれ落ちていくものをなにもしないままに見ていることなどできない。
 哭凰の小さな手は、成長することがなかった。だが、今の哭凰には十七夜もいる。彼女の力を借りることさえできれば、哭凰の手は今よりもずっと大きくなって仲間の窮地さえも救えるはずだ。
『愚神も、こちらには気がついていないようですね』
 十七夜の声に、哭凰は頷く。
「うん。天秤を早くあつめなきゃだよね」
 十七夜は警戒して愚神の方を見てみるも、従魔を操るばかりで愚神は動く気配がなかった。ぱしん、と鞭の音がするたびに従魔がどこへいったのかと不安にはなるが哭凰たちの側に従魔の影はなかった。。
 やはり、自分たちの行動は気づかれてはいない。愚神はどうやら、自分たちリンカーのことを侮っているようであった。思うように共鳴できない自分たちに本気を出す必要はない、と思われているのかもしれない。
 これは、好機だ。
 愚神が哭凰を侮り、見落としているのならば今のうちに仲間のために天秤を集めることができる。それでも、すばやくやらなければ何時気づかれてもおかしくはなかった。やがて、哭凰の行動に気がついた仲間たちが彼女の元に集まろうとする。それは哭凰にとっては、行幸であった。「はやく、はやく」とはやる気持ちを抑えて、彼女は仲間たちを待った。愚神に気づかれぬようにとも、祈りながら。
『サクラコ……』
「信じろ。お前のリンカーだぞ」
 不安げなメテオバイザー(aa4046hero001)に、桜小路 國光(aa4046)は頷いて見せた。とはいえ、慎重に行動はしなければならない。
「……無茶は、しないように」
 従魔の攻撃を避ける稍乃 チカ(aa0046hero001)に、邦衛 八宏(aa0046)は声をかける。ほとんど八宏の表情は変わってはいなかったが、チカはそこに苛立ちを見つけた。
『こっちのセリフだ、死にたがり。さっさとウォーミングアップも済ませちまおうぜ、スマホつながんねーからってイライラしてんだろ、本当は?』
 苛々しているのは、チカも同じである。
 全く反撃ができない、というのはどうにも性に合わない。
『共鳴しないと何も出来ないんだから、さっさと共鳴するよ』
 物陰に隠れながら移動する桜乃まりあ(aa1667)に、月城 万里(aa1667hero001)は声をかける。運動神経が鈍いまりあが無事に哭凰の元までたどり着けるかは不安が残るが……たどり着けなければ戦うことも逃げる事もままならない状況であった。
「そ……そんな事ないよ。ちゃんと動けるってば……」
 強がるまりあに、万里はため息を漏らす。すでに素早く行動できる者たちは、哭凰のもとにたどり着いていた。
『あっそ。せいぜい共鳴するまで、こけないように頑張って』
 それでも、万里はまりあのために敵への警戒を続ける。
 まりあは、それに気づかぬ振りをして先へと慎重に進んだ。
「早くなんとかしないと……このままじゃ戦うこともできない」
 哭凰のもとまでたどり着いた稲田藍(aa3140)は焦っていた。戦おうにもその準備もできない状況が、酷くもどかく感じられたからである。だが、反対に天狼心羽紗音流(aa3140hero001)は落ちついていた。ずっしりと構え、彼はこの戦いが始まる前に少女が叫んだことを思い出していた。
「わかってんなら、まあ落ち着けよ。エステルちゃんは、天秤が原因だって言ったぜ」
「……善悪を量る天秤……傾いていればそれは罪で穢れている、だっけ?」
 哭凰の元までたどり着いたアリス(aa1651)は、天秤を目の前にして思わずそんなことを思い出した。天秤のオーパーツは不気味に、片方にかしいでいた。あそこに自分たちの罪が乗っていると思われるは、なんとも嫌な気分になる。
『……ふん……勝手に善悪の判断をされてもね……』
 Alice(aa1651hero001)の言葉に頷きつつも、アリスは英雄と共に天秤を破壊する。無事に共鳴を果たしたアリスは、仲間から離れて愚神への攻撃へと移った。その間に、ウィザードセンスを発動させ自らの身体能力をあげておく。そして、愚神の視界に入った瞬間に銀の魔弾を撃ち放った。
「なあエロいネーチャン、遊んでくれよ! モグラ叩きはもうたくさんだ」
 共鳴を果たした紗音流も、アリスに続く。
『サネルさん、変なこと言うのやめてよ!』
 愚神相手ではあるが、姿かたちは女性である。
 恥ずかしい、と藍は叫ぶ。
「ワシが出てるときは黙ってろ、気が散る!」
 藍の善良な市民らしい言葉に、紗音流は怒鳴った。
 今まで従魔を操っていただけの愚神が、銃を持った。
 今の今までリンカー側を見くびり、慢心していた愚神はようやく本気になったのであった。
『じゃあ。どんどん行くから、楽しく踊ってよ?』
 まりあと共鳴した万里は、愚神の手を必要に狙う。未だに愚神の手には鞭があり、それでモグラを操っていたことはわかりきっていたからである。その手から鞭が離れれば、従魔の攻撃は正確さを欠くはずだ。
『待たせたな!  高みの見物は終わりだぜ!!』
 八宏は武器を持ちかえて、愚神に近づく。
 ――このまま毒刃撃ちこむ。
 だが、その前にモグラが八宏の前に現れようとしていた。
 混戦となりつつある戦場に、体力を温存していた斗輝が殴り込みをかける。斗輝が八宏の足元のモグラを始末し、八宏は改めて愚神に狙いを定めた。輝夜と共鳴した御門も、そのサポートに続く。
「……今、この場で……貴方を弔う……その意思に、代わりはありません」
 八宏は、引き金を引いた。
『「用が済んだらぶっ殺すぞババア」だってよ、っつーわけで、逃げようなんて考えてくれんなよ?』
 チカも、にやりと笑っていた。
 八宏の攻撃が外れるわけがない、そんなことを言いたげな笑顔であった。
「愚神の手を! あの鞭で従魔を操ってることは間違いなさそうです」
 國光も叫びながらも、愚神の鞭を狙った。
 アレさえ落とせれば、短剣やエステルを守っている仲間たちへの従魔の攻撃は格段に減るはずなのだ。
「よしっ」
 攻撃が命中したことにより、愚神の手からぽろりと鞭が落ちた。それを國光は見逃さなかった。ひやひやしながら敵の懐に入り、雷切で鞭を遠くへと撥ね飛ばす。
 すぐさま後方に下がった國光は、従魔の周りに仲間が十分に集まったことを再確認した。この場は自分がいなくても、収まりがつく。そう判断した彼は雷切を地面へと向けて、金属と土が擦れる音をさせながら従魔を引き寄せる囮となる決意をした。
「オレと鬼ごっこしたい奴は、ここまでおいで!」

●信じる者たち
 神殿の上の月は、その優しい輪郭をほとんど失っていた。
 その明るさが完全に消え去るまで――あといくらかも残されていないだろう。
 それでも細くなった月は、不気味なほどの静けさで空に浮かんでいたのであった。
 影に入った部分を、深紅に染め上げながら。

 ほとんど全員が共鳴を果たし、場が混乱を極めていくなかでエステルは立ち上ろうとしていた。その眼差しは、戦場には向いていなかった。神殿の外――アルメイヤが消えていった方向へと向いている。幼いエステルはアルメイヤがいなければ、戦えない。そして、それ以前にエステルはアルメイヤの安否が気になった。
 ――自分たちの戦場は、混乱を極めている。
 ――アルメイヤは、無事なのか。
 そんな思いに、エステルは潰されそうになっていた。
「じゃまだからうごくな」
 そんなエステルの行動に、思わず椋実の唇が開いてしまう。
【いや、お前言い方……】
 朱殷はオブラートに包めと椋実にアドバイスをするが「めんどくさいので動かないでください」と言い直した椋実にはあまり伝わっていなかった。
「エステル、君が手に取れるのは"剣"だけじゃないはずだ」
 Arcardは銃弾が飛び交う中で歩きだそうとする、無謀な少女を止める。
「見知らぬ凶器であれ、誰かの生命であれ意思であれ……君は手に取れる。でしょ?」
 助けを求めてもいいのだ。
 英雄以外の大人に「助けて!」と叫んでいいのだ、とArcardは言う。
「短剣とか祭壇とか、皆に任せちまうけど……エステルを守れたんなら俺は満足だったぜ」
 息が切れて死にそうだけど、と言って和真は大の字になって倒れる。共鳴をしない状態でエステルを抱えて動きまわった和真の疲労は当然のものであった。
「落ち着いて、アルメイヤさんにも皆がついてる! アルメイヤさんが戻った時、倒れてたらそれこそ共鳴できないし。悲しませるじゃん?」
 鈴音の言葉に、エステルは少しばかりほっとした。そうであった、自分もアルメイヤも一人ではないとようやく思い出したのです。
 戦う人々。
 そして、なにより自分を守ってくれた人々を見たエステルはつぐんでいた口をようやく開いた。
「……お願いです。アルメイヤが帰ってくるまで、私を助けてください」
 その言葉に、最初に「もちろん」と答えたのは、男の子の和真だった。

●祭壇を守るものたち
「溜まったストレス解消させてもらうからね!」
 共鳴をすますことに成功したアンジェリカとマルコは、祭壇を守っていた。仲間たちが運んでいる短剣を突き刺す為にも、祭壇の周りにいる従魔を屠るのが一番の近道であると考えた故であった。晴明たちも、マルコたちと同じく祭壇に近寄る従魔を叩く。
「やっぱり、共鳴できないのはストレスだよな」
 共鳴するまでに折ってしまったダメージを晴明はチョコレートを齧って回復させつつ、自分たちが守っている祭壇の様子をちらりと見た。確実に従魔は少なくなっている。他の仲間たちが、音によって従魔を引きよせてくれたり愚神の足止めをしてくれているのも大きい。
「さぁ、派手に暴れようか」
『狩りの時間であるな』
 ストレスを溜めていたのは自分たちもであると鷹輔は言いたげに、祭壇付近に集まっていた従魔に攻撃を加えていく。それに加勢したのは、ヴィヴィアンであった。
 ヴィヴィアンは、自分の足元に出てこようとしていた従魔を突き刺す。
「よりによって、足元に現れるか……」
 次から次に現れる従魔を順当に屠りながら、ヴィヴィアンは若葉のほうを見た。偽物の短剣を持った彼が、囮であることに愚神が気づいていない。若葉がさりげなく愚神にも見えるように、フェイクシーカを握り直す。ダメ押しで、晴明は若葉に声をかけた。
「若葉、短剣を落とすなよ!」
 その一言で、愚神は若葉が王冠の短剣を所持しているのであると勘違いした。
 その勘違いは、若葉の望ところである。
「くそ……バレたか!」
 愚神が、若葉に狙いをつける。
 若葉は、盾をかまえた。
「銃使うのか知らねぇが、こちとら7年前からずっと使ってるんだ、年季が違うんだよ!」
 シャロと共鳴をしたクリスは、若葉を狙い撃とうとした愚神を妨害する。その攻撃は、若葉が本物を持っている証明のようであった。
『ようやく、クリスさんのサポートができますぅ』
 直堰攻撃できないシャロは、共鳴できないあいだはきっと歯がゆい気持ちでいたはずである。それは思い通りに暴れまわれなかった、クリスも同じだ。その気持ちを燃料に変えて、二人は愚神へと妨害を続ける。
 エステルは、泥眼と共に戦況を見渡す。皆の息がだいぶ上がっていることに気がついた彼女は、ここでケアレインを使用する。ライヴスの恵みの雨が、仲間の体力を回復さえていく。
「まだ……ここで終わらせるわけにはいかないわ」
 まだ、短剣は祭壇には届いてはいない。
 ギシャは、潜伏を使用していた。
 何としても、自分が持つ短剣を祭壇に突き刺さなければならない。愚神は若葉が短剣を持っていると思い込み、他の仲間たちがその妨害をしてくれている。そして、従魔の数も減ってきている。なにより、祭壇の周りの敵が一気に少なくなっていた。
 チャンスだった。
「エステルががんばってるから、ギシャ負けずにがんばるよ!」
 ギシャは走った。
 その姿を仲間が見つけても、特別な視線は送らなかった。今の状態で愚神にギシャが短剣を持っていると勘付かれてはいけないし――なにより全員が彼女を信じていた。
「よっ!!」
 ギシャは祭壇に飛び乗り、自分の全体重をかけて短剣を突き刺した。
 
●愚神を狩るものたち
 神殿の外では月が、今にも消えりそうな細い光で煌めいていた。
 だが、もうそれは数分と持たないであろう。
 今ではもう影に入った赤い月のほうが、いつも顔をのぞかせる白い月よりも大きい。
 あと、数分もしないうちに赤い月が完全な形で空に君臨する。
 ――だが、今はまだ誰もそのことに気が付かない。

 虹蛇を片手に、ミサトは従魔に攻撃を加えていた。
「私の計算では、従魔の攻撃の前に地面が盛り上がるはず」
 それさえ見切れば、攻撃を加えることも避ける事もたやすいはずだ。ミサトは愚神と同じように地面を鞭でぱちんと叩いて、怒涛乱舞を使用する。彼女の周囲に集まっていた従魔が一瞬され、ミサトはグロスで光らせた唇で笑んだ。嗜虐を楽しむような笑みを浮かべながら、ミサトは愚神に向き合う。
「お前が親玉ね。殺す前に名前をきいておくわ」
 答えを聞いておくつもりなどはないが、とでもいうふうにミサトは愚神の懐に素早く入り込んだ。そして、疾風怒濤を叩きこんだ。バランスを崩した愚神は、それでも攻撃を止めない。ほとんど狙いをつけない銃弾はアリスの元まで飛んでいったが、彼女はそれを拒絶を風を使用して回避する。
「そんな攻撃が当たると思わないでよね」
 アリスは死者の書を使って、愚神への攻撃を休むことなく続けていた。この猛攻を継ぐけ手いる限りは、愚神の意識は自分たちにしか向かないはずだ。
 哭凰が、愚神に向かってフラッシュバンを放った。激しい光を放つ攻撃に、哭凰は目を細めながらも言葉を発する。
「私も、忘れないでほしいです」
「回復が必要? 仕方がないね、援護もするから』
 一時的に下がっていた万里が、疲れてきた國光に向かってケアレイを使用する。守るべき誓いを使用してまで、従魔を引き寄せる囮になって國光の体力が回復していく。
「すまない。ちょっと、無理……しすぎたかもな」
『サクラコ、無理は禁物ですよ!』
 心配するメテオバイザーにも、國光は「すまない」と返した。だが、自分が無理をしたことによって戦況は確実にプラスの方向に傾いている。
 八宏が、愚神の前にでる。彼は猫騙しを愚神に使用する。ひるんだ愚神に狙撃銃での殴打を食らわせ、八宏が作りだした隙に紗音流が毒刃を叩きこんだ。
「いまだ!」
 愚神と戦っていた者達が声をそろえた。
 それほどまでに、決定的な隙ができあがっていた。
 皆が作ったその隙に、白瑛はヘビィアタックを食らわせる。
「……よくも俺の娘を危険にさらしてくれたな」
 消えゆく愚神にマルコが、ぼそりと呟く。
 その呟きをおそらく聞いたであろう愚神は、ニタリと笑っていた。

●赤い月を見ない者達
 愚神も――従魔も――消え去った。
 さびしくなった神殿のなかで、エステルは無言で立ち上る。彼女の瞳は、祭壇に突き刺さった短剣を見つめていた。
 HOPEのリンカーたちは先ほどの健闘をたたえ合い、傷の手当てをしあっていた。やがて、誰かがエステルに続くように無言で立ち上る。それを見た者は、何故彼らが無言で祭壇を見つめているのかを理解した。
 ――祭壇につきたてられた短剣のライヴスが、異様なほどに高まっている。それは、明らかな異変であった。
「アルメイヤ……はやく来てください」
 小さく、エステルは自らの英雄を呼ぶ。

 外では、真っ赤な満月が完成しようとしていた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
  • 悠久を探究する会相談役
    エステル バルヴィノヴァaa1165
  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141

重体一覧

参加者

  • Loose cannon
    灰川 斗輝aa0016
    人間|23才|?|防御



  • 常夜より徒人を希う
    邦衛 八宏aa0046
    人間|28才|男性|命中
  • 不夜の旅路の同伴者
    稍乃 チカaa0046hero001
    英雄|17才|男性|シャド
  • 希望を胸に
    アンジェリカ・カノーヴァaa0121
    人間|11才|女性|命中
  • コンメディア・デラルテ
    マルコ・マカーリオaa0121hero001
    英雄|38才|男性|ドレ
  • 遊興の一時
    御門 鈴音aa0175
    人間|15才|女性|生命
  • 守護の決意
    輝夜aa0175hero001
    英雄|9才|女性|ドレ
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
    人間|20才|男性|命中
  • 温もりはそばに
    ラドシアス・ル・アヴィシニアaa0778hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • 高校生ヒロイン
    早瀬 鈴音aa0885
    人間|18才|女性|生命
  • ふわふわお姉さん
    N・Kaa0885hero001
    英雄|24才|女性|バト
  • 神鳥射落す《狂気》
    Arcard Flawlessaa1024
    機械|22才|女性|防御
  • 赤い瞳のハンター
    Iria Hunteraa1024hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 悠久を探究する会相談役
    エステル バルヴィノヴァaa1165
    機械|17才|女性|防御
  • 鉄壁のブロッカー
    泥眼aa1165hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 紅の炎
    アリスaa1651
    人間|14才|女性|攻撃
  • 双極『黒紅』
    Aliceaa1651hero001
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • 花の妖精
    桜乃まりあaa1667
    人間|23才|女性|生命
  • エージェント
    月城 万里aa1667hero001
    英雄|15才|男性|バト
  • 『成人女性』
    姚 哭凰aa3136
    獣人|10才|女性|攻撃
  • コードブレイカー
    十七夜aa3136hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • エージェント
    稲田藍aa3140
    獣人|35才|男性|回避
  • エージェント
    天狼心羽紗音流aa3140hero001
    英雄|45才|男性|シャド
  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141
    獣人|10才|女性|命中
  • えんだーグリーン
    どらごんaa3141hero001
    英雄|40才|?|シャド
  • 初心者彼氏
    鹿島 和馬aa3414
    獣人|22才|男性|回避
  • 巡らす純白の策士
    俺氏aa3414hero001
    英雄|22才|男性|シャド
  • エージェント
    土御門 晴明aa3499
    獣人|27才|男性|攻撃
  • エージェント
    天狼aa3499hero001
    英雄|8才|?|ドレ
  • ローズクロス・クイーン
    新座 ミサトaa3710
    人間|24才|女性|攻撃
  • 老練のオシリスキー
    嵐山aa3710hero001
    英雄|79才|男性|ドレ
  • 清廉先生
    白瑛aa3754
    獣人|15才|男性|回避
  • 裏技★同時押し
    倭奏aa3754hero001
    英雄|20才|男性|ドレ
  • 巡り合う者
    椋実aa3877
    獣人|11才|女性|命中
  • 巡り合う者
    朱殷aa3877hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 指導教官
    Chris McLainaa3881
    人間|17才|男性|生命
  • チョコラ完全攻略!
    シャロaa3881hero001
    英雄|11才|女性|ジャ
  • 発想力と書物を繋ぐ者
    ヴィヴィアン=R=ブラックモアaa3936
    機械|30才|男性|攻撃
  • ウサギのおもちゃ
    ハルディンaa3936hero001
    英雄|24才|?|ドレ
  • きっと同じものを見て
    桜小路 國光aa4046
    人間|25才|男性|防御
  • サクラコの剣
    メテオバイザーaa4046hero001
    英雄|18才|女性|ブレ
  • 葛藤をほぐし欠落を埋めて
    佐藤 鷹輔aa4173
    人間|20才|男性|防御
  • 秘めたる思いを映す影
    語り屋aa4173hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
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