本部

鰐の顎

saki

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
4人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/05/12 19:39

掲示板

オープニング

●とある森にて
 森が食い荒らされた。
 木々が軒並み倒され、動物たちも食い散らかされた。
 宛ら、死の森のようである。
 倒れた木々は根本の方が抉られ、それによって倒れたのである。
 この原因となったものは、数年前に森に無法者の手によって放たれた一対の動物によるものである。一対というだけあり、その動物は番であった。
 ワニガメである。
 近年では日本でも海外から輸入され、ペットとして飼育する者もいる。しかし、育てられなくなり野に放つ者もいるのだ。勿論、ワニガメだけではなく、その他にも多くのペットが捨てられている。それによって日本の生き物の生態系が崩れつつあり、それが問題視されることも多い。そんな中でも、危険中の危険――それがワニガメである。
 この森の沼に放たれたワニガメは、もう既にかなりの大きさであった。
 通常、繁殖できるまで10年~15年かかると言われているが、それもクリアしている年齢であった。
 その上、快適な環境と豊富な餌によってすくすくと成長し、増々大きなものへと育ったのだ。
 また、雌雄であった為に卵を産んで子を成した。一回の産卵で産む卵に差はあるものの、6~50個程度の卵を産むのだ。これでこの環境下に居て繁殖しないわけがない。
 3年に一度の繁殖ではあるものの、その数は次第に増した。それに従い、その沼には疾うの昔にワニガメ以外の生き物は絶えてしまった。
 ワニガメは水に依存する生き物である。
 生活の殆どを水の中で過ごす為、産卵の時にしか陸に上がらないのだ。
 しかし、その水の中には食べる物がなくなった。それならどうすれば良いのか――その答えは簡単である。
 陸に上がれば良いのだ。
 陸で食べ物を得れば良いのだ。
 その答えに至ってからは早かった。彼らは進化したのだ。陸でも生きられるように、力を得た。
 そうしてワニガメ達は従魔化し、手当り次第に森の木を、生き物達を食べ始めたのである。


 こうして今日、依頼が舞い込んだ。
 森を荒らす脅威を、森を食い散らかす従魔を討伐して欲しい、と。

解説

●目的
→ワニガメの討伐

●補足
→ワニガメの数は不明。少なくとも確実に十数はいる模様。しかし、産卵の数がまちまちなのでそれより多いかのせいもあり。その全てを討伐すること。
→ワニガメは鰐の顎で持ってしても砕くことのできない、頑丈な甲羅を持っています。並大抵の攻撃では効果がありません。
→攻撃手段はその強力な顎による噛みつきです。オープニングであるように、ひと噛みで木を抉って倒す程。通常種で300~500キロ程の力がありますが、従魔化して更に強烈になっています。 嗅覚もかなり良いので注意が必要です。
→ワニガメは通常サイズなら成長して甲羅が80センチ、全長120センチ程度にもなりますが、このワニガメ達は従魔化することによって140センチ近く大きくなっています。
 特に最初の二匹はそれよりも大きいです。
 雄の方が雌よりも大きい為、雌が150センチ程、雄は160センチ程の大きさです。

リプレイ

●現場への道にて
 報告があった森に向かい、何時目的の従魔と遭遇しても良いように慎重に足を進める。

「これは、所謂外来種による被害の延長線上ってことでいいのか?」と、呆れたように呟くリィェン・ユー(aa0208)に、イン・シェン(aa0208hero001)も『じゃな……まったく、最後まで面倒見きれぬなら動物を飼うなんてしなければいいのじゃ』と眉を顰める。
「ま、最初はそのつもりでも、時間の経過による状況の変化で飼えなくなるってこともあるから一概にはいえないんだろうけどな」『それでも代わりの飼い主を探すなりしてやればよかろう。無責任に野に放つから本来被害者であったのにこうやって駆逐されることになったのじゃ』「たしかにそれはそうなんだよな」

 カグヤ・アトラクア(aa0535)は、周囲に隈なく目を走らせる。従魔が餌を求めて地上を徘徊すれば、その巨体故に痕跡などいくらでも見つけられそうだから、それを探しているのだ。
 この依頼に対し、カグヤは「ただの気晴らしじゃ。従魔相手じゃと後腐れなくていいしのぅ」と称している。
 その言葉の通り、彼女は悠然と、まるで散歩でもしているかの足取りで歩いていた。

 石井 菊次郎(aa0866)の「生存の為に従魔化したと言う事ですか…何とも凄まじい話です」という言葉に、テミス(aa0866hero001)は冷静に『まあ、本当にそうかどうか…ワニガメが従魔化して陸に現れた。事実はこれだけだ』と指摘する。
 そして菊次郎は「…それはそうと」と話を切り替えた。
「最近は従魔料理などと言うものが流行り始めたとか? 嘆かわしい話です」『…主が言うか? それにその懐の香辛料は何だ? "俺も食べたい"と言う為に取り敢えず格好付けて否定して見せるなど、軽薄なソフィスト染みた言い方はやめよ』「…よ、容赦無いですね」

 ティナ(aa1928)には、泥や草の汁を塗りたくって臭い対策をするなど自然に溶け込む術がある。これまでの山奥の生活で得た知識を最大限に活用しての参戦だ。
 彼女自身は何と言うべきか、猟師の知恵というよりは獣に近いのだ。
 それこそ、殆ど獣と変わらない生活をしていた為、山の中では自然とこれまで培ってきたものが現れているのである。その為、今回の件は「捨てられたワニガメも生きるために食べただけ、むしろ悪いのは捨てた人間」と思っている。
 そう思いながらも、任務遂行の為その能力を如何なく発揮するのだった。

 依頼内容を聞き、「このままでは俺達の住処も危ないな…」と武 仁狼(aa3793)は遠い目をした。
 彼自身が森に住んでいることもあり、他人事ではないと依頼を受けたのである。
 小狼(aa3793hero001)と共鳴することで、狼の耳と尻尾が生えてしまうことが悩みではあるが、戦闘能力が上がるのだからそれは甘受するしかないのだろう。
 自身が森で生活してきたことで築き上げた技術、経験を如何なく発揮するつもりである。
 ワニガメに対し、用意した餌もあり、抜かりも無く準備万端。後は敵を見つけるばかりだと拳を握った。

「ワニガメか…従魔になってなくとも十分面倒な奴だな」と、溜息交じりの“皮肉屋” マーシィ(aa4049)の言葉に、“不可思議な放浪者”(aa4049hero001)は『まぁ、普通に人を殺せる威力の顎があるからね、甲羅も工具でもなきゃ割れる物ではないし』と同意する。
 従魔化することにより、木をひと噛みで倒すだけの噛む力があるのだ。その顎の強さなら確かに人間など容易に殺せるだろう。野生の動物を噛み殺すことができるのだから、人間を噛み殺すことができないわけがない。
 到底社交的とは言えないマーシィだが、仕事なら別だ。仕事の時には協調性はある。今回は特に、単独行動でやられたら目も当てられないし、他者との連携を重視して依頼に臨むのであった。

●件の沼にて
 報告にあった沼を訪れれば、成程、確かに怪獣でも大暴れしたかのような惨状である。
 木が軒並み薙ぎ倒され、草木も食まれてそこかしこが禿げ、ぼろぼろになった動物の骨が転がっている。森の中の沼というよりは、ゲームや漫画なんかで出てきそうな毒沼のようだ。死の気配が彼方此方に漂っている。

 リィェン、カグヤ、ティナ、仁狼はこのままワニガメを追って戦闘し、菊次郎は見晴らしの良い場所から狙撃、マーシィは高所からの索敵と狙撃をする為、それぞれ連携を怠らないようにして展開する。

●戦闘開始
 判りやすすぎる目印を追い続けていくと、ワニガメを発見した。あの大きすぎる痕跡が他には見つからない為、同じ方向に進んでいるのだろう。いうなれば、ワニガメの行進というところだろうか。しかし、同じ方向に進んでいるとはいえ、個体と個体との間で間隔が開いているようである。今発見したワニガメは最後尾であり、苛立たし気に周囲の木を噛んで抉っている様から、まだ満足に餌を得られていないようだ。
 しかし、幾分か間隔が開いているのかもしれないが、ここで大騒ぎして他のワニガメが集まって来ても厄介だ。
 腹を空かせているのと、嗅覚が鋭いことを利用し、仁狼が用意した真空パックしてきた生魚を罠として仕掛ける。
「前はよくこうやって狩っていたな…」と、仁狼が呟いた。
 ワニガメを視界がぎりぎり視界に入った所で、真空パックを開く。すると、途端に魚特有の生臭いにおいが広がった。人間でこれなら、少し離れているとはいえ、嗅覚の良いワニガメが気付かないわけがないだろう。
 他のワニガメが寄ってくることも懸念し、離れた場所で身を隠す。
 すると、臭いを捉えたのかワニガメが勢いよくこちらを向いた。そして、その巨体に似つかわしくない速さで駆け寄ってくる。
 涎を撒き散らさんばかりに飛びつくワニガメに、四人は襲い掛かる。
「昔、どこぞの森でワニガメを見たことがあるんだが…」と仁狼は言いながら、ワニガメの側面から甲羅の下に長柄武器を入れ込み、裏返して隙を作る。
「起き上がりが……狙い目だ!」と言う仁狼の言葉に頷き、ティナがエストックで甲羅との隙間を斬り付ける。
 鎧通りの面目躍如である。
 硬い甲羅に覆われているからこそ、実は弱い部分を突かれたのだ。これには一たまりもない。
 叫び声を上げる従魔に向かい、仲間を呼ばれる前に仁狼がヘヴィアタックを頭に容赦なく決める。
 巨体が揺らぎ、大きな音を立てて倒れた。

 そして、あの魚の匂いに釣られたのか、それともワニガメの血の臭いに惹かれたのか、はたまた叫び声に呼ばれたのか、更にもう一体ワニガメがやって来た。
 それを今度はカグヤが「さて、亀退治ははじめてじゃが、どうすれば竜宮城への道を教えてくれるかの」と嘯きながら、雷神の書で攻撃を仕掛ける。
 貫通と感電効果のある雷で甲羅の防御性を無視し、その内側に直接ダメージを与える。
 これは効果覿面である。
 水タイプに雷タイプの技が有効とかゲームでもよくあるが、普段全く電気など知らない生物によく効く。雷も炎も野生の生物にとっては忌避すべきものなのである。
 焦げるような臭気が漂う中、追い打ちとばかりにイグニスの火炎で焼き尽くした。

 少し進み、三体程纏まっているワニガメを発見した。
 お次はリィェンが「やっぱ亀だけあってかてぇな。だがでかくなった分狙いやすくて助かるぜ」と、甲羅を叩いて三体の中でも一番後ろにいる一体の注意を引く。そして、リィェンに気が付いたワニガメが振り向くと、適度に距離を取り、そして追ってくるように仕掛ける。
 身軽なのを活かし、ヒット&アウェイを繰り返し、完全に先の二体との距離を稼ぎそこで攻めに転じる。
 今まで狙っていなかった、甲羅に覆われていなかった所に一撃を入れる。これまでの攻防で焦れ、噛みつこうと首を伸ばしてきた所をヘヴィアタックにて沈めた。

 その前にいた二体については、一体を仁狼が弓で頭を射、決定打にはならないものの唐突な奇襲に驚き、そして獲物を見つけたとばかり追って来させて分断した。
 ある程度もう一体と距離ができた所で、大剣で甲羅の側面から、下から上へ切り上げるように一気呵成をぶっ放す。
 これは敵を倒すのではなく、ひっくり返すことが目的である。幾ら強力であろうとも、亀は亀だ。ひっくり返ったのを自分で身を起こすのは先程も見たように困難であり、その狙い目にヘヴィアタックを決める。

 そしてもう一体の方はカグヤとティナが仕留める。
 臭いを消したティナが気配も感じさせずに急接近し、エストックで斬るというよりは薙ぐようにしてその足元を崩す。転倒させる。
 しかし、体勢を崩しながらも噛みつこうとするワニガメをティナは持ち前の反射神経、そして動物的直感で難なく避けると、ティナの攻撃の隙に距離を詰めていたカグヤが雷神の書で、今度は腹の部分にその電撃を浴びせた。


 そこから少し離れた所で、群れから若干逸れたワニガメを菊次郎は発見した。
 鋭い嗅覚を警戒し、風下に陣取ると黒の猟兵で幹を抉り、ワニガメの前にある木を倒壊させる。
 急に目の前に木が倒れ、行き先を阻まれたワニガメは混乱したかのように立ち止まった。そして、それを確認す次々に樹木の幹を狙って倒し、ワニガメの四方を囲む。
 勿論ワニガメにジャンプ力は無いとはいえ、あの顎で木を倒せるのだからここから出ることもできるだろう。しかし、今回はこれで十分である。
 倒壊した樹木の陰に身を隠し、ワニガメからこちらを見ることのできない位置まで来ると頭を狙って攻撃する。
 頭部の切断が目的だ。
 どんなに強かろうと、生命力が強かろうと、頭と胴体が離れて生きているわけがない。
 黒の猟兵、そして銀の魔弾を駆使し、首を狙い撃って落とした。
 最初に首に一撃を受けたと思ったら、そこから急所に連続で攻撃が入るのだ。
 いとも容易く従魔を屠ると、次の獲物を探して菊次郎は移動を始めた。


 四人が視界に入る位置で索敵を続けていたマーシィは、近づく従魔の姿を発見し、連絡を入れると従魔の足元にボーガンで奇襲を仕掛けた。
 その間も多方向からの従魔の索敵は続けつつも、ストライクで攻撃を仕掛ける。
 狙いどころは目や口等といった、甲羅に守られていない位置だ。
 この部位はどんな生き物であろうとも、弱い部分である。
 暴れて仲間を巻き添えにしても困るので、「目を狙う、暴れられても巻き込まれるなよ」と事前に伝えることも忘れない。
 その言葉の通り、集中することで高められた一撃が目を抉る。
 えぐい一撃にワニガメは唸り声を上げ、その巨体で馬鹿みたいに暴れ始めた。
 しかし、マーシィからは大分距離がある為その巨体は離れた場所から見れば逆に狙い目である。危険なのは、近くにいる時だけだ。
 暴れ、大振りになって却って隙だらけになった従魔を、冷静にマーシィの一撃が射抜く。
 呼吸が止まるような喉元を射抜く一撃が入り、動けなくなった所で近くにいた四人が冷静に対処して仕留めた。


 その後も何度か戦闘を繰り返し、時には周囲が包囲された時は『亀の意相手と言ったらひっくり返すのが定番じゃな』とリィェンが一気呵成で従魔をひっくり返したり、仲間が攻撃を受けそうになったらカグヤがグランガチシールドで攻撃を防いだり、予想以上に硬いワニガメだった場合は黒の猟兵で堀った穴に落として菊次郎がブルームフレアで蒸し焼きにしたり、その身軽さと気配を消す能力を活かしてティナが従魔を錯乱したり、仁狼が敵の噛みつきを「鰐の顎でも砕けまい…ってな!」と倒したワニガメの甲羅を盾にして防いだり、敵に襲われそうになった仲間をマーシィがボーガンでサポートして連携したりした。

 そして、残す所は他のワニガメよりも随分と大きく、そして何処となく風格の漂う二体だけである。


 この二体は付かず離れずの距離を互いに保っている為、他のワニガメとは違って容易に分断できそうにはない。互いに互いを補い合っているような、互いに互いの死角を埋め合っているというような、そんな補完関係にありそうなそんな距離感である。
 最初から二匹で生きてきたからこそ、外敵から身を守るのも警戒するのも慣れているのだろう。明らかに他のワニガメ達とは違っていた。

 先手必勝とばかりに、菊次郎のゴーストウィンドウが炸裂する。
 突然の攻撃に雌の方のワニガメが膝を突くが、そこに雄が割入って体制を立て直すまでカバーする。他の従魔達には無かった連携である。
 取り敢えずこの二体を離すのが先だと、リィェンのヘヴィアタックが炸裂する。真横から重い一撃を受け、一体のワニガメは体制を崩しその間に攻撃を受けた方ではなく、動ける方を狙い撃つ。
 噛みつこうと迫りくる咢に向かい、カグヤはウレタン噴射器を作動させる。
 本来生き物に、ましてや顔面に向かってなど使用されるのをまともに喰らったのだ。無事である筈がない。
 ウレタンが付着することにより、ワニガメはその強力な顎をまともに動かせなくなった。
 そこを突き、仁狼のヘヴィアタックで側面に強烈な一撃を入れて吹き飛ばす。
 横からまともに一撃を受け、いくら硬かろうともまともに受けてしまえばその衝撃を殺すことなんてできやしない。
 連携により二体を引き離すと、それぞれ三対一で相手にする。

 顎がまともに利かなくなったことにより、体当たりからののしかかりをしてこようとするが、それをリィェンは身体を引くこと避け、見極めの眼でカウンターの一撃の剣が突き刺さる。
 そこから更に一気呵成による追い打ちが入る。
 ワニガメの巨体が腹を見せて浮かび上がった。
 その露わになった腹に向かい、仁狼が再びヘヴィアタックを決める。
 またしても勢いのある攻撃に巨体が流され、大きな音を立てて倒れる。
 倒れた所で、菊次郎が黒の猟兵と銀の魔弾の得意なコンボを決めて首を吹き飛ばした。

 雌の方は、雄の方に向かおうとするのをマーシィが足にボーガンを撃ち込むことで阻害する。
 流石にボーガンで足を利かなくすることはできないが、それでもこちらを倒さなければ向こうに行くことはできないということが理解できたようだ。
 唸り声を上げて襲い掛かるのをモアドッジで、まるで闘牛をいなすかのようにして避けると、そこに接近していたティナが甲羅と首の間をエストックで抉った。
 飛び込んだ勢いのまま、甲羅と首の間を一周するかのようにして刃を滑らせる。
 身軽なティナだからこそできる技だ。
 激昂したワニガメの暴れるような攻撃も野生的直感で難なくよけると、カグヤがイグニスでワニガメを燃やした。
 ワニガメが火だるまになって暴れている。
 接近するのをカグヤがグランガチシールドで受けるというよりも、上手く勢いを殺していなすと、マーシィのファストショットにより至近距離からの高速のSMGリアールが被弾する。
 接近戦故の圧倒的な威力を誇るSMGリアールにより、ワニガメは倒れた。

 動かなくなった二体を確認し、これで一応は目標の従魔の討伐完了である。

●食す
 リィェンとインが沼に卵が無いか、他にワニガメがいないか確認に行っている間に残った面々は先に山を下りて調理開始である。ちなみに、ティナは先に付けた泥や草を落とす為、先程見つけた川へ水浴びに行っている。この三人は、それぞれの事が済んでから合流である。
 リィェンとインに至っては人間の都合によって棄てられ、更にはまた人間の都合によって殺されることになったワニガメの供養も行っているのだから、流石としか言いようがない。命の重さを知っているからなのだろう。

 状態の良い肉を幻想蝶の中に入れていた菊次郎は取り出し、ワニガメの肉でブラザードを作る。
 癖があると思われるので、血抜きと下茹では念入りにし、決して手抜きはしない。食に拘りがある者として、当然のことである。
 大型の圧力鍋の中に、香味野菜、秘蔵の香辛料、赤ワインで煮込む。この時の赤ワインも厳選した拘りの逸品である。
 菊次郎の目方では、赤の古酒しか合わない筈と思われるので、ブルゴーニュ2000年代である。細かい所まで厳選した食材を使い、贅沢に仕上げる。
 戦い以上に真剣な様にテミスが呆れた視線を向け、鍋から片時も目を離さず「…これは魂を賭けた戦いなのです」と堂々と言ってのけた菊次郎に、テミスは言葉を失い『…』と肩を竦めた。

 共鳴を解除したマーシィは、倒した従魔達を眺めながら放浪者が『さーて、それじゃあ1,2匹見繕って持って帰るか!』とやる気を出す様に「…マジで作る気かこの野郎…」と突っ込んだ。
 あまり大きすぎず内臓が傷ついて無いのを重視して選ぶと、手の空いていた仁狼にも運ぶのと解体を手伝ってもらう。流石に山で暮らしているだけあり、仁狼は難なく作業をこなしている。その横で、まだ小さな小狼は何か手伝えないかとうろちょろとし、仁狼に窘められていた。
 放浪者も手早く、それでいて繊細な手つきで内臓を破らぬように気をつけて作業する。
 皮は臭みの原因になる為、内容物を綺麗に除いた内臓、ウロコを引いた甲羅と共に執拗な程良く洗い、湯引きして表皮を湯剥ぎをし、下拵えを念入りにする。
 それだけではなく、勿論血も料理に使う予定である。
『元々カミツキガメはなんでも食うからね、さほど味に違いは無いと思うのさ』と得意げな放浪者に、マーシィは「…そうかよ…」と少々コメントしづらい様子である。
 大鍋で生姜やネギ等の臭み消しの野菜と醤油を使い、甲羅を茹でて出汁を取る。アクと共に取り出した後、手足や尻尾含めた肉、皮内臓もろもろを鍋にぶち込み、丸半日かけて弱火でひたすら煮込んでスープを仕上げ、煮込む作業に並行して揚げ物や炒め物も作る。

 水浴び、そして毛繕いを済ませてから戻って来たティナも料理を開始する。
 ティナは大胆に肉を焼いて食べるようである。
 倒した獲物は食べるのが自然の掟というのが頭にあり、それ故の料理ではあるものの、焼き肉という辺りに非常に野性味を感じる。
 血抜きを済ませた肉を焼き肉のように薄切りにするのではなく、ステーキのようにブロック肉で豪快に焼いて調理していく。

 マーシィの料理はまだ時間がかかるので、先に菊次郎とティナの料理を味わうことにする。料理中にリィェンも合流し、全員が集まった。

「これはなかなかいけるな」とリィェンは驚き、『うむ。美味じゃ』とインも頷く。
 カグヤは料理そっちのけで、ワニガメの甲羅が持ち帰れないかと悩み、吟味している。
「あぁ、矢張りこの選択で正解でした。しかし、NSGで粗野さを味わうのも良かったかもしれませんね」と呟く菊次郎に、勝手にしろとばかりにテミスは視線を投げかける。
 ティナは口の周りを汚しながらも、「うまい、うまい」と肉を夢中で貪っている。
 お相伴に預かり、『おいしーね!』と笑顔を浮かべる小狼の横で仁狼は丈夫な甲羅なので防具として使えるか背中に背負ってみるが、周囲から変なものでも見るかのような視線を向けられ、「ちょ、ちょっとやってみたかっただけだ…」と甲羅を下した。
 まだ調理中の放浪者は『皮や軟骨はじっくりと煮ないと固くて食えた物ではないから、時間をかけねばいけないのさ、嗚呼楽しい』と至って満足気であり、マーシィは「…しかし、旨いから俺は別に良いけどよ…普通、食うか?」とそのこだわりに呆れ気味であるが『趣味だからね』とさらりと流される。

 従魔の大きさからして、まだまだ肉はあるし、スープの完成にだって時間はかかる。
 宴会はまだまだ始まったばかりである。
 人間の勝手に振り回されたワニガメ達は不憫であるが、だからこそ、狩った肉を食んで糧とすることこそが最高の供養だとばかりに、一同は大いに飲んで大いに食べてその生を確りと味わうのであった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
  • 狩る者
    武 仁狼aa3793

重体一覧

参加者

  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
    人間|22才|男性|攻撃
  • 義の拳姫
    イン・シェンaa0208hero001
    英雄|26才|女性|ドレ
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
    機械|24才|女性|生命



  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
    人間|25才|男性|命中
  • パスファインダー
    テミスaa0866hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 野生の勘
    ティナaa1928
    人間|16才|女性|回避



  • 狩る者
    武 仁狼aa3793
    機械|17才|男性|攻撃
  • 狩る者
    小狼aa3793hero001
    英雄|6才|?|ドレ
  • エージェント
    “皮肉屋” マーシィaa4049
    人間|22才|男性|回避
  • エージェント
    “不可思議な放浪者”aa4049hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
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